特許第6184811号(P6184811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6184811処理装置、処理方法および処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184811
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】処理装置、処理方法および処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/28 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   G01R31/28 K
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-187887(P2013-187887)
(22)【出願日】2013年9月11日
(65)【公開番号】特開2015-55513(P2015-55513A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】川村 和哉
【審査官】 山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−089973(JP,A)
【文献】 特開2010−107265(JP,A)
【文献】 特開平11−283709(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0187603(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体パターンが形成された回路基板に対する検査を行う際に検査用のプローブを接触させる当該導体パターン上の接触位置を当該回路基板の設計データに基づいて特定する特定処理を実行する処理部を備えた処理装置であって、
前記処理部は、前記特定処理において、処理対象として指定された複数の導体パターンにおける各重心位置をそれぞれ中心とする予め規定された半径の各円を特定する第1処理と、隣接する2つの前記導体パターンについての前記各円同士が2つの交点で交差するときに当該各交点を結ぶ直線を特定する第2処理と、前記隣接する2つの導体パターンにおける前記各重心位置を当該2つの導体パターンについての前記直線に沿って互いに逆向きに予め決められた長さだけそれぞれ移動させた移動後の位置を前記接触位置として特定する第3処理とを実行する処理装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記特定処理において特定した接触位置が前記導体パターン上に位置していないときにその旨を報知させる請求項1記載の処理装置。
【請求項3】
導体パターンが形成された回路基板に対する検査を行う際に検査用のプローブを接触させる当該導体パターン上の接触位置を当該回路基板の設計データに基づいて特定する特定処理を実行する処理方法であって、
前記特定処理において、処理対象として指定された複数の導体パターンにおける各重心位置をそれぞれ中心とする予め規定された半径の各円を特定する第1処理と、隣接する2つの前記導体パターンについての前記各円同士が2つの交点で交差するときに当該各交点を結ぶ直線を特定する第2処理と、前記隣接する2つの導体パターンにおける前記各重心位置を当該2つの導体パターンについての前記直線に沿って互いに逆向きに予め決められた長さだけそれぞれ移動させた移動後の位置を前記接触位置として特定する第3処理とを実行する処理方法。
【請求項4】
前記特定処理において特定した接触位置が前記導体パターン上に位置していないときにその旨を報知する請求項3記載の処理方法。
【請求項5】
導体パターンが形成された回路基板に対する検査を行う際に検査用のプローブを接触させる当該導体パターン上の接触位置を当該回路基板の設計データに基づいて特定する特定処理を処理装置に実行させる処理プログラムであって、
前記特定処理において、処理対象として指定された複数の導体パターンにおける各重心位置をそれぞれ中心とする予め規定された半径の各円を特定する第1処理と、隣接する2つの前記導体パターンについての前記各円同士が2つの交点で交差するときに当該各交点を結ぶ直線を特定する第2処理と、前記隣接する2つの導体パターンにおける前記各重心位置を当該2つの導体パターンについての前記直線に沿って互いに逆向きに予め決められた長さだけそれぞれ移動させた移動後の位置を前記接触位置として特定する第3処理とを前記処理装置に実行させる処理プログラム。
【請求項6】
前記特定処理において特定した接触位置が前記導体パターン上に位置していないときにその旨を報知する処理を前記処理装置に実行させる請求項5記載の処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査用のプローブを接触させる接触位置を特定する特定処理を実行する処理装置および処理方法、並びに特定処理を処理装置に実行させる処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、特開2010−107265号公報において出願人が開示したデータ生成装置が知られている。このデータ生成装置は、電子部品における各接続端子の先端部の位置を特定可能な情報を含んだ電子部品データ、電子部品を回路基板に実装するときの回路基板上の電子部品の位置等を示す情報を含んだマウンタデータ、および回路基板上における配線パターンの位置や幅(形状)を特定可能な情報を含んだ配線パターンデータ(CADデータやガーバデータ)に基づき、電子部品が実装されている回路基板に対する検査を行う際に検査用のプローブを接触(プロービング)させるプロービング位置(接触位置)を特定してその位置データを生成する。具体的には、このデータ生成装置では、実装状態の電子部品における接続端子の先端部の位置を電子部品データおよびマウンタデータに基づいて特定すると共に、配線パターンデータに基づいて配線パターンの位置を特定して、接続端子の先端部の位置に配線パターンが存在すると判別したときにその配線パターンの位置をプロービング位置として特定する。
【0003】
一方、電子部品が実装されていない回路基板(ベアボード)については、電子部品における接続端子の先端部の位置からプロービング位置を特定することができないため、上記の方法とは異なる方法でプロービング位置の特定が行われる。具体的には、例えば、上記した配線パターンデータに基づいて配線パターンの位置および形状(輪郭)を特定する。次いで、特定した形状の重心の位置を求め、その重心の位置をプロービング位置として設定する。
【0004】
ここで、複数の配線パターンにおける各々の重心が直線上に等間隔で並ぶように配列され、かつ各配線パターンの間隔が狭いときには、このようにして設定されたプロービング位置にプローブをプロービングさせようとする際に、プローブ同士やプローブ支持部同士が接触するおそれがある。このため、このように狭い間隔で複数の配線パターンが配列されているときには、各配線パターンの重心の位置を予め決められた長さだけ移動させた移動後の位置をプロービング位置として設定する。
【0005】
具体的には、回路基板の縁部に平行な直線上に重心が並ぶように配列されている配線パターンについては、その直線に直交する方向に沿って、隣接する配線パターンの各重心の位置を互いに逆向きに予め決められた長さだけ移動させた(つまり、各重心の位置を移動させて千鳥状に配置した)移動後の位置をプロービング位置として設定する。この場合、回路基板の縁部をX軸およびY軸のいずれか一方の軸に規定した場合、重心が並ぶ直線はその一方の軸と平行となり、この直線に直交する方向(重心の位置を移動させる方向)がX軸およびY軸の他方の軸となる。このため、重心の位置を示すXY座標における他方の軸の座標に予め決められた長さに相当する値(移動分の値)を加算するだけの簡易な演算でプロービング位置を特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−107265号公報(第5−6頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、複数の配線パターンのプロービング位置を上記のようにして特定する機能を備えた従来のデータ生成装置には、改善すべき以下の課題がある。すなわち、このデータ生成装置では、回路基板の縁部に平行な直線上に重心が並ぶように配列されている各配線パターンについては、その縁部をX軸およびY軸のいずれか一方の軸に規定したときの重心の位置を示すXY座標におけるX軸およびY軸の他方の軸の座標に移動分の値を加算する方法でプロービング位置を特定している。しかしながら、回路基板の縁部に対して傾斜する直線上に重心が並ぶように配列されている複数の配線パターンについては、上記の方法ではプロービング位置を特定することができない。このため、このような配線パターンについては、配線パターンデータに基づく画像や図面を参照しつつプロービング位置の座標を入力する作業を行っている。したがって、上記のデータ生成装置には、このような配線パターンについてのプロービング位置を特定する特定処理の効率が悪いという課題が存在し、この点の改善が望まれている。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、回路基板に対する検査を行う際にプローブを接触させる接触位置を特定する特定処理の効率を向上し得る処理装置および処理プログラムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく請求項1記載の処理装置は、導体パターンが形成された回路基板に対する検査を行う際に検査用のプローブを接触させる当該導体パターン上の接触位置を当該回路基板の設計データに基づいて特定する特定処理を実行する処理部を備えた処理装置であって、前記処理部は、前記特定処理において、処理対象として指定された複数の導体パターンにおける各重心位置をそれぞれ中心とする予め規定された半径の各円を特定する第1処理と、隣接する2つの前記導体パターンについての前記各円同士が2つの交点で交差するときに当該各交点を結ぶ直線を特定する第2処理と、前記隣接する2つの導体パターンにおける前記各重心位置を当該2つの導体パターンについての前記直線に沿って互いに逆向きに予め決められた長さだけそれぞれ移動させた移動後の位置を前記接触位置として特定する第3処理とを実行する。
【0010】
また、請求項2記載の処理装置は、請求項1記載の処理装置において、前記処理部は、前記特定処理において特定した接触位置が前記導体パターン上に位置していないときにその旨を報知させる。
【0011】
また、請求項3記載の処理方法は、導体パターンが形成された回路基板に対する検査を行う際に検査用のプローブを接触させる当該導体パターン上の接触位置を当該回路基板の設計データに基づいて特定する特定処理を実行する処理方法であって、前記特定処理において、処理対象として指定された複数の導体パターンにおける各重心位置をそれぞれ中心とする予め規定された半径の各円を特定する第1処理と、隣接する2つの前記導体パターンについての前記各円同士が2つの交点で交差するときに当該各交点を結ぶ直線を特定する第2処理と、前記隣接する2つの導体パターンにおける前記各重心位置を当該2つの導体パターンについての前記直線に沿って互いに逆向きに予め決められた長さだけそれぞれ移動させた移動後の位置を前記接触位置として特定する第3処理とを実行する。
【0012】
また、請求項4記載の処理方法は、請求項3記載の処理方法において、前記特定処理において特定した接触位置が前記導体パターン上に位置していないときにその旨を報知する。
【0013】
また、請求項5記載の処理プログラムは、導体パターンが形成された回路基板に対する検査を行う際に検査用のプローブを接触させる当該導体パターン上の接触位置を当該回路基板の設計データに基づいて特定する特定処理を処理装置に実行させる処理プログラムであって、前記特定処理において、処理対象として指定された複数の導体パターンにおける各重心位置をそれぞれ中心とする予め規定された半径の各円を特定する第1処理と、隣接する2つの前記導体パターンについての前記各円同士が2つの交点で交差するときに当該各交点を結ぶ直線を特定する第2処理と、前記隣接する2つの導体パターンにおける前記各重心位置を当該2つの導体パターンについての前記直線に沿って互いに逆向きに予め決められた長さだけそれぞれ移動させた移動後の位置を前記接触位置として特定する第3処理とを前記処理装置に実行させる。
【0014】
また、請求項6記載の処理プログラムは、請求項5記載の処理プログラムにおいて、前記特定処理において特定した接触位置が前記導体パターン上に位置していないときにその旨を報知する処理を前記処理装置に実行させる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の処理装置、請求項3記載の処理方法、および請求項5記載の処理プログラムでは、複数の導体パターンの各重心の位置をそれぞれ中心とする円を特定する第1処理と、隣接する2つの導体パターンの各円同士が2つの交点で交差するときに各交点を結ぶ直線を特定する第2処理と、隣接する2つの導体パターンの各重心の位置を直線に沿って互いに逆向きに予め決められた長さだけそれぞれ移動させた移動後の位置を接触位置として特定する第3処理とを特定処理において実行する。このような処理を実行することにより、この処理装置、処理方法および処理プログラムでは、回路基板の縁部に平行な直線上に重心が並ぶように導体パターンが配列されているか否かに拘わらず、プローブ同士やプローブ支持部同士の接触を回避することが可能な接触位置を自動的に特定させることができる。したがって、この処理装置、処理方法および処理プログラムによれば、回路基板の縁部に対して傾斜する直線上に重心が並ぶように配列されている各導体パターンについても、プローブ同士やプローブ支持部同士の接触を確実に回避可能な接触位置を自動的に特定させることができる結果、接触位置を特定する特定処理の効率を十分に向上させることができる。
【0016】
また、請求項2記載の処理装置、請求項4記載の処理方法、および請求項6記載の処理プログラムでは、特定処理において特定した接触位置が導体パターン上に位置していないときにその旨を報知する処理を実行する。このため、この処理装置、処理方法および処理プログラムによれば、重心の位置を移動させる長さを長く規定することによって(移動させる長さが長すぎて)接触位置が導体パターン上に位置していないときには、その旨を表示することで、プロービングが確実に行われる位置にその接触位置を修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】処理装置1の構成を示す構成図である。
図2】回路基板100aの模式的な構成を示す構成図である。
図3】特定処理50のフローチャートである。
図4】特定処理50を説明する第1の説明図である。
図5】特定処理50を説明する第2の説明図である。
図6】特定処理50を説明する第3の説明図である。
図7】回路基板100bの模式的な構成を示す構成図である。
図8】特定処理50を説明する第4の説明図である。
図9】特定処理50を説明する第5の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、処理装置、処理方法および処理プログラムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
最初に、処理装置の一例としての処理装置1の構成について、図1を参照して説明する。この処理装置1は、操作部2、表示部3、記憶部4および処理部5を備えて、例えば、図2,7にそれぞれ示す回路基板100a,100b(以下、区別しないときには「回路基板100」ともいう)に対する電気的検査を行う際に、検査用のプローブ(図示せず)を接触させる導体パターンP1〜P40(以下、区別しないときには「導体パターンP」ともいう)上の接触位置T1〜T40(図6,9参照:以下、区別しないときには「接触位置T」ともいう)を特定すると共に、その接触位置Tを示す接触位置データDpを生成可能に構成されている。なお、図2、および図4図9では、回路基板100の一部のみを表示部3に表示させている状態を図示している。
【0020】
操作部2は、キーボードやポインティングデバイス(マウス)等の入力装置を備えて構成されて、操作に応じて、処理部5に対して操作信号を出力する。表示部3は、処理部5の制御に従い、各種の画像を表示する。
【0021】
記憶部4は、例えば、磁気記憶媒体やRAMなどを備えて構成され、処理部5に対して特定処理50(図3参照)を実行させる処理プログラムPrを記憶する。また、記憶部4は、回路基板100の設計データDdを記憶する。この設計データDdは、特定処理50において用いられるデータであって、導体パターンPの形状(輪郭)および回路基板100上における導体パターンPの位置を特定可能なベクタデータを含んで構成されている。この場合、設計データDdは、一例としてガーバフォーマット形式で記述されている。また、記憶部4は、特定処理50において処理部5によって生成される接触位置データDpを記憶する。
【0022】
処理部5は、操作部2から出力される操作信号に従って処理装置1を構成する各部を制御する。また、処理部5は、図3に示す特定処理50を実行することにより、上記した接触位置Tを特定すると共に、その接触位置Tを示す接触位置データDpを生成して記憶部4に記憶させる。
【0023】
次に、処理装置1を用いて、一例として、図2,7にそれぞれ示す回路基板100a,100bの導体パターンP1〜P40における接触位置T1〜T40を特定して接触位置データDpを生成する手順、およびその際の処理装置1の動作について、図面を参照して説明する。この場合、上記した処理プログラムPr、および回路基板100a,100bについての設計データDdが記憶部4に既に記憶されているものとする。
【0024】
まず、操作部2を操作して、図2に示す回路基板100aを対象とする特定処理の開始を指示する。これに応じて、処理部5が、回路基板100aについての設計データDdおよび処理プログラムPrを記憶部4から読み出す。次いで、処理部5は、処理プログラムPrに従い、図3に示す特定処理50を実行する。
【0025】
この特定処理50では、処理部5は、図3に示すように、表示処理を実行する(ステップ51)。この表示処理では、処理部5は、読み出した設計データDdに基づいて回路基板100aにおける各導体パターンPの形状(輪郭)を特定する。続いて、処理部5は、表示用の画像データを生成して表示部3に出力することにより、図2に模式的に示すように、各導体パターンPの形状を示す回路基板100aの画像を表示部3に表示させる。この場合、この回路基板100aでは、同図に示すように、導体パターンP1〜P5、導体パターンP6〜P10、導体パターンP11〜P15、および導体パターンP16〜P20が、回路基板100aにおける直線状の縁部101aに平行な直線A1,A3上および縁部101bに平行な直線A2,A4上に各重心Gが並ぶようにそれぞれ配列されている。
【0026】
次いで、特定処理の対象(処理対象)とする導体パターンPを指定する。具体的には、操作部2のポインティングデバイスを操作して、図4に示すように、表示部3の画面内において、回路基板100aにおける各導体パターンPの中から、処理対象とする複数の導体パターンP(例えば、導体パターンP1〜P5)を囲むように枠Fを描く。この際に、処理部5が、操作部2から出力される操作信号に基づいて枠F内に位置している導体パターンP1〜P5を特定し、その導体パターンPを処理対象に設定する。
【0027】
続いて、処理部5は、図3に示すように、第1処理を実行する(ステップ52)。この第1処理では、処理部5は、図4に示すように、設計データDdに基づいて特定した導体パターンP1〜P5における各重心Gの位置を特定し、次いで、特定した各重心Gの位置をそれぞれ中心とする半径R(予め規定された半径であって、一例として、2本の検査用のプローブ同士および各プローブを支持する各プローブ支持部同士が接触がしない範囲で各プローブをプロービングさせることができる各プローブ間の最小距離程度)の円C1〜C5(以下、区別しないときには「円C」ともいう)を特定(仮想的に描画)する。この場合、円Cの半径Rを導体パターンPの幅と同程度としてもよい。なお、重心Gの特定方法については、周知の各種方法を用いることができるため、詳細な説明を省略する。
【0028】
続いて、処理部5は、図3に示すように、第2処理を実行する(ステップ53)。この第2処理では、処理部5は、隣接する2つの導体パターンPの各円Cが2つの交点で互いに交差するか否かを判別し、交差すると判別したときには、その各交点を結ぶ直線を特定する。この場合、図5に示すように、隣接する導体パターンP1,P2の円C1,C2、隣接する導体パターンP2,P3の円C2,C3、隣接する導体パターンP3,P4の円C3,C4、および隣接する導体パターンP4,P5の円C4,C5がいずれも2つの交点で互いに交差するため、処理部5は、同図に示すように、各交点を結ぶ直線L1〜L4(以下、区別しないときには「直線L」ともいう)を特定する。
【0029】
次いで、処理部5は、図3に示すように、第3処理を実行する(ステップ54)。この第3処理では、処理部5は、図5に示すように、隣接する2つの導体パターンPにおける各重心Gの位置をその2つの導体パターンPについての直線Lに沿って予め決められた長さQ(一例として、上記した円Cの半径Rと同程度)だけ移動させ、その移動後の位置を接触位置Tとして特定する。この場合、隣接する2つの導体パターンPの一方における重心Gの位置と、その2つの導体パターンPの他方における重心Gの位置とを、重心Gを基準として互いに逆向きにそれぞれ移動させる。これにより、同図に示すように、各処理対象の導体パターンP1〜P5における各接触位置T1〜T5が千鳥状に配列された状態となる。
【0030】
このように重心Gの位置を移動させた移動後の位置を接触位置Tとすることで、隣接する各導体パターンPの重心G同士が近接している場合においても、接触位置T同士を離間させることができるため、各接触位置Tにプローブをプロービングさせるときのプローブ同士やプローブ支持部同士の接触を回避することが可能となる。
【0031】
続いて、処理部5は、特定した接触位置T1〜T5を示す接触位置データDpを生成して記憶部4に記憶させて(ステップ55)、この特定処理50を終了する。なお、第2処理(ステップ53)において、隣接する2つの導体パターンPの各円Cが交差しないとき、または1点で接するときには、各導体パターンPの重心G同士が近接していないため、処理部5は、重心Gの位置をそのまま接触位置Tとして特定する。
【0032】
次いで、回路基板100aにおける導体パターンP6〜P10の接触位置Tを特定させるときには、操作部2を操作して処理部5に特定処理50を実行させ、処理部5が、表示処理(ステップ51)を実行している状態において、特定処理の対象として導体パターンP6〜P10を指定する。続いて、処理部5が上記したステップ52〜54を実行することにより、各処理対象の導体パターンP6〜P10における各接触位置T6〜T10が特定される。以下、同様の操作(処理開始の操作、および処理対象の導体パターンPの指定操作)をし、処理部5が特定処理50を実行することにより、図6に示すように、回路基板100aの各導体パターンP11〜P20についての各接触位置T11〜T20が特定される。
【0033】
次に、操作部2を操作して、図7に示す回路基板100bを対象とする特定処理の開始を指示する。これに応じて、処理部5が、回路基板100bについての設計データDdおよび処理プログラムPrを記憶部4から読み出し、次いで、図3に示す特定処理50を実行する。
【0034】
特定処理50において、処理部5は、まず表示処理(ステップ51)を実行して、図7に模式的に示すように、各導体パターンPの形状を示す回路基板100bの画像を表示部3に表示させる。この場合、この回路基板100bでは、同図に示すように、導体パターンP21〜P25、導体パターンP26〜P30、導体パターンP31〜P35、および導体パターンP36〜P40が、回路基板100bにおける直線状の縁部101c,101d(以下、上記した縁部101a,101bおよび縁部101c,101dを区別しないときには、「縁部101」ともいう)に対して傾斜する直線A5〜A8上に重心Gが並ぶように配列されている。
【0035】
続いて、図7に示すように、処理対象とする導体パターンP21〜P25を囲むように枠Fを描く。次いで、処理部5が、枠F内に位置している導体パターンP21〜P25を特定する。続いて、処理部5は、第1処理(特定処理50のステップ52)を実行して、同図に示すように、導体パターンP21〜P25の各重心Gの位置をそれぞれ中心とする半径Rの円C21〜C25(以下、区別しないときには「円C」ともいう)を特定する。
【0036】
次いで、処理部5は、第2処理(特定処理50のステップ53)を実行して、隣接する2つの導体パターンPの各円Cが2つの交点で互いに交差するか否かを判別し、交差すると判別したときには、その各交点を結ぶ直線を特定する。この場合、図8に示すように、隣接する導体パターンP21,P22の円C21,C22、隣接する導体パターンP22,P23の円C22,C23、隣接する導体パターンP23,P24の円C23,C24、および隣接する導体パターンP24,P25の円C24,C25がいずれも2つの交点で互いに交差するため、処理部5は、同図に示すように、各交点を結ぶ直線L21〜L24(以下、区別しないときには「直線L」ともいう)を特定する。
【0037】
続いて、処理部5は、第3処理(ステップ54)を実行して、図8に示すように、隣接する2つの導体パターンPにおける各重心Gの位置をその2つの導体パターンPについての直線Lに沿って予め決められた長さQだけ移動させ、その移動後の位置を接触位置Tとして特定する。これにより、同図に示すように、各処理対象の導体パターンP21〜P25における各接触位置T21〜T25が千鳥状に配列された状態となる。
【0038】
ここで、従来の構成および方法では、回路基板100の縁部(上記の回路基板100bでは、縁部101c)をX軸およびY軸の一方の軸(例えばY軸)に規定し、そのときの重心Gの位置を示すXY座標におけるX軸およびY軸の他方の軸(この例ではX軸)の座標に移動分の値を加算する方法で接触位置Tを特定している。しかしながら、この方法では、上記した回路基板100aの導体パターンP1〜P5のように、回路基板100aの縁部101aに平行な直線A1上に各重心Gが並ぶように配列されていない限り、接触位置Tを特定することができない。つまり、従来の構成および方法では、上記した回路基板100bのように、縁部101c,101dに対して傾斜する直線A5上に各重心Gが並ぶように配列されている導体パターンP21〜P25の接触位置Tを自動的に特定することができないため、設計データDdに基づく回路基板100bの画像や図面を参照しつつ接触位置Tの座標を入力する作業を行う必要がある。
【0039】
これに対して、この処理装置1および処理方法では、上記した第1処理〜第3処理を実行して、従来の構成および方法とは全く異なる方法で接触位置Tを特定することで、上記したように、回路基板100bの縁部101c,101dに対して傾斜する直線A5上に重心Gが並ぶように配列されている各導体パターンP21〜P25についても、プローブ同士やプローブ支持部同士の接触を回避することが可能な接触位置Tを自動的に特定させることが可能となっている。
【0040】
次いで、処理部5は、特定した接触位置T21〜T25を示す接触位置データDpを生成して記憶部4に記憶させて(ステップ55)、この特定処理50終了する。以下、同様の操作(処理開始の操作、および処理対象の導体パターンPの指定操作)をし、処理部5が特定処理50を実行することにより、図9に示すように、回路基板100bの各導体パターンP26〜P40についての各接触位置T26〜T40が特定される。
【0041】
このように、この処理装置1、処理方法および処理プログラムPrでは、複数の導体パターンPの各重心Gの位置をそれぞれ中心とする円Cを特定する第1処理と、隣接する2つの導体パターンPの各円C同士が2つの交点で交差するときに各交点を結ぶ直線Lを特定する第2処理と、隣接する2つの導体パターンPの各重心Gの位置を直線Lに沿って互いに逆向きに長さQだけそれぞれ移動させた移動後の位置を接触位置Tとして特定する第3処理とを特定処理50において実行する。このような処理を実行することにより、この処理装置1、処理方法および処理プログラムPrでは、回路基板100の縁部101に平行な直線A上に重心Gが並ぶように導体パターンPが配列されているか否かに拘わらず、プローブ同士やプローブ支持部同士の接触を回避することが可能な接触位置Tを自動的に特定させることができる。したがって、この処理装置1、処理方法および処理プログラムPrによれば、回路基板100の縁部101に対して傾斜する直線A上に重心Gが並ぶように配列されている各導体パターンPについても、プローブ同士やプローブ支持部同士の接触を確実に回避可能な接触位置Tを自動的に特定させることができる結果、接触位置Tを特定する特定処理の効率を十分に向上させることができる。
【0042】
なお、処理装置、処理方法および処理プログラムにおいて、次のような処理を行う構成および方法を採用することもできる。この構成および方法では、特定処理50において特定した接触位置Tが導体パターンP上に位置していないときにはその旨を報知する処理を実行する。具体的には、上記した第3処理(特定処理50のステップ54)において特定した接触位置Tが、設計データDdに基づいて特定される導体パターンPの輪郭内に位置しているか否かを処理部5が判別する。
【0043】
この際に、接触位置Tが導体パターンPの輪郭内に位置していないと判別したときには、処理部5は、その旨を示す表示(文字情報)を表示部3に表示させる。この処理装置、処理方法および処理プログラムによれば、長さQを長く規定することによって接触位置Tが導体パターンP上に位置していないときには、その旨を表示することで、プロービングが確実に行われる位置にその接触位置Tを修正することができる。なお、報知方法としては、表示部3への表示には限定されず、音声による報知や、表示および音声の双方による報知などを採用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 処理装置
5 処理部
50 特定処理
100a,100b 回路基板
C1〜C5,C21〜C25 円
Dd 設計データ
G 重心
L1〜L4,L21〜L24 直線
P1〜P40 導体パターン
R 半径
T1〜T40 接触位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9