(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のような複式筆記具では、後軸内部の品質を確認するにあたり、後軸の内径の寸法測定を行っている。この寸法測定では、一般的に、ピンケージ等の測定具を後軸の内部に挿入して後軸の内径を測定している。
ここで、寸法測定を行っている際に、測定具が後軸の内部に落下することがあり、この測定具の落下により、後軸の後端内面が損傷し、意匠的又は機能的な不具合を生じさせるおそれがある。
具体的には、後軸の後端に透明な装飾部が設けられている場合は、測定具の落下により、後軸の後端の装飾部が損傷し、装飾部の外観が損なわれる。
また、後軸の後端内面に正面カム部が設けている場合は、測定具の落下によって、正面カム部が変形し、先端筆記部の出し入れ動作に支障をきたす。
このため、寸法測定を行う際に、後軸の損傷が未然に防止されるようにしたいという要望がある。
【0008】
また、後軸の表面に対して、塗装、あるいは、転写等の印刷を行うにあたり、後軸の表面が後方へ逃げないように、後軸の内部に棒状の心金を挿入し、この心金で後軸の表面を内側から押さえながら、塗装あるいは印刷を行っている。
ここで、心金を後軸の内部に挿入する際に、心金が後軸の後端にまで到達してしまうと、後軸の後端内面を損傷させ、意匠的又は機能的な不具合を生じさせるおそれがある。
このため、塗装あるいは印刷を行う際にも、後軸の損傷が未然に防止されるようにしたいという要望がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記した従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、寸法測定、塗装あるいは印刷を行う際に、後軸の損傷が未然に防止される複式筆記具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述の目的を達成するためになされたものである。以下に、本発明の特徴点を、図面に示した発明の実施の形態を用いて説明する。
なお、符号は、発明の実施の形態において用いた符号を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0011】
(第1発明)
(特徴点)
本発明の第1発明は、次の点を特徴とする。
すなわち、本第1発明は、複数の筆記体(2)を収納する軸筒(3)の後端側を形成する後軸(5)を有し、前記後軸(5)の周面に開口されるとともに、当該後軸(5)の軸方向に沿って延びる複数のガイドスリット(32)が当該後軸(5)の周方向に沿って並設され、前記後軸(5)の内周面における前記ガイドスリット(32)の長手方向側縁に沿った部位から径方向内側へ突出する一対のガイドレール(33)が複数対設けられ、前記複数対のガイドレール(33)のうち、一対をなすガイドレール(33)にそれぞれ案内されることによって前記後軸(5)の軸方向に沿って摺動可能となった複数のノック棒(10)が設けられ、前記複数のノック棒(10)の各前端部に前記複数の筆記体(2)の後端部がそれぞれ接続され、前記複数のノック棒(10)のうち、一のノック棒(10)が前記軸筒(3)の前方に向かって摺動されると、当該ノック棒(10)に接続された筆記体(2)の先端筆記部(2A)が、前記軸筒(3)の先端口(4B)から突出して筆記が可能となるように形成され、他のノック棒(10)が前記軸筒(3)の前方に向かって摺動されると、前記一のノック棒(10)に接続された筆記体(2)の先端筆記部(2A)が、前記軸筒(3)の先端口(4B)の内部に没入して元の位置に復帰するように形成されている複式筆記具(1)であって、前記後軸(5)の内周面における前記ガイドスリット(32)が形成されていない部位から径方向内側に突出するとともに、前記後軸(5)の軸方向に沿って延びるリブ(35)が形成され、前記リブ(35)における先端側のリブ先端側部(36)は、前記後軸(5)の径方向における内側の内縁が前記ガイドレール(33)の内縁よりも外側に位置し、前記リブ(35)における後端側のリブ後端側部(37)は、前記後軸(5)の径方向における内側の内縁が前記ガイドレール(33)の内縁よりも内側に位置し、前記リブ先端側部(36)と前記リブ後端側部(37)との境界部分には、前記リブ先端側部(36)から前記リブ後端側部(37)へ突き出た段差部(38)が設けられ、前記段差部(38)は、前記後軸(5)の後端部に形成された後端内面(5D)よりも、前記後軸(5)の前方に位置していることを特徴とする。
【0012】
(第2発明)
(特徴点)
本発明の第2発明は、前述の第1発明において、次の特徴点を備えている。
すなわち、本第2発明は、前記後軸(5)の後端部に、前記後軸(5)の外周面との間にシート状のものを挟持可能なクリップ部(8)の後端部が結合され、前記クリップ部(8)は、その長手方向が前記リブ(35)に沿うように前記後軸(5)に設けられていることを特徴とする。
【0013】
(第3発明)
(特徴点)
本発明の第3発明は、前述の第1又は第2発明において、次の特徴点を備えている。
すなわち、本第3発明は、前記後軸(5)内に回転可能、且つ、軸方向に沿って往復動可能に配置された回転カム(40)と、前記後軸(5)の後端に向かって前記回転カム(40)を付勢するカム用付勢手段(43)と、前記複数のノック棒(10)のそれぞれを前記後軸(5)の後端に向かって付勢する複数のノック棒用付勢手段(2C)とが、前記後軸(5)の内部に設けられ、前記回転カム(40)の外周面には、対応するノック棒(10)が前方へ前進した際に、その後端部を係止する係止部(46)を有する複数の凸部(44)が周方向に並んで突設され、前記凸部(44)には、当該ノック棒(10)の摺動方向に対して傾斜した傾斜面(41)が設けられ、前記ノック棒(10)には、前記傾斜面(41)に係合する係合部(16)が設けられ、前記後軸(5)の前記後端内面(5D)には、先端縁に凹凸が形成された正面カム部(39)が設けられ、前記回転カム(40)の後端面には、前記正面カム部(39)と噛み合う当接部(45)が設けられ、前記回転カム(40)は、前記ノック棒(10)が前方へ前進すると、前記凸部(44)に形成された前記傾斜面(41)が前記係合部(16)に押圧されて回転するとともに、前記正面カム部(39)に前記当接部(45)が案内されて、前記ノック棒用付勢手段(2C)の付勢力に抗して前進するように形成され、前記係合部(16)がさらに前進して前記凸部(44)の側方を通り過ぎると、前記カム用付勢手段(43)の付勢力によって元の軸方向位置まで後退するとともに、前記正面カム部(39)に前記当接部(45)が案内されて、元の回転角度位置まで反転し、前記ノック棒(10)の後端を係止可能な位置に配置されるように形成され、前記リブ(35)の前記段差部(38)は、前記正面カム部(39)の先端縁よりも、前記後軸(5)の前方に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
(第1発明の効果)
以上のように構成されている本発明は、次のような効果を奏するものである。
すなわち、本発明の第1発明によれば、後軸の内周面におけるガイドスリットが形成されていない部位に、径方向内側に突出するとともに、後軸の軸方向に沿って延びるリブを形成し、このリブのリブ先端側部とリブ後端側部との境界部分に、リブ先端側部からリブ後端側部へ突き出た段差部を設け、さらに、この段差部の位置を、後軸の後端部に形成された後端内面よりも前方としたので、寸法測定時に測定具が後軸の内部に落下しても、落下する測定具が段差部に係止されて後端内面に到達せず、また、塗装時あるいは印刷時に、心金を後軸の内部に挿入しても、心金が段差部に係止されて後端内面に到達することがなく、従って、寸法測定、塗装あるいは印刷を行う際に、後軸の損傷が未然に防止され、これにより、前記目的を達成することができる。
【0015】
(第2発明の効果)
本発明の第2発明によれば、前述した第1発明の効果に加え、次のような効果を奏することができる。
すなわち、本第2発明によれば、後軸の後端部にクリップ部の後端部を結合し、このクリップ部と後軸の外周面との間にシート状のものを挟持可能とし、さらに、クリップ部の長手方向をリブに沿うようにしたので、クリップ部の先端部を後軸の外周面から遠ざけることで、後軸の側壁内部に応力を発生させても、発生した応力は、リブにより分散され、一箇所に集中することがない。このため、クリップ部でシート状のものを挟持する動作を何度も繰り返しても、後軸が破損したりせず、これにより、後軸の損傷が未然に防止される。
【0016】
(第3発明の効果)
本発明の第3発明によれば、前述した第1又は第2発明の効果に加え、次のような効果を奏することができる。
すなわち、一のノック棒を前方へ前進操作し、当該ノック棒に接続された筆記体の先端筆記部を軸筒の先端口から突出させた状態にすると、回転カムの動作で、当該一のノック棒が回転カムに係止され、先端筆記部が軸筒の先端口から突出した状態が維持される。
一方、他のノック棒を前方へ前進操作すると、回転カムによる当該一のノック棒の係止が解除され、当該一のノック棒は、対応するノック棒用付勢手段の付勢力によって元の軸方向位置まで後退し、突出していた筆記体の先端筆記部を先端口の内部に没入させ、当該筆記体の先端筆記部は、軸筒の内部に収納されるようになる。
ここで、本第3発明によれば、寸法測定時に測定具が後軸の内部に落下しても、落下する測定具が段差部に係止されて後端内面に到達せず、また、塗装時あるいは印刷時に、心金を後軸の内部に挿入しても、心金が段差部に係止されて後端内面に到達することがないので、これにより、後軸の後端内面の損傷が未然に防止され、しかも、当該後端内面に設けてられている正面カム部が変形することがないので、先端筆記部の出し入れ動作に支障をきたす等の不具合について、その発生を未然に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための形態である一実施形態に係るボールペン1について、図面を参照しながら説明する。
(ボールペン1の概略構成)
本実施形態に係るボールペン1は、筆記体として、例えば、黒色、赤色及び青色の3色のボールペンリフィル2を軸筒3内に収容した複式筆記具である。
なお、本実施形態において、ボールペン1の先端とは、筆記時において、ボールペンリフィル2の筆記ボールが位置する端部をいい、後端とは、前記「先端」とは反対側の端部をいう。また、ボールペン1における前方とは、先端に近づく方向をいい、後方とは、後端に近づく方向をいう。
【0019】
図1(A)及び(B)は、ボールペン1の平面図及び側面図である。
図1において、ボールペン1は、3本のボールペンリフィル2を収納する軸筒3を備えている。この軸筒3は、内部が中空とされるとともに、先端が先細りとされ、且つ、後端が平坦に形成された筒状部材である。
また、軸筒3は、先端側を形成する先軸4と、後端側を形成する後軸5と、先軸4及び後軸5の間の表面を形成する中軸6と、後軸5の後端に装着された端部部材である天冠7とに分解可能となっている。
【0020】
先軸4は、
図2に示すように、先細りとなった円錐状の先端部4Aを有し、この先端部4Aの後端側がストレートな円筒状に形成されたものとなっている。また、円錐状の先端部4Aの先端には、先端口4Bが開口されている。
軸筒3の内部に収納された3本のボールペンリフィル2のそれぞれは、その先端部分に、先端筆記部であるボールペンチップ2Aを備えたものとなっている。そして、3本のボールペンリフィル2うち、任意の1つのボールペンチップ2Aが先端口4Bを通じて外部へ突出可能となっている。
また、先軸4の内周面における後端近傍には、雌ネジ部4Cが形成されている。
【0021】
後軸5には、ボールペンチップ2Aを先端口4Bから突出させるための3つのノック棒10が摺動可能に設けられる操作部5Aと、この操作部5Aから中軸6の内部を通って先軸4の後端の近傍まで延びる中子部5Bとが設けられている。
このうち、後軸5の後端部である操作部5Aには、後軸5の外周面との間にシート状のものを挟持するためのクリップ部8の後端部が結合されている。
【0022】
ここで、中軸6は、肉厚が一定の側壁を有するとともに、全体がストレートに延びる円筒状の部材である。
一方、後軸5は、中子部5Bの外径が操作部5Aよりも小さくされ、中子部5Bと操作部5Aとの境界部分に段差が形成された段付きの周面を備えている。
この操作部5Aと中子部5Bとの段差は、中軸6の側壁部分の肉厚に応じた寸法となっている。これにより、中子部5Bを内部に挿通させた中軸6が操作部5Aに連結されると、中軸6の外周面と操作部5Aの外周面とが連続面を形成するようになっており、ひいては、先軸4、中軸6及び後軸5の3つの外周表面が1つの連続面を形成するようになっている。
また、中子部5Bの内周面における先端近傍には、雌ネジ部5Cが形成されている。
【0023】
先軸4及び中軸6の境界部分の内部には、先軸4と後軸5の中子部5Bとを連結する中ネジ管9が設けられている。
中ネジ管9は、全体が筒状の部材である。中ネジ管9の先軸4側の端部には、先軸4の雌ネジ部4Cと螺合する雄ネジ部9Aが形成されている。中ネジ管9の後軸5側の端部には、後軸5の雌ネジ部5Cと螺合する雄ネジ部9Bが形成されている。
先軸4及び後軸5は、中ネジ管9の雄ネジ部9Aを先軸4の雌ネジ部4Cと螺合するとともに、中ネジ管9の雄ネジ部9Bを後軸5の雌ネジ部5Cと螺合することで、互いに連結されるようになっている。
【0024】
以上において、ボールペンリフィル2の後端部及びノック棒10の先端部の間には、両者を接続する棒状のリフィル尾栓2Bが設けられている。
そして、後軸5の内部には、リフィル尾栓2Bを後軸5の軸方向に沿って案内するスペーサ20が設けられている。
【0025】
スペーサ20には、3本のボールペンリフィル2の各後端部が挿通されるとともに、当該後端部を案内するリフィルガイド部21と、コイルスプリング2Cの内部に挿通された状態のリフィル尾栓2Bを後軸5の軸方向に沿って移動可能に保持する尾栓保持部22と、
図2中の右方に配置されたカム軸支シャフト31が連結される突起部27が設けられている。
【0026】
ここで、スペーサ20は、
図3に示すように、先端側(
図3中の左方)に円筒状に形成された筒状部23を有するものとなっている。リフィルガイド部21は、
図4に示すように、筒状部23の内部に形成された略十字形の穴である。
そして、リフィルガイド部21の略十字形における4つの腕のうち、
図4中、上方、右方及び下方に位置する3つの腕は、3本のボールペンリフィル2の後端部がそれぞれ挿通されるリフィル挿通部24となっている。
【0027】
図2に戻って、リフィル尾栓2Bは、
図2の如く、コイルスプリング2Cの内径よりも小さい外径を有するとともに、コイルスプリング2Cの内部に挿通される円柱部2Dと、この円柱部2Dの後端部から径方向へ突出するとともに、コイルスプリング2Cの内径よりも大きい外径を有する鍔部2Eとを有するものとなっている。
【0028】
スペーサ20の後端側の外周面には、
図3の如く、径方向外側に開口された4つのU字形溝25が90度の間隔で周方向に並設されている。そして、リフィルガイド部21と4つのU字形溝25とを仕切る仕切り壁部21A には、
図4の如く、大小二種類の丸孔26, 27が開口されている。このうち、大きな方の3つの丸孔26は、リフィル尾栓2Bの円柱部2Dが挿通可能な尾栓挿通孔28となっている。
前述した4つのU字形溝25のうち、尾栓挿通孔28を介して、リフィルガイド部21のリフィル挿通部24と連通している3つのU字形溝25は、リフィル尾栓2Bを保持する尾栓保持部22となっている。
そして、尾栓挿通孔28の内径は、リフィル尾栓2Bの円柱部2Dの外径よりも大きいが、コイルスプリング2Cの外径よりも小さいものとなっている。
【0029】
換言すると、リフィル尾栓2Bの円柱部2Dは、尾栓保持部22から尾栓挿通孔28を通ってリフィルガイド部21の内部に進入可能となっている。
一方、コイルスプリング2Cは、
図2の如く、尾栓挿通孔28を通ることができず、リフィル尾栓2Bの鍔部2Eと仕切り壁部21A との間で、圧縮状態にされて尾栓保持部22の内部に収納されている。
このようなコイルスプリング2Cは、その弾性力でリフィル尾栓2Bの鍔部2Eを後方へ向かって押圧し、ひいては、ノック棒10を後軸5の後端に向かって押圧している。以上において、コイルスプリング2Cは、ノック棒10を後軸5の後端に向かって付勢するノック棒用付勢手段となっている。
【0030】
ここで、ボールペン1は、ノック棒10が前方へ操作されると、
図5に示すように、ノック棒10に押圧されて、リフィル尾栓2Bが前進し、リフィル尾栓2Bの鍔部2Eにコイルスプリング2Cを圧縮させながら、ボールペンリフィル2のボールペンチップ2Aを先端口4Bから外部へ突出させるようになっている。
換言すると、ボールペン1は、3つのノック棒10のうち、一のノック棒10が軸筒3の前方に向かって摺動操作されると、当該ノック棒10に接続されたボールペンリフィル2のボールペンチップ2Aが、軸筒3の先端口4Bから突出して筆記が可能な状態となるように形成されたものである。
そして、コイルスプリング2Cは、ノック棒10が前方へ操作されると、リフィル尾栓2Bの鍔部2Eと仕切り壁部21A との間でさらに圧縮され、ノック棒10を元の位置に戻す弾性力を発生させるものとなっている。
【0031】
図1に戻って、後軸5の操作部5Aにおける周面には、
図1に示すように、当該後軸5の軸方向に沿って延びる開口された複数のガイドスリット32が開口されている。これらのガイドスリット32は、ボールペンリフィル2の数に応じて3箇所設けられ、当該後軸5の周方向に沿って90度間隔に並設されている。
【0032】
後軸5の内周面には、
図6〜
図9に示すように、ガイドスリット32の長手方向側縁に沿った部位から径方向内側へ突出する一対のガイドレール33が設けられている。ガイドレール33は、ガイドスリット32に対応した数だけ設けられている。具体的には。ガイドレール33は、3つのガイドスリット32に対応して後軸5全体で3対設けられている。
図6〜
図9には、3つのノック棒10は、いずれも図示されていないが、これら3つのノック棒10の各々は、複数対のガイドレール33のうち、一対をなすガイドレール33の間にそれぞれ配置され、当該一対のガイドレール33に案内されることによって、後軸5の軸方向に沿って摺動可能となっている。
なお、一対のガイドレール33の互いに対向する部分には、
図7に示すように、ノック棒10の後述する被案内突条11を案内するために、後軸5の軸方向に沿って延びる案内溝33B がそれぞれ形成されている。
【0033】
後軸5の内周面におけるガイドスリット32が形成されていない部位34には、当該部位34から径方向内側に突出するリブ35が形成されている。このリブ35は、後軸5の軸方向に沿って延び、ガイドスリット32とほぼ同じ全長を有するものとなっている。
リブ35における先端側(
図6における左方)の部位であるリブ先端側部36は、
図8に示すように、後軸5の径方向における内側の内縁36A がガイドレール33の内縁33A よりも外側に位置している。
リブ35における後端側(
図6における右方)の部位であるリブ後端側部37は、
図9に示すように、後軸5の径方向における内側の内縁37A がガイドレール33の内縁33A よりも内側に位置している。
【0034】
リブ先端側部36とリブ後端側部37との境界部分には、
図6に示すように、リブ先端側部36からリブ後端側部37へ突き出た段差部38が設けられている。この段差部38は、後軸5の後端部に形成された後端内面5Dよりも、後軸5の前方に位置している。
ここで、後端内面5Dは、後軸5の後方の端部に設けられているとともに、後軸5の前方を向いた面となっている。
後端内面5Dには、
図6及び
図7に示すように、先端縁に凹凸が形成された正面カム部39が設けられている。
ここで、正面カム部39は、
図7の如く、後端内面5Dの周縁に沿って延びる円形の正面形状を有するものである。
また、正面カム部39には、凹凸として、
図6の如く、逆V字形の山部39A と、V字形の谷部39B とが設けられている。
ここで、リブ35の段差部38は、正面カム部39の先端縁、すなわち、逆V字形の山部39A の頂上よりも、後軸5の前方に位置している。
図5に戻って、クリップ部8は、
図5に示すように、その長手方向がリブに沿うように後軸5に設けられている。
【0035】
ノック棒10は、
図5の如く、後軸5の軸方向に沿って延出した棒状部材である。このようなノック棒10としては、第1ノック棒10A 及び第2ノック棒10B の2種類が設けられている。
第1ノック棒10A は、
図8に示すように、3つガイドスリット32のうち、
図8中の左方に位置するガイドスリット32A に配置されるものである。一方、第2ノック棒10B は、
図8中の下方及び右方に位置するガイドスリット32B に配置されるものとなっている。
【0036】
図10(A)〜(D)は、第1ノック棒10A の正面図、側面図、背面図及び底面図である。第1ノック棒10A の両側の側面には、
図10に示すように、その後端近傍において側方へ突出する被案内突条11が設けられている。
これらの被案内突条11は、ガイドレール33に設けられた前述の案内溝33B に案内されるものであって、後軸5の軸方向に延びているとともに、厚さが案内溝33B の幅に対応している。
【0037】
第1ノック棒10A には、後軸5の後端内面5Dに対向する後端面12と、ガイドスリット32から外部に露出する露出側面13とが設けられている。
第1ノック棒10A の先端には、
図10(B)における下方の面から下方へ突出する接続部14が設けられている。第1ノック棒10A は、この接続部14の先端面でリフィル尾栓2Bの後端に接続されるようになっている。
【0038】
露出側面13の先端近傍には、第1ノック棒10A を第2ノック棒10B と識別するための識別溝13A が設けられている。
第1ノック棒10A の後端には、露出側面13を
図10中の上方へ膨出させる指掛かり部15が設けられている。この指掛かり部15は、使用者が軸筒3の前方に向かって第1ノック棒10A を容易に摺動できるように、使用者の指を係止させるものである。
【0039】
また、第1ノック棒10A の後端には、
図10(B)における下方の面から下方へ突出する係合部16が設けられている。
第1ノック棒10A の係合部16は、
図10(D)に示すように、後述する回転カム40の傾斜面41A に対応するために、
図10(D)中、左斜め下方を向いた傾斜面16A を有するものとなっている。
【0040】
第1ノック棒10A の後端面12には、
図10(B)の如く、後軸5の後端内面5Dに向かって突出する当接突起部17が設けられている。
また、第1ノック棒10A の後端面12には、露出側面13を後方へ延長する表面突起部18が当接突起部17と離間して設けられている。
【0041】
図11(A)〜(D)は、第2ノック棒10B の正面図、側面図、背面図及び底面図である。第2ノック棒10A は、
図11に示すように、第1ノック棒10A と同様の被案内突条11、後端面12、露出側面13、接続部14、指掛かり部15、係合部16、当接突起部17及び表面突起部18を備えたものとなっている。
第2ノック棒10A における第1ノック棒10A との相違点は、次の2点である。
(1)第2ノック棒10A には、識別溝13A が設けられていない点。
(2)第2ノック棒10B の係合部16は、後述する回転カム40の傾斜面41B に対応するために、第1ノック棒10A と異なり、
図11(D)中、左斜め上方を向いた傾斜面16B を有している点。
【0042】
以上のようなノック棒10は、ガイドスリット32の長手方向に沿って後方へ摺動されると、
図12に示すように、当接突起部17の後端が後端内面5Dに当接する位置まで摺動可能とされている。このように、当接突起部17が後端内面5Dに当接した状態では、露出側面13とガイドスリット32の後端縁 との間に、
図12の如く、隙間Gが形成されるようになっている。
ここで、表面突起部18は、その後端が当接突起部17の後端よりも後方に延び、且つ、当接突起部17の後端が後端内面5Dに当接する位置までノック棒10が後方へ摺動されると、当該表面突起部18の後端とガイドスリット32の後端縁との間に隙間Gが形成されている。
さらに、後軸5の後端内面5Dには、径方向における外側の周縁からノック棒10へ向かって突出する立ち上がり部5Eが設けられている。
立ち上がり部5Eは、ノック棒10側の当接突起部17が後端内面5Dに当接する位置にノック棒10が配置されている状態で、当接突起部17及び表面突起部18の間に挟まれるように形成されている。
【0043】
図2に戻って、後軸5の内部には、
図2に示すように、当該後軸5の内部で回転可能、且つ、軸方向に沿って往復動可能に配置された回転カム40が設けられている。
すなわち、カム軸支シャフト31の先端部分には、尾栓保持部22の突起部27を内部に嵌合させる嵌合凹部31A が設けられている。
後軸5の後端内面5Dの中央部分には、カム軸支シャフト31の後端側を支持する軸受孔5Fが設けられている。
【0044】
回転カム40には、後軸5の軸方向に沿って回転カム40を貫通するシャフト挿通孔42が設けられている。
カム軸支シャフト31は、先端部分の嵌合凹部31A がスペーサ20側の突起部27と嵌合することで、先端部分がスペーサ20に支持され、後端部分が後軸5側の軸受孔5Fに挿通されて後軸5に支持されている。
このようなカム軸支シャフト31は、その中間部分が回転カム40のシャフト挿通孔42に挿通され、回転カム40を回転自在に支持している。
カム軸支シャフト31の先端近傍部分の周囲には、後軸5の後端に向かって回転カム40を付勢するカム用付勢手段としてのコイルスプリング43が巻回されている。
【0045】
図13は、回転カム40の斜視図であり、
図14(A)〜(C)は、回転カム40の正面図、側面図及び背面図である。
回転カム40は、
図13及び
図14に示すように、円筒状の本体40A の外周面から径方向外側へ突出する3つの凸部44が形成されたものである。これらの凸部44は、回転カム40の本体40A の外周面において、その周方向に並設されている。
【0046】
ここで、3つ凸部44のうち、
図14(C)における右方に位置している凸部44は、第1ノック棒10A に対応した第1凸部44A となっており、
図14(C)における上方及び左方に位置している残りの凸部44は、第2ノック棒10B に対応した第2凸部44B となっている。
そして、第1凸部44A には、
図13の如く、対応するノック棒10である第1ノック棒10A に形成された係合部16の傾斜面16A に対応して傾斜しているとともに、当該傾斜面16A に係合する傾斜面41A が設けられている。
第2凸部44B には、対応するノック棒10である第2ノック棒10B に形成された係合部16の傾斜面16B に対応して傾斜しているとともに、当該傾斜面16B に係合する傾斜面41B が設けられている。
【0047】
回転カム40の後端面には、
図13及び
図14(B)の如く、後軸5側の正面カム部39と噛み合う当接部45が設けられている。
換言すると、当接部45は、正面カム部39側の逆V字形の山部39A に対応したV字形の谷部45A と、正面カム部39側のV字形の谷部39B に対応した逆V字形の山部45B とを備えたものとなっている。
【0048】
また、凸部44の先端には、対応するノック棒10が前方へ前進した際に、
図15に示すように、当該ノック棒10の後端部に設けられた係合部16を係止する係止部46が設けられている。
ここにおいて、ノック棒10の後端部に設けられた当接突起部17は、回転カム40に突設された凸部44の係止部46に係合部16が係止されている状態で、係止部46よりも後方へ突出する保護突起となっている。
【0049】
以上において、回転カム40は、ノック棒10が前方へ前進すると、凸部44に形成された傾斜面41が、ノック棒10の係合部16に押圧され、これにより、回転カム40自身が回転するとともに、後軸5側の正面カム部39に当接部45が案内されて、コイルスプリング43の付勢力に抗して前進するように形成されている。
【0050】
また、回転カム40は、ノック棒10の係合部16がさらに前進して、凸部44の側方を通り過ぎると、コイルスプリング43の付勢力によって、回転カム40自身が元の軸方向位置まで後退するとともに、正面カム部39に当接部45が案内されて、元の回転角度位置まで反転するようになっている。
【0051】
さらに、回転カム40は、元の回転角度位置、換言すると、ノック棒10の係合部16を係止可能な位置まで反転し、この結果、
図15の如く、係止部46が係合部16を係止するように形成されている。この状態では、ノック棒10に接続されたボールペンリフィル2のボールペンチップ2Aは、先軸4の先端口4Bから外部へ突出するようになっている。
また、この状態において、
図15に示されていない他のノック棒10が軸筒3の前方に向かって摺動されると、回転カム40が再度回転して、係止部46による係合部16の係止が解除され、
図15に示されているノック棒10に接続されたボールペンリフィル2のボールペンチップ2Aは、コイルスプリング2Cの付勢力によって、先軸4の先端口4Bの内部に没入して元の位置に復帰するように形成されている。
【0052】
クリップ部8は、
図16及び
図17に示すように、後軸5の外周面との間でシート状のものを挟持するためのクリップ本体部81と、ボールペン1の装飾を行う部品であるクリップ飾り部82とが組み合わされたものである。
クリップ本体部81は、後軸5の外周面との間でシート状のものを挟持する挟持部81A と、後軸5に固定されるリング状の被固定リング部81B とを備えたものとなっている。
クリップ飾り部82は、透明な合成樹脂で宝石を模した飾り部82A と、後軸5に固定されるリング状の被固定リング部82B とを備えたものとなっている。
【0053】
ここで、
図12に戻って、後軸5の後端部5Gには、
図12の如く、後端部5Gから後方へ突出する円筒状の固定部5Hが設けられている。固定部5Hの外周面には、雄ネジ部5Jが形成されている。この雄ネジ部5Jには、内周面に雌ネジが形成された天ネジ管83が螺合するようになっている。
クリップ部8は、被固定リング部81B, 82Bの内部に固定部5Hが挿通され、且つ、被固定リング部81B, 82Bが後軸5の後端部5Gと天ネジ管83との間に挟み込まれた状態で、天ネジ管83を雄ネジ部5Jに螺合することで、後軸5への固定がなされている。
【0054】
天冠7は、
図12の如く、軸筒3の後端部開口、具体的には、固定部5Hの端面5Kに形成された開口5Lを閉鎖する端部部材である。この天冠7は、射出成形で製造されたものであり、
図18及び
図19に示すように、内部が中空の円錐台状に形成されるとともに、底面が開口されたキャップ状部材である。
天冠7の軸筒3の後方に位置する後端面71には、その中央部分を貫通するとともに、内部に段差面72を有する段付孔73が形成されている。
【0055】
また、天冠7の外周面には、軸筒3の内部に収納された3本のボールペンリフィル2の位置に対応して、装飾溝74A〜74Cが形成されている。
装飾溝74A〜74Cの内部は、それぞれ対応するボールペンリフィル2の筆記色と同じ色の塗料で塗装されている。
天冠7の底面開口を囲む端縁部7Aのうち、
図18中の上方に位置する部位には、クリップ部8の被固定リング部81B, 82Bとの干渉を回避するために、端縁部75を部分的に切り欠いた「 ]」字形状の逃げ部75A が設けられている。
【0056】
ここで、天冠7は、射出成形で製造するにあたり、逃げ部75A における「 ]」字の背の中央に開口されたゲート76を有する図示しない金型を利用し、この金型の内部に溶融樹脂を射出することで製造されたものとなっている。
このため、天冠7の外周面におけるゲート76と対向する部分77には、ウェルドマークが形成される。そして、このウェルドマークが形成される部分77には、装飾溝74B が設けられている。
天冠7の装飾溝74A〜74Cの裏側となる内周面には、装飾溝74A〜74Cが形成された部分の肉厚を確保するために、内周面を内側に膨らませた膨出部75B が形成されている。
【0057】
図12に戻って、天冠7の段付孔73には、
図12に示すように、後端部に鍔部78A が形成されたキャップ部材78が挿通されている。このキャップ部材78は、先端部が開口され、その内部にカム軸支シャフト31の後端部31B をきつく嵌合させるものとなっている。
天冠7は、段付孔73に挿通され、且つ、カム軸支シャフト31の後端部31B にきつく嵌合しているキャップ部材78の鍔部78A が、段付孔73の段差面72を係止することで、後軸5の後端への固定がなされている。
【0058】
(実施形態の効果)
前述のような本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、後軸5の内周面におけるガイドスリット32が形成されていない部位34に、径方向内側に突出するとともに、後軸5の軸方向に沿って延びるリブ35を形成し、このリブ35におけるリブ先端側部36とリブ後端側部37との境界部分に、リブ先端側部36からリブ後端側部37へ突き出た段差部38を設け、さらに、この段差部38の位置を、後軸5の後端部に形成された後端内面5Dよりも前方としたので、図示しない測定具、例えば、ピンゲージを利用して、ガイドレール33の内縁寸法を測定する時に、ピンゲージが後軸5の内部に落下しても、落下するピンゲージが段差部38に係止されて後端内面5Dに到達せず、後端内面5Dの正面カム部39を保護することができる。また、後軸5の外周面に塗装あるいは印刷を行う場合、図示しない心金を後軸5の内部に挿入しても、心金が段差部38に係止されて後端内面5Dに到達することがないので、この場合にも、正面カム部39を保護することができる。従って、寸法測定、塗装あるいは印刷を行う際に、後軸5の損傷を未然に防止することができる。
【0059】
また、後軸5の後端部にクリップ部8の後端部を結合し、このクリップ部8と後軸5の外周面との間にシート状のものを挟持可能とし、さらに、クリップ部8の長手方向をリブ35に沿うようにしたので、クリップ部8の先端部を後軸5の外周面から遠ざけることで、後軸5の側壁内部に応力を発生させても、発生した応力は、リブ35により分散され、一箇所に集中することがない。このため、クリップ部8でシート状のものを挟持する動作を何度も繰り返しても、後軸5が破損したりせず、これにより、後軸5の損傷を未然に防止することができる。
【0060】
さらに、寸法測定時にピンゲージ等の測定具が後軸5の内部に落下しても、落下するピンゲージ等が段差部38に係止されて後端内面5Dに到達せず、正面カム部39の変形を未然に防止することができる。また、塗装時あるいは印刷時に、心金を後軸5の内部に挿入しても、心金が段差部38に係止されて後端内面5Dに到達することがないので、この点からも、正面カム部39の変形を未然に防止することができる。これにより、後軸5の後端内面5Dに設けてられている正面カム部39の変形を防止できるので、ボールペンチップ2Aの出し入れ動作に支障をきたす等の不具合の発生を未然に防止することができる。
【0061】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲における変形及び改良などをも含むものである。
例えば、前記実施形態では、天冠7を射出成形で製造するにあたり、1箇所のゲート76を有する金型を利用したが、これに限らず、複数箇所のゲート76を有する金型を利用してもよい。例えば、
図20に示すように、装飾溝74A 及び装飾溝74C の前方2箇所にゲート76を設けてもよく、このようにしても、ウェルドマークが形成される部分77と、装飾溝74B との位置を一致させることができる。
【0062】
また、前記実施形態では、装飾溝として、天冠7の外周面に、その周方向に沿って90度間隔に並設されている装飾溝74A〜74Cを採用したが、これに限らず、
図21に示すように、天冠7の外周面において、その周方向に沿って120度間隔に並設されている装飾溝74D〜74Fでもよい。
装飾溝として、装飾溝74D〜74Fを採用する場合、
図22に示すように、天冠7の底面開口を囲む端面76B における装飾溝74E から等距離となる2箇所にゲート76を設けるのが好ましい。このようにすれば、ウェルドマークが形成される部分77と装飾溝74E との位置を一致させることができる。
【0063】
さらに、前記実施形態では、ゲートとして、天冠7の底面開口を囲む端面76B から、天冠7の側壁に沿った方向に溶融樹脂を注入するゲート76を採用したが、
図22に示すように、天冠7の内周面76Cの端縁近傍の部分から、天冠7の側壁に交差する方向に溶融樹脂を注入するゲート76D を採用してもよい。
また、筆記体としては、ボールペンリフィルに限らず、他の種類のリフィルでもよく、例えば、シャープペンシルリフィルでもよい。