特許第6184813号(P6184813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6184813真空成形装置、真空成形方法及び樹脂成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184813
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】真空成形装置、真空成形方法及び樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/12 20060101AFI20170814BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20170814BHJP
   B29C 51/36 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   B29C51/12
   B29C51/10
   B29C51/36
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-191726(P2013-191726)
(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公開番号】特開2015-58566(P2015-58566A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】榎本 繁
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−215814(JP,A)
【文献】 特開2000−225642(JP,A)
【文献】 特開2004−216738(JP,A)
【文献】 特開昭58−094417(JP,A)
【文献】 米国特許第06315150(US,B1)
【文献】 特開昭51−000475(JP,A)
【文献】 特開昭62−018241(JP,A)
【文献】 特開平10−272645(JP,A)
【文献】 特開平04−044828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 51/00−51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形可能な樹脂シートを転写して成形する成形型と、
前記成形型の底部に所定間隔離れて当該底部を上下に貫通して立設する2本の中空パイプ及びこれら中空パイプ内に挿通され各中空パイプの上端に架け渡されるワイヤを備えて構成されるリブ成形部と、
前記成形型にセットされた前記樹脂シートを真空引きにより当該成形型及び前記リブ成形部に転写させる転写手段と
前記転写手段で前記樹脂シートを転写させた後、前記2本の中空パイプからワイヤを引き抜くロボットアームと、を備えることを特徴とする真空成形装置。
【請求項2】
前記樹脂シートを前記成形型に転写する前に当該成形型を加熱し、前記樹脂シートが前記成形型に転写された後に当該成形型を冷却する温度調節手段を更に備えることを特徴とする請求項に記載の真空成形装置。
【請求項3】
底部を上下に貫通し所定間隔離れた2本の中空パイプが立設された成形型を用意し、
ワイヤを前記2本の中空パイプ内に挿通し、各中空パイプの上端に掛け渡し、
前記成形型にセットされた樹脂シートを真空引きによる転写手段で当該成形型、前記2本の中空パイプ及び前記ワイヤに転写させて成形し、
前記樹脂シートを転写させた後、前記2本の中空パイプからワイヤを引き抜き、リブを備えた樹脂成型品を成形することを特徴とする真空成形方法。
【請求項4】
基部と、当該基部に立設したリブとが一体成形され、
前記リブは、平板部と、前記平板部の両側に形成された一対の側辺部と、前記側辺部同士の先端を繋ぐ上辺部とを有し、
一対の前記側辺部と前記上辺部とに連通する中空空間が形成されていることを特徴とする樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートを成形型に転写して樹脂成形品を成形する真空成形装置、真空成形方法及び樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品を一体成形する装置として、真空成形装置が知られている(特許文献1参照)。真空成形装置は、成形型に樹脂シートを吸着して転写することにより樹脂成形品を成形する装置である。
【0003】
従来の樹脂成形品として、図5(a)及び(b)に示す構造の樹脂成形品1が知られている。図5(a)は樹脂成形品1の斜視図、(b)は(a)に示す樹脂成形品1のA1−A1断面図である。
【0004】
樹脂成形品1は、上面が開口した箱形の基部1aと、基部1aの底面中央部に底面に対して垂直に立設した板状のリブ1bとを一体に備えている。更に、リブ1bは、板状の上辺部1cが円筒状となっており、円筒状内部に円柱状の金属材3が挿入された構造となっている。このように、樹脂成形品1では、リブ1bの上辺部1cに金属材3を内蔵することによりリブ1bの強度を高めている。
【0005】
この樹脂成形品1を、真空成形装置で一体成形する場合は、リブ1bを成形する型材の上端に金属材3を配置した状態で、真空成形を行うものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−39862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のように形成された樹脂成形品1は、板状のリブ1bに上述したような円柱形の金属材3を内蔵されているので強度は向上するが、その分、重量が重くなるという問題があった。重量の重い樹脂成形品1は、軽量化が要求される装置の部品としては採用することができない。つまり、リブ1bの強度の向上及び軽量化の両立を図ることが困難となるという問題があった。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するために創作されたものであり、基部に一体に立設するリブを、軽量且つ高強度で成形することができる真空成形装置、真空成形方法及び樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための、本発明の真空成形装置は、成形可能な樹脂シートを転写して成形する成形型と、前記成形型の底部に所定間隔離れて当該底部を上下に貫通して立設する2本の中空パイプ及びこれら中空パイプ内に挿通され各中空パイプの上端に架け渡されるワイヤを備えて構成されるリブ成形部と、前記成形型にセットされた前記樹脂シートを真空引きにより当該成形型及び前記リブ成形部に転写させる転写手段と前記転写手段で前記樹脂シートを転写させた後、前記2本の中空パイプからワイヤを引き抜くロボットアームと、を備えることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、樹脂シートを成形型に転写後、成形型の底部に立設したリブ成形部の各中空パイプからワイヤをロボットアームで引き抜くことにより、リブ成形部で成形された樹脂シートによるリブの上辺部に、ワイヤが存在した跡の中空空間(空洞)が形成される。更に、硬化した樹脂シートを成形型から取り外せば、当該樹脂シートによるリブから両側の中空パイプが引き抜かれるので、リブの側辺部に、その引き抜き跡の中空空間(空洞)が形成される。
【0011】
これにより、リブの側辺部と上辺部とに連通した中空空間(空洞)が形成されて筒状となる。別言すれば、リブの側辺部および上辺部以外の中央部は密着させられ、空洞が形成されることがない。筒状は外部からの圧力に対抗する力が大きいので、リブの強度を高くすることができる。また、従来のように金属材は用いず、リブの内部が空洞となっているので、リブを軽量とすることができる。従って、樹脂成形品の基部に一体に立設したリブを、軽量且つ高強度とすることができる。
【0014】
また、前記樹脂シートを前記成形型に転写する前に当該成形型を加熱し、前記樹脂シートが前記成形型に転写された後に当該成形型を冷却する温度調節手段を更に備えることを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、転写前に樹脂シートが加熱されるので、樹脂シートの成形が行い易くなり、樹脂シートを成形型に迅速に吸着させて隙間なく転写することができる。また、転写後に、成形型を冷却すれば、樹脂シートを迅速に冷やして硬化させることができる。
また、本発明の真空成形方法は、底部を上下に貫通し所定間隔離れた2本の中空パイプが立設された成形型を用意し、ワイヤを前記2本の中空パイプ内に挿通し、各中空パイプの上端に掛け渡し、前記成形型にセットされた樹脂シートを真空引きによる転写手段で当該成形型、前記2本の中空パイプ及び前記ワイヤに転写させて成形し、前記樹脂シートを転写させた後、前記2本の中空パイプからワイヤを引き抜き、リブを備えた樹脂成型品を成形することを特徴とする。
かかる方法によれば、樹脂シートを成形型に転写後、成形型の底部に立設した2本の中空パイプからワイヤを引き抜くことにより、ワイヤが存在した跡の中空空間(空洞)が形成されたリブを備える樹脂成型品を成形することができる。
【0016】
また、本発明の樹脂成形品は、基部と、当該基部に立設したリブとが一体成形され、前記リブは、平板部と、前記平板部の両側に形成された一対の側辺部と、前記側辺部同士の先端を繋ぐ上辺部とを有し、一対の前記側辺部、前記上辺部に連通する中空空間が形成されていることを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、従来のように金属材を用いていないので軽量化を図ることができる。また、リブの側辺部と上辺部による外周部が筒状となっているので、外部圧力に対する抗力が大きくなりリブの強度を高くすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る真空成形装置及び真空成形方法によれば、基部に一体に立設するリブが軽量且つ高強度で成形される樹脂成形品を形成することができる。また、本発明に係る樹脂成形品によれば、基部に一体に立設するリブを、軽量且つ高強度とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)は本発明の実施形態に係る真空成形装置で成形される樹脂成形品の構成を示す斜視図、(b)は(a)に示す樹脂成形品のA2−A2断面図、(c)は(a)に示す樹脂成形品のA3−A3断面図である。
図2】(a)は本発明の実施形態に係る樹脂成形品を成形する真空成形装置の構成を示す正面側の断面図、(b)は真空成形装置の側面側の断面図である。
図3】(a)真空成形装置に樹脂シートをセットした状態を示す側面側の断面図、(b)成形型に樹脂シートが転写される過程を示す側面側の断面図、(c)成形型に樹脂シートが転写された状態を示す側面側の断面図である。
図4】(a)樹脂シートの転写後、中空パイプからワイヤを引き抜いた状態を示す側面側の断面図、(b)樹脂シート転写による樹脂成形品を成形型から取り外した状態を示す側面側の断面図である。
図5】(a)従来の樹脂成形品の構成を示す斜視図、(b)は(a)に示す樹脂成形品のA1−A1断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<実施形態の構成>
図1(a)は本発明の実施形態に係る真空成形装置で成形される樹脂成形品の構成を示す斜視図、(b)は(a)に示す樹脂成形品のA2−A2断面図、(c)は(a)に示す樹脂成形品のA3−A3断面図である。
【0021】
図1(a)に示す樹脂成形品10は、後述するように、成形可能な樹脂シートを、ワイヤを挿通した中空パイプを用いた成形型に転写した後、ワイヤを引き抜いて成形されるものである。この樹脂成形品10は、上面が開口した箱形の基部10aと、基部10aの底面中央部に底面に対して垂直に立設した板状(長方形状)のリブ10bとを一体に備えている。この立設したリブ10bは、基部10aの側面とは離間している。
【0022】
更に、リブ10bは、図1(b)及び(c)も参照すると、当該リブ10bの垂直方向の側辺部10c,10cがそれぞれ中空空間10kを有し、水平方向の上辺部10dが中空空間10fを有する。中空空間10k,10k,10fは、筒状を呈して連通している。この側辺部10c及び上辺部10dの筒状で囲まれる部分は平らな平板部10eとなっている。このように、平板部10eの外周を筒状で囲んだ形状とすることにより、リブ10bを、軽量且つ高強度としている。
【0023】
樹脂成形品10を成形する真空成形装置の構成を図2に示す。図2(a)は本発明の実施形態に係る樹脂成形品を成形する真空成形装置の構成を示す正面側の断面図、(b)は真空成形装置の側面側の断面図である。
図2(a)及び(b)に示す真空成形装置20は、樹脂成形品10(図1参照)の基部10aの平面状底面と同形状の上下面を有する直方体状の型本体20aと、型本体20aの4側面を上下方向に突き出て四方を隙間なく囲むことにより、型本体20aの上方及び下方に凹部20b,20cを形成する4枚の縦フレーム20dと、下方凹部20cを閉塞して閉塞空間20hを構成する水平板20eとを備える。
【0024】
また、型本体20aは、当該型本体20aの中央部分に所定間隔離れて上下面を上下に貫通して立設する2本の中空パイプ20fと、各中空パイプ20fの上端に直線状に架け渡され、各中空パイプ20f内に挿通されて保持されるワイヤ20iとを備えている。中空パイプ20fは、円筒形や角筒形等の一端から他端に貫通する細長い筒状を成すものであればよい。また、ワイヤ20iは、断面円形状が好ましいが、断面が楕円形や多角形等の他の形状であってもよい。
【0025】
ワイヤ20iは、当該ワイヤ20iの両端がそれぞれ、各中空パイプ20fの上端開口から挿入されて下端開口へ抜け、この抜けた各々の端部が逆方向に引っ張られる。これにより、各中空パイプ20fの上端に直線状に架け渡され、図示せぬワイヤ保持部でワイヤ20iに所定の張力が作用した状態で保持される。ワイヤ20iの重量や柔軟性、並びに、各中空パイプ20fの上端の間隔によっては、ワイヤ保持部を用いなくても、ワイヤ20iが自重で各中空パイプ20fの上端に直線状に架け渡される場合もある。
【0026】
このような立設する2本の中空パイプ20fと、各中空パイプ20fの上端に直線状に架け渡されたワイヤ20iとによって、リブ成形部20jが構成される。なお、ワイヤ20iの各中空パイプ20fへの挿通及び架け渡しは、図示せぬロボットアーム等により自動的に行われるようにしてもよい。
【0027】
更に、真空成形装置20においては、上方凹部20bの4側内面及び型本体20aの上面、並びにリブ成形部20jにより、成形型20gが構成される。また、縦フレーム20dの下方側には、閉塞空間20hの気密が損なわれないように、真空ポンプ25の引込口25aが貫通されている。真空ポンプ25で真空吸引することにより、閉塞空間20hが負圧となって、型本体20aに垂直方向に貫通して形成された複数の吸引孔26を介してエア吸引が行われる。なお、真空ポンプ25等により本請求項の転写手段が構成されている。
【0028】
つまり、成形型20gの開口を被覆する状態に樹脂シート{図3(a)の樹脂シート30を参照}をセットし、この後、真空ポンプ25で真空吸引することにより吸引孔26を介して吸引が行われ、この吸引により、樹脂シートが成形型20gに引き寄せられて転写する。この転写した樹脂シート30が冷えて硬化した後に、ワイヤ20iをワイヤ保持部から解放して各中空パイプ20fから引き抜き、硬化した樹脂シート30を成形型20gから取り外せば、樹脂成形品10(図1参照)が完成するようになっている。樹脂シート30のセットは、図示せぬロボットアーム等により自動的に行われるようにしてもよい。
【0029】
なお、図示せぬロボットアーム等による各中空パイプ20fへのワイヤ20iの挿通及び架け渡しの制御、成形型20gへの樹脂シート30のセットの制御、並びに、真空ポンプ25による真空吸引の起動及び停止動作の制御は、図示せぬ制御装置によって行われる。この制御装置は、例えば図示せぬCPU(Central Processing Unit)や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びHDD(Hard Disk Drive)等の記憶手段を備え、CPUが記憶手段に書き込まれたプログラムを実行して上記の制御を行うようになっている。
【0030】
<実施形態の動作>
次に、本実施形態の真空成形装置20で樹脂成形品10を成形する際の動作を、図2図4を参照して説明する。
【0031】
但し、ロボットアーム(図示せず)による各中空パイプ20fへのワイヤ20iの挿通及び架け渡しの制御、成形型20gへの樹脂シート30のセットの制御、並びに、真空ポンプ25による真空吸引の起動及び停止動作の制御は、制御装置(図示せず)によって行われるものとする。また、中空パイプ20fは円筒形、ワイヤ20iは中空パイプ20fに挿通可能な断面円形状であるとする。
【0032】
まず、図2(a)に示すように、ワイヤ20iの両端を、ロボットアームにより把持し、当該ワイヤ20iの両端をそれぞれ、各中空パイプ20fの上端開口から挿入し、下端開口へ抜け出るようにする。この抜けた各々の端部をロボットアームで逆方向に引っ張り、各中空パイプ20fの上端に直線状に架け渡され、所定の張力が作用した状態で、ワイヤ保持部(図示せず)によりワイヤ20iを保持させる。
【0033】
これにより、成形型20gにリブ成形部20jがセットされるので、図3(a)に示すように、成形型20gの開口上部にロボットアームで樹脂シート30を載置してセットする。このセットにより、成形型20gの開口が樹脂シート30で覆われた状態となる。樹脂シート30は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を用いる。
【0034】
次に、真空ポンプ25で真空吸引を行うと、閉塞空間20hが負圧となって、型本体20aの吸引孔26を介して、成形型20gの樹脂シート30で覆われた内部がエア吸引される。この吸引により、図3(b)に示すように樹脂シート30が成形型20gに引き寄せられ、その後、図3(c)に示すように樹脂シート30が成形型20gに吸着して転写する。この転写後、真空吸引を停止する。
【0035】
この際、樹脂シート30は、成形型20gの中央部分に立設したリブ成形部20jにも転写し、この転写部分が長方形状で立設する。この樹脂シート30による長方形状の立設部分は、側辺部内に中空パイプ20fが包み込まれ、上辺部内にワイヤ20iが包み込まれている。このため、側辺部と上辺部とを連通した外周部が概略断面円形状に盛り上がっている。その外周部で囲まれた内側部分は、樹脂シート30が両側から直接貼り合わさった平板状となっている。この平板状の部分が、図1(a)に示すリブ10bの平板部10eとなり、外周部がリブ10bの筒状の側辺部10c及び上辺部10dとなる。
【0036】
次に、図4(a)に示すように、転写した樹脂シート30が硬化した後に、ワイヤ20iをワイヤ保持部から解放して、何れか一方の中空パイプ20fの下端開口から垂れ下がったワイヤ20iを、ロボットアームにより引き抜く。これによって、リブ成形部20jの上辺部の上にワイヤ20iが存在しなくなるので、上辺部の上にはワイヤ20iが存在した跡の円柱形状の中空空間10fが形成される。
【0037】
この後、硬化した樹脂シート30を図4(b)に示すように、成形型20gから取り外せば、リブ成形部20jからは、各中空パイプ20fが引き抜かれるので、この引き抜き跡に円柱形状の中空空間10kが形成される。これにより、リブ10bの側辺部10cと上辺部10dとに連通した中空空間(空洞)10k,10fが形成されて筒状となる。これによって、基部10aと、当該基部10aに立設したリブ10bとが一体成形され、当該リブ10bの側辺部10cと上辺部10dとが筒状に連通した樹脂成形品10が得られる。
【0038】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の真空成形装置20は、成形可能な樹脂シート30を転写して成形する成形型20gと、成形型20gの底部に所定間隔離れて当該底部を上下に貫通して立設する2本の中空パイプ20f及びこれら中空パイプ20f内に挿通され各中空パイプ20fの上端に架け渡されるワイヤ20iを備えて構成されるリブ成形部20jと、成形型20gにセットされた樹脂シート30を吸引して成形型20g及びリブ成形部20jに転写させる真空ポンプ25とを備える。そして、真空ポンプ25で真空吸引を行って樹脂シート30を成形型20g及びリブ成形部20jに転写させた後、2本の中空パイプ20fからワイヤ20iを引き抜く構成とした。
【0039】
この構成によれば、樹脂シート30を成形型20g及びリブ成形部20jに転写後、成形型20gの底部に立設したリブ成形部20jの各中空パイプ20fからワイヤ20iが引き抜かれる。これにより、リブ成形部20jで成形された樹脂シート30によるリブ10bの上辺部10dに、ワイヤ20iが存在した跡の中空空間(筒の空間)10fが形成される。更に、硬化した樹脂シート30を成形型20gから取り外せば、当該樹脂シート30によるリブ10bから、両側の中空パイプ20fが引き抜かれる。これにより、リブ10bの側辺部10cに、その引き抜き跡の中空空間(筒の空間)10kが形成される。
【0040】
これにより、リブ10bの側辺部10cと上辺部10dとに連通した中空空間(空洞)10k,10fが形成されて筒状となる。筒状は外部からの圧力に対抗する力が大きいので、リブ10bの強度を高くすることができる。また、リブ10bの外周部は筒状で空洞となっているので、リブ10bを軽量とすることができる。このため、樹脂成形品10の基部10aに一体に立設したリブ10bを、軽量且つ高強度として成形することができる。
【0041】
<実施形態の変形例>
上記実施形態の真空成形装置20で成形される樹脂成形品は、樹脂成形品10に限定されるものではなく、基部と、基部に立設するリブとを一体に備えたものであれば、他の形状であってもよい。
【0042】
また、上記実施形態において、ワイヤ20iを各中空パイプ20fに挿通する前に、ワイヤ20iに離型剤を塗布してもよい。ワイヤ20iに離型剤を塗布しておくことにより、各中空パイプ20fへのワイヤ20iの挿通が行い易くなり、ワイヤ20iを引き抜く際には、引き抜き易くなる。このため、リブ10bの上辺部10dからもワイヤ20iをスムーズに引き抜くことができるので、上辺部10d内面にワイヤ20iが引っ掛かってリブ10bを破損するといった不具合を防止することができる。
【0043】
また、型本体20aの内部、言い換えれば成形型20gの底部に、図示せぬヒータ及び冷却装置を有する温度調節手段を備えても良い。この温度調節手段は、型本体20aを加熱又は冷却して温度調節することにより、成形型20gの型面を加熱又は冷却して、成形型20gにセットされる樹脂シート30を加熱又は冷却する。
【0044】
このような熱可塑性樹脂の樹脂シート30を用いる場合、樹脂シート30を予め所定の温度で加熱しておき、成形可能な状態としておく。また、温度調節手段によって成形型20gの温度を所定の温度に加熱しておくのが好ましい。この処理によって樹脂シート30の成形が行い易くなる。
【0045】
この条件で成形型20gに樹脂シート30をセットして、真空ポンプ25で上述したように真空引きを行えば、樹脂シート30を成形型20gに迅速に吸着させて隙間なく転写することができる。この後、温度調節手段により成形型20gを冷却すれば、樹脂シート30を迅速に冷やして硬化させることができる。
【0046】
以上本発明の実施形態及び変形例について説明したが本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 樹脂成形品
10a 基部
10b リブ
10c 側辺部
10d 上辺部
10e 平板部
10f,10k 中空空間
20 真空成形装置
20a 型本体
20b,20c 凹部
20d 縦フレーム
20e 水平板
20f 中空パイプ
20g 成形型
20h 閉塞空間
20i ワイヤ
20j リブ成形部
25 真空ポンプ
25a 引込口
26 吸引孔
図1
図2
図3
図4
図5