(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184743
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】樹脂製中空容器
(51)【国際特許分類】
B60K 15/03 20060101AFI20170814BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20170814BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20170814BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20170814BHJP
【FI】
B60K15/02 A
B65D1/00 B
B29C49/04
B29L9:00
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-104637(P2013-104637)
(22)【出願日】2013年5月17日
(65)【公開番号】特開2014-223877(P2014-223877A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】荘司 和晃
(72)【発明者】
【氏名】中村 和広
【審査官】
結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−084092(JP,A)
【文献】
特開2007−314072(JP,A)
【文献】
特開2007−302100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/00−15/10
B29C 49/00−49/46
B29C 49/58−49/68
B29C 49/72−51/28
B29C 51/42
B29C 51/46
B65D 1/00− 1/48
B29L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリア材層と前記バリア材層の内外に位置する熱可塑性樹脂層を含む多層断面構造を有し、ピンチオフ部で形成されるフランジを介して取付対象物に締結部材により取り付けられる樹脂製中空容器であって、
前記フランジは、前記締結部材を挿通させる締結部材取付孔と、前記締結部材取付孔から離間して形成されるとともに前記締結部材取付孔の外周において前記多層断面構造を厚さ方向に圧縮して形成された凹溝とを有することを特徴とする樹脂製中空容器。
【請求項2】
前記凹溝は、前記締結部材取付孔の外周の全周に亘って連続的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製中空容器。
【請求項3】
前記凹溝は、前記締結部材取付孔の外周において断続的に複数個形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製中空容器。
【請求項4】
前記凹溝は、前記フランジの表裏に配設されるとともに、表裏に形成された前記凹溝同士が周方向に対応する位置に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の樹脂製中空容器。
【請求項5】
前記凹溝は、前記フランジの表裏に配設されるとともに、表裏に形成された前記凹溝同士が周方向にずれた位置に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の樹脂製中空容器。
【請求項6】
前記凹溝は、平面視U字状を呈し、前記フランジの外縁の一部から前記締結部材取付孔を回って前記外縁の他部まで連続して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製中空容器。
【請求項7】
前記締結部材と前記フランジとの間に剛体部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の樹脂製中空容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製中空容器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載される燃料タンクは、防錆性や軽量化等の観点から近年ではブロー成形による樹脂製のタイプのものが主流である。この樹脂製の燃料タンクでは、内部に貯留されるガソリン等の燃料の透過(主に燃料に含まれるHC(炭化水素)の透過)を抑制すべく、その壁部がEVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)等からなるバリア材層を有する場合が殆どであり、一般には、バリア材層と、このバリア材層を挟んで内側および外側に形成されるPE(高密度ポリエチレン)等からなる熱可塑性樹脂層とを有した多層断面構造の壁部で構成されることが多い。例えば特許文献1には、HCバリア材層と、このHCバリア材層を挟んで形成される熱可塑性樹脂層としての熱溶着可能層とを有した多層断面構造の燃料タンクが記載されている。
【0003】
特許文献1に係る発明では、ブロー成形型のピンチオフ部で燃料タンクの外面にフランジを一体に形成し、このフランジにボルト取付孔を形成している。従来の樹脂製中空容器には、フランジが4つ形成されている。これにより、燃料タンクを、フランジを介してボルトで車体に固定することができる。
【0004】
ところが、フランジを貫通するボルト取付孔の内周面が外部に露出し、バリア材層の内側に位置する比較的HCの透過の多い層の露出面積が多いため、この露出部分からHCが透過する量が増加するという問題がある。そこで、特許文献1に係る発明では、当該ボルト取付孔の開口縁に、薄肉となる薄肉部を形成してボルト取付孔からのHCの放出量を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4460513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の樹脂製中空容器の製造方法では、ブロー成形時に薄肉部及びボルト取付孔を同時に成形する場合と、ブロー成形時に薄肉部のみを形成した後、当該薄肉部に二次加工的にボルト取付孔を形成する場合とがある。いずれの場合においても、複数のボルト取付孔と車体側に形成された複数のボス孔とを各位置で連通させる必要があるため、ボルト取付孔の穿設作業には高い位置精度が要求される。
【0007】
しかし、前者の方法では、ブロー成形の成形型に高い精度が要求されるため、成形型の設計・製造に時間を要するとともに、樹脂製中空容器の量産時の管理面においても費用が嵩むという問題がある。一方、後者の方法では、例えば、大きな薄肉部を形成した後に、二次加工時に複数のボルト取付孔間ピッチを調整しながらその薄肉部の範囲でボルト取付孔を形成することで高い位置精度が得られるが、フランジの強度が低下するという問題がある。特に、フランジに大きな薄肉部が形成されていると、ボルトに対してボルト取付孔の径方向の力が作用した際に、ボルトが径方向にずれやすくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、前記した事情に鑑みて創作されたものであり、HCの放出量を低減するとともに成形精度の高い製品を容易に製造することができる樹脂製中空容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、バリア材層と前記バリア材層の内外に位置する熱可塑性樹脂層を含む多層断面構造を有し、ピンチオフ部で形成されるフランジを介して取付対象物に締結部材により取り付けられる樹脂製中空容器であって、前記フランジは、前記締結部材を挿通させる締結部材取付孔と、
前記締結部材取付孔から離間して形成されるとともに前記締結部材取付孔の外周において前記多層断面構造を厚さ方向に圧縮して形成された凹溝とを有することを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、フランジにおいて、多層断面構造を厚さ方向に圧縮して形成された凹溝を設けることで、他の部位よりも薄肉となる部位が形成される。当該薄肉部分でHCの流通が遮られるため、締結部材取付孔からのHCの放出量を低減することができる。また、締結部材取付孔の外周に凹溝を設けることで、当該凹溝の内側の範囲内で締結部材取付孔の位置の微調整を行うことができる。これにより、成形精度の高い樹脂製中空容器を容易に製造することができる。また、凹溝は、締結部材取付孔の外周に設けるだけであるため、フランジの強度低下を抑制することができる。
【0011】
また、前記凹溝は、前記締結部材取付孔の外周の全周に亘って連続的に形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、HCの放出量をより低減することができる。
【0012】
また、前記凹溝は、前記締結部材取付孔の外周において断続的に複数個形成されていることが好ましい。また、前記凹溝は、前記フランジの表裏に配設されるとともに、表裏に形成された前記凹溝同士が周方向に対向する位置に形成されていることが好ましい。また、前記凹溝は、前記フランジの表裏に配設されるとともに、表裏に形成された前記凹溝同士が周方向にずれた位置に形成されていることが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、HCの放出量を低減するとともにフランジの強度低下を抑制することができる。
【0014】
また、前記凹溝は、平面視U字状を呈し、前記フランジの外縁の一部から前記締結部材取付孔を回って前記外縁の他部まで連続して形成されていることが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、HCの放出量を低減するとともに容易に製造することができる。
【0016】
また、前記締結部材と前記フランジとの間に剛体部材が取り付けられていることが好ましい。かかる構成によれば、フランジを補強することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、HCの放出量を低減するとともに成形精度の高い樹脂製中空容器を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る樹脂製中空容器の全体斜視図である。
【
図2】第一実施形態に係るフランジを示す図であって、(a)は斜視図であり、(b)は平面図である。
【
図3】(a)は
図2(b)のI-I断面図であり、(b)は
図2(b)のII−II断面図である。
【
図4】(a)
図2(b)のIII-III断面図であり、(b)は比較例であり、(c)は
図6のIV-IV断面図である。
【
図5】本発明の樹脂製容器の製造方法において、(a)は型締め工程を示し、(b)はブロー成形後の成形品を示す。
【
図7】(a)は
図6のI-I断面図であり、(b)は
図6のII-II断面図であり、(c)は
図6のIII-III断面図である。
【
図8】本発明の第二実施形態に係るフランジを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第一実施形態]
以下、本発明の実施形態について、樹脂製中空容器をブロー成形する場合を例にとり、適宜図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1に示すように、樹脂製中空容器1は、容器本体2と、複数のフランジ3とで構成されている。容器本体2は、複数層の樹脂で形成された中空体であって、内部に燃料を貯留する。
【0021】
図2の(a)に示すように、フランジ3は、締結部材(ボルト)Bを介して車体に締結される部位である。フランジ3は、容器本体2の側面から側方に張り出している。フランジ3の設置数は特に制限されないが、本実施形態では、4箇所に形成されている。フランジ3の面外方向は、容器本体2の高さ方向を向くようになっている。
図2及び
図3に示すように、フランジ3には、締結部材取付孔11と、表面側に形成された複数の凹溝12と、裏面側に形成された複数の凹溝13とで構成されている。
【0022】
図3の(a)に示すように、フランジ3は、内側熱可塑性樹脂層2A,2Aと、外側熱可塑性樹脂層2B,2Bと、内側熱可塑性樹脂層2Aと外側熱可塑性樹脂層2Bとの間に形成されたバリア層2C,2Cとで構成されている。バリア層2Cの表裏は、接着剤を介して隣接する層に接着されている。内側熱可塑性樹脂層2A及び外側熱可塑性樹脂層2Bは、例えば、PE(高密度ポリエチレン)で構成される。また、バリア層2Cは、例えば、炭化水素等の不透過性に優れたEVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)で構成される。また、樹脂製中空容器の製造時に発生するバリ等を回収して得られる再生材層を積層させてもよい。
【0023】
凹溝12は、フランジ3の表面3aにおいて締結部材取付孔11の外周に等間隔で複数個(本実施形態では6個)形成されている。凹溝12は、全て同じ形状になっており、平面視円弧状を呈している。複数の凹溝12は、同一円上に配置されている。複数の凹溝12で形成される円の直径(内径)は、締結部材取付孔11よりも大きくなっている。凹溝12の断面形状は特に制限されないが、本実施形態では台形状になっている。
【0024】
図2及び
図3に示すように、凹溝13は、フランジ3の裏面3bにおいて、締結部材取付孔11の外周に等間隔で複数個(本実施形態では6個)形成されている。本実施形態では、凹溝13は全て同じ形状になっている。凹溝13は、表面側に形成された凹溝12と対応する位置(平面視した場合に両者がぴったり重なる位置)に形成されている。
図3の(a)に示すように、フランジ3の外縁3cにおいては、バリア層2C,2Cはほぼ接触する程度に接近している。凹溝12,13は、フランジ3を厚さ方向に圧縮することにより、局所的に薄肉となるように形成されている。凹溝12,13間における、バリア層2C,2C間の距離であるバリア層間距離cの寸法は、凹溝12,13が無い部位におけるバリア層2C,2C間の距離であるバリア層間距離bの寸法よりも小さくなっている。
【0025】
締結部材Bは、締結部材取付孔11及び車体Sのボス孔Saに挿入されつつ、ナットNに締結されている。これにより、樹脂製中空容器1は、車体Sに固定される。
【0026】
ここで、
図2の(b)及び
図4の(a)に示すように、隣り合う凹溝12,12間に形成された部位を非凹溝部14とする。また、隣り合う凹溝13,13間に形成された部位を非凹溝部15とする。非凹溝部14の幅aの寸法及び非凹溝部15の幅a(以下、「凹溝間距離a」とも言う)の寸法は、フランジ3の厚さ及び強度等に応じて適宜設定すればよい。非凹溝部14及び非凹溝部15を含む断面においては、バリア層2C,2Cで囲まれた断面M1(
図4の(a)の網掛け部分)が透過領域となる。
【0027】
仮に、
図4の(b)に示すように、凹溝間距離aの寸法をバリア層間距離b(
図3参照)の寸法よりも大きく設定すると、非凹溝部14及び非凹溝部15を含む断面においては、バリア層2C,2Cで囲まれた断面M2(
図4の(b)の網掛け部分)が透過領域となる。断面M2の面積は、断面M1の面積よりも大きくなっている。このように、凹溝間距離aの寸法をバリア層間距離b(
図3参照)の寸法よりも大きく設定すると透過領域が大きくなり、HCの放出量が増加してしまう。したがって、凹溝間距離aは、フランジ3の十分な強度を確保しつつバリア層間距離b以下に設定することが好ましい。
【0028】
次に、本実施形態に係る樹脂製中空容器1の製造方法について説明する。本実施形態にでは、ブロー成形にて樹脂製中空容器1を製造する。本実施形態に係る製造方法では、ブロー工程と、二次加工工程と、を行う。
【0029】
図5の(a)に示すように、ブロー工程では、供給された筒状のパリソンPを金型K1,K1で型締めし、パリソンPの内側に挿入されたブローピン(図支省略)から空気を供給する。空気が供給されることによって、パリソンPが金型K1,K1の内面に転写される。パリソンPは、内側熱可塑性樹脂層2A、外側熱可塑性樹脂層2B及びバリア層2C等を含んで層状に供給される。具体的な図示は省略するが、金型K1,K1の端面K1a,K1aには複数の凹溝12,13に対応する凸条(図示省略)が形成されている。
【0030】
図5の(b)に示すように、ブロー工程が終わったら金型K1,K1から成形品100を取り出してバリVを切削除去する。ブロー工程によって成形された成形品100は、ロワー部100Aとアッパー部100Bとで構成されている。また、成形品100の側面には、側方に張り出したピンチオフ部101が形成されている。ピンチオフ部101には、厚さ方向に圧縮することにより、局所的に薄肉となる複数の凹溝12,13が形成されている。
【0031】
二次加工工程では、ピンチオフ部101に締結部材取付孔11を穿設してフランジ3を形成する。具体的には、複数の凹溝12の中央付近に締結部材取付孔11を形成する。以上により、樹脂製中空容器1が形成される。
【0032】
以上説明した本実施形態に係る樹脂製中空容器によれば、フランジ3の表面3aに凹溝12を形成し、裏面3bに凹溝13を形成することにより、フランジ3が厚さ方向に押し潰されて、バリア層間距離cの寸法が凹溝が無い部位のバリア層間距離bの寸法よりも局所的に小さくなる。これにより、凹溝12と凹溝13の間の薄肉部分でHCの流通が遮られるため、当該薄肉部分で囲まれた領域内にある締結部材取付孔11からのHCの放出量を低減することができる。
【0033】
また、複数の凹溝12,13で囲まれた領域内で締結部材取付孔11を穿設することができる。つまり、複数の凹溝12,13で囲まれた領域内で締結部材取付孔11の位置の微調整が可能となり、締結部材取付孔11自体の孔径や、締結部材取付孔11間ピッチ等の位置精度を高めることができる。これにより、成形精度の高い樹脂製中空容器1を容易に製造することができる。
【0034】
また、複数の凹溝12,13は、締結部材取付孔11の外周に設けるだけであるため、フランジ3の所定領域全体を薄肉にする場合に比べてフランジ3の強度低下を抑制することができる。また、凹溝12,13を断続的に設けたことにより、HCの放出量を低減させつつ、フランジ3の強度低下を抑制することができる。また、フランジ3の強度低下を抑制することで、ボルトBの径方向のずれを抑制することができる。
【0035】
また、
図3の(a)に示すように、製造工程において、脱型するときにパリソンPを食い切ることにより、ピンチオフ部101が形成される。本実施形態では、このピンチオフ部101をフランジ3として形成するため、フランジ3の外縁3cにおいてバリア層3C,3Cのバリア層間距離を極小とすることができる。これにより、HCの放出量をより低減することができる。
【0036】
[第一変形例]
次に、本発明の第一変形例について説明する。
図6に示すように、第一変形例に係る樹脂製中空容器1Xは、凹溝12,13の配設位置が第一実施形態と相違する。
【0037】
凹溝12は、フランジ3の表面3aにおいて、等間隔で複数個(本変形例では6個)形成されている。一方、凹溝13は、フランジ3の裏面3bにおいて、等間隔で複数(本実施形態では6個)形成されている。表裏に形成された凹溝12,13同士は、周方向にずれた位置に形成されている。
【0038】
図7の(a)に示すように、凹溝12,13が形成された部位のバリア層間距離cの寸法は、凹溝12,13が無い部位のバリア層間距離bの寸法よりも小さくなっている。また、
図7の(b)に示すように、裏面3bのみに凹溝13,13がある場合や、
図7の(c)に示すように、表面3aのみに凹溝12,12がある場合におけるバリア層間距離dは、凹溝12,13が無い部位のバリア層間距離bの寸法よりも小さくなっている。
【0039】
表面3aのみに凹溝12がある部位又は裏面3bのみに凹溝13がある部位であっても、バリア層間距離dの寸法がバリア層間距離bの寸法よりも小さくなっているため、HCの放出量を低減しつつ、フランジ3の強度を確保することができる。
【0040】
また、第一変形例では、フランジ3の表面3aに形成された凹溝12と、裏面3bに形成された凹溝13とが周方向にずれた位置に形成されている。
図4の(c)に示すように、隣り合う凹溝12,12間で形成された部位を非凹溝部14とする。また、隣り合う凹溝13,13間に形成された部位を非凹溝部15とする。非凹溝部14及び非凹溝部15の幅aは、バリア層間距離b以下に設定されており、かつ、非凹溝部14及び非凹溝部15の位置が周方向にずれて形成されているため、非凹溝部14(又は非凹溝部15)を含む断面においては、バリア層2C,2Cで囲まれた断面M3,M3(
図4の(c)の網掛け部分)が透過領域となる。
【0041】
図4の(a)の第一実施形態と(c)の第一変形例とを対比すると、非凹溝部14(又は非凹溝部15)の幅aの寸法をそれぞれ同等に設定したならば、断面M3の面積は、断面M1の面積よりも小さくなる。また、凹溝12及び凹溝13の周方向の位置をずらした分、HCが浸透しにくくなるため、よりHCの放出量を低減できる。
【0042】
なお、前記した第一実施形態及び第一変形例では、締結部材取付孔11の外周に断続的に複数の凹溝12を設けたが、締結部材取付孔11の外周の全体に亘って連続する凹溝を設けてもよい。また、凹溝は、フランジ3の表面3a及び裏面3bの少なくとも一方の面に配設するだけでもよい。
【0043】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る樹脂製中空容器について説明する。
図8及び
図9に示すように、第二実施形態に係る樹脂製中空容器1Yは、凹溝22,23の平面形状及び剛体部材30を備えている点が第一実施形態と相違する。第二実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0044】
フランジ3は、締結部材取付孔11と、フランジ3の表面3aに形成された凹溝22と、裏面3bに形成された凹溝23とで構成されている。凹溝22,23は、平面視U字状を呈し、フランジ3の外縁3cの一部から締結部材取付孔11を回って外縁3cの他部まで連続して配設されている。凹溝22,23の断面はいずれも矩形になっている。
【0045】
図9に示すように、フランジ3の裏面3bには、金属製の剛体部材30が形成されている。剛体部材30は、締結部材Bとフランジ3との間に介設されている。剛体部材30には、締結部材Bが挿通する挿通孔30aが形成されている。なお、剛体部材30は、ナットNとフランジ3との間に設けてもよい。
【0046】
第二実施形態のように、凹溝22,23が平面視U字状であっても、第一実施形態と同等の効果を得ることができる。また、第一実施形態であると
図2に示すように、フランジ3の先端側からもHCが回り込み、締結部材取付孔11から放出される可能性があるが、第二実施形態では、凹溝22,23がフランジ3の外縁3cの一部から締結部材取付孔11を回って外縁3cの他部まで連続して配設されているため、フランジ3の先端側から締結部材取付孔11にHCが回り込むのを防ぐことができる。これにより、締結部材取付孔11からのHCの放出をより防ぐことができる。
【0047】
また、第二実施形態の凹溝22,23等の連続した凹溝を設ける場合、フランジ3の断面積が減少するため、締結部材Bの当たり面だけでは凹溝への応力集中が懸念される。しかし、本実施形態のように凹溝22,23の全体をカバーする範囲で剛体部材30を取り付けることにより、フランジ3の強度低下を抑制することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、フランジ3の表面3a及び裏面3bの両方に凹溝を設けたが、片方のみに凹溝を設けるだけでもよい。また、締結部材Bは、本実施形態ではボルトを用いたが、車体Sとフランジ3とを締結可能であれば他の部材を用いてもよい。
【0049】
また、剛体部材30は、必要に応じて第一実施形態や第一変形例で用いてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 樹脂製中空容器
2 容器本体
3 フランジ
3a 表面
3b 裏面
11 締結部材取付孔
12 凹溝
13 凹溝
22 凹溝
23 凹溝
30 剛体部材
101 ピンチオフ部
B 締結部材(ボルト)
S 車体