【実施例1】
【0016】
AFMだけで測定する場合,磁気ヘッドのメインポール近傍の数十〜百nmの微小エリアを正しく測定するためには、光学顕微鏡で撮像した画像から特定した、測定したい領域を含む数〜数十マイクロメートルの比較的広い領域に対して、AFMスキャンを行わなければならない。しかし、AFMスキャンを行う場合には、AFMのカンチレバー先端の探針が試料表面と周期的に接触するので、探針の破損を防止するために試料表面を走査する速さは制限され、走査速度は比較的遅い。また、上記光学顕微鏡で撮像した画像から特定した比較的広い領域から最終的にメインポール近傍の数十〜百nmの微小エリアを確定するまでには、順次走査範囲を狭めていって数段階の走査を行わなければならず、最終的なAFMの走査範囲を確定するまでには、比較的長い時間がかかる。
【0017】
一方、MFMで測定する場合には、カンチレバー先端の探針を試料の表面から一定の高さの面内を走査するので探針の破損の可能性が比較的低く、AFMの場合と比べて比較的早い速度で試料の表面を走査することが可能である。
【0018】
そこで、本実施例では、数〜数十マイクロメートルの比較的広い領域をAFMスキャンする代わりに、MFM方式を利用して、全体の測定時間を短縮するようにした。
【0019】
図1A乃至
図1Cを用いて、前記した本実施例に係るMFM方式を利用して磁気ヘッドメインポール近傍の表面段差、表面粗さの測定速度を向上させる原理を説明する。
【0020】
図1Aにおいて1はMFMのカンチレバーであり、5は計測対象の磁気ヘッドである。カンチレバー1の先端部付近には探針3が形成されており、探針3の表面の一部には磁性体2の薄膜が形成されている。一方、磁気ヘッド5には磁界発生部6が形成されており、外部から励磁信号7を印加することに磁界発生部6の端面61と62から書込み磁界4が発生する。
【0021】
図1Aにおいて、カンチレバー1の上方から磁気ヘッド5を光学的に撮像して得た画像500を
図1Bに示す。光学像500は比較的高い倍率で撮像しているが、
図1Aに示した磁界発生部6の端面61と62は1μm以下で小さすぎて、光学像500で磁界発生部6の端面61と62を特定することはできない。これに対して磁気ヘッド5に形成されたパターン501〜504は比較的大きく、光学像500でその位置を特定することができる。そこで、磁界発生部(メインポール)6の端面61と62が存在しそうな領域601を、光学像500上のパターン501〜504の位置情報と、磁気ヘッド5の設計情報から推定する。次に、磁気ヘッド5を移動させて、
図1Cに示すように、磁界発生部6の端面61と62が存在しそうな領域601がカンチレバー1の先端近傍の探針3の直下に来るようにする。
【0022】
この状態において、まず、測定対象の磁気ヘッド5に書込み磁界4を励起できる信号7を印加し、磁気ヘッドに書込み磁界4を発生させる。このとき、カンチレバー1の先端部の探針3の表面に磁性材料2の薄膜を形成したカンチレバー1を磁気ヘッド5の磁界発生部6であるメインポールの上方、Hfの高さ(約10-100nm)で上下に高速に振動させながら領域601をスキャンする(探針3の先端が上下に振動するときの最下点がHfとなるように設定してスキャンする)。前記MFMスキャンにおいては、探針3が試料表面からHfの高さの領域をスキャンするので探針3が試料表面と接触しない。そのため、探針3が試料表面と接触することにより破損する可能性が、試料表面に接触しながらスキャンするAFMの場合と比べて少ない。その結果、広い領域をAFMでスキャンする場合と比べて高速にスキャンすることができる。そのため、AFMで磁気ヘッドのメインポール近傍の数十〜百nmの微小エリアまでの確定するために時間と比べて短縮することができる。
【0023】
図2は、本発明に係る磁気ヘッド素子の表面形状測定装置の第1実施形態の基本的な構成図である。
図2の磁気ヘッド素子の表面形状測定装置は、磁気ヘッド素子の製造工程において、多数の薄膜磁気ヘッド素子が形成されたウェハを加工してスライダ単体(薄膜磁気ヘッドチップ)を切り出す前の工程のローバー40(ヘッドスライダが配列されたブロック)の状態で熱アシスト磁気ヘッド素子の発生する近接場光の強度分布を測定することが可能なものである。通常、多数の薄膜磁気ヘッド素子が形成されたウェハから3cm〜10cm程度の細長いブロック体として切り出されたローバー40は、40個〜90個程度のヘッドスライダ(薄膜磁気ヘッド素子)が配列された構成となっている。
【0024】
本実施例に係る磁気ヘッド素子の表面形状測定装置は、走査型プローブ顕微鏡をベースとしている。磁気ヘッド素子の表面形状測定装置の測定ステージ101は、ローバー40をX,Y方向に移動可能なXステージ106、Yステージ105を備えて構成されている。
【0025】
ローバー40は、その長軸方向の片側面がYステージ105の上面に設けられているローバー40の位置決め用の載置部114の基準面(Yステージ105に形成された段差面)に一旦突き当てられることによってY方向に位置決めされる。
【0026】
Yステージ105の上方にはローバー40の位置ずれ量測定用のカメラ103が設けられている。カメラ103により、
図1B及び
図1Cに示したような画像が取得される。Zステージ104は測定ステージ101のカラム1011に固定されており、カンチレバー1をZ方向に移動させるものである。測定ステージ101のXステージ106、Yステージ105、Zステージ104は、それぞれ図示していないピエゾ素子で駆動されるピエゾステージで構成されている。ローバー40の所定の位置決めが終了すると、ローバー40に対して、制御部PC130から出力する励磁信号を供給し、ローバー40は、載置部114に磁気ヘッド素子の書込み磁界発生部6から磁界発生可能な状態で、Yステージ105に設けた図示していない吸着手段により吸着保持される。
【0027】
ピエゾドライバ107は、この測定ステージ101のXステージ106、Yステージ105、Zステージ104をそれぞれ駆動するピエゾ素子(図示せず)を駆動制御するものである。制御部PC130は、モニタを含むパーソナルコンピュータ(PC)を基本構成とする制御用コンピュータで構成されている。図に示すように、測定ステージ101のYステージ105上に載置されたローバー40の上方の対向する位置には、前記近接場光と磁界との両方を測定できるカンチレバー1が配置されている。カンチレバー1は、その先端部分付近に
図1Aに示して様な探針3が形成されており、Zステージ104の下側に設けられた加振部122に取り付けられている。加振部122はピエゾ素子で構成され、ピエゾドライバ107からの励振電圧によって機械的共振周波数近傍の周波数の交流電圧が印加され、カンチレバー1の先端部の探針3は上下方向(Z方向)に振動される。
【0028】
カンチレバー1の探針3のZ方向の振動は、半導体レーザ素子109と、4分割光ディテクタ素子からなる変位センサ110とを備えて構成される変位検出部120により検出される。この変位検出部120においては、半導体レーザ素子109から出射したレーザがカンチレバー1の探針3が形成されている面と反対側の面に照射され、カンチレバー1で反射したレーザは変位センサ110に入射する。
【0029】
変位センサ110は、受光面が4つの領域に分割された4分割センサであり、変位センサ110の分割されたそれぞれの受光面に入射したレーザはそれぞれ光電変換されて4つの電気信号として出力される。ここで、変位センサ110は、カンチレバー1が加振部122により振動が加えられていない状態、即ち静止した状態で半導体レーザ素子109からレーザが照射されたときに、カンチレバー1からの反射光が4つに分割された受光面のそれぞれに等しく入射するような位置に設置されている。
【0030】
差動アンプ111は、変位センサ110から出力される4つの電気信号の差分信号に所定の演算処理を施してDCコンバータ112に出力する。すなわち、差動アンプ111は、変位センサ110から出力される4つの電気信号間の差分に対応した変位信号をDCコンバータ112に出力する。従って、カンチレバー1が加振部122により加振されていない状態では、差動アンプ111からの出力はゼロになる。DCコンバータ112は、差動アンプ111から出力される変位信号を実効値の直流信号に変換するRMS−DCコンバータ(Root Mean Squared value to Direct Current converter)で構成される。
【0031】
差動アンプ111から出力される変位信号は、カンチレバー1の変位に応じた信号であり、カンチレバー1は振動しているので交流信号となる。DCコンバータ112から出力される信号は、フィードバックコントローラ113に出力される。フィードバックコントローラ113は、カンチレバー1の現在の振動の大きさをモニタするための信号として制御部PC130にDCコンバータ112から出力される信号を出力すると共に、カンチレバー1の励振の大きさを調整するためのZステージ104の制御用信号として制御部PC130を通じて、ピエゾドライバ107にDCコンバータ112から出力される信号を出力する。この信号を制御部PC130でモニタし、その値に応じて、ピエゾドライバ107によりZステージ104を駆動するピエゾ素子(図示せず)を制御することによって、測定開始前に、カンチレバー1の初期位置を調整するようにしている。
【0032】
この実施の形態では、ハードディスクドライブのヘッド浮上高さをMFMモードで走査する場合のカンチレバー1の初期位置として設定する。発信機102は、カンチレバー1を励振するための発振信号をピエゾドライバ107に供給するものである。ピエゾドライバ107は、この発振機102からの発振信号に基づいて加振部122を駆動してカンチレバー1を所定の周波数で振動させる。
【0033】
MFMモードで測定を行う際、まずカンチレバー1は、ローバー40に形成された磁気ヘッド素子部5の表面から、ヘッド浮上高さHfに相当する高さにカンチレバー1の磁性膜2を形成した探針3の先端部が位置するように、Zステージ104によって位置決めされる。このヘッド浮上高さHfは、高速に回転する磁気ディスク(図示せず)上に磁気ヘッドを配置したときに磁気ディスクの表面に対して浮上する磁気ヘッドの高さに相当する。カンチレバー1は、ローバー40のヘッドの書込み磁界4が発生する面に平行する平面を数〜数十μmの範囲内で、加振部122で駆動されて所定の周波数で振動しながらスキャンされる。
【0034】
この実施の形態では、カンチレバー1のXY平面内での位置は固定されており、Xステージ106及びYステージ105によってローバー40がXY平面内で移動されてスキャンが行われる。このとき、磁気ヘッド素子部5は
図2に示した制御部PC130から出力される励磁信号7を供給され、磁気ヘッド素子部5の書込み磁界発生部6は書込み磁界(交流磁界)4を発生せる。
【0035】
このようにMFMモードでスキャンすることにより、磁界発生部6で発生した書込み磁界4によるカンチレバー1の振動(振幅又は位相)の変化が変位センサ110から差動アンプ111で検出され、DCコンバータ112、フィードバックコントローラ113を経由して制御部PC130に記録される。この制御部PC130に記録されたデータから、AFMスキャンの測定対象部となる磁界発生部6の位置を求めることができる。
【0036】
次に、MFMモードで求めた磁界発生部6の位置を含む微小な領域をAFMモードで測定するために、カンチレバー1は、ローバー40に形成された磁気ヘッド素子部5の磁界発生部6の端面61と62が形成されている面にカンチレバー1の磁性膜2を形成した探針3の先端部が位置する(接触する)ように、Zステージ104によって位置決めされる。この状態で、カンチレバー1は加振部122で駆動されて所定の周波数で振動し、Xステージ106及びYステージ107によってローバー40がXY平面内で移動されることにより、ローバー40に形成された磁気ヘッド5の書込み磁界発生個所(磁界発生部6の端面61と62)を含む数十〜数百nmの領域が詳細にスキャンされる。
【0037】
このとき、MFMモードで測定した後の探針3の表面に形成した磁性膜2には、残留磁界が存在する。探針3による測定箇所が磁界発生部6のような磁性材料の表面であるとき、磁性膜2の残留磁界の影響で、探針3にかかる力として、
図3Aに下向きの太い矢印で示したように、AFMスキャン時に発生する原子間力と磁気力とがかかる。AFMの測定目的が磁界発生部6の端面61、62の寸法や形状、間隔などの場合、前記磁気力により測定面の材質の違いによるカンチレバーの振動の振幅差が強調されて寸法や形状、間隔などをより正確に測定することができ、前記磁気力がプラス効果を呈する。
【0038】
一方、測定対象が磁界発生部6の端面61、62付近の数ナノ程度の微小段差や凹凸の場合、前記磁気力により測定面の材質の違いによるカンチレバーの振動の振幅差が強調されて微小段差の寸法が拡大して検出されてしまう。その結果、正確な段差寸法の情報を得ることができなくなり、前記磁気力はマイナス効果を呈する。そこで、本実施例においては、数ナノ程度の微小段差や凹凸を測定する場合には、磁性膜2の残留磁界によるAFM測定結果への影響を無くすようにすることで、従来の探針3の表面に磁性膜2が形成されていないカンチレバー1を用いてAFM測定する場合の精度と同程度の測定精度を確保するようにした。
【0039】
これを実現するために、本実施例においては、AFMモードで計測するときには、
図3Bに示すように、制御部PC130からマイクロ波発生アンテナ115にマイクロ波励起用信号を供給し、マイクロ波発生アンテナ115からカンチレバー1の探針3に形成した磁性膜2に対して、マイクロ波302を照射するようにした。ここで、磁性膜2に照射するマイクロ波302の周波数は、磁性膜2の材料の磁気共鳴周波数と同じか又はその近傍の周波数とする。このような周波数のマイクロ波302を照射することにより、磁性膜2の残留磁界301は衰微し、消失する。磁界発生部(メインポール)6の端面61及び62のような磁性材料により形成された部分を測定する際、磁性膜2の残留磁界301を消失させた探針3には主に原子間力(
図3Bの下向きの矢印)だけが発生するため、従来のAFM測定の場合と同程度の測定精度を確保することができる。
【0040】
図4は、上述した本発明の第1の実施例に係る磁気ヘッド素子の表面形状測定装置を用いてローバー40に形成された磁気ヘッド5を検査する動作の手順を示すフロー図である。先ず図示していないハンドリングユニットで図示していない供給トレイからローバー40を1本取り出し、測定ステージ101上に搬送してYステージ105の基準面にローバー40を押し当てた状態でYステージ105上の載置部114にローバー40を載置する(S401)。
【0041】
次に、カメラ103でローバー40を撮像して得た
図1Bに示したような画像からローバー40の位置情報を得、この得た位置情報に基づいてXステージ106又はYステージ105を駆動してローバー40に形成された計測対象の磁気ヘッド5の位置を調整するアライメントを行い(S402)、ローバー40に形成された計測対象の磁気ヘッド5を
図1Cに示したような測定位置に移動する(S403)。
【0042】
次に、ローバー40に形成された計測対象の磁気ヘッド素子部5に制御部PC130から励磁信号を供給して(S404)、磁界発生部6の端面61及び62から書込み磁界(交流磁界)4を発生させる。次に、ピエゾドライバ107によりZステージ104を駆動するピエゾ素子(図示せず)を制御することによって、カンチレバー1を磁気ヘッド素子部5の端面61及び62の側の面に対して探針3の先端が高さHfの位置までアプローチさせる(S405)。
1を振動させることにより、カンチレバー1を磁気ヘッド素子部5の端面61及び62の側の面に平行な平面内で数〜数十μmの範囲内でMFMモードでスキャンする(S406)。 このスキャンにより、磁気ヘッド素子部5の磁界発生部6から発生する書込み磁界4によるカンチレバー1の振動の変化を半導体レーザ素子109と位置センサ110とを備えて構成される変位検出部120からの出力信号から検出され、磁界発生部4の位置情報が得られる。
【0043】
MFMモードでのスキャンを完了すると、磁気ヘッド素子部5への励磁信号の供給を停止する(S4061)。次に、AFMモードにおける測定目的によって、消磁するかどうかを判断する(S407)。
消磁しないで測定する場合(S407でNOの場合)は、MFMモードでのスキャンで得られた磁界発生部4の位置情報を用いて、カンチレバー1のスキャン範囲を磁界発生部6の付近の数十〜数百nmの範囲内に設定すると共に、ピエゾドライバ107によりZステージ104を駆動するピエゾ素子(図示せず)を制御することによって、カンチレバー1の探針3の先端を磁気ヘッド素子部5の端面61及び62の側の面に接触させ、設定した磁界発生部6の付近の数十〜数百nmの範囲内を詳細にスキャンしてAFM測定を行う(S408)。
【0044】
一方、消磁して測定する場合(S407でYESの場合)は、MFMモードでのスキャンで得られた磁界発生部4の位置情報を用いて、カンチレバー1のスキャン範囲を磁界発生部6の付近の数十〜数百nmの範囲内に設定すると共に、ピエゾドライバ107によりZステージ104を駆動するピエゾ素子(図示せず)を制御することによって、カンチレバー1の探針3の先端を磁気ヘッド素子部5の端面61及び62の側の面に接触させ、マイクロ波発生アンテナ115からマイクロ波302を発生させて探針3の表面に形成した磁性膜2に照射しながら設定した磁界発生部6の付近の数十〜数百nmの範囲内を詳細にスキャンしてAFM測定を行う(S409)。
次に、更に測定する箇所があるかをチェックし(S410)、更に測定する箇所がある場合(YES)には、Zステージ104でカンチレバー1を上昇させた状態でピエゾドライバ107でYステージ105を駆動して次のヘッドの測定位置をカメラ103の視野内に移動させて(S411)、S404からの動作を繰返す。一方、更に測定する箇所がない場合(NO)には、Zステージ104でカンチレバー1を上昇させた状態で測定が終了したローバー40を図示していないハンドリングユニットで取出して回収トレイに収納する(S412)。
【0045】
次に、図示していない供給トレイに未検査のローバー40があるか否かをチェックし(S413)、未検査のローバー40がある場合にはS401に戻って未検査のローバー40を供給トレイ(図示せず)から取出して(S414),測定ステージ101に搬送してS401からのステップを実行する。一方、供給トレイのうちに未検査のローバー40が無い場合には、測定を終了する(S415)。
【0046】
本実施例によれば、磁気ヘッド素子の表面形状測定装置でローバー40に形成されたト磁気ヘッド素子5の磁界発生部6の表面情報を比較的短い時間でカンチレバー1によるAFMスキャンで検出することができ、カンチレバー1の探針3に付加する磁性膜2の残留磁界301を利用し、測定感度を向上したり、残留磁界を消磁することにより、AFM測定精度を確保したり、することができる。
【実施例2】
【0047】
図5は、本発明の第2の実施例に係る磁気ヘッド素子の表面形状測定装置全体の構成を示すブロック図である。
図5に示した磁気ヘッド素子の表面形状測定装置は、実施例1で説明した磁気ヘッド素子の表面形状測定装置と基本的には同じ構造を有している。
図5に示した磁気ヘッド素子の表面形状測定装置の構成において、
図2で説明した熱アシスト磁気ヘッド素子の表面形状測定装置100の構成と共通する部品については、同じ番号を付した。
【0048】
実施例2において、実施例1と異なる点は、MFMスキャン後のカンチレバー探針の残留磁界を消すために、マイクロ波を利用する代わりに、磁性膜に熱を加えて、磁性材料キュリー温度付近まで過熱して、2次相転移位を行い、残留磁界を消すようにした点である。
【0049】
具体的には、カンチレバー20または25の上方にレーザ光源501を設置し、レーザ光源501によりカンチレバー20または25の上方からレーザを照射することにより探針3の先端に局所的な電解集中(近接場光)を発生させ、探針3の先端部分の磁性体を加熱して温度を高め、消磁するようにした点である。
【0050】
図6は本発明の第2の実施例に係るカンチレバー20の構成図である。カンチレバー20は、板状のレバーの先端部に四面体構造をしている探針3が形成されている。レバーと探針3とはシリコン(Si)で形成されている。レバーと探針3の正面側には貴金属(例えば金や銀等)又は貴金属を含む合金の極薄い薄膜602が形成されている。薄膜602の表面には磁性膜2(例えばCo、Ni、Fe、NiFe、CoFe、NiCo等)が形成されている。
図7Aに示すように、MFMモードでスキャンした結果からAFMスキャン領域を設定し、磁気ヘッド5の磁界発生部6の外観や、サイズなどを測定する場合、カンチレバー20は、磁気ヘッド素子部5の表面に沿って、AFMモードでスキャンを行う。カンチレバー20の探針3の表面に形成された磁性膜2は、MFMモードでスキャンを行った際に、磁気ヘッド5が発生した外部磁界4により着磁され、残留磁界301を持つ。この状態でAFMモードで磁界発生部6のような磁性材料により形成された部分を測定する際、探針3には太い矢印で示すような原子間力と磁気力が発生するため、実施例1の場合と同様に測定感度の向上を期待できる。
【0051】
一方、
図7Bに示すように、磁気ヘッド5の磁界発生部6付近の数ナノ程度の微小段差を計測する場合、カンチレバー20は、磁気ヘッド素子部5の表面に沿って、AFMスキャンを行いながら、レーザ光源501によりカンチレバー20の上方からカンチレバー20の探針3にレーザを照射する。この探針3に照射されたレーザは、探針3の表面に磁性膜2と積層して形成した貴金属または貴金属合金の膜602に入射して、貴金属または貴金属合金の膜602と探針3の接触面に表面プラズモン702を生じ、レーザのエネルギーを探針3の先端に伝搬し、探針3の先端に極小的に光エネルギー密度を待つ近接場光701が発生する。この発生した近接場光701により、探針3先端部分が加熱されて温度が高くなり、磁性膜2に加熱され、磁性材料キュリー温度付近まで上昇して、2次相転移位を行い、前記MFMスキャンを行った際に磁気ヘッド5が発生した外部磁界4により形成された残留磁界301が消磁される。このようにして残留磁界301が消磁されたカンチレバー20を用いてAFMモードで磁界発生部6のような磁性材料により形成された部分を測定する際、探針3には原子間力のみが発生するため、従来のAFM測定における測定精度と同程度の精度を確保することができる。
【0052】
図8は本発明の第2の実施例の変形例に係るカンチレバー25の構成図である。カンチレバー25の先端部には、四面体構造をしている探針3が形成されている。カンチレバー25は探針3も含めてシリコン(Si)で形成されている。探針3の表面には、熱を吸収できる光学多層の薄膜802が形成されている。薄膜802の表面には磁性膜2(例えばCo、Ni、Fe、NiFe、CoFe、NiCo等)が積層して形成されている。カンチレバー25は、レーザ光源501によりカンチレバー25の上方からカンチレバー25の探針3に照射されて光学多層の薄膜802に吸収されたレーザにより探針3の先端に熱を貯めることができ、この熱により磁性膜2を加熱する構成となっている。
【0053】
磁気ヘッド5の磁界発生部6付近の数ナノ程度の微小段差を計測する場合、カンチレバー25は、磁気ヘッド素子部5の表面に沿ってAFMモードでスキャンを行う。このとき、レーザ光源501によりカンチレバー25の上方からカンチレバー25の探針3にレーザを照射する。探針3に形成した光学多層膜802はレーザを吸収して発熱し、探針3の先端に熱を貯める。その結果、探針3先端の温度が高くなり、磁性膜2は加熱され、磁性材料はキュリー温度付近まで温度が上昇し、磁性膜2の内部で2次相転移位が発生し、前記MFMスキャンを行った際に、磁気ヘッド5が発生した外部磁界4により形成された残留磁界301を消すこともできる。磁界発生部6のような磁性材料により形成された部分を測定する際、探針3には原子間力のみが発生するため、従来のAFM測定における精度と同等程度の精度を確保することができる。
【0054】
図9は、上述した本発明の第2の実施例に係る磁気ヘッド素子の表面形状測定装置を用いてローバー40を検査する動作の手順を示すフロー図である。実施例2の動作の手順を示すフローは、実施例1と異なる点は、AFMモードでスキャンする場合に磁性膜2の消磁が必要となる場合、レーザ光源501からカンチレバー20にレーザを照射し、探針3に形成した磁性膜2を加熱しながらAFM測定を行う(S909)というところである。その他のステップは実施例1の場合と同様であるので、説明を省略する。
【0055】
上記した実施例1および2で説明したカンチレバー1と20、25の先端部付近に形成した探針3は、角錐形状をしたものについて説明したが、本発明ではこれに限られず、カンチレバー1、20、25とは異なる材質のカーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube:CNT)や、カーボンナノファイバ(Carbon Nano Fiber:CNF)等で形成しても良い。また、実施例1および2で説明した磁性膜2、貴金属(例えば金や銀等)又は貴金属を含む合金の薄膜602及び光学多層膜802は、
図1A,3A,3B,6,7A,7B、8の各図において探針3の左側の面に形成されている構成を示したが、各図において探針3の右側の面に形成しても良い。
【0056】
また、探針3の表面に磁性膜2を薄膜状に形成した構成の例で説明したが、探針3に磁
性材料をドーピングした構成にしても良い。
【0057】
なお、上記実施例においては、磁気ヘッド素子をローバーの状態で検査することについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、磁気ヘッド素子をローバーから1個ずつ切り離してジンバルに組み付けたスライダの状態でも、実施例1又は実施例2で説明した磁気ヘッドの表面形状測定装置を用いて磁気ヘッド素子磁界発生部近傍の表面状態と書き込み磁界分布の両方を測定し、検査することができる。