(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184853
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】小便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/13 20060101AFI20170814BHJP
E03D 13/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
E03D11/13
E03D13/00
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-248463(P2013-248463)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-105536(P2015-105536A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】福谷 孝二
(72)【発明者】
【氏名】野田 高弘
【審査官】
七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−061276(JP,U)
【文献】
実開平05−061275(JP,U)
【文献】
特開2010−024780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容空間を有する小便器本体と、
前記収容空間に収容される機能部品と、
前記機能部品の少なくとも一部より下方に配置された緩衝部材と、
を備え、
前記緩衝部材は、前記収容空間の底面の略全域を覆うように形成されることを特徴とする小便器。
【請求項2】
収容空間を有する小便器本体と、
前記収容空間に収容される機能部品と、
前記機能部品の少なくとも一部より下方に配置された緩衝部材と、
を備え、
前記緩衝部材は、前記収容空間の底面との間に隙間が存在するように配置されることを特徴とする小便器。
【請求項3】
収容空間を有する小便器本体と、
前記収容空間に収容される機能部品と、
前記機能部品の少なくとも一部より下方に配置された緩衝部材と、
を備え、
前記緩衝部材は、水抜き用孔を有することを特徴とする小便器。
【請求項4】
前記緩衝部材は、トレイ状に形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の小便器。
【請求項5】
前記緩衝部材は、前記収容空間に収容される部品を保持可能に構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の小便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に関し、特に小便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、壁面に設置して使用するタイプの小便器が知られている(例えば特許文献1参照)。このような小便器は、小便器の使用者を検出するための人体感知センサを備える。通常、このセンサの給電・制御用の電気部品は、小便器上部に設けられた収容空間内に収められ、便器本体に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−343655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような従来の小便器では、施工時やメンテナンス時に電気部品や工具が誤って収容空間から落下して小便器に当たると、小便器に割れ等の損傷する可能性がある。また、小便器と壁との間の隙間に電気部品や工具が落ちた場合、拾うのが非常に困難であり、最悪の場合には小便器を壁面から外さなければならない事態が生じうる。このように、従来の小便器では、施工性およびメンテナンス性に関して課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、施工性およびメンテナンス性を向上できる便器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の便器は、収容空間を有する便器本体と、収容空間に収容される機能部品と、機能部品の少なくとも一部より下方に配置された緩衝部材とを備える。
【0007】
この態様によると、機能部品や機能部品を取り付けるための工具が落下したとしても、緩衝部材により便器本体の損傷が防止され、また施工性およびメンテナンス性を向上できる。
【0008】
緩衝部材は、収容空間の底面の略全域を覆うように形成されてもよい。この場合、機能部品や工具が落下する位置に依らず、便器本体の損傷を防止できる。
【0009】
緩衝部材は、収容空間の底面との間に隙間が存在するように配置されてもよい。この場合、便器本体の損傷をより一層防止できる。
【0010】
緩衝部材は、トレイ状に形成されてもよい。この場合、機能部品や工具等の落下物を受けやすくなるため、より適切に便器本体の損傷を防止できる。
【0011】
緩衝部材は、水抜き用孔を有してもよい。この場合、緩衝部材に水が溜まる事態を防止できる。
【0012】
緩衝部材は、収容空間に収容される部品を保持可能に構成されてもよい。収容空間に収容される部品には、便器設置時まで固定されない部品が存在する場合がある。このような場合、緩衝部材を該部品を保持可能に構成することで、輸送用に別途固定部材を設ける必要がなくなり、安価な便器を実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、施工性およびメンテナンス性を向上できる便器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る小便器の正面図である。
【
図4】蓋の一部を切り欠いた小便器の平面図である。
【
図6】外部配管に便鉢洗浄水用部品を取り付ける前の小便器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る小便器について詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る小便器10の正面図である。小便器10は、壁面に接して設置されるタイプの小便器である。
図1に示すように、小便器10は、陶器製の小便器本体12と、小便器本体12の上面に着脱可能に設けられた蓋14と、小便器本体12の上部に設けられた人体感知センサ16と、小便器本体12の便鉢18内に洗浄水を供給するためのスプレッダ20とを備える。
【0017】
図2は、本実施形態に係る小便器10の背面図である。
図2に示すように、小便器本体12上部の背面側には、部品を収容するための収容空間24が形成されている。
【0018】
図3は、小便器10の上部の背面図である。また
図4は、蓋14の一部を切り欠いた小便器10の平面図である。また
図5は、小便器10の上部の斜視図である。
図5において、蓋14は取り外されている。
【0019】
図3〜
図5に示すように、収容空間24内には複数の部品が収容されている。収容空間24内に収容される部品は、便鉢洗浄水が通る経路に設けられる部品(以下、「便鉢洗浄水用部品」と呼ぶ)と、それ以外の機能部品とに分けられる。
【0020】
便鉢洗浄水用部品は、壁面40(
図4参照)から延びる外部配管42と接続される外部配管接続部30、外部配管接続部30の下流に設けられる常閉型の電磁開閉弁32、外部配管接続部30とスプレッダ20(
図1参照)との間に設けられる可撓性配管34などを含む。
【0021】
本実施形態において、機能部品は、人体感知センサ16の給電・制御用の電気部品を含む。給電・制御用の電気部品は、壁面40から延びる外部配線44が接続される樹脂製の端子台36、人体感知センサ16の制御ユニット38などを含む。端子台36は、外部配線44から供給される交流電圧を所定の電圧の直流電圧に変換し、制御ユニット38に供給する。制御ユニット38は、人体感知センサ16からの信号に基づいて人が小便器10の前に居るか否かを判定し、該判定に基づいて電磁開閉弁32に電流を供給する。より具体的には、制御ユニット38は、小便器10の前に人が居る状態から居ない状態に変化した場合、電磁開閉弁32に電流を供給し、電磁開閉弁32を開状態とする。これにより、便鉢洗浄水が便鉢内に供給され、便鉢が洗浄される。一定時間経過したとき、制御ユニット38は電磁開閉弁32への電流の供給を停止し、電磁開閉弁32を閉状態とする。これにより、便鉢内への洗浄水の供給が停止される。
【0022】
また機能部品には、人体感知センサ16の給電・制御用の電気部品以外の部品も含まれる。例えば、機能部品は、制御ユニット38の上方に設けられ、制御ユニット38に水がかかるのを防止するための防水カバー39を含む。
【0023】
端子台36は、壁面40に固定されている。より詳細には、端子台36は、金属製の端子台取付用ブラケット46に固定されている。端子台取付用ブラケット46が端子台取付用ボルト48を用いて壁面40に固定されることで、端子台36が壁面40に対して固定される。あるいは、端子台36にボルト挿通穴を有する固定部を一体的に形成し、端子台取付用ボルトで該固定部を壁面40に固定する構成としてもよい。このように本実施形態に係る小便器10では、端子台36は小便器本体12に固定されるのではなく、壁面40に固定される。壁面40への端子台36の取付位置は、外部配管42、外部配管接続部30、電磁開閉弁32等の他の部品に干渉しない限り、自由である。これにより、端子台36を小便器本体12に固定する場合と比較して、収容空間24内の部品の配置自由度が向上する。
【0024】
本実施形態に係る小便器10においては、収容空間24内にさらに緩衝部材としてのトレイ50が設けられている。トレイ50は、例えばポリプロピレン等の弾性または可撓性樹脂で形成される。トレイ50は、機能部品である人体感知センサ16の給電・制御用の電気部品、具体的には端子台36および制御ユニット38よりも下方、且つ収容空間24の底面23(この底面23は小便器本体12の一部であり、陶器製である)よりも上方に、トレイ開口面が上方を向くようにして配置されている。すなわち、トレイ50は、機能部品である端子台36および制御ユニット38と、収容空間24の底面23との間に、トレイ開口面が上方を向くようにして配置されている。機能部品とトレイ50は別体として構成されており、機能部品とトレイ50との間には空間が設けられている。また本実施形態において、トレイ50は、収容空間24の底面23の略全域を覆うように形成されている。
【0025】
上記のように配置および形成されたトレイ50は、端子台36、制御ユニット38等の機能部品、ボルト等の固定具、および工具などが、施工時やメンテナンス時に誤って小便器本体12と壁面40との間の隙間から落下するのを防止する。例えば、施工時やメンテナンス時に機能部品を手元から落とした場合でも、該落下物は機能部品よりも下方に設けられたトレイ50によって受けられるので、機能部品を容易に拾うことができる。
【0026】
また、本実施形態のトレイ50は、機能部品と収容空間24の底面23との間に配置され、さらに収容空間24の底面23の略全域を覆うように形成されているため、端子台36、制御ユニット38等の機能部品、ボルト等の固定具、および工具などが落下した場合でも、これらの落下物が小便器本体12(例えば底面23等)に直接接触することを避けることができる。すなわち、トレイ50は、落下物の衝撃を吸収する緩衝部材として機能する。小便器本体12は陶器製であるため比較的損傷しやすいが、本実施形態のようなトレイ50を設けることで小便器本体12の損傷を防止できる。
【0027】
トレイ50は、収容空間24の底面23との間に隙間が存在するように配置されることが望ましい。この隙間は、トレイ50の一部において形成されてもよい。例えば本実施形態では、収容空間24の底面23の中央部に凹部52が形成されており、トレイ50は、該凹部52内に一部が嵌るように形成された凸部54を有する。ここで、
図5に示すように、トレイ50の凸部54と収容空間24の底面23の凹部52との間には、隙間56が形成されている。この隙間56により、機能部品や工具等が落下してトレイ50と接触した際の衝撃がより一層吸収され、小便器本体12の損傷をさらに防止できる。
【0028】
本実施形態において、トレイ50の凸部54には、
図5に破線で示すように水抜き用孔58が形成されている。この水抜き用孔58を設けることにより、トレイ50中に水が溜まる事態を防止できる。水抜き用孔58からの部品の落下を防止するために、この水抜き用孔58の大きさは、収容空間24に収容される最小の部品よりも小さく設定されることが好ましい。
【0029】
図6は、外部配管に便鉢洗浄水用部品を取り付ける前の小便器10を示す。壁面に接して設置されるタイプの小便器では、通常、外部配管取付前には外部配管接続部および電磁開閉弁等の便鉢洗浄水用部品は固定されていない。従って、輸送時の便鉢洗浄水用部品の破損を防止するために、別途固定部材を設ける必要があった。
【0030】
一方、本実施形態に係る小便器10では、
図6に示すようにトレイ50内に便鉢洗浄水用部品を保持することができるため、輸送用に別途固定部材を設ける必要がない。その結果、部品点数を削減することができるため、安価な小便器10を実現できる。
【0031】
以上、本実施形態に係る小便器10について説明した。小便器10では、収容空間24内にトレイ50を設けることで、機能部品や工具等の落下の防止や小便器本体12の損傷の防止が図れるため、小便器10の施工性およびメンテナンス性を向上できる。
【0032】
上述の実施形態では、収容空間24内に収容される全ての機能部品(すなわち端子台36、制御ユニット38等)よりも下方にトレイ50を配置したが、収容空間24に収容される機能部品の少なくとも一部より下方にトレイ50が配置されていれば、該一部の機能部品の落下や小便器本体12の損傷を防止できる。
【0033】
また、上述の実施形態では、機能部品や工具等の落下物を受け止めるための緩衝部材としてトレイを例示したが、緩衝部材の形状は特にトレイに限定されず、便器本体の収容空間の形状に応じて任意に変更可能である。また、緩衝部材の材料も特に限定されないが、陶器製の便器本体を保護するという観点からは弾性又は可撓性の材料が望ましい。緩衝部材は、例えば柔軟性を有するスポンジなどの部材であってもよい。
【0034】
また、上述の実施形態では、緩衝部材であるトレイ50と機能部品との間に空間が設けられるように構成したが、緩衝部材と機能部材とが当接するように構成されてもよい。例えば、機能部品の下面や側面に接触するように緩衝部材が配置されてもよい。
【0035】
また、上述の実施形態では、壁面に接して設置されるタイプの小便器10を例にして説明したが、本発明はこのようなタイプの小便器に限定されず、便器本体に形成された収容空間に機能部品が収容される便器(例えば洋風便器等)であれば適用することができる。
【0036】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0037】
10 小便器、 12 小便器本体、 14 蓋、 16 人体感知センサ、 20 スプレッダ、 23 底面、 24 収容空間、 30 外部配管接続部、 32 電磁開閉弁、 36 端子台、 38 制御ユニット、 39 防水カバー、 40 壁面、 42 外部配管、 44 外部配線、 46 端子台取付用ブラケット、 48 端子台取付用ボルト、 50 トレイ、 56 隙間、 58 水抜き用孔。