(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来のバッテリ等を使用しない点火装置を有する汎用エンジンでは、エンジンのクランク軸に連結したフライホイール等の周方向1箇所に永久磁石を取り付けるとともに、フライホイールの外周に対向して磁石発電機を設けている。磁石発電機は点火コイルを有し、点火コイルでは、コアーの外周に1次コイルが巻回され、その1次コイルの外周側に2次コイルが巻回されている。点火コイルの1次コイルに誘起される電圧を利用して、2次コイルに高電圧を発生させ、点火プラグに印加する。
【0003】
このようなマグネット方式の無接点点火装置は、誘導放電型と容量放電型に大別される。誘導放電型は、点火コイルの1次コイルに発生した誘導電流をトランジスタが断続するもので、発電時に一旦短絡させて電流を流しておき所定のタイミングでこの電流を遮断することにより2次コイルに過渡電圧を発生させる。一方容量放電型は、点火コイルの1次コイルの出力を一旦コンデンサへ充電し、所定のタイミングで1次コイルに急激に電流を流し、2次コイルに過渡電圧を発生させる。
【0004】
誘導放電型の点火装置の従来の例が、特許文献1に記載されている。この公報に記載の点火装置では、点火コイルの1次巻線に併設したトリガコイルから回転速度を検出している。そして1次巻線電圧の電圧分が飛び火を持続させる値以上の条件になったら、データに従って点火信号を出力している。
【0005】
容量放電型の点火装置の従来の例が、特許文献2に記載されている。この公報に記載のコンデンサ放電式内燃機関点火装置では、点火コイルをエキサイタコイルとともに磁石発電機内に設け、エキサイタコイルが発生する電圧と点火コイルの1次コイルが発生する電圧の和の電圧により、点火エネルギ蓄積用のコンデンサを充電している。そして、コイルが巻回される第1、第2の巻き枠部を軸方向に並べて一体化し、第1の巻き枠部にはエキサイタコイルを、第2の巻き枠部には1次コイルを巻いている。1次コイル及びエキサイタコイルの製作のために、同じ線径のコイル導体を用い、巻方向を同じにして巻回させることにより、同一の巻線機で巻回作業を自動的に行っている。
【0006】
さらに、点火装置に用いる点火コイルにおいて、小型化と出力向上のために、点火コイルに供給する駆動電流を従来より高め、従来の1次コイルの1本巻の1次導線の断面積に合計断面積が等しくなる複数本の1次導線を、複数本並列に纏めてボビンに巻回することが特許文献3に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
刈払機等に使用される汎用エンジンでは、さらなる小型化や低コスト化の観点から、バッテリを有せず、フライホイールに設けた永久磁石と点火コイルとの間で発生する電力を電力源として使用している。このようなバッテリレスのエンジンでは、一旦起動してしまえば誘起電圧を使用できるので、その後の運転制御にはマイコン等の制御機器を使用した高度な制御が可能になる。
【0009】
そこで、エンジンの低速回転時に安定して点火させるために、例えば特許文献1では低速時でも電源を確保できるように、点火コイルとは別にトリガコイルを設けている。このトリガコイルは1次巻線の1次巻線電圧よりも小さいが、同期したトリガコイル電圧を出力するものであり、発生した電力はマイコンや周期信号発生部に供給される。このようにトリガコイルは点火コイルの1次コイルとはその作用が異なるので、一般にはその用途に適合した線径を用いており、必ずしも1次コイルの線径とは同一ではなかった。そのため、製造工数が多くなり、コストの増大を引き起こす恐れがあった。
【0010】
特許文献2の点火装置では、軸方向に並べて配置した1次コイルとエキサイタコイルを同一の線径の導線で構成し、それらを同一の巻線機で巻回しており、作業性が向上している。しかしながら特許文献2に記載の点火装置は、エキサイタコイルと1次コイルとが、同じ線径のコイル導体により、巻方向も同じくして巻回されている。そのため、1次コイルにさらなる電流量が必要なときは、1次コイルの線径を太くする、必要がある。または、以下に記載の特許文献3の方法を用いて、複数本の巻線を同一巻方向にして線端を接合する、必要がある。
【0011】
前者の方法では、エキサイタコイルの胴体径も必要が無いのに大径となり、点火装置が大型化する。後者の場合には、複数本の巻線の巻方向を同じくする必要から、一度切断して巻き直す作業を複数回繰り返すか、もしくは、同時に複数本の導体を巻回する作業及び装置が必要となり、作業性の低下および装置の複雑化をもたらす。つまり、この特許文献2に記載の点火装置は、1次コイルとこの1次コイルに直列接続されたコイルとが異なるまたは反対の作用をするように、一体化ボビンに1次コイルと他のコイルを巻回するようには構成されていない。
【0012】
さらに、特許文献3に記載の点火コイルでは小型化のために、点火コイルをいわゆる2重巻きすることが記載されている。しかし、この公報に記載のコイルは同時に複数本の導線で構成するものであり、制御用電源のために正方向の電圧を利用可能なコイルを、1次コイルと同一線径とし、同一の巻線機で巻回可能とするものではない。
【0013】
本発明は、上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、バッテリを必要としない簡単な構成の汎用エンジンの無接点点火装置における1次コイルと充電コイルが、それぞれ所望のインダクタンスおよびインピーダンスを容易に得られ、小型で簡単かつ信頼性の高い構成とすることにある。また、マイコンまたはCPUの電源を自らの点火コイルの誘起電圧から得て、マイコン制御を可能にしたときの1次コイル及び充電コイルのそれぞれについて、容易に所望のインダクタンスおよびインピーダンスが得られ、簡単で信頼性の高い構成とすることを、他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、バッテリが不要な無接点方式の内燃機関
用点火装置であって、ヨークが貫挿される1次ボビンに1次コイルと充電コイルを巻回してコイル部を構成し、2次コイルを巻回した2次ボビンをこのコイル部の外周側に配設し、前記1次コイルを複数の並列接続されたコイルで構成し、前記1次コイルと前記充電コイルを直列接続し、前記充電コイルと前記複数のコイルから構成される1次コイルとを1本の導線を途中で切断することなく、前記1次ボビンに形成した複数の端子に前記導線の中間部を選択的に絡げることにより構成したことを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、エンジンのクランク軸に連結したフライホイールの外周に永久磁石を取り付け、この永久磁石に対向配置された充電コイルの出力を用いて、点火コイルの
1次コイルへ急激な電流変化を与え、前記点火コイルの
2次コイルに高電圧を発生させ、この
2次コイルに接続された点火プラグに火花放電を発生させて点火させる無接点方式の内燃機関用点火装置において、前記1次コイルと同軸上に前記充電コイルを形成するとともに、前記1次コイルと前記充電コイルとを1本の連続する同一の導線で構成し、かつ前記1次コイルを複数の並列コイルで構成したことにある。
【0016】
そしてこの特徴において、前記導線を途中で切断することなく、前記1次コイルを構成する複数のコイルの内の少なくとも2つのコイルを
並列コイルとなるように接続するのがよく、前記1次コイルと前記充電コイルとでコイル部を構成してこのコイル部を1次ボビンに巻回し、前記コイル部が
発電時と点火動作時に要求されるインダクタンス及びインピーダンスになるように、前記1次コイルを形成する複数のコイルの巻数と前記充電コイルの巻数を定めるのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、汎用エンジンの無接点点火装置の1次コイル側を、同一線径の1本の連続する導線から複数のコイルを作成し、この複数のコイルの中の1個のコイルの中間部にタップを有する構成としたので、所望のインピーダンス及びインダクタンスを有する1次コイルと充電コイルを容易に作成できる。それとともに、小型で構成を簡単にできる。さらに、充電コイルに誘起される正方向の電圧をマイコンまたはCPUの電源としているので、マイコンまたはCPUでの制御が可能になり、1次コイル側を簡単で信頼性の高い構成にできる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る内燃機関用点火装置100の一実施例を、図面を用いて説明する。
図1は、内燃機関用点火装置100を汎用の内燃機関(エンジン)のクランク軸に接続したフライホイールの外周側に設けた正面断面図である。本実施例で取り扱う汎用の内燃機関は、排気容量がおおむね1000cc以下であり、刈払機や芝刈り機、船外機等に使用できる。
【0020】
また、点火装置100は、バッテリ等の外部電源を備えておらず、ロープ等を引いて起動するリコイルスタータ方式またはキックスタート方式等の手動起動方式を採用している。これらの手動起動方式を利用するため、および小型で簡素な構成とするため、バッテリを搭載していない。
【0021】
例えば、リコイルスタータ方式の内燃機関では、ロープを引くことにより内燃機関に連結するクランク軸1が回転する。クランク軸1には鉄製のフライホイール2が取り付けられている。フライホイール2の外周の一部に形成された凹部5内には、フライホイール2の径方向に着磁された永久磁石4が周方向に1箇所だけ固定して設けられている。フライホイール2と永久磁石4とは、磁石回転子を構成する。磁石回転子では、永久磁石4の外側の磁極(
図1ではN極)と、凹部5の両側に導出された1対の磁極(
図1の例ではS極)とにより、3極の磁石界磁が構成される。
【0022】
一方、内燃機関のケースやカバー等に固定子としての点火装置100が固定されており、磁石回転子10に対向している。点火装置100は、磁石回転子10の磁極に対向する磁極部13、14を先端部に有し、互いに離隔して配置されたヨーク15、16と、このヨークにほぼ直角に接続する角棒形状のコアー12とを、有している。コアー12とヨーク15、16とで、Cの字型に形成されている。
【0023】
コアー12には、両端部がフランジ形状に形成された1次ボビン57が取り付けられている。ボビンには、複数層にわたって、コイルLが巻回されている。コイルLは、詳細を後述するようにこの点火装置100の1次コイルL
1と充電コイルL
CHを構成する。コイルLの外周側には、この点火装置100の2次コイルL2が複数層にわたって巻回された2次ボビン58が配設されている。2次ボビン58の軸方向中間部には、仕切り部分が形成されており、制御基板55の取付け座を形成している。1次ボビン57及び2次ボビン58、これら1次、2次ボビン57、58に巻回されたコイルL、2次コイルL
2はケース11内に収容されている。
【0024】
この点火装置100の回路図を、
図2Aに示す。点火コイル部が有する2個の1次コイルL
11、L
12と直列に、充電コイルL
CHが接続されて、コイル部Lを構成する。充電コイルL
CHは、一端側が端子63aに、他端側が端子63bに接続されている。2個の1次コイルL
11、L
12は、一端側が端子63bに、他端側が端子63aに接続されて、1次コイルL
1を構成する。2個の1次コイルL
11、L
12は並列接続となっている。2次コイルL
2の一端側は、ヨーク12を介して端子63a側に接続されている。2次コイルL
2の他端側は、上述したように点火プラグ22に接続されている。
【0025】
1次コイルL
1の一端側は、パワートランジスタTrのコレクタ側にも接続されている。パワートランジスタTrのエミッタ側は、端子63a側に接続されており、パワートランジスタTrのベース側は、ROMやRAMを含むCPU(マイコン)42に接続されている。
【0026】
CPU42には、回転数検出回路41及び電源回路が接続されている。電源回路は、コンデンサC
1とツェナーダイオードZD
1の並列回路である。回転数検出回路41及び電源回路には、それぞれダイオードD
2、D
3が接続されている。なお、上記回路図においては、説明の便のため、一部抵抗等の図示を省略している。
【0027】
次にこのように構成した内燃機関用点火装置100の動作を、以下に説明する。リコイルスタータ方式の内燃機関では、スタータに連結したロープを引くことにより、クランク軸が回転する。クランク軸が回転すると、
図1に示すようにクランク軸に取り付けたフライホイール2の外周側に位置する永久磁石4と点火装置100のコイル部Lとの相互作用により磁束が変化し、1次コイルL
1と充電コイルL
CHに誘起電圧が発生する。
【0028】
すなわち、クランク軸の回転角が、永久磁石4がヨーク先端部の磁極部13に達する角度になると、永久磁石4と磁極部12間で相互誘導により、1次コイルL
1および充電コイルL
CHに正方向電圧が誘起される。そして、クランク軸が回転を続けると、誘起電圧は上昇した後減少する。さらにクランク軸が回転し永久磁石4が1次コイルL
1に達すると、これ迄とは逆に、1次コイルL
1および充電コイルL
CHには負方向電圧が誘起される。負方向誘起電圧はクランク角θが増すにつれてその絶対値を増すがやがて絶対値を減少し、負方向誘起電圧から正方向誘起電圧に変化する。その後永久磁石4がヨーク16の磁極部14を過ぎると、誘起電圧は消滅する。
【0029】
クランク軸の回転により、コアー12に発生した磁束変化が、コアー12の外周に巻回した1次コイルL
11、L
12および充電コイルL
CHに誘起電圧を発生させる。これらのコイルL
11、L
12、L
CHに発生する誘起電圧V
Bは、
図1に示した実施例は
図2Aに示した回路構成を備えているので、
図2Bに示した電圧波形となる。ここで、誘起電圧VBは、
図2Aにおける端子63aを基準にした端子63bの値である。
【0030】
図2Bにおいて、横軸は時間tを示しており、クランク軸の回転角θに対応した値である。クランク軸の1回転(θ=360度)に対応する値を、周期Tで示す。フライホイール2の外周に設けた永久磁石4が、コアー12に取り付けられた一方のヨーク15に達すると、コアー12に巻回した1次コイルL
11、L
12や充電コイルL
CHに誘起電圧が発生し、
図2Aに示した端子63bでは、負方向の誘起電圧v
b1が発生する。
【0031】
上述したように、1次コイルL
11、L
12や充電コイルL
CHの巻回方向は、負方向の誘起電圧が発生したときに、電流が流れる方向がすべて同一方向になるように構成されている。その結果、誘起電圧により端子63bから1次コイルL
11、L
12、次いで端子63a、充電コイルL
CH、端子63cの経路で、電流が流れる。
【0032】
換言すれば、端子63bを基準にすると1次コイルL
11、L
12により端子63aの電圧が端子63bよりも高くなり、端子63aを基準にすると充電コイルL
CHにより端子63cの電圧が端子63aよりも高くなる。その際、端子63aや端子63cから端子63bへ向かう単純な電流経路が形成されず、主として充電コイルL
CHを電源として、電流は端子63cからダイオードD
3、次いでコンデンサC
1、端子63aの経路で流れ、コンデンサC
1が充電される。ここで、ツェナーダイオードZD
1は、コンデンサC
1を一定電圧以下に保つように作用する。
【0033】
上述した様に、クランク軸の回転により永久磁石4が各コイルL
11、L
12、L
CHに接近すると、上記誘起電圧により発生する電流により、コンデンサC
1が接続されたCPU42の駆動電源が確保される。それと同時に、端子63cから回転検出回路41に接続されたダイオードD
2、次いで回転検出回路41、端子63aの経路にも電流が流れる。これにより、回転検出回路41は回転パルス信号をCPU42に供給可能になる。
【0034】
CPU42は、回転検出回路41から出力された回転パルス信号に基づいて、クランク軸の回転速度を演算する。CPU42が回転速度信号を出力した時点から、CPU42はトランジスタTrにベース電流を供給する。これにより、トランジスタTrは動作状態ONとなる。
【0035】
図2Bにおいて、端子63bに誘起される電圧v
bが正方向となる誘起電圧v
b2の範囲では、この誘起電圧v
b2により、端子63cから充電コイルL
CH、端子63a、1次コイルL
11、L
12、端子63bの順に電流が流れる経路が形成される。換言すれば、端子63cを基準として充電コイルL
CHにより端子63aの電圧が端子63cよりも高くなり、端子63aを基準として1次コイルL
11、L
12により端子63bの電圧が端子63aよりも高くなる。この時、端子63bや端子63aから端子63cへ向かう電流経路は形成されない。したがって、誘起電圧v
bが正方向の場合には、形成される電流経路は、1次コイルL
11、L
12を電源として、端子63bからトランジスタTr、端子63aへと流れる経路のみとなる。
【0036】
CPU42は、上述した通り、初めトランジスタTrをON状態に維持し、回転検出回路41から出力される回転パルス信号を演算して得られたクランク軸の回転速度に応じたタイミングで、トランジスタTrのベースへの供給電流を遮断する。これにより、トランジスタTrがOFFされる。トランジスタTrがOFF状態になると、1次コイルL
11、L
12の通電電流が急激に遮断される。そして、相互誘導作用により2次コイルL
2に誘起電圧が発生し、点火プラグ22が印加され、絶縁破壊により点火プラグ22が点火する。
【0037】
本実施例では1次コイルL
11、L
12を並列に構成し、並列に構成された1次コイルL
11、L
12に充電コイルL
CHを直列に構成している。さらに、各コイルコイルL
11、L
12、L
CH、L
2の巻線方法に従来とは異なる新たな方法を採用している。以下に、この巻線方法について詳述する。
【0038】
各コイルL
11、L
12、L
CH、L
2の巻線方法を、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は、1次ボビン57とコイル部Lの一実施例の図であり、同図(a)はその左側面図、同図(b)は正面断面図、同図(c)は
図3(b)のA部拡大図である。
【0039】
1次ボビン57は、左右両側にフランジ部を有する中空四角柱形状であり、中空部72は、コアー12に嵌合する。1次ボビン57の一方のフランジ部には、上下にほぼ等間隔に3個の端子63a〜63cが形成されており、
図2に示したようにコイル部Lを構成する各コイルL
11、L
12、L
CHの各端部が接続される。
【0040】
ここで本発明の特徴的な構成として、1次コイルL
11、L
12及び充電コイルL
CHからなるコイル部Lは、1本の同一の導線から構成されている。すなわち、図示しないコイル巻線機から、1本の導線が1次ボビン57に供給される。そして、1次コイルL
11に相当する部分を、
図2Aに示した回路図の端子63aから巻回する。その際、タブ端子63aに巻始めを絡げた上で、設定した巻数を1次ボビン57上に複数層巻回する。
図3(c)の1次ボビン57に巻回した白丸の底層部が、これに相当する。その後、導線をタブ端子63bに絡げる。
【0041】
タブ端子63bに絡げた導線は、逆回しに設定した巻数だけ複数層だけ1次ボビン57に巻回される。
図3(c)のハッチングした丸部が、これに相当する。このコイル層は、1次コイルL12を構成する。所定巻数だけ導線を1次ボビン57に巻回したら、タブ端子63aに再度絡げる。これにより巻方向の異なる2つの1次コイルL
11、L
12からなる1次コイルL
1が形成される。
【0042】
なお
図3(c)では、1次コイルL
11、L
12の層数を2層としているが、この図は例示的なものであり、層数はあくまでも1次コイルL
11、L
12として最適な巻数から決定される。1次コイルL
1には上述したように、2次コイルL
2に所定の誘起電圧及び誘起電流を発生させることが求められているので、1次コイルL
1を構成する各コイルL
11、L
12は、2つの並列コイルとなるように接続され、かつ1次コイルL
1として必要なインダクタンスとインピーダンスを有するように、導線径及び巻数が予め定められている。つまり、導線径の大きさによっては、上述した巻線方法を複数回繰り返し、インダクタンス及びインピーダンスを調整する。
【0043】
次にタブ端子Aに絡げた導線について、巻線方向を戻して、充電コイルL
CHを1次コイルL
1の外側に形成する。
図3(c)の際外側の白丸が、これに相当する。充電コイルL
CHに要求されるインダクタンスおよびインピーダンスになるまで、必要巻数だけ巻回して、端末をタブ端子63cに絡げる。
図3(c)では、充電コイルL
CHを1層だけ巻回しているが、これも例示的に示したもので、上述した通り、CPU42に必要な電源電力や回転検出回路41の発生パルスに必要な電力が得られる巻数だけ巻回する。すなわち、コイル部Lが発電時には高インダクタンスに、点火動作時には低インピーダンスになるように、1次コイルL
1を形成する複数のコイルL
11、L
12の巻数と充電コイルL
CHの巻数を定める。その後、タブ端子63a〜63cに絡げた導線を制御基板55の所定部に接合する。これにより、各コイルL
11、L
12、L
CHの各発電特性を、最適に利用可能になる。
【0044】
図4に、コイル部Lの他の巻線態様を示す。
図4(a)は1次ボビン59とコイル部Lの左側面図、同図(b)は正面断面図、同図(c)は
図4(b)のB部拡大図、同図(d)は
図4(b)のC部拡大図である。
図4に示した実施例は、
図3に示した実施例と充電コイルL
CHの巻線位置が異なっている。このため、1次コイルを構成するコイルL
11、L
12が、同心多層になっている点は
図3の実施例と同じであるが、その軸方向位置を変えている。
【0045】
すなわち、1次ボビン59では、ヨーク12が貫挿される軸方向の中間部に仕切りが形成されており、仕切りよりも図で左側に充電コイルL
CHを仕切りよりも右側に1次コイルL
1を形成している。1次ボビン59の仕切り部または左右いずれかのフランジ部には、タブ端子63a〜63cが形成されている。1次コイルL
11、L
12及び充電コイルL
CHを所定回数巻回した後の導線の端部を、これらタブ端子63a〜63cのいずれかに、
図3に示した実施例と同様の基準で絡げている。
【0046】
本実施例においても、1次コイルL
1に要求されるインダクタンス及びインピーダンスになるまで1次コイルL
11、L
12は1次ボビン59に巻回され、供給コイルL
CHに要求されるインピーダンス及びインダクタンスに1次ボビン59に巻回される。また、これらのコイルL
11、L
12、L
CHは、上記電気的特性を有するように、同一の導線から途中で切断されることなく形成される。
【0047】
上記各実施例に示したように、1次コイルを複数のコイルの並列構成で実現している。具体的には、最初の1次コイルを巻回し巻き終りまで達したときに、巻線方向を切換えて逆巻に巻回し、最初の1次コイルの巻始めに、後の時点で接合する。そのとき、コイルの導線を切断することなく、充電コイルを所定の巻方向で巻回する。これにより、用途の異なる1次コイルと充電コイルを、1本の導線及び1個のボビンで構成できる。さらに、1次コイルと充電コイルの双方を、各コイルに求められる最適なインピーダンス及びインダクタンスを有するようにすることが可能になる。これらにより、内燃機関用点火装置の生産性が向上するだけでなく、点火装置の小型化及び低廉化が可能となる。