(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸筒の内部に筆記体を軸方向に移動可能に収容し、前記筆記体の内部に熱変色性インキを収容し、前記筆記体の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先を設け、前記軸筒の側壁に軸方向に延びるスライド孔を設け、前記スライド孔より操作部を径方向外方に突出させ、前記操作部を前記スライド孔に沿って軸方向に移動可能に構成し、前記操作部を前方にスライド操作することにより前記筆記体をペン先没入状態からペン先突出状態にさせ、前記軸筒の後端部に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な低摩耗性の弾性材料からなる摩擦部を設けた熱変色性筆記具であって、ペン先没入状態における前記操作部の前方への移動を阻止するロック装置を、前記摩擦部より前方の軸筒外面に設け、前記ロック装置が、一方が前記操作部に取り付けられ且つ他方が軸筒の外面の係合部に係脱自在に構成されるロック部材を備えることを特徴とする熱変色性筆記具。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1乃至
図5に本発明の実施の形態を示す。
【0019】
<第1の実施の形態>
図1及び
図5に本発明の第1の実施の形態を示す。
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、軸筒2と、該軸筒2内に収容される筆記体3と、該筆記体3のペン先31を軸筒2の前端孔21より出没自在にさせる出没機構と、軸筒2の側壁より径方向外方に突出された操作部4と、ペン先没入状態における前記操作部4の前方への移動を阻止するロック装置と、軸筒2の後端部外面に設けた摩擦部7とを備える。
【0020】
・筆記体
前記筆記体3は、ペン先31と、該ペン先31が前端開口部に圧入固着されたインキ収容管32と、該インキ収容管32内に充填される熱変色性インキ33と、該熱変色性インキ33の後端に充填され且つ該熱変色性インキ33の消費に伴い前進する追従体34(例えば高粘度流体)とからなる。
【0021】
前記ペン先31は、例えば、前端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンチップのみからなる構成、または前記ボールペンチップの後部外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーからなる構成のいずれであってもよい。また、前記インキ収容管32の後端開口部に、インキ収容管32と外部とが通気可能な通気孔を備えた尾栓が取り付けられる。前記ペン先31の内部には、前端のボールを前方に押圧するスプリングが収容される。前記スプリングは、圧縮コイルスプリングの前端部にロッド部を備えた構成であり、前記ロッド部の前端がボール後面に接触している。非筆記時、前記スプリングの前方付勢によりボールがボールペンチップ前端の内向きの前端縁部内面に密接され、ペン先31の前端からのインキの漏出及びインキの蒸発を防止できる。
【0022】
・軸筒
前記軸筒2は、先細円筒状の前軸2aと、該前軸2aの後端部に連結される円筒状の中間軸2bと、該中間軸2bの後端部に連結される円筒状の後軸2cとからなる。前記軸筒2側壁(例えば中間軸2bの側壁及び後軸2cの側壁)には、軸方向に延びるスライド孔22が形成される。前記軸筒2の後端(即ち後軸2cの後端)には、取付孔23が軸方向に貫設される。前記取付孔23に弾性材料からなる摩擦部7が圧入嵌合される。前記摩擦部7は、前記操作部4の軸方向の移動に連動せず、後軸2c(軸筒2)の後端外面に固定される。前記摩擦部7は、操作部4と独立して設けられる。
【0023】
・出没機構
前記出没機構は、回転カム機構を用いたサイドスライド式出没機構である。前記出没機構は、中間軸2b内面に形成されたカム部と、該カム部に係合し且つ筆記体3の後端に当接する回転部材5と、該回転部材5に係合し且つスライド孔22より径方向外方に突出する操作部4と、軸筒2内に収容され且つ筆記体3を後方に付勢する弾発体6(例えば圧縮コイルスプリング)とからなる。本実施の形態の出没機構は、ペン先突出操作及びペン先没入操作のいずれもが操作部4を前方にスライド操作するダブルノック式である。前記回転部材5は合成樹脂(例えばポリアセタール樹脂)の成形体により得られる。
【0024】
前記カム部は、前方に突出する鋸歯状の複数のカム歯と、該カム歯間に形成される、軸方向に延びる複数のカム溝とを備える。前記回転部材5は、その外面に軸方向に延びる複数本(例えば4本)の突条を備え、該突条が、カム部のカム歯及びカム部のカム溝と係合される。前記操作部4の軸部43の前端には、回転部材5の突条の後端と係合するカム歯が一体または別部材の取り付けにより形成される。
【0025】
・操作部
前記操作部4は、軸筒2側壁の軸方向に延びるスライド孔22より径方向外方に突出される基部41と、該基部41より前方に連設されるクリップ部42と、該基部41より連設され且つ軸筒2内に軸方向に移動可能に収容される軸部43と、を備える。前記クリップ部42は、ポケット等の衣服を挟持可能である。前記操作部4は、合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)の成形体により得られる。前記クリップ部42の裏面(内面)に玉部44が突設される。前記基部41と前記クリップ部42、前記基部41と前記軸部43、前記クリップ部42と前記玉部44のそれぞれは、一部材により一体に形成されるかまたは二分材の組立により形成される。
【0026】
前記操作部4の基部41が前記スライド孔22に沿って軸方向に移動可能である。前記操作部4を前方に押圧操作することによって、筆記体3のペン先31が軸筒2の前端孔21から出没自在に構成される。
【0027】
・ロック装置
前記ロック装置は、操作部4に取り付けられたロック部材8と、該ロック部材8と係脱自在の、軸筒2外面に設けた係合部9とからなる。前記係合部9は、径方向外方に突出する凸部からなる。前記ロック部材8は、コ字状の線状体からなり、その一端が操作部4に回動自在に取り付けられ、その他端が係合部9に係脱自在となる。前記係合部9は、摩擦部7より前方の軸筒2外面に突設される。
【0028】
前記ロック装置のロック部材8が軸筒2の係合部9と係合状態にあるとき、前記操作部4の前方移動が阻止され、一方、前記ロック装置のロック部材8と軸筒2の係合部9との係合が解除された状態にあるとき、前記操作部4の前方移動が可能となる。
【0029】
・ペン先の出没
ペン先没入状態から操作部4を前方に、弾発体6による後方付勢に抗してスライド操作すると、操作部4の軸部43のカム歯によって回転部材5が前方に押圧され、前記回転部材5の突条がカム溝に沿って前方に移動するに伴って、前記回転部材5が筆記体3の後端を前方に押圧し、ペン先31が前端孔21より外部に突出される。このとき、前記軸部43のカム歯と前記回転部材5の突条との当接によって回転部材5がカム部に対して一定角度だけ回転する。それにより、前記回転部材5の突条がカム部のカム歯に係合され、ペン先突出状態が維持される。
【0030】
ペン先突出状態から操作部4を前方にスライド操作すると、操作部4の軸部43が回転部材5を前方に押圧し、前記軸部43のカム歯と前記回転部材5の突条との当接によって回転部材5がカム部に対して一定角度だけ回転する。それによって、前記突条とカム部のカム歯との係合状態が解除され、弾発体6による後方付勢により、前記突条がカム部のカム溝に沿って後方に移動する。前記回転部材5が後方に移動することに伴って、筆記体3が後方に移動し、ペン先没入状態となる。
【0031】
・摩擦部
本実施の形態において、前記摩擦部7を構成する弾性材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。前記摩擦部7を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)からなるものよりも、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料からなることが好ましい。また、前記摩擦部7は、軸筒2の後端部外面に少なくとも設ければよく、例えば、軸筒2の後端部外面もしくは後軸2cの後端部外面に弾性材料よりなる摩擦部7を圧入、係合、螺合、嵌合、接着、2色成形等によって固着する構成、または軸筒2の全体もしくは後軸2cの全体が弾性材料により一体に形成される構成が挙げられる。
【0032】
・熱変色性インキ
本実施の形態において、前記熱変色性インキ33は、可逆熱変色性インキが好ましい。前記可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、または、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。
【0033】
また、前記可逆熱変色性インキに含有される色材は、従来より公知の(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた可逆熱変色性顔料が好適に用いられる。
【0034】
本実施の形態では、
図18に示すように、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t
1)以下の低温域での発色状態、または完全消色温度(t
4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t
2〜t
3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で記憶保持できる色彩記憶保持型熱変色性インキが適用されることが好ましい。
図18において、ΔHは、ヒステリシスの程度を示す温度幅(即ちヒステリシス幅)を示す。ΔHの値が小さいと、変色前後の両状態のうち一方の状態しか存在しえない。ΔHの値が大きいと、変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0035】
本実施の形態では、前記熱変色性インキの摩擦部7の摩擦熱による変色温度は、25℃〜95℃(好ましくは36℃〜95℃)に設定される。即ち、本実施の形態では、前記高温側変色点〔完全消色温度(t
4)〕を、25℃〜95℃(好ましくは、36℃〜90℃)の範囲に設定し、前記低温側変色点〔完全発色温度(t
1)〕を、−30℃〜+20℃(好ましくは、−30℃〜+10℃)の範囲に設定することが有効である。それにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持を有効に機能させることができるとともに、可逆熱変色性インキによる筆跡を摩擦部7による摩擦熱で容易に変色することができる。
【0036】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、ペン先没入状態における前記操作部4の前方への移動を阻止するロック装置を、前記摩擦部より前方の軸筒2外面に設けたことにより、携帯時や摩擦操作時、ロック装置をロック状態にすることによって、操作部4を誤って前方に押圧操作することを回避でき、しかも、ロック状態のロック装置が摩擦操作性を阻害することなく、円滑な摩擦操作が可能となる。
【0037】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、前記ロック装置が、一方が前記操作部4に接続され且つ他方が軸筒2の外面の係合部9に係脱自在に構成されるロック部材8を備えることにより、部品点数の少ない簡易なロック装置を得る。
【0038】
<第2の実施の形態>
図6及び
図10に本発明の第2の実施の形態を示す。
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、軸筒2と、該軸筒2内に収容される筆記体3と、該筆記体3のペン先31を軸筒2の前端孔21より出没自在にさせる出没機構と、軸筒2の側壁より径方向外方に突出された操作部4と、ペン先没入状態における前記操作部4の前方への移動を阻止するロック装置と、軸筒2の後端部外面に設けた摩擦部とを備える。
【0039】
・筆記体
前記筆記体3は、ペン先31と、該ペン先31が前端開口部に圧入固着されたインキ収容管32と、該インキ収容管32内に充填される熱変色性インキ33と、該熱変色性インキ33の後端に充填され且つ該熱変色性インキ33の消費に伴い前進する追従体34(例えば高粘度流体)とからなる。
【0040】
前記ペン先31は、例えば、前端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンチップのみからなる構成、または前記ボールペンチップの後部外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーからなる構成のいずれであってもよい。また、前記インキ収容管32の後端開口部に、インキ収容管32と外部とが通気可能な通気孔を備えた尾栓が取り付けられる。前記ペン先31の内部には、前端のボールを前方に押圧するスプリングが収容される。前記スプリングは、圧縮コイルスプリングの前端部にロッド部を備えた構成であり、前記ロッド部の前端がボール後面に接触している。非筆記時、前記スプリングの前方付勢によりボールがボールペンチップ前端の内向きの前端縁部内面に密接され、ペン先31の前端からのインキの漏出及びインキの蒸発を防止できる。
【0041】
・軸筒2
前記軸筒2は、先細円筒状の前軸2aと、該前軸2aの後端部に連結される円筒状の中間軸2bと、該中間軸2bの後端部に連結される円筒状の後軸2cとからなる。前記軸筒2側壁(例えば中間軸2bの側壁及び後軸2cの側壁)には、軸方向に延びるスライド孔22が形成される。前記軸筒2の後端(即ち後軸2cの後端)には、取付孔23が軸方向に貫設される。前記取付孔23に弾性材料からなる摩擦部7が圧入嵌合される。前記摩擦部7は、前記操作部4の軸方向の移動に連動せず、後軸2c(軸筒2)の後端外面に固定される。前記摩擦部7は、操作部4と独立して設けられる。
【0042】
・出没機構
前記出没機構は、回転カム機構を用いたサイドスライド式出没機構である。前記出没機構は、中間軸2b内面に形成されたカム部と、該カム部に係合し且つ筆記体3の後端に当接する回転部材5と、該回転部材5に係合し且つスライド孔22より径方向外方に突出する操作部4と、軸筒2内に収容され且つ筆記体3を後方に付勢する弾発体6(例えば圧縮コイルスプリング)とからなる。本実施の形態の出没機構は、ペン先突出操作及びペン先没入操作のいずれもが操作部4を前方にスライド操作するダブルノック式である。前記回転部材5は合成樹脂(例えばポリアセタール樹脂)の成形体により得られる。
【0043】
前記カム部は、前方に突出する鋸歯状の複数のカム歯と、該カム歯間に形成される、軸方向に延びる複数のカム溝とを備える。前記回転部材5は、その外面に軸方向に延びる複数本(例えば4本)の突条を備え、該突条が、カム部のカム歯及びカム部のカム溝と係合される。前記操作部4の軸部43の前端には、回転部材5の突条の後端と係合するカム歯が一体または別部材の取り付けにより形成される。
【0044】
・操作部
前記操作部4は、軸筒2側壁の軸方向に延びるスライド孔22より径方向外方に突出される基部41と、該基部41より前方に連設されるクリップ部42と、該基部41より連設され且つ軸筒2内に軸方向に移動可能に収容される軸部43と、を備える。前記クリップ部42は、ポケット等の衣服を挟持可能である。前記操作部4は、合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)の成形体により得られる。前記クリップ部42の裏面(内面)に玉部44が突設される。前記基部41と前記クリップ部42、前記基部41と前記軸部43、前記クリップ部42と前記玉部44のそれぞれは、一部材により一体に形成されるかまたは二分材の組立により形成される。
【0045】
前記操作部4の基部41が前記スライド孔22に沿って軸方向に移動可能である。前記操作部4を前方に押圧操作することによって、筆記体3のペン先31が軸筒2の前端孔21から出没自在に構成される。
【0046】
・ロック装置
前記ロック装置は、摩擦部7前方の軸筒2外面に取り付けられたロック部材8と、該ロック部材8と係脱自在の、操作部4外面に設けた係合部9とからなる。前記係合部9は、径方向外方に突出する凸部からなる。前記ロック部材8は、コ字状の線状体からなり、その一端が軸筒2外面に回動自在に取り付けられ、その他端が操作部4の係合部9に係脱自在となる。
前記係合部9は、操作部4の後端部に形成される。
【0047】
前記ロック装置のロック部材8が操作部4の係合部9と係合状態にあるとき、前記操作部4の前方移動が阻止され、一方、前記ロック装置のロック部材8と操作部4の係合部9との係合が解除された状態にあるとき、前記操作部4の前方移動が可能となる。
【0048】
・ペン先の出没
ペン先没入状態から操作部4を前方に、弾発体6による後方付勢に抗してスライド操作すると、操作部4の軸部43のカム歯によって回転部材5が前方に押圧され、前記回転部材5の突条がカム溝に沿って前方に移動するに伴って、前記回転部材5が筆記体3の後端を前方に押圧し、ペン先31が前端孔21より外部に突出される。このとき、前記軸部43のカム歯と前記回転部材5の突条との当接によって回転部材5がカム部に対して一定角度だけ回転する。それにより、前記回転部材5の突条がカム部のカム歯に係合され、ペン先突出状態が維持される。
【0049】
ペン先突出状態から操作部4を前方にスライド操作すると、操作部4の軸部43が回転部材5を前方に押圧し、前記軸部43のカム歯と前記回転部材5の突条との当接によって回転部材5がカム部に対して一定角度だけ回転する。それによって、前記突条とカム部のカム歯との係合状態が解除され、弾発体6による後方付勢により、前記突条がカム部のカム溝に沿って後方に移動する。前記回転部材5が後方に移動することに伴って、筆記体3が後方に移動し、ペン先没入状態となる。
【0050】
・摩擦部
本実施の形態において、前記摩擦部7を構成する弾性材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。前記摩擦部7を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)からなるものよりも、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料からなることが好ましい。また、前記摩擦部7は、軸筒2の後端部外面に少なくとも設ければよく、例えば、軸筒2の後端部外面もしくは後軸2cの後端部外面に弾性材料よりなる摩擦部7を圧入、係合、螺合、嵌合、接着、2色成形等によって固着する構成、または軸筒22の全体もしくは後軸2cの全体が弾性材料により一体に形成される構成が挙げられる。
【0051】
・熱変色性インキ
本実施の形態において、前記熱変色性インキ33は、可逆熱変色性インキが好ましい。前記可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、または、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。
【0052】
また、前記可逆熱変色性インキに含有される色材は、従来より公知の(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた可逆熱変色性顔料が好適に用いられる。
【0053】
本実施の形態では、
図18に示すように、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t
1)以下の低温域での発色状態、または完全消色温度(t
4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t
2〜t
3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で記憶保持できる色彩記憶保持型熱変色性インキが適用されることが好ましい。
図18において、ΔHは、ヒステリシスの程度を示す温度幅(即ちヒステリシス幅)を示す。ΔHの値が小さいと、変色前後の両状態のうち一方の状態しか存在しえない。ΔHの値が大きいと、変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0054】
本実施の形態では、前記熱変色性インキの摩擦部7の摩擦熱による変色温度は、25℃〜95℃(好ましくは36℃〜95℃)に設定される。即ち、本実施の形態では、前記高温側変色点〔完全消色温度(t
4)〕を、25℃〜95℃(好ましくは、36℃〜90℃)の範囲に設定し、前記低温側変色点〔完全発色温度(t
1)〕を、−30℃〜+20℃(好ましくは、−30℃〜+10℃)の範囲に設定することが有効である。それにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持を有効に機能させることができるとともに、可逆熱変色性インキによる筆跡を摩擦部7による摩擦熱で容易に変色することができる。
【0055】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、ペン先没入状態における前記操作部4の前方への移動を阻止するロック装置を、前記摩擦部7より前方の軸筒2外面に設けたことにより、携帯時や摩擦操作時、ロック装置をロック状態にすることによって、操作部4を誤って前方に押圧操作することを回避でき、しかも、ロック状態のロック装置が摩擦操作性を阻害することなく、円滑な摩擦操作が可能となる。
【0056】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、前記ロック装置が、一方が前記軸筒2に接続され且つ他方が操作部4の係合部9に係脱自在に構成されるロック部材8を備えることにより、部品点数の少ない簡易なロック装置を得る。
【0057】
<第3の実施の形態>
図11及び
図15に本発明の第3の実施の形態を示す。
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、軸筒2と、該軸筒2内に収容される筆記体3と、該筆記体3のペン先31を軸筒2の前端孔21より出没自在にさせる出没機構と、軸筒2の側壁より径方向外方に突出された操作部4と、ペン先没入状態における前記操作部4の前方への移動を阻止するロック装置と、軸筒2の後端部外面に設けた摩擦部7とを備える。
【0058】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、軸筒2と、該軸筒2内に収容される筆記体3と、該筆記体3のペン先31を軸筒2の前端孔21より出没自在にさせる出没機構と、軸筒2の側壁より径方向外方に突出された操作部4と、ペン先没入状態における前記操作部4の前方への移動を阻止するロック装置と、軸筒2の後端部外面に設けた摩擦部7とを備える。
【0059】
・筆記体
前記筆記体3は、ペン先31と、該ペン先31が前端開口部に圧入固着されたインキ収容管32と、該インキ収容管32内に充填される熱変色性インキ33と、該熱変色性インキ33の後端に充填され且つ該熱変色性インキ33の消費に伴い前進する追従体34(例えば高粘度流体)とからなる。
【0060】
前記ペン先31は、例えば、前端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンチップのみからなる構成、または前記ボールペンチップの後部外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーからなる構成のいずれであってもよい。また、前記インキ収容管32の後端開口部に、インキ収容管32と外部とが通気可能な通気孔を備えた尾栓が取り付けられる。前記ペン先31の内部には、前端のボールを前方に押圧するスプリングが収容される。前記スプリングは、圧縮コイルスプリングの前端部にロッド部を備えた構成であり、前記ロッド部の前端がボール後面に接触している。非筆記時、前記スプリングの前方付勢によりボールがボールペンチップ前端の内向きの前端縁部内面に密接され、ペン先31の前端からのインキの漏出及びインキの蒸発を防止できる。
【0061】
・軸筒
前記軸筒2は、先細円筒状の前軸2aと、該前軸2aの後端部に連結される円筒状の中間軸2bと、該中間軸2bの後端部に連結される円筒状の後軸2cとからなる。前記軸筒2側壁(例えば中間軸2bの側壁及び後軸2cの側壁)には、軸方向に延びるスライド孔22が形成される。前記軸筒2の後端(即ち後軸2cの後端)には、取付孔23が軸方向に貫設される。前記取付孔23に弾性材料からなる摩擦部7が圧入嵌合される。前記摩擦部7は、前記操作部4の軸方向の移動に連動せず、後軸2c(軸筒2)の後端外面に固定される。前記摩擦部7は、操作部4と独立して設けられる。
【0062】
・出没機構
前記出没機構は、回転カム機構を用いたサイドスライド式出没機構である。前記出没機構は、中間軸2b内面に形成されたカム部と、該カム部に係合し且つ筆記体3の後端に当接する回転部材5と、該回転部材5に係合し且つスライド孔22より径方向外方に突出する操作部4と、軸筒2内に収容され且つ筆記体3を後方に付勢する弾発体6(例えば圧縮コイルスプリング)とからなる。本実施の形態の出没機構は、ペン先突出操作及びペン先没入操作のいずれもが操作部4を前方にスライド操作するダブルノック式である。前記回転部材5は合成樹脂(例えばポリアセタール樹脂)の成形体により得られる。
【0063】
前記カム部は、前方に突出する鋸歯状の複数のカム歯と、該カム歯間に形成される、軸方向に延びる複数のカム溝とを備える。前記回転部材5は、その外面に軸方向に延びる複数本(例えば4本)の突条を備え、該突条が、カム部のカム歯及びカム部のカム溝と係合される。前記操作部4の軸部43の前端には、回転部材5の突条の後端と係合するカム歯が一体または別部材の取り付けにより形成される。
【0064】
・操作部
前記操作部4は、軸筒2側壁の軸方向に延びるスライド孔22より径方向外方に突出される基部41と、該基部41より前方に連設されるクリップ部42と、該基部41より連設され且つ軸筒2内に軸方向に移動可能に収容される軸部43と、を備える。前記クリップ部42は、ポケット等の衣服を挟持可能である。前記操作部4は、合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)の成形体により得られる。前記クリップ部42の裏面(内面)に玉部44が突設される。前記基部41と前記クリップ部42、前記基部41と前記軸部43、前記クリップ部42と前記玉部44のそれぞれは、一部材により一体に形成されるかまたは二分材の組立により形成される。
【0065】
前記操作部4の基部41が前記スライド孔22に沿って軸方向に移動可能である。前記操作部4を前方に押圧操作することによって、筆記体3のペン先31が軸筒2の前端孔21から出没自在に構成される。
【0066】
・ロック装置
前記ロック装置が、軸筒2の外面に周方向に回転可能且つ軸方向移動不能に取り付けられる、切り欠き部81を有する横断面C字状のロック部材8からなる。前記ロック部材8の切り欠き部81以外の部分を前記操作部4よりも前方の前記スライド孔22上に位置させた状態にあるとき、前記操作部4の前方への移動が阻止され、一方、前記ロック部材8の切り欠き部81を前記操作部4よりも前方の前記スライド孔22上に位置させた状態にあるとき、前記操作部4の前方への移動が可能となる。
【0067】
・ペン先の出没
ペン先没入状態から操作部4を前方に、弾発体6による後方付勢に抗してスライド操作すると、操作部4の軸部43のカム歯によって回転部材5が前方に押圧され、前記回転部材5の突条がカム溝に沿って前方に移動するに伴って、前記回転部材5が筆記体3の後端を前方に押圧し、ペン先31が前端孔21より外部に突出される。このとき、前記軸部43のカム歯と前記回転部材5の突条との当接によって回転部材5がカム部に対して一定角度だけ回転する。それにより、前記回転部材5の突条がカム部のカム歯に係合され、ペン先突出状態が維持される。
【0068】
ペン先突出状態から操作部4を前方にスライド操作すると、操作部4の軸部43が回転部材5を前方に押圧し、前記軸部43のカム歯と前記回転部材5の突条との当接によって回転部材5がカム部に対して一定角度だけ回転する。それによって、前記突条とカム部のカム歯との係合状態が解除され、弾発体6による後方付勢により、前記突条がカム部のカム溝に沿って後方に移動する。前記回転部材5が後方に移動することに伴って、筆記体3が後方に移動し、ペン先没入状態となる。
【0069】
・摩擦部
本実施の形態において、前記摩擦部7を構成する弾性材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。前記摩擦部7を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)からなるものよりも、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料からなることが好ましい。また、前記摩擦部7は、軸筒2の後端部外面に少なくとも設ければよく、例えば、軸筒2の後端部外面もしくは後軸2cの後端部外面に弾性材料よりなる摩擦部7を圧入、係合、螺合、嵌合、接着、2色成形等によって固着する構成、または軸筒22の全体もしくは後軸2cの全体が弾性材料により一体に形成される構成が挙げられる。
【0070】
・熱変色性インキ
本実施の形態において、前記熱変色性インキ33は、可逆熱変色性インキが好ましい。前記可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、または、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。
【0071】
また、前記可逆熱変色性インキに含有される色材は、従来より公知の(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた可逆熱変色性顔料が好適に用いられる。
【0072】
本実施の形態では、
図18に示すように、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t
1)以下の低温域での発色状態、または完全消色温度(t
4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t
2〜t
3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で記憶保持できる色彩記憶保持型熱変色性インキが適用されることが好ましい。
図18において、ΔHは、ヒステリシスの程度を示す温度幅(即ちヒステリシス幅)を示す。ΔHの値が小さいと、変色前後の両状態のうち一方の状態しか存在しえない。ΔHの値が大きいと、変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0073】
本実施の形態では、前記熱変色性インキの摩擦部7の摩擦熱による変色温度は、25℃〜95℃(好ましくは36℃〜95℃)に設定される。即ち、本実施の形態では、前記高温側変色点〔完全消色温度(t
4)〕を、25℃〜95℃(好ましくは、36℃〜90℃)の範囲に設定し、前記低温側変色点〔完全発色温度(t
1)〕を、−30℃〜+20℃(好ましくは、−30℃〜+10℃)の範囲に設定することが有効である。それにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持を有効に機能させることができるとともに、可逆熱変色性インキによる筆跡を摩擦部7による摩擦熱で容易に変色することができる。
【0074】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、ペン先没入状態における前記操作部4の前方への移動を阻止するロック装置を、前記摩擦部7より前方の軸筒2外面に設けたことにより、携帯時や摩擦操作時、ロック装置をロック状態にすることによって、操作部4を誤って前方に押圧操作することを回避でき、しかも、ロック状態のロック装置が摩擦操作性を阻害することなく、円滑な摩擦操作が可能となる。
【0075】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、前記ロック装置が、軸筒2の外面に周方向に回転可能且つ軸方向移動不能に取り付けられる、切り欠き部81を有する横断面C字状のロック部材8を備え、前記ロック部材8の切り欠き部81以外の部分を前記操作部4よりも前方の前記スライド孔22上に位置させた状態にあるとき、前記操作部4の前方への移動が阻止され、一方、前記ロック部材8の切り欠き部81を前記操作部4よりも前方の前記スライド孔22上に位置させた状態にあるとき、前記操作部4の前方への移動が可能となることにより、部品点数の少ない簡易なロック装置を得るとともに、ロック装置によってクリップの外観性が損なわれることがない。
【0076】
<第4の実施の形態>
図16及び
図17に本発明の第4の実施の形態を示す。
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、軸筒2と、該軸筒2内に収容される筆記体3と、該筆記体3のペン先31を軸筒2の前端孔21より出没自在にさせる出没機構と、軸筒2の側壁より径方向外方に突出された操作部4と、ペン先没入状態における前記操作部4の前方への移動を阻止するロック装置と、軸筒2の後端部外面に設けた摩擦部7とを備える。
【0077】
・筆記体
前記筆記体3は、ペン先31と、該ペン先31が前端開口部に圧入固着されたインキ収容管32と、該インキ収容管32内に充填される熱変色性インキ33と、該熱変色性インキ33の後端に充填され且つ該熱変色性インキ33の消費に伴い前進する追従体34(例えば高粘度流体)とからなる。
【0078】
前記ペン先31は、例えば、前端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンチップのみからなる構成、または前記ボールペンチップの後部外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーからなる構成のいずれであってもよい。また、前記インキ収容管32の後端開口部に、インキ収容管32と外部とが通気可能な通気孔を備えた尾栓が取り付けられる。前記ペン先31の内部には、前端のボールを前方に押圧するスプリングが収容される。前記スプリングは、圧縮コイルスプリングの前端部にロッド部を備えた構成であり、前記ロッド部の前端がボール後面に接触している。非筆記時、前記スプリングの前方付勢によりボールがボールペンチップ前端の内向きの前端縁部内面に密接され、ペン先31の前端からのインキの漏出及びインキの蒸発を防止できる。
【0079】
・軸筒
前記軸筒2は、先細円筒状の前軸2aと、該前軸2aの後端部に連結される円筒状の中間軸2bと、該中間軸2bの後端部に連結される円筒状の後軸2cとからなる。前記軸筒2側壁(例えば中間軸2bの側壁及び後軸2cの側壁)には、軸方向に延びるスライド孔22が形成される。前記軸筒2の後端(即ち後軸2cの後端)には、取付孔23が軸方向に貫設される。前記取付孔23に弾性材料からなる摩擦部7が圧入嵌合される。前記摩擦部7は、前記操作部4の軸方向の移動に連動せず、後軸2c(軸筒2)の後端外面に固定される。前記摩擦部7は、操作部4と独立して設けられる。
【0080】
・出没機構
前記出没機構は、回転カム機構を用いたサイドスライド式出没機構である。前記出没機構は、中間軸2b内面に形成されたカム部と、該カム部に係合し且つ筆記体3の後端に当接する回転部材5(可動部)と、該回転部材5に係合し且つスライド孔22より径方向外方に突出する操作部4と、軸筒2内に収容され且つ筆記体3を後方に付勢する弾発体6(例えば圧縮コイルスプリング)とからなる。本実施の形態の出没機構は、ペン先突出操作及びペン先没入操作のいずれもが操作部4を前方にスライド操作するダブルノック式である。前記回転部材5は合成樹脂(例えばポリアセタール樹脂)の成形体により得られる。
【0081】
前記カム部は、前方に突出する鋸歯状の複数のカム歯と、該カム歯間に形成される、軸方向に延びる複数のカム溝とを備える。前記回転部材5は、その外面に軸方向に延びる複数本(例えば4本)の突条を備え、該突条が、カム部のカム歯及びカム部のカム溝と係合される。前記操作部4の軸部43の前端には、回転部材5の突条の後端と係合するカム歯が一体または別部材の取り付けにより形成される。
【0082】
・操作部
前記操作部4は、軸筒2側壁の軸方向に延びるスライド孔22より径方向外方に突出される基部41と、該基部41より前方に連設されるクリップ部42と、該基部41より連設され且つ軸筒2内に軸方向に移動可能に収容される軸部43と、を備える。前記クリップ部42は、ポケット等の衣服を挟持可能である。前記操作部4は、合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)の成形体により得られる。前記クリップ部42の裏面(内面)に玉部44が突設される。前記基部41と前記クリップ部42、前記基部41と前記軸部43、前記クリップ部42と前記玉部44のそれぞれは、一部材により一体に形成されるかまたは二分材の組立により形成される。
【0083】
前記操作部4の基部41が前記スライド孔22に沿って軸方向に移動可能である。前記操作部4を前方に押圧操作することによって、筆記体3のペン先31が軸筒2の前端孔21から出没自在に構成される。
【0084】
・ロック装置
前記ロック装置が、軸筒2の側壁外面に回動自在に取り付けられたロック部材8からなる。
前記ロック部材8は、中間部が前記軸筒2側壁外面にヒンジ部により回動自在に取り付けられ、一端部の径方向内面に軸筒2内壁より径方向内方に出没可能に設けられた係合凸部82が設けられ、他端部が前記係合凸部82を径方向外方に引き上げる解除部83となる。
【0085】
前記ロック部材8の一端部を径方向内方に押圧することにより、前記係合凸部82が軸筒2側壁の貫通孔24を通して軸筒2側壁内面より径方向内方に突出され、係合凸部82が回転部材5の係合部9(回転部材5の外壁)に係合し、前記回転部材5の前方移動が阻止される。それにより、前記操作部4の前方移動が阻止される。一方、前記ロック部材8の他端部の解除部83を径方向内方に押圧することにより、前記係合凸部82が径方向外方に引き上げられ、係合凸部82と回転部材5の係合部9との係合状態が解除され、回転部材5が前後方向に移動可能となり、それに伴い操作部4が前後方向に移動可能となる。すなわち、前記ロック装置のロック部材8と回転部材5(可動部)の係合部9とが係合状態にあるとき、前記操作部4の前方移動が阻止され、一方、前記ロック装置のロック部材8と回転部材5(可動部)との係合が解除された状態にあるとき、前記操作部4の前方移動が可能となる。
【0086】
・ペン先の出没
ペン先没入状態から操作部4を前方に、弾発体6による後方付勢に抗してスライド操作すると、操作部4の軸部43のカム歯によって回転部材5が前方に押圧され、前記回転部材5の突条がカム溝に沿って前方に移動するに伴って、前記回転部材5が筆記体3の後端を前方に押圧し、ペン先31が前端孔21より外部に突出される。このとき、前記軸部43のカム歯と前記回転部材5の突条との当接によって回転部材5がカム部に対して一定角度だけ回転する。それにより、前記回転部材5の突条がカム部のカム歯に係合され、ペン先突出状態が維持される。
【0087】
ペン先突出状態から操作部4を前方にスライド操作すると、操作部4の軸部43が回転部材5を前方に押圧し、前記軸部43のカム歯と前記回転部材5の突条との当接によって回転部材5がカム部に対して一定角度だけ回転する。それによって、前記突条とカム部のカム歯との係合状態が解除され、弾発体6による後方付勢により、前記突条がカム部のカム溝に沿って後方に移動する。前記回転部材5が後方に移動することに伴って、筆記体3が後方に移動し、ペン先没入状態となる。
【0088】
・摩擦部
本実施の形態において、前記摩擦部7を構成する弾性材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。前記摩擦部7を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)からなるものよりも、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料からなることが好ましい。また、前記摩擦部7は、軸筒2の後端部外面に少なくとも設ければよく、例えば、軸筒2の後端部外面もしくは後軸2cの後端部外面に弾性材料よりなる摩擦部7を圧入、係合、螺合、嵌合、接着、2色成形等によって固着する構成、または軸筒22の全体もしくは後軸2cの全体が弾性材料により一体に形成される構成が挙げられる。
【0089】
・熱変色性インキ
本実施の形態において、前記熱変色性インキ33は、可逆熱変色性インキが好ましい。前記可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、または、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。
【0090】
また、前記可逆熱変色性インキに含有される色材は、従来より公知の(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた可逆熱変色性顔料が好適に用いられる。
【0091】
本実施の形態では、
図18に示すように、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t
1)以下の低温域での発色状態、または完全消色温度(t
4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t
2〜t
3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で記憶保持できる色彩記憶保持型熱変色性インキが適用されることが好ましい。
図18において、ΔHは、ヒステリシスの程度を示す温度幅(即ちヒステリシス幅)を示す。ΔHの値が小さいと、変色前後の両状態のうち一方の状態しか存在しえない。ΔHの値が大きいと、変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0092】
本実施の形態では、前記熱変色性インキの摩擦部7の摩擦熱による変色温度は、25℃〜95℃(好ましくは36℃〜95℃)に設定される。即ち、本実施の形態では、前記高温側変色点〔完全消色温度(t
4)〕を、25℃〜95℃(好ましくは、36℃〜90℃)の範囲に設定し、前記低温側変色点〔完全発色温度(t
1)〕を、−30℃〜+20℃(好ましくは、−30℃〜+10℃)の範囲に設定することが有効である。それにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持を有効に機能させることができるとともに、可逆熱変色性インキによる筆跡を摩擦部7による摩擦熱で容易に変色することができる。
【0093】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、ペン先没入状態における前記操作部4の前方への移動を阻止するロック装置を、前記摩擦部7より前方の軸筒2外面に設けたことにより、携帯時や摩擦操作時、ロック装置をロック状態にすることによって、操作部4を誤って前方に押圧操作することを回避でき、しかも、ロック状態のロック装置が摩擦操作性を阻害することなく、円滑な摩擦操作が可能となる。
【0094】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、前記軸筒2内部に、前記操作部4のスライド操作に連動して軸方向に移動可能な可動部5を備え、前記ロック装置が、一方が前記軸筒2に接続され且つ他方が前記可動部5の係合部9に係脱自在に構成されたロック部材8を備えることにより、部品点数の少ない簡易なロック装置を得るとともに、ロック装置によってクリップの外観性が損なわれることがない。