特許第6184808号(P6184808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184808
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】中子型および中空構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/36 20060101AFI20170814BHJP
   B29C 43/12 20060101ALI20170814BHJP
   B29C 33/44 20060101ALI20170814BHJP
   B29C 70/44 20060101ALI20170814BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20170814BHJP
   B29K 101/10 20060101ALN20170814BHJP
   B29L 22/00 20060101ALN20170814BHJP
【FI】
   B29C43/36
   B29C43/12
   B29C33/44
   B29C70/44
   B29C43/34
   B29K101:10
   B29L22:00
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-184359(P2013-184359)
(22)【出願日】2013年9月5日
(65)【公開番号】特開2015-51538(P2015-51538A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直昭
(72)【発明者】
【氏名】矢▲崎▼ 忠
(72)【発明者】
【氏名】野中 誠
(72)【発明者】
【氏名】西川 徹
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−011474(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0196087(US,A1)
【文献】 特開昭63−041131(JP,A)
【文献】 特開昭62−207633(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/105402(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 43/00−43/58
B21C 41/00−41/36
B21C 41/46−41/52
B21C 41/38−41/44
B29C 70/00−70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の中子型の表面にプリプレグを積層した後、真空バッグを被せ、前記真空バッグ内を真空引きしながら加熱することにより、前記プリプレグを前記中子型に押し付けながら熱硬化させ、前記中子型に近似した形状の中空構造体を成形するのに用いられる中子型であって、
長尺方向に延びる第1の型部材と、
同じく長尺方向に延びて前記第1の型部材に隣接し、且つ前記中空構造体の成形後に、前記第1の型部材から分離させて前記長尺方向に抜き取ることが可能な第2の型部材と、
前記第1の型部材と前記第2の型部材との対向する合わせ面の少なくとも片面に被装される面状の剥離部材と、
を備え
前記面状の剥離部材を帯状に形成して前記長尺方向に沿って複数本並列に被装し、これら各面状の剥離部材の間に、前記長尺方向に沿う空きスペースを設けたことを特徴とする中子型。
【請求項2】
前記空きスペースに離型剤を介して被装される、前記プリプレグと同類の樹脂材料からなる樹脂帯をさらに備えたことを特徴とする請求項に記載の中子型。
【請求項3】
長尺状の中子型の表面にプリプレグを積層した後、真空バッグを被せ、前記真空バッグ内を真空引きしながら加熱することにより、前記プリプレグを前記中子型に押し付けながら熱硬化させ、前記中子型に近似した形状の中空構造体を成形するのに用いられる中子型であって、
長尺方向に延びる第1の型部材と、
同じく長尺方向に延びて前記第1の型部材に隣接し、且つ前記中空構造体の成形後に、前記第1の型部材から分離させて前記長尺方向に抜き取ることが可能な第2の型部材と、
前記第1の型部材と前記第2の型部材との間に離型剤を介して挟装され、前記長尺方向に延び、且つ前記プリプレグと同類の樹脂材料からなる樹脂帯と、
を具備してなることを特徴とする中子型。
【請求項4】
長尺状の中子型の表面にプリプレグを積層した後、真空バッグを被せ、前記真空バッグ内を真空引きしながら加熱することにより、前記プリプレグを前記中子型に押し付けながら熱硬化させ、前記中子型に近似した形状の中空構造体を成形する中空構造体の製造方法であって、
前記中子型を構成する長尺方向に延びる第1の型部材と、同じく長尺方向に延びて前記第1の型部材に隣接する第2の型部材と、の対向する合わせ面の少なくとも片面に面状の剥離部材を帯状に形成して前記長尺方向に沿って複数本並列に被装し、これら各面状の剥離部材の間に、前記長尺方向に沿う空きスペースを設ける剥離部材被装工程と、
前記第1の型部材と前記第2の型部材とを重ね合わせて前記中子型を組み立てる中子型組立工程と、
前記中子型の表面に前記プリプレグを積層するプリプレグ積層工程と、
前記プリプレグを積層した前記中子型に前記真空バッグを被せ、この真空バッグ内を真空引きしながら加熱する成形工程と、
前記中子型の前記第2の型部材を前記第1の型部材から分離させて前記長尺方向に抜き取り、次に前記第1の型部材を前記中空構造体から抜き取る中子型抜き取り工程と、
を備えてなることを特徴とする中空構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグを用いて長尺状の中空構造体を製造する際に用いる中子型および中空構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長尺状の中子型にプリプレグを積層(巻装)し、これに真空バッグを被せ、この真空バッグ内を真空引きしながら加熱することにより、プリプレグを中子型に押し付けながら熱硬化させ、中子型に近似した中空構造体を成形する方法が、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
この成形方法において、成形が完了してプリプレグが硬化した後、成形された中空構造体から中子型を容易に抜き取る方法として、同文献の図6に示されるように、予め中子型を例えば上型、中型、下型の3枚に分割できる構造にしておき、まず中型を引き抜いてから、上型と下型とを中空構造体の内壁面から剥離して抜き取れるようにする方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−11477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の三分割式の中子型においては、その上型と下型との間から中型を引き抜く際に、摩擦抵抗により中型が引き抜きにくくなる傾向があり、この状態で強引に中型を引き抜くと、上中下各型の合わせ面が傷付いたり摩滅したりして中子型の耐久性が低下する懸念があった。
【0006】
また、上記のようにプリプレグを加圧および加熱しながら中子型の形状に合わせて成形する際に、溶融または軟化したプリプレグの樹脂材料が、成形時の圧力により中子型の合わせ面に入り込んでしまい、このために完成した中空構造体の肉厚が減少したり、寸法精度等の品質が低下してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、中空構造体の成形後に分割式の中子型を抜き取りやすくするとともに、中子型の耐久性を高め、且つ、中子型の合わせ面に樹脂が入りこんで中空構造体の肉厚が減少することを防止することのできる中子型および中空構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
まず、本発明に係る中子型の第1の態様は、長尺状の中子型の表面にプリプレグを積層した後、真空バッグを被せ、前記真空バッグ内を真空引きしながら加熱することにより、前記プリプレグを前記中子型に押し付けながら熱硬化させ、前記中子型に近似した形状の中空構造体を成形するのに用いられる中子型であって、長尺方向に延びる第1の型部材と、同じく長尺方向に延びて前記第1の型部材に隣接し、且つ前記中空構造体の成形後に、前記第1の型部材から分離させて前記長尺方向に抜き取ることが可能な第2の型部材と、前記第1の型部材と前記第2の型部材との対向する合わせ面の少なくとも片面に被装される面状の剥離部材と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記第1の態様によれば、第1の型部材と第2の型部材との合わせ面の間に面状の剥離部材が介在することにより、合わせ面における摩擦係数が小さくなり、第1の型部材と第2の型部材とが剥離しやすくなる。
【0010】
したがって、中空構造体の成形後に第1の型部材から第2の型部材を剥離して抜き取るのが容易になり、第2の型部材、ひいては中子型全体を中空構造体から抜き取る際の作業性を高めるとともに、第1の型部材と第2の型部材の合わせ面が傷付いたり摩滅したりすることを防止して中子型の耐久性を高めることができる。なお、第1の型部材と第2の型部材との合わせ面に被装される面状の剥離部材は、損傷しても交換が容易であるため、中子型のコンディションを長期間に亘って健全に保つことができる。
【0011】
しかも、第1の型部材と第2の型部材との間に介在する剥離部材として液密性のあるものを用いることにより、第1の型部材と第2の型部材との合わせ面を液密的にシールすることができる。このため、プリプレグを加圧および加熱しながら中子型の形状に合わせて成形する際に、溶融または軟化したプリプレグの樹脂材料が成形時の圧力により中子型の合わせ面に入り込むことが防止され、このために完成した中空構造体の肉厚が減少したり、寸法精度等の品質が低下してしまうことが防止される。
【0012】
また、好ましくは、上記第1の態様において、前記剥離部材を帯状に形成して前記長尺方向に沿って複数本並列に被装し、これら各剥離部材の間に、前記長尺方向に沿う空きスペースを設けるのがよい。
【0013】
このように、空きスペースを介在させながら、間隔を開けて複数本の剥離部材を配列すれば、剥離部材が第1の型部材および第2の型部材の合わせ面に密着する面積が格段に減少するため、第1の型部材から第2の型部材を剥離して抜き取る際の摩擦抵抗をより小さくし、第2の型部材を抜き取りやすくすることができる。
【0014】
また、上記第1の態様において、前記複数本の剥離部材の間に空きスペースを設けた場合には、前記空きスペースに、前記プリプレグと同類の樹脂材料からなる樹脂帯を、離型剤を介して貼着してもよい。
【0015】
上記構成によれば、第1の型部材と、これに隣接する第2の型部材との間に、プリプレグと同類の樹脂材料からなる樹脂帯が剥離部材と共に挟装されることにより、中空構造体を加圧および加熱しながら成形する時に、熱によって樹脂帯が軟化し、その軟化した樹脂材料が第1の型部材と第2の型部材との間(合わせ面)から、加圧の圧力により、中空構造体を形成するプリプレグの方に膨出し、プリプレグの樹脂材料が補填される。
【0016】
このため、従来のように、本来プリプレグを形成するべき樹脂材料が、第1の型部材と第2の型部材との間に入り込んでしまい、完成した中空構造体の肉厚が減少してしまったり、寸法精度等の品質が低下してしまうことを防止できる。なお、樹脂帯は、第1の型部材と第2の型部材との間に離型剤を介して介装されるため、前記の剥離部材と同様に、第1の型部材と第2の型部材との間を剥離させやすくする効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る中子型の第2の態様は、長尺状の中子型の表面にプリプレグを積層した後、真空バッグを被せ、前記真空バッグ内を真空引きしながら加熱することにより、前記プリプレグを前記中子型に押し付けながら熱硬化させ、前記中子型に近似した形状の中空構造体を成形するのに用いられる中子型であって、長尺方向に延びる第1の型部材と、同じく長尺方向に延びて前記第1の型部材に隣接し、且つ前記中空構造体の成形後に、前記第1の型部材から分離させて前記長尺方向に抜き取ることが可能な第2の型部材と、前記第1の型部材と前記第2の型部材との間に離型剤を介して挟装され、前記長尺方向に延び、且つ前記プリプレグと同類の樹脂材料からなる樹脂帯と、を具備してなることを特徴とする。
【0018】
上記第2の態様によれば、第1の型部材と第2の型部材との間に離型剤を介して樹脂帯が挟装されることにより、各型部材と樹脂帯との間に介在する離型剤によって第1の型部材と第2の型部材との間が剥離しやすくなり、中空構造体の成形後に第1の型部材と第2の型部材を抜き取りやすくなる。
【0019】
このため、成形された中空構造体から中子型を抜き取る際の作業性を高めるとともに、第1の型部材と第2の型部材との間に樹脂帯が介在することにより、第2の型部材の抜き取り時に第1の型部材と第2の型部材の合わせ面が傷付いたり摩滅したりすることを防止し、中子型の耐久性を高めることができる。
【0020】
しかも、中空構造体を加圧および加熱しながら成形する時に、熱によって樹脂帯が軟化し、その軟化した樹脂材料が第1の型部材と第2の型部材との間(合わせ面)から、加圧の圧力により、中空構造体を形成するプリプレグの方に膨出し、プリプレグの樹脂材料が補填される。
【0021】
このため、従来のように、本来プリプレグを形成するべき樹脂材料が、第1の型部材と第2の型部材との間に入り込んでしまい、完成した中空構造体の肉厚が減少してしまったり、寸法精度等の品質が低下してしまうことを防止できる。
【0022】
また、本発明に係る中空構造体の製造方法は、長尺状の中子型の表面にプリプレグを積層した後、真空バッグを被せ、前記真空バッグ内を真空引きしながら加熱することにより、前記プリプレグを前記中子型に押し付けながら熱硬化させ、前記中子型に近似した形状の中空構造体を成形する中空構造体の製造方法であって、前記中子型を構成する長尺方向に延びる第1の型部材と、同じく長尺方向に延びて前記第1の型部材に隣接する第2の型部材と、の対向する合わせ面の少なくとも片面に面状の剥離部材を被装する剥離部材被装工程と、前記第1の型部材と前記第2の型部材とを重ね合わせて前記中子型を組み立てる中子型組立工程と、前記中子型の表面に前記プリプレグを積層するプリプレグ積層工程と、前記プリプレグを積層した前記中子型に前記真空バッグを被せ、この真空バッグ内を真空引きしながら加熱する成形工程と、前記中子型の前記第2の型部材を前記第1の型部材から分離させて前記長尺方向に抜き取り、次に前記第1の型部材を前記中空構造体から抜き取る中子型抜き取り工程と、を備えてなることを特徴とする。
【0023】
上記の中空構造体の製造方法によれば、第1の型部材と、これに隣接する第2の型部材との合わせ面の間に面状の剥離部材が介在することにより、合わせ面における摩擦係数が小さくなり、第1の型部材と第2の型部材との間が剥離しやすくなる。
【0024】
したがって、中子型抜き取り工程において、第1の型部材から第2の型部材を剥離して長尺方向に抜き取りやすくなり、これによって中空構造体の成形後に中子型を抜き取る際の作業性を高めるとともに、第1の型部材と第2の型部材の合わせ面が傷付いたり摩滅したりすることを防止して中子型の耐久性を高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明に係る中子型および中空構造体の製造方法によれば、中空構造体の成形後に分割式の中子型を抜き取りやすくするとともに、中子型の耐久性を高め、且つ、中子型の合わせ面に樹脂が入りこんで中空構造体の肉厚が減少することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態を示す中子型の斜視図である。
図2】本発明に係る中空構造体の製造方法を示し、(a)は剥離部材被装工程、(b)は中子型組立工程、(c)はプリプレグ積層工程、(d)は成形工程、(e)は中子型抜き取り工程を、それぞれ示す図である。
図3】本発明の第2実施形態を示す中子型の斜視図である。
図4】本発明の第3実施形態を示す中子型の斜視図である。
図5】本発明の第4実施形態を示す中子型の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図1図5を参照しながら説明する。
【0028】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態を示す中子型11の斜視図である。
この中子型11は、例えばヘリコプターのローターブレードのような長尺状の中空構造体SをプリプレグPで形成するために用いるものである。具体的には、中子型11の表面にプリプレグPを積層(巻装)した後、後述するように真空バッグVを被せ、この真空バッグVの内部を真空引きしながら加熱成形することにより、プリプレグPを中子型11の外周面に押し付けながら熱硬化させ、中子型11に近似した形状の中空構造体Sを成形する、所謂オートクレーブ成形を行うためのものである。そして、このオートクレーブ成形後に中空構造体Sから中子型11が抜き取られて中空構造体Sが完成する。
【0029】
中子型11は、長尺方向に延びる2本の外型部材2(第1の型部材)と、これらの外型部材2の間に挟まれる中型部材3(第2の型部材)とを備えている。中型部材3は、中空構造体Sの成形後に、2本の外型部材2の間から長尺方向に抜き取ることが可能である。
【0030】
また、2本の外型部材2と中型部材3との対向する合わせ面の少なくとも片面には、低摩擦性材料で形成されたテープ5(剥離部材)が貼着されている。本実施形態ではテープ5が中型部材3の両面に貼着されているが、テープ5を外型部材2の方に貼着したり、外型部材2と中型部材3の両方に貼着してもよい。
【0031】
テープ5の材質として好ましいのは、例えばポリテトラフルオロエチレン(登録商標:テフロン)等のフッ素樹脂系材料であるが、剥離性と耐熱性に優れていれば、例えばポリプロピレン、ポリアレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、シリコーン系樹脂、アルキット系樹脂等、他の材質とすることも考えられる。さらに、粘着性のあるテープ5を剥離部材として用いる代わりに、上記の各材料等からなるフィルム、あるいは上記各材料をコーティングされたフィルム等を用いてもよい。
【0032】
次に、この中子型11を用いた中空構造体Sの製造方法について、図2(a)〜(e)を参照しながら説明する。
まず、図2(a)に示すように、中子型11を構成する中型部材3の両面(合わせ面)にテープ5を貼着する(剥離部材被装工程A)。テープ5は、中型部材3の両面に貼着する代わりに、外型部材2の合せ面に貼着してもよい。
【0033】
次に、図2(b)に示すように、両面にテープ5が貼着された中型部材3に、2枚の外型部材2を重ね合わせて中子型11を組み立てる(中子型組立工程B)。この時、テープ5と外型部材2との間に離型剤を塗布するとより好ましい。
【0034】
次に、図2(c)に示すように、中子型11の表面にプリプレグPを積層する(プリプレグ積層工程C)。
【0035】
次に、図2(d)の左側に示すように、プリプレグPを積層した中子型11に真空バッグVを被せ、その後、図2(d)の右側に示すように、真空バッグVの内部を真空引きしながら加熱するオートクレーブ成形を行う(成形工程D)。
【0036】
成形工程Dにおいて所定の加熱時間が経過し、プリプレグPが熱硬化すると、中空構造体Sが完成する。その後、中子型11を空構造体Sとともに真空バッグVから取り出し、図2(e)の左側に示すように、まず中子型11の中型部材3を2本の外型部材2の間から剥離させて長尺方向に抜き取り、その後、図2(e)の右側に示すように、2本の外型部材2を中空構造体Sから抜き取る(中子型抜き取り工程E)。先に中型部材3が2本の外型部材2の間から抜き取られることにより、その後で2本の外型部材2を中空構造体Sから容易に抜き取ることができる。これにより、中空構造体Sが完成する。
【0037】
上記のように構成された中子型11、および中空構造体Sの製造方法によれば、2本の外型部材2と、その間に挟まれる中型部材3との、対向する合わせ面の間に、フッ素樹脂等の低摩擦性材料で形成されたテープ5が介在することにより、外型部材2と中型部材3との間の摩擦係数が小さくなり、外型部材2と中型部材3との間が剥離しやすくなる。
【0038】
したがって、中子型抜き取り工程Eにおいて、最初に2本の外型部材2の間から中型部材3を長尺方向に抜き取る際に、中型部材3を非常に抜き取りやすくなり、中型部材3を抜き取る際の作業性を格段に高めるとともに、外型部材2と中型部材3の合わせ面が傷付いたり摩滅したりすることを防止し、中子型11の耐久性を飛躍的に高めることができる。
【0039】
テープ5は、損傷しても交換が容易であるため、定期的に交換することにより、中子型11のコンディションを長期間に亘って健全に保つことができる。
【0040】
しかも、外型部材2と中型部材3との間に介在するテープ5として、液密性のあるものを用いることにより、外型部材2と中型部材3との間が液密的にシールされるため、真空バッグVの内部でプリプレグPを加圧および加熱しながら中子型11の形状に合わせて成形する際に、溶融または軟化したプリプレグPの樹脂材料が、成形時の圧力によって中子型11の分割面に入り込んでしまうことが防止される。このため、完成した中空構造体Sの肉厚が減少したり、精度が低下してしまうことを防止することができる。
【0041】
[第2実施形態]
図3は、本発明の第2実施形態を示す中子型21の斜視図である。
この第2実施形態では、中子型21を構成する中型部材3の両面に、第1実施形態と同様に、低摩擦材料で形成されたテープ5が貼着されているが、このテープ5は長尺方向に沿って複数本並列に貼着され、これら各テープ5の間に、長尺方向に沿う複数の空きスペース6が設けられている。その以外の構成は第1実施形態と同様である。
【0042】
例えば、これら複数のテープ5の幅寸法は各々10mmであり、空きスペース6の幅寸法も10mmとされている。このテープ5の本数およびテープ5と空きスペース6の幅寸法は、中空構造体Sの寸法に応じて適宜変更することができる。また、テープ5と空きスペース6の幅寸法は、必ずしも全て同一寸法である必要はない。なお、テープ5は、中型部材3の両面に貼着する代わりに、外型部材2の接合面に貼着してもよい。
【0043】
このように、中型部材3の両面(または外型部材2の接合面)に、間隔を開けて複数本のテープ5を貼着し、その間に空きスペース6を設けることにより、テープ5が外型部材2(または中型部材3)に密着する面積が格段に減少する。このため、外型部材2の間から中型部材3を抜き取る際の摩擦抵抗を第1実施形態の場合より小さくし、成形完了後に中型部材3を外型部材2の間からさらに抜き取りやすくすることができる。また、テープ部材5の使用量を減少させてコストダウンを図ることができる。
【0044】
[第3実施形態]
図4は、本発明の第3実施形態を示す中子型31の斜視図である。
この第3実施形態では、中子型31を構成する中型部材3の両面に、第2実施形態と同様に、低摩擦材料で形成された複数本のテープ5が貼着され、これら各テープ5の間に複数の空きスペース6が設けられている。そして、これらの空きスペース6に、複数本の樹脂帯7が離型剤を介して貼着されている。
【0045】
これらの樹脂帯7は、プリプレグPと同類の樹脂材料からなり、帯状に形成されている。なお、樹脂帯7は強化繊維を含まないものとしてもよい。樹脂帯7の厚みは、テープ5の厚みと同一に設定するのが好ましい。また、樹脂帯7の幅は、空きスペース6の幅と同じか、やや小さく設定される。その他の構成は第2実施形態と同様である。
【0046】
このように、中型部材3の両面(または外型部材2の接合面)に、間隔を開けて複数本のテープ5を貼着し、その間の空きスペース6に、プリプレグPと同類の樹脂材料からなる帯状に形成された樹脂帯7を、離型剤を介して貼着することにより、2本の外型部材2と中型部材3との間(合わせ面)に樹脂帯7がテープ5と共に挟装される。
【0047】
このため、前述の成形工程Dにおいて、中空構造体Sを加圧および加熱しながら成形する時に、熱によって樹脂帯7が軟化し、その軟化した樹脂材料が外型部材2と中型部材3との間(合わせ面)から、加圧の圧力により、中空構造体Sを形成するプリプレグPの方に膨出し、プリプレグPの樹脂材料が補填される。なお、テープ5よりも樹脂帯7を厚くすることにより、軟化した樹脂帯7の樹脂材料をより積極的にプリプレグPの方に膨出させるようにしてもよい。
【0048】
このため、従来のように、本来プリプレグPを形成するべき樹脂材料が、外型部材2と中型部材3との間に入り込んでしまい、完成した中空構造体Sの肉厚が減少してしまったり、精度が低下してしまうことを防止できる。なお、樹脂帯7は、外型部材2と中型部材3との間に離型剤を介して介装されるため、テープ5と同様に、外型部材2と中型部材3との間を剥離させやすくする効果を奏する。
【0049】
[第4実施形態]
図5は、本発明の第4実施形態を示す中子型41の斜視図である。
この第4実施形態では、中子型41を構成する2本の外型部材2と中型部材3との間に、プリプレグPと同類の樹脂材料からなる樹脂帯8が離型剤を介して挟装されており、第1〜第3実施形態のテープ5は用いられていない。樹脂帯8の幅は、中子型41(外型部材2、中型部材3)の幅と略同一に設定されている。
【0050】
このように、外型部材2と中型部材3との間に、プリプレグPと同類の樹脂材料からなる樹脂帯8を、離型剤を介して挟装することにより、各型部材2,3と樹脂帯8との間に介在する離型剤によって外型部材2と中型部材3との間が剥離しやすくなり、中空構造体Sの成形後に2本の外型部材2の間から中型部材3を抜き取りやすくなる。
【0051】
このため、中型部材3を抜き取る際の作業性を高めるとともに、中型部材3の抜き取りに伴い、外型部材2と中型部材3の合わせ面が傷付いたり摩滅したりすることを防止し、中子型41の耐久性を高めることができる。
【0052】
また、第3実施形態と同じく、中空構造体Sを加圧および加熱しながら成形する時(成形工程D)に、熱により樹脂帯8が軟化し、その軟化した樹脂材料が外型部材2と中型部材3との間(合わせ面)から中空構造体Sを形成するプリプレグPの方に膨出し、プリプレグPの樹脂材料を補填する作用がある。これにより、完成した中空構造体Sの肉厚が減少してしまったり、寸法精度等の品質が低下してしまうことを防止できる。
【0053】
以上のように、本発明に係る中子型11,21,31,41および中空構造体Sの製造方法によれば、中空構造体Sの成形後に分割式の中子型11,21,31,41の外型部材2の間から中型部材3を抜き取りやすくするとともに、中子型11,21,31,41の耐久性を高め、且つ、外型部材2と中型部材3との合わせ面にプリプレグPの樹脂が逆流して中空構造体Sの肉厚が減少することを防止し、寸法精度等の品質を高めることができる。
【0054】
なお、本発明は、前記の第1〜第4実施形態の構成のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更や改良を加えることができ、このように変更や改良を加えた実施形態も本発明の権利範囲に含まれるものとする。
【0055】
例えば、中子型11,21,31,41(外型部材2、中型部材3)の形状や分割構造、および中空構造体Sの形状等は、前記実施形態のものに限定されることはない。即ち、前記各実施形態における中子型11,21,31,41は、2枚の外型部材2の間に1枚の中型部材3が挟まれる上下3分割構造であったが、これを上下2分割構造や、左右3分割(左右2分割)等にすることも考えられる。
【符号の説明】
【0056】
2 外型部材(第1の型部材)
3 中型部材(第2の型部材)
5 テープ(剥離部材)
6 空きスペース
7,8 樹脂帯
11,21,31,41 中子型
A 剥離部材被装工程
B 中子型組立工程
C プリプレグ積層工程
D 成形工程
E 中子型抜き取り工程
P プリプレグ
S 中空構造体
V 真空バッグ
図1
図2
図3
図4
図5