特許第6184829号(P6184829)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184829
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/264 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   B60R21/264
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-213642(P2013-213642)
(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公開番号】特開2015-74413(P2015-74413A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】井本 勝大
(72)【発明者】
【氏名】花野 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】山下 治彦
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−546513(JP,A)
【文献】 特開2006−297988(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/077109(WO,A1)
【文献】 米国特許第6155600(US,A)
【文献】 特表2011−523919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/264
B01J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ハウジングの一端側にガス排出口を有するディフューザ部が配置され、
筒状ハウジングの他端側に点火手段が配置され、
前記点火手段と前記ディフューザ部の間には、複数の貫通孔を有する軸方向に移動可能な金属製の隔壁が配置されており、
前記隔壁と前記点火手段の間の空間が、第1ガス発生剤成形体が充填された点火手段室であり、
前記隔壁と前記ディフューザ部の間の空間が、第2ガス発生剤成形体が充填された燃焼室であり、
前記隔壁が、円形底面部と円形底面部の外周部から一方向側に垂設された環状壁部を有しているもので、前記円形底面部が前記ディフューザ部側になるように配置されているものであり、
前記点火手段が、前記隔壁方向に突き出された円板状の着火部を有する点火器と、前記着火部の周囲に配置された、環状壁を有している金属製の環状部材を有しているものであり、
前記環状部材の環状壁が、前記着火部の先端面よりも前記隔壁側に突き出されているものである、ガス発生器。
【請求項2】
前記環状部材が、
環状底面部、前記環状底面部の内周部から垂設された内側環状壁部、および前記環状底面部の外周部から垂設された外側環状壁部を有しており、前記内側環状壁部と前記外側環状壁部の長さが同一であるものであり、
前記内側環状壁部が前記着火部に当接され、前記外側環状壁部が前記筒状ハウジングの内壁面に当接され、前記環状底面部が前記隔壁側になるように配置されているものであり、
前記環状底面部が前記着火部の先端面よりも前記隔壁側に突き出されているものである、請求項1記載のガス発生器。
【請求項3】
前記環状部材が、
環状底面部および前記環状底面部の内周部から垂設された内側環状壁部を有しているものであり、
前記内側環状壁部が前記着火部に当接され、前記環状底面部の外周縁部が前記筒状ハウジングの内壁面に当接され、前記環状底面部が前記隔壁側になるように配置されているものであり、
前記環状底面部が前記着火部の先端面よりも前記隔壁側に突き出されているものである、請求項1記載のガス発生器。
【請求項4】
前記環状部材が、
環状底面部、前記環状底面部の内周部から垂設された内側環状壁部、および前記環状底面部の外周部から垂設された外側環状壁部を有しており、前記内側環状壁部と前記外側環状壁部の長さが異なるものであり、
前記内側環状壁部が前記着火部に当接され、前記外側環状壁部が前記筒状ハウジングの内壁面に当接され、前記環状底面部が前記隔壁側になるように配置されているものであり、
前記環状底面部が前記着火部の先端面よりも前記隔壁側に突き出されているものである、請求項1記載のガス発生器。
【請求項5】
前記隔壁が、複数の貫通孔を有する金属製の第1隔壁と複数の貫通孔を有する金属製の第2隔壁の組み合わせからなるものであり、
前記第1隔壁と前記第2隔壁が、いずれも円形底面部と円形底面部の外周部から一方向側に垂設された環状壁部を有しているものであり、
前記第1隔壁が前記点火手段室側に配置され、前記第2隔壁が前記燃焼室側に配置され、いずれも前記円形底面部が前記ディフューザ部側になるように配置されており、
前記第1隔壁が軸方向に移動することで、前記第1ガス発生剤成形体の充填量に応じて前記点火手段室の容積を調整するものであり、
前記第2隔壁が軸方向に移動することで、前記第2ガス発生剤成形体の充填量に応じて前記燃焼室の容積を調整するものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載するエアバッグ装置に使用できるガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス発生剤をガス源とするガス発生器の中には、細長い筒状のハウジングを使用したものが汎用されている。
このような筒状ハウジングを使用した場合、ガス発生剤が充填された燃焼室も細長い形状のものとなるため、ガス発生剤の燃焼性が重要となるほか、ガス発生剤の充填作業性も重要となる。
【0003】
特許文献1の図1には、ガス発生剤が充填された燃焼室(収納空間7)内に伝火チューブ(収納部17)が突き出された状態のガス発生器が示されている。伝火チューブの先端面には、開口部が形成されている。このため、燃焼室内のガス発生剤は伝火チューブの開口部に面した位置にあるガス発生剤が先に燃焼して、伝火チューブの周囲にあるガス発生剤は遅れて燃焼することで、全体として時間差をおいて燃焼するように設定されているものと考えられる。
【0004】
特許文献2には、着火部が突き出された点火器30にカップ状部材40が被せられており、カップ状部材40内に粉状の伝火薬45が充填されたガス発生器が示されている。このガス発生器では、点火室14と燃焼室15はクッション材61によって区画されていることから、組立時には、点火器30とカップ状部材40でクッション材61を軸方向に押すことで燃焼室15の容積を調整するものと考えられる。
【0005】
特許文献3には、点火器の着火部の周囲に環状部材が配置されたものが示されているが、前記環状部材は熱可塑性エラストマーからなるクッション材である。しかし、熱可塑性エラストマーからなるクッション材は、点火器の作動時に燃焼するものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6237498号明細書
【特許文献2】特開2008−290528号公報
【特許文献3】DE20 2006 004008U1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ガス発生剤成形体の着火性が良いガス発生器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、課題の解決手段として、
筒状ハウジングの一端側にガス排出口を有するディフューザ部が配置され、
筒状ハウジングの他端側に点火手段が配置され、
前記点火手段と前記ディフューザ部の間には、複数の貫通孔を有する軸方向に移動可能な金属製の隔壁が配置されており、
前記隔壁と前記点火手段の間の空間が、第1ガス発生剤成形体が充填された点火手段室であり、
前記隔壁と前記ディフューザ部の間の空間が、第2ガス発生剤成形体が充填された燃焼室であり、
前記隔壁が、円形底面部と円形底面部の外周部から一方向側に垂設された環状壁部を有しているもので、前記円形底面部が前記ディフューザ部側になるように配置されているものであり、
前記点火手段が、前記隔壁方向に突き出された円板状の着火部を有する点火器と、前記着火部の周囲に配置された、環状壁を有している金属製の環状部材を有しているものであり、
前記環状部材の環状壁が、前記着火部の先端面よりも前記隔壁側に突き出されているものである、ガス発生器を提供する。
【0009】
本発明のガス発生器は、軸方向に移動可能な金属製の隔壁と、点火器の着火部の周囲に配置された金属製の環状部材との組み合わせによって、点火手段室内における第1ガス発生剤成形体の着火性と充填性が改良されている。
隔壁は、筒状ハウジング内部に配置され、点火手段室と燃焼室を仕切るためのものであるから、筒状ハウジングほどの強度や耐久性は不要であり、ガス発生器の軽量化の観点からも厚さは小さくすることが望ましい。
点火手段は、周知のガス発生器で使用する電気式の点火器と環状部材の組み合わせからなるものである。
電気式の点火器は、点火器本体が樹脂および金属製のカラーからなる保持部材で包囲されており、円柱状の着火部の先端面を含む部分が保持部材から突き出された構造のものである。
第1ガス発生剤成形体は、燃焼ガスを発生させることで第2ガス発生剤成形体の着火燃焼を促進するようにも作用する成分であり、第1ガス発生剤成形体の燃焼により発生した燃焼ガスは、第2ガス発生剤成形体の燃焼により発生した燃焼ガスと共にエアバッグの膨張にも使用される。
第1ガス発生剤成形体と第2ガス発生剤成形体は、いずれも公知のガス発生器用のガス発生剤を使用することができるが、第1ガス発生剤成形体は相対的に燃焼温度の高いものを使用し、第2ガス発生剤成形体は相対的に燃焼温度の低いものを使用することが好ましい。
【0010】
点火器の着火部の周囲に配置された金属製の環状部材は、環状壁が着火部の先端面よりも隔壁側に突き出されていることから、作動時においては、着火部から生じた火炎や高温ガスなどが拡がった状態で点火手段室内に放出され易くなることに加えて、燃焼室までも到達し易くなるので、第1ガス発生剤成形体の着火性が良くなる。
【0011】
金属製の環状部材は、着火部の周囲に配置でき、環状壁を着火部の先端面よりも隔壁側に突き出すことができる形状のものであればよく、第1の環状部材〜第3の環状部材を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
(第1の環状部材)
環状底面部、前記環状底面部の内周部から垂設された内側環状壁部、および前記環状底面部の外周部から垂設された外側環状壁部を有しており、前記内側環状壁部と前記外側環状壁部の長さが同一であるもの。
(第2の環状部材)
環状底面部および前記環状底面部の内周部から垂設された内側環状壁部を有しているもの。
第2の環状部材は、第1の環状部材において外側環状壁部がないほかは同じものである。
(第3の環状部材)
環状底面部、前記環状底面部の内周部から垂設された内側環状壁部、および前記環状底面部の外周部から垂設された外側環状壁部を有しており、前記内側環状壁部と前記外側環状壁部の長さが異なるもの。
第3の環状部材は、第1の環状部材とは、内側環状壁部と外側環状壁部の長さが異なるほかは同じものである。なお、内側環状壁部の長さが外側環状壁部よりも長いものの方が好ましい。
これらの第1の環状部材〜第3の環状部材は、点火器の着火部の周囲に配置したとき、前記各環状部材の環状壁が、前記着火部の先端面よりも前記隔壁側に突き出されるように配置される。
【0012】
また、本発明の点火手段と隔壁の組み合わせを使用することによって、組立作業性も良くなる。このような組立作業性を良くするときは、点火手段として、点火器と上記した第1の環状部材〜第3の環状部材の組み合わせを使用する。
筒状ハウジングを使用したガス発生器の組み立てるときは、最初に筒状ハウジングの一端開口部側にディフューザ部を固定した後、残った開口部から必要な部品を圧入乃至は挿入して取り付け、所要量の第2ガス発生剤成形体を充填し、隔壁を圧入した後、所要量の第1ガス発生剤成形体を充填する。
そして、最後に筒状ハウジング内に点火手段を挿入するとき、先に充填された第1ガス発生剤成形体を軸方向に押し込みながら挿入することになる。
ガス発生剤成形体同士の間に隙間があると、長期間振動が加えられることで前記ガス発生剤成形体同士が衝突を繰り返して一部が粉化するおそれがあるため、前記ガス発生剤成形体同士の間に隙間が生じないように押し込む作業は重要となる。
また筒状ハウジングとガス発生剤成形体の間に隙間があると、筒状ハウジングとガス発生剤成形体との衝突による異音が発生する原因にもなるため、この観点からもガス発生剤成形体の押し込み作業は重要となる。
【0013】
上記のような押し込み作業において、点火手段として第1の環状部材〜第3の環状部材を含むものを使用すると、点火手段室内の第1ガス発生剤成形体を均等に押すことができるようになるため、点火手段(点火器と環状部材)の挿入作業と第1ガス発生剤成形体の押し込み作業が容易になる。
第1の環状部材〜第3の環状部材がない場合には、主として突き出された着火部が第1ガス発生剤成形体を押すことになるため、第1ガス発生剤成形体を均等に押すことが難しくなることから、第1ガス発生剤成形体の押し込み作業が不均一になったり、隔壁自体も厚みが小さなもの(即ち、強度の小さなもの)を使用したときには、均等に押されないことで変形したり、位置がずれたりするおそれがある。
【0014】
本発明は、課題の他の解決手段として、
前記隔壁が、複数の貫通孔を有する金属製の第1隔壁と複数の貫通孔を有する金属製の第2隔壁の組み合わせからなるものであり、
前記第1隔壁と前記第2隔壁が、いずれも円形底面部と円形底面部の外周部から一方向側に垂設された環状壁部を有しているものであり、
前記第1隔壁が前記点火手段室側に配置され、前記第2隔壁が前記燃焼室側に配置され、いずれも前記円形底面部が前記ディフューザ部側になるように配置されており、
前記第1隔壁が軸方向に移動することで、前記第1ガス発生剤成形体の充填量に応じて前記点火手段室の容積を調整するものであり、
前記第2隔壁が軸方向に移動することで、前記第2ガス発生剤成形体の充填量に応じて前記燃焼室の容積を調整するものである、請求項1記載のガス発生器を提供する。
【0015】
ガス発生器の車両内の設置場所や車両の種類によって必要とするガス発生量が増減することがあり、そのような場合には、ガス発生器自体は変えずに、ガス発生器に充填するガス発生剤量を増減させることで対応することができる。
よって、隔壁として第1隔壁と第2隔壁の2つを使用することで、点火手段室に充填する第1ガス発生剤成形体の量と、燃焼室に充填する第2ガス発生剤成形体の量に応じて、それぞれの室に対してより細かな容積の調整ができるようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のガス発生器は、点火手段室内に充填された第1ガス発生剤成形体の着火性が良く、組立時の作業性も良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のガス発生器の軸方向断面図。
図2】(a)は、図1のガス発生器の部分拡大図、(b)は、図1の別実施形態のガス発生器の部分拡大図、(c)は、図1のさらに別実施形態のガス発生器の部分拡大図。
図3】実施例1と比較例1の60Lタンク燃焼試験の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ガス発生器10は、筒状ハウジング11が外殻容器となるものである。
筒状ハウジング11の一端12a側には、ガス排出口16を有するディフューザ部13が配置されている。ガス排出口16は、図示していないアルミニウムテープで内側から閉塞されている。
ディフューザ部13は、底面15aと周面15bからなるカップ部15と、カップ部15の開口部に形成されたフランジ部14からなるものである。
ディフューザ部13は、カップ部周面15bと筒状ハウジング端部12a側の内壁面11aとの接触部分において溶接固定されている。
筒状ハウジング11およびディフューザ部13は、ステンレス、鉄、アルミニウムなどの同じ金属からなるものである。
【0019】
筒状ハウジング11の他端12b側には、点火手段が配置されており、ディフューザ部13と点火手段の間に2つの隔壁(第1隔壁40と第2隔壁50)が配置されている。
【0020】
点火手段は、公知のガス発生器用の電気式点火器20と環状部材30の組み合わせからなるものである。
電気式点火器20は、点火器が樹脂および金属製カラーからなる保持部材で包囲されたものであり、円柱状の着火部21が第1隔壁40側に突き出されている。
【0021】
金属製の環状部材30は、円板状の着火部21の周囲に配置されている。環状部材30は、筒状ハウジング11と同じ金属からなるものでもよいし、異なる金属からなるものでもよい。
図2(a)に示す環状部材(第1の環状部材)30は、環状底面部31、環状底面部31の内周部から垂設された内側環状壁部32、および環状底面部31の外周部から垂設された外側環状壁部33を有している。
内側環状壁部32は着火部21に当接され、外側環状壁部33は筒状ハウジング11の内壁面11aに当接され、環状底面部31が第1隔壁40側になるように配置されている。
環状部材30は、筒状ハウジング内壁面11aと着火部21との間に圧入されており、環状底面部31は着火部の先端面21aよりも第1隔壁40側に突き出されている。
なお、図2(a)においては、環状底面部31を点火器20側に当接させ、内側環状壁部32と外側環状壁部33との間の開口部が第1隔壁40側になるように、軸方向の向きを逆にして配置することもできる。このような配置状態であっても、内側環状壁部32が着火部の先端面21aよりも第1隔壁40側に突き出されているため、図2(a)のように配置した場合と同じ作用をすることができる。
【0022】
第1隔壁40は、円形底面部41と円形底面部41の外周部から一方向側に垂設された環状壁部42を有しているものである。円形底面部41には、複数の第1貫通孔43が形成されている。
第1隔壁40は、筒状ハウジング11と同じ金属からなるものでもよいし、異なる金属からなるものでもよいが、筒状ハウジング11のような耐圧性は不要であるから、軽量化の観点から厚みは小さくすることが望ましく、さらにはアルミニウムからなるものが好ましい。
第1隔壁40は、円形底面部41がディフューザ部13側になるように筒状ハウジング11内に圧入されている。
【0023】
環状部材30は、図2(a)に示すものに代えて、図2(b)に示すものを使用することができる。
図2(b)に示す環状部材(第2の環状部材)30は、図2(a)に示す環状部材30において外側環状壁部33がないほかは同じものである。
図2(b)では、環状底面部31の外周縁部31aが筒状ハウジング内壁面11aに対して圧入されている。
なお、図2(b)においては、環状底面部31を点火器20側に当接させ、内側環状壁部32が第1隔壁40側になるように、軸方向の向きを逆にして配置することもできる。このような配置状態であっても、内側環状壁部32が着火部の先端面21aよりも第1隔壁40側に突き出されているため、図2(b)のように配置した場合と同じ作用をすることができる。
【0024】
環状部材30は、図2(a)に示すものに代えて、図2(c)に示すものを使用することができる。
図2(c)に示す環状部材(第3の環状部材)30は、外側環状壁部33aが図2(a)に示す環状部材30における外側環状壁部33よりも長さが短くなっているほかは同じものである。
なお、図2(c)においては、環状底面部31を点火器20側に当接させ、内側環状壁部32と外側環状壁部33との間の開口部が第1隔壁40側になるように、軸方向の向きを逆にして配置することもできる。このような配置状態であっても、内側環状壁部32が着火部の先端面21aよりも第1隔壁40側に突き出されているため、図2(a)のように配置した場合と同じ作用をすることができる。
上記した図2(a)〜(c)に示す環状部材は、軽量化の観点から内側が中空になっているが、中空でないものでもよい。
【0025】
点火器20、環状部材30と第1隔壁40の間の空間が点火手段室45となり、点火手段室45内には所要量の第1ガス発生剤成形体46が充填されている。第1ガス発生剤成形体46は、図ではディスク形状であるが、円柱状などの所望形状にすることができる。
第1隔壁40はインフレータ10の軸方向に移動可能であるから、第1ガス発生剤成形体46の充填量に応じて点火手段室45の容積を調整することができる。
【0026】
第2隔壁50は、円形底面部51と円形底面部51の外周部から一方向側に垂設された環状壁部52を有しているものである。円形底面部51には、複数の第2貫通孔53が形成されている。
第2隔壁50は、筒状ハウジング11と同じ金属からなるものでもよいし、異なる金属からなるものでもよいが、筒状ハウジング11のような耐圧性は不要であるから、軽量化の観点から厚みは小さくすることが望ましく、さらにはアルミニウムからなるものが好ましい。
第2隔壁50は、円形底面部51がディフューザ部13側になるように筒状ハウジング11内に圧入されている。
【0027】
第2隔壁50とディフューザ部13の間の空間が燃焼室55となり、燃焼室55内には所要量の第2ガス発生剤成形体56が充填されている。第2ガス発生剤成形体56は、図ではディスク形状であるが、円柱状などの所望形状にすることができる。
第2隔壁50はインフレータ10の軸方向に移動可能であるから、第2ガス発生剤成形体56の充填量に応じて燃焼室55の容積を調整することができる。
【0028】
第1隔壁40の環状壁部42と第2隔壁50の環状壁部52は、長さが同じであってもよいし、異なっていてもよい。
図では、燃焼室55内の第2ガス発生剤成形体56は、第2隔壁50で軸方向に押されることで隙間なく充填されており、点火手段室45内の第1ガス発生剤成形体46は、点火手段と第1隔壁40で挟み付けられることで隙間なく充填されている。
図示する状態にて、第2隔壁50の環状壁部52の長さを調節することで、環状壁部50が第1隔壁40の円形底面部51に当接されるようにすることもできる。
【0029】
第1ガス発生剤成形体46と第2ガス発生剤成形体56は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
第1ガス発生剤成形体46と第2ガス発生剤成形体56を異なるものにするときは、第1ガス発生剤成形体46として相対的に燃焼温度の高いものを使用し、第2ガス発生剤成形体56として相対的に燃焼温度の低いものを使用することができる。
このような燃焼温度の関係を満たすガス発生剤成形体としては、例えば、特開2008−132842号公報の段落番号0040〜0042に記載の燃焼温度の異なるガス発生剤、特開2005−238907号公報の段落番号0032〜0033に記載の燃焼温度の異なるガス発生剤を使用することができる。
【0030】
図1のガス発生器10では、燃焼室55内に第1カップ部材60と第2カップ部材70が組み合わされて配置されているが、この実施形態に限定されるものではない。例えば、筒状部材60とカップ状部材70の組み合わせを使用せず、ディフューザ部13に至るガス排出経路に周知のガス発生器用のクーラント・フィルタを配置することもできる。
【0031】
第1カップ部材60は、貫通孔63aを有する底面部63、周壁部61、開口部に形成されたフランジ部62からなるものである。
周壁部61には、燃焼室55内で発生した燃焼ガスの通過孔となる多数の第1ガス通過孔64が設けられている。
第2カップ部材70は、突起部72を有する底面部71、周壁部73、周壁部73に形成された複数の第2ガス通過孔74を有している。
【0032】
第1カップ部材60と第2カップ部材70は、次のようにして固定されている。
第2カップ部材70は、開口部側がディフューザ部のフランジ部14に当接されている。
第1カップ部材60は、底面部63の貫通孔63aが第2カップ部材の底面部71の突起部72に嵌め込まれ、フランジ部62が筒状ハウジング11の内壁面11aに対して圧入された状態で固定されている。なお、第2カップ部材70は、第1カップ部材60とディフューザ部13により軸方向の両側から挟み付けられて固定されている。
第1カップ部材60と第2カップ部材70の外径は同一であり、かつ筒状ハウジング11の内径よりも小さくなるように調整されているため、燃焼ガス通路となる筒状間隙65が形成されている。
【0033】
次に、図1に示すガス発生器10の組立方法を説明する。但し、環状部材30は、図2(a)〜(c)のいずれかを使用する。
まず、筒状ハウジング11の一端12a側の開口部にディフューザ部13を配置した後、ディフューザ部13と筒状ハウジング11を溶接固定する。
次に、他端12b側の開口部(この段階では、筒状ハウジング11は、一端12aから他端12bまで均一径である)から、第1カップ部材60と第2カップ部材70を組み合わせたものを圧入しながら、貫通孔63aを突起部72に嵌め込んで固定する。
次に、他端12b側の開口部から燃焼室55内に所要量の第2ガス発生剤成形体56を充填する。
次に、他端12b側の開口部から第2隔壁50を圧入して燃焼室55の容積を調整することで、燃焼室55内の第2ガス発生剤成形体56が隙間なく充填されるようにする。
次に、他端12b側の開口部から第1隔壁40を圧入する。
次に、他端12b側の開口部から点火手段室45内に所要量の第1ガス発生剤成形体46を充填する。
次に、他端12b側の開口部から点火手段(点火器20と、図2(a)〜(c)に示す第1の環状部材30〜第3の環状部材30)を圧入する。このとき、第1ガス発生剤成形体46は均等に押し込まれて行き、第1隔壁40も第1ガス発生剤成形体46を介して均等に圧力を受ける。
このため、点火手段室45内において第1ガス発生剤成形体46が偏在したり、第1隔壁40が変形したり、第1隔壁40の位置がずれたりすることがない。
なお、図2(a)〜(c)に示す第1の環状部材30〜第3の環状部材30を軸方向の向きが逆になるように使用したときには、均等な押し込み作業性は低下するため、均等に押し込む効果も得ようとするときには、図2(a)〜(c)に示す状態で使用する。
その後、筒状ハウジング11の端部12b側をかしめて(図示するように径を小さくするように変形させて)、点火器20を固定する。
【0034】
次に、図1に示すガス発生器10の動作を説明する。
点火器20が作動すると、着火部21から火炎や高温ガスなどが発生する。このとき、環状部材30の作用によって、火炎や高温ガスなどは点火手段室45内に拡がるように放出され、一部は燃焼室55内にも到達するため、第1ガス発生剤成形体の40と第2ガス発生剤成形体56の着火性が向上される
点火手段室45内にて第1ガス発生剤成形体46が着火燃焼して発生した燃焼ガスは、第1隔壁40の第1貫通孔43から流出した後、第2隔壁50の第2貫通孔53から燃焼室55内に流入する。
燃焼室55内の第2ガス発生剤成形体56は既に着火燃焼が開始されているが、燃焼室55内に流入した燃焼ガスによってさらに燃焼が促進され、燃焼ガスが発生する。
燃焼室55内で発生した燃焼ガスは、第1カップ部材60の第1ガス通過孔64から筒状間隙65内に入ったあと、第2カップ部材70の第2ガス通過孔74から第2カップ部材70内に入り、さらにディフューザ部13内に入ったあと、シールテープを破り、ガス排出口16から排出される。
【実施例】
【0035】
実施例1および比較例1
図1に示すガス発生器(実施例1)と図1に示すガス発生器から環状部材30を除いたガス発生器(比較例1)を使用して、公知の60Lタンク燃焼試験(例えば、特開2001−97176号公報の段落番号0098参照)を実施した。
なお、いずれのガス発生器においても、点火手段室内と燃焼室内に充填されたガス発生剤成形体の組成と量は同じであり、ガス発生剤成形体同士に隙間が生じないように充填した。
【0036】
60Lタンク燃焼試験の結果を図3に示す。
実施例1では、点火器の作動から圧力の上昇開始(ガス発生開始)までの時間が1.4ミリ秒で、比較例1では2.4ミリ秒であり、1ミリ秒という違いが生じた。通常の車両に搭載されたエアバッグ装置では、車両が衝突してからエアバッグが最大膨張するまでの時間は30〜60ミリ秒程度であることから、前記した1ミリ秒の差は非常に大きな違いである。
【符号の説明】
【0037】
10 ガス発生器
11 筒状ハウジング
13 ディフューザ部
16 ガス排出口
20 点火器
21 着火部
30 環状部材
40 第1隔壁
45 点火手段室
46 第1ガス発生剤成形体
50 第2隔壁
55 燃焼室
56 第2ガス発生剤成形体
図1
図2
図3