特許第6184750号(P6184750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼロックス コーポレイションの特許一覧

<>
  • 特許6184750-離型剤を塗布するための装置および方法 図000002
  • 特許6184750-離型剤を塗布するための装置および方法 図000003
  • 特許6184750-離型剤を塗布するための装置および方法 図000004
  • 特許6184750-離型剤を塗布するための装置および方法 図000005
  • 特許6184750-離型剤を塗布するための装置および方法 図000006
  • 特許6184750-離型剤を塗布するための装置および方法 図000007
  • 特許6184750-離型剤を塗布するための装置および方法 図000008
  • 特許6184750-離型剤を塗布するための装置および方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184750
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】離型剤を塗布するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/08 20060101AFI20170814BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20170814BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20170814BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   B05C1/08
   B05D5/00 A
   B05D3/00 B
   B05D1/28
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-111586(P2013-111586)
(22)【出願日】2013年5月28日
(65)【公開番号】特開2013-255913(P2013-255913A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2016年5月26日
(31)【優先権主張番号】13/517,561
(32)【優先日】2012年6月13日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・ルフェーブル
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・マイケル・チャペル
(72)【発明者】
【氏名】ポール・マコンヴィル
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・エドワード・ウィリアムズ
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−168439(JP,A)
【文献】 特開2011−180589(JP,A)
【文献】 特開2007−017784(JP,A)
【文献】 特開平11−219065(JP,A)
【文献】 特開2009−116330(JP,A)
【文献】 特開2002−174976(JP,A)
【文献】 特開2005−043992(JP,A)
【文献】 特開2007−219105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00−21/00
B05D 1/00− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷に有用な装置であって、
第1の表面および第2の表面を有する基板を前進させ、前記基板の前記第1の表面への離型剤の塗布を実施するドナーロールと、
前記ドナーロールに離型剤を塗布する離型剤塗布器と、
離型剤を前記離型剤塗布器に供給するように構成されている、離型剤供給デバイスと、
前記基板に塗布される離型剤の分量を制御するように構成され、前記ドナーロールに塗布された分量の離型剤が前記基板への塗布のために前記ドナーロールに維持されるように調整またはプリセットされ得る、離型剤測定デバイスと、
ドリップトレイであって、余剰の離型剤が前記ドナーロールから当該ドリップトレイへ重力によって送られ得るように、前記離型剤測定デバイスの下方に配置される、ドリップトレイと、を備え、
前記ドナーロールは、圧力が前記ドナーロールと前記基板の前記第1の表面との間にかかるように、前記ドナーロールの外周の少なくとも一部分にわたる張力下で前記基板を収容するよう構成され、
前記離型剤供給デバイスおよび前記離型剤塗布器は、前記基板の前記第1の表面に塗布された1つまたはそれ以上の画像の1つまたはそれ以上の決められた位置に対応する、前記基板の前記第1の表面の1つまたはそれ以上の部分に、選択的に離型剤を塗布するように構成されている、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記離型剤供給デバイスはドリップ管であり、前記ドリップ管は、銅、ポリマー、アルミニウム、およびステンレス鋼のうちの1つまたはそれ以上から成る、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、前記離型剤供給デバイスは、前記基板の前記第1の表面へ塗布される離型剤を前記離型剤塗布器に供給するように構成された少なくとも1つのスプレーノズルを含む、装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、前記離型剤供給デバイスは、複数の穴を備え、その各穴が離型剤を前記離型剤塗布器に滴下によって供給するよう構成されているドリップ管であって、当該ドリップ管の長手方向に沿って位置する複数の穴を通じて、前記基板の前記第1の表面へ塗布される離型剤を前記離型剤塗布器に供給するように構成された、ドリップ管を含む、装置。
【請求項5】
請求項2に記載の装置であって、前記離型剤測定デバイスは、離型剤を前記ドナーロール上に均一に広げるように構成されたブレードである、装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、前記離型剤塗布器は1つまたはそれ以上のローラから成る、装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、前記離型剤塗布器は1つまたはそれ以上の噴霧ジェットから成る、装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置であって、前記基板に両面印刷処理が施され、前記離型剤は、前記基板の前記第1の表面および前記第2の表面に塗布される、装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置であって、さらに、
離型剤を第2の離型剤塗布器に供給するように構成されている第2の離型剤供給デバイスと、
前記基板の前記第2の表面に離型剤を塗布するように構成された第2のドナーロールに塗布された第2の離型剤の分量を制御するように構成された、第2の離型剤測定デバイスと、を備え、
前記第2のドナーロールは、別の圧力が前記第2のドナーロールと前記基板の前記第2の表面との間にかかるように、前記第2のドナーロールの外周の少なくとも一部分にわたる別の張力下で前記基板を収容するように構成され、
前記装置はさらに、第2のドリップトレイであって、余剰の離型剤が当該第2のドリップトレイへ重力によって送られ得るように、前記第2の離型剤測定デバイスの下方に配置される、第2のドリップトレイを備える、装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置であって、前記第2のドナーロールは、前記基板の前記第2の表面に離型剤を塗布する離型剤塗布ニップを形成するように構成されている、装置。
【請求項11】
請求項1に記載の装置であって、前記離型剤は、A4用紙1枚当たり2mg〜A4用紙1枚当たり12mgの割合で塗布される、装置。
【請求項12】
請求項1に記載の装置であって、前記離型剤は、オイルから成り、50cS〜100cSの範囲の動粘性率を有する、装置。
【請求項13】
請求項1に記載の装置であって、前記ドナーロールは、アルミニウム、ポリマー、およびステンレス鋼のうちの1つまたはそれ以上から成る、装置。
【請求項14】
請求項1に記載の装置であって、前記離型剤供給デバイス、前記離型剤塗布器、および前記離型剤測定デバイスは、据え付けられるように構成されたユニットとして実現されている、装置。
【請求項15】
請求項1に記載の装置であって、前記離型剤供給デバイス、前記離型剤塗布器、および前記離型剤測定デバイスは、独立するように構成された可搬型ユニットとして実現されている、装置。
【請求項16】
請求項1に記載の装置であって、前記離型剤測定デバイスは、離型剤を前記ドナーロール上に均一に広げるように構成されたブレードである、装置。
【請求項17】
離型剤を第1の表面および第2の表面を有する基板に塗布する方法であって、前記方法は、
ドナーロールを用いて基板を前進させることで、前記基板の前記第1の表面への離型剤の塗布を実施させることと、
離型剤塗布器を用いて前記ドナーロールに離型剤を塗布することと、
少なくとも部分的に、離型剤供給デバイスに離型剤を前記離型剤塗布器へと滴下によって供給させることと、
前記ドナーロールに塗布された分量の離型剤が前記ドナーロールに維持されるように調整またはプリセットされ得る離型剤測定デバイスを用いて、前記基板に塗布される離型剤の分量を制御することと、
少なくとも部分的に、ドリップトレイを前記離型剤測定デバイスの下方に配置することで、余剰の離型剤が前記ドナーロールから前記ドリップトレイへ重力によって送られ得るようにすることと、を含み、
前記ドナーロールは、圧力が前記ドナーロールと前記基板の前記第1の表面との間にかかるように、前記ドナーロールの外周の少なくとも一部分にわたる張力下で前記基板を収容するよう構成され、
前記離型剤供給デバイスはドリップ管であり、当該ドリップ管の長手方向に沿って設けられた1つまたはそれ以上の穴を通じて、前記基板の前記第1の表面へ塗布される離型剤を前記離型剤塗布器に供給するように構成され、
前記離型剤供給デバイスおよび前記離型剤塗布器は、前記基板の前記第1の表面に塗布された1つまたはそれ以上の画像の1つまたはそれ以上の決められた位置に対応する、前記基板の前記第1の表面の1つまたはそれ以上の部分に、選択的に離型剤を塗布するように構成されている、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記基板に両面印刷処理が施され、前記方法はさらに、
少なくとも部分的に、前記基板の前記第1の表面および前記第2の表面に前記離型剤が塗布されるようにすることと、
少なくとも部分的に、第2の離型剤供給デバイスに離型剤を第2の離型剤塗布器へと滴下によって供給させることと、
少なくとも部分的に、前記基板の前記第2の表面に離型剤を塗布するように構成された第2のドナーロールに塗布される第2の離型剤の分量を、第2の離型剤測定デバイスに制御させることと、を含み、
前記第2のドナーロールは、別の圧力が前記第2のドナーロールと前記基板の前記第2の表面との間にかかるように、前記第2のドナーロールの外周の少なくとも一部分にわたる別の張力下で前記基板を収容するよう構成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、印刷に有用な離型剤を基板に塗布するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷製品製造において、印刷が行われた基板は、多くの場合基板を巻き取るか、または積み重ねることによって仕上げの準備がなされる。多くの場合、下流の印刷処理中、印刷基板からのインクオフセットを防ぐのに十分な離型剤は基板上に残っていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
離型剤を基板に塗布して、基板から印刷処理および/または仕上げ器具の1つ以上の部分へのインクオフセットを防ぐ手法が必要である。
本発明の装置は、印刷に有用な装置であって、第1の表面および第2の表面を有する基板を前進させ、前記基板の前記第1の表面への離型剤の塗布を実施するドナーロールと、前記ドナーロールに離型剤を塗布する離型剤塗布器と、離型剤を前記離型剤塗布器に供給するように構成されている、離型剤供給デバイスと、前記基板に塗布される離型剤の分量を制御するように構成され、前記ドナーロールに塗布された分量の離型剤が前記基板への塗布のために前記ドナーロールに維持されるように調整またはプリセットされ得る、離型剤測定デバイスと、ドリップトレイであって、余剰の離型剤が前記ドナーロールから当該ドリップトレイへ重力によって送られ得るように、前記離型剤測定デバイスの下方に配置される、ドリップトレイと、を備え、前記ドナーロールは、圧力が前記ドナーロールと前記基板の前記第1の表面との間にかかるように、前記ドナーロールの外周の少なくとも一部分にわたる張力下で前記基板を収容するよう構成され、前記離型剤供給デバイスおよび前記離型剤塗布器は、前記基板の前記第1の表面に塗布された1つまたはそれ以上の画像の1つまたはそれ以上の決められた位置に対応する、前記基板の前記第1の表面の1つまたはそれ以上の部分に、選択的に離型剤を塗布するように構成されている。
また、本発明の方法は、離型剤を第1の表面および第2の表面を有する基板に塗布する方法であって、前記方法は、ドナーロールを用いて基板を前進させることで、前記基板の前記第1の表面への離型剤の塗布を実施させることと、離型剤塗布器を用いて前記ドナーロールに離型剤を塗布することと、少なくとも部分的に、離型剤供給デバイスに離型剤を前記離型剤塗布器へと滴下によって供給させることと、前記ドナーロールに塗布された分量の離型剤が前記ドナーロールに維持されるように調整またはプリセットされ得る離型剤測定デバイスを用いて、前記基板に塗布される離型剤の分量を制御することと、少なくとも部分的に、ドリップトレイを前記離型剤測定デバイスの下方に配置することで、余剰の離型剤が前記ドナーロールから前記ドリップトレイへ重力によって送られ得るようにすることと、を含み、前記ドナーロールは、圧力が前記ドナーロールと前記基板の前記第1の表面との間にかかるように、前記ドナーロールの外周の少なくとも一部分にわたる張力下で前記基板を収容するよう構成され、前記離型剤供給デバイスはドリップ管であり、当該ドリップ管の長手方向に沿って設けられた1つまたはそれ以上の穴を通じて、前記基板の前記第1の表面へ塗布される離型剤を前記離型剤塗布器に供給するように構成され、前記離型剤供給デバイスおよび前記離型剤塗布器は、前記基板の前記第1の表面に塗布された1つまたはそれ以上の画像の1つまたはそれ以上の決められた位置に対応する、前記基板の前記第1の表面の1つまたはそれ以上の部分に、選択的に離型剤を塗布するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1図1は、一実施形態による、インクオフセットを防ぐために離型剤を基板に塗布することができるシステムの図である。
図2図2は、一実施形態による、インクオフセットを図示する図である。
図3図3は、一実施形態による、離型剤塗布装置の図である。
図4図4は、一実施形態による、両面印刷用に構成された離型剤塗布装置の図である。
図5図5は、一実施形態による、1つ以上の離型剤塗布装置の下流の仕上げ器具および配置の図である。
図6図6は、一実施形態による、1つ以上の離型剤塗布装置の下流の仕上げ器具および配置の図である。
図7図7は、一実施形態による、インクオフセットを防ぐために離型剤を基板に塗布するプロセスのフローチャートである。
図8図8は、実施形態を実行するために使用され得るチップセットの図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書で使用される離型剤という用語は、印刷基板に塗布されて基板から任意の印刷および/または仕上げ器具へのインクオフセットを防ぎ得る任意の種類のオイル、シリコンベース製品、シリコン混合製品、水混合液、水、液体、粉体、などを指す。例えば、インクオフセットを防ぐという所望の結果を達成するために使用できるオイルの種類は、少量のアミン(例えば、0.5%アミン)とブレンドされたシリコンベースのオイル、またはポリジメチルシロキサン+アミノアルキル基を有するポリジメチルシロキサンとして表されるオイルであってもよく、50cS〜100cS範囲の動粘性率を有する。より詳細には、動粘性率は70cS〜80cSの範囲であってもよい。
【0006】
様々な従来の印刷装置は、多数の異なる選択肢を最大限に活用することによって、印刷プロセス中またはプロセス後に、印刷基板から印刷装置内の様々な部分へのインクオフセットを防ぐ。ここで、選択肢は、1)インク/基板および/またはドラム/ローラの表面温度、2)ドラム/ローラの表面仕上げ、3)インク/基板とドラム/ローラの表面との相対運動の欠落、および4)離型剤の塗布、を制御することを含む。
【0007】
従来のオフライン仕上げ器具は、多くの場合、一部の印刷エンジンのような離型剤塗布デバイスを有さない。したがって、印刷エンジンにおけるように、インクオフセットを防ぐのに役立つ仕上げ器具において、1)インク/基板および/またはドラム/ローラの表面温度、2)ドラム/ローラの表面仕上げ、および3)インク/基板とドラム/ローラの表面との相対運動の欠落、を制御することは難しい。
【0008】
この問題に対処するために、図1のシステム100は、離型剤を基板に塗布して、基板から印刷処理および/または仕上げ器具の1つ以上の部分へのインクオフセットを防ぐ機能を取り入れる。図1に示すように、システム100は印刷システム101、印刷システム離型剤拡散モジュール103、および少なくとも任意の仕上げ器具に入る前に基板107を離型剤で処理するよう構成される離型剤塗布装置105を備える。
【0009】
離型剤塗布装置105は、基板107がロール109の上に巻かれる前であり、かつ印刷システム101がインクを塗布して基板107上に画像を形成するために行われ得る下流の任意の印刷プロセスより前の場所に配置される。例えば、印刷システム101は、例えば印刷局111を使用するオフセット印刷またはインクジェット印刷などの任意の手段を利用して、基板107に画像を塗布してよい。1つ以上の離型剤塗布装置105は、印刷システム101の内部に配置されて、印刷システム101により行われる印刷プロセス後の任意の時点で基板107に離型剤を塗布してもよい。例えば、離型剤塗布装置105は、例えば印刷システム101が2つ以上の印刷局111を有する場合、カラー塗布の合間および/または基板107に画像を形成するためにインクを塗布する様々な段階の合間に離型剤を塗布するよう配置され得る。
【0010】
図1で示される例において、離型剤塗布装置105は、追加の離型剤を印刷システム離型剤拡散モジュール103によって塗布され得る任意の離型剤に追加するか、または印刷システム101が離型剤を塗布しなかったか、あるいは基板が巻かれてロール109を作成する前に印刷システム101によって行われる任意の印刷プロセスの下流の位置で離型剤を塗布するよう構成されていない場合、初めて離型剤を基板107に塗布する。代替的な実施形態において、基板107はロールとしてよりもプレカットシートとして印刷システム101に提供されてもよく、その結果、シートに伸ばされた基板は巻かれるよりも印刷システム101の後端に重ねられる。あるいは、別の実施形態において、印刷システム101は巻かれた基板を受け、基板に画像を塗布するために印刷システム101により行われる印刷プロセスの完了後に重ねておくため、基板107をシートにカットするよう構成されてもよい。
【0011】
少なくとも離型剤塗布装置105は、印刷プロセス全体が完了した後で、かつ基板がロール109を形成する目的で仕上げの準備がされる前、または例えば基板がシートに伸ばされる場合はシートを重ねる前に配置され得る。他の実施形態において、1つ以上の離型剤塗布装置105は、離型剤塗布装置105に組む込まれ得る任意の仕上げ器具の上または間に配置されてもよい。
【0012】
結果として、任意の離型剤塗布装置105は、離型剤を印刷基板に塗布して印刷および/または仕上げ器具をインクオフセットから保護することによって、印刷製品製造プロセスより前に配置され得る印刷および/または仕上げ器具(またはプロセス)に入る前の基板の状態を制御する。離型剤塗布装置105は、離型剤塗布装置105を改良して仕上げ器具に合わせるか、または仕上げ器具を改良して離型剤塗布装置105を収容することによって、または独立型離型剤塗布装置105を使用して基板を離型剤と調節し、任意の仕上げ器具をインクオフセットから保護することによって、仕上げ器具のいずれの構成もほぼ保護するように配置され得る。例えば、独立型または組込型の離型剤塗布装置105がオフラインの仕上げ器具の入口側に付属されるか、または正面に置かれてもよく、かつこの例において、離型剤の層を基板107の第1の側107a、第2の側107b、または両側107a、107bに塗布するよう構成されてもよい。
【0013】
任意の仕上げ器具によって行われるプロセスの直前に基板107に塗布された新しい離型剤は、インクが付着した基板107と接触する仕上げ器具内で任意の表面へのインクオフセットから画像を保護する。離型剤塗布装置105を1つの仕上げ器具の入口側に配置する代わりに、または配置することに加えて、離型剤塗布装置105は、次の仕上げ器具がインクオフセットから保護され得るように1つの仕上げ器具の出口側に配置されてもよい。
【0014】
離型剤塗布装置105は、片面印刷基板107の場合、離型剤を基板107の片側に塗布するよう構成されてもよい。片面印刷においては、離型剤を印刷基板の印刷側に塗布する必要があるのみであろう。他の実施形態において、離型剤塗布装置105は、画像を基板107の2つの側に印刷する両面印刷の場合、離型剤を印刷基板の2つの側に選択的に塗布するよう構成され得る。両面印刷用に構成された場合、単一の離型剤塗布装置105が基板の第1の側107aおよび第2の側107bの両方を処理するよう構成されてもよく、または複数の離型剤塗布装置105が離型剤を基板107に塗布するために使用されてもよい。例えば、離型剤を印刷基板107の第1の側107aおよび第2の側107bの両方に塗布する必要があり得るので、第1の離型剤塗布装置105は第1の側107aを処理するために提供され、かつ第2の離型剤塗布装置105は反転されて、基板107の第2の側107bを離型剤で処理するために提供されてもよい。
【0015】
インクオフセット動作は、基板107が離型剤で処理されたばかりであるか否かに大きく依存して変化することが証拠により示される。インラインの仕上げプロセスに即座に送り込まれる処理されたばかりの画像は、事前に処理されて置いておかれ(1時間より長い時間か、または例えば数分間だけでも)、その後オフラインの仕上げプロセスに送り込まれる画像よりも、インクオフセットに対してより強固である。結果として、印刷システム離型剤拡散モジュール103によって塗布される残留離型剤のキャリーアウトが少なく(すなわち、A4用紙に2mg未満の離型剤の残留量)、かつ基板が例えば1日より長い間置いておかれてもよい場合、基板107のインク領域は一般的に、例えば様々な種類の仕上げ器具において固定バッフルに対する大量のインクオフセットが生じる原因となる。しかし、印刷システム離型剤拡散モジュール103によって塗布される残留離型剤のオイルのキャリーアウトが多い(すなわち、A4用紙に約7〜8mgの離型剤の残留量)場合、一般的に、長時間にわたる基板107上への画像の印刷、および様々な仕上げ器具を介して印刷基板107を処理するための印刷製品の仕上げにおける、仕上げ器具上でのインクオフセットの証拠はない。
【0016】
印刷システムが自己の印刷処理のために離型剤を塗布するよう構成され得る一方で、残留離型剤はインクオフセット保護の信頼できない発生源である。加えて、印刷システム離型剤拡散モジュール103によって基板に塗布される離型剤の出力が増えることによりオイルのキャリーアウトが多くなり、さらに残留離型剤のキャリーアウトが多くなることを可能にし得るが、これには印刷システム101により行われる印刷プロセスを介して基板107に過剰の離型剤が残り、その後印刷プロセスが完了した後に基板107に残る原因となることを期待して、印刷システム101内の基板107に離型剤を過剰に塗布することが必要であろう。しかしながら、このような行いは多くの理由により非実用的である。例えば、印刷システム離型剤拡散モジュール103によって基板107を離型剤で浸すことは、過剰な離型剤を塗布することによって離型剤を廃棄することになるため、高くつく。加えて、印刷プロセスの最中または前に過多の離型剤を塗布することは、インク/画像付着および/または吸収に影響を及ぼすであろう印刷プロセス中に、離型剤が基板107を浸すか、または基板107全体を不均一に移動し得るため、画像品質に影響を及ぼす可能性がある。
【0017】
したがって、廃棄を回避して印刷製品製造プロセスにおいて離型剤の塗布をより環境に優しいステップにするために、および画像品質の問題を回避するために、離型剤塗布装置105は、印刷製品製造プロセスにおいて適切な時に離型剤を基板107に塗布するよう構成される。つまり、1つ以上の離型剤塗布装置105が任意の印刷および/または仕上げ器具に関して印刷製品製造プロセス全体のどこに配置されるかに応じて、インクオフセットからの保護が必要であり得る印刷プロセス下流の任意の選択された印刷器具に印刷基板107が入る前か、または巻取り器、ダイカッター、バッファ、スタッカー、接着剤など、あるいはそれらの任意の組み合わせであってもよい仕上げ器具に入る前である。
【0018】
加えて、1つ以上の廃棄および過飽和を回避するために、離型剤塗布装置105は、1つ以上の制御された量の離型剤を基板107に選択的に塗布するよう構成される。例えば、一実施形態において、離型剤塗布装置105は、A4用紙に2mg〜A4用紙に12mgの離型剤塗布装置の構成に応じて、固定または調整可能であり得る割合で離型剤を選択的に塗布するよう構成される。別の実施形態において、離型剤塗布装置105は、A4用紙に4mg〜A4用紙に10mgの離型剤塗布装置の構成に応じて、固定または調整可能であり得る割合で離型剤を選択的に塗布するよう構成される。別の実施形態において、離型剤塗布装置105は、A4用紙に7mg〜A4用紙に8mgの離型剤塗布装置の構成に応じて、固定または調整可能であり得る割合で離型剤を選択的に塗布するよう構成される。
【0019】
選択され制御された量の離型剤を塗布することによって、基板を離型剤に浸したり残留量を当てにして残したりすることなく、離型剤塗布装置105は最適な量の離型剤を基板107に塗布して様々な印刷および/または仕上げ器具に対するインクオフセットを防ぐ。加えて、基板が1つの仕上げ器具にまさに入ろうとする時など、適切な時に離型剤を塗布することによって、離型剤が徐々に基板107の周囲へ移動する時にもたらされる移動効果が軽減される。
【0020】
離型剤塗布装置105は、基板の画像が検出される部分にのみ離型剤を選択的に塗布するために、様々なセンサまたはユーザ制御によって基板107の画像の位置を決定するよう構成され得る。例えば、離型剤塗布装置105は、画像が基板107のどちら側に存在するかを判定するよう構成されてもよい。例えば、基板107が2つの側を有する場合、離型剤塗布装置105は、画像が第1の側107aに存在し、第2の側107bに存在しない(または第2の側107bに存在し、第1の側107aに存在しない)ことを判定してもよく、これにより離型剤はこの画像を有する基板107の第1の側107a(または、第2の側が画像を有する場合は第2の側170b)にのみ塗布される。離型剤塗布装置105は、検出された画像を有する基板107の側107a/107bの1つ以上の部分にのみ離型剤を塗布する結果となってもよく、または離型剤塗布装置105は、例えば検出された画像を有する基板107の側全体に離型剤を選択的に塗布する結果となってもよい。検出された画像のために離型剤が塗布される基板107の部分は、画像自体のトレース、離型剤の過多使用を避けるため画像よりわずかに小さい部分、または画像よりわずかに大きいが、画像が塗布される基板107の表面全体の領域より小さい部分に制限され得る。例えば、その部分は、画像が内部に位置する正方形、あるいは画像が塗布される基板107の表面の扇形など幾何学的な形であってもよく、またはその部分は、全体的に画像を覆い、かつ離型剤で形成される画像の周囲に境界を有する画像をトレースした形であってもよい。
【0021】
代わりに、離型剤塗布装置105は、画像が基板107の両側107a/107bで検出されたかどうかにかかわらず、離型剤を基板107の両側107a/107bに塗布するようにされてもよい。あるいは、基板107が両面印刷に従う場合、すなわち画像を基板107の第1の側および第2の側の両方に印刷する場合、離型剤塗布装置105は、独立してまたは1つ以上の離型剤塗布装置105と連結して、基板107の1つ以上の第1の側107aおよび第2の側107b両方、基板107の第1の側および第2の側両方の1つ以上の選択部分、基板107の第1の側107aおよび第2の側107b両方の1つ以上の側全体、またはそれらの任意の組み合わせに選択的に離型剤を塗布するよう構成されてもよい。上記の例が第1の側107aおよび第2の側107bを有する基板107を指す一方で、基板107は画像が印刷され得る任意の数の側を有してもよく、任意の数の離型剤塗布装置105が、画像が印刷、検出され得る任意の数の側か、または基板107の特定の側が印刷されない場合であっても、離型剤を塗布するために使用され得ることを理解すべきである。
【0022】
上述され、より詳細には以下に図3で示すように、離型剤塗布装置105は、例えば離型剤供給デバイス、ベルトとして構成されてもよいハードドナーロールなどのローラ、および測定された量の離型剤をローラに供給する測定デバイスを含んでもよい。
【0023】
1つ以上の1つ以上の実施形態において、ローラは、基板107が少なくともローラの外周部分にわたって張力下にあるように、シートに伸ばされてもロール紙形状であっても基板107を収容するよう構成され得る。例えば、基板107は、その外周約180°にわたってローラと接触してもよく、または基板107が張力下にある時にローラと接触する基板107の表面にわたって離型剤が塗布および拡散されるのに適当な任意の量が接触してもよい。基板107が受ける張力は、例えば、ローラとローラに接触する基板107の表面との間にかかる圧力の原因となり得る。
【0024】
様々な実施形態によると、ドナーロールの外周は、十分な離型剤の塗布をもたらすために基板107が離型剤塗布装置105を通って進み得る速度と直接的な関係を有する。例えば、ドナーロールが12インチの外周を有し、かつ基板107が外周の180°にわたってドナーロールの周囲を包む場合、基板107は離型剤塗布のためにドナーロールの外周の6インチと接触する。このような構成において、基板107は約500fpmの割合で離型剤塗布装置を通って進むことができる。代わりに、ドナーロールがより大きい外周を有する場合、ドナーロールの周囲を包む基板の量が減るか、または基板107が離型剤塗布装置105を通って進む速度が増す可能性がある。ドナーロールの外周が減る場合も同じことが起こり、基板107が十分な期間ローラと接触して離型剤を塗布できるように、基板107が離型剤塗布装置を通って進む速度が低下する可能性があり、かつ基板107がローラの周囲を包む量が増える可能性がある。ドナーロールは基板107の全体的な動きの方向を変えるために使用されてもよく、結果的に既に提案したものより多いまたは少ない量で基板107と接触してもよい。
【0025】
1つ以上の実施形態において、離型剤供給デバイスは、離型剤が離型剤塗布器に供給され得るようにドリップ管の長さに沿って設けられる1つ以上の穴を有する任意のドリップ管を含んでもよい。離型剤供給デバイスがドリップ管である場合、ドリップ管は、例えば銅、ポリマー、アルミニウム、およびステンレス鋼で構成されてもよい。代替の実施形態において、離型剤供給デバイスは、離型剤を離型剤塗布器に供給するよう構成される1つ以上の一連の噴霧器であってもよい。
【0026】
例えば、離型剤塗布器は、離型剤をハードドナーロールに塗布するソフトまたはハードローラであってもよい。代わりに、離型剤供給デバイスは、離型剤をドナーロールに塗布する一連の噴霧器または噴出器であってもよい。
【0027】
離型剤塗布器が離型剤をドナーロールへ塗布すると、離型剤測定デバイスは、基板が張力下でドナーロールの外周と接触する時、ドナーロールにより基板107へ塗布される離型剤の量を制御するよう構成される。例えば、離型剤測定デバイスは、所定量の離型剤が基板107に塗布されるようにするブレードであってもよい。
【0028】
様々な実施形態によると、ドナーロールは、所望の表面粗度および耐久性を与える目的で陽極酸化被膜(例えば、「ハードコート」または「ハードルーブ」)されたアルミニウムドラム、セラミック、他の金属、プラスチック、炭素繊維などのいずれかであってよい。
【0029】
様々な実施形態によると、離型剤測定デバイスが上述したようなブレードである場合、ブレードは、順応性を与えるために所定の厚さ(例えば、2mm、自由長において7mmなど)のポリウレタンゴムまたは任意の素材の他の塗装膜で覆われた任意の種類の鋼、または任意の固体ポリウレタン、ポリマー、混合物、例えばドナーロールの消耗を軽減するためにドナーロールの金属よりも柔らかい他の金属で作られてもよい。
【0030】
代替の実施形態において、離型剤塗布装置105は、基板107が通過し得るニップを形成するドナーロールの反対側にドナーロールと別のローラとを含むニップされたローラ対を含んでもよい。上述したように、基板107がドナーロールの周囲に包まれている間、離型剤はドナーロールの表面に対して測定され基板107に塗布され得るが、1つ以上の実施形態において、離型剤を基板107の複数の側に塗布するために、離型剤はドナーロールおよび別のローラの両方に対して測定され得ることに留意すべきである。
【0031】
様々な実施形態によると、例えばドナーロールまたはニップされたローラ対の温度状態は、周辺環境より暑い必要はない。結果として、ローラが温度制御される必要はない。基板107に印加される圧力は、基板107への離型剤の拡散を可能とするのに十分であればよいだけである。しかし、他の実施形態において、離型剤塗布装置105の任意のロールは、離型剤の流動速度または拡散を高めるため、またはローラを洗浄するために加熱されてもよく、かつ/または測定ユニットは、例えば離型剤の流動速度または拡散を高めるため、または洗浄のために離型剤を加熱するよう構成されてもよい。
【0032】
例えば、一実施形態において、ドナーロールの周囲の基板107の張力による圧力は、固定または可変であり得る。圧力は、0.1psi〜1,500psiの範囲であり得る。別の実施形態において、圧力は100psi〜1,000psiの範囲であり得る。別の実施形態において、圧力は200psi〜500psiの範囲であり得る。印加される圧力は、上述した範囲内で任意の量になるよう制御されるか、または単に選択された範囲または所定の範囲内に圧力を印加するよう制御されてもよく、かつ基板の1つ以上の選択された部分または全体表面の側に制限されてもよい。
【0033】
図2は、十分な量の離型剤で覆われた仕上げ処理のために通過する基板107を有する1つの仕上げ器具201と、それほど覆われていない器具とを比較した図である。基板107は、基板107の一方の側に印刷された画像203を有する。印刷基板107はいかなる離型剤にも覆われていないか、または例えばA4用紙に2mgより少ない、不十分な量の離型剤で覆われており、かつ画像205の一部分は仕上げ器具201にインクオフセット207として残される。インクオフセット207は洗浄が必要な汚れおよび/または仕上げ器具への潜在的な損傷の原因となるだけでなく、画像203への画像関連不良の原因ともなり得る。例えば、画像205の一部分が仕上げ器具201に取られて、例えば画像203が不完全に見えたり、または望まない仕上がりとなったりする可能性がある。加えて、インクオフセット207は、仕上げ器具201を通過する他の基板107の一部分に転写される可能性がある。インクオフセット207が転写されると、例えばストリーキングを引き起こしたり、画像203の印刷仕上げを台無しにしたり、および/または単に望まないインクで画像203を覆ったりすることによって、後続の基板107に印刷される画像203を台無しにする可能性がある。さらに、インクオフセット207は、仕上げ器具201を通って引き込まれるので、後続の基板107の一部分によって仕上げ器具201の他の部分にも転写され得る。
【0034】
しかし、離型剤209が上述した離型剤塗布装置105によって塗布され、画像203を有する基板107の少なくとも決められた部分を、限定はされないが例えばA4用紙に7〜8mgなどの上述した量で覆う時、仕上げ器具201へのインクオフセット207がある印刷製品の長期間にわたる証拠はない。
【0035】
図3は、一実施形態による離型剤塗布装置105の図である。示されるように、離型剤塗布装置105はドナーロール301、離型剤供給デバイス303、離型剤塗布器305、および離型剤測定デバイス307を有する。
【0036】
1つ以上の実施形態において、ドナーロール301は離型剤塗布器305から離型剤を受ける。例えば、離型剤塗布器305は、泡ロール、ハードロール、または離型剤供給デバイス303から供給される離型剤を有する一連の噴霧ノズルまたはジェットであってもよい。離型剤供給デバイス303は、その長さに沿って1つ以上の穴を有する任意のドリップ管であってもよく、または離型剤を離型剤塗布器305に供給する一連の1つ以上の噴霧器またはジェットであってもよく、または離型剤塗布器305の種類によっては単に供給管であってもよい。
【0037】
1つ以上の実施形態において、離型剤測定デバイス307は、上述したようにブレードであってもよく、または基板107に塗布される離型剤の量を制御する他の任意の手段であってもよい。測定デバイス307がブレードである場合、例えば測定デバイス307は、ドナーロール301に塗布される一定量の離型剤が基板107への塗布のためにドナーロール301に残るよう調整またはプリセットされてもよく、かつ残った離型剤は経路311に沿ってドリップトレイ309へ再び案内されてもよい。ドリップトレイ309は、例えば離型剤を離型剤塗布器305の方へそらしてもよく、または例えば、離型剤塗布器305に供給するために使用できるよう離型剤を蓄積させてもよい。
【0038】
1つ以上の実施形態において、離型剤供給デバイス303、離型剤塗布器305、および離型剤測定デバイス307は、離型剤供給ユニット313として1つに統合されてもよい。離型剤供給ユニット313は、離型剤をドナーロール301に塗布できる任意の場所に配置され得る。例えば、離型剤供給ユニット313は、余分な離型剤が重力でドリップトレイ309に送られ得るように、ドリップトレイ309が離型剤測定デバイスの下に置かれるなどの方法で配置されてもよい。しかしながら、離型剤供給ユニット313は、重力駆動の余剰離型剤経路が作成されるか否かにかかわらず、どの場所に配置されてもよい。
【0039】
様々な実施形態によると、基板107は離型剤塗布装置105の中に送り込まれ、ドナーロール301の周囲の張力下で包まれる。この例において、基板107はその外周約180°にわたってドナーロール301と接触する。基板107とドナーロール301とが接触することにより、ドナーロール301と接触する基板107の表面上に離型剤を十分に塗布し、拡散することができる。基板107の張力は、ドナーロール301から基板107に離型剤を塗布するために、基板107とドナーロール301との間にかかる圧力を生じさせる。約180°にわたってドナーロール301と接触するよう示されているが、基板107は、例えば離型剤塗布装置105を通って基板107が進む速度、離型剤の塗布に続いて基板107が送り込まれる所望の方向、およびドナーロール301の外周の大きさなどに基づいて変化し得る、その外周の任意の割合にわたってドナーロール301と接触してもよい。この実施形態において、180°にわたってドナーロール301と接触することにより、例えば基板107の移動の方向を180°変化させることができる。
【0040】
上述したように、ドナーロール301は所望の表面粗度および耐久性を与える目的で陽極酸化被膜(例えば、「ハードコート」または「ハードルーブ」)されたアルミニウムドラム、セラミック、他の金属、プラスチック、炭素繊維などのいずれかであってよい。代わりに、ドナーロール301は、例示したドナーロールと同様の方法で離型剤を基板107に塗布するよう構成されるベルトに置き換わってもよい。
【0041】
1つ以上の実施形態において、上述したように、測定デバイス307は、所定の厚さ(例えば、2mm、自由長において7mmなど)のポリウレタンゴムまたは任意の素材の他の塗装膜で覆われた任意の種類の鋼、または任意の固体ポリマー、ポリウレタン、混合物、ドナーロール301の金属よりも柔らかい他の金属、炭素繊維、またはドナーロール301の消耗を軽減し得る任意の素材あるいは素材の組み合わせで作られてもよい。
【0042】
図4は、両面印刷基板107を収容するためにサブ離型剤塗布装置105aおよび105bを有する離型剤塗布装置105の構成の例を示す図である。この例において、サブ離型剤塗布装置105a/105bは、離型剤を基板107の1つ以上の側に独立して塗布するよう構成されるわけではないかもしれない。結果として、離型剤を基板の第1の側および第2の側の両方に塗布できるようにするため、片面離型剤塗布装置105aは、別の反転された片面離型剤塗布装置105bと一列に置かれる。この配置は、サブ離型剤塗布装置105aおよびサブ離型剤塗布装置105bの両方を備える全体塗布装置105の内側であってもよく、または離型剤を基板107の特定の側に塗布しやすくする2つの別個の離型剤塗布装置105によるものであってもよい。
【0043】
例えば、サブ離型剤塗布装置105aは離型剤を基板107の表面107aに塗布するよう構成され、一方でサブ離型剤塗布装置105bは離型剤を基板107の表面107bに塗布するよう構成される。
【0044】
図示されるように、各サブ離型剤塗布装置105aおよび105bは、個別の離型剤供給ユニット313aおよび313bを有する。上述したように、離型剤供給ユニット313は、離型剤をドナーロール301に塗布できる任意の場所に配置され得る。結果として、離型剤供給ユニット313aおよび313bは、上述したのと同じ方法で配置され得る。
【0045】
この例において、サブ離型剤塗布装置105aおよび105bは、基板107の両表面107a/107bが離型剤で覆われ、基板107が離型剤塗布装置105へ同じ方向に出入りするように配置される。しかしながら、サブ離型剤塗布装置105aおよび105bは、基板107の移動方向が離型剤の塗布および/または基板107の処理の助けになり得る任意の方向に変化されるよう配置され得る。
【0046】
図示されるような重なり合ったサブ離型剤塗布装置105a/105bを有することの1つの利点は、このような配置が、例えば印刷設備において制限され得る設置面積を節約できることである。
【0047】
1つ以上の代替的な実施形態において、サブ離型剤塗布装置105aまたは105bの一方はハードドナーロールまたは適合ドナーロールに置換されてもよく、置換されたロールは残りのサブ離型剤装置のドナーロールとニップされたローラ対を形成する。結果として、ニップされたローラ対により、残りのサブ離型剤塗布装置が離型剤を塗布しない方の表面107aまたは表面107bへの離型剤の塗布が可能となる。
【0048】
図5は、離型剤塗布装置105の選択的な配置図である。任意の数の離型剤塗布装置105が、印刷製品製造プロセスにわたって任意の場所に配置され得る。例えば、離型剤塗布装置105は、例えば印刷システム101に直接搭載されてもよく、印刷システム101と、印刷システム101の一部であるか、または1つ以上の別個の仕上げ器具201であってもよい201aとして図示される巻取り器および/または巻戻し器との間に、独立型離型剤塗布装置105として配置されてもよく、巻取り器/巻戻し器201aに直接搭載されてもよく、または巻取り器/巻戻し器201aと他の仕上げ器具201b、201c、201dとの間に独立型離型剤塗布装置105として配置されてもよい。この例では、仕上げ器具201bはバッファであり、201cはカッターであり、かつ201dはスタッカーである。仕上げ器具201a、201b、201c、および201dが図示されているが、任意の数の仕上げ器具201が印刷製品製造プロセス中に使用および/または保護されるために利用でき得ることに留意されたい。
【0049】
巻取り器/巻戻し器201aは単一のエンティティとして図示されているが、単一のエンティティであってもよく、または2つの別個の仕上げ器具201であって、例えばロール109が取り外されて、その後ロール109が巻戻し器201aによって巻き戻される時、仕上げの前にしばらく保管される場合、別の時間に作動されてもよい。巻取り器/巻戻し器201aに搭載される場合、離型剤塗布装置105は、例えば巻取り器/巻戻し器201aの表面を保護するために、基板が巻取り器/巻戻し器201の任意の表面と接触する前の位置に搭載され得る。代わりに、またはこのような配置に加えて、離型剤塗布装置105は巻戻し器201aの出力端に搭載されてもよく、例えば基板107が、例えば印刷製品製造プロセスにおいて巻取り器/巻戻し器201aの下流で他の任意の仕上げ器具201b、201c、および201dに送り込まれる前に離型剤を塗布してもよい。
【0050】
代わりに、印刷システム101は基板107のシートを収容するよう構成されてもよく、またはロールされた基板107を、基板107が印刷システム101の出力側に積み重ねられるようにシートにカットするよう構成されてもよい。結果として、巻取り器/巻戻し器201aは、結果的に離型剤塗布装置105と適合し得るスタッカーに置き換えられてもよい。
【0051】
図6は、1つ以上の離型剤塗布装置105の他の代替的な配置図である。上述したように、離型剤塗布装置105は、独立型装置など多くの形状を採用することができ、一部の実施形態において、任意の仕上げ器具201への組み込みに適応可能であってもよい。例えば、離型剤塗布装置105の搭載が統合またはコストの面から禁止される巻取り器/巻戻し器201aの場合、1つ以上の離型剤塗布装置105は、他の仕上げ器具201b、201c、および201dのいずれかに搭載されてもよく、または独立型装置として、巻取り器/巻戻し器201aの後ろであるが、図示されるような一列に接続されるか、またはされておれず、かつ機器間で動作の合間に間隔および/またはタイミングを有し得る、他の仕上げ器具201の前または間ではない場所に置かれてもよい。しかしながら、この構成は巻取り器/巻戻し器201aの構成要素をインクオフセットのリスクから保護しない。しかしながら、どちらの概念もオフライン仕上げのインクオフセットを軽減するために何もしないよりははるかによい。この例では、仕上げ器具201bはバッファであり、201cはカッターであり、かつ201dはスタッカーである。仕上げ器具201a、201b、201c、および201dが図示されているが、任意の数の仕上げ器具201が印刷製品製造プロセス間に使用および/または保護されるために利用でき得ることに留意されたい。
【0052】
図7は、一実施形態に従って、基板から印刷処理および/または仕上げ器具の1つ以上の部分へのインクオフセットを防ぐために離型剤を基板に塗布するプロセスのフローチャートである。一実施形態において、離型剤塗布装置105は、例えば図8に示すようなプロセッサおよびメモリを含むチップセットで実行されるコンピュータ読取可能コードを利用することによってプロセス700を行う。
【0053】
ステップ701において、第1の表面107aおよび第2の表面107bを有する上述された基板107が提供され、離型剤供給デバイス303などの離型剤供給デバイスは、上述したように離型剤を離型剤塗布器305に供給する。その後、ステップ703において、離型剤測定デバイス307は、離型剤を基板107の第1の表面107aに塗布するよう構成されるドナーロール301に塗布される離型剤の量を制御する。上述したように、ドナーロール301は、圧力がローラと基板107bの第1の表面107aとの間にかかるように、少なくともローラの外周部分にわたる張力下で基板107を収容するよう構成されるローラである。
【0054】
プロセスはステップ705へと続き、離型剤がドナーロール301によって基板107の第1の表面107aに塗布される。その後、ステップ707において、離型剤塗布装置105は基板107が両面印刷プロセスに従うことを決定し得る。結果として、プロセスはステップ709へと続き、第2の離型剤供給デバイスが別の量の離型剤を第2の離型剤塗布器へ供給する。その後、ステップ711において、第2の離型剤測定デバイスは、第2の量の離型剤を基板107の第1の表面107aに塗布するよう構成される第2のドナーロールに塗布される離型剤の第2の量を制御する。離型剤の第2の量は、上述した基板の第1の表面に塗布されるのと同じであってもよく、または異なっていてもよい。上述したように、第2のドナーロールは、第2の圧力が第2のローラと基板の第2の表面107bとの間にかかるように、第2のローラの少なくとも外周部分にわたって、ドナーロール301が基板107を収容する張力と同じであってもよく、または同じでなくてもよい別の張力下で、基板107を収容するよう構成されるローラである。
【0055】
その後、ステップ713において、離型剤は第2のドナーロールによって基板107の第2の表面107bに塗布される。
【0056】
第2の離型剤供給デバイス、第2の離型剤塗布器、第2の離型剤測定デバイス、および第2のローラは、例えば上述したサブ離型剤塗布装置105bとして統合された、例えば離型剤供給デバイス303、離型剤塗布器305、離型剤測定デバイス307、およびドナーロール301とすべて同じであるか、または同様の変形体であってもよい。
【0057】
図8は、実施形態が実行され得るチップセットまたはチップ800を示す。チップセット800は、本明細書で説明したように、基板から印刷処理および/または仕上げ器具の1つ以上の部分へのインクオフセットを防ぐために離型剤を基板に塗布するようプログラムされ、例えばバス801、プロセッサ803、メモリ805、DSP807、およびASIC809の構成要素を含んでもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8