【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、課題の解決手段として、
筒状ハウジングの一端側にガス排出口を有するディフューザ部が配置され、
筒状ハウジングの他端側に点火手段が配置され、
前記点火手段と前記ディフューザ部の間には、複数の貫通孔を有する軸方向に移動可能な金属製の隔壁が配置されており、
前記隔壁と前記点火手段の間の空間が、第1ガス発生剤成形体が充填された点火手段室であり、
前記隔壁と前記ディフューザ部の間の空間が、第2ガス発生剤成形体が充填された燃焼室であり、
前記隔壁が、円形底面部と円形底面部の外周部から一方向側に垂設された環状壁部を有しているもので、前記円形底面部が前記ディフューザ部側になるように配置されているものであり、
前記点火手段が、前記隔壁方向に突き出された円板状の着火部を有する点火器と、前記着火部の周囲に配置された、環状壁を有している金属製の環状部材を有しているものであり、
前記環状部材の環状壁が、前記着火部の先端面よりも前記隔壁側に突き出されているものである、ガス発生器を提供する。
【0009】
本発明のガス発生器は、軸方向に移動可能な金属製の隔壁と、点火器の着火部の周囲に配置された金属製の環状部材との組み合わせによって、点火手段室内における第1ガス発生剤成形体の着火性と充填性が改良されている。
隔壁は、筒状ハウジング内部に配置され、点火手段室と燃焼室を仕切るためのものであるから、筒状ハウジングほどの強度や耐久性は不要であり、ガス発生器の軽量化の観点からも厚さは小さくすることが望ましい。
点火手段は、周知のガス発生器で使用する電気式の点火器と環状部材の組み合わせからなるものである。
電気式の点火器は、点火器本体が樹脂および金属製のカラーからなる保持部材で包囲されており、円柱状の着火部の先端面を含む部分が保持部材から突き出された構造のものである。
第1ガス発生剤成形体は、燃焼ガスを発生させることで第2ガス発生剤成形体の着火燃焼を促進するようにも作用する成分であり、第1ガス発生剤成形体の燃焼により発生した燃焼ガスは、第2ガス発生剤成形体の燃焼により発生した燃焼ガスと共にエアバッグの膨張にも使用される。
第1ガス発生剤成形体と第2ガス発生剤成形体は、いずれも公知のガス発生器用のガス発生剤を使用することができるが、第1ガス発生剤成形体は相対的に燃焼温度の高いものを使用し、第2ガス発生剤成形体は相対的に燃焼温度の低いものを使用することが好ましい。
【0010】
点火器の着火部の周囲に配置された金属製の環状部材は、環状壁が着火部の先端面よりも隔壁側に突き出されていることから、作動時においては、着火部から生じた火炎や高温ガスなどが拡がった状態で点火手段室内に放出され易くなることに加えて、燃焼室までも到達し易くなるので、第1ガス発生剤成形体の着火性が良くなる。
【0011】
金属製の環状部材は、着火部の周囲に配置でき、環状壁を着火部の先端面よりも隔壁側に突き出すことができる形状のものであればよく、第1の環状部材〜第3の環状部材を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
(第1の環状部材)
環状底面部、前記環状底面部の内周部から垂設された内側環状壁部、および前記環状底面部の外周部から垂設された外側環状壁部を有しており、前記内側環状壁部と前記外側環状壁部の長さが同一であるもの。
(第2の環状部材)
環状底面部および前記環状底面部の内周部から垂設された内側環状壁部を有しているもの。
第2の環状部材は、第1の環状部材において外側環状壁部がないほかは同じものである。
(第3の環状部材)
環状底面部、前記環状底面部の内周部から垂設された内側環状壁部、および前記環状底面部の外周部から垂設された外側環状壁部を有しており、前記内側環状壁部と前記外側環状壁部の長さが異なるもの。
第3の環状部材は、第1の環状部材とは、内側環状壁部と外側環状壁部の長さが異なるほかは同じものである。なお、内側環状壁部の長さが外側環状壁部よりも長いものの方が好ましい。
これらの第1の環状部材〜第3の環状部材は、点火器の着火部の周囲に配置したとき、前記各環状部材の環状壁が、前記着火部の先端面よりも前記隔壁側に突き出されるように配置される。
【0012】
また、本発明の点火手段と隔壁の組み合わせを使用することによって、組立作業性も良くなる。このような組立作業性を良くするときは、点火手段として、点火器と上記した第1の環状部材〜第3の環状部材の組み合わせを使用する。
筒状ハウジングを使用したガス発生器の組み立てるときは、最初に筒状ハウジングの一端開口部側にディフューザ部を固定した後、残った開口部から必要な部品を圧入乃至は挿入して取り付け、所要量の第2ガス発生剤成形体を充填し、隔壁を圧入した後、所要量の第1ガス発生剤成形体を充填する。
そして、最後に筒状ハウジング内に点火手段を挿入するとき、先に充填された第1ガス発生剤成形体を軸方向に押し込みながら挿入することになる。
ガス発生剤成形体同士の間に隙間があると、長期間振動が加えられることで前記ガス発生剤成形体同士が衝突を繰り返して一部が粉化するおそれがあるため、前記ガス発生剤成形体同士の間に隙間が生じないように押し込む作業は重要となる。
また筒状ハウジングとガス発生剤成形体の間に隙間があると、筒状ハウジングとガス発生剤成形体との衝突による異音が発生する原因にもなるため、この観点からもガス発生剤成形体の押し込み作業は重要となる。
【0013】
上記のような押し込み作業において、点火手段として第1の環状部材〜第3の環状部材を含むものを使用すると、点火手段室内の第1ガス発生剤成形体を均等に押すことができるようになるため、点火手段(点火器と環状部材)の挿入作業と第1ガス発生剤成形体の押し込み作業が容易になる。
第1の環状部材〜第3の環状部材がない場合には、主として突き出された着火部が第1ガス発生剤成形体を押すことになるため、第1ガス発生剤成形体を均等に押すことが難しくなることから、第1ガス発生剤成形体の押し込み作業が不均一になったり、隔壁自体も厚みが小さなもの(即ち、強度の小さなもの)を使用したときには、均等に押されないことで変形したり、位置がずれたりするおそれがある。
【0014】
本発明は、課題の他の解決手段として、
前記隔壁が、複数の貫通孔を有する金属製の第1隔壁と複数の貫通孔を有する金属製の第2隔壁の組み合わせからなるものであり、
前記第1隔壁と前記第2隔壁が、いずれも円形底面部と円形底面部の外周部から一方向側に垂設された環状壁部を有しているものであり、
前記第1隔壁が前記点火手段室側に配置され、前記第2隔壁が前記燃焼室側に配置され、いずれも前記円形底面部が前記ディフューザ部側になるように配置されており、
前記第1隔壁が軸方向に移動することで、前記第1ガス発生剤成形体の充填量に応じて前記点火手段室の容積を調整するものであり、
前記第2隔壁が軸方向に移動することで、前記第2ガス発生剤成形体の充填量に応じて前記燃焼室の容積を調整するものである、請求項1記載のガス発生器を提供する。
【0015】
ガス発生器の車両内の設置場所や車両の種類によって必要とするガス発生量が増減することがあり、そのような場合には、ガス発生器自体は変えずに、ガス発生器に充填するガス発生剤量を増減させることで対応することができる。
よって、隔壁として第1隔壁と第2隔壁の2つを使用することで、点火手段室に充填する第1ガス発生剤成形体の量と、燃焼室に充填する第2ガス発生剤成形体の量に応じて、それぞれの室に対してより細かな容積の調整ができるようになる。