(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184960
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】メラトニンの新規用途
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4045 20060101AFI20170814BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20170814BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20170814BHJP
A23L 33/175 20160101ALI20170814BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
A61K31/4045
A61P39/02
A61K9/70
A23L33/175
A23L2/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2014-530214(P2014-530214)
(86)(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公表番号】特表2014-526488(P2014-526488A)
(43)【公表日】2014年10月6日
(86)【国際出願番号】EP2012067933
(87)【国際公開番号】WO2013037883
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2015年8月14日
(31)【優先権主張番号】11181683.1
(32)【優先日】2011年9月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514064822
【氏名又は名称】ラスーリアン,ダリウス
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(74)【代理人】
【識別番号】100179154
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 真衣
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100184424
【弁理士】
【氏名又は名称】増屋 徹
(72)【発明者】
【氏名】ラスーリアン,ダリウス
【審査官】
新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−539969(JP,A)
【文献】
特表2010−523673(JP,A)
【文献】
特表2007−517040(JP,A)
【文献】
特開平11−049693(JP,A)
【文献】
特表2007−510716(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/148015(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0167363(US,A1)
【文献】
Alcohol & Alcoholism,1999年,Vol.34, No.6,pp.842-850
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A23L 2/00− 2/40
A23L 5/40− 5/49
A23L 31/00−33/29
A61P 39/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラトニン又はその医薬的に許容される塩を含む、急性アルコール中毒、二日酔いの症状又は急性のアルコール摂取後の身体機能低下を治療する医薬であって、前記メラトニンの投与量が就寝前に1回で0.1〜5mgである、医薬。
【請求項2】
吸入エアゾル、舌下、経皮、経鼻、経口、直腸、静脈内投与からなる群から選択される形態である、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
遅延形態ではない、請求項1又は2に記載の医薬。
【請求項4】
メラトニン又はその医薬的に許容される塩を含む、二日酔いの症状、又は急性のアルコール摂取後の身体機能低下を回避するための栄養補助食品であって、前記メラトニンの投与量が就寝前に1回で0.1〜5mgである、栄養補助食品。
【請求項5】
遅延形態ではない、請求項4に記載の栄養補助食品。
【請求項6】
前記メラトニンの投与量が就寝前に1回で1.5〜3mgである、請求項4又は5に記載の栄養補助食品。
【請求項7】
前記栄養補助食品が、舌下ストリップ又は舌下液として投与される形態である、請求項4〜6のいずれか1項に記載の栄養補助食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬として使用されるメラトニン又はその医薬的に許容される塩、メラトニン又はその医薬的に許容される塩の医薬調製への使用、食品サプリメント(food supplement)及び医薬単位剤形(pharmaceutical unit dosage form)としてのメラトニンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでのところ、二日酔いのようなアルコール中毒から生じる症状については、医学的見地からの理解が乏しい。医療専門家は、治療と予防の観点から、アルコール依存症の研究を好み、かつ二日酔いは、深酒に対し、有用で、自然かつ固有の阻害要因をもたらすという見解がある。アルコール中毒の症状に対する治療薬の多くは知られておらず、かつ信頼できる文献ですら、大麻、食物及び水、ブラッディマリーのような追加のアルコール飲料といった、漠然と有益になりそうな治療薬を報告している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのため、本発明の目的は、アルコール摂取に関係のある悪影響、アルコール中毒を治療するのに有効な手段、特に二日酔いのような症状を取り除くのに有効な手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の課題は、第一実施形態で、アルコール摂取後の、急性アルコール中毒、二日酔いの症状又は身体機能低下の治療へ、メラトニン又はその医薬的に許容される塩を医薬として使用することにより解決される。
【0005】
一般に、睡眠障害又はADHDを治療するのに使用するメラトニンを、急性アルコール中毒の治療に使用でき、特にアルコール飲料摂取後の二日酔いの症状や頭痛のようなアルコール中毒からの症状を完全に取り除くのに使用できることが、意外にも判明した。生物学的メカニズムは、未だ明確に把握されていないが、メラトニンがエチルアルコールのアセトアルデヒドへの変換率を著しく増加させ得るか又は(極めて強力な抗酸化剤として)エチルアルコールの代謝から生じる毒素を減じると同時に、生理的睡眠の間に身体本来の治癒力を強化することが確信されている。自然治癒力、解毒作用及び身体機能低下のような他の症状の除去は、より質の良い生理的睡眠により極めて良好に強化され得る。そのため血中アルコール濃度は、通常よりはるかに高い速度で減少し続ける。他の又は付加的な作用メカニズムは、エチルアルコールやフーゼル油のような、アルコール飲料の代表的成分の代謝の間に形成されるラジカルの除去でもあり得る。これらのメカニズムの何れも、相乗作用して、結果をもたらし得ると考えられる。
【0006】
幾つかの国では、そのような要求は認められず、メラトニンは処方箋が必要と考えられ、他の国では栄養補助食品又は市販薬と考えられているので、以下の実施形態はこの状況を反映する。
【0007】
更なる実施形態で、本発明の根拠をなす課題は、急性アルコール中毒に苦しむ哺乳類を治療する医薬を調製するために、メラトニン又はその医薬的に許容される塩を使用することにより解決される。
【0008】
更なる実施形態で、本発明の根拠をなす課題は、アルコール飲料摂取後の二日酔いの症状を回避するための栄養補助食品としてメラトニンを使用することにより解決される。
【0009】
更なる実施形態で、本発明の根拠をなす課題は、メラトニン又はその医薬的に許容される塩を含む医薬単位剤形により解決され、その含有量は、投与後にエタノール存在下で哺乳類の血中アセトアルデヒド組成物を増加させ、かつアルコール摂取に関係する毒素の無毒化を促進するのに有効な量である。
【0010】
更なる実施形態で、本発明の根拠をなす課題は、急性アルコール中毒を治療する治療法により解決され、この治療法は、急性アルコール中毒の症状の少なくとも1つを減じるか又は除去し、より早く回復させるのに有効な量のメラトニン又はその医薬的に許容される塩を、急性アルコール中毒に苦しむ人に投与することを含む。
【0011】
以下の好ましい実施形態において、本発明の前記実施形態の何れか1つが等しく詳細に記述され、相互に矛盾する組み合わせを除く、任意の組み合わせで明確に開示される。
【0012】
好ましくは、メラトニン0.1〜5mg、特に1.5〜3mg、が投与される。このメラトニン量は、エチルアルコール摂取後の二日酔い又は頭痛のような症状を取り除くのに最適であることが判明している。
【0013】
好ましくは、メラトニン量は、年齢調整することができる。より高い薬用量は、より高齢の患者のために選択できる。これは、生理的メラトニンが年齢と共に減少するという事実のために、本発明の目的を助けるものと考えられる。
【0014】
好ましくは、メラトニンは、就寝前に1回投与される。このことは、前記症状を回避するために最も有用であると判明した。投与の直前又は直後に0.5〜2lの水を飲むと、症状は更に減じられることが判明した。
【0015】
好ましくは、メラトニンは、群:吸入エアゾル、舌下、経皮、経鼻、経口、直腸、静脈内投与から選択される形態を用いて、特に舌下ストリップ(sublingual strip)又は舌下液の舌下投与形態を用いて、投与される。メラトニンを含む舌下ストリップ又は舌下液の舌下投与は、他の前記形態と比べ、前記症状を回避するのに最良の効果を有したことが判明した。メラトニンは、血流に迅速に放出され、消化されないのが重要であり、従って好ましいと考えられる。そのため、メラトニンは、遅延形態でなく及び/又は徐放形態でないことも好ましい。遅延形態及び/又は徐放形態のメラトニンは、長時間にわたりゆっくりと放出される。今日、遅延形態のメラトニンが一般的であり、メラトニンの既に公知の他の用途全てで最良かつ最も有効に作用すると考えられている。しかしながら、本発明において、遅延形態ではないメラトニンが、二日酔いの症状や頭痛のようなアルコール飲料摂取後の症状を緩和又は除くのに最良に作用することが、意想外にも判明した。
【実施例】
【0016】
被験者への実験的治療は、全てブラインド法で行われた。
【0017】
被験者は、血中アルコール濃度が10pmの時点で310mg/dLに達するまで、エチルアルコールを含有するアルコール飲料を与えられた。次に、被験者は、非遅延形態のメラトニン2.5mgを含む舌下ストリップの投与直後に水1lを飲んだ。その後、被験者は就寝した。8時間の生理的睡眠後、この被験者は、アルコール飲料の摂取に通常伴う、どのような典型的二日酔いの症状にも苦しまなかった。この実験は、他の被験者20人で繰り返し、同じ結果を得た。
【0018】
比較のために、同一の実験を、プラシーボとして、メラトニン不含の舌下ストリップを投与して行った。20人のうち19人が、頭痛のような深刻な典型的二日酔いの症状を訴えた。