(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
下水処理場で発生する下水汚泥、屎尿汚泥等は、フィルタプレス等の脱水手段により65〜85質量%程度の含水率になるように脱水処理されて、例えば焼却炉まで搬送され、そして焼却処理されている。また、セメント原料や肥料などに利用される場合もある。
【0003】
脱水汚泥は、いわゆる脱水ケーキの一種である。脱水汚泥の輸送方法としては、ベルトコンベア等のエンドレスなコンベアで搬送する方法や、一軸ネジ式ポンプやピストンポンプに代表される圧送手段を用い、配管を介して圧送する方式が知られている。配管を介して圧送する方式は、配管で輸送されるので、環境を汚染することが少ないという利点を有し、輸送量に比較して管路の占有面積も小さく、また配管を変えるだけで輸送ルートを自由に変更できる等の利点も有する。
【0004】
しかしながら、脱水汚泥は含水率の低下に伴い流動性が低下するため、配管圧送の際にはポンプ等の吐出圧力が上昇することにより、圧送ポンプの高出力化が必要となるとともに、最悪の場合配管の閉塞を引き起こしてしまう場合がある。脱水汚泥などの高粘度物質の圧送方法について、従来、種々提案がされている。
【0005】
特許文献1には、汚泥等の高粘度物質をポンプにより配管を通して搬送する配管搬送過程において、配管の内壁面全周にわたり、水や油などの液状滑剤を均等に霧状化して含有させた空気・窒素などの気体を圧入することにより、高粘度物質搬送時の吐出圧力を低減することが記載されている。
【0006】
特許文献2には、内部に突起体を設けた特定の配管を用いて汚泥ケーキなどを圧送する際に、注入管より水又は油や界面活性剤などの滑剤を注入することで、配管の内周壁と搬送物との間の摩擦抵抗を少なくして搬送することが記載されている。
【0007】
特許文献3には、中空筒状の土砂輸送管の一端から他端に粘性土を移送する方法において、該粘性土の移送前に吐出装置から吐出される気泡を内周面に環状に供給した後に、粘性土を圧送することで、粘性土の含水率を大幅に向上させたり、あるいは廃棄処分場の問題を伴わず、移送後の処分が容易であって、しかも長距離、大量移送に適した粘性土の移送方法が記載されている。ここで、吐出装置から吐出される気泡は、動物性加水分解たんぱく質などのタンパク系起泡剤や、高級アルキルエーテル硫酸塩などの界面活性剤を水に溶解したものを圧縮空気と混合して生成させることが記載されている。
【0008】
特許文献4には、カッターで掘削された土砂に、特定のカチオン界面活性剤を含有する作泥土材を注入して泥土にすることを行う、特定の泥土加圧シールド工法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
脱水汚泥の含水率を高めることは、焼却エネルギーの増加につながるため好ましくない。また、ポンプ等の吐出圧力が大きいことは焼却や再利用のための圧送に要する消費エネルギーの増加につながる。従って、脱水汚泥の含水率の上昇を最小限にしながら、効率よく圧送できれば、焼却や再利用のための圧送に要する消費エネルギーを低減でき、また二酸化炭素排出量の削減など、大きな効果が期待できるが、特許文献1〜4は、このような観点からは、更なる改良が望まれるものである。
【0011】
本発明は、脱水汚泥の含水率の上昇を最小限にしながら、従来技術より低い吐出圧力で脱水汚泥のポンプ圧送を可能とする、脱水汚泥圧送用添加剤、脱水汚泥の圧送方法、及び脱水汚泥の圧送におけるポンプの吐出圧力の低減方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、下記一般式(1)で表される界面活性剤、下記一般式(2)で表される界面活性剤、及び下記一般式(3)で表される界面活性剤で表される界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤を含有する、脱水汚泥圧送用添加剤に関する。
【0013】
【化1】
【0014】
〔式(1)中、R
11は、炭素数8以上、14以下のアルキル基を示す。R
12、R
13、R
14は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上、3以下のアルキル基を示す。X
−は対イオンを示す。〕
【0015】
【化2】
【0016】
〔式(2)中、R
21は、炭素数8以上、14以下のアルキル基を示す。〕
【0017】
【化3】
【0018】
〔式(3)中、R
31は、炭素数8以上、14以下のアルキル基を示す。〕
【0019】
また、本発明は、下記一般式(1−1)で表される界面活性剤、下記一般式(1−2)で表される界面活性剤、下記一般式(2)で表される界面活性剤、及び下記一般式(3)で表される界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤を含有する、脱水汚泥圧送用添加剤に関する。
【0020】
【化4】
【0021】
〔式(1−1)中、R
15は、炭素数8以上、14以下のアルキル基を示す。Y
−は対イオンを示す。〕
【0022】
【化5】
【0023】
〔式(1−2)中、R
16は、炭素数8以上、14以下のアルキル基を示す。Z
−は対イオンを示す。〕
【0024】
【化6】
【0025】
〔式(2)中、R
21は、炭素数8以上、14以下のアルキル基を示す。〕
【0026】
【化7】
【0027】
〔式(3)中、R
31は、炭素数8以上、14以下のアルキル基を示す。〕
【0028】
以下、脱水汚泥圧送用添加剤という場合、上記2つの脱水汚泥圧送用添加剤の両方を指すものとする。
【0029】
また、本発明は、脱水汚泥をポンプにより配管を用いて搬送する脱水汚泥の圧送方法であって、
上記何れかの本発明の脱水汚泥圧送用添加剤と水とを含有する水溶液を、脱水汚泥1m
3に対して10L以上、50L以下の割合で用いて、該水溶液を発泡させて得た気泡を、配管内部の脱水汚泥と配管との間隙に注入する、
脱水汚泥の圧送方法に関する。
【0030】
また、本発明は、脱水汚泥をポンプにより配管を用いて搬送する際に、
上記何れかの本発明の脱水汚泥圧送用添加剤と水とを含有する水溶液を、脱水汚泥1m
3に対して10L以上、50L以下の割合で用いて、該水溶液を発泡させて得た気泡を、配管内部の脱水汚泥と配管との間隙に注入する、
脱水汚泥の圧送におけるポンプの吐出圧力の低減方法に関する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、脱水汚泥の含水率の上昇を最小限にしながら、従来技術より低い吐出圧力で脱水汚泥のポンプ圧送を可能とする、脱水汚泥圧送用添加剤、脱水汚泥の圧送方法、及び脱水汚泥の圧送におけるポンプの吐出圧力の低減方法が提供される。本発明では、下水の二次処理水を更に砂ろ過処理した、いわゆる雑用水を用いて水溶液を調製した場合でも、水道水を用いた場合の水溶液と同等の性状を有する気泡を生じさせることが可能であり、本発明の効果が同様に得られるため、資源の有効利用という観点でも極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<脱水汚泥圧送用添加剤>
一般式(1)で表される界面活性剤は、炭素数8以上、14以下のアルキル基を1つ有するモノ長鎖アルキル型化合物である。一般式(1)中、R
11は、炭素数8以上、14以下のアルキル基であり、安定した発泡を得る観点から、炭素数12以上、14以下のアルキル基が好ましい。R
12、R
13、R
14は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1のアルキル基が好ましい。R
12、R
13、R
14は、全部が水素原子である、又は全部が炭素数1以上、3以下のアルキル基、更に炭素数1のアルキル基であることが好ましい。X
−は対イオンであり、ハロゲン化物イオン、有機酸イオン等が挙げられ、塩化物イオン(Cl
−)等のハロゲン化物イオンが好ましい。
【0034】
一般式(1)で表される界面活性剤として、前記一般式(1−1)で表される界面活性剤、及び前記一般式(1−2)で表される界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられる。
【0035】
一般式(1−1)で表される界面活性剤は、モノ長鎖アルキルアミンの酸塩である。一般式(1−1)中、R
15は、炭素数8以上、14以下のアルキル基であり、安定した発泡を得る観点から、炭素数12以上、14以下のアルキル基が好ましい。Y
−は対イオンであり、ハロゲン化物イオン、有機酸イオン等が挙げられ、塩化物イオン(Cl
−)等のハロゲン化物イオンが好ましい。
【0036】
一般式(1−2)で表される界面活性剤は、モノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩である。一般式(1−2)中、R
16は、炭素数8以上、14以下のアルキル基であり、安定した発泡を得る観点から、炭素数12以上、14以下のアルキル基が好ましい。Z
−は対イオンであり、ハロゲン化物イオン、有機酸イオン等が挙げられ、塩化物イオン(Cl
−)等のハロゲン化物イオンが好ましい。
【0037】
一般式(2)で表される界面活性剤は、モノ長鎖アルキルジメチル酢酸ベタインである。一般式(2)中、R
21は、炭素数8以上、14以下のアルキル基であり、安定した発泡を得る観点から、炭素数12以上、14以下のアルキル基が好ましい。
【0038】
一般式(3)で表される界面活性剤は、モノ長鎖アルキルジメチルアミンオキサイドである。一般式(3)中、R
31は、炭素数8以上、14以下のアルキル基であり、安定した発泡を得る観点から、炭素数12以上、14以下のアルキル基が好ましい。
【0039】
本発明の添加剤は、起泡性及び泡の安定性の観点から、前記界面活性剤の濃度が0.05質量%以上の水溶液として用いることが好ましい。
【0040】
本発明の添加剤となる界面活性剤は、気泡形成に関して脱水汚泥中に含まれる成分の影響を受けにくい。そのため、脱水汚泥と配管との間隙に注入される気泡として用いる場合に、起泡量と気泡安定性に優れたものとなる。
【0041】
<脱水汚泥のポンプ圧送方法>
本発明の脱水汚泥のポンプ圧送方法では、脱水汚泥をポンプにより配管を用いて搬送する際に、配管内部の脱水汚泥と配管との間隙に、前記本発明の脱水汚泥圧送用添加剤と水とを含有する水溶液を発泡させて得た気泡(以下、本発明に係る気泡という場合もある)を注入する。その際、本発明に係る水溶液は、脱水汚泥1m
3に対して10L以上、50L以下の割合で用いられる。
【0042】
本発明の脱水汚泥圧送用添加剤は、脱水汚泥を配管でポンプ圧送する際に、脱水汚泥と配管との間隙に注入される気泡を形成するために用いられる。本発明の脱水汚泥圧送用添加剤は、該添加剤と水とを含有する水溶液を発泡させて得た気泡として脱水汚泥と配管との間隙に注入して用いられ、いわゆるパイプ輸送におけるポンプ等の吐出圧力を低減する。従って、本発明により、脱水汚泥をポンプにより配管を用いて搬送する際に、本発明の脱水汚泥圧送用添加剤と水とを含有する水溶液を、脱水汚泥1m
3に対して10L以上、50L以下の割合で用いて、該水溶液を発泡させて得た気泡を、配管内部の脱水汚泥と配管との間隙に注入する、脱水汚泥の圧送におけるポンプ等の吐出圧力の低減方法が提供される。以下、本発明の脱水汚泥のポンプ圧送方法について述べる事項は、吐出圧力の低減方法においても適用できる。
【0043】
脱水汚泥は、下水処理場の処理過程や工場の廃液処理過程などで生じる、有機質の最終生成物を凝集、脱水して得られる固体状の廃棄物のことである。通常、脱水汚泥は、65質量%以上、85質量%以下の含水率である。本発明で使用する脱水汚泥も、例えば、日本国内の下水処理場で発生した汚泥を脱水して得たものであれば、いずれでも用いることが出来る。
【0044】
本発明に係る水溶液は、充分な発泡と安定した発泡を得る観点から、本発明の脱水汚泥圧送用添加剤、すなわち、前記一般式(1)で表される界面活性剤、前記一般式(2)で表される界面活性剤、及び前記一般式(3)で表される界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤、又は、前記一般式(1−1)で表される界面活性剤、前記一般式(1−2)で表される界面活性剤、前記一般式(2)で表される界面活性剤、及び前記一般式(3)で表される界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤を、0.05質量%以上、更に0.1質量%以上、そして、2.0質量%以下、更に1.5質量%以下の濃度で含有することが好ましい。
【0045】
本発明に係る水溶液の発泡倍率は、吐出圧力低減の観点から、2倍以上が好ましく、20倍以上がより好ましく、30倍以上がさらに好ましく、100倍以上がより更に好ましく、150倍以上がより更に好ましく、160倍以上がより好ましく、そして、200倍以下が好ましく、180倍以下がより好ましい。なお、この発泡倍率は、気泡と本発明に係る水溶液の体積比であり、(大気圧下における気泡の体積)/(大気圧下における水溶液の体積)により求められる。
【0046】
充分な気泡と安定した気泡を得る観点から、本発明に係る気泡は、本発明に係る水溶液を脱水汚泥1m
3に対して10L以上、そして、50L以下、更に30L以下用いて発泡させたものである。気泡の注入量は、例えば、配管に圧送される脱水汚泥の流量や吐出圧力の変動に基づいて、大気圧下での発泡倍率として適宜決定することができる。
【0047】
本発明では、安定した気泡を得る観点から、本発明に係る水溶液と気体との混合物とから形成された気泡に旋回流を与える構造を備えた注入装置により、前記水溶液の気泡を注入することが好ましい。
【0048】
注入装置は、管体と、該管体に形成されたフランジと、前記管体に形成された1以上の気泡の注入路と、を備えたものが好ましい。この注入装置では、注入路に、気泡に旋回流を与える構造が形成される。また、この注入装置は、配管径に応じて気泡の注入路を複数、例えば、2個以上、更に3個以上、有することが好ましい。具体的には、
図1で示される注入装置を用いることが好ましい。
図1の注入装置は、φ150mmの管体に対して気泡の注入口を3個有する。また、
図1の注入装置は、内筒と、その外側に同心円状に配置された外筒とを含んで構成され、外筒にフランジが形成されている。そして、
図1の注入装置では、外筒と内筒を連通して注入路が形成されている。注入路の両端は外筒側と内筒側とで開口しており、外筒側の開口は気泡の導入手段(二流体ノズル)と連通し、内筒側の開口は、気泡の排出口となって、後述の通り、スロープ状の空隙と連通する。
【0049】
図1中、(a)は注入装置の平面概略図であり、(b)は注入装置の側面概略図である。
図2は、
図1の注入装置の内筒の概略図である。
【0050】
本発明に係る水溶液と気体、好ましくは空気との混合物からの気泡は、二流体ノズルにより得られる。本発明に係る水溶液は、二流体ノズルにより圧縮空気と混合され、形成された気泡が、
図1の注入装置における注入路に向けて噴射される。
【0051】
図3に、
図1の注入装置により、本発明に係る水溶液と気体の混合物から気泡が形成されて配管内部の脱水汚泥と配管との間隙に注入される状態を概略的に示した。本発明に係る水溶液は、二流体ノズルで圧縮空気と混合され、気泡となって、
図3中、注入装置の注入路に噴射される。なお、二流体ノズルと注入路は、図示しない手段により連通されている。
【0052】
図1の注入装置は、気泡に旋回流を与える構造として、壁面が曲面で形成された小空間と、該小空間内部を仕切り複数の気泡の流路を形成する画定壁と、を備えている。
図1の注入装置では、外筒と内筒のそれぞれに小空間となる窪みと画定壁が形成されており、外筒と内筒が嵌合した際に、見かけ上、1つの小空間と1つの画定壁が形成されるようになる。小空間は中央近傍に膨らみを持つ形状、例えば、長手方向の断面が紡錘形ないし楕円形である形状となっているため、気泡に旋回流を与えつつ移動させることができる。注入路から噴射された気泡は、小空間につながる注入路の底部で一旦攪拌されることで、気泡はより緻密で安定となる。
【0053】
画定壁により、小空間の内部には2つの気泡の流路が形成され、且つ各流路の壁面が曲面であることから、上方から圧送された気泡は旋回状態となって小空間内部を滞留しながら移動する。小空間は管体外部に気泡を排出する排出口と連通しており、該排出口から、気泡が配管内部の脱水汚泥と配管との間隙に注入される。二流体ノズルが接続された注入路は、小空間の上流側中心部に位置しており、噴射された気泡は、小空間内部で画定壁により分岐し、曲面で形成された小空間内で噴射圧力により、気泡に旋回流が与えられる。この旋回流により十分な滞留時間が与えられて気泡が流動することによって、気泡の物理的安定性が向上する。
【0054】
小空間内で安定化された気泡は排出口に移動して分岐状態が解除されて排出口近傍で合流した後に、脱水汚泥の流下方向に漸次縮小していく空隙に沿って、配管内部を圧送されている脱水汚泥と配管との間隙に効率よく注入され、脱水汚泥に展着しながら拡散していく。
図1の注入装置は、該注入装置断面の全周方向において、内筒の外側から内側に絞るようなスロープ状の空隙が、排出口と連通して設けられている(
図2)。このような形状の注入装置を用いることで、均一な発泡状態の気泡層を脱水汚泥と配管との間隙に注入でき、気泡が有するボールベアリング効果が良好となる。
図3(b)は、
図3(a)の注入装置の注入路部分を平面から概略的に示したものであり、気泡は矢印のような進路で旋回流となって小空間内部を移動し、排出口で合一して拡散して脱水汚泥に向けて注入される。
【0055】
図1の注入装置は、両端にフランジを有する構造であり、内筒の径を、設置しようとする配管と同径とすることで、配管に大きな改造を加えることなく装着できる。
【0056】
本発明の脱水汚泥の圧送方法では、装置内で発泡させた気泡を配管内壁に接する脱水汚泥の表面に効率良く展着させる観点から、本発明に係る気泡を、配管の内周に沿って環状に注入することが好ましい。
図1の注入装置は、複数の注入路を有し、且つそれぞれの注入路において前記の通りスロープ状の空隙が形成されているため、それぞれの注入路から注入された気泡が配管内部で合一し、配管の内周に沿って環状に注入される。
【0057】
本発明の脱水汚泥の圧送方法では、汚泥を脱水機で脱水し、ベルトコンベアで移送ポンプまで搬送し、ポンプで圧送し、圧送配管の途中で、注入装置により本発明に係る水溶液を発泡させて生じた本発明に係る気泡を圧送配管の内部に注入し、脱水汚泥を圧送する。具体的には
図4に示すフローで、汚泥は、脱水、搬送、処理される。
【実施例】
【0058】
<実施例1>
脱水汚泥と配管との間隙に注入する気泡を形成するための界面活性剤は、脱水汚泥中に含まれる成分と接触しても十分に発泡することが必要であり、また形成された気泡は圧送途中で消失しないように、脱水汚泥中に含まれる成分と接触しても安定的であることが必要なことはいうまでもない。この点から、起泡量が多く、かつ、安定的な泡を形成できる界面活性剤の種類について検討を行った。
東京都下水道局南多摩水再生センター内の汚泥処理施設(以下、汚泥処理施設という)で使用している雑用水(下水処理水を砂ろ過したもの)を水溶液調製用の水とし、表1の界面活性剤と前記雑用水とから、濃度の異なる界面活性剤水溶液を調製した。
共栓付き200mlメスシリンダーに、界面活性剤水溶液を50ml計り取り、栓をして、手振りにて、上下に20回強振した。強振直後の泡の高さを測定して泡量+液量とし、また液量を測定して、その差から泡量とした。静置10分後の泡の高さ(泡量+液量)を測定し、同様に泡量を求め、泡の安定性の指標とした。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表中の界面活性剤は以下のものである。表中の濃度は有効分としての濃度である。なお、比較例1は、便宜的に3つの濃度の欄に記した。
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム:エマール 20C、花王(株)製
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル:エマルゲン 106、花王(株)製
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル:エマルゲン 109P、花王(株)製
・ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート:レオドール TW L−120、花王(株)製
・ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート:レオドール TW O−120V、花王(株)製
・ポリオキシエチレン硬化ひまし油:エマノーン CH−80、花王(株)製
・アルキルアルカノールアミド:アミノーン PK−02S、花王(株)製
【0061】
・ココナットアミンアセテート:一般式(1−1)のR
15が炭素数12〜14のアルキル基である界面活性剤、アセタミン24、花王(株)製
・ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド:一般式(1−2)のR
16が炭素数12のアルキル基である界面活性剤、コータミン24P、花王(株)製
・ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン:一般式(2)のR
21が炭素数12のアルキル基である界面活性剤、アンヒトール 20BS、花王(株)製
・ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン:一般式(2)のR
21が炭素数18のアルキル基である界面活性剤、アンヒトール 86B、花王(株)製
・ラウリルジメチルアミンオキサイド:一般式(3)のR
31が炭素数12のアルキル基である界面活性剤、アンヒトール 20N、花王(株)製
【0062】
表1より、本発明に係る界面活性剤を用いた水溶液は、発泡量が多く且つ安定性も高い気泡を形成できることがわかる。
【0063】
<実施例2>
図4に示す汚泥搬送システムで、下記の条件で脱水汚泥の圧送試験を行った。
・脱水汚泥:汚泥処理施設から採取した脱水汚泥
・脱水汚泥含水率:71.5〜75.3質量%
・雑用水:汚泥処理施設で使用しているもの(前記と同じもの)
・脱水汚泥圧送用添加剤:アセタミン24(花王(株)製、一般式(1−1)で表される界面活性剤、一般式(1−1)中のR
15は炭素数12〜14のアルキル基の混合)
・水溶液:前記雑用水と前記脱水汚泥圧送用添加剤とから調製した、脱水汚泥圧送用添加剤濃度が1質量%の水溶液
・脱水汚泥流量:約1.0m
3/h(
図4中の脱水汚泥移送ポンプにおける流量)
・水溶液流量:0.3L/分(脱水汚泥1m
3に対して18L)
・空気流量:50L/分(発泡倍率170倍)
・水溶液の注入装置:
図1に示す注入装置を用いた。
【0064】
図4中、脱水汚泥移送ポンプの出口部分で、ポンプの吐出圧力を測定した。時間毎のポンプ吐出圧力の推移を
図5に示す。
図5中、(イ)は脱水汚泥の圧送開始時点、(ロ)は水溶液(無発泡)の注入開始時点、(ハ)は気泡の注入開始時点である。
図5より、無注水で圧送時には3MPa程度の圧力が、脱水汚泥圧送用添加剤水溶液、又は水のみの注入により1MPa程度まで低下すること、さらに、脱水汚泥圧送用添加剤水溶液を発泡させた気泡を滑剤として注入することにより、さらに0.1〜0.6MPa程度まで吐出圧力を低減できることがわかる。
【0065】
<実施例3>
気泡の発泡倍率の違いによるポンプ吐出圧力低減効果を調べた。発泡倍率は、空気流量を変動させることで調整した。実施例2と同じ条件で、ただし気泡の発泡倍率を変化させて、脱水汚泥を圧送した場合の発泡倍率とポンプ吐出圧力の関係を
図6に示した。
図6より、脱水汚泥圧送用添加剤を含有する水溶液を発泡させずに注入した場合よりも、脱水汚泥圧送用添加剤を含有する水溶液を発泡させて注入した方が、吐出圧力が低下していることがわかる。さらに、発泡倍率の増加に伴って、吐出圧力が低下していることがわかる。