(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のように、鉛直に立てて配置された支持基板の下端部に並列して固定された多数個の陽極体に、誘電体層、半導体層を形成する場合には、陽極体を支持基板の下端部にしか接続できないため、支持基板1枚で処理できる陽極体の数が少なく、生産効率が低いという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、基板1枚で処理できる陽極体の数が多くて生産効率に優れ、処理液に対する陽極体の浸漬位置(高さ)を精度良く制御できると共に、コンデンサ素子を製造する途中で熱処理を行うことが必要な場合には支障なく熱処理を行うことができるコンデンサ素子製造用治具及びコンデンサ素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0012】
[1]下面に平面部を有する第1基板と、
前記第1基板の下面の平面部に沿って平行状に配置される第2基板と、
前記第2基板の下面に実装された複数個のソケットと、を備え、
前記第1基板の下面の平面部に第1電気接続端子が設けられ、該第1電気接続端子は、個々に、コンデンサ用陽極体に電流を供給する電源に電気的に接続され、
前記第2基板の上面に第2電気接続端子が設けられ、該第2電気接続端子は、前記ソケットに電気的に接続され、
前記第2基板を前記第1基板の下面側に該第1基板の下面の平面部に対し平行に重ね合わせて配置した時に、前記第1電気接続端子が前記第2電気接続端子に接触して電気的に接続し、該接続によって前記ソケットが前記電源に電気的に接続されるものとなされ、
前記ソケットは、リード線を有するコンデンサ用陽極体のリード線を電気接続する際の該リード線の差込口を有し、前記差込口が前記第2基板の下方向に開かれていることを特徴とするコンデンサ素子製造用治具。
【0013】
[2]前記電源が、前記第1基板の少なくとも片面に形成された電気回路からなり、個々の前記第1電気接続端子は、それぞれ個々の前記電源に電気的に接続されている前項1に記載のコンデンサ素子製造用治具。
【0014】
[3]前記電気回路が定電流回路である前項2に記載のコンデンサ素子製造用治具。
【0015】
[4]前記電気回路は、個々の前記ソケット毎に電圧を制限する回路でもある前項2または3に記載のコンデンサ素子製造用治具。
【0016】
[5]前記第1電気接続端子の下端は、前記第1基板の下面の平面部から下方に向けて突出し、
前記第1基板に貫通孔が設けられ、該貫通孔内に導電性の電気接続部が配置され、該電気接続部の一端部が前記第1基板の上面の電気回路に電気的に接続され、前記電気接続部の他端部は、前記第1電気接続端子に電気的に接続され、
前記第2基板を前記第1基板の下面側に該第1基板の下面の平面部に対し平行に重ね合わせて配置した時に、前記第1基板の下面の平面部から突出した第1電気接続端子の下端が、前記第2基板の上面の第2電気接続端子に接触して電気的に接続することを特徴とする前項2〜4のいずれか1項に記載のコンデンサ素子製造用治具。
【0017】
[6]前記導電性電気接続部は、バネ端子である前項5に記載のコンデンサ素子製造用治具。
【0018】
[7]前記第1基板の厚さは、前記第2基板の厚さより大きい前項1〜6のいずれか1項に記載のコンデンサ素子製造用治具。
【0019】
[8]前記第1基板の厚さが5mm以上である前項7に記載のコンデンサ素子製造用治具。
【0020】
[9]前項1〜8のいずれか1項に記載のコンデンサ素子製造用治具のソケットにコンデンサ用陽極体が接続されると共に、
前記第2基板が前記第1基板の下面側に該第1基板に対し平行に重ね合わせて配置されて第1電気接続端子と第2電気接続端子とが接触して電気的に接続された状態にあり、
前記両基板が水平に保持された状態にあり、かつ、
前記陽極体が化成処理液中に浸漬された状態で、
前記陽極体を陽極にして通電することによって、前記陽極体の表面に誘電体層を形成する誘電体層形成工程と、
前記誘電体層形成工程の後に、陽極体がソケットに接続された状態の第2基板を、第1基板から分離する分離工程と、
前記分離工程の後に、前記第2基板のソケットに接続された状態の陽極体に対し熱処理を行う熱処理工程と、を含むことを特徴とするコンデンサ素子の製造方法。
【0021】
[10]前項1〜8のいずれか1項に記載のコンデンサ素子製造用治具のソケットに、表面に誘電体層が設けられた陽極体が接続されると共に、
前記第2基板が前記第1基板の下面側に該第1基板に対し平行に重ね合わせて配置されて第1電気接続端子と第2電気接続端子とが接触して電気的に接続された状態にあり、
前記両基板が水平に保持された状態にあり、かつ、
前記陽極体が半導体層形成用溶液中に浸漬された状態で、
前記陽極体を陽極にして通電することによって、前記誘電体層の表面に半導体層を形成する半導体層形成工程と、
前記半導体層形成工程の後に、陽極体がソケットに接続された状態の第2基板を、第1基板から分離する分離工程と、
前記分離工程の後に、前記第2基板のソケットに接続された状態の陽極体に対し熱処理を行う熱処理工程と、を含むことを特徴とするコンデンサ素子の製造方法。
【0022】
[11]前項1〜8のいずれか1項に記載のコンデンサ素子製造用治具のソケットにコンデンサ用陽極体が接続されると共に、
前記第2基板が前記第1基板の下面側に該第1基板に対し平行に重ね合わせて配置されて第1電気接続端子と第2電気接続端子とが接触して電気的に接続された状態にあり、
前記両基板が水平に保持された状態にあり、かつ、
前記陽極体が化成処理液中に浸漬された状態で、
前記陽極体を陽極にして通電することによって、前記陽極体の表面に誘電体層を形成する誘電体層形成工程と、
前記誘電体層形成工程の後に、陽極体がソケットに接続された状態の前記第2基板が前記第1基板の下面側に該第1基板に対し平行に重ね合わせて配置されて第1電気接続端子と第2電気接続端子とが接触して電気的に接続された状態にあり、
前記両基板が水平に保持された状態にあり、かつ、
前記陽極体が半導体層形成用溶液中に浸漬された状態で、
前記陽極体を陽極にして通電することによって、前記陽極体表面の誘電体層の表面に半導体層を形成する半導体層形成工程と、を含み、
前記誘電体層形成工程と前記半導体層形成工程の間に、及び/又は前記半導体層形成工程の後に、
陽極体がソケットに接続された状態の第2基板を、第1基板から分離し、次いで前記第2基板のソケットに接続された状態の陽極体に対し熱処理を行う分離・熱処理工程をさらに備えることを特徴とするコンデンサ素子の製造方法。
【0023】
[12]前記熱処理を200℃〜500℃で行う前項9〜11のいずれか1項に記載のコンデンサ素子の製造方法。
【0024】
[13]前項9〜12のいずれか1項に記載の製造方法で得たコンデンサ素子の陽極体及び半導体層に、それぞれ電極端子を電気的に接続し、前記電極端子の一部を残して封止するコンデンサの製造方法。
【発明の効果】
【0025】
[1]の発明では、第2基板が、撓む等の変形(歪み)を有していても、さらに、重力により変形を生じやすい水平状態に保持された状態であっても、下面側に平面部を有する第1基板下面の該平面部に第2基板を平行に重ね合わせて配置することにより、第2基板の変形は緩和される。好ましくは、第1基板は、第2基板より剛性が高い構成とすることで、さらに、第2基板は撓む等の変形(歪み)が少ないものとなる。このコンデンサ素子製造用治具の第2基板のソケットに接続されている陽極体を処理液中に浸漬した際に各陽極体の高さ位置が精度良く同一となり、これにより各陽極体における例えば誘電体層や半導体層の形成高さ位置を精度良く同一高さに制御することができ、高品質のコンデンサ素子を製造できる。
【0026】
また、第2基板の下面に実装された複数個のソケットの差込口が第2基板の下方向に開口しているから、例えば第2基板の下面の多くの領域(略全面等)に多数個のコンデンサ陽極体を実装することが可能となり、このように回路基板1枚で処理できる陽極体の数が多くて生産性に優れる。
【0027】
更に、コンデンサ素子を製造する途中で熱処理を行う場合には、陽極体がソケットに接続された第2基板を第1基板から分離して、陽極体がソケットに接続された第2基板に対し熱処理を行うことができる(即ち第1基板に対する熱処理の適用を回避できる)ので、第1基板下面の平面部の平面性に悪影響を及ぼすことなくスムーズに熱処理を行うことができる。熱処理後に更なる処理を要する場合には、熱処理後に、第2基板を第1基板の下面側に該第1基板に対し平行に重ね合わせて配置して、第1基板の下面の第1電気接続端子を、第2基板の上面の第2電気接続端子に接触させて電気的に接続し、通電して処理すればよい。
【0028】
[2]の発明では、電源が第1基板に形成されるので、コンデンサ素子製造システムとして省スペースなものを構成でき、また、電源を構成する電気回路中の電子部品を熱処理に晒さずに済む。さらに、個々の第1電気接続端子は、それぞれ個々の電源に電気的に接続されているから、個々のコンデンサ用陽極体に個別に供給する電流を制御することができる。
【0029】
[3]の発明では、電気回路が定電流回路であるから、得られるコンデンサ素子の偏差を少なくできる利点がある。
【0030】
[4]の発明では、電気回路は、個々の前記ソケット毎に電圧を制限する回路でもあるから、比較的大きな電流を流しても、陽極体に印加される最大の電圧値が制限され、これにより化成や半導体層形成の処理時間を短縮できる利点がある。
【0031】
[5]の発明では、第2基板を第1基板の下面側に該第1基板に対して平行に重ね合わせて配置するだけで、第1基板の下面の平面部から突出した第1電気接続端子の下端が、第2基板の上面の第2電気接続端子に接触して電気的に接続させることができるので、第2基板の下面のソケットを、第1基板の電気回路に容易に電気的に接続させることができる。
【0032】
[6]の発明では、導電性電気接続部はバネ端子であるから、第2基板を第1基板の下面側に該第1基板に対し平行に重ね合わせて配置した時に、第1電気接続端子を第2電気接続端子に安定して確実に接触させることができる。
【0033】
[7]及び[8]の発明では、第1基板の厚さは、第2基板の厚さより大きいので、第1基板は変形し難く、従って厚さの薄い第2基板が第1基板の下面側に該第1基板に対し平行に重ね合わせて配置された状態において第2基板の撓み等の変形が緩和されやすいものとなるから、この第2基板のソケットに接続されている陽極体を処理液中に浸漬した際に、各陽極体の高さ位置が精度良く同一となり、これにより各陽極体における例えば誘電体層や半導体層の形成高さ位置を精度良く同一高さに制御することができ、高品質のコンデンサ素子を製造できる。
【0034】
[9]の発明では、誘電体層形成工程の後に、陽極体がソケットに接続された状態の第2基板を、第1基板から分離し、この分離後に、第2基板のソケットに接続された状態の陽極体に対し熱処理を行うことができる。
【0035】
[10]の発明では、半導体層形成工程の後に、陽極体がソケットに接続された状態の第2基板を、第1基板から分離し、この分離後に、第2基板のソケットに接続された状態の陽極体に対し熱処理を行うことができる。
【0036】
[11]の発明では、誘電体層形成工程と前記半導体層形成工程の間に、及び/又は前記半導体層形成工程の後に、陽極体がソケットに接続された状態の第2基板を、第1基板から分離し、この分離後に、第2基板のソケットに接続された状態の陽極体に対し熱処理を行うことができる。
【0037】
このように、[9]、[10]及び[11]の発明では、第1基板に対する熱処理の適用を回避できて、第1基板下面の平面部の平面性や第1基板に形成された電気回路等に悪影響を及ぼすことなくスムーズに熱処理を行うことができる。このように治具の機能等に悪影響を及ぼすことなく、コンデンサ素子を製造できる。
【0038】
[12]の発明では、熱処理を200℃〜500℃で行うから、信頼性の高いコンデンサ素子を製造できる。
【0039】
[13]の発明では、コンデンサ素子製造用治具に悪影響を及ぼすことなく、優れた生産性で、高品質のコンデンサを製造することができる(陽極体における例えば誘電体層や半導体層の形成高さ位置を精度良く所定高さに制御した高品質のコンデンサを製造することができる)。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明に係るコンデンサ素子製造用治具10の一実施形態を
図1〜8に示す。前記コンデンサ素子製造用治具10は、第1基板11と、第2基板12と、複数個のソケット1とを備える。前記複数個のソケット1は、前記第2基板12の下面に実装されている。
【0042】
前記ソケット1は、下面にリード線差込口37が設けられた導電性のソケット本体部2を有する(
図8参照)。
【0043】
前記ソケット本体部2は、陽極体(導電体)52等と電気接続する電気接続端子としての役割を担う部材であり、電気的導通を得るために、金属材等の導電性材料で構成される。
【0044】
本実施形態では、前記ソケット本体部2は、円柱部21と、該円柱部21の底面の周縁部から下方に向けて外側に拡がるように延ばされた傾斜面部22とからなり(
図8参照)、これら円柱部21及び傾斜面部22は、金属材等の導電性材料で構成されている。前記傾斜面部22により取り囲まれることによってリード線差込口37が形成されている(
図8参照)。前記円柱部21の内部には、その底面に開口を有した空洞部23が設けられている。この空洞部23は、前記リード線差込口37の空間と連通している。前記空洞部23の内周面には金属製ばね部材24が連接されており、該金属製ばね部材24で取り囲まれてリード線挿通孔38が形成されている。前記リード線挿通孔38は、前記リード線差込口37の空間と連通している。前記リード線挿通孔38に、陽極体(導電体)52のリード線53等が接触状態に挿通配置されることによって、前記ソケット本体部2と前記陽極体(導電体)52とが電気的に接続される。
【0045】
前記第1基板11に、
図2、3に示すように、一対の電気端子14、15を有する電気回路30が形成されている。前記一対の電気端子14、15は、電力供給源(以下、「電源32」という)に電気接続されている(
図11参照)。
【0046】
前記電気回路30は、電流を制限する回路(例えば、
図11、
図12の回路等)を有し、ソケット1及びそれに接続されたリード線53を介して、各陽極体(導電体)52ごとに独立して電流を供給する。即ち、前記電気回路30は、個々の前記ソケット本体部2毎に電流を制限する。
【0047】
したがって、各陽極体(導電体)52に流れる最大の電流値は、前記電気回路の電流制限値になる。電流を制限する回路としては、得られるコンデンサの偏差をできるだけ少なくするために、定電流回路(例えば、
図11)とすることが好ましい。
【0048】
また、前記電気回路30が、さらに、個々のソケット本体部2毎に電圧を制限する回路であるのがより好ましい。即ち、前記電気回路30が、さらに、各陽極体(導電体)52に印加される電圧を制限する回路であるのがより好ましい。この場合には、比較的大きな電流を流しても、陽極体52に印加される最大の電圧値が制限されるので、化成や半導体層形成の処理時間を短縮できる。
【0049】
前記一対の電気端子14、15は、前記回路基板11の幅方向の一端部に設けられている(
図1〜3参照)。一方の電気端子は、電流制限端子14であり、この端子14に与える電圧により電流の制限値が設定される。例えば、
図11の回路の場合、電流制限端子14と後述する電圧制限端子15との電位差により、
図12の回路の場合、電流制限端子14と陰極板51との電位差により、それぞれ設定できる。
【0050】
前記他方の電気端子は、電圧制限端子15であり、この端子15に与える電圧により各陽極体(導電体)52に印加される最大の電圧値が制限される。例えば、
図11及び
図12の回路の場合、電圧制限端子15と陰極板51との電位差により設定できる。
【0051】
本実施形態における、前記第1基板11に形成された電気回路30の詳細について説明する。
図2〜4、7、11に示すように、前記第1基板11の上面にトランジスタ19及び抵抗器18が実装され(取り付けられ)、前記トランジスタ19のエミッタEが抵抗器18の一端に電気接続され、前記抵抗器18の他端が電流制限端子14に電気的に接続され、前記トランジスタ19のベースBが電圧制限端子15に電気的に接続され、前記トランジスタ19のコレクタCが、導電性の電気接続部44の一端部(上端部)に電気的に接続され、前記電気接続部44の他端部(下端部)に第1電気接続端子41が電気的に接続されている。
【0052】
前記電気接続部44は、前記第1基板11の第1貫通孔43内に配置されている(
図4参照)。また、前記第1電気接続端子41の少なくとも上端部が前記第1貫通孔43内に配置されている(
図4参照)。
図4において、20は半田であり、この半田20は、前記電気接続部44の一端部(上端部)と前記電気回路30(トランジスタ19のコレクタC)とを電気接続する。
【0053】
前記第1電気接続端子41の下端は、前記第1基板11の下面の平面部11aから下方に向けて突出している(
図4参照)。前記第1電気接続端子41は、前記導電性電気接続部44が伸縮自在なものであることにより、伸縮移動自在である。伸縮させない状態での第1電気接続端子41下端の突出長さLは、第1基板11の下面に第2基板12を平行に重ね合わせて配置した際に前記下端が後述する第2電気接続端子42に到達できる長さがあれば良く、通常1mm〜10mmに設定されるのが好ましい(
図4参照)。
【0054】
上記のような構成により、前記第1基板11の下面に第1電気接続端子41が設けられ、該第1電気接続端子41は、前記第1基板11の電気回路30に電気的に接続されている。
【0055】
本実施形態では、前記導電性電気接続部44は、金属製スプリング等の金属製バネ部材で構成されている(
図4参照)。
【0056】
一方、前記第2基板12に形成された多数個の第3貫通孔49のそれぞれに、前記ソケット1のソケット本体部2の上部側の一部が挿通配置され、該ソケット本体部2と前記第3貫通孔49との隙間に接着剤等の充填材39が充填されることによって、前記第2基板12の第3貫通孔49内にソケット本体部2の上部側の一部が固定されている(
図8参照)。即ち、前記第2基板12に前記ソケット1が取付固定されている(
図6参照)。前記ソケット1のソケット本体部2の下部側は、前記第2基板12の下面から下方に向けて突出している(
図8参照)。こうして前記複数個のソケット1は、前記第2基板12の下面に実装されている(
図6、8参照)。
【0057】
前記ソケット本体部2の上面は、第2電気接続端子42となっている(
図5、8参照)。前記第2電気接続端子42は、銅、鉄、ニッケル及びアルミニウムのうち少なくともいずれか1種の金属を主成分とする金属等の金属薄膜で形成されている。
【0058】
本実施形態では、前記ソケット本体部2の上面(前記第2電気接続端子42の上面)と前記第2基板12の上面とが面一になっている(
図8参照)。なお、前記第2電気接続端子42の上面の位置は、前記第2基板12の上面より上方に僅かに(例えば0.1mm〜0.5mm)突出していても良いし、前記第2基板12の上面より下方に僅かに(例えば0.1mm〜0.5mm)沈んでいても(凹んでいても)良い。
【0059】
図8に示すように、前記第2基板12に実装された複数個のソケット1のリード線差込口37が該第2基板12の下面側で下方向に向けて開口している。前記ソケット1の下面の差込口37に、リード線53を有するコンデンサ用陽極体52の該リード線53を電気接続する際に、このリード線53の差し込み方向は、前記第2基板12の下面に対し垂直方向である(
図9、10参照)。
【0060】
本実施形態では、前記ソケット1は、第2基板12の長さ方向に沿って多数個(例えば64個)が略等間隔(等間隔を含む)で設けられ、これら一列に延びた多数個のソケット1が、第2基板12の幅方向に沿って略等間隔(等間隔を含む)で複数列(例えば8列、9列、10列、11列等)設けられている(
図6参照)。前記ソケット1の配置態様は、
図6に示す配置態様に特に限定されるものではなく、他の2次元的な配置態様を採用することもできる。例えば、正方格子状の配置態様、六方格子状の配置態様などが挙げられる。また、第2基板12の大きさにもよるが、1枚の第2基板12あたり、200個以上、取り扱いのし易い範囲として、200個〜80000個、好ましくは400個〜30000個の前記ソケット1を設けることができる。
【0061】
本発明において、コンデンサ素子製造用治具10における電気回路30は、
図11に示す構成のものに特に限定されるものではなく、例えば
図12に示すような回路構成であってもよい。
図12において、31は、ダイオードである。
【0062】
前記第1基板11の上面の周縁部に、複数個の磁石61が固定されている。即ち、前記第1基板11の上面における4つの隅部及び長さ方向に延びる一対の縁部の該長さ方向の中間部の合計6箇所に、磁石61が固定されている(
図1、2参照)。これら磁石61は、前記第1基板11の上面に形成された埋設用凹部内に少なくとも一部が埋設された態様で固定されている(
図9参照)。
【0063】
前記第1基板11の上面の中央部(縁部を除く領域)に、磁石63が固定されている。即ち、前記第1基板11の上面の中央領域における長さ方向の中間から一端側の位置に磁石63が固定され、前記第1基板11の上面の中央領域における長さ方向の中間から他端側の位置に磁石63が固定されている(
図3参照)。これら磁石63は、前記第1基板11の上面に形成された埋設用凹部内に少なくとも一部が埋設された態様で固定されている(
図9参照)。
【0064】
また、前記第1基板11の下面の周縁部に、複数個の位置決め用突起62が下方に向けて突設されている。即ち、前記第1基板11の下面における4つの隅部に位置決め用突起62が下方に向けて突設されている(
図3、9参照)。
【0065】
前記第2基板12の上面の周縁部に、複数個の磁石64が固定されている。即ち、前記第2基板12の上面における4つの隅部及び長さ方向に延びる一対の縁部の該長さ方向の中間部の合計6箇所に、磁石64が固定されている(
図1、5参照)。
【0066】
前記第2基板12の4つの隅部に固定された磁石64の上面の中央部には位置決め用孔65が形成されている(
図5参照)。この位置決め用孔65は、前記位置決め用突起62を適合状態に受容し得る大きさに形成されている。
【0067】
また、前記第2基板12の上面の中央部(縁部を除く領域)に、磁石66が固定されている。即ち、前記第2基板12の上面の中央領域における長さ方向の中間から一端側の位置に磁石66が固定され、前記第2基板12の上面の中央領域における長さ方向の中間から他端側の位置に磁石66が固定されている(
図1、5参照)。このように、前記第2基板12の縁部以外にも固定する部位を設け、これら固定する部位間の間隔を短くすることにより、前記第2基板12の撓み(歪み)がより解消されやすくなる。そのため、前記第2基板12をより大型化することも可能である。なお、前記固定する部位の間隔が短すぎると、固定部位が多くなるのでコストがかかる。前記固定する部位の間隔は、前記第2基板12の材質や許容される歪みの程度などに合わせ決定すればよい。
【0068】
しかして、前記第2基板12を前記第1基板11の下面側に該第1基板の下面の平面部11aに対して平行に重ね合わせ、且つ相互の周縁を合致させた状態に配置した時に、第1基板11の周縁部の磁石61と、第2基板12の周縁部の磁石64とが、互いに上下対応位置になってそれぞれ磁力で引き合い、第1基板11の中央部の磁石63と、第2基板12の中央部の磁石66とが、互いに上下対応位置になってそれぞれ磁力で引き合うことで、第1基板11の下面側に第2基板12が重ね合わせ配置されて互いに固定されるのであるが、この時、第1基板11の下面の隅部の位置決め用突起62が、第2基板12の隅部の磁石64の位置決め用孔65内に受容されることによって、第1基板11と第2基板12との重ね合わせの位置決めが行われる(
図1、9参照)。
【0069】
本発明において、前記第1基板11は、剛性が高いものであるのが好ましい。前記第1基板11に回路基板用として通常使用される材質(イミド樹脂、ガラスエポキシ樹脂等)の絶縁板を使用する場合、剛性を十分に確保する観点から、前記第1基板11の厚さTは5mm以上に設定されるのが好ましく、また取り扱いのしやすさから7mm〜30mmに設定されるのが特に好ましい。
【0070】
前記第1基板11の剛性を十分に確保する手段としては、前記厚さの設定(5mm以上)以外に、例えば、金属材やセラミックス材の基板を積層した積層基板を用いる方法等が挙げられる。
【0071】
前記第1基板11は、1枚の板で構成されていてもよいし、複数枚の板が積層された積層板であってもよい。前記第1基板11として積層板を採用する場合において、例えば、隣り合う板同士が接着されることなく単に重ね合わされた状態の積層板であってもよいし、隣り合う板同士が接着された積層板であればより好ましい。
【0072】
前記第1基板11としては、絶縁性基板が用いられる。前記絶縁性基板の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラスエポキシ樹脂、イミド樹脂、セラミックス等が挙げられる。或いは、中間層に金属材料を用いた積層基板であっても、スルーホール内表面(ホールの内周面)が絶縁加工されているものであれば前記絶縁性基板と同様に使用できる。
【0073】
さらに、前記第2基板12に前記第1基板11と同様の材質の絶縁性基板を使用する場合、前記第2基板12の厚さSは、前記第1基板11の厚さTより小さく設定されるのが好ましい。これにより、前記第2基板12の歪みは、前記第1基板11により、矯正されやすくなる。中でも、前記第2基板12の厚さSは、0.5mm〜2mmに設定されるのが好ましい。前記第2基板12として積層板を採用する場合において、例えば、隣り合う板同士が接着されることなく単に重ね合わされた状態の積層板であってもよいし、隣り合う板同士が接着された積層板であってもよい。
【0074】
次に、上記コンデンサ素子製造用治具10を用いたコンデンサ素子の製造方法について説明する。
図9にコンデンサ素子の製造方法の一例を概略図で示す。
図11は、このコンデンサ素子の製造方法を電気回路的に示した模式図である。
【0075】
まず、中に処理液59が投入された処理容器50を準備する。前記処理液59としては、誘電体層54形成のための化成処理液、半導体層55形成のための半導体層形成用溶液等が挙げられる。
【0076】
一方、前記第2基板12を前記第1基板11の下面側に該第1基板の下面の平面部11aに対し平行状に重ね合わせ、且つ相互の周縁を合致させた状態に配置すると、第1基板11の周縁部の磁石61と、第2基板12の周縁部の磁石64とが、互いに上下対応位置になってそれぞれ磁力で引き合い、第1基板11の中央部の磁石63と、第2基板12の中央部の磁石66とが、互いに上下対応位置になってそれぞれ磁力で引き合うので、第2基板12が第1基板11の下面側に該第1基板の下面の平面部11aに対し平行状に重ね合わせ配置されて両基板11、12が相互に固定される(
図9参照)。この時、第1基板11の下面の隅部の位置決め用突起62が、第2基板12の第2基板12の隅部の磁石64の位置決め用孔65内に受容されることによって、第1基板11と第2基板12との重ね合わせの位置決めが行われる(
図9参照)。
【0077】
このように第2基板12を第1基板11の下面側に該第1基板の下面の平面部11aに対し平行に重ね合わせて両基板11、12同士を位置決めしつつ相互に固定した状態において、
図8、10に示すように、前記第1基板11の下面の平面部11aから突出した第1電気接続端子41の下端が、前記第2基板12の上面の第2電気接続端子42に接触して電気的に接続される。このように第1電気接続端子41と第2電気接続端子42とが電気的に接続されることによって、前記ソケット1のソケット本体部2が、前記第1基板11の電気回路30に電気的に接続される(
図8参照)。
【0078】
なお、本明細書において、「第2基板を第1基板の下面側に該第1基板の下面の平面部に対し平行に重ね合わせて配置する」の語(文)は、上記のような磁石64、66を介して第1基板の一部と第2基板の一部とが接触してこれら基板同士が平行状に重ね合わされた構成(即ち一部領域において第1基板11と第2基板12の間に隙間等の空間がある構成)を含む意味で用いている。この隙間は小さい方が好ましく、通常5mm以下、好ましくは2mm以下である。
【0079】
次に、このようにして前記第2基板12が前記第1基板11の下面側に該第1基板の下面の平面部11aに対し平行に重ね合わせて配置されて第1電気接続端子41と第2電気接続端子42とが接触してこれら端子41、42同士が電気的に接続された状態にある両基板11、12を、機械搬送装置(図示しない)により水平に保持する(
図9参照)。
【0080】
次いで、前記コンデンサ素子製造用治具10の第2基板12の下面に実装された各ソケット1のそれぞれに、リード線53を有する陽極体(導電体)52を接続する。即ち、前記コンデンサ素子製造用治具10の第2基板12の下面に実装されたソケット1の底面のリード線差込口37に、陽極体52のリード線53を差し込んで、該リード線53をリード線差込口37を介してリード線挿通孔38に挿通せしめることによって、ソケット1に陽極体(導電体)52を電気的に接続する(
図10参照)。前記リード線53の先端側が、前記ソケット本体部2の空洞部23内の金属製ばね部材24と接触状態となるから、ソケット1と陽極体(導電体)52とが電気的に接続される。
【0081】
次いで、前記陽極体(導電体)52がセットされたコンデンサ素子製造用治具10を、前記処理容器50の上方位置で水平に配置せしめ、該製造用治具10の水平状態(第2基板12の下面が水平な状態)を保持しつつ、前記陽極体(導電体)52の少なくとも一部(通常は全部)が前記処理液59に浸漬される状態まで治具10を下降せしめてその高さ位置で治具10を固定する(
図9参照)。
【0082】
そして、前記陽極体(導電体)52の浸漬状態において、前記陽極体52を陽極にし、前記処理液59中に配置した陰極板51を陰極にして通電する(
図9、11参照)。第1番目の処理液59として化成処理液を用いると、前記通電により導電体52の表面に誘電体層54(
図13参照)を形成することができる(誘電体層形成工程)。
【0083】
次いで、必要に応じて前記誘電体層54を表面に備えた陽極体52を水洗、乾燥させた後、前記とは別の処理容器50内に新たに半導体層形成用溶液59を投入して、前記同様に前記陽極体52の少なくとも一部(通常は全部)が前記半導体層形成用溶液59に浸漬される状態まで治具10を水平状態(第2基板12の下面が水平な状態)を保持しつつ下降せしめてその高さ位置で治具10を固定し、前記陽極体52を陽極にし、前記半導体層形成用溶液59中に配置した陰極板51を陰極にして通電すると、即ち第2番目の処理液59として半導体層形成用溶液を用いて通電すると、陽極体52表面の誘電体層54の表面に半導体層55を形成することができ(半導体層形成工程)、こうして陽極体52の表面に誘電体層54が積層され、該誘電体層54の表面にさらに半導体層55が積層されてなるコンデンサ素子56(
図13参照)を製造することができる。
【0084】
そして、本発明に係るコンデンサ素子の製造方法においては、例えば、前記誘電体層形成工程と前記半導体層形成工程の間に、及び/又は半導体層形成工程の後に、陽極体52がソケット1に接続された状態の第2基板12を、第1基板11から分離し(分離工程)、この分離した陽極体52付き第2基板12に対し、熱処理を行う(熱処理工程)。第1基板11と第2基板12の分離は、磁石同士の引き合う力に抗して第1基板11と第2基板12を離間させることで遂行できるので、基板同士の分離操作は容易である。このような分離操作を行った後に熱処理を行うことにより、第1基板11の電気回路30等に対する熱処理の適用を回避できて、治具10の電気回路30等に悪影響を及ぼすことなくスムーズに熱処理を行うことができる。
【0085】
前記熱処理は、主にコンデンサの信頼性を上げることを目的として行うものであるが、その用途によって熱処理するタイミングは種々異なる。誘電体層形成工程と半導体層形成工程の間で行う熱処理の加熱温度は、通常200℃〜500℃であり、半導体層形成工程とカーボンペースト形成工程の間で行う熱処理の加熱温度は、通常150℃〜300℃であり、カーボンペースト形成工程と銀ペースト形成工程の間で行う熱処理の加熱温度は、通常150℃〜300℃である。
【0086】
前記熱処理の際の雰囲気は、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気または減圧雰囲気にするのが好ましい。なお、窒素は、ニオブなどの陽極体材料と300℃程度の温度でも反応してしまうので、このような場合不活性ガスとしない。
【0087】
前記熱処理後に更なる処理をする際には、該熱処理後に、再び第1基板11と第2基板12(陽極体52がソケット1に接続された状態のもの)とを相互に固定して前記同様に電気接続すればよい。
【0088】
前記ソケット1の大きさは、特に制限はないが、処理液59に浸漬する際のコンデンサ素子の配置に合わせた大きさ、などにすればよい。
【0089】
前記陽極体52としては、特に限定されるものではないが、例えば、弁作用金属及び弁作用金属の導電性酸化物からなる群より選ばれる陽極体の少なくとも1種を例示できる。これらの具体例としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム、一酸化ニオブ、一酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0090】
前記陽極体52の形状としては、特に限定されず、例えば、箔状、板状、棒状、直方体状等が挙げられる。
【0091】
前記化成処理液59としては、特に限定されるものではないが、例えば有機酸またはその塩(例えば、アジピン酸、酢酸、アジピン酸アンモニウム、安息香酸等)、無機酸またはその塩(例えば、燐酸、珪酸、燐酸アンモニウム、珪酸アンモニウム、硫酸、硫酸アンモニウム等)等の従来公知の電解質が溶解又は懸濁した液などが挙げられる。このような化成処理液を用いて前記通電を行うことによって陽極体52の表面に、Ta
2O
5、Al
2O
3、Zr
2O
3、Nb
2O
5等の絶縁性金属酸化物を含む誘電体層54を形成することができる。
【0092】
なお、このような化成処理液を用いた誘電体層形成工程を省略して、既に表面に誘電体層54が設けられた陽極体52を前記半導体層形成工程に供してもよい。このような表面の誘電体層54としては、絶縁性酸化物から選ばれる少なくとも1つを主成分とする誘電体層、セラミックコンデンサやフィルムコンデンサの分野で従来公知の誘電体層が挙げられる。
【0093】
前記半導体層形成用溶液59としては、通電により半導体が形成され得る溶液であれば特に限定されず、例えば、アニリン、チオフェン、ピロール、メチルピロール、これらの置換誘導体(例えば、3,4−エチレンジオキシチオフェン等)等を含有する溶液などが挙げられる。前記半導体層形成用溶液59にさらにドーパントを添加してもよい。前記ドーパントとしては、特に限定されるものではないが、例えば、アリールスルホン酸またはその塩、アルキルスルホン酸またはその塩、各種高分子スルホン酸またはその塩等の公知のドーパント等が挙げられる。このような半導体層形成用溶液59を用いて前記通電を行うことによって前記陽極体52表面の誘電体層54の表面に、例えば導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリメチルピロール、これらの誘導体等)からなる半導体層55を形成することができる。
【0094】
なお、上記実施形態では、第2基板12を第1基板11の下面側に該第1基板11に対し平行に重ね合わせて両基板11、12を相互に固定する(第1電気接続端子41と第2電気接続端子42とが接触してこれら端子41、42同士が電気的に接続された状態で両基板11、12を相互に固定する)手段として、磁石61、63、64、66を用いているが、相互固定手法としては、特にこのような手法に限定されるものではない。これらに代わり、例えば、
図14に示すような相互固定手法を採用してもよい。
【0095】
図14の構成では、第1基板11の下面に固定用突起71が突設されている。前記固定用突起71は、第1基板11の下面から下方に向けて突設された軸部72と、該軸部の下端に固定された盤状部73とを備える(
図14(C)参照)。前記盤状部73の平面視形状は円形状である(
図14(A)参照)。
【0096】
また、第2基板12の下面に固定用孔74が形成されている(
図14(B)参照)。前記固定用孔74は、突起挿入用孔76と、該突起挿入用孔76に連通するスライド移動用孔75とからなる。前記突起挿入用孔76は、平面視円形状に形成され、前記固定用突起71の盤状部73を受容できる大きさに形成されている。また、前記スライド移動用孔75は、前記固定用突起71の軸部72を受容できる大きさに形成されると共に、前記盤状部73より小さい大きさに設定されている。
【0097】
図14(C)に示すように、第2基板12を第1基板11の下面側に該第1基板11に対し平行に配置し、第1基板11の固定用突起71の盤状部73を、第2基板12の固定用孔74の突起挿入用孔76内に挿通せしめて通過させた後、さらに固定用突起71の軸部72を、第2基板12のスライド移動用孔75内で(図面右方向に)スライド移動させることによって、第2基板12を第1基板11の下面側に該第1基板の下面の平面部11aに対して平行状に重ね合わせた状態で両基板11、12を相互に固定することができる(
図14(D)参照)。
【0098】
本発明では、上記製造方法で得られたコンデンサ素子56の半導体層55の上に、コンデンサの外部引き出し用の電極端子(例えば、リードフレーム)との電気的接触を良くするために、電極層を設けてもよい。
【0099】
前記電極層は、例えば導電ペーストの固化、メッキ、金属蒸着、耐熱性の導電樹脂フィルムの形成等により形成することができる。導電ペーストとしては、銀ペースト、銅ペースト、アルミニウムペースト、カーボンペースト、ニッケルペースト等が好ましい。
【0100】
このようにして得たコンデンサ素子56の陽極体52及び半導体層55に、それぞれ電極端子を電気的に接続し(例えば、リード線53を一方の電極端子に溶接し、電極層(半導体層)55を銀ペーストなどで他方の電極端子に接着する)、前記電極端子の一部を残して封止することによりコンデンサが得られる。
【0101】
封止方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂モールド外装、樹脂ケース外装、金属製ケース外装、樹脂のディッピングによる外装、ラミネートフィルムによる外装などがある。これらの中でも、小型化と低コスト化が簡単に行えることから、樹脂モールド外装が好ましい。
【実施例】
【0102】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0103】
<実施例1>
[陽極体(導電体)52の作製]
長さ0.80mm×幅0.53mm×厚さ0.43mmの直方体形状のタンタル焼結体(陽極体)52の0.53mm×0.43mmの面(上面)に、長さ10.4±0.3mm、直径0.15mmのタンタル線(リード線)53が植立されたものを640個準備した。更に、外径0.40mm、内径0.10mm、厚さ0.10mmのポリテトラフルオロエチレン製の環状のワッシャーをリード線53の根元まで装着した(外装した)。
【0104】
[本発明の固体電解コンデンサ素子製造用治具10の作製]
(電子部品が実装された第1基板)
長さ180mm×幅96mm×厚さ1.6mmのガラスエポキシ基板(第1基板11を構成する5枚の板のうち最上位置に配置される板)を準備した。このガラスエポキシ基板には、
図2に示すように、該基板の長さ方向に沿って64個の第1貫通孔43が2.54mmピッチで形成され、これら一列に延びた64個の第1貫通孔43の群が、基板の幅方向に沿って8mmピッチで合計で10列形成されている(なお、
図2では、作図上の理由により9列のみ記載している)。即ち、前記ガラスエポキシ基板には、合計で640個の第1貫通孔43が形成されている。
【0105】
前記ガラスエポキシ基板(第1基板11を構成する5枚の板のうち最上位置に配置される板)の下面に、同サイズ(長さ180mm×幅96mm×厚さ2.0mm)であり同位置に640個の第1貫通孔43が形成されているガラスエポキシ基板を4枚接着一体化してこれら5枚の板が積層されてなる厚さTが8mmの第1基板11を得た(なお、
図1、4等では、積層構成の図示は省略している)。
【0106】
前記第1基板11に、前項で詳述した
図2、3に示す電気回路30等が形成されている。即ち、前記第1基板11の上面の長さ方向に延びる一対の縁部のうちの一方の縁部の該長さ方向の中間部に電流制限端子14及び電圧制限端子15が設けられている(
図2、3参照)。
【0107】
また、前項で詳述した
図2〜4、7、11に示す構成で各種電子部品(トランジスタ19及び抵抗器18)を前記第1基板11に実装した。各トランジスタ19のコレクタCを出力とする。前記第1電気接続端子41の下端は、前記第1基板11の下面の平面部11aから1mm下方に向けて突出している(突出長さLは1mmである;
図4参照)。
【0108】
前記導電性電気接続部44として、宮下スプリング製作所製の金属製スプリング(品番:MS−038スプリングピン)を使用した。前記抵抗器18として、1KΩ(誤差±0.5%以内)のチップ抵抗器を使用し、前記トランジスタ19として、東芝製の「トランジスタ2SA2154」を使用した。
【0109】
(ソケットが実装された第2基板)
第2基板12は、長さ180mm×幅96mm×厚さ1.6mmのガラスエポキシ基板からなる。前記第2基板12に第3貫通孔49が形成されている(
図5、8参照)。前記第3貫通孔49は、第2基板12の長さ方向に沿って64個が2.54mmピッチで設けられ、これら一列に延びた64個の第3貫通孔49が、第2基板12の幅方向に沿って8mmピッチで合計10列設けられている(
図5参照、
図5では作図上の理由から9列のみ記載している)。
【0110】
前記第2基板12に設けられた640個の第3貫通孔49のそれぞれに、前記ソケット1の一部が挿入配置されて固定されている。各ソケット1の上面に、金メッキが施されてなる金属薄膜からなる第2電気接続端子42が設けられている(
図5、8参照)。しかして、前記複数個のソケット1が、前記第2基板12の下面に実装されている(
図6、8参照)。
【0111】
このようにして、第1基板11と、該第1基板11に実装された電子部品と、第2基板12と、該第2基板12の下面に実装された複数個のソケット1とを備えた固体電解コンデンサ素子製造用治具10を得た(
図1〜8参照)。
【0112】
[コンデンサ素子の製造]
前項で詳述した
図9に示す構成で第2基板12を第1基板11の下面側に該第1基板の下面の平面部11aに対し平行に重ね合わせて両基板11、12同士を位置決めしつつ相互に固定する(
図9参照)。これにより、
図8、
図10に示すように、前記第1基板11の下面から突出した第1電気接続端子41の下端が、前記第2基板12の上面の第2電気接続端子42に接触して電気的に接続される。
【0113】
次に、このようにして前記第2基板12が前記第1基板11の下面側に該第1基板の下面の平面部11aに対し平行に重ね合わせて配置されて第1電気接続端子41と第2電気接続端子42とが接触してこれら端子41、42同士が電気的に接続された状態にある両基板11、12を、機械搬送装置(図示しない)により水平に保持する(
図9参照)。
【0114】
次いで、前記コンデンサ素子製造用治具10の第2基板12の下面に実装された複数個のソケット1のそれぞれに、リード線53を有する陽極体(導電体)52を接続する。前記リード線53のソケット1への差し込み方向は第2基板12に対し垂直方向である(
図10参照)。
【0115】
次いで、前記陽極体(導電体)52がセットされたコンデンサ素子製造用治具10を、中に2質量%燐酸水溶液(処理液)59が入った金属(ステンレス)製の処理容器50の上方位置で水平状態に配置せしめた。前記金属製処理容器50は、陰極板51の役割も兼ねる。
【0116】
前記機械搬送装置を操作して、前記陽極体52の全部及びリード線53の下端5mm分が前記処理液59に浸漬されるように前記治具10を水平状態を保持しつつ下降せしめてその高さ位置で固定した(
図9参照)。この浸漬状態で、電圧制限値(化成電圧)が8.3Vとなるように電圧制限端子15と陰極板(金属製処理容器50を含む)51との間に電圧を印加し、各陽極体ごとの電流制限値が2.1mAとなるように電流制限端子14と電圧制限端子15との間に電圧を印加して、通電した。前記化成処理液59の温度を65℃に維持した状態で8時間陽極酸化を行うことによって、前記導電性焼結体52の細孔及び外表面並びにリード線の一部(5mm分)の表面に誘電体層54を形成した。なお、前記陽極酸化中、4時間経過後から8時間経過までの後半の4時間は、電流制限値を1時間当たり0.5mAの割合で連続的に減少させた(誘電体層形成工程)。
【0117】
前記誘電体層54を表面に備えた陽極体52を水洗、乾燥させた後、20質量%のエチレンジオキシチオフェンエタノール溶液に浸漬する一方、前記処理容器50とは別の処理容器50内に半導体層形成用溶液59(水70質量部及びエチレングリコール30質量部からなる混合溶媒にエチレンジオキシチオフェンを0.4質量%、アントラキノンスルホン酸を0.6質量%含有せしめた溶液)を投入した後、前記誘電体層54を表面に備えた陽極体52の全部及びリード線53の下端5mm分が前記半導体層形成用溶液59に浸漬されるように前記治具10を水平状態を保持しつつ下降せしめてその高さ位置で固定した。この浸漬状態で、20℃で1つの陽極体あたり5μAの定電流で50分間電解重合を行った。この後、前記誘電体層54を表面に備えた陽極体52を溶液59から引き上げ、水洗、アルコール洗浄、乾燥を行った。このような電解重合(1つの陽極体あたり5μAの定電流で50分間電解重合)、水洗、アルコール洗浄、乾燥からなる操作を、さらに6回行うことによって、表面に誘電体層54が形成された陽極体52の該誘電体層54の表面に、導電性高分子からなる半導体層55を形成した(半導体層形成工程)。
【0118】
次いで、再化成を行うことによって前記誘電体層54の修復をした。この再化成は、前記陽極酸化時と同じ溶液を用いて、制限電圧6.3V、各陽極体ごとの制限電流0.1mAで15分間行った(再化成処理工程)。
【0119】
次に、陽極体52がソケット1に接続された状態の第2基板12を、第1基板11から分離し(分離工程)、半導体層55の表面にカーボンペースト(アチソン社製「エレクトロダッグPR−406」)を塗布した後、陽極体52がソケット1に接続された状態の第2基板12を160℃の雰囲気に3時間放置することによって乾燥を行った(カーボン層形成工程)。
【0120】
次に、誘電体層54と半導体層55とカーボン層とが積層されてなる陽極体52を水洗、乾燥した後、カーボン層の表面に銀ペーストを塗布し、次いで陽極体52がソケット1に接続された状態の第2基板12を180℃の雰囲気に3時間放置することによって乾燥を行った(銀ペースト積層工程)。こうしてコンデンサ素子56を得た。
【0121】
上記一連の工程を経て640個のコンデンサ素子56を作製できるが、これを更に39回実施する(即ち全部で40回行う)ことによって、合計25600個のコンデンサ素子56を作製した。
【0122】
これら25600個のコンデンサ素子について、リード線53の根元(基端)のポリテトラフルオロエチレン製ワッシャー(厚さ0.10mm)の上の位置に半導体層がはみ出して形成されているものがないか目視で調べたところ、半導体層がはみ出していたものは0個であった。
【0123】
更に、この実施例1では、コンデンサ素子を製造する際に熱処理工程があるが、第1基板とは分離した後の第2基板(陽極体がソケットに接続された状態の第2基板)に対して熱処理を行うので、第1基板に実装されている電子部品に誤作動等の不具合を生じることはなかった。即ち上記一連の工程を全部で40回行ったが、40回全てにおいて第1基板に実装されている電子部品に誤作動等の不具合は生じなかった。
【0124】
<比較例1>
実施例1で用いる第1基板を構成する5枚の板のうちの最上位置に配置される厚さ1.6mmのガラスエポキシ基板(実施例1と同様に
図2〜4に示すように電気回路が形成され、且つ上面に同様に電子部品も実装されている)における第1貫通孔43内に、電気接続部44及び第1電気接続端子41に代えて、実施例1で用いたソケット1を挿通配置せしめて固定し、該ソケット1にトランジスタ19のコレクタCを電気接続して、厚さ1.6mmの基板の下面に640個のソケット1が実装されたものを準備した(この比較例1では、第1基板を構成する5枚の板のうちの下4枚の板および第2基板は使用しない)。
【0125】
次いで、前記基板の下面に実装された複数個のソケット1のそれぞれに、実施例1と同様にしてリード線53を有する陽極体(導電体)52を接続した。
【0126】
そして、これ以降の工程(誘電体層形成工程等)を実施例1と同様に行ってコンデンサ素子56を作製した。
【0127】
上記一連の工程を経て640個のコンデンサ素子56を作製できるが、これを更に3回実施する(即ち全部で4回行う)ことによって、合計2560個のコンデンサ素子56を作製した。
【0128】
リード線53の根元(基端)のポリテトラフルオロエチレン製ワッシャー(厚さ0.10mm)の上の位置に半導体層がはみ出して形成されていた素子の数は、1352個であった。この比較例1では、3回目の実施から、水平保持されている厚さ1.6mmのガラスエポキシ基板に歪み変形が比較的顕著に発生し、3回目の実施以降において、ワッシャーの上の位置に半導体層がはみ出して形成された素子の数が顕著に多くなった。
【0129】
更に、1回目の実施での熱処理工程での熱処理(陽極体がソケットに接続された状態の基板の全体に対し行われる熱処理)の影響により、2回目の実施から、設定された電圧及び電流の制限値とならないソケットが現れたために、正常に半導体層が形成されないものが321個あった。
【0130】
本願は、2011年12月7日付で出願された日本国特許出願の特願2011−267542号の優先権主張を伴うものであり、その開示内容は、そのまま本願の一部を構成するものである。
【0131】
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではなく、ここに示され且つ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、この発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。
【0132】
本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものであるが、この開示は本発明の原理の実施例を提供するものと見なされるべきであって、それら実施例は、本発明をここに記載しかつ/または図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、多くの図示実施形態がここに記載されている。
【0133】
本発明の図示実施形態を幾つかここに記載したが、本発明は、ここに記載した各種の好ましい実施形態に限定されるものではなく、この開示に基づいていわゆる当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ(例えば、各種実施形態に跨る特徴の組み合わせ)、改良及び/又は変更を有するありとあらゆる実施形態をも包含するものである。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施例に限定されるべきではなく、そのような実施例は非排他的であると解釈されるべきである。例えば、この開示において、「preferably」という用語は非排他的なものであって、「好ましいがこれに限定されるものではない」ということを意味するものである。この開示および本願のプロセキューション中において、ミーンズ・プラス・ファンクションあるいはステップ・プラス・ファンクションの限定事項は、特定クレームの限定事項に関し、a)「means for」あるいは「step for」と明確に記載されており、かつb)それに対応する機能が明確に記載されており、かつc)その構成を裏付ける構成、材料あるいは行為が言及されていない、という条件の全てがその限定事項に存在する場合にのみ適用される。この開示および本願のプロセキューション中において、「present invention」または「invention」という用語は、この開示範囲内における1または複数の側面に言及するものとして使用されている場合がある。このpresent inventionまたはinventionという用語は、臨界を識別するものとして不適切に解釈されるべきではなく、全ての側面すなわち全ての実施形態に亘って適用するものとして不適切に解釈されるべきではなく(すなわち、本発明は多数の側面および実施形態を有していると理解されなければならない)、本願ないしはクレームの範囲を限定するように不適切に解釈されるべきではない。この開示および本願のプロセキューション中において、「embodiment」という用語は、任意の側面、特徴、プロセスあるいはステップ、それらの任意の組み合わせ、及び/又はそれらの任意の部分等を記載する場合にも用いられる。幾つかの実施例においては、各種実施形態は重複する特徴を含む場合がある。この開示および本願のプロセキューション中において、「e.g.,」、「NB」という略字を用いることがあり、それぞれ「たとえば」、「注意せよ」を意味するものである。