特許第6184849号(P6184849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184849
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/064 20140101AFI20170814BHJP
   B23K 26/073 20060101ALI20170814BHJP
   G02F 1/11 20060101ALI20170814BHJP
   G02F 1/33 20060101ALI20170814BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20170814BHJP
【FI】
   B23K26/064 Z
   B23K26/073
   G02F1/11 505
   G02F1/33
   B23K26/08 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-245933(P2013-245933)
(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-100842(P2015-100842A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】塩野 幸司
(72)【発明者】
【氏名】上野 文寛
(72)【発明者】
【氏名】工藤 孝弘
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−230974(JP,A)
【文献】 特開2006−049444(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/084608(WO,A1)
【文献】 特開2003−048093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00−26/70
G02F 1/11
G02F 1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを出射するレーザ発生器と、
前記レーザビームを平行ビームにするコリメータと、
前記レーザビームを偏向してON−OFF制御するための音響光学素子と、
前記レーザビームのビーム径を調節するためのビーム径調整光学系と、
前記ビーム径調整光学系によってビーム径を調節された前記レーザビームを偏向してスキャンするためのガルバノスキャナと、
前記ガルバノスキャナで偏向された前記レーザビームをワーク上に集光して加工するためのfθレンズと、
前記ワークを載置するためのステージを有するレーザ加工装置において、
前記音響光学素子を前記コリメータと前記ビーム径調整系の間に配置し、前記コリメータのレンズ間距離を可変にして前記音響光学素子の熱レンズ効果を打ち消すようにしたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記音響光学素子と前記ビーム径調整光学系の間に4分の1波長板と同等の機能を有する光学素子を設けたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響光学素子の熱レンズ効果を低減できるレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、音響光学素子を用いて高速に光路を切り替えるレーザ加工装置が普及している。(例えば、特許文献1参照。)図7にその光学系の例を示す。レーザ発生器1から出射されたレーザ光は、コリメータ2により平行光にされ、ビーム径調整レンズ系3により縮小された後、アパーチャ4で整形され(以下、ビーム径調整レンズ系3とアパーチャ4を纏めてビーム径調整光学系という)、音響光学素子5によって偏向された後、反射ミラー系7によって光路長を調整され、ガルバノスキャナ11a,11bにより偏向され、fθレンズ8によって図示しないステージに載置された図示しないワーク上に集光し、ワークを加工する。ここで、ミラー移動装置9によって光路長を切り替えることができるようになっている。
【0003】
音響光学素子は、素子中に超音波を伝播させて素子中に粗密の周期的構造を形成し、それを回折格子として光を反射(回折)させるものである。従って、ビーム径が大きいとその超音波の伝播時間が長くなって応答速度が遅くなるために、できるだけビーム径を絞って音響光学素子に入射させていた。
【0004】
しかしながら、近年のレーザ発生器1の高出力化により、音響光学素子5のビームが通過する部分が加熱され、膨張してレンズ効果(以下、熱レンズ効果という)を持ち、ビームがfθレンズ8によってワーク上に集光される径(以下、スポット径という)に影響を与えるようになってきた。このため、音響光学素子5に入射するビーム径を小さくすることができず、そのような状態でスポット径を小さくするためには、反射ミラー系7の切り替えによって光路長を延ばすことが必要であった。
【0005】
また、加工の条件によりスポット径を変える必要があるが、その場合ビーム径調整光学系3によりビーム径を変えなければならなく、音響光学素子5への入力ビーム径が変化して熱レンズ効果が変化するため、望むスポット径を得るための調整が困難となっていた。
【0006】
また、上述のような音響光学素子の熱レンズ効果低減するには、例えば特許文献2に記載のように、音響光学素子をコリメータとビーム径調整光学系の間に入れ、ビーム径を拡大して音響光学素子に入射させることが考えられる。しかしながら、特許文献2に記載のようにコリメータでビーム径拡大まで行うと上述のように音響光学素子の応答速度の低下が顕著になるために拡大することまではできない。そして拡大までしない程度では、近年のレーザ発生器の出力がさらに増大しているために、やはり熱レンズ効果を低減しきれないことがわかってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−263271号広報
【特許文献2】特開2003−230974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述のような音響光学素子の熱レンズ効果を低減し、かつ光路長を切り替えることを必要としない光学系を有するレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的は、従来の光学系においてはアパーチャからの反射光が戻り光となってレーザ発生器に戻り、レーザノイズを引き起こすことを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、レーザビームを出射するレーザ発生器(1)と、前記レーザビームを平行ビームにするコリメータ(2)と、前記レーザビームを偏向してON−OFF制御するための音響光学素子(5)と、前記レーザビームのビーム径を調節するためのビーム径調整光学系(3)と、前記ビーム径調整光学系(3,4)によってビーム径を調節された前記レーザビームを偏向してスキャンするためのガルバノスキャナ(11)と、前記ガルバノスキャナで偏向された前記レーザビームをワーク上に集光して加工するためのfθレンズ(8)と、前記ワークを載置するためのステージを有するレーザ加工装置において、前記音響光学素子(5)を前記コリメータ(2)と前記ビーム径調整系(3,4)の間に配置し、前記コリメータ(2)のレンズ間距離を可変にして前記音響光学素子(5)の熱レンズ効果を打ち消すようにしたことを特徴とするレーザ加工装置を用いると良い。
【0011】
上記他の課題を解決するため、音響光学素子(5)と前記ビーム径調整光学系(3,4)の間に4分の1波長板と同等の機能を有する光学素子(10)を設けると良い。これにより、アパーチャからの反射のみならずワークからの反射の偏光方向を変えることができるので、音響光学素子の偏光反射特性との組み合わせで戻り光を低減出来る。
【0012】
なお、上記のカッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何ら影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、最適なビーム径にビーム径調整光学系で自由に設定できるので、ミラー移動装置によって光路長を切り替える必要がなくなり、従って、従来のミラー移動装置を設ける必要がなくなる。
【0014】
更に本発明により、音響光学素子に入射するビーム径を常に一定にできるので、ビーム径を変更したときの調整が容易になる。
【0015】
また、本発明に係わる他の発明により、レーザ発生器への戻り光を低減出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るレーザ加工装置の光学系の例を示す。
図2】本発明に係るコリメータにより平行光で音響光学素子に入射する場合を示す。
図3】本発明に係るコリメータにより広がり角を持たせたレーザビームが音響光学素子に入射する場合を示す。
図4】本発明に係るリメータにより狭まり角を持たせたレーザビームが音響光学素子に入射する場合を示す。
図5】本発明に係る光学系において円偏光ミラーを使用した場合のアパーチャへの入射光を示す。
図6】本発明に係る光学系において円偏光ミラーを使用した場合のアパーチャからの反射光を示す。
図7】従来のレーザ加工装置の光学系の例を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1は本発明に係るレーザ加工装置の光学系の例であり、図7と同一の符号の説明は省略する。本発明においては、特許文献2と同様に音響光学素子5がコリメータ2とビーム径調整レンズ3の間に配置されている。しかし、音響光学素子5の前にコリメータ2は特許文献2のようにビーム径拡大光学系ではなく、図2に示すように、ほぼ同等のレンズ2a、2bからなるコリメータ2であり、レーザ発生器1の出力ビーム径を音響光学素子5への最適なビーム径(φ10mm程度)に合わせるために若干拡大又は縮小する程度の倍率である。これは、ビーム径拡大まで行うと上述のように音響光学素子の応答速度の低下が顕著になるためである。しかしながら、近年の高出力レーザ発生器1は、この程度のビーム広がりでも熱レンズ効果が生じることがわかってきた。そのため本願では、レンズ間距離をレンズ2aの焦点距離(f)と、レンズ2bの焦点距離(f)の和(f+f)に固定するという常識的なコリメータ2の設定に拘ることなく、レンズ2aと2bの間の距離を可変とした。これにより、図3に示すように、レンズ間距離を近づけた場合には広がり角を持ったビームが音響光学素子5に入射する。これを用いて熱レンズ効果を相殺することができる。また、レンズ間距離を広げた場合には狭まり角を持ったビームが音響光学素子5に入射する。これを用いて、ビームプロファイルが凹形のビームの熱レンズ効果(凹レンズ形)を相殺することができる。
【0019】
また、図1のような光学系にすることにより、ビーム径調整レンズ3のレンズ3a、3b、3cを調節して、必要な加工スポット径に最適なビーム径にし、アパーチャ4で整形してガルバノスキャナ11、fθレンズ8に送り込むことができるので、従来の光路切り替えが不要となる。
【0020】
さらに本発明では、音響光学素子5とビーム径調整レンズ系3の間に4分の1波長板の機能を有する円偏光ミラー10を用いているので、アパーチャからの反射光がレーザ発生器1に戻る戻り光を低減することができる。その原理を図5図6で説明する。
【0021】
図5は、アパーチャへの入射光の偏光状態を示す。レーザ発生器1から出射された光12はP偏光(電気ベクトルが音響光学素子5による反射の入射面内)に設定されている。これが円偏光ミラー10により円偏光13になってアパーチャに入射する。アパーチャによって反射された(一部の)円偏光13は逆回転となり、円偏光ミラー10によりS偏光(電気ベクトルが音響光学素子5による反射の入射面に垂直)となり、回折効率が低下するために音響光学素子5で再び反射されてレーザ発生器1に戻る光量を減少させることができる。これは結晶を用いた音響光学素子の場合にはさらに効果がある。また、この効果は、アパーチャからの反射のみならずワークからの反射による戻り光も同様に低減出来ることは言うまでもない。
【0022】
ここで、本実施例では円偏光ミラーを用いたが、4分の1波長板と同等の機能を有するものであれば良く、通常の4分の1波長板と全反射ミラーを組み合わせて用いてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 レーザ発生器
2 コリメータ
3 ビーム径調整レンズ系
4 アパーチャ
5 音響光学素子
6 ダンパ
7 反射ミラー系
8 fθレンズ
9 ミラー移動装置
10 円偏光ミラー
11 ガルバノスキャナ
12 レーザ光(直線偏光)の偏光方向
13 円偏光になったレーザ光
15 円偏光ミラーで反射された後の偏光方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7