特許第6184882号(P6184882)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6184882透明電極静電容量センサ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184882
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】透明電極静電容量センサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20170814BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   G06F3/041 430
   G06F3/041 660
   G06F3/044 Z
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-8945(P2014-8945)
(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2015-138348(P2015-138348A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】野崎 智浩
(72)【発明者】
【氏名】小松 博登
【審査官】 松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−152530(JP,A)
【文献】 特開2014−010516(JP,A)
【文献】 特開2011−258172(JP,A)
【文献】 特開2008−090517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/02
G06F 3/041
G06F 3/044
G01B 7/00
H01H 36/00
H03K 17/955
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂基材と、
前記透明樹脂基材上に設けられた少なくとも1以上の透明電極と、
前記透明電極の外周の少なくとも一部に設けられ、前記透明電極と同じ材料からなる前記透明電極よりも厚さが厚く形成された疑似補助電極と、
前記透明樹脂基材上に設けられ、前記疑似補助電極と接続される引出配線と、を備え、
前記引出配線が、金属蒸着薄膜からなり、
前記疑似補助電極は前記透明電極の外周の1/7以上の範囲に設けられていることを特徴とする透明電極静電容量センサ。
【請求項2】
前記引出配線が0.1μm以上3μm以下の厚みに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の透明電極静電容量センサ。
【請求項3】
前記引出配線には、前記疑似補助電極と接続される部分にカーボン層が設けられ、前記引出配線と前記疑似補助電極との前記接続がカーボン層を介して行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の透明電極静電容量センサ。
【請求項4】
前記疑似補助電極は、前記透明電極の厚さに6μmを加えた厚さを超えない範囲で、前記透明電極の厚さよりも厚く形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の透明電極静電容量センサ。
【請求項5】
前記疑似補助電極は、前記透明電極の厚さに4μmを加えた厚さを超えない範囲で、前記透明電極の厚さよりも厚く形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の透明電極静電容量センサ。
【請求項6】
透明電極静電容量センサの製造方法であって、
透明樹脂基材上に金属蒸着薄膜からなる引出配線を形成する工程Aと、
前記透明樹脂基材上にコーヒーリング現象を起こす粘度を有する透明導電材料を一部が前記引出配線の一部と重なるように設ける工程Bと、
前記透明導電材料をコーヒーリング現象が起きる乾燥条件で乾燥硬化させ、透明電極と前記透明電極の外周に前記透明電極よりも厚さが厚い疑似補助電極とを形成する工程Cと、
を備えることを特徴とする透明電極静電容量センサの製造方法。
【請求項7】
前記工程Aにおいて、引出配線が0.1μm以上3μm以下の厚みに形成されていることを特徴とする請求項に記載の透明電極静電容量センサの製造方法。
【請求項8】
前記工程Aの後に、前記引出配線の前記一部を覆うようにカーボン層を形成する工程A1を備えることを特徴とする請求項又は請求項に記載の透明電極静電容量センサの製造方法。
【請求項9】
前記工程Cの後に、前記疑似補助電極上の少なくとも一部の厚みを厚くする工程C2を備え、
前記工程C2は、同じ前記透明導電材料からなる層を、前記疑似補助電極上の少なくとも一部に印刷法で形成する工程であることを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の透明電極静電容量センサの製造方法。
【請求項10】
透明電極静電容量センサの製造方法であって、
透明樹脂基材上に金属蒸着薄膜からなる引出配線を形成する工程Fと、
前記透明樹脂基材上に、印刷法を用いて同じ透明導電材料を2回以上塗布することで、透明電極と前記透明電極の外周の少なくとも一部に前記透明電極よりも厚みが厚い前記透明電極と同じ材料からなる疑似補助電極を、前記引出配線の一部を覆うように形成する工程Gと、
を備えることを特徴とする透明電極静電容量センサの製造方法。
【請求項11】
前記工程Fにおいて、引出配線が0.1μm以上3μm以下の厚みに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の透明電極静電容量センサの製造方法。
【請求項12】
前記工程Fの後に、前記引出配線の前記一部を覆うようにカーボン層を形成する工程F1を備えることを特徴とする請求項1又は請求項1に記載の透明電極静電容量センサの製造方法。
【請求項13】
前記工程Gは、前記透明樹脂基材上の前記透明電極及び前記疑似補助電極を形成する位置に、前記透明導電材料を1回以上塗布して第1層を形成する第1工程と、
前記第1層上の前記疑似補助電極を形成する位置に、前記透明導電材料を1回以上塗布する第2工程とからなることを特徴とする請求項1から請求項1のいずれか1項に記載の透明電極静電容量センサの製造方法。
【請求項14】
前記工程Gは、前記透明樹脂基材上の前記疑似補助電極を形成する位置に、前記透明導電材料を1回以上塗布して第1層を形成する第1工程と、
前記第1層及び前記透明樹脂基材上の前記透明電極を形成する位置に、前記透明導電材料を1回以上塗布する第2工程とからなることを特徴とする請求項1から請求項1のいずれか1項に記載の透明電極静電容量センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明電極静電容量センサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチ・センサの検出方式の1種として、画面に接触する指に流れる電気にセンサが反応して、その指の動きを演算命令に変換する静電容量方式がある。この静電容量方式を用いた静電容量センサとして、検出感度のばらつきを抑えるために、透明電極の外周の少なくとも一部に、透明電極よりも電気抵抗が低い補助電極を設けたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、特許文献1に記載のセンサは、その製造工程中に透明電極と補助電極との位置ずれが生じた場合に、透明電極と補助電極との導通面積がずれ量に応じてばらつくおそれがあるが、透明電極と補助電極との導通面積がずれ量に応じてばらつくのを防ぐために透明電極と補助電極とを高精度に位置決めしようとすると、製造工程が煩雑となってしまうという問題があった。この問題を克服するために、補助電極により覆われない透明電極の輪郭線上に光透過性レジストの輪郭線を位置させることにより、補助電極と透明電極との位置決め精度を高める方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−133673号公報
【特許文献2】特開2012−178149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、補助電極の材料として、特許文献1の発明では、銀インクなどの低抵抗の導電性金属材料を含む導電性ペーストや金属膜、特許文献2の発明では、銀、銅、あるいは金などの金属粒子を含有するインクや、カーボンまたはグラファイトを含有するインク、金属箔などを用いている。このように透明電極材料と異なる材料から補助電極を形成する場合、透明電極外周部の補助電極部が目立って意匠性が低下する、透明電極と補助電極の間で大きな段差が形成され、それら電極をカバーするカバー層を形成するときに気泡が発生しやすくなりそのために寄生容量が増加する、補助電極部により透明電極のビューエリアが小さくなるといった問題が内在する。
また、銀や金といった材料は価格が高いので、これらを用いると材料コストが上昇するという問題もある。
【0006】
本発明は、上記問題を鑑みなされたもので、意匠性に優れ、広いビューエリアが確保され、さらに、透明電極と補助電極の間の段差を低減することにより、気泡発生が防止され、寄生容量が低減された、信頼性に優れるとともに材料コストを低減した透明電極静電容量センサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の透明電極静電容量センサの特徴は、透明樹脂基材と、透明樹脂基材上に設けられた少なくとも1以上の透明電極と、透明電極の外周の少なくとも一部に設けられ、透明電極と同じ材料からなる透明電極よりも厚さが厚く形成された疑似補助電極と、透明樹脂基材上に設けられ、疑似補助電極と接続される引出配線と、を備え、引出配線が、金属蒸着薄膜からなることを要旨とする。
【0008】
引出配線が0.1μm以上3μm以下の厚みに形成されているのが好ましい。
【0009】
引出配線には、疑似補助電極と接続される部分にカーボン層が設けられ、引出配線と疑似補助電極との接続がカーボン層を介して行われることが好ましい。
【0010】
疑似補助電極は、透明電極の厚さに6μmを加えた厚さを超えない範囲で、透明電極の厚さよりも厚く形成されるのが好ましい。
【0011】
疑似補助電極は、透明電極の厚さに4μmを加えた厚さを超えない範囲で、透明電極の厚さよりも厚く形成されるのがさらに好ましい。
【0012】
疑似補助電極は透明電極の外周の1/7以上の範囲に設けられるのが好ましい。
【0013】
本発明の透明電極静電容量センサの製造方法の特徴は、透明樹脂基材上に金属蒸着薄膜からなる引出配線を形成する工程Aと、透明樹脂基材上にコーヒーリング現象を起こす粘度を有する透明導電材料を一部が前記引出配線の一部と重なるように設ける工程Bと、透明導電材料をコーヒーリング現象が起きる乾燥条件で乾燥硬化させ、透明電極と前記透明電極の外周に前記透明電極よりも厚さが厚い疑似補助電極とを形成する工程Cと、を備えることを要旨とする。
【0014】
本発明の透明電極静電容量センサの製造方法は、上記工程Aにおいて、引出配線が0.1μm以上3μm以下の厚みに形成されるようにすることが好ましい。
【0015】
本発明の透明電極静電容量センサの製造方法は、上記工程Aの後に、引出配線の上記一部を覆うようにカーボン層を形成する工程A1を備えるのが好ましい。
【0016】
本発明の透明電極静電容量センサの製造方法は、上記工程Cの後に、疑似補助電極上の少なくとも一部の厚みを厚くする工程C2を備え、工程C2は、同じ透明導電材料からなる層を、疑似補助電極上の少なくとも一部に印刷法で形成する工程とすることができる。
【0017】
本発明の透明電極静電容量センサの他の製造方法の特徴は、透明樹脂基材上に金属蒸着薄膜からなる引出配線を形成する工程Fと、透明樹脂基材上に、印刷法を用いて同じ透明導電材料を2回以上塗布することで、透明電極と透明電極の外周の少なくとも一部に透明電極よりも厚みが厚い透明電極と同じ材料からなる疑似補助電極を、引出配線の一部を覆うように形成する工程Gと、を備えることを要旨とする。
【0018】
本発明の透明電極静電容量センサの他の製造方法において、引出配線が0.1μm以上3μm以下の厚みに形成されることが好ましい。
本発明の透明電極静電容量センサの他の製造方法は、工程Fの後に、引出配線の上記一部を覆うようにカーボン層を形成する工程F1を備えるのが好ましい。
【0019】
本発明の透明電極静電容量センサの他の製造方法において、工程Gは、透明樹脂基材上の透明電極及び疑似補助電極を形成する位置に、透明導電材料を1回以上塗布して第1層を形成する第1工程と、第1層上の疑似補助電極を形成する位置に、透明導電材料を1回以上塗布する第2工程とからなるものとしてもよい。
【0020】
本発明の透明電極静電容量センサの他の製造方法において、工程Gは、透明樹脂基材上の疑似補助電極を形成する位置に、透明導電材料を1回以上塗布して第1層を形成する第1工程と、第1層及び透明樹脂基材上の透明電極を形成する位置に、透明導電材料を1回以上塗布する第2工程とからなるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、意匠性に優れ、広いビューエリアが確保され、さらに、透明電極と補助電極の間の段差を低減することにより、気泡発生が防止され、寄生容量が低減された、信頼性に優れるとともに材料コストを低減した透明電極静電容量センサ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(a)本発明の実施形態に係る透明電極静電容量センサの上面図である。 (b)図1(a)のA−A矢視断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るコーヒーリング(フレーミング)現象を説明する図である。
図3】(a)従来の透明電極静電容量センサの上面図である。 (b)図3(a)のD−D矢視断面図である。
図4】(a)本発明の実施形態に係る透明電極静電容量センサの上面図である。 (b)図4(a)のB−B矢視断面図である。
図5】(a)本発明の実施形態に係る透明電極静電容量センサの上面図である。 (b)図5(a)のC−C矢視断面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造工程のフロー図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造工程のフロー図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造工程の変形例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)について詳細に説明する。
【0024】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る透明電極静電容量センサについて説明する。図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る透明電極静電容量センサの上面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A矢視断面図である。
【0025】
透明電極静電容量センサ1は、透明樹脂基材11と、透明樹脂基材11の片面に設けられた透明電極12aと、透明電極12aの外周部に設けられた疑似補助電極12bと、疑似補助電極12bに一端(一部)が接続され、疑似補助電極12bと透明樹脂基材11の間に配置された引出配線13と、図1(b)の上面に設けられた粘着層14と、を備える。
【0026】
透明樹脂基材11は、光透過性を有する絶縁性材料によって形成されたフィルム状、シート状、若しくは板状の部材である。透明樹脂基材11の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル系樹脂などの硬質材料や、熱可塑性ポリウレタン、熱硬化性ポリウレタン、シリコーンゴムなどの弾性材料からなるものを好適に用いることができる。
【0027】
より具体的には、透明樹脂基材11の材料として、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリブチレンテレフタレート(PET)、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)などの樹脂材料を好適に用いることができる。これらの樹脂材料の中でも、強度等の点から、透明樹脂基材11の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)が好ましい。また、透明基材の材料として、ガラス、透明金属酸化物を採用することもできる。
透明樹脂基材11の厚さは10μm以上〜200μm以下であることが好ましい。透明樹脂基材11の厚さが10μm以上であれば、透明樹脂基材11が破断しにくく、透明樹脂基材11の厚さが200μm以下であれば、透明電極静電容量センサ1を薄くできる。
【0028】
透明電極12aは、ITO(酸化インジウムスズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)や、ポリチオフェン、ポリアニリンなどの透明性を有する導電性ポリマーや、Agナノワイヤを分散したポリマーといった光透過性を有する導電性材料を用いて、印刷や塗布などにより透明樹脂基材11上に矩形状に形成されている。
なお、透明電極自体の形状は、矩形状に限定される必要はなく、円形や楕円形といった形状であっても良いので、この場合は、印刷や塗布などにより透明樹脂基材11上に円形や楕円形に形成される。
【0029】
導電性ポリマーの場合、透明電極12aの材料としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)等を好適に用いることができる。水溶性高分子にポリスチレンスルホン酸(PSS)を用いた水分散ポリチオフェン誘導体(PEDOT/PSS)は、水溶性であるために、単純な塗布工程で導電性ポリマーの塗膜を形成できるので好ましい。
【0030】
透明電極12aが印刷や塗布によって形成される場合、透明電極12aを構成する導電性塗膜の厚さは0.05μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上1μm以下がより好ましい。導電性塗膜の厚さが0.05μm以上であれば、導電性を好適に確保でき、0.1μm以上であれば検出感度として十分な表面抵抗である600Ω/□以下が安定的に得られる。また導電性塗膜の厚さが5μm以下であれば、容易に塗膜を形成できる。
【0031】
引出配線13は、透明電極12aよりも低い電気抵抗を有するCu、Al、Ni、Ag又はAu等やそれらの合金からなる金属蒸着薄膜で構成される。
また、上記のような金属を積層したような積層構造、例えば、下地をCuとして、その上にNiの中間層を設け、その上にコート層としてAuを設けるようにしてもよい。
引出配線13の厚さは0.1〜3μmであり、好ましくは、0.1〜1μmであり、更に好ましくは0.1〜0.5μmである。
厚さが0.1μm以上であれば透明電極12aの抵抗値を減衰せずに安定した導電性を確保することができ、3μm以下であれば透明電極12aとの段差も充分小さく、1μm以下更には0.5μm以下であれば段差はより小さい。
【0032】
従来技術では、検出感度のばらつきを抑制するために引出配線に用いられるのと同一又は類似の材料抵抗を有する材料を補助電極材料とし、この補助電極を引出配線と透明電極との間に介在させている。抵抗値や意匠性等といった全体の状態を考慮して銀の補助電極とされる場合が多く、この銀の補助電極を形成するために、銀ペーストが使用される。この銀ペーストは高精細印刷のために銀粒子と樹脂バインダの固形分比が高く、溶剤等の揮発分が少ない材料である。このため印刷後の厚みの変化が少ない。一般的なSUSメッシュによるスクリーン印刷版を用いたスクリーン印刷法では、通常、40μmから50μmの紗厚があり、さらに、紗厚を小さくすることを考えても、量産性を考慮すると、その1/4から1/5程度が限界となる。この紗厚によって印刷時の銀ペーストの塗布厚が決まり、銀ペーストは乾燥等の工程において、上述の通り、揮発成分が少ないため厚みがあまり薄くできない。
また、さらに、補助電極を薄くするために、薄い超ハイメッシュなどで紗厚を薄くすることができなくはないが、この場合、非常に取り扱いがデリケートになりハンドリング性が悪くなる。これらのことから、量産性を考慮すれば、透明電極と補助電極との間の段差を十分に小さくすることが難しい。
【0033】
一方、本発明では、引出配線13と透明電極12aとの間に、透明電極12aと同じ材料からなり、透明電極12aよりも厚みを厚くした疑似補助電極12bを介在させることで検出感度のばらつきを抑制している。つまり、本発明では、透明電極12aと疑似補助電極12bとを同じ材料で形成しているため、材料の組成上の電気抵抗は同じである。しかしながら、図1(b)に示したように、疑似補助電極12bを透明電極12aよりも段差t分だけ厚くしているので疑似補助電極12b部分としての電気抵抗は透明電極12a部分の電気抵抗よりも低くなる。但し、段差が大きくなると、気泡の問題があることや、透明電極12aと同じ材料であっても厚みの増加により透明性が低下するため意匠性の低下につながるので、段差tは、6μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、3μm以下がもっとも好ましい。
ここで、透明電極材料は、一般に、薄く印刷や塗布を行うことができる材料であることから、疑似補助電極12bの部分が透明電極12aより厚みがあるものとされるといっても、従来の銀ペーストなどにより形成される補助電極と比較すれば、十分に薄く構成することが可能であり、このため透明電極12aと疑似補助電極12bとの段差も十分に小さくすることができる。
【0034】
粘着層14は、透明電極12a、疑似補助電極12b、及び引出配線13を覆うように形成される保護等のための層である。粘着層14は、光透過性を有する樹脂フィルムの片面に粘着剤を有し、その粘着剤によって、透明電極12a、疑似補助電極12b、及び引出配線13上に添着された層である。また、粘着層14を、たとえば、感光性ドライフィルム、UV硬化型レジスト材、加熱硬化型レジスト材などを用いて形成することもできる。
【0035】
粘着層14を構成する樹脂フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、等の樹脂を材料として構成される。また、粘着層14は、樹脂フィルムに代えて、又は樹脂フィルムに加えて、ガラスや透明金属酸化物などによるフィルムを備えていてもよい。また、粘着剤の具体例としては、アクリル系樹脂を挙げることができる。
【0036】
ここで、従来技術の透明電極静電容量センサの構成について説明する。図3(a)は、従来技術の透明電極静電容量センサの上面図であり、図3(b)は図3(a)のD−D矢視断面図である。
【0037】
従来技術の透明電極静電容量センサ4は、透明樹脂基材41と、透明樹脂基材41の片面に設けられた矩形の透明電極42と、透明電極42の矩形の1辺に設けられた補助電極43aと、補助電極43aに一端が接続された引出配線43bと、図3(b)の上面に設けられた粘着層44と、を備える。
【0038】
図3(a)に示した従来技術の透明電極静電容量センサの上面図と、図1(a)に示した第1実施形態の透明電極静電容量センサの上面図とは、従来技術の透明電極静電容量センサ4では透明電極42の矩形の1辺に補助電極43aが設けられているのに対し、第1実施形態の透明電極静電容量センサ1では透明電極12aの外周に疑似補助電極12bが設けられている。
【0039】
従来技術の透明樹脂基材41、透明電極42、粘着層44は、順に本発明の第1実施形態の透明樹脂基材11、透明電極12a、粘着層14と同様の材料から形成されている。
【0040】
従来技術の透明電極静電容量センサ4と第1実施形態の透明電極静電容量センサ1の主たる差異は次のようになる。第1実施形態の透明電極静電容量センサ1では、透明電極12aと疑似補助電極12bをPEDOT/PSS等の同じ材料から形成し、金属蒸着薄膜からなる引出配線13と疑似補助電極12bとの接続部を疑似補助電極12bと透明樹脂基材11の間に配置している。一方、従来技術の透明電極静電容量センサ4では、透明電極42をPEDOT/PSS等から形成し、補助電極43aを引出配線43bと同じ、電気抵抗の低いAgペースト等から形成し、その補助電極43aにAgペーストなどから形成される引出配線43bが接続されている。
【0041】
従来技術の透明電極静電容量センサ4では、補助電極43aを、Agペーストを印刷して形成しているが、前述した通り、この場合、量産性を持って補助電極43aを薄くしていくには、技術的に限界が生じる。
図3(b)に示したように、補助電極43aは透明電極42より段差tの分だけ厚く設けられている。補助電極43aにAgペーストを、透明電極42にPEDOT/PSSを用いた場合、上記の通り、量産性を考えると、段差tを7μm以下に形成することは、技術的に難しい。
【0042】
また、透明電極42と異なる材料から形成した補助電極43aを備えた従来技術の透明電極静電容量センサ4では、タッチパネル等に使用したときに、補助電極43aの部分が目立って、意匠性が低下するという問題があった。さらに、透明電極42と補助電極43aの段差が7μmを超えるほどに大きいので、粘着層44を被覆するときに気泡が生じて寄生容量が増大してしまうという問題があった。
さらに、従来技術では、抵抗値や意匠性等といった全体の状態を考慮して銀のような高価な材料が補助電極に用いされることが多く、この場合、材料コストも高くなるという問題があった。
【0043】
これに対し、本発明の第1実施形態においては、透明電極12aと疑似補助電極12bを同じPEDOT/PSSを用いて構成しているため、タッチパネル等に使用したときに、疑似補助電極12bの部分が目立つことが少なく、従って意匠性の面で良好である。また、前述したように、一般に、透明電極に用いられる材料は薄く形成することが可能であるので、疑似補助電極12bを薄く形成できる。
【0044】
さらに、図1(b)に示すように、引出配線13と疑似補助電極12bとは、接続部で重なることになる。そこで、引出配線13を従来のようにAgペーストを用いて形成するのではなく、Cuなどの金属蒸着薄膜で形成するようにし、その厚さが0.1μm以上3μm以下と極めて薄い引出配線13としている。このため、引出配線13の厚みの影響で、引出配線13と疑似補助電極12bとが重なることになる接続部に接続部以外の疑似補助電極12bと比較して大きな段差が発生することを抑制することが可能である。この結果、接続部も含めた疑似補助電極12bの段差t図1(b)参照)は、6μm以下と小さくできるので、この段差に起因して粘着層14を被覆する時に発生する気泡の問題が解消され、寄生容量が低減される。
加えて、銀のような高価な材料を使用するのに比べて材料コストを低減することが可能である。
【0045】
また、図1(a)では、疑似補助電極12bは、透明電極12aの外周全周にわたって形成されているが、本発明の透明電極静電容量センサ1をタッチパネル等に応用した場合、透明電極12aよりも厚さが厚い疑似補助電極12bの長さは、透明電極12aの外周の周長の1/7以上あれば十分であることが確認されている。疑似補助電極部の面積を減らすことにより、広いビューエリアが確保される。
【0046】
次に、本発明の第1実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造方法について図1(a)、(b)図2図6により説明する。図6は、本発明の実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造工程を示すフロー図である。
【0047】
<ステップ1(S1)>
ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明ポリマーの透明樹脂基材11の片面全面に真空蒸着法等の蒸着法によりCu、Al、Ag又はAu等の金属蒸着膜を厚さ0.1〜3μm堆積させた金属蒸着薄膜付き透明樹脂基材フィルムにドライエッチング又はウエットエッチングでエッチングを施して金属蒸着薄膜を部分的に除去して引出配線13を形成する。
【0048】
<ステップ2(S2)>
透明樹脂基材11のステップ1(S1)で形成した引出配線13の側の表面に、インクジェット印刷又はスクリーン印刷により、PEDOT/PSS等の透明導電材料の透明電極12aを、引出配線13の端部(一部)を覆うように形成する。
【0049】
<ステップ3(S3)>
引出配線13及び透明電極12aを片面に備えた透明樹脂基材11に低温乾燥処理を施して、PEDOT/PSS等からなる透明電極12aにコーヒーリング(フレーミング)現象を起させ、図1(b)の段差tを生じるように、透明電極12aよりも厚さが厚い疑似補助電極12bを外周に形成する。ここで、図2によりコーヒーリング(フレーミング)現象について説明する。
【0050】
図2は、本発明の第1実施形態に係るコーヒーリング(フレーミング)現象を説明する図である。治具板15上に配置したポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる透明樹脂基材11の片面に、PEDOT/PSS等の塗料をインクジェット印刷又はスクリーン印刷により塗工して透明電極12aを形成した後、約60℃で低温乾燥硬化させると、PEDOT/PSS等の塗料は外周部へ移動する。これによって外周部分の厚みを厚くすることができる。この現象は、液体物が乾燥する過程で見られるコーヒーリング(フレーミング)と呼ばれる現象である。その後、約120℃で乾燥焼成を行い、透明電極12aの外周に透明電極12aと同じ材料からなる厚みの厚い疑似補助電極12bを有する部分の形成が完了する。
【0051】
上記の手法によれば、透明電極12aにPEDOT/PSSを用い、低温乾燥処理によってコーヒーリング現象を起させることで、透明電極12aと疑似補助電極12bを形成しているので、透明電極12aよりも厚さが厚いながらも、その厚みの差自体は十分に小さい疑似補助電極12bを形成することができる。具体的には、図1(b)の段差tは、6μm以下、さらには、3μm以下に形成することが可能である。
【0052】
PEDOT/PSS等からなる透明電極12aにコーヒーリング(フレーミング)現象を起させ、外周に疑似補助電極12bを形成すると、厚さ0.1〜0.3μmの金属蒸着薄膜からなる引出配線13の端部(一部)は、図1(b)に示したように、疑似補助電極12bと透明樹脂基材11の間に配置される。
【0053】
なお、PEDOT/PSS等からなる透明電極12aにコーヒーリング(フレーミング)現象を起させ、外周に疑似補助電極12bを形成した後に、さらに、この疑似補助電極12bの部分にPEDOT/PSS等の同じ材料をインクジェット印刷又はスクリーン印刷で塗布することにより、段差tを調製することもできる。この場合でも、透明電極に使用される材料は、従来の補助電極に使用されているような材料に比べ、比較的薄く形成可能な材料が多いため、透明電極12aとの段差を小さく抑えつつ、かつ、透明電極12aよりも厚みがある疑似補助電極12bとすることができる。なお、この場合でも、十分に3μm以下の段差に留めることが可能である。
【0054】
<ステップ4(S4)>
図1(a)、(b)に示したように、透明樹脂基材11、透明電極12a、疑似補助電極12b及び引出配線13を覆うようにして、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明ポリマーを被覆して粘着層14を形成する。
【0055】
なお、図1(b)に示した配置では、透明樹脂基材11上に形成された引出配線13の端部(一部)上には、PEDOT/PSS等の透明導電性塗料からなる疑似補助電極12bが引出配線13の端部に直接接触して覆うように配置されている。この透明導電性塗料の溶媒は酸性であるため、金属蒸着薄膜からなる引出配線13の端部(一部)が酸化される可能性がある。そこで、図4(a)、(b)に示したように、引出配線23bの端部(一部)と疑似補助電極22bの間に印刷法等によってカーボン層23aを形成し、引出配線23bの端部(一部)と疑似補助電極22bとが直接接触しないようにすることで酸化されることを回避し、この接続部の信頼性を高めることができる。
【0056】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る透明電極静電容量センサの構成及び材料は、図1(a)、(b)を参照しながら説明した第1実施形態に係る透明電極静電容量センサの構成及び材料と同様であり、同様の部分については説明を省略する。第2実施形態に係る透明電極静電容量センサと第1実施形態に係る透明電極静電容量センサとは製造方法の点で主に異なるので、以下では製造方法について主に説明する。
【0057】
本発明の第2実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造方法について図1(a)、(b)、及び図7を参酌しながら説明を行う。図7は、本発明の第2実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造工程を示すフロー図である。
【0058】
<ステップ21(S21)>
ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明ポリマーの透明樹脂基材11の片面前面に真空蒸着法等の蒸着法によりCu、Al、Ag又はAu等の金属蒸着膜を厚さ0.1〜3μm堆積させた金属蒸着薄膜付き透明樹脂基材フィルムにドライエッチング又はウエットエッチングでエッチングを施して金属蒸着薄膜を部分的に除去して引出配線13を形成する。
【0059】
<ステップ22(S22)>
透明樹脂基材11のステップ1(S1)で形成した引出配線13の側の表面に、インクジェット印刷又はスクリーン印刷により、PEDOT/PSS等の透明導電材料の透明電極12aを、引出配線13の端部(一部)を覆うように形成する。
【0060】
<ステップ23(S23)>
透明電極12aの外周の少なくとも一部に、インクジェット印刷又はスクリーン印刷で透明電極12aと同じPEDOT/PSS等の透明導電材料を1回以上塗布(重ね塗り)し、図1(b)の段差tを生じるように、透明電極12aよりも厚さが厚い疑似補助電極12bを形成する。
【0061】
<ステップ24(S24)>
図1(a)、(b)に示したように、透明樹脂基材11、透明電極12a、疑似補助電極12b及び引出配線13を覆うようにして、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明ポリマーを被覆して粘着層14を形成する。
【0062】
次に、本発明の第2実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造方法の変形例について図1(a)、(b)及び図8を参照しながら説明を行う。図8は、本発明の第2実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造工程の変形例を示すフロー図である。
【0063】
<ステップ31(S31)>
ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明ポリマーの透明樹脂基材11の片面前面に真空蒸着法等の蒸着法によりCu、Al、Ag又はAu等の金属蒸着膜を厚さ0.1〜3μm堆積させた金属蒸着薄膜付き透明樹脂基材フィルムにドライエッチング又はウエットエッチングでエッチングを施して金属蒸着薄膜を部分的に除去して引出配線13を形成する。
【0064】
<ステップ32(S32)>
PET等からなる透明樹脂基材11の片面の疑似補助電極12bを形成する部分に、インクジェット印刷又はスクリーン印刷により、PEDOT/PSS等を1回以上塗布する。
【0065】
<ステップ33(S33)>
疑似補助電極12bの部分及び透明電極12aの部分の両方にインクジェット印刷又はスクリーン印刷により、PEDOT/PSS等を1回以上塗布する。疑似補助電極12bの部分はPEDOT/PSS等の重ね塗り状態となり、図1(b)の段差tが形成される。
【0066】
<ステップ34(S34)>
図1(a)、(b)に示したように、透明樹脂基材11、透明電極12a、疑似補助電極12b及び引出配線13を覆うようにして、PET等の透明ポリマーを被覆して粘着層14を形成する。
【0067】
本発明の第2実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造方法、その変形例のいずれの方法によっても、図1(b)の段差tは6μm以下とすることができ、さらに、3μm以下とすることも可能である。
また、本発明の第2実施形態に係る透明電極静電容量センサの製造方法においても、引出配線13の疑似補助電極12bが設けられる部分に、カーボン層を設けるようにすることで、引出配線13が酸化することを避けることができ、接続部の信頼性の高い透明電極静電容量センサを製造することができる。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
図1(a)、(b)の構成で、ポリエチレンテレフタレート(PET)の透明樹脂基材11の上に、Cuの金属蒸着薄膜の引出配線13を形成した後、PEDOT/PSSを用いて透明電極12a及び疑似補助電極12bを形成した。
【0069】
厚さ50μmのPETフィルム上に全面にCuを蒸着してからエッチングを施して、Cuの金属蒸着薄膜の引出配線13を形成した。さらに、引出配線13の末端部約1mmだけ重なるように、インクジェット装置を用いて粘度約10CpのPEDOT/PSS溶液を所定のパターンで塗布した。それを約60℃の熱板上でゆっくり乾燥させた後120℃で約5分焼成することでコーヒーリング(フレーミング)現象を起させ、透明電極12aの外周部にPEDOT/PSSの疑似補助電極12bを形成した。次いで、粘着層14を全面に形成して透明電極静電容量センサ1を得た。
【0070】
(実施例2)
図4(a)、(b)の構成で、PETの透明樹脂基材21の上に、Cuの金属蒸着薄膜の引出配線23bを形成し、さらに引出配線23bの端部を覆うようにカーボン層23aを形成した後、PEDOT/PSSを用いて透明電極22a及び疑似補助電極22bを形成した。
【0071】
厚さ50μmのPETフィルム上に全面にCuを蒸着してからエッチングを施して、Cuの金属蒸着薄膜の引出配線23bを形成し、その引出配線23bの端部約2mmにPAD印刷法によりカーボン層23aを形成した。さらに、カーボン層23aの端部約1mmだけ重なるように、インクジェット装置を用いてPEDOT/PSS溶液を塗布した。このとき外周部は0.5mmの幅で厚肉となるように塗布した。そして、120℃で約5分焼成することで透明電極22a及び疑似補助電極22bを形成した。次いで、粘着層24を全面に形成して透明電極静電容量センサ2を得た。
【0072】
(実施例3)
図5(a)、(b)の構成で、PETの透明樹脂基材31の上に、Cuの金属蒸着薄膜の引出配線33a、33bを形成し、Agナノワイヤ分散PEDOT/PSSを用いて透明電極32a、32c及び疑似補助電極32b、32dを形成した。
【0073】
厚さ100μmのPETフィルム上に全面にCuを蒸着してからエッチングを施して、Cuの金属蒸着薄膜の引出配線33a、33bを形成した。さらに、引出配線13の末端部約1mmだけ重なるように、インクジェット装置を用いてAgナノワイヤ分散PEDOT/PSS溶液を送信電極と受信電極が一体化した所定のパターンで外周部の0.5mmの幅について厚肉となるように塗布し、低温で仮焼成を行った後、UV硬化させた。その後、ドライエッチングを施してAgナノワイヤ分散PEDOT/PSSからなる送信電極32aと疑似補助電極32b、及び受信電極32cと疑似補助電極32dを分割形成した。次いで、粘着層34を全面に形成して透明電極静電容量センサ3を得た。
【0074】
実施例1〜3から、以下の(イ)、(ロ)の効果が得られることが明らかとなった。
(イ)実施例1、3においては、PETフィルム上にあらかじめ設けたCu蒸着薄膜を引出配線として用いることで、引出配線と疑似補助電極との接続部も含め疑似補助電極に極めて段差の少ない引出配線を高精細に施すことが可能になり、ビューエリア割合が大きく、屈曲性が非常に良い透明電極静電容量センサを製造できた。
【0075】
(ロ)実施例2においては、実施例1のCu蒸着薄膜とPEDOT/PSS疑似補助電極の間にカーボン層を介在させることにより、引出配線が酸化することを避けることができ、実施例1よりさらに接続部の信頼性の高い透明電極静電容量センサを製造することができた。
【0076】
なお、疑似補助電極は、PEDOT/PSSの場合、その厚み等によっても変わるが、例えば、表面抵抗を約200Ω/□とすることができる。
一方、Agナノワイヤ分散PEDOT/PSSの場合には、さらに、抵抗値を低くすることができ、Agナノワイヤ分散PEDOT/PSSを透明電極に使用すると、透明電極の表面抵抗を、例えば、約80Ω/□とすることができ、疑似補助電極に使用すると、疑似補助電極の表面抵抗を、例えば、約40〜50Ω/□とすることができる。
また、疑似補助電極は、透明電極よりも0.1μm以上、0.2μm以上、さらには、0.5μm以上厚い厚みを有するように形成されることが好適であり、このようにすることで、透明電極部分と疑似補助電極部分とが同じ材料でありながら、疑似補助電極部分の電気抵抗を低くできる。
【0077】
上記で説明してきたとおり、本発明は、従来技術と異なり、透明電極の外周の一部に設ける補助電極を透明電極と同じ材料からなる疑似補助電極で形成している。
このため、従来の補助電極に比べ、透明性があり目立たないので意匠性に優れる。
また、補助電極に銀などの高価な材料を使用しているものと比較すると、疑似補助電極は透明電極と同じ材料であるため材料コストを抑えることができる。
さらに、透明電極と同じ材料を用いて構成していることで透明電極よりも厚みが厚くされるといっても、従来の補助電極に用いられている材料と比較すれば、疑似補助電極は、かなり薄く形成できるので透明電極と疑似補助電極との段差は、極めて小さく、このため段差に起因する粘着層形成時の気泡の発生が抑制され、寄生容量の低減が可能である。
加えて、スクリーン印刷やインクジェット印刷で形成する場合には、疑似補助電極を形成する範囲に対する自由度も高いので疑似補助電極の面積を減らし、ビューエリアの拡大も好適に行うことができる。
【0078】
なお、上記でも説明してきたとおり、透明電極に使用される材料を何度か印刷することで透明電極と疑似補助電極が形成される場合がある。
この場合、各印刷(塗布)毎に用いられる材料は、基本的に同じ材料(同じ透明電極用材料)を用いるが、例えば、塗布し、乾燥工程が終わるまでの間に材料が塗布していないところに流れ出たりすることを防止するために粘度を調節する必要がある場合などがあり、このときには適切な粘度となるように希釈剤などの分量を調整しても良い。
希釈剤などは、基本的に、乾燥工程などで気化し、ほとんど残らないが微量に成分が残ることもあり得る。
しかしながら、この程度の差は、同じ材料と解されるものである。
【0079】
また、上記の具体的な説明は、インクジェット印刷法やスクリーン印刷法を例示して行ってきたが、それ以外にもPAD印刷法やフレキシ印刷法なども用いることができ、一般的な印刷法を用いることが可能であることは明らかである。
さらに、上記では、導電性ポリマーを形成するPEDOT/PSS溶液にAgナノワイヤを分散させた場合を示したが、Agナノワイヤ自体が導電性を発揮するので、導電性でないポリマーを形成するような溶液でもよい。
【0080】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0081】
1、2、3、4 透明電極静電容量センサ
11、21、31、41 透明樹脂基材
12a、22a 透明電極
12b、22b、32b、32d 疑似補助電極
13、23b、33b、43b 引出配線
14、24、34、44 粘着層
15 治具板
23a カーボン層
32a 送信側透明電極
32c 受信側透明電極
43a 補助電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8