(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184955
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】軸推力を生じる両吸込羽根車を備えるポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/22 20060101AFI20170814BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20170814BHJP
F04D 13/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
F04D29/22 A
F04D29/66 A
F04D13/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-526080(P2014-526080)
(86)(22)【出願日】2012年8月9日
(65)【公表番号】特表2014-521889(P2014-521889A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】US2012050132
(87)【国際公開番号】WO2013023050
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2015年6月25日
(31)【優先権主張番号】13/207,473
(32)【優先日】2011年8月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505194077
【氏名又は名称】アイティーティー マニュファクチャリング エンタープライジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】ベーンケ、ポール・ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】コーエン、マシュー・ジェイ.
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−029197(JP,U)
【文献】
特開2005−171825(JP,A)
【文献】
米国特許第05494403(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/22
F04D 13/00
F04D 29/66
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直両吸込ポンプであって:
垂直な回転軸Aに沿い垂直に延出している放出管アセンブリ(100)と;
モーター取り付けアセンブリ(115)上に配置されたモーターアセンブリ(110)と;
前記放出管アセンブリ(100)に連結されている羽根車放出部(120,122)と;
ポンプケーシング壁部(16)を有しているとともに前記羽根車放出部(120,122)に連結されているポンプケーシング(12)と;
前記回転軸A上で回転するよう前記モーター取り付けアセンブリ(115)に連結しているとともに、前記ポンプケーシング(12)中に延出するよう前記放出管アセンブリ(100)中に構成されていてポンプローターシステムの一部を形成するシャフト(15)と;
前記ポンプケーシング(12)中に配置されていて前記シャフト(15)に連結されており、金属リム(22,24)を有する上方及び下方シュラウド(18,20)を有している両吸込羽根車(14)と、
を備えていて、
前記金属リム(22,24)は、前記羽根車放出部(120,122)からの前記上方及び下方シュラウド(18,20)上に作用することができる再循環流(F)を阻止するよう前記両吸込羽根車(14)と前記ポンプケーシング(12)の前記ポンプケーシング壁部(16)との間に上方及び下方隔離環状部を形成するよう構成されていて、その結果としてポンプケーシング再循環からの二次流れを減衰し、このような流れが前記両吸込羽根車(14)の前記上方及び下方シュラウド(18,20)と衝突しないよう隔離し、前記垂直な両吸込ポンプのポンプローターシステムの望ましくない軸方向の振動を緩和し、
前記上方及び下方隔離環状部は、前記上方及び下方シュラウド(18,20)上の差圧から生じる前記両吸込羽根車(14)の回転軸Aと平行な下向き方向の差圧を生じさせるよう前記上方及び下方シュラウド(18,20)とで形状が異なっていて、その結果として軸推力(LA)を前記シャフト(15)に適用し前記ポンプローターシステム中のローター動的剛性を増大させる、
垂直両吸込ポンプ。
【請求項2】
前記金属リム(22,24)は、前記上方又は下方シュラウド(18、20)の周囲に実質的に全周にわたって延びるよう構成されている、請求項1に記載の垂直両吸込ポンプ。
【請求項3】
前記両吸込羽根車(14)は外径を有していて、そして前記金属リム(22,24)は前記羽根車放出部(120,122)付近で前記外径により近く前記上方及び下方シュラウド(18、20)上に構成されているか又は配置されている、請求項1に記載の垂直両吸込ポンプ。
【請求項4】
前記両吸込羽根車(14)は内側外辺部を有していて、そして前記金属リム(22,24)は前記シャフト(15)により近く、前記内側外辺部の付近で前記上方及び下方シュラウド(18、20)上に構成されているか又は配置されている、請求項1に記載の垂直両吸込ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2011年8月11日に出願された、米国特許出願第13/207,473号(代理人整理番号911−002.043−1(F−GI−1102US))に対する利益を主張し、これは本明細書において参照としてその全体を組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ポンプ、若しくはポンプアセンブリ、構成、又は組み合わせに関連し、特に、このようなポンプ若しくはポンプアセンブリ、構成、又は組み合わせにおいて、軸推力をもたらす新技術(例えば、垂直両吸ンプを含む)に関する。
【背景技術】
【0003】
片吸込式羽根車は、これらの回転軸に沿った方向における水推力を生じる。垂直に吊り下げたポンプにおいて、これらの軸推力は、ポンプローターアセンブリの底部における羽根車から、ポンプのシャフトを通じて伝達され、ポンプの頂部におけるモーターの推力軸受により吸収される。軸推力は垂直ポンプにおいて、2つの理由により有益である。
1)張力下で、ポンプシャフトに適用される軸推力は、ローターシステムのローター動剛性を増加させる。
2)ポンプシャフトに適用される軸推力は、ポンプ回転要素の静的要素への内部位置合わせを改善する。
【0004】
典型的な、両吸込式羽根車は、水力による軸推力を生じないがこれは羽根車の中心線を中心としたこれらの対称的な形状が、両方のシュラウドに同じ圧力をかけるためである。したがって、典型的な両吸込羽根車が垂直に吊り下げたポンプにおいて使用されるとき、軸推力ポンプシャフトの利益は得られず、これらの種類のポンプは信頼性が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記により、工業用ポンプの業界において、垂直両吸込ポンプを含む、工業用ポンプ、若しくはポンプアセンブリ、構成、又は組み合わせにおける、軸推力の生成に関する問題を解決する、改善された設計又は技術がかねてから求められてきた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のいくつかの実施形態により、ポンプケーシング、及び内部でシャフト上に配置される両吸込羽根車を特徴とする、例えば、垂直両吸込ポンプを含む、装置がもたらされる。ポンプケーシングは、ポンプケーシング壁部を有する。両吸込羽根車は、両吸込羽根車とポンプケーシングのポンプケーシング壁部との間に、上方隔離環状部又はリング、及び下方隔離環状部又はリングを形成するように構成された、金属リムを備える上方シュラウド及び下方シュラウドを有し、これにより羽根車放出部からの再循環流を阻止して、上方及び下方シュラウドに作用し、上方及び下方シュラウドへの差別的水圧による制御された軸推力を生じることができる。
【0007】
実際、本発明は、これは羽根車シュラウドに作用する差別的推力による制御された軸推力を生じる、特殊な両吸込式羽根車設計をもたらす。両吸込羽根車設計の上方シュラウド及び下方シュラウド上の金属リム又はリングは、両吸込羽根車とポンプケーシング壁部との間に隔離環状部又はリングを生成又は形成する。隔離は、金属リムが羽根車放出部からの再循環流を阻止し、上方及び下方羽根車シュラウドに作用することができるようにすることによって生じる。上方隔離環状部又はリング、及び下方隔離環状部又はリングは、羽根車の回転軸と平行な方向に差圧を生じるために、羽根車の上方シュラウドと下方シュラウドとの間で形状が異なっていてもよい。したがって、通常回転軸の方向において実質的な水推力を有さない、両吸込羽根車設計において軸推力が生じる。
【0008】
この革新的な両吸込式羽根車設計が垂直に吊り下げたポンプにおいて使用されるとき、少なくとも以下の利益がある:
−張力下においてポンプシャフトに適用される軸推力は、ローターシステムのローター動剛性を増加させ、よってポンプの信頼性を向上させる。
−張力下においてポンプシャフトに適用される軸推力は、ポンプローターとケーシングとの内部の位置合わせを改善させ、よって軸受け及びシャフトの摩耗寿命を改善する。
−羽根車とポンプケーシング壁部との間の隔離環状部の対を導入することにより、ポンプの内部漏れが低減し、これは体積効率、及び全体的なポンプ効率を改善する。
−羽根車とポンプケーシング壁部との間の隔離環状部の対を導入することにより、ポンプケーシング再循環からの二次流れが減衰し、このような流れが、羽根車のシュラウドに衝突しないように隔離する。これは、ポンプローターシステムへの望ましくない軸方向の振動を緩和する。
−羽根車上の隔離環状部を構成する金属リングは、羽根車外径部の最小トリム値に位置する。これは、羽根車が、本発明の利益を損なうことなく、様々なトリム直径を有することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面は、以下の図を含み、これらは必ずしも縮尺通りではない。
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による、有益な推進力を有する、垂直両吸込ポンプの形態の装置の部分断面図である。
【
図2】
図1に示される装置の下部の部分断面図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による、両吸込羽根車の平面斜視図である。
【0010】
代表的な実施形態の以下の記載において、本明細書の一部を成す図面における添付の図を参照し、ここで本発明が実施され得る実施形態が例示として示される。他の実施形態が使用されてもよく、構造的及び動作的変更が、本発明の領域から逸脱することなく行われ得ることが理解される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、垂直両吸込ポンプの形態の、本発明のいくつかの実施形態による、一般的に10として示される装置を示す。本発明は、このような垂直両吸込ポンプに関して、例示により記載されるが、本発明の領域は、このタイプ又は種類のポンプ、ポンプアセンブリ、構成、又は組み合わせに限定されない。例えば、現在既知の、又は将来に開発される他のタイプ又は種類のポンプ、ポンプアセンブリ、構成、又は組み合わせにおいて本発明が実施される、実施形態が想到される。
【0012】
図1及び
図2において、垂直両吸込ポンプ10は、ポンプケーシング12,及びその内部でシャフト15上に配置された両吸込羽根車14(
図3参照)を含む。ポンプケーシング12は、ポンプケーシング壁部16を有する。両吸込羽根車14は、両引込羽根車14とポンプケーシング12のポンプケーシング壁部16との間に、上方及び下方隔離環状部を形成するように構成された、金属リム22及び24を有する上方シュラウド18及び下方シュラウド20を有し、これにより羽根車放出部120、122からの再循環流Fを阻止し、上方シュラウド18及び下方シュラウド20上に作用し、羽根車14の上方及び下方に位置する、対応する隔離区分30内の、両吸込羽根車14の上方シュラウド18及び下方シュラウド20上への差別的水圧による制御された垂直方向の軸推力L
Aを生じることができる。隔離区分30は、隔離環状部22及び24、並びにポンプ摩耗リング40、42により形成される。
【0013】
動作中、両吸込羽根車14と、ポンプケーシング壁部16との間の一対の隔離環状部22及び24は、ポンプ10内の内部の漏れを低減し、これは、体積効率及び全体的なポンプ効率を改善し、またポンプケーシング再循環からの二次流れを減衰し、このような流れが両吸込羽根車14の上方シュラウド18及び下方シュラウド20と衝突しないように隔離する。これは、装置10の全体的なポンプローターシステムの望ましくない軸方向の振動を緩和する。
【0014】
いくつかの実施形態により、上方隔離環状部22及び下方隔離環状部24はまた、両吸込羽根車14の回転軸Aと平行な方向に差圧を生じるように、両吸込羽根車14の上方シュラウド18と下方シュラウド20との間で形状が異なってもよい。
【0015】
上方隔離環状部22及び下方隔離環状部24は、典型的に回転軸Aの方向に実質的に水推力を有さない、両吸込羽根車14に、制御された軸推力L
Aを生じるように構成されてもよい。
【0016】
上方隔離環状部22及び下方隔離環状部24は、シャフト15の方に少なくとも部分的に延びる上方シュラウド18及び下方シュラウド20に沿って、矢印30により一般的に示された隔離区分を形成するように構成され得る。(
図2において、上方羽根車シュラウド18の隔離区画30は、矢印30が指し示す黒い線によって指定され、下方羽根車シュラウド20は、下方隔離環状部24により構成及び形成される同様の隔離区分を有することが理解される)。
【0017】
金属リム22及び24は、例えば
図2に示されるように、両吸込羽根車14の外径に対する最小トリム値に位置するように構成され得る。しかしながら、本発明の領域は、
図2に示される金属リム22及び24の特定の構成、高さ、又は位置に限定することを意図しない。例えば、金属リム22及び24が、例えば、上方シュラウド18及び下方シュラウド20の上で、
図2に示されるものとは異なる位置で構成されるか、又は位置するような実施形態が想到され、例えば、これには、羽根車放出部120、122付近の、外径により近い上方シュラウド18及び下方シュラウド20上に構成されるか、又はシャフト15付近のその内側外辺部により近い上方シュラウド18及び下方シュラウド20上に構成されることが挙げられる。上方シュラウド18及び下方シュラウド20の上に作用し、上方シュラウド18及び下方シュラウド20への差別的水圧による制御された軸推力L
Aを生じることができるように、羽根車放出部120、122からの再循環流Fを阻止するために、金属リム22及び24は、上方シュラウド18及び下方シュラウド20の上に特定の位置に、十分な高さで構成される。図示されるように、金属リム22及び24は、上方シュラウド18及び下方シュラウド20の周囲にほぼ実質的に完全に延びるように構成されている。
【0018】
更に、例えば、
図1及び
図2に示される、装置10はまた、当業者によって理解される、本明細書において記載される根本的な発明の一部を形成しない、したがって、本明細書において詳細に記載されない、他の要素又は構成要素を含み、これには、放出管アセンブリ100と、モーター取り付けアセンブリ115上に配置され、かつシャフト15に連結されたモーターアセンブリ110と、ポンプケーシング12と放出管アセンブリ100との間で連結された羽根車放出部120、122と、本発明者によって別の特許出願の一部を形成するケーシングアセンブリ125とシャフト15との間に配置され、矢印130によって概ね示されるベローズ式メカニカル面シール構成と、などが挙げられる。
【0019】
本発明の領域
本明細書において別に記載されない限り、本明細書における、特定の実施形態に関して記載される、機構、特徴、代替、又は修正のいずれかがまた、本明細書において記載される他のいずれかの実施形態と共に適用され、使用され、又は組み込まれ得ることが理解されるべきである。また、本明細書における図面は縮尺通りではない。
【0020】
本発明は、その代表的な実施形態に関して記載及び例示されているが、前述の及び様々な他の追加及び省略が、本明細書の趣旨及び範囲から逸脱することなく行われてもよい。
なおこの明細書には以下の発明が含まれている。
[1].
垂直な両吸込ポンプを含む装置であって、
ポンプケーシング壁部を有するポンプケーシングと、
両吸込羽根車であって、前記ポンプケーシング内でシャフト上に配置され、前記両吸込羽根車と前記ポンプケーシングの前記ポンプケーシング壁部との間に、上方隔離環状部及び下方隔離環状部を形成するように構成された、金属リムを備える上方シュラウド及び下方シュラウドを有し、これにより羽根車放出部からの再循環流を阻止して、前記上方及び前記下方シュラウドに作用し、前記上方及び前記下方シュラウドへの差別的水圧による制御された軸推力を生じることができる、両吸込羽根車とを含む、装置。
[2].
前記上方及び前記下方隔離環状部は、前記両吸込羽根車の回転軸と平行な方向に差圧を生じるために、前記両吸込羽根車の前記上方シュラウドと前記下方シュラウドとの間で形状が異なっている、前記[1].に記載の装置。
[3].
前記上方及び前記下方隔離環状部が、概して前記回転軸の方向に実質的な水推力を有さない、前記両吸込羽根車への前記制御された軸推力を生じるように構成されている、前記[2].に記載の装置。
[4].
前記金属リムは、前記両吸込羽根車の外径に対する最小トリム値に位置するように構成される、前記[1].に記載の装置。
[5].
前記上方隔離環状部又はリング、及び前記下方隔離環状部又はリングは、少なくとも一部が前記シャフトに向かって延びる、前記上方シュラウド又は前記下方シュラウドの隔離区分を形成するように構成されている、前記[1].に記載の装置。
[6].
前記金属リムは、前記上方シュラウド、又は前記下方シュラウドの周囲に実質的に完全に延びるように構成されている、前記[1].に記載の装置。