特許第6184933号(P6184933)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184933
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】炉底分割型転炉
(51)【国際特許分類】
   C21C 5/48 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   C21C5/48 A
   C21C5/48 E
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-228720(P2014-228720)
(22)【出願日】2014年11月11日
(65)【公開番号】特開2016-89258(P2016-89258A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2016年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501120122
【氏名又は名称】スチールプランテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】種村 一輝
(72)【発明者】
【氏名】経塚 敏勝
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 佑馬
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−193433(JP,A)
【文献】 特公昭55−048568(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 5/00
C21C 5/28−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割可能な炉底ユニットが炉底に装着された炉体を有する炉底分割型転炉であって、
前記炉底ユニットは、外側部分を構成する第1の炉底部材と、内側部分を構成し、前記第1の炉底部材に分割可能に装着された少なくとも一つの第2の炉底部材とを有し、
前記第1の炉底部材および前記第2の炉底部材は、それぞれ攪拌ガスを炉内に吹きだすための第1の羽口群および第2の羽口群を備え、
前記第1の炉底部材と前記第2の炉底部材とは、フランジ部により締結され、
前記第1の羽口群に対する第1の管寄は、前記第1の炉底部材のフランジ部と一体に設けられていることを特徴とする炉底分割型転炉。
【請求項2】
前記第1の管寄は、前記第1の炉底部材のフランジ部のウェブに沿って環状に設けられていることを特徴とする請求項に記載の炉底分割型転炉。
【請求項3】
前記第1の管寄は、前記第1の炉底部材のフランジ部のフランジの上方に配置されていることを特徴とする請求項または請求項に記載の炉底分割型転炉。
【請求項4】
前記第2の炉底部材が、前記炉底の中央部分にあり、
前記第2の羽口群に対する第2の管寄は、前記第2の炉底部材の中心部分に設けられていることを特徴とする請求項から請求項のいずれか一項に記載の炉底分割型転炉。
【請求項5】
前記2の管寄に対する前記攪拌ガスの供給は、前記第1の管寄から行われ、
前記第1の管寄は、前記第1の炉底部材の、前記第2の炉底部材側にあるフランジ部に設けられていることを特徴とする請求項に記載の炉底分割型転炉。
【請求項6】
前記第1の管寄と前記第2の管寄とを接続する配管は、前記第1の炉底部材の、前記第2の炉底部材側にあるフランジ部のウェブ、および前記第2の炉底部材の、前記第1の炉底ユニット側にあるフランジ部のウェブを貫通して配置されていることを特徴とする請求項に記載の炉底分割型転炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉底分割型転炉に関する。
【背景技術】
【0002】
転炉吹錬は、溶銑が貯留された炉体内部に酸素を供給することにより行われる。このとき、炉体内部の溶銑を攪拌して転炉の処理能力を向上させる観点、および溶銑とともに炉体内に装入される鉄スクラップを速やかに溶解させる観点から、炉体底部からガスを吹き込んで溶銑を攪拌する構造の炉体が一般的に用いられている。
【0003】
転炉の炉体には、耐火物(レンガ)が内張りされているが、耐火物は転炉の操業によって経時的に損耗する。耐火物の損耗は、炉内において均一でなく、攪拌ガスを流す部位および鉄スクラップを装入する際に鉄スクラップと接触する部位を含む炉底部の損耗が速い。
【0004】
耐火物の損耗が限界に達すると、転炉の全範囲にわたって耐火物(レンガ)の交換、すなわちレンガを積み直す築炉工事が行われる。この際、損耗が限界に達していないレンガも解体され、新しいレンガが積み直される。また、このような転炉の炉体全範囲にわたる築炉工事は、施工に長時間を要し、その期間中は、転炉の操業ができない。
【0005】
そのため、転炉炉体の炉底を分割可能に設け、このような炉底を複数個用意しておくことが行われている。これにより、転炉の炉体に装着されていない炉底ユニットに、予めオフラインで新しいレンガを積んでおくことが可能となり、転炉の炉体全範囲のレンガ積み時間を短縮することができ、その短縮時間分、転炉の操業時間を増加させることができる。そして、予めオフラインで積んでおくレンガの数を多くし、築炉工事において積み直すレンガの数を減じるために、炉底ユニットを極力大きくする設計指針も一般的になっている。
【0006】
このように、耐火物の損耗が速い炉底部については炉底ユニットとして分割して設け、炉底ユニットを交換可能なように構成した炉底分割型転炉は特許文献1、2に開示されている。このように炉底ユニットを交換可能にすることにより、上述したような炉体全範囲のレンガ積時間を短縮する効果のみならず、炉底ユニットの耐火物のみが部分的に損耗した際に、炉底ユニットのみを交換することにより、炉体全体の耐火物をより均一に損耗させた状態まで使い切った後に、築炉工事を行うようにすることができ、築炉工事自体の頻度を減少させることができるといった効果も奏することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平1−58647号公報
【特許文献2】特開平8−60222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、炉底ユニットの大きさが大きくなればなるほど、炉底ユニットを取り付ける際の施工難易度が高くなり、かつ、交換時間も長くなってしまう。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、分割可能な炉底ユニットの大きさを極力大きくしつつ、炉底ユニットの交換の際に難易度の高い長時間の作業を軽減することができる炉底分割型転炉を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の(1)〜()を提供する。
【0011】
(1) 分割可能な炉底ユニットが炉底に装着された炉体を有する炉底分割型転炉であって、
前記炉底ユニットは、外側部分を構成する第1の炉底部材と、内側部分を構成し、前記第1の炉底部材に分割可能に装着された少なくとも一つの第2の炉底部材とを有し、
前記第1の炉底部材および前記第2の炉底部材は、それぞれ攪拌ガスを炉内に吹きだすための第1の羽口群および第2の羽口群を備え、
前記第1の炉底部材と前記第2の炉底部材とは、フランジ部により締結され、
前記第1の羽口群に対する第1の管寄は、前記第1の炉底部材のフランジ部と一体に設けられていることを特徴とする炉底分割型転炉。
【0013】
) 前記第1の管寄は、前記第1の炉底部材のフランジ部のウェブに沿って環状に設けられていることを特徴とする(1)に記載の炉底分割型転炉。
【0014】
) 前記第1の管寄は、前記第1の炉底部材のフランジ部のフランジの上方に配置されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の炉底分割型転炉。
【0015】
) 前記第2の炉底部材が、前記炉底の中央部分にあり、
前記第2の羽口群に対する第2の管寄は、前記第2の炉底部材の中心部分に設けられていることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の炉底分割型転炉。
【0016】
) 前記2の管寄に対する前記攪拌ガスの供給は、前記第1の管寄から行われ、
前記第1の管寄は、前記第1の炉底部材の、前記第2の炉底部材側にあるフランジ部に設けられていることを特徴とする(4)に記載の炉底分割型転炉。
【0017】
) 前記第1の管寄と前記第2の管寄とを接続する配管は、前記第1の炉底部材の、前記第2の炉底部材側にあるフランジ部のウェブ、および前記第2の炉底部材の、前記第1の炉底ユニット側にあるフランジ部のウェブを貫通して配置されていることを特徴とする(5)に記載の炉底分割型転炉。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、分割可能な炉底ユニットの大きさを大きくして、築炉時間を短縮するという効果を維持しつつ、炉底ユニットの交換の際に難易度の高い長時間の作業を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は本発明の一実施形態に係る炉底分割型転炉の一例を概略的に示す断面図である。
図2図2は炉体の底部を拡大して示した断面図である。
図3図3は第1、第2の炉底ユニット7、8に設けられたガス配管を簡略的に示す平面図である。
図4A図4Aは一実施形態に係る炉底分割型転炉の分割状態を示す断面図である。
図4B図4Bは一実施形態に係る炉底分割型転炉の分割状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る炉底分割型転炉の一例を概略的に示す断面図、図2は炉体の底部を拡大して示した断面図である。
【0021】
図1および図2に示すように、一実施形態に係る炉底分割型転炉100は、有底円筒状の炉体1を有する。炉体1には、溶銑が貯留され、さらに鉄スクラップが装入される。炉体1には、炉体1を傾動させるための傾動軸2が設けられている。傾動軸2は支持柱3a、3bにより回動自在に支持されている。傾動軸2の一端側には、歯車を内蔵した歯車箱4が設けられている。歯車箱4の内部には、傾動軸2の一端に接続された歯車4a、歯車4aを駆動する歯車4bが設けられている。歯車4bは、駆動装置5の駆動軸6の一端に接続されている。駆動装置5は駆動軸6を回転させ、この回転力を歯車4b、4aを介して傾動軸2に伝える。これにより、駆動装置5は、炉体1を傾動させる。
【0022】
炉体1の炉底は、分割可能な炉底ユニット20が装着されて構成されている。炉底ユニット20は、外側部分を構成し、環状をなす第1の炉底部材7と、炉底ユニット20の内側部分を構成し、第1の炉底部材7に分割可能に装着された第2の炉底部材8とを有する。第2の炉底部材8は炉底の中央に位置する。
【0023】
第1の炉底部材7は、炉体1の炉底以外の部分にフランジ部9により締結されている。また、第2の炉底部材8は、第1の炉底部材7にフランジ部10により締結されている。
【0024】
フランジ部9は、炉体1の炉底ユニット以外の部分に取り付けられたウェブ9a、およびウェブ9a上に設けられた炉体側フランジ9bと、第1の炉底部材7に取り付けられたウェブ9c、およびウェブ9c上に設けられた第1の炉底部材側フランジ9dとを有している(図2参照)。第1の炉底部材側フランジ9dの下面は、炉体側フランジ9bの上面に載せられており、図示せぬ締結部材、例えば、ボルトにより両フランジが締結される。これにより、第1の炉底部材7は炉体1の炉底ユニット以外の部分に締結される。また、ボルトを外すと、第1の炉底部材7は、炉体1の炉底ユニット以外の部分から取り外すことができる。
【0025】
フランジ部10も同様に、第1の炉底部材7に取り付けられたウェブ10a、およびウェブ10a上に設けられた第1の炉底部材側フランジ10bと、第2の炉底部材8に取り付けられたウェブ10c、およびウェブ10c上に設けられた第2の炉底部材側フランジ10dとを有している(図2参照)。第2の炉底部材側フランジ10dの下面を、第1の炉底部材側フランジ10bの上面に載せた状態で、図示せぬボルトにより両フランジを締結する。これにより、第2の炉底部材8は第1の炉底部材7に締結され、ボルトを外すことで、第2の炉底部材8は、第1の炉底部材7から取り外すことができる。
【0026】
炉体1は、外殻を構成する鉄皮の内側に耐火物であるレンガ11(11a〜11c)が内張りされて構成されている。第1の炉底部材7はレンガ11aを有し、第2の炉底部材8はレンガ11bを有し、炉体1の炉底ユニット20以外の部分は、レンガ11cを有している。
【0027】
炉底分割型転炉100は、典型的には、上底吹き型転炉である。すなわち、炉体1の上部開口から、溶銑に対して酸素ガスを吹き付けるためのランスが装入され、炉底からは炉体1内の溶銑にアルゴンガス等の攪拌ガスが吹き込まれる。このため、第1の炉底部材7は、溶銑を攪拌する攪拌ガスを炉底から吹き込む複数の羽口12aを有し、第2の炉底部材8もまた同様の複数の羽口12bを有している。羽口12a、12bはそれぞれ、炉底側からレンガ11a、11bを貫通し、炉内に達する。羽口12a、12bには、攪拌ガスが図示せぬ攪拌ガス供給機構から、攪拌ガス供給管13を介して供給される。
【0028】
図3は、炉底ユニット20の第1の炉底部材7および第2の炉底部材8に設けられたガス配管を簡略的に示す平面図である。
【0029】
図3に示すように、炉底の中央部分に位置する第2の炉底部材8においては、その中心部分に管寄14が配置されている。管寄14には、攪拌ガス供給管13が接続されている。管寄14と複数の羽口12bとの間は、管寄14と、各羽口12bとを各々接続する攪拌ガス分配管15a〜15dによって接続されている。本例においては、管寄14に接続する羽口は、第2の炉底部材8に設けられた羽口12bのみとし、攪拌ガス分配管15a〜15dの配置は、第2の炉底部材8のみで完結させる。なお、攪拌ガス供給管13は、フランジ部10のウェブ10a、10cを貫通されている(図2参照)。
【0030】
第2の炉底部材8の周囲に配置される第1の炉底部材7においては、管寄14とは別個に管寄16が配置されている。本実施形態において、管寄16は、第1の炉底部材7と第2の炉底部材8との境界部分であるフランジ部10に沿ってフランジ部10と一体に配置されている。具体的には、管寄16は、フランジ部10のうち、第1の炉底部材7に取り付けられたウェブ10aに沿って一体に配置されている(図2参照)。管寄16は、フランジ部10のフランジ10b、10dの上方に配置されている。
【0031】
管寄16は、フランジ部10に沿って環状となっており、環状の管寄16には、攪拌ガス供給管13が接続されている。攪拌ガス供給管13は、図示せぬ攪拌ガス供給機構から、フランジ部9を超えないように、フランジ部9のウェブ9a、9cをそれぞれ貫通しつつ、環状の管寄16に接続される。管寄16は、複数の羽口12aのそれぞれと、攪拌ガス分配管17a〜17hによって接続される。管寄16の断面形状はL字状となっており、ウェブ10aおよび第1の炉底部材7の外壁面が管寄16の側壁を兼ねている。これにより、管寄16の設置スペースを小さくすることができる。もちろん、管寄16の断面形状をC字状にして、ウェブ10aが管寄16の一つの側壁を兼ねるようにしてもよく、管寄16自体を筒状に形成してもよい。
【0032】
また、管寄16は、第2の炉底部材8の管寄14への攪拌ガス供給管13の中継も行う。つまり、第2の炉底部材8の管寄14に接続される攪拌ガス供給管13は管寄16に接続されており、管寄14には管寄16を介して攪拌ガスが供給される。
【0033】
管寄16は、フランジ部9側に設けても構わないが、フランジ部10側に設けることが好ましい。管寄16をフランジ部10側に設けることにより、管寄16から攪拌ガスが炉底の円弧に沿って上昇するように流れるようになり、攪拌ガスの制御がしやすくなる。
【0034】
次に、炉底分割型転炉100における炉底ユニットの分割・交換動作について説明する。
【0035】
図4Aおよび図4Bは一実施形態に係る炉底分割型転炉100の炉底ユニットの分割・交換動作を示す断面図である。
【0036】
本実施形態では、炉体1の炉底を構成する炉底ユニット20が、第1の炉底部材7と第2の炉底部材8が一体で分割されるモード、および第2の炉底部材8のみが分割されるモードの2つのモードで分割することが可能である。
【0037】
炉体1の炉底ユニット20から炉底の中央部分に対応する第2の炉底部材8のみを分割・交換する際には、図4Aに示すように、第1の炉底部材7は炉底に装着されたままの状態で、第2の炉底部材8のみを第1の炉底部材7から分割して取り外した後、オフライン作業で予め新しいレンガ11bが積まれていた別の第2の炉底部材8を、第1の炉底部材7の下に移送し、第1の炉底部材7の中央部分に装着する。
【0038】
炉底ユニット20の全体を分割する際には、図4Bに示すように、炉体1の炉底から炉底ユニット20全体、すなわち第1の炉底部材7と第2の炉底部材8を分割して取り外した後、オフライン作業で予め新しいレンガ11a、11bが積まれている新しい第1の炉底部材7および第2の炉底部材8からなる炉底ユニット20を、炉体1の炉底ユニット以外の部分の下に移送して装着し、炉体1を形成する。
【0039】
従来のように、炉底ユニットを大きく形成して分割するようにした場合、最も損耗しやす炉底の中央部分の耐火物(レンガ)が損耗した際に、炉底ユニット全体を分割して交換する必要があり、その都度、炉底ユニットを取り付ける際の施工難易度が高く、かつ、交換時間も長いという不都合が生じる。
【0040】
これに対して、本実施形態では、最も損耗しやすい炉底中央部分にある第2の炉底部材8のレンガ11bが損耗した場合には、炉体1の炉底ユニット20から炉底の中央部分に対応する小径の第2炉底部材8のみを取り外して交換すればよいので、炉底ユニット20全体を分割して交換する場合に比較して、施工が容易かつ安全であり、さらに、より短時間の作業時間で済む。このため、従来のような、炉底ユニットを取り付ける際の施工難易度が高く、かつ、交換時間も長いという不都合は生じない。
【0041】
また、第1の炉底部材7のレンガ11aは、通常、第2の炉底部材8のレンガ11bが損耗した時点においても使用可能であるため、第2の炉底部材8のみを交換した後、さらに操業可能であり、次に損耗しやすい第1の炉底部材7のレンガ11aが損耗した時点で炉底ユニット20全体を取り外して交換すればよい。このため、施工難易度が高く長時間の大型の炉底ユニット20全体を交換する作業自体を減少させることができる。
【0042】
さらに、炉体1の炉底ユニット20以外の部分のレンガ11cは、通常、第1の炉底部材7のレンガ11aが損耗した時点においても使用可能であるため、炉底ユニット20全体を交換した後、さらに操業可能であり、レンガ11cも損耗した時点で、レンガを積み直す築炉工事(転炉炉修工事)が行われる。したがって、築炉工事は、第2の炉底部材8のみの交換、および炉底ユニット20全体の交換を経た後に行えばよいので、転炉炉修ピッチを著しく長くすることができる。
【0043】
さらにまた、第2の炉底部材8を分割可能として炉底ユニット20自体を大型化することによる不都合を解消したので、炉底ユニット20(第1の炉底部材7)の径を大きくして、築炉工事の際に積み直されるレンガの数を減じて築炉作業に要する時間を短縮するという効果を維持することができる。
【0044】
このように本実施形態に係る炉底分割型転炉によれば、分割可能な炉底ユニットの大きさを大きくして、築炉時間を短縮するという効果を維持しつつ、炉底ユニットの交換の際に難易度の高い長時間の作業を軽減することができる。また、さらに転炉炉修ピッチを長くすることができるといった効果も奏する。
【0045】
ところで、本実施形態では、炉体1の炉底を構成する炉底ユニット20が、第1の炉底部材7と第2の炉底部材8が一体で分割されるモード、および第2の炉底部材8のみが分割されるモードの2つのモードで分割することが可能であるため、第1の炉底部材7および第2の炉底部材8に設けられる攪拌ガス供給管、攪拌ガス管寄、および攪拌ガス分配管等のガス配管の配置には工夫が必要である。例えば、特に、第1の炉底部材7と第2の炉底部材8との境界部分であるフランジ部10を横断してガス配管を配置する場合、従来は、ガス配管をフランジ部10の下方に配置する必要があり、炉体1を傾動させる際の旋回半径の増加につながる。旋回半径が大きくなると、炉体1が、既存設備や、炉体1を搬送する既存の受鋼台車と干渉する可能性がある。
【0046】
また、フランジ部9、10を横断して配置する必要があるようなガス配管が増加すると、炉底を分割する作業の際に、ガス配管の取り外し又は分離に長い時間を要することにもなる。
【0047】
これに対して、本実施形態では、図3に示すように、第2の炉底部材8の管寄14に接続する羽口は、第2の炉底部材8に設けられた羽口12bのみとし、攪拌ガス分配管15a〜15dの配置は、第2の炉底部材8のみで完結させるようにし、また、第1の炉底部材7の環状の管寄16に接続する羽口は、第1の炉底部材7に設けられた羽口12aのみとし、攪拌ガス分配管17a〜17hの配置についても、第1の炉底部材7のみで完結するようにした。このため、攪拌ガス分配管15a〜15dは、第1の炉底部材7と第2の炉底部材8との境界部分であるフランジ部10を超えることがなく、かつ攪拌ガス分配管17a〜17hについても、第1の炉底部材7と炉体1の炉底ユニット20以外の部分との境界部分であるフランジ部9を超えることがない。したがって、第2の炉底部材8を、第1の炉底部材7から取り外す際、および炉底ユニット20の全体を取り外す際、攪拌ガス分配管の取り外し作業、または分離作業の必要がなくなり、攪拌ガス供給管13の取り外し作業、または分離作業のみで済むようになる。これにより、ガス配管の取り外し、または分離を短時間で済ませることができる。
【0048】
また、第1の炉底部材の管寄16を第1の炉底部材7と第2の炉底部材8との境界部分であるフランジ部10に沿って、具体的には、フランジ部10のうち、第1の炉底部材7に取り付けられたウェブ10aに沿って、フランジ部10と一体に配置したので、管寄16および配管をフランジ10b、10dの上方に配置することができる。このため、第1の炉底部材7の平面スペースに余裕ができ、炉底ユニット20の高さ方向の寸法を小さくすることができるので、炉体1の旋回半径を小さくすることができる。
【0049】
また、第2の炉底部材8および第1の炉底部材7にそれぞれ管寄14および管寄16を設け、第2の炉底部材8の管寄14には、第1の炉底部材7の管寄16を介して攪拌ガスが供給されるようにして、外側に配置された管寄を中継しながら、中央部分にある管寄まで攪拌ガスを送るようにしたので、複数の管寄ごとに攪拌ガス供給管を各々設けずに済み、ガス配管の複雑化を抑制することができる。
【0050】
第1の炉底部材7に管寄を設けず、第2の炉底部材8の管寄14のみとした場合には、羽口12aに接続される攪拌ガス分配管17a〜17hについては、羽口12bに接続される攪拌ガス分配管15a〜15dの干渉を受け、ガス配管が複雑化して羽口12aの位置や数にレイアウト上の制約が生ずることがあるが、第1の炉底ユニット7に環状の管寄16をさらに設けることにより、第2の炉底ユニット8の外側にある第1の炉底ユニット7に設けられる管寄16および攪拌ガス分配管17a〜17hについては、攪拌ガス分配管15a〜15dの干渉を受けることがなく、羽口12aの位置や数について、レイアウト上の自由度が増すという利点を得ることもできる。
【0051】
なお、本発明は上記一実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。例えば、上記一実施形態では、上底吹き転炉を例にとって説明したが、炉底から酸素を吹き込む底吹き転炉にも適用することができる。
【0052】
また、上記実施形態では、炉底ユニットを第1の炉底部材と第2の炉底部材に分割可能にした場合について示したが、炉底ユニットの分割数は3以上であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 炉体
2 傾動軸
3a、3b 支持柱
4 歯車箱
4a、4b 歯車
5 駆動装置
6 駆動軸
7 第1の炉底部材
8 第2の炉底部材
9、10フランジ部
9a、9c、10a、10c ウェブ
9b、9d、10b、10d フランジ
11a、11b、11c 煉瓦
12a、12b 羽口
13 攪拌ガス供給管
14 管寄
15a〜15d 攪拌ガス分配管
16 管寄
17a〜17h 攪拌ガス分配管
20 炉底ユニット
100 炉底分割型転炉
図1
図2
図3
図4A
図4B