(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184868
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】油化装置
(51)【国際特許分類】
C10G 1/10 20060101AFI20170814BHJP
B09B 3/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
C10G1/10ZAB
B09B3/00 302A
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-539704(P2013-539704)
(86)(22)【出願日】2012年10月19日
(86)【国際出願番号】JP2012077118
(87)【国際公開番号】WO2013058366
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2015年9月3日
(31)【優先権主張番号】特願2011-229409(P2011-229409)
(32)【優先日】2011年10月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-193314(P2012-193314)
(32)【優先日】2012年9月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502018567
【氏名又は名称】株式会社ブレスト
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】伊東 昭典
(72)【発明者】
【氏名】中島 清
【審査官】
古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−284565(JP,A)
【文献】
特開2005−126454(JP,A)
【文献】
特開2003−034794(JP,A)
【文献】
特開2000−273465(JP,A)
【文献】
特開2003−213276(JP,A)
【文献】
特許第5368790(JP,B2)
【文献】
特開2006−316196(JP,A)
【文献】
特開2006−152175(JP,A)
【文献】
特開平11−005984(JP,A)
【文献】
特開2003−190925(JP,A)
【文献】
特開2014−041384(JP,A)
【文献】
特表2007−529574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/10
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックを加熱溶融して熱分解したプラスチックのガスを蒸発させ、このガスを冷却して液化するようにしたプラスチックの油化装置において、プラスチックを溶融してゲル状として押出すための押出機と、この押出機から押出されたゲル状プラスチックを所定温度で所定時間滞留せしめるための縦型円筒体からなるバッファタンクと、このバッファタンクからの溶融プラスチックを貯溜して液面からプラスチックのガスを蒸発せしめる横型円筒体からなる蒸発釜と、前記押出機のプラスチックの送り量と前記蒸発釜およびバッファタンクの周囲を被って加熱する面状発熱体をコントロールするコントローラとを有し、前記バッファタンクおよび蒸発釜からはリードスクリューおよび残渣排出機構のような回転部品を除去したプラスチックの油化装置。
【請求項2】
前記コントローラは蒸発釜内の溶融プラスチックの液面を鉛直方向における円筒体の直径中心位置になるようにプラスチックの送り量をコントロールするようにした請求項1記載のプラスチックの油化装置。
【請求項3】
前記蒸発釜内の溶融プラスチックの液面の温度が400〜410℃にコントロールされた請求項2記載のプラスチックの油化装置。
【請求項4】
前記バッファタンクは、段差を設けて設置された、縦型の2つの円筒体からなり、その周囲は面状発熱体により加熱される請求項1記載のプラスチックの油化装置。
【請求項5】
前記バッファタンクおよび蒸発釜の一端には開閉自在のメンテナンス口がそれぞれ設けられている請求項1記載のプラスチックの油化装置。
【請求項6】
前記溶融プラスチックの液面が、円筒体の鉛直方向における直径中心位置より上昇したときには、蒸発釜の外周面を被覆した面状発熱体のワット密度を増大し、それより下降したときには、面状発熱体のワット密度を減少させるようにした請求項2記載のプラスチックの油化装置。
【請求項7】
前記ワット密度は0.6w/cm2〜1.4w/cm2の範囲にコントロールされる請求項6記載のプラスチックの油化装置。
【請求項8】
前記油化装置は、蒸発窯で発生したプラスチックのガスを液化するためのコンデンサを有し、このコンデンサは、所定量の炭化水素油を貯蔵するようになっている請求項1記載のプラスチックの油化装置。
【請求項9】
前記油化装置は、蒸発窯で発生したプラスチックのガスを液化するためのコンデンサを有し、このコンデンサは塩化ビニールの処理後の塩素を中和する中和剤を貯溜するようになっている請求項1記載のプラスチックの油化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックを熱分解により油化させるための油化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、廃プラスチックを油化させる連続式の小型油化装置は、廃プラスチックを細片にしたものを加熱装置を備えたシリンダー状の加熱部でゲル状に加熱しつつ、その中に設けたリードスクリューで逐次前方に送給し、溶融プラスチックを加熱部に隣接した傾斜シリンダーからなる分解部に送り込み、この中に設けたリードスクリューで斜め上方に送給しつつ、溶融プラスチックを400℃以上に加熱してプラスチックガスを生成し、このガスを触媒を通して分解し、この分解ガスをコンデンサで冷却して油化し、一方、分解部の上端近傍からは、残渣を連続的に排出させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−152175公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記油化装置においては、加熱部および分解部共にリードスクリューを備え、これをモータで回転せしめて溶融プラスチックを送り出すようにしており、回転部品を備えることによって部品点数も多くなり、回転制御も必要になってくるばかりでなく、リードスクリューとシリンダー、ケーシングとの間に詰まりが生じて故障の原因ともなっていた。更に、分解部から残渣を排出しているが、このように残渣排出機構を設けても、シリンダーの内壁には、残渣が薄く残るばかりでなく、その部分がコークス化してしまうので詰まり易くなり、定期的なメンテナンスが必要であった。更に、また、プラスチックガスを分解するために触媒を備えた触媒筒が必要となり、この触媒は一定期間使用後に交換しなければならず、装置の価格上昇の原因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のプラスチックの油化装置は、プラスチックを加熱溶融して熱分解したプラスチックのガスを蒸発させ、このガスを冷却して液化するようにしたプラスチックの油化装置において、プラスチックを溶融してゲル状として押出すための押出機と、この押出機から押出されたゲル状プラスチックを所定温度で所定時間滞留せしめるためのバッファタンクと、このバッファタンクからの溶融プラスチックを貯溜して液面からプラスチックのガスを蒸発せしめる温度コントロールされた蒸発面積の大きい蒸発釜とからなる。
【0006】
また、前記液面の温度が400〜410℃にコントロールされることが好ましい。
また、前記バッファタンクは、段差を設けて設置された、縦型の2つの円筒体からなり、前記蒸発釜は、横型の円筒体からなり、前記バッファタンクおよび蒸発釜は、それらの外周面を被覆した面状発熱体により加熱されることが好ましい。更に、前記バッファタンクおよび蒸発釜の一端には開閉自在のメンテナンス口がそれぞれ設けられていることが好ましい。更に、また、前記蒸発釜内の溶融プラスチックの液面を円筒体の鉛直方向における直径中心位置になるようにプラスチックの送り量をコントロールするようにすることが好ましい。更にまた、前記溶融プラスチックの液面が、円筒体の直径中心位置より上昇したときは、蒸発釜の外周面を被覆した面状発熱体のワット密度を増大し、それより下降したときには、面状発熱体のワット密度を減少させるようにすることが好ましい。更に、また、前記ワット密度は0.6w/cm
2〜1.4w/cm
2の範囲にコントロールされることが好ましい。更に、また、前記油化装置は、蒸発窯で発生したプラスチックのガスを液化するためのコンデンサを有し、このコンデンサは、所定量の炭化水素油を貯蔵するようになっていることが好ましい。更に、また、前記油化装置は、蒸発窯で発生したプラスチックのガスを液化するためのコンデンサを有し、このコンデンサは塩化ビニールの処理後の塩素を中和する中和剤を貯溜するようになっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、押出機により短時間で多量のプラスチックをゲル状とすることができ、温度コントロールされたバッファタンクを使用してゲル状のプラスチックを一定時間加熱滞溜させれば、炭化させることなく溶融プラスチックにすることができ、しかも蒸発面積の広い蒸発釜を使用すれば、熱分解したプラスチックガスを効率よく蒸発させることができる。更に、溶融プラスチックの液面を400〜410℃に設定すれば、PP・PEから炭化させることなく、A重油、灯油相当の炭化水素油を効率よく採集できる。
【0008】
前記バッファタンクを縦型に2個設け、それらを段差を設けて設置すれば、送りスクリューを設けることなく自然に送り込みができ、面状発熱体による加熱により炭化させることなくプラスチックを溶融でき、更に、蒸発釜を横型に配置された円筒体で構成すれば、蒸発面積を広くとることができ、面状発熱体で適切な温度に周囲から加熱すれば、自然の対流が生じ特に撹拌手段を設ける必要もなくなる。
【0009】
更に、また、バッファタンクおよび蒸発釜にメンテナンス口を設ければ、残渣タンクを特別に設ける必要もなく、蒸発釜内のプラスチック液面を円筒体の直径方向中心位置に設定すれば、蒸発面積が大きくなる。また、溶融プラスチックの液面の変動に合わせてヒータのパワーを0.6w/cm
2〜1.4w/cm
2にコントロールすれば、溶解プラスチックの液面を400〜410℃に保持できて、一定の高さに液面を保つことができる。前記コンデンサ内に、軽油、重油あるいは、採集された混合炭化水素油を所定量貯溜すれば、PET処理後のテレフタル酸を凝縮して除去できる。また、カセイソーダ水等の中和剤を貯溜しておけば、塩化ビニール処理後の塩素を除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のプラスチックの油化装置の斜視図である。
【
図2】本発明のプラスチックの油化装置の概略構成図である。
【
図3】PET処理用のコンデンサの概略構成図である。
【
図4】塩化ビニール処理用のコンデンサの概略構成図である。
【
図5】PETと塩化ビニールの両者を処理できるコンデンサの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
図1及び2について、本発明のプラスチックを油化するための油化装置Mは、廃棄されたプラスチック片を摩擦熱によりゲル状とする押出機1を備えている。この押出機1はその中にリードスクリューを備えた通常の押出装置でよい。この押出機1には、ゲル状のプラスチックを加熱保持して自動的に移送せしめるための段差を設けて配置した第1バッファタンク2とこの第1バッファタンク2の下流側に配置された第2バッファタンク3とが接続される。前記第2バッファタンク3からの溶融プラスチックは、前記押出機1と並列に配置され溶融プラスチックを熱分解しつつガス化するための蒸発釜4に流入する。この蒸発釜4の上方には、蒸発管5を介して接続されたコンデンサ6が配置され、このコンデンサ6によって冷却されたプラスチックのガスは液化して油タンクに貯溜される。
【0013】
前記押出機1と蒸発釜4とは並列に配置され、前記第1、第2バッファタンク2、3を結ぶ線と前記押出機1と蒸発釜4とを結ぶ線とは直交しており、油化装置Mは、全体としてコ字状に配置されコンパクトな構成となっている。
【0014】
前記押出機1は、ホッパー10を備え、このホッパー10から廃棄プラスチックの細片11がモータ12によって回転するリードスクリュー13とシリンダー状のケーシング14間に送られ、プラスチックの細片は摩擦熱と図示しないヒータにより加えられるヒータ熱とによってゲル状となり、排出管15から排出される。前記第1バッファタンク2は、縦型に配置された円筒体2aからなり、この円筒体2aの周壁は面状発熱体16(
図1)によって加熱され、ゲル状プラスチックは390〜405℃に加熱され、円筒体2aの上端には、開閉自在のメンテナンス口17が形成されるとともに円筒体2aの上部周壁から押出機1側に流入管18が伸び、前記押出機1の排出管15と流入管18は、ジョイント19で接続されている。また、円筒体2aの下端近傍周壁から前記流入管18と直交する方向に流出管20が第2バッファタンク3側に伸びている。
【0015】
前記第2バッファタンク3は、第1バッファタンク2より低い位置に配置されるとともに縦型に配置された円筒体3aからなり、この円筒体3aの上部周壁から延びる流入管21がジョイント22を介して第1バッファタンクの流出管20に接続されている。前記円筒体3aは第1バッファタンク2の円筒体2aよりやや長く形成され、その周壁は面状発熱体23で被覆され、これにより内部の溶融プラスチックは400〜415℃に加熱されるとともにその上端には、開閉自在のメンテナンス口24が形成されている。前記円筒体3aの蒸発釜4に対向した周壁上部からは、円筒体3aの上部に滞溜するプラスチックガスを蒸発釜4の蒸発空間S(
図2)に供給するためのガス流出管25が伸びており、このガス流出管25はジョイント26を介して蒸発釜4の端壁4aの蒸発空間Sに対応する位置から伸びるガス流入管27に接続されている。すなわち、前記プラスチックは、第1バッファタンク2、第2バッファタンク3を通じて徐々に加熱されるが、第2バッファタンク3は、蒸発したプラスチックガスを蒸発釜4に送るようにして蒸発釜4の補助的役割を果たしている。このように2つのバッファタンク2、3を設け、徐々に溶融プラスチックの温度を上昇せしめて、最終的に蒸発釜4に送るようにすれば、蒸発釜4内に送られる溶融プラスチックの温度変動が少なくなり、蒸発釜内での温度コントロールが正確になる。前記円筒体3aの周壁下部からは、溶融プラスチックを蒸発釜4内に送り込むためのプラスチック流出管28が伸びており、このプラスチック流出管28はジョイント29を介して蒸発釜4の端壁4aの下部から伸びるプラスチック流入管30に接続されている。
【0016】
前記蒸発釜4は、横型に配置された円筒体4aからなり、この円筒体4aの周囲はセラミックヒータのような面状発熱体31で被覆され、その右端面には、メンテナンス口32が開閉自在に設けられ、円筒体4aの上部中央には、蒸発管5のガイド管5aが上方に伸びて、このガイド管5aはジョイント33を介して蒸発管5に接続されている。また、円筒体34の適宜位置には、円筒体4a内の溶融プラスチックの液面L・Sを検出するための液面計34が設けられている(
図2)。
【0017】
更に装置の操作終了時には、蒸発釜内の溶融プラスチックの殆どが蒸発するので、そのための液面計35を低い位置に設けて液面をコントロールする。
【0018】
なお、前記第1、第2バッファタンク2、3の円筒体2a、3aの溶融プラスチックが貯溜される高さより低い位置の内壁には温度計t
1,t
2が、蒸発釜4の底壁適宜位置には、2つの温度計t
3,t
4が設置されている。また、前記液面計34、35、各温度計t
1,t
2, t
3,t
4、各面状発熱体16、23、31及び押出機1のモータ12はコントローラCに接続されている(
図2)。
【0019】
次に油化装置の操作方法について説明する。特に、汎用プラスチックの内、ポリエチレン(PE)の油化が難しいので、ポリエチレンの場合について説明するが、ポリプロピレン(PP)にも適用可能である。溶融プラスチックの熱分解の過程において、均一な加熱と温度コントロールが重要である。特に、本装置の第1、第2バッファタンク2、3及び蒸発釜4には、撹拌機を使用していないので、均一加熱のためには、面状発熱体を使用して周囲から均一に加熱することと熱伝導の関係から加熱されるプラスチックの量が制限され、特に加熱温度が430〜440℃以上となると、バッファタンク、及び蒸発釜4の内壁に接触している溶融プラスチックは炭化したりして内壁に付着して熱伝導が悪化し、時には吹き上げたりして事故の原因となるので正確な温度コントロールが重要である。
【0020】
前記蒸発釜4の液面(L・S)位置は、蒸発面積が最大である沿直方向における円筒体4aの直径中心位置(高さ位置)が好ましく、液面温度とガス化との関係は以下に示す通りである。なお、ここで言うパーセント(%)とは、一定時間(例えば1時間)におけるガス化の速度を示したものであり、423℃のガス化速度を100%したときの速度の割合を示している。
液面温度とガス化との関係(PE・PP)
液面温度 ガス化との関係
380℃ ガス化なし
385℃ 20%がガス化
390℃ 40%がガス化
395℃ 45%がガス化
400℃ 50%がガス化(軽質油C
10〜C
20が多い)
405℃ 60%がガス化(中間油C
15〜C
25が多い)
410℃ 80%がガス化(中間油C
15〜C
35が多い)
415℃ 90%がガス化(重質油C
40〜C
50が多い)
420℃ 97%がガス化(重質油C
40〜C
50が多い)
425℃ 一部はガス化するが大半はガス化しないで炭化
430℃ 殆んど炭化
440℃ 完全炭化
すなわち、ここでガス化速度は50%以上80%以下であれば、余分な処理時間を要しないし、炭化も防止できるので、液面の温度は400〜410℃に維持されることが好ましく、これ以下(400℃)だとガソリン相当の軽質油が多くなり、燃料としては取り扱いにくくなるし、これ(410℃)以上だと、重質油が多くなり、燃料としては取り扱いにくいものとなる。この間だと、灯油、A重油相当の炭化水素油が多く採集でき利用価値が高い油が得られる。前記円筒体4aの内壁に近接している溶融プラスチックの温度は415〜430℃に設置され、円筒体4aの外周面に設けられる面状ヒータ31は、420〜435℃に設置される。
前記蒸発釜4の加熱は、その外周面を加熱することによって行われ、このように周囲加熱は、内部にヒータを設置するよりも構造が簡単で、蒸発釜内部のメンテナンスも楽となり好ましいが、均一加熱には円筒体4aの直径の大きさに制約があり、加熱効率上35〜45cm特に40cm近傍が好ましい。
【0021】
押出機1の380℃のゲル状プラスチックは、排出管15と流入管18を通って、第1バッファタンク2内に落下され、その底部から所定高さ位置にある流出管20より液面が上昇すればその上昇分は、流出管20と第2バッファタンク3の上部にある流入管21を通って第2バッファタンク3内に落下し、その液面は、蒸発釜4の液面L・Sと同一高さ位置となるように溶融プラスチックが流出管28及び流入管30を通って流通する。なお、第2バッファタンク3内では、その一部が気化するので、その気化ガスはタンク上部に設けたガス流出管25、ガス流入管27を通って蒸発釜4内の蒸発空間Sに流入する。前記コントローラCは、蒸発釜4内の液面L・Sが、円筒体の中心高さ位置になるように、押出機1の押出量をモータ12の回転をコントロールすることと面状ヒータ31のワット密度とのコントロールによって調整される。
【0022】
前記各バッファタンク2、3及び蒸発釜には撹拌機を要しないし、プラスチックの流量を調整するバルブも設けられていないので、押出機1の押出量、各バッファタンク2、3および蒸発釜4の加熱温度、それらの直径と長さによって、蒸発釜4の液面L・Sの高さ位置がコントロールされる。なお、前記液面L・Sが所定位置より上昇した場合には、サイリスタにより電圧Vを自動的に調整し、ヒータのワット密度を増やして蒸発速度を速め、逆に下降した場合には、そのワット密度を減少させて蒸発速度を遅くし所定位置に液面を短時間で戻すようにコントロールされる。
【0023】
なお、プラスチックの液面を400℃〜410℃にコントロールするための面状ヒータ31のワット密度は0.6w/cm
2〜1.4w/cm
2であり、蒸発窯4の直径が40〜50cmの範囲であれば、上記範囲でコントロール可能である。
【0024】
次に、蒸発窯4で発生したプラスチックのガスを液化して炭化水素油とするためのコンデンサ6の構造について説明する。
【0025】
PP、PEの油化処理時に、時としてPETや塩化ビニールが少量ではあるが、混入する場合があるが、PET20%以下混入の場合には、
図3に示すように、コンデンサ6の本体50内に軽油、灯油、あるいは採集された混合油等の炭化水素油51を所定量貯溜した中に蒸発管5を導入するようにすればよい。すなわち、PET処理時に分解して生じたテレフタル酸は炭化水素油51内で凝縮するので、オーバーフロー管52から採集油を採集すれば、本体50の底にテレフタル酸の残渣Paが貯まるので、ドレン管53からその残渣を除去すればよい。なお、前記本体50は、冷却水のような冷媒で冷却される。
【0026】
図4は、塩化ビニール処理時に発生する塩素(Cl)を中和除去するためのコンデンサ60を示している。冷媒で冷却されるようになっている本体61内には、中和剤62が収納されており、この中和剤としては、水酸化ナトリウム水(NaOH)または水酸化カリウム水(KOH)が挙げられ、これら中和剤の液面上に採集された混合油が位置し、その混合油が一定量以上になると、オーバーフロー管63を通って外部に排出される。前記中和剤内には、蒸発窯から傾斜して伸びる蒸発管5aが伸ばされて採集油のガスが供給される。前記ガス内の塩素は中和剤内で塩酸(HCl)となり、中和される。なお、蒸発管5aが下方に傾斜していると、その中に水滴が滞在することが有効に防止される。なお、本体61の下部にはドレン口64が形成されている。
【0027】
また、PEと塩化ビニールの両方が含まれる廃プラスティックを処理するためのコンデンサ70が
図5に示されている。コンデンサ70は、本体71を有し、この本体71内の下部には前述の中和剤73が、その上に前述の炭化水素油72が収納され、この炭化水素油72によって、テレフタル酸の残渣Paが凝縮除去され、塩化ビニール中の塩素(Cl)は、沈下して中和剤によって中和される。なお、採集された混合油はオーバーフロー管74の上端からオーバーフローして外部に取り出され、前記蒸発管5aの下端は炭化水素油中に開放され、本体の下端にはドレン口75が形成されている。
具体的には、1時間に10kgのポリエチレンを油化するために最適寸法は以下の通りである。
【0028】
1.押出機のシリンダー
1000L×250φ
2.流入管・流出管15、18
25A(外径34mm、厚さ3.2mm)
3.第1バッファタンク
150A(外径165.2mm、厚さ5mm)×300L
4.流出管・流入管20、21
32A(外径42.7mm、厚さ3.5mm)
5.第2バッファタンク
150A×400L
6.ガス流出管・ガス流入管25、27
10A(外径17.3mm、厚さ2.3mm)
7.流出管、流入管28、30
40A(外径48.6mm、厚さ3.5mm)
8.蒸発釜4
1000L×400φ
なお、本装置には、特に残渣を貯溜する残渣タンクを特に設けていないので装置を一定期間作動した後に、各部品に取付けられているメンテナンス口17、24、32を開放して残渣を除去する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
廃プラスチックのうち、PP及びPEからA重油相当の炭化水素油を主成分とする混合油を効率よく採集でき、廃プラスチックの利用分野に広く応用される。
【符号の説明】
【0030】
1…押出機
2…第1バッファタンク
3…第2バッファタンク
4…蒸発釜
5…蒸発管
6…コンデンサ
7…油タンク