特許第6184968号(P6184968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許61849682,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
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  • 特許6184968-2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184968
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/093 20060101AFI20170814BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20170814BHJP
   C07C 17/23 20060101ALI20170814BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170814BHJP
   C07C 17/25 20060101ALN20170814BHJP
【FI】
   C07C17/093
   C07C21/18
   C07C17/23
   !C07B61/00 300
   !C07C17/25
【請求項の数】22
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-540134(P2014-540134)
(86)(22)【出願日】2012年11月2日
(65)【公表番号】特表2015-501785(P2015-501785A)
(43)【公表日】2015年1月19日
(86)【国際出願番号】US2012063320
(87)【国際公開番号】WO2013067350
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年10月26日
(31)【優先権主張番号】61/555,682
(32)【優先日】2011年11月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514094014
【氏名又は名称】セルマ ベクテセヴィック
(73)【特許権者】
【識別番号】514112086
【氏名又は名称】ダニエル・シー・マーケル
(73)【特許権者】
【識別番号】514094036
【氏名又は名称】マリオ ジョセフ ナッパ
(73)【特許権者】
【識別番号】514112097
【氏名又は名称】シュエフイ・スゥン
(73)【特許権者】
【識別番号】514112101
【氏名又は名称】シュー・スン・トゥン
(73)【特許権者】
【識別番号】514112112
【氏名又は名称】ハイユー・ウォン
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】セルマ・ベクテセヴィック
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・シー・マーケル
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・ジョセフ・ナッパ
(72)【発明者】
【氏名】シュエフイ・スゥン
(72)【発明者】
【氏名】シュー・スン・トゥン
(72)【発明者】
【氏名】ハイユー・ウォン
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/056441(WO,A1)
【文献】 特表2014−532721(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/110889(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/123148(WO,A1)
【文献】 特表2010−534680(JP,A)
【文献】 特開2009−227675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/00
C07C 21/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
CX=CCl−CHX (I)
(式中、Xは、独立して、F、Cl、Br、及びIから選択され、但し少なくとも1つのXはフッ素ではない)
の少なくとも1種類の化合物を含む出発組成物を与え;
かかる出発組成物を、フッ素化剤、及び式Iの化合物以外の有効量の1種類以上の有機共供給化合物と接触させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む最終組成物を生成させる;
ことを含む2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造における出発試薬のオリゴマー化を減少させる方法であって、前記1種類以上の有機共供給化合物が、トリクロロフルオロプロペン(1231)、ジクロロジフルオロプロペン(1232)、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1223xd)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)、3,3,3,2−テトラフルオロプロプ−1−エン(1234yf)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラクロロプロパン(244bb)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(245eb)、テトラクロロフルオロプロパン(241)、トリクロロジフルオロプロパン(242)、ジクロロトリフルオロプロパン(243)、及びこれらの組合せからなる群から選択される、方法
【請求項2】
有機共供給化合物の有効量が0.1〜99.9重量%の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機共供給化合物の有効量が1〜50重量%の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
有機共供給化合物の有効量が3〜30重量%の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
有機共供給化合物の有効量が5〜15重量%の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式Iの少なくとも1種類の化合物が、少なくとも1つのXが塩素である化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
式Iの少なくとも1種類の化合物が、全てのXが塩素である化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
式Iの少なくとも1種類の化合物が1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
出発組成物とフッ素化剤との接触を蒸気相中で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
接触工程を触媒の存在下で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
触媒が蒸気相触媒である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
蒸気相触媒が、酸化クロム、水酸化クロム、ハロゲン化クロム、オキシハロゲン化クロム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ハロゲン化アルミニウム、オキシハロゲン化アルミニウム、酸化コバルト、水酸化コバルト、ハロゲン化コバルト、オキシハロゲン化コバルト、酸化マンガン、水酸化マンガン、ハロゲン化マンガン、オキシハロゲン化マンガン、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、ハロゲン化ニッケル、オキシハロゲン化ニッケル、酸化鉄、水酸化鉄、ハロゲン化鉄、オキシハロゲン化鉄、これらの無機塩、これらのフッ素化誘導体、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
触媒が酸化クロムを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
触媒がCrを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
接触工程を少なくとも1種類の安定剤の存在下で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
安定剤がアミンベースの安定剤である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
安定剤が、p−tap(4−tert−アミルフェノール)、メトキシヒドロキノン、4−メトキシフェノール(HQMME)、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、チモール、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
(a)式I:
CX=CCl−CHX (I);
(式中、Xは、独立して、F、Cl、Br、及びIから選択され、但し少なくとも1つのXはフッ素ではない)
の化合物を含む出発組成物を与え;
(b)かかる出発組成物を第1のフッ素化剤及び少なくとも1種類の有機共供給化合物と接触させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む第1の中間体組成物を生成させ;
(c)第1の中間体組成物を第2のフッ素化剤と接触させて、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを含む第2の中間体組成物を生成させ;そして
(d)2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンの少なくとも一部を脱塩化水素化して、2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エンを含む反応生成物を生成させる;
ことを含む2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エンの製造におけるオリゴマー化を減少させる方法であって、前記少なくとも1種類の有機共供給化合物が、トリクロロフルオロプロペン(1231)、ジクロロジフルオロプロペン(1232)、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1223xd)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)、3,3,3,2−テトラフルオロプロプ−1−エン(1234yf)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラクロロプロパン(244bb)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(245eb)、テトラクロロフルオロプロパン(241)、トリクロロジフルオロプロパン(242)、ジクロロトリフルオロプロパン(243)、及びこれらの組合せからなる群から選択される、方法
【請求項19】
(a)第1の蒸気相反応器内において、蒸気相触媒の存在下で、式I:
CX=CCl−CHX (I);
(式中、Xは、独立して、F、Cl、Br、及びIから選択され、但し少なくとも1つのXはフッ素ではない)
の少なくとも1種類の化合物を含む出発組成物をフッ素化剤と接触させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)、HCl、及び1種類以上の有機共供給化合物を含む第1の中間体組成物を生成させ;
(b)HCl、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)、及び1種類以上の有機共供給化合物を第1の中間体組成物から分離し;
(c)有効量の分離された1種類以上の有機共供給化合物を第1の蒸気相反応器に再循環し;
(d)液相反応器内において、分離された2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)を第2のフッ素化剤と接触させて、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)を含む第2の中間体組成物を生成させ;そして
(e)第2の蒸気相反応器内において、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)の少なくとも一部を脱塩化水素化して、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む反応生成物を生成させる;
ことを含む2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)製造におけるオリゴマー化を減少させる方法であって、前記1種類以上の有機共供給化合物が、トリクロロフルオロプロペン(1231)、ジクロロジフルオロプロペン(1232)、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1223xd)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)、3,3,3,2−テトラフルオロプロプ−1−エン(1234yf)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラクロロプロパン(244bb)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(245eb)、テトラクロロフルオロプロパン(241)、トリクロロジフルオロプロパン(242)、ジクロロトリフルオロプロパン(243)、及びこれらの組合せからなる群から選択される、方法
【請求項20】
工程(c)において分離された1種類以上の有機共供給化合物を第1の蒸気相反応器に再循環することによって、再循環を行わない場合よりも長い触媒寿命が蒸気相触媒に与えられる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
蒸気相触媒が、Cr、FeCl/炭素、Cr/Al、Cr/AlF、Cr/炭素、CoCl/Cr/Al、NiCl/Cr/Al、CoCl/AlF、NiCl/AlF、及びこれらの混合物から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
工程(c)において第1の蒸気相反応器に再循環する分離された1種類以上の有機共供給化合物の有効量が、工程(a)における出発組成物の全重量を基準として1〜50重量%の間である、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2011年11月4日出願の米国仮出願61/555,682に対する優先権を主張する。本出願はまた、2007年1月3日出願の米国出願11/619,592(現在は2011年12月27日発行の米国特許8084653)の分割出願である2011年11月22日出願の米国特許出願13/302,849の一部継続出願である。これらのそれぞれの内容は参照として本明細書中に包含する。
【0002】
[0002]本発明は、フッ素化有機化合物を製造する方法、より詳しくはフッ素化オレフィンを製造する方法、更により詳しくは2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]テトラフルオロプロペン(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)など)のようなヒドロフルオロオレフィン(HFO)は、現在、有効な冷媒、消火剤、熱伝達媒体、噴射剤、起泡剤、発泡剤、気体状誘電体、滅菌剤キャリア、重合媒体、粒状物除去流体、キャリア流体、バフ研磨剤、置換乾燥剤、及び動力サイクル作動流体であることが知られている。クロロフルオロカーボン(CFC)及びヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)(これらはいずれも地球オゾン層を損傷する可能性がある)とは異なり、HFOは塩素を含まず、したがってオゾン層を脅威にさらさない。HFO−1234yfはまた、低い毒性を有する低地球温暖化化合物であることが示されており、したがって可動型空調における冷媒に関する益々厳しくなっている要求を満足することができる。したがって、HFO−1234yfを含む組成物は、中でも、上述の用途の多くにおいて用いるように開発されている材料である。
【0004】
[0004]HFOを製造する幾つかの方法が公知である。例えば、米国特許4,900,874(Iharaら)においては、水素ガスをフッ素化アルコールと接触させることによってフッ素含有オレフィンを製造する方法が記載されている。これは比較的高い収率のプロセスであるように思われるが、高温の水素ガスを商業的スケールで取扱うことは危険である。また、現場での水素プラントの建築のような水素ガスを商業的に製造するコストは経済的に高コストである。
【0005】
[0005]米国特許2,931,840(Marquis)においては、塩化メチル及びテトラフルオロエチレン又はクロロジフルオロメタンを熱分解することによってフッ素含有オレフィンを製造する方法が記載されている。このプロセスは比較的低い収率のプロセスであり、有機出発材料の非常に大きな割合が、プロセスにおいて用いる触媒を失活させる傾向がある相当量のカーボンブラックなどの望まれておらず及び/又は重要でない副生成物に転化する。
【0006】
[0006]トリフルオロアセチルアセトン及び四フッ化イオウからHFO−1234yfを製造することが記載されている(Banksら, Journal of Fluorine Chemistry, vol.82, 2号, p.171〜174(1997)を参照)。また、米国特許5,162,594(Krespan)においては、テトラフルオロエチレンを液相中で他のフッ素化エチレンと反応させてポリフルオロオレフィン生成物を生成させるプロセスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許4,900,874
【特許文献2】米国特許2,931,840
【特許文献3】米国特許5,162,594
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Banksら, Journal of Fluorine Chemistry, vol.82, 2版, p.171〜174(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[0007]しかしながら、HFO−1234yfのようなヒドロフルオロオレフィンを製造する経済的な手段に対する必要性が未だ存在する。本発明はとりわけこの必要性を満足する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0008]本発明は、部分的に、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)のようなHFOを製造するために用いられる反応の効率を向上させるための1以上のプロセス工程に関する。
【0011】
[0009]一形態においては、本発明は、式I:
CX=CCl−CHX (I);
(式中、Xは、独立して、F、Cl、Br、及びIから選択され、但し少なくとも1つのXはフッ素ではない)
の少なくとも1種類の化合物を含む出発組成物を与え;かかる出発組成物を、フッ素化剤、及び式Iの化合物以外の有効量の1種類以上の有機共供給化合物と接触させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む最終組成物を生成させる;ことによって、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造する方法に関する。幾つかの態様においては、式Iの少なくとも1種類の化合物は、少なくとも1つのXを塩素として有する。更なる態様においては、式Iの少なくとも1種類の化合物は、それぞれのX位置において塩素を有する。更なる態様においては、式Iの少なくとも1種類の化合物は1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む。
【0012】
[0010]有機共供給化合物は、特にプロセスの過程中にわたって出発試薬のオリゴマー化/重合を減退させ、及び/又は触媒の失活を減少させることによって上記のプロセスを向上させる任意の有機化合物であってよい。一態様においては、有機共供給化合物は式Iの化合物よりも低い沸点を有する。かかる化合物としてはハロカーボン又はハロオレフィンが挙げられ、その中で、以下:トリクロロフルオロプロペン(1231)、ジクロロジフルオロプロペン(1232)、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1223xd)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)、2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(1234yf)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラクロロプロパン(244bb)、及び1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(245eb)、テトラクロロフルオロプロパン(241)、トリクロロジフルオロプロパン(242)、ジクロロトリフルオロプロパン(243):の1以上を挙げることができる:
[0011]共供給化合物の有効量は、本発明において規定する任意の量であってよい。それには限定されないが、幾つかの形態においては、これは、それぞれ反応に供給する有機供給材料の全量を基準として約0.1〜約99.9重量%の間、約1〜約50重量%の間、約3〜約30重量%の間、又は約5〜約15重量%の間である。
【0013】
[0012]出発組成物をフッ素化剤と接触させる工程は、触媒の存在下で行うことができる。一形態においては、接触工程は、蒸気相中において、蒸気相触媒を存在させるか又は存在させないで行う。かかる反応のために用いる蒸気相触媒としては、酸化クロム、水酸化クロム、ハロゲン化クロム、オキシハロゲン化クロム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ハロゲン化アルミニウム、オキシハロゲン化アルミニウム、酸化コバルト、水酸化コバルト、ハロゲン化コバルト、オキシハロゲン化コバルト、酸化マンガン、水酸化マンガン、ハロゲン化マンガン、オキシハロゲン化マンガン、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、ハロゲン化ニッケル、オキシハロゲン化ニッケル、酸化鉄、水酸化鉄、ハロゲン化鉄、オキシハロゲン化鉄、これらの無機塩、これらのフッ素化誘導体、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの態様においては、触媒は、Crなど(しかしながらこれに限定されない)の酸化クロムを含む。
【0014】
[0013]出発組成物をフッ素化剤と接触させる工程は、1種類以上の安定剤の存在下で行うこともできる。かかる安定剤としてはアミンベースの安定剤を挙げることができ、その中で、以下:p−tap(4−tert−アミルフェノール)、メトキシヒドロキノン、4−メトキシフェノール(HQMME)、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、及びチモール:の1以上を挙げることができる。
【0015】
[0014]更なる形態においては、本発明は、
(a)式I:
CX=CCl−CHX (I)
(式中、Xは、独立して、F、Cl、Br、及びIから選択され、但し少なくとも1つのXはフッ素ではない)
の化合物を含む出発組成物を与え;
(b)出発組成物を、第1のフッ素化剤、及び式Iの化合物以外の有効量の1種類以上の有機共供給化合物と接触させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン及び第1の塩素含有副生成物を含む第1の中間体組成物を生成させ;
(c)第1の中間体組成物を第2のフッ素化剤と接触させて、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを含む第2の中間体組成物を生成させ;そして
(d)2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンの少なくとも一部を脱塩化水素化して、2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エンを含む反応生成物を生成させる;
ことによって2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エンを製造する方法に関する。
【0016】
[0015]本発明の更なる態様及び有利性は、本明細書に与える開示事項に基づいて当業者に容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】[0016]図1は、1232xf共供給材料の不存在下又は存在下での1233xfを形成するための1230xaのフッ素化中における触媒の失活の比較を与える。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[0017]一態様によれば、本発明は、式I:
CX=CCl−CHX (式I)
(式中、Xは、独立して、F、Cl、Br、及びIから選択され、但し少なくとも1つのXはフッ素ではない)
にしたがう出発材料を用いて2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エンを製造するための製造方法を包含する。幾つかの態様においては、式Iの1種類又は複数の化合物は、少なくとも1つの塩素を含み、Xの大部分を塩素として含み、或いは全てのXを塩素として含む。幾つかの態様においては、式Iの1種類又は複数の化合物は1,1,2,3−テトラクロロプロペン(1230xa)を含む。本発明に適用できる方法としては、限定なしに、米国特許8,084,653及び米国公開特許出願2009/0240090(これらのそれぞれの内容を参照として本明細書中に包含する)に記載の統合多段階プロセスが挙げられる。
【0019】
[0018]本方法は、一般に少なくとも3つの反応工程を含む。第1工程においては、式Iの出発組成物(例えば1,1,2,3−テトラクロロプロペン)を、第1の蒸気相反応器(フッ素化反応器)内で無水HFと反応させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)及びHClの混合物を生成させる。幾つかの態様においては、反応は、蒸気相中において、フッ素化酸化クロムなど(しかしながらこれに限定されない)の蒸気相触媒の存在下で行う。触媒は、触媒の状態に応じて使用前に無水フッ化水素:HF(フッ化水素ガス)で活性化する必要がある可能性がある(又は活性化する必要はない可能性がある)。一態様においては、酸素含有試薬又は気体供給材料、例えば空気、純粋酸素、又は酸素/不活性ガス(例えば窒素)のような希釈酸素ガスを第1の蒸気相反応器に供給しない。
【0020】
[0019]蒸気相触媒としてフッ素化酸化クロムを開示するが、本発明はこの態様に限定されない。当該技術において公知の任意のフッ素化触媒を、このプロセスにおいて用いることができる。好適な触媒としては、クロム、アルミニウム、コバルト、マンガン、ニッケル、及び鉄の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、これらの無機塩、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されず、これらのいずれも場合によってはフッ素化されていてもよい。本発明のために好適な触媒の組合せとしては、非排他的にCr、FeCl/炭素、Cr/Al、Cr/AlF、Cr/炭素、CoCl/Cr/Al、NiCl/Cr/Al、CoCl/AlF、NiCl/AlF、及びこれらの混合物が挙げられる。酸化クロム/酸化アルミニウム触媒は、米国特許5,155,082(参照として本明細書中に包含する)に記載されている。結晶質酸化クロム又はアモルファス酸化クロムのようなクロム(III)酸化物が好ましく、アモルファス酸化クロムが最も好ましい。酸化クロム(Cr)は商業的に入手可能な材料であり、種々の粒径で購入することができる。少なくとも98%の純度を有するフッ素化触媒が好ましい。フッ素化触媒は、過剰であるが、少なくとも反応を推進するのに十分な量で存在させる。
【0021】
[0020]式Iの化合物にはまた、少なくとも1種類の共供給有機化合物が供給される。この化合物は、排他的ではないが好ましくは、式Iの化合物、特に1230xaよりも低い沸点を有する。一般的に言えば、かかる化合物としては、所望の反応における向上及び/又は触媒寿命における向上を示す任意のハロカーボン又はハロオレフィンを挙げることができる。かかるハロカーボン及びハロオレフィンの非限定的な例としては、トリクロロフルオロプロペン(1231)、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232xf)、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1223xd)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラクロロプロパン(244bb)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)、或いはHFによる1230xaのフッ素化反応中に通常生成する1種類以上の更なる有機化合物の1つ又は任意の組合せが挙げられる。一態様においては、式I(例えば1230xa)、HF、及び少なくとも1種類の有機共供給化合物の出発組成物は液相であり;これらは気化器を通過させて、得られる蒸気相材料を第1の蒸気相反応器に供給する。
【0022】
[0021]本明細書において用いる共供給化合物の量又は「有効量」とは、式Iの化合物、特に1230xaの1233xfへの転化率を向上させるのに用いることができる任意の量を指す。一形態においては、共供給有機化合物の有効量は、蒸気気化中又はフッ素化反応中の式Iの化合物のオリゴマー化/重合の発生を適度に減少させる任意の量であってよい。同様に、有効量はまた、或いは独立して、触媒の失活、特に出発試薬のオリゴマー化/重合によって引き起こされる失活を適度に減少させる有機共供給材料の任意の量を含めることができる。1つの非限定的な態様においては、全有機供給材料中の1種類又は複数の共供給有機化合物の割合は、それぞれ用いる有機試薬の全重量を基準として0.1〜99.9重量%、1〜50重量%、3〜30重量%、又は5〜15重量%の範囲であってよい。理論に縛られることは意図しないが、少なくともHCO−1230xaよりも低い沸点を有する有機化合物を共供給することによって、HCO−1230xaの気化を促進させ、HCO−1230xaオリゴマーの形成を回避/減少させて、それによって触媒寿命を向上させることができると考えられる。一態様においては、共供給化合物は有効量の新しい供給材料として供給し、即ちこれらは多段階プロセスから誘導される再循環流からは入手しない。他の態様においては、共供給化合物は、例えば米国特許8,084,653及び米国公開特許出願2009/0240090に記載されている多段階プロセスから誘導される1以上の再循環流中に存在する。この態様の実施においては、本発明は、(a)第1の蒸気相反応器内において、蒸気相触媒の存在下で、式I:
CX=CCl−CHX (I);
(式中、Xは、独立して、F、Cl、Br、及びIから選択され、但し少なくとも1つのXはフッ素ではない)
の少なくとも1種類の化合物を含む出発組成物をフッ素化剤と接触させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)、HCl、及び式Iの化合物以外の1種類以上の有機共供給化合物を含む第1の中間体組成物を生成させ;(b)HCl、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)、及び1種類以上の有機共供給化合物を第1の中間体組成物から分離し;(c)有効量の分離された1種類以上の有機共供給化合物を第1の蒸気相反応器に再循環し;(d)液相反応器内において、分離された2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)を第2のフッ素化剤と接触させて、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)を含む第2の中間体組成物を生成させ;そして(e)第2の蒸気相反応器内において、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)の少なくとも一部を脱塩化水素化して、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む反応生成物を生成させる;ことを含む、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)を製造するための多段階プロセスに関する。この態様の他の実施においては、工程(c)において分離された1種類以上の有機共供給化合物を第1の蒸気相反応器に再循環することによって、再循環を行わない場合よりも長い触媒寿命が蒸気相触媒に与えられる。この態様の他の実施においては、蒸気相触媒は、酸化クロム(Cr)、FeCl/炭素、Cr/Al、Cr/AlF、Cr/炭素、CoCl/Cr/Al、NiCl/Cr/Al、CoCl/AlF、NiCl/AlF、及びこれらの混合物から選択される。この態様の他の実施においては、工程(c)において第1の蒸気相反応器に再循環する分離された1種類以上の有機共供給化合物の有効量は、工程(a)における出発組成物の全重量を基準として約1〜約50重量%の間である。この態様の他の実施においては、工程(c)において第1の蒸気相反応器に再循環する1種類以上の有機共供給化合物には244bb及び/又は245cbは存在しないか、或いは244bb及び/又は245cbは工程(c)の再循環流中に僅かな量で存在し、例えば再循環流は244bb及び/又は245cbを実質的に含まず、これは限定なしに有効量でない量で244bb及び/又は245cbが存在することを包含する。他の態様においては、有機共供給材料は新しい供給材料と再循環流の組み合わせであってよい。
【0023】
[0022]場合によっては、反応にはまた1種類以上の安定剤の使用を含ませることができる。一般的に言えば、かかる化合物としてはアミンベースの安定剤を挙げることができる。本反応において用いるのに好適なかかる安定剤の非限定的な例としては、ハロゲン化反応、特にアルカン、アルケン、及びアルキンが関与するハロゲン化反応において用いることが公知のものが挙げられる。幾つかの態様においては、安定剤は、p−tap(4−tert−アミルフェノール)、メトキシヒドロキノン、4−メトキシフェノール(HQMME)、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、チモール、及びこれらの組み合わせを含む群から選択される。幾つかの好ましい態様においては、安定剤はアミンベースの安定剤を含む。より好ましくは、安定剤は、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、又はこれらの組み合わせを含む。安定剤は、好ましくは、300ppm未満の量、より好ましくは100ppm未満の量、最も好ましくは10ppm未満の量で存在させる。
【0024】
[0023]HF、式Iの化合物、及び有機共供給材料は、気化器に連続的に供給して、気化した反応物質を触媒床に供給することができる。式Iの化合物が1230xaである場合には、反応の工程1におけるHFと1230xaとのモル比は、1:1〜50:1、幾つかの態様においては約10:1〜約20:1である。HFと1230xaとの間の反応は、約150℃〜約400℃(幾つかの態様においては約180℃〜約300℃)の温度、及び約0psig〜約200psig(幾つかの態様においては約0psig〜約100psig)の圧力において行う。1230xaと触媒との接触時間は約1秒間〜約60秒間の範囲であってよいが、より長いか又はより短い時間を用いることができる。
【0025】
[0024]フッ素化反応は、好ましくは、約50%、又は好ましくは約90%以上の転化率を達成するように行う。転化率は、消費された反応物質(1230xa)のモル数を、反応器に供給した反応物質(1230xa)のモル数で割って100をかけることによって算出される。達成される1233xfに関する選択率は、好ましくは約60%以上、より好ましくは約80%以上である。選択率は、形成された生成物(1233xf)のモル数を、消費された反応物質のモル数で割ることによって算出される。
【0026】
[0025]反応のこの第1工程は、蒸気相フッ素化反応のために好適な任意の反応器内で行うことができる。幾つかの態様においては、反応器は、ハステロイ、ニッケル、インコロイ、インコネル、モネル、及びフルオロポリマーライニング材料のようなフッ化水素及び触媒の腐食作用に抵抗性の材料から構成する。容器は固定触媒床又は流動床である。所望の場合には、運転中に窒素又はアルゴンのような不活性ガスを反応器内で用いることができる。
【0027】
[0026]一般に、多段階反応器配置において存在する可能性がある任意の中間体流出流を含むフッ素化反応工程からの流出流は、処理して所望の分離度及び/又は他の処理度を達成することができる。例えば、反応器流出流が1233xfを含む態様においては、流出流は一般に、HCl、並びにHF、ジクロロジフルオロプロペン(1232)、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1223xd)、トリクロロフルオロプロペン(1231)異性体、2−クロロ−1,1,1,2−テトラクロロプロパン(244bb)、及び未反応の1230xaの1以上も含む。中和及び蒸留のような当該技術において公知の任意の分離又は精製方法を用いて、反応生成物のこれらの成分の幾つかの部分又は実質的に全部を反応混合物から回収することができる。未反応の1230xa及びHFは、完全か又は部分的に再循環して、所望の1233xfの全収率を向上させることができるであろうと考えられる。形成される1232及び1231も再循環することができる。
【0028】
[0027]場合によっては、次にフッ素化反応の結果物から塩化水素を回収する。塩化水素の回収は通常の蒸留によって行い、それを留出物から除去する。或いは、HClは、水又は苛性スクラバーを用いることによって回収又は除去することができる。水抽出器を用いる場合には、HClは水溶液として除去される。苛性スクラバーを用いる場合には、HClは水溶液中の塩化物塩として系から除去される。
【0029】
[0028]2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エンを形成するためのプロセスの第2工程においては、1233xfを2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)に転化させる。一態様においては、この工程は、液相反応器(これはTFE又はPFAライニングしていてよい)内において液相中で行うことができる。かかるプロセスは、約70〜120℃の温度範囲及び約50〜120psigにおいて行うことができる。
【0030】
[0029]任意の液相フッ素化触媒を本発明において用いることができる。非包括的なリストとしては、ルイス酸、遷移金属ハロゲン化物、遷移金属酸化物、第IVb族金属ハロゲン化物、第Vb族金属ハロゲン化物、又はこれらの組み合わせが挙げられる。液相フッ素化触媒の非排他的な例は、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化タンタル、ハロゲン化チタン、ハロゲン化ニオブ、及びハロゲン化モリブデン、ハロゲン化鉄、フッ素化ハロゲン化クロム、フッ素化酸化クロム、又はこれらの組み合わせである。液相フッ素化触媒の非排他的な具体例は、SbCl、SbCl、SbF、SnCl、TaCl、TiCl、NbCl、MoCl、FeCl、SbClのフッ素化種、SbClのフッ素化種、SnClのフッ素化種、TaClのフッ素化種、TiClのフッ素化種、NbClのフッ素化種、MoClのフッ素化種、FeClのフッ素化種、又はこれらの組み合わせである。五塩化アンチモンが最も好ましい。
【0031】
[0030]これらの触媒は、失活してきら、当該技術において公知の任意の手段によって容易に再生することができる。触媒を再生する1つの好適な方法は、触媒を通して塩素流を流すことを含む。例えば、液相フッ素化触媒1ポンドあたり約0.002〜約0.2ポンド/時の塩素を液相反応に加えることができる。これは、例えば約65℃〜約100℃の温度において約1〜約2時間又は連続的に行うことができる。
【0032】
[0031]反応のこの第2工程は、必ずしも液相反応に限定されず、米国公開特許出願20070197842(その内容を参照として本明細書中に包含する)において開示されているもののような蒸気相反応又は液相と蒸気相の組み合わせを用いて行うこともできる。この目的のために、1233xfを含む供給流を約50℃〜約400℃の温度に予め加熱して、触媒及びフッ素化剤と接触させる。触媒にはかかる反応のために用いられる標準的な蒸気相試薬を含ませることができ、フッ素化剤としては、フッ化水素など(しかしながらこれに限定されない)の当該技術において一般的に知られているものを挙げることができる。
【0033】
[0032]1234yf製造の第3工程においては、244bbを第2の蒸気相反応器(脱塩化水素化反応器)に供給し、脱塩化水素化して所望の生成物の2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エン(1234yf)を生成させる。この反応器には、HCFC−244bbを接触脱塩化水素化してHFO−1234yfを生成させることができる触媒を含ませる。
【0034】
[0033]触媒は、金属ハロゲン化物、ハロゲン化金属酸化物、中性(又は0の酸化状態)の金属又は金属合金、或いはバルク若しくは担持形態の活性炭であってよい。金属ハロゲン化物又は金属酸化物触媒としては、一価、二価、及び三価金属のハロゲン化物、酸化物、並びにこれらの混合物/組み合わせ、より好ましくは一価及び二価金属のハロゲン化物、及びこれらの混合物/組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。構成成分の金属としては、Cr3+、Fe3+、Mg2+、Ca2+、Ni2+、Zn2+、Pd2+、Li、Na、K、及びCsが挙げられるが、これらに限定されない。構成成分のハロゲンとしては、F、Cl、Br、及びIが挙げられるが、これらに限定されない。有用な一価又は二価金属のハロゲン化物の例としては、LiF、NaF、KF、CsF、MgF、CaF、LiCl、NaCl、KCl、及びCsClが挙げられるが、これらに限定されない。ハロゲン化処理としては、従来技術において公知の任意のもの、特にハロゲン化源としてHF、F、HCl、Cl、HBr、Br、HI、及びIを用いるものを挙げることができる。
【0035】
[0034]中性、即ち0価の金属、金属合金、及びこれらの混合物を用いる場合には、有用な金属としては、Pd、Pt、Rh、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Cr、Mn、及び合金又は混合物としての上記の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。触媒は担持又は非担持であってよい。金属合金の有用な例としては、SS316、モネル400、インコネル825、インコネル600、及びインコネル625が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
[0035]好ましいが非限定的な触媒としては、活性炭、ステンレススチール(例えばSS316)、オーステナイトニッケルベースの合金(例えばインコネル625)、ニッケル、フッ素化10%CsCl/MgO、及び10%CsCl/MgFが挙げられる。反応温度は好ましくは約300〜550℃であり、反応圧力は約0〜150psigの間であってよい。反応器流出流は苛性スクラバー又は蒸留カラムに供給し、HClの副生成物を除去して酸を含まない有機生成物を生成させることができ、これは場合によっては当該技術において公知の精製技術の1つ又は任意の組み合わせを用いて更なる精製にかけることができる。
【実施例】
【0037】
[0036]以下は本発明の実施例であり、限定として解釈すべきではない。
[0037]実施例1:供給材料として1230xaを用いる1230xaのフッ素化:
[0038]3ccの高表面積BASF酸化クロムを1/2インチのハステロイC276反応器中に装填した。6インチのハステロイB−1/8インチ蒸留充填材を、気化区域として触媒の上に充填した。触媒をまずHFによって活性化し、次に1230xaを、275℃、大気圧において、18sccmのHF及び3sccmのNと一緒に、0.54mL/時の速度で反応器の頂部から供給した。反応器からの流れをGC及びGC−MSによって分析した。試験の結果を図1に示す。触媒は時間と共に劣化を示す。
【0038】
[0039]実施例2:供給材料として1232xf−1230xa(モル比1:1)の混合物を用いる1230xaのフッ素化:
[0040]3ccの高表面積BASF酸化クロムを1/2インチのハステロイC276反応器中に装填した。6インチのハステロイB−1/8インチ蒸留充填材を、気化区域として触媒の上に充填した。触媒をまずHFによって活性化し、次に1232xf−1230xa混合物を、275℃、大気圧において、18sccmのHF及び3sccmのNと一緒に、0.53mL/時の速度で反応器の頂部から供給した。反応器からの流れをGC及びGC−MSによって分析した。試験の結果を図1に示す。供給材料として1232xf−1230xa(モル比1:1)の混合物を用いることによって向上した触媒寿命が示される。
【0039】
[0041]実施例3:供給材料として10重量%の1233xf−90重量%の1230xaの混合物を用いる1230xaのフッ素化:
[0042]本実施例において用いた1230xaは5ppmのジイソプロピルアミンを含んでいた。10重量%の1233xf−90重量%の1230xaの混合物を供給材料として調製した。6.5Lの予めフッ素化した酸化クロム触媒を、4インチのモネル400反応器中に装填した。反応器を窒素流中で約180℃に加熱した。次に、1.9ポンド/時の流速で無水HFの供給を開始した。1.1ポンド/時の流速でモレキュラーシーブ3Aカラムに通した後、有機供給材料をHF供給材料と混合した。混合したHF及び有機供給材料を、気化させるために気化器に導入し、次に反応させるために反応器に導入した。反応が開始したら、反応温度(ホットスポット温度)は約200℃に上昇した。反応器圧力は70psigに設定した。反応中において、生成物流から試料を一定時間毎に採取して、GC及びGC−MSによって分析した。結果は、約300時間続けた反応研究時間中において、1230xa転化率はほぼ100%であり、1233xf、1232xf、244bbへの平均選択率は、それぞれ約97.9%、0.3%、及び1.5%であったことを示した。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
式I:
CX=CCl−CHX (I)
(式中、Xは、独立して、F、Cl、Br、及びIから選択され、但し少なくとも1つのXはフッ素ではない)
の少なくとも1種類の化合物を含む出発組成物を与え;
かかる出発組成物を、フッ素化剤、及び式Iの化合物以外の有効量の1種類以上の有機共供給化合物と接触させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む最終組成物を生成させる;
ことを含む2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法。
[2]
有機共供給化合物が式Iの化合物よりも低い沸点を有する、[1]に記載の方法。
[3]
有機共供給化合物がハロカーボン又はハロオレフィンである、[2]に記載の方法。
[4]
有機共供給化合物が、トリクロロフルオロプロペン(1231)、ジクロロジフルオロプロペン(1232)、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1223xd)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)、3,3,3,2−テトラフルオロプロプ−1−エン(1234yf)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラクロロプロパン(244bb)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(245eb)、テトラクロロフルオロプロパン(241)、トリクロロジフルオロプロパン(242)、ジクロロトリフルオロプロパン(243)、及びこれらの組合せからなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[5]
有機共供給化合物の有効量が約0.1〜約99.9重量%の間である、[1]に記載の方法。
[6]
有機共供給化合物の有効量が約1〜約50重量%の間である、[1]に記載の方法。
[7]
有機共供給化合物の有効量が約3〜約30重量%の間である、[1]に記載の方法。
[8]
有機共供給化合物の有効量が約5〜約15重量%の間である、[1]に記載の方法。
[9]
式Iの少なくとも1種類の化合物が、少なくとも1つのXが塩素である化合物である、[1]に記載の方法。
[10]
式Iの少なくとも1種類の化合物が、全てのXが塩素である化合物である、[1]に記載の方法。
[11]
式Iの少なくとも1種類の化合物が1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む、[1]に記載の方法。
[12]
出発組成物とフッ素化剤との接触を蒸気相中で行う、[1]に記載の方法。
[13]
接触工程を触媒の存在下で行う、[1]に記載の方法。
[14]
触媒が蒸気相触媒である、[13]に記載の方法。
[15]
蒸気相触媒が、酸化クロム、水酸化クロム、ハロゲン化クロム、オキシハロゲン化クロム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ハロゲン化アルミニウム、オキシハロゲン化アルミニウム、酸化コバルト、水酸化コバルト、ハロゲン化コバルト、オキシハロゲン化コバルト、酸化マンガン、水酸化マンガン、ハロゲン化マンガン、オキシハロゲン化マンガン、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、ハロゲン化ニッケル、オキシハロゲン化ニッケル、酸化鉄、水酸化鉄、ハロゲン化鉄、オキシハロゲン化鉄、これらの無機塩、これらのフッ素化誘導体、及びこれらの組合せからなる群から選択される、[14]に記載の方法。
[16]
触媒が酸化クロムを含む、[14]に記載の方法。
[17]
触媒がCrを含む、[14]に記載の方法。
[18]
接触工程を少なくとも1種類の安定剤の存在下で行う、[1]に記載の方法。
[19]
安定剤がアミンベースの安定剤である、[18]に記載の方法。
[20]
安定剤が、p−tap(4−tert−アミルフェノール)、メトキシヒドロキノン、4−メトキシフェノール(HQMME)、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、チモール、及びこれらの組合せからなる群から選択される、[18]に記載の方法。
[21]
(a)式I:
CX=CCl−CHX (I);
(式中、Xは、独立して、F、Cl、Br、及びIから選択され、但し少なくとも1つのXはフッ素ではない)
の化合物を含む出発組成物を与え;
(b)かかる出発組成物を第1のフッ素化剤及び少なくとも1種類の有機共供給化合物と接触させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む第1の中間体組成物を生成させ;
(c)第1の中間体組成物を第2のフッ素化剤と接触させて、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを含む第2の中間体組成物を生成させ;そして
(d)2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンの少なくとも一部を脱塩化水素化して、2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エンを含む反応生成物を生成させる;
ことを含む2,3,3,3−テトラフルオロプロプ−1−エンの製造方法。
[22]
(a)第1の蒸気相反応器内において、蒸気相触媒の存在下で、式I:
CX=CCl−CHX (I);
(式中、Xは、独立して、F、Cl、Br、及びIから選択され、但し少なくとも1つのXはフッ素ではない)
の少なくとも1種類の化合物を含む出発組成物をフッ素化剤と接触させて、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)、HCl、及び式Iの化合物以外の1種類以上の有機共供給化合物を含む第1の中間体組成物を生成させ;
(b)HCl、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)、及び1種類以上の有機共供給化合物を第1の中間体組成物から分離し;
(c)有効量の分離された1種類以上の有機共供給化合物を第1の蒸気相反応器に再循環し;
(d)液相反応器内において、分離された2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233xf)を第2のフッ素化剤と接触させて、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)を含む第2の中間体組成物を生成させ;そして
(e)第2の蒸気相反応器内において、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(244bb)の少なくとも一部を脱塩化水素化して、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む反応生成物を生成させる;
ことを含む2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)を製造するための多段階方法。
[23]
工程(c)において分離された1種類以上の有機共供給化合物を第1の蒸気相反応器に再循環することによって、再循環を行わない場合よりも長い触媒寿命が蒸気相触媒に与えられる、[22]に記載の方法。
[24]
蒸気相触媒が、Cr、FeCl/炭素、Cr/Al、Cr/AlF、Cr/炭素、CoCl/Cr/Al、NiCl/Cr/Al、CoCl/AlF、NiCl/AlF、及びこれらの混合物から選択される、[23]に記載の方法。
[25]
工程(c)において第1の蒸気相反応器に再循環する分離された1種類以上の有機共供給化合物の有効量が、工程(a)における出発組成物の全重量を基準として約1〜約50重量%の間である、[24]に記載の方法。
図1