(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記係合爪は、前記第1筒状部の内面から突出した突出端から前記第1筒状部の内周面にかけて、または前記第2筒状部の外面から突出した突出端から前記第2筒状部の外周面にかけて、周方向に対して傾斜する第1傾斜面を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の燃料タンク。
前記係合爪は、前記第1筒状部の径方向と平行な平行面と、前記平行面の裏面に形成され前記係合爪が突出する方向に向かうにつれて前記平行面との間の厚みが薄くなる第2傾斜面とで構成された楔形状を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の燃料タンク。
前記第2筒状部には先端から軸方向に延設された切欠き部が周方向に複数形成され、前記係合爪または前記被係合部は、2つの前記切欠き部によって画成される可動片に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の燃料タンク。
前記係合爪と前記被係合部とが係合された状態で、周方向に前記係合爪の第1傾斜面と近い側の前記切欠き部を第1切欠き部、遠い側の前記切欠き部を第2切欠き部とするとき、前記第1切欠き部は前記第2切欠き部と比較して、周方向の切欠き幅を大きくされたことを特徴とする請求項8に記載の燃料タンク。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以降の説明において、方向については原則として各図中の方向の記載に従うものとする。ただし、本発明の主要な構成要素が円筒形状を備えていることから、「周方向」、「径方向(内径方向、外径方向)」、「軸方向」の用語を用いることがある。なお「軸方向」については「挿入方向」と表現することがある。
【0029】
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃料タンク1の全体構成を示す斜視図、
図2は、燃料タンク1の断面図である。なお、
図2は、
図1に示すII−II断面を表したものである。以降、
図1、
図2を用いて燃料タンク1の構成について概要を説明する。なお、以降の説明において「燃料タンク1」とは、後述する構成要素を包含する複合ユニットを指し、「タンク本体2」とは、容器そのものを指すものとする。
【0030】
乗用車等に搭載されて、その燃料を貯蔵する燃料タンク1は、主に、ポリエチレン製のタンク本体2と、タンク本体2と一体成形された突出部3と、口部材7と、シール部材9(
図2参照)と、蓋部材10と、タンク本体2内に収納された種々の機能部品と、タンク本体2内に収納されて機能部品の一部を支持するブラケット6とで構成されている。このうち突出部3、口部材7、蓋部材10およびシール部材9はシール構造を構成する。また、タンク本体2には外部から燃料タンク1に燃料を供給する給油パイプ8等が接続されている。
【0031】
図2に示すように、突出部3の内周面には口部材7が固定されている。口部材7は、突出部3の内周面に沿って設けられた円筒(スリーブ)状の第1筒状部7aを備え、第1筒状部7aの上端は突出部3の上端とともに開口端4を構成する。ここで開口端4、開口端4と繋がる口部材7(第1筒状部7a)の内周面、および突出部3の外周面を合わせて開口部4aと規定すると、第1筒状部7aは突出部3の内周面に固定されていることから、第1筒状部7aは開口部4aの内面を構成し、突出部3は開口部4aの外面を構成している。
【0032】
蓋部材10は開口部4aを油密に閉塞する部材である。蓋部材10は、円筒状の第2筒状部10aとフランジ部10bとを備えており、後述するように第2筒状部10aが口部材7の第1筒状部7aに挿入されて固定される。即ち、口部材7は蓋部材10の装着用(固定用)リングとして機能する。
【0033】
シール部材9は、ゴム等の弾性体を環状に成形したOリングであって、突出部3の外面に取り付けられている。第2筒状部10aを第1筒状部7aに沿って軸方向に挿入すると、シール部材9がフランジ部10bの内周面と突出部3の外周面との間に挟持され、開口部4aが油密に閉塞されて液体の状態あるいは気化した燃料の漏出が防止される。このシール構造の詳細については、後に説明する。なお、このように燃料タンク1の開口部4aが閉塞された状態を、以降、単に「蓋部材10を突出部3に装着した状態」、この状態に至る過程を「蓋部材10を突出部3に装着する際」、「蓋部材10を突出部3に装着する過程」のように呼称することがある。
【0034】
蓋部材10の下面には機能部品の1つである燃料ポンプユニット15が固定されている。燃料ポンプユニット15は、燃料ポンプ、フィルタ、プレッシャレギュレータ(いずれも図示せず)等を備え、本実施形態においては、これらがいずれもタンク本体2の内部に搭載された、いわゆるインタンク型のモジュールが採用されている。燃料ポンプユニット15は、蓋部材10の上部から突出する外部接続管15a等の配管を通じて燃料インジェクタ(図示せず)に接続されている。なお、蓋部材10の下面に固定される機能部品には、満タン規制弁(図示せず)等の他の部材が含まれていてもよい。
【0035】
また、蓋部材10の下面には、例えばコイルばねによって構成されて、燃料ポンプユニット15をブラケット6あるいは燃料タンク1の底面に向けて下方に付勢する付勢部材16が設けられている。付勢部材16は燃料ポンプユニット15を下方に付勢することから、結果的に蓋部材10は上方に付勢される。
【0036】
図3(a)は、口部材7の上方斜視図、(b)は、蓋部材10の下方斜視図、(c)は、蓋部材10を口部材7に係合させた状態を示す下方斜視図である。なお、
図3(b)、(c)においては蓋部材10に固定された燃料ポンプユニット15の記載を省略している(
図4〜
図6、
図9、
図11についても同じ)。
【0037】
まず、口部材7について説明する。口部材7は熱可塑性樹脂(ここでは、ポリアセタール(POM))で構成され、
図3(a)に示すように、円筒(スリーブ)状の第1筒状部7aの外面には、それぞれ左右に張り出す一対のアーム状のステー7b、7bが一体に設けられている。このように口部材7を樹脂化することで、低コスト化、軽量化が図られる。
【0038】
ステー7b、7bの上面には断面形状が略台形(逆テーパ形状)の溝部7c(
図5(b)を参照)が前後方向に延設されている。また、2つのステー7b、7b間の外周面には、所定の肉厚を有する凸部7hが周方向に延設されている。凸部7hはタンク本体2を成形する際にタンク本体2の上内面に密着され(
図9(b)参照)、口部材7に上方の応力が作用した際(例えば、蓋部材10を無理に引き抜こうとしたような場合)に、口部材7が蓋部材およびポンプユニットと共に脱落することを防止する。また、凸部7hは突出部3を成形する際、金型21と口部材7とで挟まれた領域からパリソン20(いずれも、
図7(b)等参照)が流出してしまうのを抑制する作用も備えている。
【0039】
第1筒状部7aの内周面には、上下方向の略中央部分に、複数(ここでは6個。
図3(a)では6個中、3個のみが現れている)の係合爪7dが周方向に突設されている。この係合爪7dによって口部材7に挿入された蓋部材10の上方向への変位が規制されて抜け止めがなされる。
【0040】
また、突出部3が開口する開口端4(
図2参照)の側で、第1筒状部7aの端縁には周方向に先鋭部7fが延設され、第1筒状部7aの上端より下側の所定範囲には先鋭部7fから径方向に対して傾斜する傾斜面7eが形成されている。係合爪7d、先鋭部7f、傾斜面7eの詳細な構成については後に説明する。
【0041】
次に、蓋部材10について説明する。蓋部材10は、熱可塑性樹脂(ここでは、ポリアセタール)で構成されている。
図3(b)に示すように、蓋部材10は、略円筒状をなす第2筒状部10aと、第2筒状部10aの上端を覆う(塞ぐ)上面部10eを含むとともに外径方向に張り出すフランジ部10bとを有する。第2筒状部10aの上下方向の略中央には、第2筒状部10aを貫通する複数(ここでは6つ)の貫通孔が周方向に等間隔に設けられている。この貫通孔が被係合部10cを構成する。
【0042】
フランジ部10bは、その外縁において下方に垂下する円筒状の垂下部10dを備える。垂下部10dの内径は、突出部3(
図2参照)の基部3c(
図5(b)参照)の外径よりも若干大きめとされており、蓋部材10を突出部3に装着した状態では、フランジ部10bは開口端4(
図2参照)を含め突出部3の少なくとも上側半分を覆う。蓋部材10は、第2筒状部10aに貫通孔(被係合部10c)と、フランジ部10bに垂下部10dを備えるシンプルな形状であることから、簡易な構成の金型によってインジェクション成形することが可能で、製造コストの低減が図られる。なお、垂下部10dの内周面の下縁にR面取りやC面取りを施してもよい(
図5(b)参照)。
【0043】
図3(c)に示すように、蓋部材10の第2筒状部10aを突出部3(
図2参照)に固定された口部材7(第1筒状部7a)の内周面に沿って上方から挿入すると、係合爪7dと被係合部10cとが第2筒状部10aの挿入方向について係合し、蓋部材10が突出部3に簡易に装着される。この係合に係る詳細な構成は後に説明する。
【0044】
なお、蓋部材10を突出部3に装着する際には、以下のようにして周方向における位置合わせが行われる。蓋部材10を成形する金型にはマークが刻印されており、蓋部材10のフランジ部10bの上面には位置決めマーカ10h(
図1参照)が設けられる。一方、口部材7はタンク本体2に収納されたブラケット6(いずれも
図1、
図2参照)に支持されており、口部材7とブラケット6とタンク本体2(突出部3)とはブロー成形する際に位置決めがなされている。従って、タンク本体2を成形する金型にマークを刻印しておくことで、タンク本体2には基準マーカ2a(
図1参照)が形成される。蓋部材10を突出部3に取り付ける際に、位置決めマーカ10hをタンク本体2に設けられた基準マーカ2aに合わせることで、被係合部10cと係合爪7dとの周方向の位置を合わせることができる。
【0045】
図4は、口部材7が固定された突出部3の周辺構成を示す斜視図、
図5(a)は、蓋部材10を燃料タンク1の突出部3に装着した際のシール構造を示す断面図、(b)は、(a)の要部拡大図である。なお、
図5(a)は、
図2の開口部4aの周辺を拡大したものに相当する。
【0046】
図4に示すように、突出部3の上下方向の中間位置には、突出部3の外周面の全周にわたって環状の肩面(以降、環状肩面3aと呼称する)が設けられている。環状肩面3aの上方では突出部3は径方向に肉薄に、下方では相対的に肉厚に形成されている。そして、突出部3の外周面にはシール部材9が、環状肩面3aによって下方から支持された状態で取り付けられる。このように環状肩面3aは、シール部材9の支持面として機能する。
【0047】
弾性体で構成されたシール部材9は容易に変形するから、燃料タンク1の製造工程において、作業者は環状のシール部材9を拡径して突出部3に形成された環状肩面3a上に配置するのみで、シール部材9の取り付けが完了する。このようにシール部材9の取り付けは極めて簡単であり、これによって、生産リードタイムが短縮される。また、環状肩面3aが突出部3の外周面の全周にわたって設けられていることで、蓋部材10を突出部3に装着する際に、シール部材9の一部が下方に変位することや、シール部材9の変形が確実に防止されて、確実なシール性能を発揮することができる。
【0048】
図5(a)、(b)に示すように、開口部4aにおいて突出部3は口部材7の外周面に密着して設けられている。突出部3はタンク本体2の上面からL1=12mm程度突出しており、環状肩面3aはタンク本体2の上面からL2=6mm程度の高さに設けられている。突出部3の径方向の肉厚は、環状肩面3aよりも軸方向の下方(即ち、タンク本体2側)ではL3=4mm程度、環状肩面3aよりも上方(即ち、開口端4側)ではL4=2mm程度とされ、環状肩面3aは差し引き(L3−L4)2mm程度の幅を有している。
【0049】
環状肩面3aによってシール部材9は下方への移動を規制されるから、蓋部材10を突出部3に装着する際には、シール部材9が突出部3から外れることが防止される。逆に蓋部材10を突出部3から外す際には、シール部材9は自己の弾性によって突出部3の外周面に取り付くため、シール部材9が安易に抜去されることが防止される。仮にシール部材9が外れたとしても、簡易に再装着することができる。
【0050】
外力が作用しない状態で、シール部材9の断面は円形状(ここでは、その直径は3.5mm程度)をなしているが、蓋部材10が突出部3に装着された状態では、環状肩面3aに支持されたシール部材9は、支持面としての環状肩面3aよりも上方における突出部3の外周面(以降、第1シール面3bと呼称する)と蓋部材10のフランジ部10bから垂下する垂下部10dの内周面(以降、第2シール面10iと呼称する)との間に挟持されて、径方向(ここでは、左右方向)に両側から潰れるように変形する。蓋部材10を突出部3に装着した状態において、第1シール面3b、第2シール面10iおよび環状肩面3aは全体として環状の溝を形成しており、ここにシール部材9が収納されることとなる。
【0051】
このように、本実施形態ではシール部材9が突出部3の第1シール面3bおよび蓋部材10(垂下部10d)の第2シール面10iに密着することで、軸シール構造が実現され、燃料タンク1の突出部3は蓋部材10によって確実にシールされる。また、軸シール構造とすることで、シール性能の保証は、第1シール面3bの外形寸法および第2シール面10iの内径寸法のみを管理すればよく、生産工程が簡略化される。
【0052】
また、蓋部材10を突出部3に装着した状態で、突出部3の基部3cの近傍において蓋部材10の第2シール面10iと突出部3の外周面(環状肩面3aよりも下方に形成された面)との間には、実際には径寸法公差を考慮した若干の隙間が形成される。ただし、隙間は微小であり、これによって、環状肩面3aおよびシール部材9は垂下部10dによって外部から隠蔽されることとなり、シール部材9が基部3cの側にはみ出すことや、シール面への埃等、異物の侵入が防止される。
【0053】
ここで、シール部材9が密着する突出部3の第1シール面3bは、内径側から口部材7の第1筒状部7aで支持されている。口部材7を構成するポリアセタールの硬度は比較的高いため、これによって第1シール面3bにおける突出部3の実質的な強度が確保され、特に環状肩面3aよりも上方の肉薄部分において、シール部材9の反力によって樹脂が恒常的に変形するクリープ変形(樹脂のへたり)を抑制することができる。
【0054】
他方、シール部材9が密着する蓋部材10の垂下部10dおよび上面部10eは、シール部材9を介して受ける外径方向の応力によっても変形しない強度が必要となる。しかしながら、垂下部10dと上面部10eとはいずれも燃料タンク1の外部に露出する部分であり、その厚みは特に制限されない。従って、シール部材9を介して受ける応力によっても変形しない厚みとすることで、十分なシール性能が確保される。また、垂下部10dから上面部10eにかけて、蓋部材10に複数のリブ(図示せず)を上面視で放射状に設けることによって、蓋部材10の強度を確保してもよい。このようなリブを設けることで、作業者が蓋部材10を把持しやすくなって、作業性も向上する。
【0055】
また、図示するように、蓋部材10を突出部3に装着した状態において、突出部3の上端とフランジ部10bとの間に隙間13が形成される。ここでは隙間13の間隔はL5=1.0mm程度とされている。上述したように、蓋部材10に固定された機能部材(ここでは燃料ポンプユニット15)は付勢部材16(いずれも
図2参照)によって上方に付勢され、この機能部材を介して蓋部材10も上方に付勢されるが、一方で蓋部材10は口部材7に形成された係合爪7d(
図3(a)、(c)参照)によって上方への変位を規制されており、被係合部10c(
図3(b)、(c)参照)の上下方向の幅を管理することで、隙間13の大きさを調整することができる。
【0056】
この構成においては、蓋部材10を突出部3に装着した状態(即ち、
図5(b)に示す状態)で、蓋部材10を下方に更に押し込むと、蓋部材10は隙間13がなくなるまで(即ち、開口端4に当接するまで)下方に変位しうる。従って、開口端4が蓋部材10の下方への変位を規制することになる。即ち、本実施形態に係るシール構造では、蓋部材10を突出部3に装着した状態で、蓋部材10は上下方向に隙間13の長さの遊びを付与されており、その結果、タンク本体2および突出部3を成形する際に、開口端4の上下方向の寸法(高さ)を厳密に管理する必要がなくなる。
【0057】
また、突出部3にねじ部等が形成されていないことから、突出部3の肉厚を薄くできて燃料タンク1の軽量化が図られる。また、蓋部材10との嵌合長を短くできて、突出部3の突出高さは最小限に抑えられ、燃料タンク1を車両に搭載する上でスペースの有効活用および燃料タンク1の容量確保が図られる。
【0058】
本実施形態では、上述のようにタンク本体2、突出部3は高密度ポリエチレンで構成され、一方、口部材7および蓋部材10はポリアセタールで構成されている。なお、高密度ポリエチレンとは、密度0.942以上のポリエチレンを指す。高密度ポリエチレンはポリアセタールと比較して燃料(ガソリン)による膨潤変化が大きいことが知られている。このため、タンク本体2が膨潤するのに伴って開口部4aは拡径しようとするが、他方、口部材7および蓋部材10は比較的膨潤しにくいため、口部材7と突出部3との間には径方向に隙間を生じさせる力が作用する。しかしながら、このとき突出部3の拡径は垂下部10dによって規制されることから、シール部材9の締め代がきつくなり、その反力によって突出部3が内径方向に若干変形して突出部3の拡径が相殺される。即ち、本実施形態では、燃料による膨潤率が小さい同一材料で口部材7と蓋部材10とを構成し、径方向において、これらの間に膨潤率が大きい材料で構成された突出部3を配置することでシール性能の経年劣化を小さくしている。
【0059】
また、高密度ポリエチレンの線膨張係数をαp、ポリアセタールの線膨張係数をαaとすると、
αp=12〜14×10
−5/℃
αa=8.1〜8.5×10
−5/℃
であり、両者の線膨張係数は近接したものとなっている。従って、燃料タンク1が置かれた環境温度が変化しても、開口部4aにおいて径方向に密着された口部材7と突出部3とが離間することもない。また、口部材7と蓋部材10とは同一材料で構成されているから、線膨張係数の違いを考慮する必要がなく、環境温度が変化しても内側から口部材7によって支持されている突出部3の第1シール面3bと蓋部材10の第2シール面10iとの距離は実質的に変化せず、常に良好なシール性能が確保される。
【0060】
図6(a)は、シール構造の第1変形例を示す要部拡大図、(b)は、シール構造の第2変形例を示す要部拡大図である。第1変形例では、シール部材9を支持する支持面としてタンク本体2の外面を直接利用している。第1変形例では、第1シール面3bと第2シール面10iとの間にシール部材9が確実に挟持されるよう、垂下部10dの下端とタンク本体2とに形成される隙間を小さく構成するのが望ましい。
【0061】
第2変形例においては、リング状のシール支持部材9aを突出部3に嵌め込んで、シール支持部材9aの上面を支持面として利用している。第2変形例においても、第1シール面3b、第2シール面10iおよびシール支持部材9aの上面は全体として環状の溝を形成しており、ここにシール部材9が収納される。
【0062】
図7(a)、(b)は、燃料タンク1の製造工程を説明する説明図、
図8(a)〜(c)は、燃料タンク1の製造工程においてパリソン20を切断する位置を示す説明図である。以降、
図7、
図8を用いて、本実施形態における燃料タンク1の製造工程、特に燃料タンク1の開口部4a(
図2参照)を形成する工程について詳細に説明する。
【0063】
燃料タンク1(タンク本体2および突出部3)は公知のブロー成形技術を用いて成形される。即ち、タンク本体2および突出部3を構成する樹脂材料である高密度ポリエチレンを溶融し、パイプ状にしたパリソン20を成形用の金型21で挟み込み、中に空気を吹き込むことで、燃料タンク1が成形される。ブロー成形に先立ち、ブラケット6(
図2参照)がパイプ状のパリソン20の内側に配置される。なお、通常、パリソン20はパイプ形状を維持するために上方から下方に向けて押し出されるが、
図7ではこれを90度回転させた状態を描いている(説明においては、図示する方向に従う)。また、上述したように、口部材7はブラケット6又は治具によって下方から支持されているが、
図7ではその記載を省略している。
【0064】
燃料タンク1の製造工程では、まず
図7(a)に示すように、金型21と口部材7との間にパリソン20が配置される。ここで金型21は金型ベース面21aと金型ベース面21aから下方に突出する金型突出部21bとを有し、この金型突出部21bの外周には金型傾斜面21cが形成されている。更に金型21には、金型ベース面21a面から下方に一段低く金型肩面21dが形成され、金型肩面21dから更に一段低くタンク対向面21eが形成されている。
【0065】
一方、金型21と対向配置された口部材7の上端には、上述したように周方向に先鋭部7fと傾斜面7eとが延設されている。傾斜面7eは、開口端4(
図5(b)参照)の側になるほど、口部材7(第1筒状部7a)の内径が大きくなるテーパ形状とされている。このような形状にすることで、金型21を口部材7に押し当てた際に、金型突出部21bがテーパ形状に沿って口部材7に進入しやすく又センタリングされる。ここで、先鋭部7fにおける口部材7の肉厚はL6=1mm程度、先鋭部7fおよび傾斜面7eを除く第1筒状部7aの肉厚はL8=4mm程度とされている。即ち、先鋭部7fは線ではなくある程度の幅を持つ面として構成される。また、上下方向に対して、金型傾斜面21cの傾斜角度と口部材7の傾斜面7eの傾斜角度とは略同一(θ)とされている。
【0066】
傾斜角度θについては特に限定されないが、後述するように口部材7における傾斜面7eの幅(L7)は、後加工(パリソン20の切除)の際の作業性を左右するため、先鋭部7fの内縁からL7=5〜10mm程度を確保することが望ましい。ここで、口部材7の第1筒状部7aの肉厚(先鋭部7f、傾斜面7eの部分を除く)は、L8=4mm程度、先鋭部7fの肉厚はL6=1mmであるから、傾斜面7eの幅をL7=5mmとするとき、傾斜角度θは、
θ=sin
−1((L8−L6)/L7)・・・(式1)
=sin
−1(3/5)=36.9(deg)
となり、L7=10mmとするとき、傾斜角度θは、
=sin
−1(3/10)=17.5(deg)
となる。即ち、傾斜角度θはθ=17.5〜36.9(deg)程度に設定すればよい。
【0067】
ここで、軸方向において傾斜面7eが占める範囲をL9とすると、L9は、
L9=L7×cos(θ)・・・(式2)
となる。即ち、
傾斜面7eの幅をL7=5mm、傾斜角度θ=17.5(deg)とするとき、
L9=5×cos(17.5(deg))=4.7mmとなり、傾斜面7eの幅をL7=10mm、傾斜角度θ=17.5(deg)とするときは、同様にL9=9.5mm、傾斜面7eの幅をL7=5mm、傾斜角度θ=36.9(deg)とするときは、L9=4.0mm、傾斜面7eの幅をL7=10mm、傾斜角度θ=36.9(deg)とするときは、L9=8.0mmとなり、傾斜面7eは、先鋭部7fの先端から下方に4mm〜9.5mmの範囲を占めることとなる。
【0068】
本実施形態では、口部材7は燃料タンク1を成形する際において金型21との相対的な位置決めに供せられる。パリソン20を挟んで、口部材7に対して方向D3に金型21を押し当てると、
図7(b)に示すように、金型突出部21bは口部材7の第1筒状部7a、より厳密には傾斜面7eによってガイドされ、結果的に金型21と口部材7とがセンタリング(位置合わせ)される。上述のように、軸方向において、傾斜面7eは所定の範囲(4mm〜9.5mm)にわたって設けられており、この程度のガイド長を備えることで、口部材7と金型突出部21bとがスムーズにセンタリングされる。なお、成形に先立ち、先鋭部7fおよび傾斜面7eを除く第1筒状部7aの内周面に離型剤を塗布しておいてもよい。これによって、口部材7の内周面にパリソン20が付着することが防止される。
【0069】
位置合わせを行った領域において、金型21と口部材7との間に挟まれた(充填された)パリソン20によって突出部3が形成される。更に、溶融したパリソン20の一部は口部材7の側面に設けられたステー7bの逆テーパ形状の溝部7cに入り込み、溝部7cにパリソン20が充填されることで、口部材7はステー7bを介してタンク本体2に強固に固定される。なお、ステー7bの上下方向の厚みは4〜5mm程度とすればよく、溝部7cの深さはステー7bの上面から2〜3mm程度とすれば、ステー7bそのものの強度およびタンク本体2への取り付け強度を十分なものとすることができる。
【0070】
ここで、金型21をパリソン20に押し付ける際のストロークを調整することで、金型ベース面21aと口部材7の先鋭部7fを当接させ、先鋭部7fによってパリソン20を食切ることができる。また、ストロークの調整によって金型ベース面21aと先鋭部7fとの間、および略平行とされている金型傾斜面21cと口部材7の傾斜面7eとの間(以降、「成形間隙21f」と呼称する)に挟まれたパリソン20の厚みを1mm以下(好ましくは0.5mm以下)に薄層化することができる。
【0071】
成形直後の成形間隙21fに残存する樹脂の厚み、即ち、先鋭部7fまたは傾斜面7e上における突出部3の厚みは、燃料タンク1の他の部位よりも薄いものとなる(具体的には、タンク本体2は6mm程度の肉厚を有し、突出部3は、上述のように環状肩面3aの上側でL4=2mm程度(
図5(b)参照)とされている)。本実施形態では、先鋭部7fはある程度の幅を持つ面として構成されるものの、実質的には先鋭部7fおよび傾斜面7eは周方向に延在するナイフエッジを構成し、成形間隙21fに相当する部位において、タンク本体2の成形過程においてパリソン20が食切られ、または簡単に切り落とせる程度に薄層化される。
【0072】
さて、ブロー成形では成形品の外面に金型21が当接することから、タンク本体2および突出部3の外面は、内面側と比較して寸法精度を大幅に高くすることができる。しかも、成形の際に金型21は口部材7によってセンタリングされるため、突出部3の外形、即ち、環状肩面3aより上方における突出部3の肉厚(即ち、第1シール面3bの肉厚。
図5(b)に示すL4=2mm)、環状肩面3aより下方における突出部3の肉厚(
図5(b)に示すL3=4mm)、および環状肩面3aの幅(同L3−L4=2mm)を高精度に管理することが可能となる。これによって、環状肩面3aの上方に構成される第1シール面3bと口部材7(第1筒状部7a)との同軸度が高精度に合わせ込まれ、確実なシール性能を発現することが可能となる。
【0073】
図7(b)に示す状態から金型21を分離することで、口部材7が固定された突出部3およびタンク本体2が得られる。ただし金型21を分離した直後は、突出部3の開口部4aにはパリソン20が残存しているため、開口部4aを覆うパリソン20を切除する工程(パリソン切除工程)が設けられる。上述したように、成形間隙21fではパリソン20は1mm以下に薄層化されている。この薄層化部分を切断することで、開口部4a(開口端4)の内側に残存する樹脂を簡易に切除することができる。ここで、タンク本体2を構成する高密度ポリエチレンのロックウェル硬度はD60〜70であり、口部材7を構成するポリアセタール(ロックウェル硬度はR120)よりも硬度が小さい材料で構成されている。上述した先行技術ではタンク本体2に開口を形成するにあたって、切断機器のような大掛かりな装置を必要としていたが、本実施形態においては、作業者はカッターナイフ等の汎用工具を用いて余分なパリソン20を簡易に切除できる。
【0074】
開口部4aに対するパリソン切除工程では、パリソン20は、
図8(a)に示すように先鋭部7fにおいて切断されてもよく、
図8(b)に示すように先鋭部7fと傾斜面7eとの境界で切断されてもよく、
図8(c)に示すように傾斜面7eにおいて切断されてもよい。また、開口部4aの周方向において、
図8(a)〜(c)の態様が混在していても構わない。即ち、本実施形態では、口部材7が装着されたタンク本体2の開口部4aにおいて、パリソン20を切除した後は、突出部3が先鋭部7fの一部または先鋭部7fおよび傾斜面7eの一部を被覆しており、内径方向において、突出部3の端縁は先鋭部7fまたは傾斜面7e上に位置することとなる。
【0075】
これによって、開口端4の側で口部材7の表面が保護されて、蓋部材10を突出部3に装着する際等に口部材7が傷つくような事態が防止される。なお、パリソン切除工程において、パリソン20を切除した結果、多少のバリが上方に突出しても構わない。上述したように、開口端4と蓋部材10の下面との間にはL5=1mm程度の隙間13(いずれも
図5(b)参照)が設けられているため、突出するバリがこの隙間13に収まっていれば、蓋部材10の装着には何ら影響を与えないからである。
【0076】
このように、本実施形態に係る燃料タンク1の製造方法は、タンク本体2および突出部3の成形に用いる金型21と口部材7との間にパリソン20を介在させる工程と、口部材7に設けられた傾斜面7eを用いて金型21と口部材7との位置合わせを行い、位置合わせを行った領域においてパリソン20を挟み込んで突出部3を形成する工程と、ブロー成形を行う工程と、成形後の燃料タンク1(タンク本体2および突出部3)に対して、口部材7の先鋭部7fまたは傾斜面7eにおいてパリソン20を切断する工程とを含んでいる。
【0077】
図9(a)は、蓋部材10を突出部3に装着した状態を示す断面図、(b)は、係合爪7dと被係合部10cとの係合部分を示す要部断面図、
図10(a)は、口部材7の内周面に設けられた係合爪7dを示す説明図、(b)は、口部材7と蓋部材10とが係合された状態を示す説明図、(c)は、口部材7と蓋部材10との係合が解除された状態を示す説明図である。なお、
図9は
図1におけるIX−IX断面を示している。
【0078】
以降、
図9、
図10に
図2、
図3を併用して係合爪7dおよび被係合部10cの構成、蓋部材10を突出部3に装着する過程、および蓋部材10を突出部3から取り外す過程について説明する。なお、蓋部材10を突出部3に装着する過程においては、上述したように、タンク本体2に形成された基準マーカ2aと蓋部材10に形成された位置決めマーカ10h(いずれも
図1参照)とを合わせることによって、蓋部材10と口部材7とは周方向の位置決めがなされているものとする。
【0079】
図9(a)、(b)、
図10(a)に示すように、口部材7の第1筒状部7aの内周面7iには、蓋部材10の第2筒状部10aに向けて突出する係合爪7dが周方向に複数設けられる。係合爪7dの下面は、第1筒状部7aの内径方向と平行な平行面7ddをなし、平行面7ddの裏面、即ち係合爪7dの上面には、係合爪7dが突出する方向(ここでは内径方向)に向かうにつれて平行面7ddとの間の厚みが徐々に薄くなる(下方に向かうほど内径が小さくなる)第2傾斜面7dcが形成されている。即ち、係合爪7dは断面視で内径方向が先細りになった楔形状を有する。
【0080】
蓋部材10には、
図10(b)あるいは
図3(b)に示すように、周方向において第2筒状部10aの下縁(先端)から軸方向の中央にかけて第1切欠き部10fと第2切欠き部10gとが延設され、これらの切欠き部に挟まれて可動片10mが画成されている。第1切欠き部10fおよび第2切欠き部10gは、いずれも周方向に複数設けられている。一方、第2筒状部10aの軸方向の中央よりも上側には切欠きが及んでおらず、この範囲は、平坦な円周面領域10nを構成する。円周面領域10nを設けることによって第2筒状部10aを第1筒状部7aに挿入する際に両者の軸ぶれが防止される。また、可動片10mの開放端は、切欠き部が両側に設けられていることで、円周面領域10nに対して径方向(
図3(b)の方向D1参照)に変位自在となっている。そして、被係合部10cはこの可動片10mの表裏を貫通するように形成されている。
【0081】
また、
図9(b)に詳細に形状を示すように、第2筒状部10aの下端には、下方に向かうほど外径が小さくなる(即ち、肉薄になっていく)下端傾斜面10kが形成されている。この下端傾斜面10kは可動片10mの下端にも形成されている。
【0082】
蓋部材10の第2筒状部10aを口部材7の第1筒状部7aに挿入すると、まず、第2筒状部10aの可動片10mの下端が第1筒状部7aの内周面に突設された係合爪7dに当接する。すると係合爪7dの上面(第2傾斜面7dc)に当接した可動片10mの下端傾斜面10kは、第2傾斜面7dcに沿って内径方向に力を受け、可動片10mの全体が内径方向(
図3(b)の方向D1参照)に向けて弾性変形する。即ち、係合爪7dによって可動片10mが内径方向に押しやられつつ、蓋部材10が口部材7に押し込まれる。
【0083】
更に、蓋部材10を押し込むと、やがて蓋部材10の被係合部10cは係合爪7dと対向する位置に到達し、この時点で、係合爪7dは貫通孔である被係合部10cに進入する(以降、被係合部10cが係合爪7dと対向する位置を「係合位置」と呼称する)。係合爪7dが被係合部10cに進入すると同時に、可動片10mは自己の弾性力で外径方向に急速に変位して、口部材7の第1筒状部7aに衝突する。作業者はこのときの当接音によって蓋部材10と口部材7とが係合されたことを認識できる。このように本実施形態では、材料の弾性を利用してはめ込む、いわゆる「スナップフィット」によって蓋部材10が口部材7に係合される。
【0084】
なお、周方向における被係合部10cの開口幅を係合爪7dの長さよりも大きくしておくことで、周方向における蓋部材10と口部材7との位置精度が緩和され、作業者は上述した基準マーカ2aと位置決めマーカ10h(いずれも
図1参照)とを参照して、口部材7に蓋部材10を軸方向に押し込むだけで(即ち、蓋部材10を回転させることなく)、蓋部材10を突出部3に装着することが可能となる。
【0085】
上述したように、蓋部材10を突出部3に装着した状態では、燃料ポンプユニット15が固定された蓋部材10は付勢部材16によって上方に付勢されるため、蓋部材10の被係合部10cは、係合爪7dの下面に形成された平行面7ddと軸方向に当接して抜け止めがされ、これによって蓋部材10が燃料タンク1の突出部3に確実に(即ち、ガタなく)固定される。
【0086】
さて、
図10(a)に示すように、係合爪7dは、第1筒状部7aの内周面7iに突設された突出端7daから第1筒状部7aの内周面7iにかけて、周方向に対して傾斜する(周方向に徐々に突出高さが低くなる)第1傾斜面7dbを備える。また、周方向において突出端7daを挟んで第1傾斜面7dbとは反対の側には、内周面7iおよび平行面7dd(
図9(b)参照)のいずれに対しても略垂直に形成された垂直面7deを備える。
【0087】
蓋部材10を突出部3(
図9(a)参照)に装着した状態では、
図10(b)に示すように、突出端7da、第1傾斜面7db、垂直面7deともに、蓋部材10の可動片10mに形成された被係合部10cに進入している。
【0088】
ここで、貫通孔(開口)として構成された被係合部10cの縁部のうち、第1筒状部7aの平行面7dd(
図9(b)参照)と対向する第1開口縁10caおよび垂直面7deと対向する第2開口縁10cbは、可動片10mの主面に対して厚み方向に直交する面となっており、第1開口縁10caは平行面7ddと、第2開口縁10cbは垂直面7deと面接触する。従って、蓋部材10を方向D4に回転させようとすると、被係合部10cの第2開口縁10cbが係合爪7dの垂直面7deに係止されて、蓋部材10の回転が規制される。また、蓋部材10を軸方向上方に抜去しようとすると、被係合部10cの第1開口縁10caが係合爪7dの平行面7ddに係止されて、蓋部材10の抜去が規制される。
【0089】
係合爪7dの第1傾斜面7dbと対向する第3開口縁10ccおよび第2傾斜面7dcと対向する第4開口縁10cdの可動片10mの主面に対する傾斜角は特に制限されない。ただし、第3開口縁10ccについては、蓋部材10の外径方向に開口が大きくなるような傾斜面で構成してもよい。なお、第3開口縁10ccを傾斜面で構成した場合、これと対向する係合爪7dの第1傾斜面7dbは垂直面7deと同様の垂直な面としてもよい。即ち、周方向に対する傾斜面(ここでは第1傾斜面7db)は、係合爪7d、被係合部10cのいずれの側に設けてもよい。ただし、傾斜面を被係合部10cに設ける場合、係合爪7dが内径方向へ突出する長さは可動片10mの厚みよりも短くしておく必要がある。
【0090】
図示するように、可動片10mを画成する第1切欠き部10fおよび第2切欠き部10gは、それぞれ周方向に異なる切欠き幅とされている。即ち、第1傾斜面7dbと近接して形成された第1切欠き部10fは、垂直面7deと近接して形成された第2切欠き部10gよりも、周方向における切欠き幅が大きくされている。また、第1切欠き部10fの切欠き幅は、突出端7daの周方向の幅よりも大きく、第2切欠き部10gの切欠き幅は、突出端7daの周方向の幅よりも小さくされている。
【0091】
以降、
図10(b)、(c)を用いて蓋部材10を突出部3から取り外す過程について説明する。蓋部材10を突出部3に装着した状態(即ち
図10(b)に示す状態)から、作業者が蓋部材を方向D2に回転すると、蓋部材10の可動片10mは、係合爪7dに形成された第1傾斜面7dbに徐々に乗り上げて、可動片10mは内径方向(方向D1(
図3(b)参照)に変位する。このようにして、被係合部10cが係合爪7dから離脱する。更に、蓋部材10を方向D2に回転させると、
図10(c)に示すように、係合爪7dの突出端7daが第1切欠き部10fと対向する位置に到達する。係合爪7dの垂直面7deが第1切欠き部10fに到達すると、可動片10mは自己の弾性力で外径方向に変位し、このときも当接音が発生して、作業者は突出端7daが第1切欠き部10fに進入したことを認識することができる。
【0092】
図10(c)に示す状態では、係合爪7dは第1切欠き部10fと対向しており、第1切欠き部10fは下方を切り欠かれていることから、蓋部材10は係合を解かれて上方に取り外すことが可能となる(以降、第1切欠き部10fが係合爪7dの突出端7daと対向する位置を「取り外し位置」と呼称する)。ここで、第1切欠き部10fは蓋部材10を取り外す際にガイドとして機能する。なお、蓋部材10を取り外し位置に至るまで回転させなくとも、被係合部10cが係合爪7dから離脱した段階で係合そのものは解除されているため、蓋部材10を取り外すことは可能である。ただし、この状態では可動片10mの変形量が大きく、抜去の際に可動片10mに負担がかかることとなる。従って、本実施形態のように取り外し位置を設けることが望ましい。
【0093】
さて、蓋部材10を突出部3に装着した状態で、蓋部材10の方向D2への回転は特に規制されていないが、実質的には、可動片10mが第1傾斜面7dbに乗り上げることで、蓋部材10は可動片10mの弾性によって係合位置へと(即ち、方向D4に)押し戻され、蓋部材10が安易に取り外し位置まで回転することが防止される。この構成によれば、例えば可動片10mをより肉厚にして弾性係数を大きくすれば、蓋部材10は係合位置から離脱し難くなる。もっとも、燃料タンク1が非常に振動の激しい環境に置かれることが想定されるような場合は、例えばフランジ部10b(
図3(b)等参照)の外周面に回転防止用の規制片を形成しておき、これをタンク本体2の外面にビス止め等して回り止めをすればよい。
【0094】
さて、第1切欠き部10fは、周方向において突出端7daを含む「係合爪7dの一部(係合爪7dのうち内径方向に突出した側)」の進入を許すような幅に形成されているが、第1切欠き部10fには「係合爪7dの全部」が進入するわけではない。従って、取り外し位置にあるとき、第2筒状部10aのうち周方向に2つの可動片10mに挟まれた固定片10rは係合爪7dの第1傾斜面7dbに乗り上げて内径方向に付勢され(
図10(c)に示すように固定片10rの一部に若干の変形が生じる)、結果的に蓋部材10は口部材7から安易に抜け出せない状態(比較的緩い拘束力が生じている状態)となっている。一方で、上述したように、蓋部材10は付勢部材16によって上方に付勢されているから、付勢部材16(
図9(a)参照)による付勢力と拘束力とが釣り合って、適度な力で蓋部材10を取り外すことが可能となる。
【0095】
もちろん、周方向において、第1切欠き部10fの幅と係合爪7dの幅とが略一致するように構成してもよい。この場合は、付勢部材16による付勢力を若干弱めとすることで、蓋部材10の抜去に必要な力が調整される。
【0096】
このように、本実施形態によれば、蓋部材10は口部材7を介して突出部3に着脱可能に構成され、蓋部材10を突出部3に対して軸方向に挿入するといった簡単な操作で蓋部材10を突出部3に装着することが可能となり、蓋部材10が装着された状態においては、蓋部材10を周方向に回転するといった簡単な操作で蓋部材10を突出部3から取り外すことができる。これによって、蓋部材10に固定された燃料ポンプユニット15(
図2参照)等の機能部品の交換を簡易に行うことが可能となる。
【0097】
なお、上述したように、被係合部10cは可動片10mの表裏を貫通する貫通孔で形成されているが、貫通孔に代えて可動片10mの外周面(
図3(b)参照)から凹陥する非貫通の凹部を設け、これを被係合部10cとしてもよい。
【0098】
図11は、蓋部材10と口部材7とを係合する構成の変形例を示す断面図である。上述した例では、係合爪7dは口部材7に設けられ、一方、被係合部10cは蓋部材10に形成されていた。変形例では、図示するように、口部材7の第1筒状部7aに被係合部7jを構成する貫通孔が形成されており、他方、蓋部材10には第2筒状部10aの外周面から突出する係合爪10pが設けられている。即ち、変形例に示す構成は、
図10(a)において係合爪7dが設けられている部分に貫通孔を形成して被係合部7jとし、
図10(b)において被係合部10cが形成されている部分に外径方向に突出する係合爪10pを設けたものである。
【0099】
係合爪10pの構成および被係合部7jの具体的な構成は
図10(a)、(b)を用いて説明したものと基本的に同一である。ただし、変形例においては、係合爪10pの下部に第2傾斜面10paが形成され、上部に平行面10pbが形成されている点において相違する。変形例においても、蓋部材10は突出部3に対して簡易に着脱可能にされている。蓋部材10を突出部3に軸方向に挿入することで、スナップフィットによって簡易に装着がなされ、装着された状態において、蓋部材10を周方向に回転させることで、蓋部材10を取り外すことが可能である。なお、変形例においても、貫通孔に代えて口部材7の第1筒状部7aの内周面から凹陥する凹部を設けて、これを被係合部7jとしても構わない。
【0100】
以上、本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、本実施形態はあくまでも例示であって、本発明は本実施形態によって限定されるものではない。例えば、タンク本体2、突出部3は単層の高密度ポリエチレンで構成されているものとして説明したが、これを多層構造としてもよい。また、口部材7はポリアセタールに替えてナイロンで構成してもよい。
【0101】
また、本実施形態では、蓋部材10には燃料ポンプユニット15等の機能部品が装着されるとしたが、機能部品の有無は本発明の効果になんら影響を与えるものではない。即ち、蓋部材10に機能部品が備えられていなくてもよい。ただし、本実施形態では、機能部品は蓋部材10を上方に付勢して軸方向に固定する作用を有しているから、蓋部材10に機能部品を設けない構成においては、代替的な付勢手段を設けることが望ましい。もっとも、仮に付勢手段を設けないとしても、
図5(b)に示す構成から明らかなように、蓋部材10が上下方向に変位したとしても、軸シール構造は十分なシール性能を発揮する。
【0102】
また、本発明に係る燃料タンク1の構成、燃料タンク1の突出部3におけるシール構造、突出部3に設けられた口部材7の端縁でブロー成形の際に樹脂を食切る構成、蓋部材10を簡易に着脱可能とする構成等は、乗用車に搭載される燃料タンク1に限らず、液体を液密に、あるいは気体を気密に貯蔵するタンク全般に適用できる。
【0103】
また、シール構造については、蓋部材10をスナップフィットによって口部材7に装着する構成を前提とするものではなく、口部材7と蓋部材10とは、例えば突出部3の外周面に形成されたねじ部によって嵌合が図られてもよい。
【0104】
なお、上記実施形態に示した各構成要素の全てが必ずしも必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。