特許第6184951号(P6184951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184951
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】靭性が増した熱硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 81/06 20060101AFI20170814BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20170814BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20170814BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20170814BHJP
   C08G 63/91 20060101ALI20170814BHJP
   C08G 75/20 20160101ALI20170814BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20170814BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20170814BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   C08L81/06
   C08L67/02
   C08L101/12
   C08L63/00 A
   C08G63/91
   C08G75/20
   C08G81/00
   C08G59/20
   C08K7/06
【請求項の数】14
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2014-523384(P2014-523384)
(86)(22)【出願日】2012年7月25日
(65)【公表番号】特表2014-521800(P2014-521800A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】GB2012051779
(87)【国際公開番号】WO2013017843
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年5月8日
(31)【優先権主張番号】1113196.8
(32)【優先日】2011年8月1日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】594060532
【氏名又は名称】サイテク・テクノロジー・コーポレーシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バイダク,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ビロー,クロード
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−196831(JP,A)
【文献】 特開平05−302033(JP,A)
【文献】 Di Hu, Sixun Zheng,Morphology and Thermomechanical Properties of Epoxy Thermosets Modified with Polysulfone-Block-Polydimethylsiloxane Multiblock Copolymer,Journal of Applied Polymer Science,2011年 3月 5日,Vol.119,No.5,p.2933-2944
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00−63/10
C08L 101/12
C08L 81/06
C08L 67/02
C08G 81/00
C08G 75/20−75/23
C08G 63/91
C08G 59/20−59/38
C08G 63/91
C08G 81/00
C08G 59/20
C08G 75/20−75/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性ポリマー組成物であって、1以上の未硬化の熱硬化性樹脂(R)と、熱硬化性樹脂(R)を強化するブロックコポリマー(M)を含み、
当該ブロックコポリマー(M)は、ガラス転移温度(Tg)が少なくとも150℃である熱可塑性芳香族ポリマー(A)に由来する少なくとも1つのブロック、およびTgが低いポリマー(B)に由来する少なくとも1つのブロックを有し、
ここで、
(i)Tgの低いポリマー(B)のTgは、−130℃〜+40℃の範囲にあり、
(ii)芳香族ポリマー(A)は、未硬化の熱硬化性樹脂に可溶性であり、エーテルで結合され、さらに、チオエーテルで結合されてもよい繰り返し単位を含み、繰り返し単位は-[ArSO2Ar]n-で表され、および、任意に-[Ar]a-で表されてもよい、1つ以上のポリアリールスルホンを含み、
ここで
Arはフェニレンであり、
n=1〜2、および分数であってもよく、
a=1〜3、および分数であってもよく、並びにaが1を超えるとき、当該フェニレン基は、単化学結合または-SO2-以外の二価の基によって直鎖に結合され、または一緒に縮合されてもよく、
但し、ポリアリールスルホンに常に存在する繰り返し単位-[ArSO2Ar]n-は、平均して少なくとも2つの当該-[ArSO2Ar]n-の単位が、存在する各ポリマー鎖中でエーテルおよび/またはチオ-エーテル結合によって結合される、および、
(iii)Tgが低いポリマー(B)は、未硬化の熱硬化性樹脂に不溶性であり、12〜48個の炭素原子を有するダイマー脂肪酸および2〜6個の炭素原子を有する二価アルコールに由来する飽和脂肪族ポリエステルである、
組成物。
【請求項2】
ポリアリールスルホンが、エーテルおよび/またはチオ-エーテル結合によって結合される-[ArSO2Ar]n-および-[Ar]a-繰り返し単位の組み合わせを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリアリールスルホンの繰り返し単位が
(I):-X-Ar-SO2-Ar-X-Ar-SO2-Arおよび
(II):-X-(Ar)a-X-Ar-SO2-Ar-
であり、ここで、XはOまたはSであり、ある実施形態ではOであり、単位ごとに異なっていてもよく、並びに単位I:IIの比が10:90〜80:20の範囲にある請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
芳香族ポリマー(A)の数平均モル質量Mnが2,000〜60,000の範囲にある請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
Tgが低いポリマー(B)の数平均モル質量Mnが1,000〜30,000g/molの範囲にある請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ブロックコポリマー(M)が以下を含み、
(i)質量分率w(A)が5%〜99%である芳香族ポリマー(A)、および対応して、(ii)質量分率w(B)が95%〜1%であるTgが低いポリマー(B)
ここで、w(A)およびw(B)は以下のように計算され、
w(A)=m(A)/m(M)
w(B)=m(B)/m(M)
ここで、
m(A)は芳香族ポリマーAの質量であり、
m(B)はTgが低いポリマーBの質量であり、および
m(M)はブロックコポリマーMの質量である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
w(A)>w(B)であり、w(A)は60〜80%であり、w(B)は40〜20%である請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
ブロックコポリマーの数平均モル質量Mnが3,000〜150,000g/molである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
熱硬化性樹脂は1つ以上のエポキシ樹脂から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
エポキシ樹脂が、芳香族ジアミン類、芳香族モノ第1級アミン類、アミノフェノール類、多価フェノール類、多価アルコール類、ポリカルボン酸から成る化合物の1つ以上の群のモノ-若しくはポリ-グリシジル誘導体、またはその混合物から選択される請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
エポキシ樹脂が
(i)ビスフェノールA、ビスフェノールF、ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジヒドロキシベンゾフェノン、およびジヒドロキシジフェニルのグリシジルエーテル類、
(ii)ノボラックに基づくエポキシ樹脂、および
(iii)m-またはp-アミノフェノール、m-またはp-フェニレンジアミン、2,4-、2,6-または3,4-トルイレンジアミン、3,3’-または4,4’-ジアミノジフェニルメタンのグリシジル官能性反応生成物、並びにその混合物
から選択される請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
エポキシ樹脂が、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(DGEBF)、O,N,N-トリグリシジル-パラ-アミノフェノール(TGPAP)、O,N,N−トリグリシジル−メタ−アミノフェノール(TGMAP)、およびN,N,N’,N’-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、並びにその混合物から選択される請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
ブロックコポリマー(M)の量が、質量分率w(M)で0.5%〜40%であり、ここで、
w(M)=m(M)/mであり、
m(M)は、質量mを有する強靭化された熱硬化性樹脂組成物に存在するブロックコポリマーの質量である請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
炭素繊維補強剤、および、請求項1に記載の硬化性ポリマー組成物を含む複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、具体的には多官能性の高度な架橋樹脂組成物の破壊靭性等の特性を変性するためのブロックコポリマーの使用に関する。本発明は、エポキシ樹脂組成物において具体的に有用である。本発明はまた、繊維で補強された複合材料の当該熱硬化性樹脂組成物の使用、および当該複合材料から作製される構造部分に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化されたエポキシ樹脂等の熱硬化性材料の熱および化学抵抗は、知られている。それらはまた、良好な機械特性を示すものの靭性を欠いていることが多く、非常に脆い傾向にある。このことはとりわけ、架橋密度の増加または上2つのモノマー官能性の増加としてあてはまる。エポキシ樹脂並びにビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネートエステル樹脂、エポキシビニルエステル樹脂および不飽和ポリエステル樹脂等のその他の熱硬化性材料、並びにその混合物を、様々なエラストマ材料を組み込むことによって、強化し強靭化させる試みがなされている。
【0003】
国際公開第2007/009 957 A1号は、ブロックコポリマーおよび/またはコポリマーコアシェル型粒子で強靭化されたエポキシ樹脂を開示し、ブロックコポリマーは少なくとも1つのメチルメタクリラートブロックを有する。コアシェルポリマー粒子のシェルはポリスチレンまたはポリメタクリル酸メチルで作製されていてもよい。
【0004】
粘着性、ドレープ性および巻取り性が向上した繊維補強されたエポキシ樹脂は、ポリエステル類またはポリアミド類に基づいた熱可塑性物質性エラストマーをエポキシ樹脂に加える米国特許第6,046,257号に記述される。
【0005】
国際公開第2006/077153-A号は、メチルメタクリラートホモポリマーまたはコポリマーのブロックを含むジブロックまたはトリブロックコポリマーから選択される耐衝撃性改良剤を含む熱硬化性樹脂、およびガラス転移温度が0℃より小さく、ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびその水素化生成物に由来するエラストマーブロックを開示する。
【0006】
先行技術のブロックコポリマー強化剤の短所は、樹脂組成物のガラス転移温度の低下する場合があり、変性および硬化された熱硬化性樹脂の使用温度を低くする場合があることである。材料の使用温度は、材料のガラス転移温度に直接的に相互に関係する。使用温度は、材料を延長時間の期間(典型的には少なくとも5000時間)にわたって、なんの故障もなく使用することのできる最も高い温度として記述される。材料の「故障」は、典型的には、属性値が初期値の50%に落ちる状況(ASTM-D794)として理解されている。航空宇宙または高性能の自動車用途での使用では、高い使用温度(例えば、約150〜160℃)が要求され、部品は、高い温度で形状および性能を維持することが要求される。
【0007】
さらに、先行技術のブロックコポリマー強化剤の短所は、樹脂の弾性率が低下する場合があることである。
【0008】
ある用途について、強靭化された樹脂は、良好な溶媒抵抗も示さなければいけない。
【0009】
本発明の目的は、ガラス転移温度(Tg)および/または樹脂の弾性率の低下を回避または最小にする熱硬化性樹脂(具体的には高度な架橋樹脂)の靭性を向上させるのに適し
た変性剤を提供することである。
【0010】
さらなる目的は、Tgおよび/または樹脂の弾性率の低下を回避または最小にする熱硬化性樹脂(具体的には高度な架橋樹脂)の靭性を向上させるのに適した変性剤を提供し、熱硬化性樹脂が良好な溶媒抵抗を示すことである。
【0011】
さらなる目的は、強化剤の濃度が比較的低い場合に、熱硬化性樹脂(具体的には高度な架橋樹脂)の靭性を向上させるのに適した変性剤を提供することである。
【0012】
さらなる目的は、熱硬化性樹脂(具体的には高度な架橋樹脂)のナノ組織構造を向上させるのに適した変性剤を提供することである。
【0013】
さらなる目的は、それから作製される複合材料を調製している間に、粘着度特性が良好な熱硬化性樹脂系(具体的には高度な架橋樹脂)のための変性剤を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、好ましくは樹脂の溶媒抵抗が良好であり、好ましくは樹脂の粘着度特性および/またはナノ組織構造が向上したTgおよび/または弾性率が有意に低下することのない高度に架橋され、強靭化された熱硬化性樹脂組成物を提供することである。
【0015】
Tgの低下を回避または最小にすることは、これらの目的の特に重要な態様である。
【発明の概要】
【0016】
本発明に従い、熱硬化性樹脂(R)を強靭化するのに適したブロックコポリマー(M)を提供し、このブロックコポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が少なくとも約150℃である熱可塑性芳香族ポリマー(A)に由来する少なくとも1つのブロック、およびTgが低いポリマー(B)に由来する少なくとも1つのブロックを有し、ここで、
(i)Tgの低いポリマー(B)のTgは、約−130℃〜約+40℃の範囲にあり、
(ii)芳香族ポリマー(A)は、前記熱硬化性樹脂(R)の未硬化の熱硬化性樹脂前駆体(P)に可溶性であり、
(iii)Tgが低いポリマー(B)は、未硬化の熱硬化性樹脂前駆体(P)に不溶性である。
【0017】
ブロックコポリマー(M)は、有利なように熱硬化性樹脂の特性を変性し、したがって、本明細書では変性剤とも呼ばれる。
【0018】
本発明のさらなる態様に従い、本明細書に定義されるブロックコポリマー(M)および1つ以上の未硬化の熱硬化性樹脂前駆体(P)を含む、並びにそのための硬化剤を含んでいてもよい、熱硬化性樹脂系または硬化できるポリマー組成物を提供する。
【0019】
本発明のさらなる態様に従い、本明細書に定義されるブロックコポリマー(M)および1つ以上の未硬化の熱硬化性樹脂前駆体(P)、並びに任意にそのための硬化剤、に由来する強靭化された熱硬化性樹脂組成物(R)を提供する。
【0020】
「硬化できるポリマー組成物」は、本明細書に使用するとき、硬化する前の組成物を意味し、「熱硬化性樹脂組成物」は硬化後の組成物を意味する。
【0021】
用語「可溶性の」は、本明細書に使用するとき、第1のポリマーAが第2のポリマーBと混合物を形成し、混合物は、混合物全体の物理特性の値が同じまたは実質的に同じであ
り、いわゆる混合物は本質的に単一の相を含み、および/または本質的に均一である。便宜的に、可溶性は光散乱によって評価することができる。ポリマーBに可溶であるポリマーAについて、ポリマーAをポリマーBに加えることによって、光散乱は本質的に変化しない。本質的に単一の相は高い光学的透明度を特徴とする。本質的に単一の相の混合物と2つ(またはそれ以上)の相の間の境界は「曇点」によって定義され、それは、所与のポリマー混合物について、相分離が認められる温度として定義される。光学的透明度は、視認によってマクロスケールで評価されてもよい。
【0022】
本発明のブロックコポリマーは、破断に抵抗し、靭性を与える硬化された熱硬化性樹脂の形態を促進する。ブロックコポリマーは、熱硬化性樹脂または前駆体に本質的に可溶性の、あるタイプのブロックおよび熱硬化性樹脂または前駆体に本質的に不溶性の、あるタイプのブロックを含む。エポキシ前駆体の混合物では、エポキシ樹脂の熱硬化性ナノ組織構造について自己構築するブロックコポリマーは、溶解または自己構築することができる。エポキシ可溶性のセグメントはブロックコポリマー分子の溶解を促進する一方で、エポキシ不溶性のセグメントは、ブロックコポリマー分子を溶液から追い出し、ナノスケールで自己構築または組織化する。秩序だったおよび無秩序のナノ構築物の組織化の程度は、ブロックコポリマーの性質およびその濃度に依存する。内容物が少ないと、ブロックコポリマーは樹脂中にミセル配列を示し得る。可溶性のブロックは、樹脂調製中に強化剤を溶解し、ゲル化点温度まで、および硬化サイクル全体を通して、効果的に熱硬化性樹脂のナノ組織化を維持すると考えられている。ブロックコポリマー分子は、樹脂前駆体に可溶性であってもよく、ゲル化点(いわゆる反応誘導性、ミクロ相分離)に先立って、樹脂硬化すると同時にナノ組織化するだけである。したがって、樹脂形態は、ブロックコポリマー自己組織化によって実質的に引き起こされ、それにより硬化動力学への依存を低減または削減し、二相形態を誘導する。全体の(巨視的な)相分離が回避される。本発明のブロックコポリマーの自己組織化によって、所望の形態が促され、代わって破壊靭性を増す硬化された熱硬化性樹脂のナノ組織構造が導かれる。したがって、本発明では、硬化された熱硬化性樹脂の不溶性のドメインまたは構築物は、ナノスケールが望ましい(すなわち、1μmより小さく、好ましくはたったの100nm)。
【0023】
本発明のブロックコポリマーは、熱硬化性樹脂の芳香族ポリマーブロック(A)の可溶性を有用し、以前は熱硬化性樹脂中のTgが低いポリマーの不溶性によって、このようなポリマーを強化材としては使用できないまたは到達しがたいものにしていた系で、樹脂のTgおよび/または弾性率の低下を回避または最小にする一方で、熱硬化性樹脂の強化剤としてのTgが低いポリマーの使用を可能にする。
【0024】
本発明のブロックコポリマーは、(ニート樹脂のそれに対して)樹脂のTgおよび/または弾性率の低下を回避または最小にする一方で、熱硬化性樹脂を強靭にする。このTgの保持は、本発明の強靭化された熱硬化性樹脂の使用温度を高く保持することを意味する。さらに、所与の靭性を熱硬化性材料に与えるために必要とされる強化剤の量は、通常の高性能熱可塑性の強靭化剤を含むその他の熱可塑性の強化剤より少ない。
【0025】
さらに、本発明のブロックコポリマーを含む熱硬化性樹脂系または硬化できるポリマー組成物は、有利に向上した粘着度特性を示す。
【0026】
熱可塑性芳香族ポリマーブロック(A)
【0027】
芳香族ポリマー(A)は比較的Tgが高く、そのことが硬化された熱硬化性樹脂のTgの保持の1つの要因となる。したがって、芳香族ポリマー(A)のTgは少なくとも約150℃、好ましくは少なくとも約160℃、好ましくは少なくとも約170℃、好ましくは少なくとも約180℃であり、ある実施形態では少なくとも約190℃である。
【0028】
熱可塑性芳香族ポリマー(A)は、炭素-炭素単結合(C-C結合)、エーテル基(-O-)、チオエーテルまたはスルフィド基(-S-)、エステル基(-CO-O-)、チオエステル基(-CO-S-)または(-CS-O-)、カルボキサミド基(-CO-NH-)、イミド基(>C=N-)または((-CO-)N-)、スルホン基(-SO-)、ケトンまたはカルボニル基(>C=O)、炭酸塩基(-O-CO-O-)、メチレン基(-CH-)、ジフルオロメチレン基(-CF-)、ビニリデン基(-CH=CH-)、および2,2-プロピレン基(>C(CH)を含む結合基によって結合された二価芳香族基を含む。ポリマー(A)は、当該ポリマーに同結合基を1つ以上含んでいてもよい。したがって、芳香族ポリマー(A)は、ポリエーテル類、ポリエーテルスルホン類、ポリエーテルイミド類、ポリイミド類、ポリエーテルケトン類、ポリ炭酸塩類、ポリ-スルホン類、ポリケトン類、混合ポリ-スルホン-ケトン類、混合ポリエーテルスルホン-ケトン類、ポリエステル類、ポリエーテルエステル類、ポリアミド類、ポリエーテルアミド類、およびポリスルフィド類、並びにそのコポリマーから成る群から選択される。好ましいポリマー(A)は、芳香族ポリエーテルスルホン類、芳香族ポリエーテルケトン類、芳香族ポリエーテルイミド類、および芳香族ポリスルフィド-スルホン類から選択される。熱可塑性芳香族ポリマー(A)の本質的な特徴が、芳香族基がポリマー骨格にぶら下がっているよりも、ポリマー骨格の中にあるという必要条件であることは認められるであろう。ポリマー骨格が芳香族基を含んでいるのであれば、ポリマー骨格にぶら下がっている芳香族基も、熱可塑性芳香族ポリマー(A)に存在していてもよい。ポリマー骨格内の芳香族基は少なくとも二価であり、典型的には二価である。以下にさらに説明するように、ポリマー骨格内の芳香族基は、1つまたは反応性ペンダントおよび/または末端基を有していてもよい。
【0029】
二価芳香族基は好ましくは、1,4-フェニレン、1,3-フェニレン、1,4-または2,6-ナフチレン、およびフタルイミド-N-4-イレンである。具体的な有用性としてはフェニレン基、典型的には1,4-フェニレンである。用語「芳香族ポリマー」は、本明細書に使用するとき、ポリマー中の前記結合基によって一緒に結合される芳香族ジラジカルの質量分率が少なくとも51%、好ましくは、少なくとも60%であるポリマーである。
【0030】
好ましい芳香族ポリマー(A)は、ポリエーテルスルホン類であり、例えば、ポリ-1,4-フェニレン-オキシ-1,4-フェニレン-スルホン、ビスフェノールAおよびジクロロジフェニルスルホンから作製されるポリエーテルスルホン、およびポリ-ビス(1,4-フェニレン)-オキシ-1,4-フェニレン-スルホンである。芳香族ポリマー(A)のさらなるクラスは、ポリエーテルイミド類(PEI)であり、例えば、ビスフェノールA、4-ニトロフタル酸およびm-フェニレンジアミンから作製されるポリマーである。
【0031】
熱可塑性芳香族ポリマー(A)は好ましくは、エーテルで結合された繰り返し単位を含む1つ以上のポリアリールスルホンを含み、さらに、チオエーテルで結合された繰り返し単位を含んでいてもよく、その単位は、
-[ArSOAr]-から選択され、および
-[Ar]-から選択されてもよく、ここで
Arはフェニレンであり、
n=1〜2、および分数であってもよく、
a=1〜3、および分数であってもよく、およびaが1を超えるとき、当該フェニレン基は、-SO-以外の単化学結合または二価の基によって直鎖に結合され[好ましくは、二価基は、Rがそれぞれ同じであっても異なっていてもよく、HおよびC1-8アルキル(具体的にはメチル)から選択される]、または一緒に縮合されてもよく、但し、繰り返し単位-[ArSOAr]-は、平均して少なくとも2つの当該-[ArSOAr]-の単位が存在する各ポリマー鎖中に順に存在する割合で、ポリアリールスルホン
に常に存在し、およびここで、ポリアリールスルホンは、1つ以上の反応的なペンダント基および/または末端基を有する。
【0032】
nまたはaの様々な値を有する単位を含む所与のポリマー鎖についての平均値は、「分数」によって参照される。
【0033】
ある実施形態では、ポリアリールスルホン類中のフェニレン基は、単結合によって結合される。
【0034】
ポリアリールスルホン類中のフェニレン基は、1つ以上の置換基によって置換されてもよく、それぞれ独立して、O、S、N、またはハロ(例えば、ClまたはF)から選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよいC1-8分岐鎖または直鎖脂肪族飽和若しくは不飽和脂肪族基または部分;および/または、活性水素、特にOH、NH、NHRまたは-SH(ここで、Rは最大8個の炭素原子を含む炭化水素基である)を提供する基、または架橋活性を提供する基、特に、ビニール、アリル若しくはマレインイミド、無水物、オキサゾリンおよび不飽和を含むモノマーのように、ベンゾオキサジン、エポキシ、メタクリレート、シアン酸塩、イソシアン酸塩、アセチレンまたはエチレンから選択される。
【0035】
フェニレン基は好ましくは、メタ-またはパラ-(好ましくはパラ)である。構造(具体的にはメタ−およびパラ−構造)の混合物は、ポリマー骨格に沿って存在していてもよい。
【0036】
ポリアリールスルホンは好ましくは、エーテルおよび/またはチオ-エーテル結合、好ましくはエーテル結合によって結合された-[ArSOAr]-および-[Ar]-の繰り返し単位の組み合わせを含む。したがって、ポリアリールスルホンは好ましくは、ポリエーテルスルホン(PES)およびポリエーテルエーテルスルホン(PEES)エーテルで結合された繰り返し単位の組み合わせを含む。
【0037】
-[ArSOAr]-と-[Ar]-の繰り返し単位の相対的な割合は、平均して少なくとも2つの-[ArSOAr]-繰り返し単位が、存在する各ポリマー鎖の直接の相互継承にあるようであり、-[ArSOAr]-単位と-[Ar]-単位の比は、好ましくは1:99〜99:1の範囲、より好ましくは10:90〜90:10にある。典型的に、-[ArSOAr]と[Ar]の比は、75:25〜50:50にある。
【0038】
ある実施形態では、ポリアリールスルホン類の好ましい繰り返し単位は、
(I):-X-Ar-SO-Ar-X-Ar-SO-Ar-(「PES単位」として本明細書に言及)および
(II):-X-(Ar)-X-Ar-SO-Ar-(「PEES単位」として本明細書に言及)
であり、ここで、
XはOまたはSであり(好ましくはO)であり、単位毎に異なっていてもよく、および単位IとIIの比は、好ましくは10:90〜80:20の範囲、より好ましくは10:90〜55:45、より好ましくは25:75〜50:50の範囲にあり、ある実施形態では、IとIIの比は、20:80〜70:30の範囲、より好ましくは30:70〜70:30の範囲、最も好ましくは35:65〜65:35の範囲にある。
【0039】
ポリアリールスルホンの繰り返し単位の好ましい相対的な割合は、SO容量の重量パーセントで表されてもよく、(SOの重量)/(平均的な繰り返し単位の重量)の100倍として定義される。好ましいSO容量は少なくとも22、好ましくは23〜25%
である。a=1であるとき、このことは少なくとも20:80、好ましくは35:65〜65:35の範囲にあるPES/PEESの比に対応する。
【0040】
ポリエーテルエーテルスルホンの流れ温度は、通常、対応するMnポリエーテルスルホンのそれより小さいが、両者の機械的特性はほぼ同じである。したがって、上述のaおよびnの値を定めることによって、比を定めてもよい。
【0041】
米国特許第6437080号は、望まれるような選択された分子量のモノマー前駆体を単離する方法で、モノマー前駆体からこのような組成物を得る工程を開示しており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
上述の割合は言及された単位しか意味しない。当該単位の他に、ポリアリールスルホンは、その他の繰り返し単位の最大50%モル、好ましくは最大25%モルを含んでいてもよく、好ましいSOの容量範囲はポリマー全体に当てはまる。このような単位は以下の式の例であってもよい。
【化1】
式中、Lは直接的な結合、酸素、硫黄、-CO-または二価基(好ましくは、二価炭化水素基)、好ましくは、二価基は基-C(R12-であり、R12はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよく、HおよびC1-8アルキル(具体的には、メチル)から選択されてもよい。
【0043】
ポリアリールスルホンが求核性の合成の生成物であるとき、その単位は例えば、1つ以上のビスフェノール類、および/またはハイドロキノン、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、レゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン(2,6およびその他の異性体)、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'-ジ(4-ヒドロキシフェニル)プロパンおよび-メタンから選択される対応するビス-チオール類またはフェノール-チオール類から生じていてもよい。ビス-チオール類を使用する場合、in situで形成されてもよく、つまり、二ハロゲン化物をアルカリスルフィドまたはポリスルフィドまたはチオ硫酸塩と反応させてもよい。
【0044】
このような追加の単位の例として、その他に以下の式がある。
【化2】
式中、QおよびQ'は、COまたはSOであり、同じであっても異なっていてもよい。Ar'は二価芳香族基である。pは0、1、2、または3であり、但し、QがSOであるとき、pは0でない。Ar'は好ましくは、フェニレン、ビフェニレンまたはテルフェニレンから選択される少なくとも1つの二価芳香族基である。具体的な単位には、以下の式がある。
【化3】
式中、qは1、2または3である。ポリマーが求核性の合成の生成物であるとき、当該単位は、例えば、4,4'-ジハロベンゾフェノン、4,4'ビス(4-クロロフェニルスルホニル)ビフェニル、1,4、ビス(4-ハロベンゾイル)ベンゼンおよび4,4'-ビス(4-ハロベンゾイル)ビフェニルから選択される1つ以上の二ハロゲン化物に由来していてもよい。それらは当然、対応するビスフェノール類に部分的に由来していてもよい。
【0045】
ポリアリールスルホンはハロフェノール類および/またはハロチオフェノール類からの求核性の合成の生成物であってもよい。いかなる求核性の合成においても、塩素または臭素といったハロゲンは、銅触媒の存在によって活性化されてもよい。ハロゲンが電子求引性基によって活性化されれば、このような活性化は必要とされないことが多い。いかなる事象でも、フッ化物はたいてい塩素よりも活性である。ポリアリールスルホンのいかなる合成も、好ましくは、化学量論に対する余剰分が最大10%モルで、KOH、NaOHまたはKCO等の1つ以上のアルカリ金属塩の存在下で行われる。
【0046】
上述のように、ポリアリールスルホンは1つ以上の反応性ペンダントおよび/または末端基を含み、好ましい実施形態では、ポリアリールスルホンは、当該反応性ペンダントおよび/または末端基を2つ含む。ある実施形態では、ポリアリールスルホンは、当該反応性ペンダントおよび/または末端基を1つ含む。好ましくは、反応性ペンダントおよび/または末端基は、活性水素を提供する基、具体的にはOH、NH、NHRまたは-SH(Rは最大8個の炭素原子を含む炭化水素基)、またはその他の架橋活性を提供する基、具体的にはビニール、アリル若しくはマレインイミド、無水物、オキサザリンおよび不飽和を含むモノマーのように、ベンゾオキサジン、エポキシ、メタクリレート、シアン酸塩、イソシアン酸塩、アセチレンまたはエチレンである。ある実施形態では、反応性ペンダントおよび/または末端基は、式-A'-Yであり、A'は結合または二価炭化水素基であり、好ましくは芳香族、好ましくはフェニルである。Yの例は、活性水素を提供する基、具体的にはOH、NH、NHRまたは-SH(Rは最大8個の炭素原子を含む炭化水素基)、またはその他の架橋活性を提供する基、具体的にはビニール、アリル若しくはマレインイミド、無水物、オキサザリンおよび不飽和を含むモノマーのように、ベンゾオキサジン、エポキシ、メタクリレート、シアン酸塩、イソシアン酸塩、アセチレンまたはエチレンである。その他の架橋結合活性を提供する基を、直接的な結合、または上述のエーテル、チオエーテル、スルホン、-CO-または二価炭化水素基結合、最も典型的にはエーテル、チオエーテルまたはスルホン結合を経由して、ポリアリールスルホンのAr基と結合させてもよい。さらなる実施形態では、比較的小さな割合に過ぎないが、末端基をハロ基(具体的には、塩素)から選択してもよい。反応性末端基を、モノマーの反応、または単離する前または後の、生成物ポリマーの続く転換によって得てもよい。反応性ペンダントおよび/または末端基を導入する方法、例えば、活性芳香族ハロゲン化物(例えば、ジクロロジフェニルスルホン)をポリマーの出発材料として使用する方法では、合成工程はわずかに多い活性芳香族ハロゲン化物の化学量論の量を有用し、末端ハロゲン化物基を有する得られるポリマーをその後、アミノフェノール(例えば、m-アミノフェノール)と反応させ、アミノ末端基を生成する。
【0047】
ポリマー(A)の反応性のペンダントおよび/または末端基は、好ましくは、活性水素、具体的にはOHおよびNH、具体的にはNHを提供する基から選択される。好ましくは、ポリマーは当該基を2つ含む。
【0048】
ブロックコポリマー(M)は、様々な末端基を有するポリアリールスルホンの混合物に由来してもよい。ある実施形態では、ポリアリールスルホンが複数の末端基を有する場合、末端基の少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも60mol%、好ましくは少なくとも70mol%、好ましくは少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも85mol%、および好ましくは少なくとも90mol%が1つのタイプである。
【0049】
芳香族ポリマー(A)、具体的には、好ましいポリアリールスルホン類の数平均モル質量Mは、適切には、約2,000〜約60,000、好ましくは約2,000〜約30,000、好ましくは約2,000〜約15,000、およびある実施形態では、約3,000〜約10,000g/molの範囲にある。
【0050】
熱可塑性芳香族ポリマー(A)の合成については、米国特許第2004/0044141号および米国特許第6437080号にさらに記述されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
ポリマー(A)の複数のブロックを含むブロックコポリマー(M)では、ポリマー(A)のブロックはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。例えば、各ポリマーブロックの分子量は同じであっても異なっていてもよく、または分子量範囲または多分散性指数(PDI)によって定義されてもよい。典型的には、ブロックコポリマーに存在するポリマーブロック(A)は、単一の分子量範囲または多分散性指数(PDI)によって定義される。各ポリマー(A)のポリマー骨格の化学的同一性は同じであっても異なっていてもよいが、好ましくはポリマーの各ブロックは同じである。用語「ポリマー骨格の化学的同一性」は、本明細書に使用するとき、ポリマーの単量体単位をつなげる官能性化学基を意味し、具体的には、ポリエーテル、ポリエステル,ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン等である。各ポリマーブロック(A)の置換基は、存在するとき、同じであっても異なっていてもよい。
【0052】
ガラス転移温度(Tg)が低いポリマー(B)
【0053】
本発明に使用されるTgが低いポリマー(B)の特徴的な特性は、Tgが低いことおよび未硬化の熱硬化性樹脂前駆体(P)に限定的に可溶性であることである。ポリマー(B)は、典型的に、ブロックコポリマーの芳香族ポリマー(A)および硬化された熱硬化性樹脂(R)にも限られた可溶性を示す。
【0054】
ポリマー(B)のTgは好ましくは、-130°C〜約40°Cの範囲にあり、ある実施形態では、-80°C〜約0°Cの範囲、ある実施形態では、-80°C〜約-30°Cの範囲にある。
【0055】
本発明のTgが低いポリマー(B)は、通常はエラストマーであり、好ましくは、2〜60個の炭素原子を有する少なくとも二価の直鎖、分岐鎖または環状脂肪族アルコール類、および3〜60個の炭素原子を有する少なくとも二価の直鎖、分岐鎖または環状脂肪族カルボン酸類に由来する飽和脂肪族ポリエステルであるが、但し、アルコールまたは酸成分のうちの少なくとも1つ(ある実施形態では両方)は、少なくとも4個の炭素原子、好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも12個、最も好ましくは少なくとも18個の炭素原子を有する。ポリエステルが1つ以上のアルコールおよび/または1つ以上の酸に由来する場合、4個の炭素原子の最小がアルコールまたは酸成分中の炭素原子の
平均数にあたる。ポリエステルの質量分率は、芳香族部分の10%以下であることも好ましい。
【0056】
ある実施形態では、脂肪族アルコール成分と脂肪族酸成分の少なくとも1つおよび好ましくは両方の炭素数は、20〜60個である。
【0057】
ある実施形態では、ポリエステルは、上述の鎖の長さの脂肪族ジカルボン酸類および脂肪族二価アルコール類に由来する。
【0058】
好ましい二酸類とは、通常、炭素数が12〜48個のいわゆるダイマー脂肪酸類である。好ましいアルコール類は炭素数が2〜6個、好ましくは4〜6個の二価アルコール類であり、好ましくは、ブタン-1,4-ジオールおよびヘキサン-1,6-ジオールである。好ましい飽和脂肪族ポリエステル類は、このようなダイマー脂肪酸類および二価アルコール類に由来する。あるいは、飽和脂肪族ポリエステルは、分子量の小さい二酸類と共に炭素数が12〜48個のダイマーアルコール類に由来してもよい(炭素数は好ましくは、アジピン酸等の2〜6個、好ましくは4〜6個)。
【0059】
本発明に使用するのに適したTgが低いポリマーの別のクラスは、-O-(SiR-O)-繰り返し単位を有するポリマーとして本明細書に定義されるポリシロキサン類であり、ここで、RおよびRは、独立して、C1-8アルキル残基またはアリール残基から選択される。代表的な例は、シリコーンゴムとしても知られるポリジメチルシロキサンホモ-およびコポリマーであり、ガラス転移温度は約−130℃より低く、典型的には約−10℃より高くない。
【0060】
本発明に使用するのに適したTgが低いポリマーのさらなるクラスは、ポリアクリル酸ブチル類であり、当該技術分野で公知の方法によって調製することができる。官能化されたポリアクリル酸ブチル類は、ヒドロキシル終結ポリアクリル酸ブチルを含み、原子移動ラジカル重合(Macromol.Chem.Phys.2005、206、33-42に記述)によって合成することができる。
【0061】
本発明に使用するのに適したTgが低いポリマーのさらなるクラスは、ポリ(ジエン類)であり、例えば、ブタジエン(C繰り返し単位)またはイソプレン(C繰り返し単位)の重合によって得ることのできるポリ(ジエン類)である。例として、好ましくは分子量が約2000〜約10000g/molのヒドロキシル終結ポリブタジエン類および水素化ヒドロキシル終結ポリブタジエン類[Krasol(商標)、Cray Valley社から市販]等の官能化されたポリ(ジエン類)が挙げられる。その他の官能化されたポリ(ジエン類)として、無水物官能化ポリブタジエン類[Ricon(商標)、Cray Valley社から市販]およびカルボン酸終結ポリブタジエン類[Hycar(商標)、Noveon社から市販]が挙げられる。
【0062】
本発明に使用するのに適したTgが低いポリマーのさらなるクラスは、一般的な化学構造が-(O-R-)であるポリエーテル類であり、ここでRは、好ましくは、CおよびCヒドロカルビル(すなわちポリオキシプロピレンおよびポリオキシテトラメチレン)から選択され、例えば、ヒドロキシルまたはアミンで終結されていてもよい。例として、ヒドロキシル終結ポリオキシテトラメチレン[Terathane(登録商標)、Invista社から市販]、ポリオキシプロピレンジオール[Voranol(商標)220-28、Dow社から市販]およびポリオキシプロピレン[Jeffamine(商標)D4000、Hunstman社から市販]が挙げられる。
【0063】
好ましい実施形態では、Tgが低いポリマーBの数平均モル質量Mは、約1,000
〜約30,000g/molであり、典型的には約1,000〜約20,000g/mol、より典型的には約2,000〜約9,000g/mol、より典型的には約3000〜約6000g/molの範囲にある。ある実施形態では、Tgが低いポリマーBのセグメントを、市販されているポリマー等の複数のポリマーから形成し、一緒に共結合し、所望の分子量を得てもよい。
【0064】
複数のポリマー(B)のブロックを含むブロックコポリマー(M)では、ポリマー(B)のブロックはそれぞれ、同じであっても異なっていてもよい。例えば、各ポリマーブロックの分子量は同じであっても異なっていてもよく、または分子量範囲または多分散性指数(PDI)によって定義されてもよい。典型的には、ブロックコポリマーに存在するポリマーブロック(B)は、単一の分子量範囲または多分散性指数(PDI)によって定義されてもよい。各ポリマー(B)のポリマー骨格の化学的同一性は同じであっても異なっていてもよいが、ポリマー(B)の各ブロックについては同じであることが好ましい。
【0065】
ブロックコポリマー(M)
【0066】
ブロックコポリマー(M)は、当該技術分野に公知の通常の手技を用いて、芳香族ポリマー(A)およびTgが低いポリマー(B)のセグメントを化学的に結合することによって作製される。セグメントは上述のように適切に官能化され、例えば、ポリマー(A)および(B)の官能基に容易かつ定量的に反応する二官能性または結合試薬を使用して、2つのセグメント間の反応を容易にする。
【0067】
好ましくはポリマー(A)および(B)を、ヒドロキシルおよび/またはアミノ基で官能化してもよい。この実施形態では、適切な二官能性または結合試薬として、二塩化テレフタロイルおよび二塩化イソフタロイル、酸無水物並びにカルボジイミド等の二酸二塩化物が挙げられる。例えば、アミノ官能性芳香族ポリマー(A)をTgの低いポリマー(B)と混合し、好ましくは溶液を形成し、混合液をその後、二官能基試薬の溶液に加えてもよい。あるいは、ヒドロキシル官能性のTgが低いポリマー(B)を最初に余剰な二官能基試薬と反応させ、次にヒドロキシル官能性または好ましくはアミノ官能性の芳香族ポリマー(A)を加える。ポリマー(A)および(B)の化学的に結合したセグメントを含むブロックコポリマー(M)を反応液から単離し、その後乾燥させる。
【0068】
ブロックコポリマー(M)は好ましくは以下を含む。
(i)質量分率w(A)が約5%〜約99%、好ましくは約10%〜約95%、より好ましくは約15%〜約93%、より好ましくは約40%〜約90%、より好ましくは約55%〜約90%、およびある実施形態では、約60〜約80%である芳香族ポリマー(A)、および対応して、
(ii)質量分率w(B)が約95%〜約1%、好ましくは約90%〜約5%、より好ましくは約85%〜約7%、より好ましくは約60%〜約10%、より好ましくは約45%〜約10%、およびある実施形態では、約40〜約20%であるTgが低いポリマー(B)
ここで、w(A)およびw(B)は以下のように計算され、
w(A)=m(A)/m(M)
w(B)=m(B)/m(M)
ここで、
m(A)は芳香族ポリマーAの質量であり、
m(B)はTgが低いポリマーBの質量であり、および
m(M)はブロックコポリマーMの質量である。
【0069】
これらの制約のうち、好ましくはw(A)>w(B)であり、またはw(A)は少なく
とも50%であり、およびw(B)は50%より小さい。
【0070】
ブロックコポリマーの数平均モル質量Mは、好ましくは約3,000〜約150,000g/mol、好ましくは約3,000〜約80,000g/mol、好ましくは約3,000〜約40,000g/mol、より好ましくは約4,000〜約30,000g/mol、およびより好ましくは約9,000〜約30,000g/molである。
【0071】
熱硬化性樹脂前駆体
【0072】
本発明は主に1つ以上のエポキシ樹脂前駆体に由来する熱硬化性エポキシ樹脂に関する。エポキシ樹脂前駆体は、好ましくは分子当り少なくとも2つのエポキシ基を有し、分子当り3、4個以上のエポキシ基を有する多官能性のエポキシドであってもよい。エポキシ樹脂前駆体は、雰囲気温度で液体であることが適している。適切なエポキシ樹脂前駆体として、芳香族ジアミン類、芳香族モノ第1級アミン類、アミノフェノール類、多価フェノール類、多価アルコール類、ポリカルボン酸類等から成る化合物の1つ以上の群のモノ-若しくはポリ-グリシジル誘導体、またはその混合物が挙げられる。
【0073】
好ましいエポキシ樹脂前駆体は以下から選択され、
(i)ビスフェニルA、ビスフェニルF、ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジヒドロキシベンゾフェノン、およびジヒドロキシジフェニル、ビスフェニルA、ビスフェニルF、ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジヒドロキシベンゾフェノン、およびジヒドロキシジフェニル、
(ii)ノボラックに基づくエポキシ樹脂および
(iii)m-またはp-アミノフェノール、m-またはp-フェニレンジアミン、2,4-、2,6-または3,4-トルイレンジアミン、3,3’-または4,4’-ジアミノジフェニルメタンのグリシジル官能性反応生成物、具体的にはここで、エポキシ樹脂前駆体は、分子当り少なくとも2つのエポキシ基を有する。
【0074】
具体的な好ましいエポキシ樹脂前駆体は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA);ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(DGEBF);O,N,N-トリグリシジル-パラ-アミノフェノール(TGPAP);O,N,N-トリグリシジル-メタ-アミノフェノール(TGMAP);およびN,N,N',N'-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)から選択される。ある実施形態では、エポキシ樹脂前駆体は、DGEBAおよびDGEBFから選択される。好ましい実施形態では、エポキシ樹脂前駆体は、DGEBFおよびTGPAPおよびその混合物から選択される。
【0075】
エポキシ基とアミノ水素の当量比は、好ましくは1.0〜2.0の範囲にある。エポキシの余剰分を示す公式は、厳密な化学量論が好まれる。
【0076】
本発明に使用するのに適した市販のエポキシ樹脂前駆体として、N,N,N',N'-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(例えば、グレードMY9663、MY720またはMY721;Ciba-Geigy社);N,N,N',N'-テトラグリシジル-ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソ-プロピルベンゼン(例えば、EPON1071;Shell Chemical社);N,N,N',N'-テトラクリシジル-ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、(例えば、EPON1072;Shell Chemical社);p-アミノフェノールのトリグリシジルエーテル類(例えば、MY0510;Ciba-Geigy社);m-アミノフェノールのトリグリシジルエーテル類(例えば、MY0610;Ciba-Geigy社);好ましくは、25℃で粘性が8〜20Paの2,2-ビス(4,4'-ジヒドロキシフェニル)プロパン(例えば、DE R 661(Dow社)、またはEpikote828(Sh
ell))およびノボラック樹脂類等のビスフェノールAのベース材料のジグリシジルエーテル類;フェノールノボラック樹脂類のグリシジルエーテル類(例えば、DEN431またはDEN438;Dow社);ジ-シクロペンタジエンがベースのフェノールノボラック(例えば、Tactix556、Huntsman社);ジグリシジル1,2-フタル酸塩(例えば、GLY CEL A-100);ジヒドロキシジフェニルメタンのジグリシジル誘導体(ビスフェノールF)(例えば、PY306;Ciba Geigy社)が挙げられる。その他のエポキシ樹脂前駆体として、3',4'-エポキシシクロヘキシル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシラート(例えば、CY179;Ciba Geigy社)等の脂環式類およびUnion Carbide社の「ベークライト」のそれが挙げられる。
【0077】
本発明のある実施形態では、熱硬化性樹脂系または硬化できるポリマー組成物は、同じまたは異なる官能性を有するエポキシ樹脂前駆体の混合物を含む(ここで、この文脈での用語「官能性」は、官能性エポキシ基の数を意味する)。エポキシ樹脂前駆体の混合物は、分子当り2つのエポキシ基を有する1つ以上のエポキシ樹脂前駆体[これ以降、前駆体P2とする]、および/または分子当り3つエポキシ基を有する1つ以上のエポキシ樹脂前駆体[これ以降、前駆体P3とする]、および/または分子当り4つエポキシ基を有する1つ以上のエポキシ樹脂前駆体[これ以降、前駆体P4とする]を含む。混合物はまた、分子当り4つ以上のエポキシ基を有する1つ以上のエポキシ樹脂前駆体[これ以降、前駆体PPとする]を含む。ある実施形態では、P3前駆体のみ存在してもよい。代替の実施形態では、P4前駆体のみ存在してもよい。ある実施形態では、エポキシ樹脂前駆体の混合物は以下を含む
(i)約0重量%〜約60重量%のエポキシ樹脂前駆体(P2)
(ii)約0重量%〜約55重量%のエポキシ樹脂前駆体(P3)、および
(iii)約0重量%〜約80重量%のエポキシ樹脂前駆体(P4)。
【0078】
ある実施形態では、混合物は上述の割合で、所与の官能性のエポキシ樹脂前駆体をたった1つ含む。
【0079】
熱硬化性樹脂
【0080】
本発明の熱硬化性樹脂系または硬化できるポリマー組成物は、熱的に硬化できる。所望により、硬化剤および/または触媒を添加してもよいが、これらを使用することは、硬化速度を増加させ、および/または硬化温度を減少させる。好ましい実施形態では、任意の1つ以上の触媒と共に1つ以上の硬化剤が使用される。代替の実施形態では、本明細書に記述の熱硬化性樹脂系または硬化できるポリマー組成物は、硬化剤および触媒がなくとも熱的に硬化する。
【0081】
そうはいっても、好ましくは、熱硬化性樹脂系または硬化できるポリマー組成物は1つ以上の硬化剤を含む。硬化剤は、例えば、アミノ基当り分子量が最大500のアミノ化合物、例えば芳香族アミンまたはグアニジン誘導体等の、欧州特許第A-0311349号、欧州特許第A-0486197号、欧州特許第A-0365168号、または米国特許第6013730号(これらは参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている公知の硬化剤から適切に選択される。芳香族アミン硬化剤が好ましく、好ましくは、分子当り少なくとも2つのアミノ基を有する芳香族アミン、および具体的には好ましくは、ジアミノジフェニルスルホン類であり、例えば、アミノ基はスルホン基に関してメタまたはパラの位置にある。具体的な例は、3,3'-および4-,4'-ジアミノジフェニルスルホン(DDS);メチレンジアニリン;ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン(Shell Chemical社からEPON1062として市販);ビス(4-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン(Shell C
hemical社から EPON1061として市販);4,4’メチレンビス-(2,6-ジエチル)-アニリン(MDEA;Lonza社);4,4’メチレンビス-(3-クロロ、2,6-ジエチル)-アニリン(MCDEA;Lonza社);4,4’メチレンビス-(2,6-ジイソプロピル)-アニリン(M-DIPA;Lonza社);3,5-ジエチルトルエン-2,4/2,6-ジアミン(D-ETDA80;Lonza社);4,4’メチレンビス-(2-イソプロピル-6-メチル)-アニリン(M-MIPA;Lonza社);4-クロロフェニル-N,N-ジメチル-尿素(例えば、Monuron);3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル-尿素[例えばDiuron(商標)]およびジシアノジアミド[Amicure(商標)CG1200;Pacific Anchor Chemical社]である。ビスフェノール-Sまたはチオジフェノール等のビスフェノール鎖延長剤も、エポキシ樹脂類の硬化剤として役に立つ。具体的には、3,3'-および4-,4'-DDSが、本発明に使用するのに好ましい。
【0082】
ある実施形態では、熱硬化性樹脂系または硬化できるポリマー組成物は、硬化反応を加速させるために1つ以上の触媒を含む。適切な触媒は当該技術分野に公知であり、ルイス酸または塩基が挙げられる。具体的な例として、エーテル化合物またはそのアミン付加物(例えば、三フッ化ホウ素とエチルアミンの付加物)等の三フッ化ホウ素を含む組成物が挙げられ、具体的には、エポキシ樹脂前駆体は前述のアミン硬化剤と合わせて使用される。
【0083】
硬化できるポリマー組成物は、例えば米国特許第6265491号に開示されるような硬化剤および触媒を含んでいてもよい(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0084】
ブロックコポリマー(M)の量は、好ましくはw(M)=m(M)/mとして計算される質量分率w(M)で計算され、m(M)は、質量mが0.5%〜40%、好ましくは1%〜35%、およびより好ましくは2%〜30%である強靭化された熱硬化性樹脂組成物に存在するブロックコポリマーの質量である。
【0085】
硬化剤は、典型的には、組成物中の熱硬化性樹脂前駆体と硬化剤の総重量の約5〜60重量%で存在し、好ましくは約20〜50重量%、典型的には約25〜40重量%である。
【0086】
したがって、本発明は、強靭化された熱硬化性樹脂組成物(R)の調製の工程を提供し、当該工程は以下のステップを含む
(i)例えばアミノ-またはヒドロキシル-官能性芳香族ポリマー(A)および官能化されたTgが低いポリマー(B)から、本明細書に定義されるブロックコポリマー(M)を調製し、本明細書に記載されるように、添加または縮合下のヒドロキシルまたはアミノ基と反応する少なくとも2つの基を有するように、(例えば、二塩化物によって)官能化され、
(ii)前記ブロックコポリマー(M)を1つ以上の未硬化の熱硬化性樹脂前駆体(P)と混合し、得られた混合物を均質化し、および
(iii)例えば、低い温度で硬化剤/触媒に溶解/分散させることによって混合物を硬化し、その後、硬化物に作用させる[ブロックコポリマー(M)と前駆体は、通常、比較的高い温度で混合し、系は、反応物を制御するために、硬化剤を添加する前に冷却される]。
【0087】
硬化できるポリマー組成物と強靭化された熱硬化性樹脂組成物の使用
【0088】
本明細書に記述の組成物は、プレプレグ、および接着剤にも、注型または成形構造材料
を製造するために使用することができる。本明細書に記述の組成物は、具体的には、荷重負荷または耐衝撃構造を含む構造を成形するのに適している。組成物は、きちんとした、または繊維またはフィラーで補強された複合材料として使用されてもよい。
【0089】
したがって、本発明のさらなる態様に従い、本明細書に定義される熱硬化性樹脂組成物を含むか、本明細書に定義される硬化できるポリマー組成物から誘導することができる成形または注型品を提供する。
【0090】
本発明のさらなる態様に従い、本明細書に上述の熱硬化性樹脂組成物または硬化できるポリマー組成物を含む、またはそれから誘導することができる複合材料を提供し、ここで複合材料は、具体的には、プレプレグであり、またはそれを含む。
【0091】
成形製品は、通常のステップによって、本発明の組成物から得られ、そのステップとは、ブロックコポリマー(M)と未硬化の熱硬化性樹脂前駆体(P)を混ぜ、必要とされる硬化剤および触媒を添加し、得られた混合物を均質化し、混合物を金型に流し込み、成形製品を得て、少なくとも100℃の高温で成形製品を硬化し、硬化された成形製品を形成することである。
【0092】
好ましい実施形態では、荷重負荷または耐衝撃構造を成形するために、具体的には、組成物は、繊維またはフィラー等の補強剤をさらに含む複合材料である。
【0093】
繊維は、平均の繊維長が2センチメートルより短い、例えば約6ミリメートルの、短いまたは細かく切った状態で加えることができる。あるいは、好ましくは、繊維は、プレプレグを形成するために、連続しており、例えば、一方向に配置された繊維、または織物または編まれた、編まれた若しくは織られていない繊維であってもよい。用語「プレプレグ」は、本明細書に使用するとき、含浸させる前の、硬化していない、繊維で補強された複合材料を意味する。プレプレグは典型的には、連続した繊維を含むが、短いおよび/または細かく切った繊維と連続した繊維を組み合わせたものを使用してもよい。いくつかの用途について、プレプレグ繊維は、短いおよび/または細かく切った一方向の繊維だけから選択することがきる。
【0094】
繊維は特定のサイズがあってもなくてもよい。繊維は5〜35重量%、好ましくは少なくとも20重量%の濃度で典型的に加えることができる。構造的な適用については、例えばガラスまたは炭素といった連続的な繊維を、とりわけ30〜70容量%、より具体的には50〜70容量%で使用するのが好ましい。
【0095】
繊維は、とりわけ、ポリパラフェニレンテレフタルアミド等の剛直なポリマーの有機であってもよいし、無機であってもよい。無機の繊維のうち、「E」または「S」等のガラス繊維、またはアルミナ、酸化ジルコニウム、研磨用炭化ケイ素、その他のセラミック複合または金属類を使用することができる。極めて適した補強繊維は、炭素、とりわけ黒鉛である。本発明で特に有用であると考えられている黒鉛繊維は、商品名T650-35、T650-42およびT300でCytec社によって供給されているもの、商品名T800-HBで東レ社によって供給されているもの、商品名AS4、AU4、IM8およびIM7でHexcel社によって供給されているものがある。
【0096】
有機または炭素の繊維は、有害反応のない液体の前駆体組成物に可溶性であり、または繊維と本明細書に記述されている熱硬化性/熱可塑性物質組成物の両方に結合する意味で、本発明に記載の組成物に適合する材料で、好ましくは特定のサイズがあるか、ない。具体的には、樹脂前駆体または(ポリ)アリールスルホンで特定のサイズがあるかまたはない炭素または黒鉛繊維が好ましい。例として、無機の繊維は、好ましくは、繊維とポリマ
ー組成物の両方に結合する材料で特定のサイズを持つ、例えば、ガラス繊維に適用されるオルガノ-シラン溶剤がある。
【0097】
ある実施形態では、本明細書の上部に定義されるブロックコポリマーは、組成物中に存在する単なる強化剤である。代替の実施形態では、組成物は、Tgが高い工学的熱可塑性物質を含む通常の強化剤をさらに含んでいてもよい[例えば、ポリエーテルスルホン類等の本明細書に定義される芳香族ポリマー(A)、微粒子強化剤、例えば、ガラスビーズ、ゴム粒子、およびゴムがコーティングされたガラスビーズ等の形成前の粒子、ポリテトラフルオロエチレン、シリカ、黒鉛、窒化ホウ素、雲母、タルクおよびバーミキュライト等のフィラー、顔料、並びにリン酸塩等の安定剤]。反応基を有する液体ゴムも使用してもよい。組成物中の当該材料および任意の繊維状の補強材の計は、組成物の総容量の割合として、典型的には、少なくとも20容量%である。繊維およびその他の材料の割合は、反応、または本明細書の下部に定義された温度で加工した後の総組成物で計算される。さらなる代替の実施形態では、組成物中に存在する強化剤は、本明細書の上部に定義されたブロックコポリマーおよびTgが高い工学的熱可塑性物質(例えば、ポリエーテルスルホン類等の本明細書に定義される芳香族ポリマー(A))を含む、および、好ましくは、から成る。好ましい実施形態では、本明細書に定義されるブロックコポリマー(M)および1つ以上の未硬化の熱硬化性樹脂前駆体(P)を含む、または、に由来する本発明の熱硬化性樹脂系、または硬化できるポリマー組成物、または強靭化された熱硬化性樹脂組成物は、ゴム(例えば、シリコン、ブタジエン、アクリルおよびニトリルゴムから成る群から選択されるゴム)をさらに含まず、および/またはシリコン微細粒子をさらに含まない。
【0098】
複合物は、上述の硬化できるポリマー組成物の成分を繊維状の補強剤および/またはその他の材料と組み合わせることによって作製される硬化できるポリマー組成物から得られる。例えば、プレプレグの製造は典型的に、変性剤(M)と未硬化の熱硬化性樹脂前駆体(P)を混ぜ合わせ、必要とされる硬化剤および触媒を加え、得られた混合物を均質化し、均質化された混合物を、一束または一房の並行に配列された繊維または繊維織物または、編みこまれた若しくは編まれた若しくは編まれていない布に塗り、プレプレグを形成する。処理を助けるために、溶媒があってもよい。溶媒およびその割合は、成分の混合物が少なくとも安定した乳剤、好ましくは明らかに安定した単相の溶液を形成するように、選ばれる。典型的に、溶媒の混合液、例えば、ハロゲン化炭化水素およびアルコールが、99:1〜85:15の適切な範囲の比で、使用される。便宜的に、このような混合液中の溶媒は1atmの圧力で、100℃で沸かすものであり、使用される割合で、相互に混和できるものである。あるいは、成分を溶融および高剪断によってまとめることができる。混合液は十分に均質になるまで撹拌する。その後、いかなる溶媒も蒸発させることによって取り除く。蒸発は、少なくとも最終段階では、50〜200℃が適切であり、例えば、13.33Pa〜1333Pa((0.1〜10mmHg)の範囲の低大気圧でなされる。組成物は、好ましくは、揮発性溶媒の最大5%w/wを含み、繊維を含浸させるために使用する場合に流れを助ける。この余分な溶媒は、含浸装置のホットローラーに接触させ取り除かれる。
【0099】
もっと具体的には、以下のように本発明の組成物から部材および複合物を成形する。樹脂溶液の形態の組成物は、パネル、プレプレグ等の調製のために適切な金型または道具に移行させ、金型または道具は、望ましい脱ガス温度に予熱されている。安定的な乳剤を、任意の補強、強化、充填、核剤等と合わせ、温度を上昇させ、その硬化を開始する。温度を最大200℃、好ましくは160〜200℃、より好ましくは約170〜190℃で、漏れているガスの変形作用を抑制するために、またはボイド形成を抑制するために、気圧を高くして、適切には最大10barの気圧、好ましくは3〜7barの範囲の絶対気圧で、適切に硬化する。硬化温度は、最大5℃/分、例えば、2℃〜3℃/分で加熱することによって、適切に保たれ、最大9時間、好ましくは最大6時間、例えば3〜4時間の必
要とされる時間維持される。触媒を使用することによって硬化温度をもっと低くしてもよい。圧力を完全に抜き、最大5℃/分、例えば3℃/分で冷却することによって温度を下げる。大気圧で、190℃〜200℃の温度範囲で、ポストキュアを行ってもよく、適切な加熱速度を用いて、生成物またはその他のガラス転移温度を向上させる。金型および道具は、いかなる適切な材料、例えば、用いる成形温度を超えて耐熱性のあるエポキシまたはビス-マレインイミド類等の不飽和ポリエステルまたは熱硬化性樹脂で構築されてもよい。ガラス繊維の形状で補強性は適切に与えられる。共取り金型を通常の様式で調製してもよい。
【0100】
すでに存在しているまたは新たに加えられたいくつかの不揮発性溶媒を含んでいる可能性のある組成物を、例えば、粘着剤として、または表面をコーティングするために、または、あるいは発泡状態で流し込まれることによって固体の構造物を作製するために、使用することができる。短い繊維補強をその硬化の前に、組成物に組み込んでもよい。好ましくは、繊維で補強された組成物は、本質的に連続する繊維を通し、当該樹脂組成物に接触させることによって作製される。得られる含浸された繊維補強剤を単独で、またはその他の材料、例えば、それ以上の量の同じ若しくは異なるポリマーまたは樹脂前駆体または混合物と一緒に使用して、形を成した部材を形成してもよい。この手技の詳細は、欧州特許第A-56703、102158および102159号に記述されている。
【0101】
さらなる手順は、例えば、加圧成形、押し出し、溶解鋳造、またはベルト鋳造によって、完全には硬化していない組成物を薄膜に形成し、例えば、比較的短い繊維、織布、または本質的に連続した繊維の形態で、混合が起こる十分な温度および圧力の条件で、当該薄膜を繊維補強剤に積層し、繊維を流し、含浸させ、得られる積層体を硬化することを含む。
【0102】
積み重ねた含浸された繊維補強剤は、本質的に欧州特許第A56703、102158、102159号の1つ以上の手順によって作製されるように、熱および圧力、例えば、オートクレーブ、真空または圧縮成形またはヒートローラーによって、温度は熱硬化している樹脂の硬化温度を超えて、すでに硬化している場合は混合物のガラス転移温度を超えて、便宜的に少なくとも180℃および典型的には最大200℃で、圧力は1barを超えて、好ましくは1〜10barの範囲で、一緒に積層することができる。
【0103】
得られる複数層の積層体は異方性であってもよく、その繊維は、ある角度、便宜的には大部分の準等方性の積層体では45°であるが、あるいは例えば30°または60°または90°または中間の角度で、繊維が層の上下の繊維に対して向いている層のそれぞれにおいて、連続的、一方向、本質的に互いに平行を向いており、または準等方性である。異方性と準等方性の中間の配向性および組み合わせた積層体を用いてもよい。適切な積層体は、少なくとも4つ、好ましくは少なくとも8つの層を含む。層の数は積層体の適用、例えば、必要とされる強さに依存し、32またはそれ以上の積層体、例えば数百の層が望まれてもよい。層間の領域では上述のように凝集があってもよい。織物繊維は、準等方性または異方性と準等方性の中間の例である。
【0104】
硬化できるポリマー組成物は、金型若しくは道具を構成する材料または、樹脂組成物を硬化させようとする材料が、多少なりとも熱感受的になる温度より低い温度で、硬化されるように適切に適合される。
【0105】
本発明のさらなる態様に従い、前述に定義したように、適切な金型若しくは道具中に、または形成されるはずの同等の状態で、硬化できるポリマーを配置し、組成物を適切な圧力、例えば雰囲気圧で所望の高温に供し、必要とされる期間、温度を保つことを含む熱硬化性樹脂の製造方法を提供する。
【0106】
本発明のさらなる態様に従い、熱と圧力、例えば、オートクレーブ、真空または圧縮成形またはヒートローラーによって、ポリマー組成物の硬化温度を超える温度で、一緒に積層されるプレプラグを含む複合物を提供する。
【0107】
本発明は、通常のプレプラグ技術よって、および樹脂注入技術(例えば米国特許第2004/0041128号)によっても、複合物の製造に適用できる。樹脂注入は、樹脂トランスファー成形(RTM)、液状樹脂注入(LRI)、真空支援型樹脂トランスファー成形(VARTM)、柔軟成形用具を用いる樹脂注入(RIFT)、真空支援型樹脂注入(VARI),樹脂薄膜注入(RFI)、制御大気圧樹脂注入(CAPRI)、VAP(真空支援型工程)およびシングルラインインジェクション(SLI)等の加工技術を網羅する一般的用語である。具体的には、本明細書に記述される複合物は、米国特許第2006/0252334号に記述される樹脂注入工程の樹脂可溶性熱可塑性物質ベールの使用によって形成される複合物を含む(本開示は参照により本明細書に組み込まれる)。ある実施形態では、複合物は、樹脂注入によって製造され、構造補強補助構造繊維(乾燥)および樹脂可溶性熱可塑性物質ベールの成分を含む補助構造が、バッグ、金型または道具に配置され、予備成形、硬化できる樹脂マトリックス組成物が、組み合わされた構造的補強繊維およびベールに直接的に注射/注入され、その後硬化される。
【0108】
本発明のさらなる態様に従い、熱可塑性物質、または前に定義されたように、組成物、またはプレプログ若しくは複合物を含む、または、組成物に由来する熱可塑性物質が変性された熱硬化性樹脂形成生成物、具体的には、前に定義された方法によって得られるものを提供する。
【0109】
本発明の組成物は、具体的には、輸送の適用(航空宇宙、航空、航海、および陸上車両、並びに自動車、鉄道および客車業界を含む)、建物/建設の適用、またはその他の商業上の適用での使用に適した要素の製造に有用である。
【0110】
本発明に記載の強靭化された熱硬化性樹脂は、均質化した混合物[必要とされる硬化剤および触媒と共にブロックコポリマー(M)および未硬化の熱硬化性樹脂前駆体(P)を含む]を、コーティング剤として、少なくとも2つのボディーの平坦または構造化された表面に適用し、そのボディーを少なくとも50℃の温度に加熱して、当該ボディーのコーティングされた表面をお互いにプレスし、当該ボディーの表面の間に接着結合部を形成することを含む、接着結合部を作るためにも使用することができる。
【0111】
本発明のさらなる態様に従い、熱硬化性樹脂(R)、例えば、熱硬化性樹脂中のポリマー(B)が不溶性であることによって、ポリマー(B)を強化剤としては使用できないまたは到達しがたいものにする熱硬化性樹脂に、本明細書に定義されるTgが少なくとも150℃の熱可塑性芳香族ポリマー(A)を、本明細書に定義されるTgの低いポリマー(B)のための相溶化剤として、使用することを提供し、ここで、
(i)前記熱可塑性芳香族ポリマーブロック(A)および前記Tgの低いポリマー(B)は、当該熱可塑性芳香族ポリマー(A)に由来するブロックを少なくとも1つ、および当該Tgの低いポリマー(B)に由来するブロックを少なくとも1つ有するブロックコポリマー(M)の形態にあり、
(ii)前記ブロックコポリマー(M)は前記熱硬化性樹脂(R)の強化剤であり、
(iii)Tgの低いポリマー(B)のTgは、約−130℃〜約+40℃の範囲にあり、
(iv)芳香族ポリマー(A)は、前記熱硬化性樹脂(R)の未硬化の熱硬化性樹脂前駆体(P)に可溶であり、
(v)Tgの低いポリマー(B)は、未硬化の熱硬化性樹脂前駆体(P)に不溶性で
ある。
【0112】
本発明のさらなる態様に従い、熱硬化性樹脂(R)、例えば、熱硬化性樹脂中のTgの低いポリマー(B)が不溶性であることによって、ポリマー(B)を強化剤としては使用できないまたは到達しがたいものにする熱硬化性樹脂中のTgの低いポリマー(B)を適合させる方法を提供し、その方法は、当該Tgの低いポリマー(B)を、当該熱可塑性芳香族ポリマー(A)に由来するブロックを少なくとも1つ、および当該Tgの低いポリマー(B)に由来するブロックを少なくとも1つ有するブロックコポリマー(M)の形態で、Tgが少なくとも約150℃である熱可塑性芳香族ポリマーブロック(A)と組み合わせることを含み、ここで、
(i)前記ブロックコポリマー(M)は、前記熱硬化性樹脂(R)の強化剤であり、
(ii)Tgの低いポリマー(B)のTgは、約−130℃〜約+40℃の範囲にあり、
(iii)芳香族ポリマー(A)は、前記熱硬化性樹脂(R)の未硬化の熱硬化性樹脂前駆体(P)に可溶であり、
(iv)Tgの低いポリマー(B)は、未硬化の熱硬化性樹脂前駆体(P)に不溶性である。
【0113】
本発明のブロックコポリマーは、国際公開第2010/136772-A号(本開示は参照により本明細書に組み込まれる)、並びに、具体的には、このような粒子を熱可塑性物質ポリマー(ここでは、本発明のブロックコポリマーに置き換わる)から調製する開示、樹脂系およびプレプレグ、そこから作製される複合物および繊維の予備成形物の開示のように、プレプレグおよび複合材料の層間を強化するために、工学的に架橋結合された熱可塑性物質粒子を調製するために使用されてもよい。層間領域は、繊維(炭素繊維等)の層の間の複合物の樹脂が豊富な領域を含む複合材料の部分である。このような粒子を調製する場合、本発明のブロックコポリマーは、典型的に(および好ましくは)、国際公開第2010/136772-A号に開示される1つ以上の架橋結合剤に付随して、使用される。架橋結合剤は、熱硬化している樹脂(典型的には、本明細書に記述されるエポキシ樹脂)中の粒子を溶解すること、および未硬化の熱硬化している樹脂を粒子に拡散することに作用する。したがって、さらなる態様では、本発明は、本明細書に記述されるブロックコポリマー、および当該熱可塑性物質ポリマーの骨格に架橋結合される架橋結合剤から選択される熱可塑性物質ポリマーの骨格を有する、工学的に架橋結合された熱可塑性の粒子を提供し、ここで、架橋結合剤は、当該熱可塑性物質ポリマーの反応性ペンダント基に反応性であり、熱可塑性の骨格は、化学的に架橋結合でき、工学的に架橋結合された熱可塑性の粒子は、硬化中の熱硬化している樹脂に実質的に不溶性であり、工学的に架橋結合された熱可塑性の粒子は、硬化中に膨張することができ、および熱硬化している樹脂は、工学的に架橋結合された熱可塑性の粒子に拡散することができる。粒子の硬化前の粒径は、典型的に、約1〜約100μmである。
【0114】
本発明を、以下の実施例を参照することで、非限定的な様式で、説明する。
【実施例】
【0115】
ブロックコポリマーを調製するために以下の材料を使用した。
【0116】
E1:二量体化された脂肪酸から作成された飽和ポリエステルジオール、モル質量の平均数は3000g/mol、DIN EN ISO4629による水酸基価(“OHN”)は(37.1±2.8)mg/gであり、(0.66±0.05)mol/kgのポリエステルジオールのヒドロキシル基の物質、[(登録商標)Priplast 3196、Croda International Plc.社]の具体的な量に当量である。
【0117】
E2:二量体化された脂肪酸から作成された飽和ポリエステルポリオール、モル質量の平均数は2000g/mol、OHN=(55±5)mg/g、(0.98±0.09)mol/kgのポリエステルジオールのヒドロキシル基の物質、[(登録商標)Priplast 3199、Croda International Plc.社]の具体的な量に当量である。
【0118】
ポリエーテルスルホン「PES」を、欧州特許第0311349-A号、実施例1に記述されているように調製した。
【0119】
「混合溶媒」は、乾燥した、容積比が2:1のジクロロメタンおよびクロロホルムの水分のない混合物である。
【0120】
「酸性化メタノール」は、1mLの氷酢酸と1Lのメタノールを混合したものである。
【0121】
実施例1-PESセグメント
【0122】
欧州特許第0311349-A号に開示されている手順に従い、温度を280℃に上昇させて、溶媒としてのジフェニルスルホンまたはスルホラン中の炭酸カリウムの存在下で、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)をハイドロキノン(HQ)、4,4’-ジヒドロキシ-ジフェニルスルホン(ビスフェノールS、“ビスS”)およびメタ-アミノフェノール(MAP)と反応させることによって、アミン終結ポリエーテルスルホンを調製した。MAPはPESポリマー鎖を官能化するために使用する。
【0123】
ハイドロキノンの物質n(HQ)と物質n(BisS)の量の比に、n(HQ)/n(BisS)=1.5mol/molを使用した。抽出物の量または出発生成物を、計算されたモル質量Mの平均数が3100g/mol〜9500g/molに達するように調節した。PESポリマーのMおよびアミン官能性f(N)(ポリマー鎖当りのアミン性窒素原子の平均数)を表1にまとめる。4つのPESポリマーすべてについて、PES:PEES(I:II)単位のモル比は、上に定義したように、40:60である。
【表1】
【0124】
一連のブロックコポリマーをその後、以下に記述されるように、不活性雰囲気下、二酸塩化物化合物によって、PESとポリエステルポリオール構成要素をカップリングすることによって合成した。
【0125】
実施例2-ブロックコポリマー(変性剤)M1の合成
【0126】
ブロックコポリマーM1を、以下の手順に従い、ポリエステルポリオールE2およびポリエーテルスルホンPES-1から合成した。
【0127】
3.28gのテレフタル酸塩化物(16mmol)を330mLの混合溶媒に溶解した。溶液をドライアイスの浴によって冷却した。
【0128】
16.00gのE2(8mmol)を165mLの混合溶媒および6.5mLの無水ピリジンに希釈した。この溶液を冷たい酸塩化物溶液に加えた。混合液をさらに5分間撹拌した。ドライアイスの浴をその後取り除き、反応混合液は室温に達し、さらに24時間強く撹拌した。
【0129】
49.60gの乾燥PES1(16mmol)を330mLの混合溶媒および6.5mLの無水ピリジンに溶解した。PES溶液を、ポリエステルポリオールを官能化した塩化アシルの溶液に加えた。反応溶液を室温で48時間撹拌した。反応溶液を1Lの酸性化メタノールに注ぐことによって、反応生成物を沈殿させた。濾過後、沈殿したポリマーを3Lの各冷却水で4回洗浄し、200mLのメタノールでリンスし、真空下、70℃で一晩乾燥させた。
【0130】
M1の特徴を表2にまとめる。セグメントEの質量m(E)を、当該セグメントを含むポリマーの質量mで割ることによって、ポリマーのEセグメントの質量分率w(E)を計算した。
【0131】
実施例3-ブロックコポリマー(変性剤)M2、M3およびM4の合成
【0132】
この手順に関係する各溶液を混合溶媒で調製した。ブロックコポリマーM2、M3およびM4を以下の手順に従い合成した。
【0133】
3.28gのテレフタル酸塩化物(16mmol)を330mLの混合溶媒に溶解した。溶液をドライアイスの浴によって冷却した。
【0134】
24.00gのE1(8mmol)を165mLの混合溶媒および6.5mLの無水ピリジンに溶解した。塩基性のポリエステルポリオール溶液を冷たい酸塩化物溶液に加えた。混合液をさらに5分間撹拌した。ドライアイスの浴をその後取り除いた。反応混合液は室温(20℃)に達し、さらに24時間強く撹拌した。
【0135】
乾燥PES(16mmol、PES-1について49.60gと当量、PES-2について118.40gと当量およびPES-4について152.00gと当量)を330mLの混合溶媒および6.5mLの無水ピリジンに溶解した。別々に、これらのPES溶液を、ポリエステルポリオールを官能化した塩化アシルの溶液に加えた。反応溶液を室温(20℃)でさらに48時間撹拌した。
【0136】
反応溶液を1Lの酸性化メタノールに注ぐことによって、反応生成物を沈殿させた。濾過後、沈殿したポリマーを3Lの水で4回洗浄し、200mLのメタノールでリンスし、真空下、70℃で一晩乾燥させた。
【0137】
この手順に従い、3つのタイプのブロックコポリマーを表2に記述されるように、3つのタイプのブロックコポリマーをポリエステルポリオールE1から合成した。
【0138】
実施例4-ブロックコポリマー(変性剤)M5およびM6の合成
【0139】
以下の手順に従い、鎖延長ポリエステルポリオールE1からブロックコポリマーM5およびM6を合成した。
【0140】
3.59gのテレフタル酸塩化物(18mmol)をジクロロメタン/クロロホルム(350mL)に溶解した。溶液をドライアイスの浴によって冷却した。
【0141】
35.00gのE1(12mmol)を240mLの混合溶媒および9.6mLの無水ピリジンに溶解した。
【0142】
塩基性のポリエステルポリオール溶液を冷たい酸塩化物溶液に加えた。混合液をさらに5分間撹拌した。ドライアイスの浴をその後取り除いた。反応混合液は室温(20℃)に達し、さらに24時間強く撹拌した。
【0143】
86.33gの乾燥PES-2と100.33gのPES-3(12mmol)を、別々に、230mLの混合溶媒および4.8mLの無水ピリジンに溶解した。PES溶液を、ポリエステルポリオールを官能化した塩化アシルの溶液に加えた。反応溶液を室温でさらに48時間撹拌した。
【0144】
反応溶液を1Lの酸性化メタノールに注ぐことによって、反応生成物を沈殿させた。濾過後、沈殿したポリマーを3Lの各水で4回洗浄し、200mLのメタノールでリンスし、真空下、70℃で一晩乾燥させた。M5およびM6の特徴を表2にまとめる。
【0145】
実施例5-ブロックコポリマー(変性剤)M7の合成
【0146】
以下の手順に従い、鎖延長ポリエステルポリオールE1およびPES-3からブロックコポリマーM7を合成した。
【0147】
3.189gのテレフタル酸塩化物(16mmol)を315mLの混合溶媒に溶解した。溶液をドライアイスの浴によって冷却した。
【0148】
35.00gのE1(12mmol)を240mLの混合溶媒および9.6mLの無水ピリジンに溶解した。
【0149】
塩基性のポリエステルポリオール溶液を冷たい酸塩化物溶液に加えた。混合液をさらに5分間撹拌した。ドライアイスの浴を取り除いた。反応混合液は室温(20℃)に達し、さらに24時間強く撹拌した。
【0150】
66.89gの乾燥PES-3(8mmol)を150mLの混合溶媒および3.2mLの無水ピリジンに溶解した。このPES溶液を、ポリエステルポリオールを官能化した塩化アシルの溶液に加えた。
【0151】
反応溶液を室温で、さらに48時間撹拌した。反応溶液を1Lの酸性化メタノールに注ぐことによって、反応生成物を沈殿させた。濾過後、沈殿したポリマーを3Lの各水で4回洗浄し、200mLのメタノールでリンスし、真空下、70℃で一晩乾燥させた。M7の特徴を表2にまとめる。
【表2】
【0152】
実施例6-モル質量が高いPES強化剤(変性剤)M8の合成
【0153】
鎖延長PESポリマー、M8を、PES-2の2つの分子を酸塩化物の1つの分子と反応させることによって合成した。変性剤M8は、比較例として本明細書に含まれる。
【0154】
0.69gのテレフタル酸塩化物(3.5mmol)を80mLの乾燥ジクロロメタンに溶解した。50.00gのPES2(7mmol)を175mLのジクロロメタンおよび0.5mLの無水ピリジンに溶解した。
【0155】
塩基性のポリエーテルスルホンを酸塩化物溶液に注いだ。混合液を室温でさらに48時間撹拌した。
【0156】
反応溶液を1Lの酸性化メタノールに注ぐことによって、反応生成物を沈殿させた。濾過後、沈殿したポリマーを3Lの各水で4回洗浄し、200mLのメタノールでリンスし、真空下、70℃で一晩乾燥させた。M8のモル質量の平均数をH-NMRを用いて、15000g/molと特定した。
【0157】
比較例C1〜C3
【0158】
市販されているブロックコポリマーで調製された一連の樹脂を、以下のように比較例として使用した。
【0159】
比較の強化剤C1は、Fortegra(登録商標)100であり、Dow Chem
icals社から使用できるポリエーテルブロックコポリマーであり、米国特許出願第2009/123759号に開示されている可溶性のポリ(オキシエチレン)セグメントを含むことが理解される。
【0160】
比較の強化剤C2は、Nanostrength(登録商標)AFXE20(Arkema社、フランス)であり、国際公開第2006/077153号の実施例1に記載、並びに欧州特許第0524054号および欧州特許第0749987号に開示されているように、SBMブロックコポリマー(ポリスチレン/ポリブタジエン/ポリメタクリル酸メチル)であると理解される。
【0161】
比較の強化剤C3は、Nanostrength(登録商標)M22(Arkema社、フランス)であり、国際公開第2006/077153号の実施例3に記載のMAMブロックコポリマー(ポリメタクリル酸メチル/ポリアクリル酸ブチル/ポリメタクリル酸メチル)であると理解される。
【0162】
実施例7-強靭化された熱硬化性樹脂組成物の調製
【0163】
以下の手順は実施例を特徴づける。
【0164】
粘着度
本発明では、経験のあるオペレーターによって、炭素繊維プレプレグの粘着度のレベルを準定量的に測定した。積層した後、2つの積み重ねたプレプレグを引き分けた。2つの積み重ねたものを引き分けるために遭遇した抵抗は、直接的には、プレプレグの粘着度と相関しており、以下のようにスコアが付けられる。
ゼロ:2つの積み重ねたものは互いに固着していない。プレプレグは乾燥しているものとして記述される。
低:2つの積み重ねたものはわずかに固着している。軽い圧力をかけて、積み重ねたものが互いに固着していることを確認しなければならない。
中程度:2つの積み重ねたものは固着している。簡単に積層でき、引き分けることができる。
高:2つの積み重ねたものは、強く固着している。互いに強く結合している。
【0165】
あるいは、商業的に一般的なテスト機械で粘着度を評価してもよい。プレプレグシートは一緒に圧力で結合され、それらを引き離すのに必要とされる力を測定する。
試料:(50x50)mm
負荷速度:1mm/分
接着負荷:0.12MPa
負荷時間:(5±2)秒
引きはがし速度:10mm/分
粘着性はその後、10〜1のスケールで表され、10は、各樹脂/硬化剤組成物のためのニート熱硬化性樹脂系について記録される引きはがし力の最大であり、1は、当該最大の引きはがし力の10%またはそれより小さいことである。
【0166】
粘着度の向上は複合物の調製に利益をもたらし、複合物の加工性および操作に利点を与える。
【0167】
機械的特性
ニート樹脂に、破壊靭性(用語K1CおよびG1Cで測定される)および弾性の弾性率(E弾性率)を、手法ISO13586に記載のオープニングモードI試験に用いて、コンパクトテンション(CT)試験片上で測定した。
【0168】
E弾性率は、SaxenaおよびHudakによって提唱された手法に従い計算した(International Journal of Fracture、1978、vol.14、p.453et seq.)。ノッチを試験片にかけ、ノッチにカミソリの刃をたたくことによって、鋭利な予亀裂を作った。最初の予亀裂を試験片の長さを、両端に可視できる亀裂から評価した。試験は、制御された雰囲気条件下(23℃、50%の相対湿度)および10mm/分のクロスヘッド速度で、一般的なテスト機械モデルZwick Z 2.5kNを使用して実施した。各エポキシ形成の4つの試験片の最小を試験した。
【0169】
炭素繊維積層体上で、ボーイング標準BSS7273(1994年1月19日)に従いGICを測定した。
【0170】
ガラス転移温度
Ares LS 2K/2K FRT装置を用いて、硬化された樹脂に、動機械的熱分析によってガラス転移温度を測定した。3K/分の加熱ランプ、0.1Hzの周波数および0.1%の張力で、長方形のバー(1.4x4.0x45)mmを30℃から300℃の温度変化に供した。正弦δ対温度曲線の最高点での温度をガラス転移温度として報告する。
【0171】
形態
【0172】
強靭化された樹脂組成物の形態を光学顕微鏡検査法(OM)、走査電顕法(SEM)または透過電子顕微鏡法(TEM)を使用して特定し、これらの分析結果を以下の表に示す。反射の光学顕微鏡検査法分析およびSEM検査の前に試験片の横断面を磨いた。SEM分析の前に、磨かれた試験片を硫酸、リン酸および蒸留水から成る、超酸溶液で処置し、形態を明らかにした。10mL〜4mL〜1mLの容積比を使用した。0.1gの過マンガン酸カリウムで活性化された超酸溶液は、樹脂系(すなわち変性剤が豊富な領域)で発現された第2相を、優先的にエッチングした。20分間のエッチング溶液での処置により、再現可能な結果を導いた。試験片をその後Polaron SC7640ダイオードスパッタコータによって、白金膜でコーティングし、日立S4500電介放出SEMおよび関連するPCIデジタルイメージ取得システムによって、検査した。
【0173】
透過電子顕微鏡法(TEM)で検査した強靭化された樹脂系の形態を図1〜3の顕微鏡写真によって表す。材料の超薄セクション(薄さ約50nm)をReichert Ultracut E ウルトラミクロトームを用いて調製した。TEM装置は、フィリップスCM12 TEMおよび関連するGatanデジタルカメラシステムであった。
【0174】
分析された観察した形態を均質または相分離として分類した。相分離の場合、形態を以下のように分類した。
(i)マクロ相分離:樹脂系の不均質を視認できる。樹脂はマクロスケールで不均質である。
(ii)粗い形態:樹脂はマクロスケールでは均質であるが、OMまたはSEM表示よる接近した観察では、ミクロンスケールで不均質性が示される。
(iii)サブミクロン形態:樹脂はマクロスケールで均質である。SEMまたはTEMによるより接近した観察では、100nmより大きく、最大1μmの大きさの第2相が示される。
(iv)ナノ構造:樹脂はマクロスケールで均質である。SEMまたはTEMによるより接近した観察では、100nmより大きくない少なくとも1つの大きさの第2相が示される。最も好ましい形態。
【0175】
サブミクロンおよびナノ構造形態を、以下のいずれかとして、それらの構造に依存して分類した。
(a)共連続:熱硬化性マトリックスで、2つの完全に複雑な連続的な相(すなわち無限クラスタ)を形成している第2相を記述するため。その系を相互嵌入ポリマー網目(IPN)として記述することもできると思われる。
(b)半連続:中断された連続的なネットワーク(いわゆる有限クラスタ)を形成している第2相を記述するため。その系を準相互嵌入ポリマー網目(セミIPN)として記述することもできると思われる。
(c)微粒子:第2相が粒子に分布されている形態を記述するため。粒子は拡散され、または連続的なネットワークを形成して凝集されていてもよい。微粒子形態は、海が連続的な樹脂マトリックスに、島が粒子に対応する「海の島」構造として記述されてもよい。
【0176】
共連続的な形態は、微粒子形態に比べて破壊靭性が高い傾向にある。しかしながら、本発明の樹脂系の微粒子ナノ構造形態は、樹脂にとって溶媒抵抗が重要な必要条件である場合に、特に魅力的である。したがって本発明の樹脂系の微粒子ナノ構造形態は、微粒子ナノ構造形態ほど大きくないが、破壊靭性を有意に高め、高い破壊靭性と良好な溶媒抵抗の特に有利な組み合わせを提供する
【0177】
本発明の熱硬化性樹脂は、好ましくは、わずか100nmの拡散された第2相を示し、好ましくは、微粒子ナノ構造を示す。
【0178】
粘性
【0179】
温度の機能としての樹脂の粘性の進化を70℃からゲル化点まで分析し、貯蔵弾性率および損失弾性率が等しい(または言い換えればタンデルタが1に等しい)ときに、実験的に達する温度として定義した。
【0180】
周波数1Hz、張力20%および1K/分の加熱灯という実験条件に従い、平行平板モードのAres LS 2K/2K FRT粘度計装置および動的温度ランプ試験法(Dynamic Temperature Ramp Test method)で実験を行った。
【0181】
溶媒抵抗
【0182】
メチルエチルケトン[MEK;chromasolvgrade(Aldrich社)]を使用して、溶媒抵抗を評価した。硬化された材料(容積45×4×1.4mm)の長方形のバーを、70℃で48時間、乾燥させ、沸騰したMEKに秤量(t=0)し、浸した。コンデンサおよび2つのガラス栓を備えた500mLの3首の丸底フラスコ内で実験を行った。サーモスタットの油浴(T=120℃)でMEKを還流させた(bp=80℃)。各材料について、少なくとも4つの試験片を、1日当り約7〜8時間、計約40〜49時間、概して積極的な処置に曝露した。系を一晩放冷した。それぞれの試験片の溶媒取り込みを、新たに曝露する前に測定した。重量測定の標準偏差は約<0.1%であった。各曝露時間について、(W-Wd)/Wd*100に等しい溶媒取り込みを計算した。Wは、時間tの試験片の質量に対応し、Wdは乾燥した試験片の質量に対応する(t=0)。
【0183】
材料
【0184】
以下のエポキシ樹脂を試験に使用した。
【0185】
(登録商標)Araldite PY306、Huntsman Advanced Materials社の具体的な中身が5.99mol/kg〜6.41mol/kgのエポキシ基(156g/mol〜167g/molの「エポキシ当量」)であるビスフェノールF(DGEBF)のジグリシジルエーテル。
【0186】
(登録商標)Araldite MY0510、Huntsman Advanced Materials社の具体的な中身が9.35mol/kg〜10.53mol/kgのエポキシ基(95g/mol〜107g/molの「エポキシ当量」)であるO,N,N-トリグリシジルパラ-アミノフェノール(TGPAP)。
【0187】
(登録商標)Araldite MY721、Huntsman Advanced Materials社の具体的な中身が8.70mol/kg〜9.17mol/kgのエポキシ基(109g/mol〜115g/mol)の「エポキシ当量」)であるN,N,N’,N’-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)。
【0188】
硬化剤は、以下の2つの異なる異性体をとして有用されるジアミノジフェニルスルホン(DDS)であった。
(登録商標)Aradur9664-1、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(Huntsman Advanced Materials社)
(登録商標)Aradur9719-1、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(Huntsman Advanced Materials社)
【0189】
触媒は、3フッ化エチルアミン複合体(BF.MEA;Aldrich社;融点85〜89℃)であった。
【0190】
これらの材料は、これ以降、簡潔さのために、商用名によって一般的に示される。調製される混合物の組成物を、以下の表の試験結果に沿って列挙する。
【0191】
実施例7.1-ニート樹脂の調製のための低温硬化系
実施例に使用される様々な要素の質量を表3に示す。
【表3】
PY306およびMY0510を70℃で30分間混合した。強化剤をエポキシド混合物に加え、撹拌した。温度を120℃に上げ、強化剤を1時間の混合後に完全に溶解させた。その後、混合物を硬化剤3,3’-DDSを加える前に、90℃まで冷却した。硬化は、90℃で30分間絶え間なく混合して、溶解した。混合物をさらに75℃まで冷却した。BF.MEAのアセトン溶液を混合物に加え、さらに20分間混合した。製剤化された樹脂を金型に流し、75℃で3時間脱ガスし、最後に120℃でさらに3時間硬化し、180℃で2時間、次の硬化を行った。特徴を示したデータを以下の表4.1に表す。
【表4】
したがって、PES-2は、低温の硬化エポキシ樹脂前駆体に可溶性であり、硬化後、均質相または共連続第2相のいずれかをナノスケールで形成する。M8(PES-2の高分子量版)は、エポキシ樹脂前駆体に可溶性であり、ミクロ組織構造を低温エポキシ樹脂にする。
【0192】
実施例7.1-5では、実施例7.1-1の破壊靭性が0.79±0.03MPam0.5、ガラス転移温度が161℃の均質な混合物を導く質量分率が10%のPES-2に比べ、質量分率が5重量%の変性剤M3によって、破壊靭性が0.83±0.05MPam0.5、ガラス転移温度が173℃のナノ微粒子樹脂が形成される。
【0193】
実施例7.1-7では、変性エポキシ樹脂の質量分率が20%であり、サブミクロン形態しか示さない実施例7.1-3に比べ、質量分率が20%の変性エポキシ樹脂のM8によって、ナノスケール形態が導かれ、KICが35%増加する。
【0194】
実施例7.2-ニート樹脂調製のための高温硬化系
試料に使用される様々な要素の質量を以下の表に示す。
【表5】
PY306およびMY0510を70℃で30分間混合した。強化剤をエポキシド混合物に加え、撹拌した。温度を120℃に上げ、強化剤を1時間の混合後に完全に溶解させた。4,4’-DDSを混合物にその後加え、120℃で30分間絶え間なく強く撹拌しながら溶解させた。製剤化された樹脂を金型に流し、85℃で2〜3時間脱ガスし、180℃で3時間硬化させた。特徴を示したデータを以下の表4.2に表す。
【表6-1】
【表6-2】
対照試料(実施例7.2-1)は、破壊靭性K1Cが0.52MPa・m0.5であり、206℃の高温のガラス転移温度の壊れ易いエポキシ樹脂である。
【0195】
本発明の変性剤(強化剤)を加えることによって、樹脂の高温のガラス転移温度を保ち、ナノ組織構造をもたらしながら、樹脂の破壊靭性が最大148%まで著しく向上した。
【0196】
質量分率が30%のPES-3(実施例7.2-3)で変性すると、高温の硬化エポキシ樹脂は、Tgが有意に低下するものの(206℃から192℃)、有意に強靭化される(K1C値が60%まで増加)。それに比して、質量分率が20%の本発明のブロックコポリマーは、Tgのいかなる低下も回避または最小にしながら、K1C値をももっと高くする。
【0197】
比較例のどんな変性剤もエポキシ樹脂系に適合せず、樹脂内およびその調整中に相分離を示す。
【0198】
実施例で産生される樹脂は、上述のように、TEMによっても分析され、図1〜3に顕微鏡写真を示す。
【0199】
図1は、本発明に記載の実施例7.2-13のTEMを示す。明るい円が、Tgの低いポリマー(B)のブロックによって形成される「島」(相)であり、灰色の「海」がポリマー(A)のブロックが可溶性である硬化されたエポキシ樹脂の連続的な相である。もっと大きい島の直径は約30〜70nmであり、最も小さい島の直径は20nmより小さい。
【0200】
図2は、実施例7.2-14のTEMを示す。最も大きい島の直径は約20nmであり、最も小さい島の直径は約5nmである。島はもはや単離されていないが、3次元のリボンに配置される。
【0201】
図3は、実施例7.2-8のTEMを示す。極めて少ない大きい島の直径は約100nmである。
【0202】
いくつかの樹脂は溶媒抵抗についても試験した。図4は、実施例7.2.13(粒子拡散)および実施例7.2.14(3次元リボンに凝集された粒子)の溶媒取り込みを示す
グラフである。データは、ナノ構造エポキシ樹脂の液体抵抗に及ぼす形態の影響を示し、共連続形態(実施例7.2.14)は、もっと高い強化性を導く一方で、エポキシ樹脂の溶媒抵抗は、粒子拡散形態より劣る(実施例7.2.13)。
【0203】
実施例7.3-炭素線維プレプレグについての高温硬化系、複合物の調製および試験
【0204】
薄膜を調製するために使用される樹脂を、実施例7-2に記述される手順に従い、混合した。それらを使用して、二重薄膜技術を使用して、一方向性炭素繊維テープ[(登録商標)besfight、G40-800、8400dtex、引張強さ5.6GPa、引張弾性率286GPa、中程度の弾性率、Toho Tenax社]を含浸させた。最終のプレプレグの樹脂の質量分率は35%であった。プレプレグの調製に従い、一方向性積層体を調製し、ボーイング試験法BSS7273を用いて、破壊靭性(GIC)を試験した。積層体を真空バックのオートクレーブ中で、720kPaの圧力(雰囲気圧を超える90psiの圧力)で、窒素ブランケット下で、180℃で3時間硬化した。特徴を示すデータを以下の表4.3に示す。
【表7】
表4.3のデータは、ブロックコポリマー強化剤が炭素繊維複合物の特性も向上させることを示す。質量分率が30%のPESポリマー(実施例7.3-1)を含む樹脂に比べ、質量分率がちょうど20%の本発明のブロックコポリマーは、積層体の破壊靭性(G1C)を44%増加させる。
【0205】
実施例7.3-1および7.3-2を調製するために使用される未硬化のプレプレグは、上述に記述されるように、粘着度性についても試験した。これらの実施例を調製するために使用される樹脂の動的粘度についても上述に記述されるように、試験した。結果を表4.4に示す(実施例7.3-1の樹脂の全体的な粘度は、実施例7.3-2の樹脂の全体的な粘度より、最大90〜95℃高い)。
【表8】
プレプレグの製造直後(0日)に、実施例7.3-2は高い粘着度性を特徴とする。実施例7.3-1は低い粘着度性を特徴とする。室温(20℃および相対湿度が50%)で保管して15日後、同じ挙動を観察する。高い粘着度性は実施例7.3-2から測定され、低い粘着度性は実施例7.3-1から評価される。データは、本発明のブロックコポリマーは炭素繊維プレプレグに良好な粘着度特性をもたらすだけでなく、時間が経過しても粘着度性の良好な保持を促進することも示している。
【0206】
さらに、低温での実施例7.3-2の樹脂の低い粘度は、容易な調製およびより良い操作性およびプレプレグの積層に有利である。
【0207】
実施例7.4-高いガラス転移温度のエポキシ樹脂
【0208】
MY0510(21.3g)、MY721(40.4g)および強化剤(20.00g)を、120℃で混合し、強化剤は混合から1時間後に完全に溶解した。その後、4,4’-DDS(18.3g)を混合物に加え、120℃で30分間、絶え間なく強く撹拌して溶解させた。製剤化された樹脂を金型に流し込み、90℃で2〜3時間脱ガスし、180℃で6時間硬化した。混合物の組成物(変性剤の性質および質量分率)および結果を、以下の表4.5に列挙する。
【表9】
表4.5のデータは、本発明のブロックコポリマーの利点が、ガラス転移温度が高いエポキシ樹脂にも観察されることを説明する。
【図面の簡単な説明】
【0209】
図1】本発明の実施例7.2−13のTEMである。
図2】本発明の実施例7.2−14のTEMである。
図3】本発明の実施例7.2−8のTEMである。
図4】本発明の実施例7.2.13(粒子拡散)および実施例7.2.14(3次元リボンに凝集された粒子)の溶媒取り込みを示すグラフである。
図1
図2
図3
図4