【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成24〜平成25年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体酸化物形燃料電池を用いた事業用発電システム要素技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記燃焼ガス流通部から排出された前記燃焼ガスと前記焼成ガスとの間で熱交換を行う熱交換器を備え、前記熱交換器で加熱された前記焼成ガスが、前記焼成ガス流通路を通じて前記焼成室に搬送される請求項3に記載のガス焼成炉。
前記燃焼ガスとの熱交換により前記焼成ガスを加熱する前に、前記焼成室から排出した前記焼成ガスと前記焼成ガス流通路を流通する焼成ガスとの間で熱交換させて前記焼成ガスを加熱する工程を更に含む請求項6に記載のセラミックス成形体の製造方法。
前記燃焼ガス流通部から排出された前記燃焼ガスと前記焼成ガスとの間で熱交換させて、加熱された前記焼成ガスが前記焼成室に搬送される請求項8に記載のセラミックス成形体の製造方法。
【背景技術】
【0002】
セラミックス成形体は、焼結温度での焼成を経て製造される。セラミックス成形体の焼成方法には、電気炉が一般的であるが、外部加熱方式であるガス焼成炉等や、被焼成物の誘電損失を利用して自己発熱させるマイクロ波焼成法なども用いられる場合がある。
【0003】
燃料電池の一種として、円筒型の固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell、SOFC)がある。円筒型の燃料電池は、発電室の内部に複数のセルスタックを収容し、1つのセルスタックは長尺の基体管の円周方向に、燃料極、固体電解質膜、空気極を積層させたセルを複数配列された構成されている。セル間はインターコネクタで接続される。基体管、固体電解質膜、空気極及びインターコネクタは、セラミックス材料からなる。また、燃料極は、セラミックス材料と金属との複合材からなる。
【0004】
円筒型の燃料電池の作製では、まず燃料極、固体電解質膜及び隣接するセル間を電気的に接続するインターコネクタが基体管上に形成される。その後、燃料極、固体電解質膜及びインターコネクタは、基体管とともに共焼結される。共焼結後の固体電解質膜上に空気極が形成され、更に焼結が行われる。
【0005】
円筒型のセルスタックのように長尺のセラミックス成形体を焼成する方法として、成形体を略鉛直に吊持して焼成を行う方法(特許文献1〜5)や、成形体を寝かせた状態で焼成を行う方法(特許文献5〜6)が検討されている。
【0006】
特許文献7は、固体酸化物燃料電池の燃料極の製造において、電気炉内の雰囲気を還元雰囲気として焼成を行うことを開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電気炉を用いて長尺のセラミックス成形体などの大型のセラミックス成形体を焼成する場合、均質な焼結を可能にするには炉容積に限界があり量産性に劣る。また、焼成に大電力を要し、経済性に問題がある。
【0009】
ガス焼成炉を用いた焼成では、燃料を燃焼させて昇温用の燃焼ガスを生成し、燃焼ガスを炉内に供給してセラミックス成形体を加熱する。ガス焼成炉は大容量の炉を確保することができ、電気炉を用いた場合に比べて運転コストを大幅に低減することができるので有利である。しかしながら、ガス焼成炉を用いた場合、昇温用の高温の燃焼ガス成分(水蒸気等)がセラミックス内の成分と反応し、焼結不良やセラミックス成分の変質を引き起こす可能性がある。上記特許文献のように電気炉を用いて焼成を行うことが一般的であるために、ガス焼成炉を用いた場合のセラミックス変質と言った問題点については検討されてこなかった。
【0010】
本発明は、セラミックス成分の変質や劣化の発生を防止することができるガス焼成炉、及び、当該ガス焼成炉を用いたセラミックス成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、セラミックス成形体を収容する焼成室と、前記焼成室に焼成ガスを供給する焼成ガス流通路と、燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成させるバーナと、前記バーナで発生した前記
燃焼ガスが流通する燃焼ガス流通路と、前記焼成ガス流通路と前記燃焼ガス流通路との間に、前記燃焼ガスが蓄熱体を加熱し、加熱された前記蓄熱体が前記焼成ガスに熱を放出して前記焼成ガスを加熱する蓄熱式熱交換器とを備え、加熱された前記焼成ガスが前記焼成室に搬送されて、前記セラミックス成形体が焼成されるガス焼成炉である。
【0012】
本発明の第2の態様は、バーナで燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成させ、前記燃焼ガスを燃焼ガス流通路に流通させる工程と、蓄熱式熱交換器を用いて、前記燃焼ガス流通路を流通する前記燃焼ガスと焼成ガス流通路を流通する焼成ガスとの間で熱交換させて前記焼成ガスを加熱する工程と、加熱された前記焼成ガスを、前記焼成ガス流通路を介してセラミックス成形体が収容された焼成室に搬送する工程と、前記焼成室内に加熱された前記焼成ガスを流通させて、前記セラミックス成形体を焼成させる工程とを含むセラミックス成形体の製造方法である。
【0013】
上記態様では、燃焼ガスと焼成ガスとが蓄熱式熱交換器を介して熱交換することによって焼成ガスが加熱され、この焼成ガスを用いてセラミックス成形体を加熱している。すなわち、セラミックス成形体が燃焼ガスに曝されることなく焼成を行うことができ、セラミックス成分の変質を防止することが可能である。
【0014】
第1の態様において、前記蓄熱式熱交換器のガス上流側の前記焼成ガス流通路に熱交換器を更に備え、前記熱交換器において、前記焼成室から排出された前記焼成ガスと前記焼成ガス流通路を流通する前記焼成ガスとが熱交換して、前記焼成ガス流通路を流通する前記焼成ガスが加熱された後、前記蓄熱式熱交換器に搬送されることが好ましい。
【0015】
第2の態様において、前記燃焼ガスとの熱交換により前記焼成ガスを加熱する前に、前記焼成室から排出した前記焼成ガスと前記焼成ガス流通路を流通する焼成ガスとの間で熱交換させて前記焼成ガスを加熱する工程を更に含むことが好ましい。
【0016】
焼成室から排出されたガスの廃熱を利用して焼成ガスを予熱しているため、所定温度まで焼成ガスを加熱するのに必要な燃焼ガス量が低減して、バーナに供給する燃料を削減できる。この結果、熱効率を向上させることができる。
【0017】
本発明の第3の態様は、セラミックス成形体を収容する焼成室と、前記焼成室に焼成ガスを供給する焼成ガス流通路と、燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成させるバーナと、前記焼成室の外側周囲に位置し、前記バーナの先端部が収容され、内部を前記燃焼ガスが流通する燃焼ガス流通部と、前記燃焼ガス流通部の外壁に設けられる複数の燃焼ガス排出口とを備え、
前記焼成ガス流通路の壁及び前記焼成室の壁を介して前記燃焼ガスと前記焼成ガスとの間で熱交換が行われて前記焼成ガスが加熱されて、
加熱された前記焼成ガスが前記焼成室に搬送されて、前記セラミックス成形体が焼成されるガス焼成炉である。
【0018】
本発明の第4の態様は、バーナで燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成させ、前記燃焼ガスを燃焼ガス流通部に流通させる工程と、セラミックス成形体が収容された焼成室内に焼成ガスを流通させる工程と、
前記焼成ガスの流通路の壁及び前記焼成室の壁を介して前記燃焼ガスと前記焼成ガスとの間で熱交換させて前記焼成ガスを加熱し、
加熱された前記焼成ガスを前記焼成室に搬送することにより、前記セラミックス成形体を焼成する工程とを含むセラミックス成形体の製造方法である。
【0019】
上記態様では、燃焼ガスと焼成ガスとが焼成室の壁を介して熱交換することによって焼成ガスが加熱され、この焼成ガスを用いてセラミックス成形体を加熱している。すなわち、セラミックス成形体が燃焼ガスに曝されることなく焼成を行うことができ、セラミックス成分の変質を防止することが可能である。
【0020】
第3の態様において、前記燃焼ガス流通部から排出された前記燃焼ガスと前記焼成ガスとの間で熱交換を行う熱交換器を備え、前記熱交換器で加熱された前記焼成ガスが、前記焼成ガス流通路を通じて前記焼成室に搬送されることが好ましい。
【0021】
第4の態様において、前記燃焼ガス流通部から排出された前記燃焼ガスと前記焼成ガスとの間で熱交換させて、加熱された前記焼成ガスが前記焼成室に搬送されることが好ましい。
【0022】
このように、焼成室の壁を介した熱交換に使用された後の燃焼ガスの廃熱を利用して焼成ガスを予熱することにより、燃焼ガス量が低減し、バーナに供給する燃料を削減できる。この結果、熱効率を向上させることができる。
【0023】
第1の態様及び第3の態様において、前記焼成室が、前記セラミックス成形体のガス上流側及びガス下流側に整流板を備えることが好ましい。
【0024】
整流板を設けることにより、焼成室内のセラミックス成形体が収容される空間を流通する焼成ガス流の乱れを防止することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のガス焼成炉は燃焼ガスとセラミックス成形体とが直接接触することなく焼成を行うことにより、燃焼ガスとセラミックスとの反応で成分の変質が発生することを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係るガス焼成炉の実施形態を、図面を参照して説明する。以下では、セラミックス成形体として円筒型の燃料電池のセルスタック(長尺のセラミックス成形体)を焼成する場合を例に挙げて説明する。但し、本発明はセラミックス成形体の具体的形状に限定されない。例えば、平板状のセラミックス成形体の焼成にも本発明は適用可能である。
【0028】
円筒型の燃料電池のセルスタックは、円筒形状の基体管と、基体管の外周面に複数形成された燃料電池セルと、隣り合う燃料電池セルの間に形成されたインターコネクタとを有する。燃料電池セルは、燃料極と固体電解質膜と空気極とが積層して形成されている。また、セルスタックは、基体管の外周面に形成された複数の燃料電池セルの内、基体管の軸方向において最も端に形成された燃料電池セルの空気極に、インターコネクタを介して電気的に接続されたリード膜を有する。
【0029】
基体管は、多孔質材料からなり、例えば、CaO安定化ZrO
2(CSZ)、又はY
2O
3安定化ZrO
2(YSZ)、又はMgAl
2O
4である。この基体管は、燃料電池セルとインターコネクタとリード膜とを支持すると共に、基体管の内周面に供給される燃料ガスを基体管の細孔を介して基体管の外周面に形成される燃料極に拡散させるものである。
【0030】
燃料極は、Niとジルコニア系電解質材料との複合材の酸化物で構成され、例えば、Ni/YSZが用いられる。
【0031】
固体電解質膜は、ガスを通しにくい気密性と、高温で高い酸素イオン導電性とを有するYSZが主として用いられる。
【0032】
空気極は、例えば、LaSrMnO
3系酸化物、又はLaCoO
3系酸化物で構成される。
【0033】
インターコネクタは、SrTiO
3系などのM
1−xL
xTiO
3(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で表される導電性ペロブスカイト型酸化物から構成され、燃料ガスと酸化性ガスとが混合しないように緻密な膜となっている。
【0034】
上記セルスタックの製造は、まず、押出し成形法により形成された基体管上に、燃料極、固体電解質膜及びインターコネクタの各層が所定位置に形成され、共焼結される。共焼結後、基体管上の所定位置に空気極が形成され、更に焼結が行われる。すなわち、本発明のガス焼成炉は、基体管〜インターコネクタの共焼結時、及び、空気極の焼結時に用いられる。
【0035】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るガス焼成炉の概略図である。ガス焼成炉1は、焼成室2と、焼成ガス流通路3と、燃焼ガス流通路5と、蓄熱式熱交換器6と、バーナ10とを備える。
【0036】
ガス焼成炉1は複数のセラミックス成形体11を内部に収容する焼成室2を備える。
図1では長尺のセラミックス成形体11が略垂直に吊下げられて保持される例が示されている。この場合、セラミックス成形体11の上部には、セラミックス成形体11を吊持する支持部(不図示)が設置される。支持部はガスが通過可能な間隙を有している。
なお、セラミックス成形体11の収容方法は
図1に限定されず、例えば略水平に寝かせて保持されていても良い。
【0037】
焼成室2の底部に焼成ガス流通路3が接続する。また、焼成室2の頂部に焼成ガス排出口4が設置される。
【0038】
図1のガス焼成炉1では、燃焼ガス流通路5が焼成ガス流通路3と平行に設けられ、燃焼ガス流通路5と焼成ガス流通路3との間に蓄熱式熱交換器6が設置される。
本実施形態において蓄熱式熱交換器6は回転型である。蓄熱式熱交換器6は、回転用シャフト7と、回転用シャフト7の周囲に設置される蓄熱体8とを有する。回転用シャフト7は燃焼ガス流通路5と焼成ガス流通路3とを隔離する隔壁9内に収容されている。回転用シャフト7には不図示のロータが取り付けられる。隔壁9により燃焼ガス流通路5及び焼成ガス流通路はそれぞれ気密に保持されている。蓄熱体8はムライト、コランダム等のセラミックス製である。回転用シャフト7の回転により、蓄熱体8が回転しながら燃焼ガス流通路5と焼成ガス流通路3とを通過する。
【0039】
燃焼ガス流通路5のガス上流側に、バーナ10が設置される。バーナ10に、燃料供給管(不図示)及び酸化剤供給管(不図示)が接続される。
【0040】
図1のガス焼成炉1を用いてセラミックス成形体を焼成して製造する方法を以下で説明する。
図2は、
図1のガス焼成炉1における各ガスの流れを説明する概略図である。
【0041】
バーナ10に燃料及び酸化剤が供給される。燃料は例えば都市ガスであり、酸化剤は例えば酸素または空気である。バーナ10が燃料を燃焼させて、燃焼ガスを生成させる。この燃焼ガスは水蒸気、二酸化炭素などを含む。燃焼ガスは、蓄熱式熱交換器6に向かって燃焼ガス流通路5内を流通する。
【0042】
ガス焼成炉1の系外から焼成ガス流通路3に焼成ガスが供給される。焼成ガスは、焼成温度においてセラミックス成形体の成分と反応性を有さないガスである。具体的に、焼成ガスは、窒素、空気などである。焼成時の焼成室内温度とセラミック成形体との反応性を考慮し、温度に応じて供給する焼成ガスの種類を変更しても良い。焼成ガスは、蓄熱式熱交換器6に向かって焼成ガス流通路3内を流通する。
【0043】
燃焼ガス及び焼成ガスはそれぞれ、蓄熱式熱交換器6の蓄熱体8を通過する。このとき、蓄熱体8の燃焼ガスが通過する部分は、燃焼ガスが保有する熱を受け取り加熱される。一方、蓄熱体8の焼成ガスが通過する部分は、蓄熱体8が保有する熱を焼成ガスに放出する。これにより、焼成ガスが加熱される。
ロータの作動により回転用シャフト7が軸中心に回転して蓄熱体8が回転する。蓄熱体8が回転することにより1つの蓄熱体8内で蓄熱及び放熱が交互に行われ、燃焼ガスが連続的に加熱される。焼成ガスが所望の温度に加熱されるように、燃焼ガスの温度、燃焼ガス及び焼成ガスの流量、蓄熱体8の回転速度などの諸条件が適宜設定される。
【0044】
図1では回転型の蓄熱式熱交換器を例に挙げて説明したが、別の蓄熱方式の熱交換器に置換されていても良い。
【0045】
加熱された焼成ガスは、焼成ガス流通路3を通って焼成室2に流入する。焼成ガスは焼成室2を上方に向かって流通しながら、セラミックス成形体11を加熱する。セラミックス成形体11が円筒型の燃料電池スタックセルである場合、セラミックス成形体11は基体管〜インターコネクタの共焼結時に約1350℃〜1450℃に加熱される。また、空気極焼結時にはセラミックス成形体11は約1100℃〜1250℃に加熱される。焼成ガスは、焼成ガス排出口4から排出される。
【0046】
本実施形態では燃焼ガスとセラミックス成形体11を接触させることなくセラミックス成形体11が加熱されるため、セラミックス成形体11の変質や劣化を防止することが可能である。
【0047】
図3は、第1実施形態に係るガス焼成炉の変形例である。
図3の例では、バーナ10、蓄熱式熱交換器6、燃焼ガス流通路5は
図1と同じである。
【0048】
図3のガス焼成炉20は、焼成室22が焼成ガス室21内に収容されている。
図3のガス焼成炉20では、焼成ガス流通路23は蓄熱式熱交換器6と焼成ガス室21との間で2つ分岐し、それぞれ焼成ガス室21の下方に接続されている。焼成室22の上方に焼成ガス供給口26が設けられ、焼成室22の底部に焼成ガス排出口24が設けられる。焼成ガス排出口24は焼成ガス室21の下方に設置された焼成ガス排出路25に繋がる。
【0049】
図3のガス焼成炉20を用いてセラミックス成形体を焼成して製造する方法を以下で説明する。上述のように、蓄熱式熱交換器6での熱交換により、焼成ガスが加熱される。加熱された焼成ガスは焼成ガス流通路23を通じて焼成ガス室21に流入する。
【0050】
焼成ガスは、下方から上方に向かって焼成ガス室21内を流通し、焼成ガス供給口26から焼成室22に流入する。その後、焼成ガスは上方から下方に向かって焼成室22内を流通し、焼成ガス排出口24を通って焼成ガス排出路25に排出される。焼成ガス排出路25を通過した焼成ガスは、ガス焼成炉20の系外に排出される。
【0051】
図3のガス焼成炉20によっても、燃焼ガスとセラミックス成形体11との接触を防止することが可能である。
【0052】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係るガス焼成炉の概略図である。
図4において、
図1と同じ構成には同じ符号を付す。
第2実施形態のガス焼成炉101は焼成室2内に、セラミックス成形体11の焼成ガス上流側及び下流側に整流板110が設置される。整流板110は、複数の貫通孔が設けられるセラミックス製板である。なお、
図3のガス焼成炉でも、整流板を設置することができる。
【0053】
整流板110を設けることにより、焼成室2内のセラミックス成形体11が収容される空間を流通する焼成ガス流の乱れを防止することができる。
【0054】
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態に係るガス焼成炉の概略図である。
図5において、
図1と同じ構成には同じ符号を付す。
【0055】
第3実施形態のガス焼成炉201は、焼成ガス排出口4に排ガス流通路210が設置される。排ガス流通路210のガス下流側であって焼成ガス流通路3のガス上流側に、熱交換器211が設置される。
なお、
図3,4に示されるガス焼成炉についても、
図5と同様の熱交換器が設置されていても良い。
【0056】
図5のガス焼成炉201を用いてセラミックス成形体を焼成して製造する方法を以下で説明する。
図6は、
図5のガス焼成炉1における各ガスの流れを説明する概略図である。
【0057】
第1実施形態と同様に、蓄熱式熱交換器6において燃焼ガスと焼成ガスとの熱交換が行われる。熱交換後の燃焼ガスは、燃焼ガス流通路5を通り燃焼ガス排出口205からガス焼成炉201の系外に排出される。加熱された焼成ガスが焼成室2に搬送される。焼成ガスはセラミックス成形体11を加熱した後、排ガスとして焼成ガス排出口4を通じて焼成室2から排出される。
【0058】
高温の排ガスは、排ガス流通路210を通じて熱交換器211に搬送される。熱交換器211において排ガスと焼成ガスとの間で熱交換が行われ、焼成ガスが加熱される。熱交換器211で加熱された焼成ガスが、蓄熱式熱交換器6に搬送される。熱交換後の排ガスは、排ガス流通路210を通ってガス焼成炉201の系外に排出される。
【0059】
本実施形態では焼成室から排出されたガスの廃熱を利用して焼成ガスを予熱しているため、所定温度まで焼成ガスを加熱するのに必要な燃焼ガス量を低減することができる。すなわち、バーナ10に供給する燃料を削減することが可能である。
【0060】
[第4実施形態]
図7は、第4実施形態に係るガス焼成炉の概略図である。
図7(a)は縦断面図であり、
図7(b)は
図7(a)のA−A断面を上から見た図である。ガス焼成炉301は、焼成室302と、燃焼ガス室305と、焼成ガス流通路303と、バーナ310とを備える。
焼成室302内にセラミックス成形体11が収容される。
図7では
図1と同様に長尺のセラミックス成形体11が略垂直に吊下げられて保持される例が示されているが、略水平に寝かされて保持されていても良い。
【0061】
焼成室302の外側に燃焼ガス室305が配置される。少なくともセラミックス成形体11が収容される位置に対応する焼成室302の外側周囲が燃焼ガス室305に囲まれる。
【0062】
燃焼ガス室305側壁の下方にバーナ310が設置される。
図7(b)では、燃焼ガス室305の四隅にバーナ310が設置され、バーナ310の先端はバーナ310が設置される燃焼ガス室305側壁の対向する面に向けられている。但し、本実施形態においてバーナ310の先端の方向は
図7に限定されない。
【0063】
燃焼ガス室305の下部に燃焼ガス排出路312が設置される。燃焼ガス室305と燃焼ガス排出路312とは、燃焼ガス室305の底部に設けられた複数の燃焼ガス排出口313によって連通する。
【0064】
焼成ガス流通路303は、燃焼ガス排出路312及び燃焼ガス室305の底部を貫通し、焼成室302の底部に連結する。焼成室302の頂部に焼成ガス排出口304が設けられる。焼成ガス流通路のガス上流側にはブロワ―(不図示)が設置される。
【0065】
図7のガス燃焼炉を用いてセラミックス成形体11を焼成して製造する方法を以下で説明する。
図8は、
図7のガス焼成炉301における各ガスの流れを説明する概略図である。
【0066】
バーナ310に燃料及び酸化剤が供給される。バーナ310が燃料を燃焼させて、燃焼ガスを生成させる。燃焼ガスは、燃焼ガス室305の側壁を伝って燃焼ガス室305の上部に向かって流通する。
図7(b)に示すようにバーナ310の先端を配置した場合には、燃焼ガスは時計回りの方向に旋回しながら燃焼ガス室305上部に向かって移動する。
【0067】
燃焼ガス室305の上部に滞留しているガスは、焼成室302の外壁に沿って燃焼ガス室305の下方に向かって流通し、燃焼ガス排出口313を通過して燃焼ガス排出路312に排出される。燃焼ガスは、燃焼ガス排出路312を通ってガス焼成炉301の系外に排出される。
【0068】
焼成ガス流通路303に設けられたブロワ―が作動され、焼成ガスが焼成ガス流通路303を通過して焼成室302内部に供給される。焼成ガスは、下方から上方に向かって焼成室302内を流通する。この時、焼成ガス流通路303の壁及び焼成室302の壁を介して焼成ガスと燃焼ガスとの熱交換が行われ、焼成ガスが加熱される。加熱された焼成ガスにより、セラミックス成形体11が加熱されて焼成される。セラミックス成形体11が円筒型の燃料電池スタックセルである場合、セラミックス成形体11は基体管〜インターコネクタの共焼結時に約1350℃〜1450℃に加熱される。また、空気極焼結時にはセラミックス成形体11は約1100℃〜1250℃に加熱される。
セラミックス成形体11を加熱した後の焼成ガスは、焼成ガス排出口304からガス焼成炉301の系外に排出される。
【0069】
本実施形態では、燃焼ガスにより間接的に加熱された焼成ガスを用いてセラミックス成形体11を加熱している。従って、燃焼ガスとセラミックス成形体11とは接触しないため、セラミックス成形体11の変質や劣化を防止することが可能である。
【0070】
本実施形態の変形例では、焼成ガスは焼成室302頂部から供給され、焼成室302内部を下方に向かって流通し、焼成室302底部から排出される構成としても良い。
【0071】
[第5実施形態]
図9は、第5実施形態に係るガス焼成炉の縦断面概略図である。
図9において、
図7と同じ構成には同じ符号を付す。第5実施形態のガス焼成炉401は焼成室302内に、セラミックス成形体11の焼成ガス上流側及び下流側に整流板410が設置される。整流板410は、複数の貫通孔が設けられるセラミックス製板である。
なお、
図9ではバーナは図示されていないが、
図7(b)のように燃焼ガス室305下方の四隅に設けられる。
【0072】
整流板410を設けることにより、焼成室302内のセラミックス成形体11が収容される空間を流通する焼成ガス流の乱れを防止することができる。
【0073】
[第6実施形態]
図10は、第6実施形態に係るガス焼成炉の縦断面概略図である。
図10において、
図7と同じ構成には同じ符号を付す。
【0074】
第6実施形態のガス焼成炉501は熱交換器510を備える。焼成ガス流通路303は、熱交換器510を通過して焼成室302に連結する。また、燃焼ガス排出路312に燃焼ガス排出配管511が連結される。燃焼ガス排出配管511は熱交換器510に接続する。
なお、
図10ではバーナは図示されていないが、
図7(b)のように燃焼ガス室305下方の四隅に設けられる。
【0075】
図10のガス焼成炉501を用いてセラミックス成形体を焼成して製造する方法を以下で説明する。
図11は、
図10のガス焼成炉501における各ガスの流れを説明する概略図である。
【0076】
第4実施形態と同様に、バーナ310での燃焼により生成した燃焼ガスは、燃焼ガス室305内を流通し、燃焼ガス室305底部の燃焼ガス排出口313から燃焼ガス排出路312に送給される。燃焼ガス排出路312内の燃焼ガスは、燃焼ガス排出配管511を通じて燃焼ガス排出路312から排出され、熱交換器510に送給される。
【0077】
熱交換器510にガス焼成炉501の系外から焼成ガス流通路303を通じて焼成ガスが供給される。熱交換器510において、燃焼ガスと焼成ガスとの間で熱交換が行われ、焼成ガスが加熱される。熱交換後の燃焼ガスは、熱交換器510からガス焼成炉501系外に排出される。
【0078】
加熱された焼成ガスは、焼成ガス流通路303を通じて焼成室302に供給される。その後、第4実施形態と同様にして、焼成室302の壁を介して燃焼ガスと焼成ガスとの間で熱交換が行われ、焼成ガスが更に加熱される。加熱された焼成ガスにより、焼成室302内のセラミックス成形体11が焼成される。
【0079】
本実施形態では燃焼ガス室305から排出された燃焼ガスの廃熱を利用して焼成ガスを予熱している。このため、所定温度まで焼成ガスを加熱するのに必要な燃焼ガス量を低減することができ、熱効率が向上する。すなわち、バーナ310に供給する燃料を削減することが可能である。