特許第6184972号(P6184972)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6184972植物成長調節剤化合物としてのストリゴラクタム誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184972
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】植物成長調節剤化合物としてのストリゴラクタム誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/12 20060101AFI20170814BHJP
   A01N 43/36 20060101ALI20170814BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   C07D405/12CSP
   A01N43/36 C
   A01P21/00
【請求項の数】15
【全頁数】72
(21)【出願番号】特願2014-546541(P2014-546541)
(86)(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公表番号】特表2015-502361(P2015-502361A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】EP2012075605
(87)【国際公開番号】WO2013092430
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年11月19日
(31)【優先権主張番号】1121904.5
(32)【優先日】2011年12月19日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1204149.7
(32)【優先日】2012年3月8日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】300091441
【氏名又は名称】シンジェンタ パーティシペーションズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100192201
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】マチルド デニス ラシア
(72)【発明者】
【氏名】アラン ドゥ ムスマエケル
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル ビルデュ−ペルシュロン
(72)【発明者】
【氏名】ハンノ クリスティアン ボルフ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール ジョセフ マルセル ジュン
(72)【発明者】
【氏名】フランシスクス コルネリス ランフェルメイヤー
(72)【発明者】
【氏名】パウル ウィレム ヤン バン デン ウィーンハード
(72)【発明者】
【氏名】クラウディオ スクレパンティ
【審査官】 村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−501231(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0230352(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/128112(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A01N
A01P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】
(式中、
WはOまたはSであり;
R2およびR3は、独立して、水素またはC1〜C3アルキルであり;
R4およびR5は、独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1〜C3アルキル、C1〜C3ハロアルキル、C1〜C3アルコキシ、ヒドロキシル、−OC(O)R9、アミン、N−C1〜C3アルキルアミンまたはN,N−ジ−C1〜C3アルキルアミンであり;
R9は、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシまたはC1〜C6ハロアルキルであり;
R6およびR7は、独立して、水素、C1〜C3アルキル、ヒドロキシル、ハロゲンまたはC1〜C3アルコキシであり;
R8は、水素、ニトロ、シアノ、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、ハロゲン、C1〜C8アルキルチオ、C1〜C8ハロアルキルチオ、C1〜C8アルキルスルフィニル、N−C1〜C6アルキルアミン、N,N−ジ−C1〜C6アルキルアミン、C1〜C8ハロアルキルスルフィニル、C1〜C8アルキルスルホニルまたはC1〜C8ハロアルキルスルホニルであり;
R1は、水素、C1〜C6アルコキシ、ヒドロキシル、アミン、N−C1〜C6アルキルアミン、N,N−ジ−C1〜C6アルキルアミン、任意により1〜5個のR10によって置換されたC1〜C6アルキル、C1〜C8アルキルカルボニル、C1〜C8アルコキシカルボニル、任意により1〜5個のR10によって置換されたアリール、任意により1〜5個のR10によって置換されたヘテロアリール、任意により1〜5個のR10によって置換されたヘテロシクリル、または、任意により1〜5個のR10によって置換されたベンジルであり;
R10は、水素、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルキル、C2〜C6アルケニルまたはC2〜C6アルキニルであり;
1、A2およびA3は、各々独立して、C−Xn、C−(Xn)C−(Xn)、O、SおよびNから選択されるヘテロ原子であり、ここで、各Xは、同一であっても異なっていても、または、結合であってもよく;
4は、O、SおよびNから選択されるヘテロ原子、または、C−Xnであり、ここで、各Xは同一であっても異なっていてもよく;
5およびA6は、各々独立して、C−X、窒素、または、二重結合によって結合されたCであり、ここで、各Xは、同一であっても異なっていてもよく;
1およびA2、A2およびA3、A3およびA4、A4およびA5、A5およびA6、A6およびA1は、単結合または二重結合によって相互に独立して結合されているが、ただし、A1〜A6は芳香族環ではなく;
nは1または2であり;
Xは、水素、ハロゲン、シアノ、アミン、ニトロ、ヒドロキシル、−OC(O)R9、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6ヒドロキシアルキル;任意により1〜5個のR11によって置換されたC2〜C8アルケニル、任意により1〜5個のR11によって置換されたC2〜C8アルキニル、C3〜C7シクロアルキル、1〜5個のR11によって置換されたC3〜C10シクロアルキル、C1〜C8アルキルカルボニル、C1〜C8アルコキシカルボニル、N−C1〜C6アルキルアミノカルボニル、N,N−ジ−C1〜C6アルキルアミノカルボニル、任意により1〜5個のR11によって置換されたアリール、または、任意により1〜5個のR11によって置換された複素環であり;ならびに
R11は、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、−OC(O)R9、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキルである)
または、その塩。
【請求項2】
WがOである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R2およびR3が、独立して、水素、メチルまたはエチルであり;
R4およびR5が、独立して、水素、ヒドロキシル、メチルまたはエチルであり;
R6、R7およびR8が、独立して、水素、メチルまたはエチルであり;
R1が、水素、C1〜C6アルコキシ、任意により1〜5個のR10によって置換されたC1〜C6アルキル、C1〜C8アルキルカルボニル、C1〜C8アルコキシカルボニル、アリール、1〜5個のR10によって置換されたアリール、ヘテロアリール、1〜5個のR10によって置換されたヘテロアリール、ヘテロシクリル、1〜5個のR10によって置換されたヘテロシクリル、ベンジル、または、1〜5個のR10によって置換されたベンジルであり;ならびに
R10が、独立して、水素、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルキルであり;
1、A2、A3およびA4がC−Xnであり;
5およびA6が、独立して、C−Xまたは二重結合によって結合されたCであり;
nが1または2であり;ならびに
Xが、水素、メチル、エチル、フルオロ、ヒドロキシル、メチルヒドロキシ、メトキシまたはメチルアセテートである
請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
5およびA6が二重結合によって結合されたCである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物および農学的に許容可能な配合補助剤を含む植物成長調節剤または種子発芽促進組成物。
【請求項6】
1つの場所で植物の成長を調節する方法であって、前記場所に植物成長調節量の請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物または請求項5に記載の組成物を適用するステップを含む方法。
【請求項7】
種子の発芽を促進させる方法であって、前記種子または種子を含む場所に、種子発芽促進量の請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物または請求項5に記載の組成物を適用するステップを含む方法。
【請求項8】
前記種子の前記植物が、ブラシカ属(brassica)から選択される植物である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
雑草種子を含む場所に種子発芽促進量の請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物または請求項5に記載の組成物を適用するステップ、前記種子を出芽させるステップ、次いで、前記場所に出芽後散布除草剤を適用するステップを含む、雑草を防除する方法。
【請求項10】
植物成長調節剤または種子発芽促進剤としての請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項11】
式(II)の化合物
【化2】
(式中、
WはOまたはSであり;
R2およびR3は、独立して、水素またはC1〜C3アルキルであり;
R4およびR5は、独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1〜C3アルキル、C1〜C3ハロアルキル、C1〜C3アルコキシ、ヒドロキシル、−OC(O)R9、アミン、N−C1〜C3アルキルアミンまたはN,N−ジ−C1〜C3アルキルアミンであり;
R9は、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシまたはC1〜C6ハロアルキルであり;
R8は、水素、ニトロ、シアノ、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、ハロゲン、C1〜C8アルキルチオ、C1〜C8ハロアルキルチオ、C1〜C8アルキルスルフィニル、N−C1〜C6アルキルアミン、N,N−ジ−C1〜C6アルキルアミン、C1〜C8ハロアルキルスルフィニル、C1〜C8アルキルスルホニルまたはC1〜C8ハロアルキルスルホニルであり;
R1は、水素、C1〜C6アルコキシ、ヒドロキシル、アミン、N−C1〜C6アルキルアミン、N,N−ジ−C1〜C6アルキルアミン、任意により1〜5個のR10によって置換されたC1〜C6アルキル、C1〜C8アルキルカルボニル、C1〜C8アルコキシカルボニル、アリール、1〜5個のR10によって置換されたアリール、ヘテロアリール、1〜5個のR10によって置換されたヘテロアリール、ヘテロシクリル、1〜5個のR10によって置換されたヘテロシクリル、ベンジル、または、1〜5個のR10によって置換されたベンジルであり;
R10は、水素、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルキル、C2〜C6アルケニルまたはC2〜C6アルキニルであり;
1、A2およびA3は、各々独立して、C−Xn、C−(Xn)C−(Xn)、O、SおよびNから選択されるヘテロ原子であり、ここで、各Xは、同一であっても異なっていても、または、結合であってもよく;
4は、O、SおよびNから選択されるヘテロ原子、または、C−Xnであり、ここで、各Xは同一であっても異なっていてもよく;
5およびA6は、各々独立して、C−X、窒素、または、二重結合によって結合されたCであり、ここで、各Xは、同一であっても異なっていてもよく;
1およびA2、A2およびA3、A3およびA4、A4およびA5、A5およびA6、A6およびA1は、単結合または二重結合によって相互に独立して結合されているが、ただし、A1〜A6は芳香族環ではなく;
nは1または2であり;
Xは、水素、ハロゲン、シアノ、アミン、ニトロ、ヒドロキシル、−OC(O)R9、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6ヒドロキシアルキル;任意により1〜5個のR11によって置換されたC2〜C8アルケニル、任意により1〜5個のR11によって置換されたC2〜C8アルキニル、C3〜C7シクロアルキル、1〜5個のR11によって置換されたC3〜C10シクロアルキル、C1〜C8アルキルカルボニル、C1〜C8アルコキシカルボニル、N−C1〜C6アルキルアミノカルボニル、N,N−ジ−C1〜C6アルキルアミノカルボニル、任意により1〜5個のR11によって置換されたアリール、または、任意により1〜5個のR11によって置換された複素環であり;ならびに
R11は、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、−OC(O)R9、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキルである)
または、その塩。
【請求項12】
作物植物を増強する方法であって、前記植物、植物部位、植物繁殖体または植物が成長する生息地に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物または請求項5に記載の組成物を適用することによる方法。
【請求項13】
植物、植物部位、植物繁殖体または植物が成長する生息地に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物または請求項5に記載の組成物を適用するステップを含む、植物収量を改良する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
植物、植物部位、植物繁殖体または植物が成長する生息地に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物または請求項5に記載の組成物を適用するステップを含む、植物の投与物利用効率を改良する請求項12に記載の方法。
【請求項15】
植物、植物部位、植物繁殖体または植物が成長する生息地に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物または請求項5に記載の組成物を適用するステップを含む、植物活力、および/または、植物品質、および/または、ストレス因子に対する植物許容耐性を改良する請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なストリゴラクタム(strigolactam)誘導体、これらを調製するためのプロセスおよび中間体、これらを含む植物成長調節剤組成物、ならびに、植物の成長を制御するためおよび/または種子の発芽を促進するためのこれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ストリゴラクトン誘導体は、植物成長調節および種子発芽特性を有する植物ホルモンであり;これらは、例えば、国際公開第2009/138655号パンフレット、国際公開第2010/125065号パンフレット、国際公開第05/077177号パンフレット、国際公開第06/098626号パンフレットおよびAnnual Review of Phytopathology(2010),48 p.93−117に記載されている。合成類似体GR24のようなストリゴラクトン誘導体は、ハマウツボ(Orobanche)種などの寄生性の雑草の発芽に対する作用を有することが知られている。技術分野において、ハマウツボ(Orobanche)種子の発芽に係るテストはストリゴラクトン類似体を同定するための有用なテストであることが確立している(例えば、Plant and Cell Physiology(2010),51(7)p.1095;および、Organic & Biomolecular Chemistry(2009),7(17),p.3413を参照のこと)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
現在においては、意外にも、一定のストリゴラクタム誘導体がストリゴラクトンと類似する特性を有することが見出されている。ストリゴラクタム誘導体は作物増強特性をも有することが見出されている。
【0004】
本発明によれば、式(I)の化合物
【化1】
(式中、
WはOまたはSであり;
R2およびR3は、独立して、水素またはC1〜C3アルキルであり;
R4およびR5は、独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1〜C3アルキル、C1〜C3ハロアルキル、C1〜C3アルコキシ、ヒドロキシル、−OC(O)R9、アミン、N−C1〜C3アルキルアミンまたはN,N−ジ−C1〜C3アルキルアミンであり;
R9は、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシまたはC1〜C6ハロアルキルであり;
R6およびR7は、独立して、水素、C1〜C3アルキル、ヒドロキシル、ハロゲンまたはC1〜C3アルコキシであり;
R8は、水素、ニトロ、シアノ、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、ハロゲン、C1〜C8アルキルチオ、C1〜C8ハロアルキルチオ、C1〜C8アルキルスルフィニル、N−C1〜C6アルキルアミン、N,N−ジ−C1〜C6アルキルアミン、C1〜C8ハロアルキルスルフィニル、C1〜C8アルキルスルホニルまたはC1〜C8ハロアルキルスルホニルであり;
R1は、水素、C1〜C6アルコキシ、ヒドロキシル、アミン、N−C1〜C6アルキルアミン、N,N−ジ−C1〜C6アルキルアミン、任意により1〜5個のR10によって置換されたC1〜C6アルキル、C1〜C8アルキルカルボニル、C1〜C8アルコキシカルボニル、任意により1〜5個のR10によって置換されたアリール、任意により1〜5個のR10によって置換されたヘテロアリール、任意により1〜5個のR10によって置換されたヘテロシクリル、または、任意により1〜5個のR10によって置換されたベンジルであり;
R10は、水素、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルキル、C2〜C6アルケニルまたはC2〜C6アルキニルであり;
1、A2およびA3は、各々独立して、C−Xn、C−(Xn)C−(Xn)、O、SおよびNから選択されるヘテロ原子であり、ここで、各Xは、同一であっても異なっていても、または、結合であってもよく;
4は、O、SおよびNから選択されるヘテロ原子、または、C−Xnであり、ここで、各Xは同一であっても異なっていてもよく;
5およびA6は、各々独立して、C−X、窒素、または、二重結合によって結合されたCであり、ここで、各Xは、同一であっても異なっていてもよく;
1およびA2、A2およびA3、A3およびA4、A4およびA5、A5およびA6、A6およびA1は、単結合または二重結合によって相互に独立して結合されているが、ただし、A1〜A6は芳香族環ではなく;
nは1または2であり;
Xは、水素、ハロゲン、シアノ、アミン、ニトロ、ヒドロキシル、−OC(O)R9、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6ヒドロキシアルキル;任意により1〜5個のR11によって置換されたC2〜C8アルケニル、任意により1〜5個のR11によって置換されたC2〜C8アルキニル、C3〜C7シクロアルキル、1〜5個のR11によって置換されたC3〜C10シクロアルキル、C1〜C8アルキルカルボニル、C1〜C8アルコキシカルボニル、N−C1〜C6アルキルアミノカルボニル、N,N−ジ−C1〜C6アルキルアミノカルボニル、任意により1〜5個のR11によって置換されたアリール、または、任意により1〜5個のR11によって置換された複素環であり;ならびに
R11は、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、−OC(O)R9、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキルである)
または、その塩もしくはN−オキシドが提供されている。
【発明を実施するための形態】
【0005】
式(I)の化合物は、異なる幾何異性体または光学異性体(ジアステレオ異性体およびエナンチオマー)または互変異性形態で存在し得る。本発明は、すべてのこのような異性体および互変異性体、ならびに、すべての割合でのこれらの混合物、ならびに、重水素化化合物などの同位体形態を包含する。本発明はまた、式(I)の化合物のすべての塩、N−オキシドおよびメタロイド錯体を包含する。
【0006】
各アルキル部分は、単独で、または、より大きな基(アルコキシ、アルコキシ−カルボニル、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニルなど)の一部として、直鎖または分岐鎖であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチルまたはネオペンチルである。アルキル基は、好ましくはC1〜C6アルキル基、より好ましくはC1〜C4および最も好ましくはC1〜C3アルキル基である。
【0007】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である。
【0008】
ハロアルキル基(単独で、または、ハロアルコキシもしくはハロアルキルチオなどのより大きな基の一部として)は、1つまたは複数の同一のまたは異なるハロゲン原子で置換されているアルキル基であって、例えば、−CF3、−CF2Cl、−CH2CF3または−CH2CHF2である。
【0009】
ヒドロキシアルキル基は、1つまたは複数の水酸基で置換されているアルキル基であって、例えば、−CH2OH、−CH2CH2OHまたは−CH(OH)CH3である。
【0010】
本明細書の文脈において、「アリール」という用語は、モノ−、ビ−またはトリシクロであり得る環系を指す。このような環の例としては、フェニル、ナフタレニル、アントラセニル、インデニルまたはフェナントレニルが挙げられる。好ましいアリール基はフェニルである。
【0011】
他に示されている場合を除き、アルケニルおよびアルキニルは、これらのみで、または、他の置換基の一部として、直鎖または分岐鎖であり得、好ましくは2〜6個、好ましくは2〜4個、より好ましくは2〜3個の炭素原子を含有していてもよく、適切な場合には、(E)型または(Z)型配置のいずれであってもよい。例としては、ビニル、アリルおよびプロパルギルが挙げられる。
【0012】
別段の定めがある場合を除き、シクロアルキルは、単環式または二環式であり得、任意により1つまたは複数のC1〜C6アルキル基で置換され得、および、好ましくは3〜7個の炭素原子、より好ましくは3〜6個の炭素原子を含有する。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、1−メチルシクロプロピル、2−メチルシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが挙げられる。
【0013】
「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1個のヘテロ原子を含有すると共に単環または2つ以上の縮合環から構成されている芳香族環系を指す。好ましくは、単環は3個以下のヘテロ原子、および、二環系は4個以下のヘテロ原子を含有し、ヘテロ原子は窒素、酸素および硫黄から選択されることが好ましいであろう。このような基の例としては、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、フラニル、チオフェニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリルおよびテトラゾリルが挙げられる。好ましいヘテロアリール基はピリジンである。
【0014】
「ヘテロシクリル」という用語は、ヘテロアリール、飽和類似体を包含し、さらに、4,5,6,7−テトラヒドロ−ベンゾチオフェニル、9H−フルオレニル、3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ−1,4−ジオキシエピニル、2,3−ジヒドロ−ベンゾ−フラニル、ピペリジニル、1,3−ジオキソラニル、1,3−ジオキサニル、4,5−ジヒドロ−イソオキサゾリル、テトラヒドロフラニルおよびモルホリニルなどのヘテロアリールの不飽和類似体または部分飽和類似体を包含するよう定義される。加えて、「ヘテロシクリル」という用語は、炭素原子および水素原子と、好ましくは窒素、酸素および硫黄から選択される1〜4個のヘテロ原子といった少なくとも1個のヘテロ原子とを含む非芳香族単環式または多環式環として定義される、オキシランまたはチエタンなどの「ヘテロシクロアルキル」を含むと定義される。
【0015】
W、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R10、A1、A2、A3、A4、A5、A6およびXの好ましい値は、任意の組み合わせで、以下に規定されているとおりである。
【0016】
Wは、好ましくは酸素である。
【0017】
R2は、好ましくは、水素、メチルまたはエチルであり;最も好ましくは、R2は水素である。
【0018】
R3は、好ましくは、水素、メチルまたはエチルであり;最も好ましくは、R3は水素である。
【0019】
R4は、好ましくは、水素、ヒドロキシル、メチルまたはエチルであり;最も好ましくは、R4は水素またはヒドロキシルである。
【0020】
R5は、好ましくは、水素、ヒドロキシル、メチルまたはエチルであり;最も好ましくは、R5は水素またはヒドロキシルである。
【0021】
R6は、好ましくは、水素、メチルまたはエチルであり;最も好ましくは、R6はメチルである。
【0022】
R7は、好ましくは、水素、メチル、メトキシ、塩素またはエチルであり;最も好ましくは、R7は水素である。
【0023】
R8は、好ましくは、水素、メチルまたはエチルであり;最も好ましくは、R8は水素である。
【0024】
R1は、好ましくは、水素、C1〜C6アルコキシ、任意により1〜5個のR10によって置換されたC1〜C6アルキル、C1〜C8アルキルカルボニル、C1〜C8アルコキシカルボニル、アリール、1〜5個のR10によって置換されたアリール、ヘテロアリール、1〜5個のR10によって置換されたヘテロアリール、ヘテロシクリル、1〜5個のR10によって置換されたヘテロシクリル、ベンジル、または、1〜5個のR10によって置換されたベンジルである。より好ましくは、R1は、水素、C1〜C6アルコキシ、1〜5個のR10によって置換されているかもしくは置換されていないC1〜C6アルキル、C1〜C8アルキルカルボニル、C1〜C8アルコキシカルボニル、アリール、1〜5個のR10によって置換されたアリール、ベンジル、または、1〜5個のR10によって置換されたベンジルである。最も好ましくは、R1は、水素、メチル、エチル、フェニル、ベンジル、アセテートまたはメトキシカルボニルである。
【0025】
R10は、独立して、水素、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルキルであり;最も好ましくは、R10は、水素、シアノ、ニトロ、塩化物、臭化物、フッ化物、メチル、メトキシまたはトリフルオロメチルである。
【0026】
好ましくは、A1、A2、A3およびA4はC−Xnであり、ここで、nは1または2である。
【0027】
好ましくは、A5およびA6は、独立して、C−Xまたは二重結合によって結合されたCであり;最も好ましくは、A5およびA6は二重結合によって結合されたCである。
【0028】
一実施形態においては、A1〜A6はカルボニル環である。さらなる実施形態において、A1〜A6は6員カルボニル環である。
【0029】
好ましくは、Xは、水素、メチル、エチル、フルオロ、ヒドロキシル、メチルヒドロキシ、メトキシまたはメチルアセテートである。
【0030】
好ましい実施形態において、化合物は式(II)のもの、
【化2】
(式中、
WはOまたはSであり;
R2およびR3は、独立して、水素またはC1〜C3アルキルであり;
R4およびR5は、独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1〜C3アルキル、C1〜C3ハロアルキル、C1〜C3アルコキシ、ヒドロキシル、−OC(O)R9、アミン、N−C1〜C3アルキルアミンまたはN,N−ジ−C1〜C3アルキルアミンであり;
R9は、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシまたはC1〜C6ハロアルキルであり;
R8は、水素、ニトロ、シアノ、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、ハロゲン、C1〜C8アルキルチオ、C1〜C8ハロアルキルチオ、C1〜C8アルキルスルフィニル、N−C1〜C6アルキルアミン、N,N−ジ−C1〜C6アルキルアミン、C1〜C8ハロアルキルスルフィニル、C1〜C8アルキルスルホニルまたはC1〜C8ハロアルキルスルホニルであり;
R1は、水素、C1〜C6アルコキシ、ヒドロキシル、アミン、N−C1〜C6アルキルアミン、N,N−ジ−C1〜C6アルキルアミン、任意により1〜5個のR10によって置換されたC1〜C6アルキル、C1〜C8アルキルカルボニル、C1〜C8アルコキシカルボニル、アリール、1〜5個のR10によって置換されたアリール、ヘテロアリール、1〜5個のR10によって置換されたヘテロアリール、ヘテロシクリル、1〜5個のR10によって置換されたヘテロシクリル、ベンジル、または、1〜5個のR10によって置換されたベンジルであり;
R10は、水素、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルキル、C2〜C6アルケニルまたはC2〜C6アルキニルであり;
1、A2およびA3は、各々独立して、C−Xn、C−(Xn)C−(Xn)、O、SおよびNから選択されるヘテロ原子であり、ここで、各Xは、同一であっても異なっていても、または、結合であってもよく;
4は、O、SおよびNから選択されるヘテロ原子、または、C−Xnであり、ここで、各Xは同一であっても異なっていてもよく;
5およびA6は、各々独立して、C−X、窒素、または、二重結合によって結合されたCであり、ここで、各Xは、同一であっても異なっていてもよく;
1およびA2、A2およびA3、A3およびA4、A4およびA5、A5およびA6、A6およびA1は、単結合または二重結合によって相互に独立して結合されているが、ただし、A1〜A6は芳香族環ではなく;
nは1または2であり;
Xは、水素、ハロゲン、シアノ、アミン、ニトロ、ヒドロキシル、−OC(O)R9、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6ヒドロキシアルキル;任意により1〜5個のR11によって置換されたC2〜C8アルケニル、任意により1〜5個のR11によって置換されたC2〜C8アルキニル、C3〜C7シクロアルキル、1〜5個のR11によって置換されたC3〜C10シクロアルキル、C1〜C8アルキルカルボニル、C1〜C8アルコキシカルボニル、N−C1〜C6アルキルアミノカルボニル、N,N−ジ−C1〜C6アルキルアミノカルボニル、任意により1〜5個のR11によって置換されたアリール、または、任意により1〜5個のR11によって置換された複素環であり;ならびに
R11は、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、−OC(O)R9、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキルである)
または、その塩もしくはN−オキシドである。
【0031】
1、A2、A3、A4、A5、A6、R1、R2、R3、R4、R5、R8およびWに対する好ましさは、式(I)の化合物の対応する置換基について規定されている好ましさと同じである。
【0032】
以下の表1は式(I)の化合物の例を含み、式中、WはOであり、R2はHであり、R3はHであり、R6はメチルであり、R7はHであり、R8はHであり、A1、A2、A3、A4、A5、A6、R1、R4およびR5は定義されているとおりである。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】
【表7】
【0040】
以下の表2は式(II)の化合物の例を含んでおり、式中、WはOであり、R2はHであり、R3はHであり、R8はHであり、ならびに、A1、A2、A3、A4、R1、R4およびR5は定義されているとおりである。
【0041】
【表8】
【0042】
【表9】
【0043】
【表10】
【0044】
【表11】
【0045】
【表12】
【0046】
【表13】
【0047】
【表14】
【0048】
本発明に係る式(I)の化合物は、単独で植物成長調節剤または種子発芽促進剤として用いられることが可能であるが、一般的には、キャリア、溶剤および表面活性薬剤(SFA)などの配合補助剤を用いて植物成長調節組成物または種子発芽促進組成物に配合される。それ故、本発明は、式(I)の植物成長調節化合物および農学的に許容可能な配合補助剤を含む植物成長調節剤組成物をさらに提供する。本発明は、基本的に式(I)の植物成長調節化合物および農学的に許容可能な配合補助剤からなる植物成長調節剤組成物をさらに提供する。本発明は、式(I)の植物成長調節化合物および農学的に許容可能な配合補助剤からなる植物成長調節剤組成物をさらに提供する。本発明は、式(I)の種子発芽促進剤化合物および農学的に許容可能な配合補助剤を含む種子発芽促進剤組成物をさらに提供する。本発明は、基本的に式(I)の種子発芽促進剤化合物および農学的に許容可能な配合補助剤からなる種子発芽促進剤組成物をさらに提供する。本発明は、式(I)の種子発芽促進剤化合物および農学的に許容可能な配合補助剤からなる種子発芽促進剤組成物をさらに提供する。組成物は、使用前に希釈される濃縮物の形態であることが可能であるが、そのまま使用可能な組成物もまた形成されることが可能である。最終的な希釈は通常水で行われるが、水の代わりに、または、水に追加して、例えば、液体肥料、微量元素、生物学的生体、油または溶剤で行われることが可能である。
【0049】
一般に、組成物は、0.1〜99重量%、特に0.1〜95重量%の式(I)の化合物と、0〜25重量%の表面活性物質を含んでいることが好ましい1〜99.9重量%の配合補助剤とを含む。
【0050】
組成物は多数の配合物タイプから選択可能であり、その多くは、Manual on Development and Use of FAO Specifications for Plant Protection Products,5th Edition,1999から公知である。これらとしては、吐粉性粉末(DP)、可溶性粉末(SP)、水溶性顆粒(SG)、水分散性顆粒(WG)、水和剤(WP)、顆粒(GR)(緩効性または速効性)、可溶性濃縮物(SL)、油混和性液体(OL)、超低体積液体(UL)、乳化性濃縮物(EC)、分散性濃縮物(DC)、エマルジョン(水中油型(EW)および油中水型(EO)の両方)、マイクロエマルジョン(ME)、懸濁液濃縮物(SC)、エアロゾル、カプセル懸濁液(CS)および種子処理配合物が挙げられる。いずれかの事例において選択される配合物タイプは、想定される特定の目的、ならびに、式(I)の化合物の物理的、化学的および生物学的特性に応じることとなる。
【0051】
吐粉性粉末(DP)は、式(I)の化合物を1種以上の固体希釈剤(例えば、天然クレイ、カオリン、葉ろう石、ベントナイト、アルミナ、モンモリロナイト、キースラガー、チョーク、珪藻土、リン酸カルシウム、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウム、硫黄、石灰、微細繊維、タルク、ならびに、他の有機および無機固体キャリア)と混合し、この混合物を微粉末に機械的に粉砕することにより調製され得る。
【0052】
可溶性粉末(SP)は、式(I)の化合物を、1種以上の水溶性無機塩(重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムまたは硫酸マグネシウムなど)または1種以上の水溶性有機固形分(多糖類など)と、任意により、1種以上の湿潤剤、1種以上の分散剤または前記薬剤の混合物と共に混合して水分散性/溶解度を向上させることにより調製され得る。混合物は、次いで、微粉末に粉砕される。同様の組成物もまた水溶性顆粒(SG)に粒状化され得る。
【0053】
水和剤(WP)は、式(I)の化合物を、1種以上の固体希釈剤またはキャリア、1種以上の湿潤剤、好ましくは1種以上の分散剤、任意により、1種以上の懸濁剤と混合して液体中での分散を促進させることにより調製され得る。混合物は、次いで、微粉末に粉砕される。同様の組成物もまた水分散性顆粒(WG)に粒状化され得る。
【0054】
顆粒(GR)は、式(I)の化合物と1種以上の粉末化された固体希釈剤もしくはキャリアとの混合物を粒状化することにより、または、予め形成されたブランクの顆粒から、式(I)の化合物(または、好適な薬剤中のその溶液)を多孔性粒状材料(軽石、アタパルジャイトクレイ、フーラー土、キースラガー、珪藻土または粉砕したトウモロコシ穂軸など)に吸収させることにより、または、式(I)の化合物(または、好適な薬剤中のその溶液)を硬質のコア材料(砂、ケイ酸、炭酸塩、硫酸塩またはリン酸塩鉱物など)に吸着させ、必要に応じて乾燥させることにより、形成され得る。吸収または吸着を補助するために通例用いられる薬剤としては、溶剤(脂肪族および芳香族石油系溶剤、アルコール、エーテル、ケトンおよびエステルなど)および固着剤(ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、デキストリン、糖質および植物性油など)が挙げられる。1種以上の他の添加剤もまた顆粒に含まれ得る(例えば、乳化剤、湿潤剤または分散剤)。
【0055】
分散性濃縮物(DC)は、水、または、ケトン、アルコールもしくはグリコールエーテルなどの有機溶剤中に式(I)の化合物を溶解させることにより調製され得る。これらの溶液は、表面活性剤を含有していてもよい(例えば、水による希釈を向上させるか、または、噴霧タンク中での結晶化を防止するため)。
【0056】
乳化性濃縮物(EC)または水中油型エマルジョン(EW)は、有機溶剤(任意により、1種以上の湿潤剤、1種以上の乳化剤または前記薬剤の混合物を含有する)中に式(I)の化合物を溶解させることにより調製され得る。ECにおける使用に好適な有機溶剤としては、芳香族炭化水素(SOLVESSO 100、SOLVESSO 150およびSOLVESSO 200(SOLVESSOは登録商標である)によって例示されるアルキルベンゼンまたはアルキルナフタレンなど)、ケトン(シクロヘキサノンまたはメチルシクロヘキサノンなど)およびアルコール(ベンジルアルコール、フルフリルアルコールまたはブタノールなど)、N−アルキルピロリドン(N−メチルピロリドンまたはN−オクチルピロリドンなど)、脂肪酸のジメチルアミド(C8〜C10脂肪酸ジメチルアミドなど)および塩素化炭化水素が挙げられる。EC生成物は、水が添加されると自然に乳化して、適切な器具による噴霧適用が可能である十分な安定性を有するエマルジョンをもたらし得る。
【0057】
EWの調製は、液体(室温で液体ではない場合には、典型的には70℃未満の適度な温度で溶融され得る)として、または、溶液(適切な溶剤中に溶解することにより)として式(I)の化合物を得るステップ、次いで、得られた液体または溶液を1種以上のSFAを含む水中に高せん断下で乳化させてエマルジョンを得るステップを含む。EWにおける使用に好適な溶剤としては、植物性油、塩素化炭化水素(クロロベンゼンなど)、芳香族系溶剤(アルキルベンゼンまたはアルキルナフタレンなど)、および、水への溶解度が低い他の適切な有機溶剤が挙げられる。
【0058】
マイクロエマルジョン(ME)は、1種以上の溶剤と1種以上のSFAとのブレンドと水を混合して、熱力学的に安定な等方性液体配合物を自然にもたらすことにより調製され得る。式(I)の化合物は、最初は、水または溶剤/SFAブレンド中に存在する。MEにおける使用に好適な溶剤としては、ECまたはEWにおける使用のために本明細書中上記に記載されているものが挙げられる。MEは、水中油型または油中水型系(どの系が存在しているかは伝導率測定により判定され得る)であり得、同一の配合物中への水溶性および油溶性有害生物防除剤の混合に好適であり得る。MEは、マイクロエマルジョンのまま、または、従来の水中油型エマルジョンを形成する水での希釈に好適である。
【0059】
懸濁液濃縮物(SC)は、式(I)の化合物の微細な不溶性固体粒子の水性または非水性懸濁液を含み得る。SCは、好適な媒体中の式(I)の固体化合物を、任意により1種以上の分散剤と共にボールミルまたはビーズミルにかけて化合物の微細な粒子懸濁液を生成することにより調製され得る。1種以上の湿潤剤が組成物中に含まれていてもよく、懸濁剤が粒子が沈降する速度を低減するために含まれていてもよい。あるいは、式(I)の化合物が乾式ミルにかけられ、本明細書前述の薬剤を含有する水に加えられて、所望される最終生成物がもたらされてもよい。
【0060】
エアロゾル配合物は、式(I)の化合物および好適な噴射剤(例えばn−ブタン)を含む。式(I)の化合物はまた、好適な媒体(例えば水、または、n−プロパノールなどの水和性の液体)中に溶解または分散されて、非加圧式の手動式噴霧ポンプで用いられる組成物をもたらし得る。
【0061】
カプセル懸濁液(CS)はEW配合物の調製と同様に調製され得るが、油滴の水性分散体が得られ、油滴の各々が高分子シェルによるカプセルに入っていると共に式(I)の化合物および任意によりそのためのキャリアまたは希釈剤を含有するよう追加の重合ステージを伴って調製され得る。高分子シェルは、界面重縮合反応またはコアセルベーション法によって生成され得る。この組成物は、式(I)の化合物の放出を制御されたものとし得、種子処理に用いられ得る。式(I)の化合物はまた、生分解性高分子マトリックス中に配合されて、化合物の制御された緩効性をもたらし得る。
【0062】
この組成物は、例えば、式(I)の化合物の、表面上での濡れ性、保持性もしくは分散性;処理面上における雨への耐性;または、摂取もしくは易動性を向上させることにより組成物の生物学的性能を向上させるために、1種以上の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、表面活性剤(SFA)、例えば一定の鉱油または天然植物油(大豆およびナタネ油など)といった油系噴霧添加剤、および、これらと他の生体活性増強(bio−enhancing)補助剤(式(I)の化合物の作用を補助または変性し得る処方成分)とのブレンドが挙げられる。
【0063】
湿潤剤、分散剤および乳化剤は、カチオン性、アニオン性、両性またはノニオン性のSFAであり得る。
【0064】
好適なカチオン性SFAとしては、第4級アンモニウム化合物(例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム)、イミダゾリンおよびアミン塩が挙げられる。
【0065】
好適なアニオン性SFAとしては、脂肪酸のアルカリ金属塩、硫酸の脂肪族モノエステルの塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、スルホン化芳香族化合物の塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、スルホン酸ブチルナフタレン、ならびに、ジ−イソプロピル−スルホン酸ナトリウムおよびトリ−イソプロピル−ナフタレンスルホン酸ナトリウムの混合物)、エーテル硫酸塩、アルコールエーテル硫酸塩(例えばラウレス−3−硫酸ナトリウム)、エーテルカルボン酸塩(例えばラウレス−3−カルボン酸ナトリウム)、リン酸エステル(1種以上の脂肪族アルコールと、リン酸(主にモノ−エステル)または五酸化リン(主にジ−エステル)との反応、例えばラウリルアルコールと四リン酸との反応の生成物;さらに、これらの生成物がエトキシル化されてもよい)、スルホコハク酸塩、パラフィンまたはオレフィンスルホン酸塩、タウレートおよびリグノスルホネートが挙げられる。
【0066】
好適な両性SFAとしては、ベタイン、プロピオネートおよびグリシネートが挙げられる。
【0067】
好適なノニオン性SFAとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたはこれらの混合物などのアルキレンオキシドと、脂肪族アルコール(オレイルアルコールまたはセチルアルコールなど)もしくはアルキルフェノール(オクチルフェノール、ノニルフェノールまたはオクチルクレゾールなど)との縮合物;長鎖脂肪酸またはヘキシトール無水物由来の部分エステル;前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物;ブロックポリマー(エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを含む);アルカノールアミド;単純エステル(例えば脂肪酸ポリエチレングリコールエステル);アミンオキシド(例えばラウリルジメチルアミンオキシド);ならびに、レシチンが挙げられる。
【0068】
好適な懸濁剤としては、親水性コロイド(多糖類、ポリビニルピロリドンまたはナトリウムカルボキシメチルセルロースなど)および膨潤クレイ(ベントナイトまたはアタパルジャイトなど)が挙げられる。
【0069】
本発明はまた、1つの場所における植物の成長を調節する方法であって、前記場所への植物成長調節量の本発明に係る組成物の適用を含む方法をさらに提供する。
【0070】
本発明はまた、種子、または、種子の場所に、種子発芽促進量の本発明に係る組成物を適用するステップを含む種子の発芽を促進させる方法を提供する。
【0071】
適用は、典型的にはトラクターに備え付けた大面積用噴霧器によって組成物を噴霧することにより一般に成されるが、散粉(粉末の場合)、滴下または潅注などの他の方法もまた用いられることが可能である。あるいは、組成物は、畝間に、または、植付時もしくはその前に種子に直接的に適用され得る。
【0072】
本発明の式(I)の化合物または組成物は、植物、植物の一部、植物の器官、植物繁殖材料またはその周囲領域に適用され得る。
【0073】
一実施形態においては、本発明は、植物繁殖材料に本発明の組成物を発芽を促進し、および/または、植物の成長を調節するのに有効な量で適用するステップを含む植物繁殖材料の処理方法に関する。本発明はまた、式(I)の化合物または本発明の組成物で処理された植物繁殖材料に関する。好ましくは、植物繁殖材料は種子である。好ましくは、植物繁殖材料は種子である。本発明の一実施形態において、種子の植物は、ブラシカ属(brassica)から選択される。種子は、ブラシカ属(brassica)から選択される実施形態中のものである。ブラシカ属(brassica)の一般的な種としては、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリ、メキャベツが挙げられる。
【0074】
「植物繁殖材料」という用語は、植物の増殖に用いられることが可能である種子などの植物のすべての生殖部位、ならびに、挿し木および塊茎などの栄養植物材料を示す。特に、種子、根、果実、塊茎、鱗茎および根茎が記載され得る。
【0075】
特に種子といった植物繁殖材料に有効成分を適用する方法は技術分野において公知であり、繁殖材料の粉衣、コーティング、ペレット形成および液浸適用法が挙げられる。処理は、種子の収穫から種子の播種までの間、または、播種プロセスの最中のいずれかの時に種子に適用されることが可能である。種子はまた、処理の前またはその後にプライマ処理され得る。式(I)の化合物は、任意により、化合物が経時的に放出されるよう、除放性コーティングまたは除放技術と組み合わされて適用され得る。
【0076】
本発明の組成物は、出芽前または出芽後に適用され得る。好適には、組成物が作物植物の成長の調節に用いられる場合、組成物は、出芽前または出芽後に適用され得るが、作物の出芽後であることが好ましい。組成物が種子の発芽の促進に用いられる場合、組成物は出芽前に適用され得る。
【0077】
式(I)の化合物の適用量は、広い限度内で様々であり得ると共に、土壌の性質、適用方法(出芽前または出芽後;種子粉衣;まき溝への適用;不耕起適用等)、作物植物、卓越気候条件、ならびに、適用方法、適用時期および標的作物によって左右される他の要因に応じる。葉面適用または潅注適用に関して、本発明に係る式(I)の化合物は、一般に1〜2000g/ha、特に5〜1000g/haの量で適用される。種子処理に関して、適用量は、一般に、0.0005〜150g/種子100kgである。
【0078】
本発明に係る組成物を用いることが可能である植物としては、穀類(例えばコムギ、オオムギ、ライ麦、カラスムギ);ビート(例えばサトウダイコンまたは飼料用ビート);果実(例えば、リンゴ、セイヨウナシ、セイヨウスモモ、モモ、アーモンド、サクランボ、イチゴ、ラズベリーまたはダークベリーなどの仁果、石果または軟果実);マメ科植物(例えば、インゲンマメ、レンズマメ、エンドウマメまたはダイズ);油植物(例えばセイヨウアブラナ、マスタード、ケシ、オリーヴ、ヒマワリ、ココナツ、トウゴマ、カカオ豆または落花生);キュウリ植物(例えばペポカボチャ、キュウリまたはメロン);繊維植物(例えば綿、亜麻、アサまたはジュート);柑橘果実(例えばオレンジ、レモン、グレープフルーツまたはマンダリンミカン);野菜(例えばホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、タマネギ、トマト、ジャガイモ、ヒョウタンまたはパプリカ);クスノキ科(例えばアボガド、シナモンまたは樟脳);トウモロコシ;イネ;タバコ;堅果;コーヒー;サトウキビ;茶;つる植物;ホップ;ドリアン;バナナ;天然ゴム植物;芝生または観賞用植物(例えば花、潅木、闊葉樹または針葉樹などの常緑樹)などの作物が挙げられる。この列挙はいかなる限定をも表すものではない。
【0079】
本発明はまた、例えば発芽を同調させることにより雑草防除を促進させるなど、非作物植物の成長を調節し、または、種子の発芽を促進させるために用いられ得る。
【0080】
作物は、従来の交配法または遺伝子操作によって変性された作物をも含むと理解されるべきである。例えば、本発明は、除草剤または除草剤のクラス(例えばALS−、GS−、EPSPS−、PPO−、ACCase−およびHPPD−抑制剤)に対して耐性を有する作物と併せて用いられ得る。従来の交配法によって例えばイマザモックスといったイミダゾリノンに対する耐性が付与された作物の一例は、Clearfield(登録商標)夏ナタネ(カノーラ)である。遺伝子操作法によって除草剤に対する耐性が付与された作物の例としては、商品名RoundupReady(登録商標)およびLibertyLink(登録商標)で市販されている、例えばグリホサート−およびグルホシネート−耐性トウモロコシ変種が挙げられる。作物植物にHPPD−抑制剤耐性を付与する方法が、例えば国際公開第0246387号パンフレットから公知であり;例えば作物植物は、バクテリア、より具体的にはシュードモナスフルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)もしくはシュワネラコルウェリアナ(Shewanella colwelliana)由来、または、植物、より具体的には、単子葉植物、もしくは、より具体的にはオオムギ、トウモロコシ、コムギ、イネ、ビロードキビ属、クリノイガ属、ドクムギ属、ウシノケグサ属、セタリア属、オヒシバ属、モロコシ属もしくはカラスムギ属種由来の、HPPD−抑制剤耐性HPPD酵素をコードするDNA配列を含むポリヌクレオチドに関して遺伝子組換えされている。
【0081】
作物はまた、例えばBtトウモロコシ(アワノメイガに耐性)、Bt綿(メキシコワタミゾウムシに耐性)およびBtジャガイモ(コロラドハムシに耐性)といった、遺伝子操作法によって有害な昆虫に対する耐性が付与されたものとして理解されるべきである。Btトウモロコシの例は、NK(登録商標)(Syngenta Seeds)のBt176トウモロコシハイブリッドである。Bt毒素は、バチルスチューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)土壌バクテリアによって形成される天然のタンパク質である。毒素、または、このような毒素を合成することができる遺伝子組換え植物の例が、欧州特許出願公開第A−451 878号明細書、欧州特許出願公開第A−374 753号明細書、国際公開第93/07278号パンフレット、国際公開第95/34656号パンフレット、国際公開第03/052073号パンフレットおよび欧州特許出願公開第A−427 529号明細書に記載されている。殺虫剤耐性をコードし、1種以上の毒素を発現する1種以上の遺伝子を含む遺伝子組換え植物の例は、KnockOut(登録商標)(トウモロコシ)、Yield Gard(登録商標)(トウモロコシ)、NuCOTIN33B(登録商標)(綿)、Bollgard(登録商標)(綿)、NewLeaf(登録商標)(ジャガイモ)、NatureGard(登録商標)およびProtexcta(登録商標)である。植物作物またはその種子材料は共に、除草剤に耐性であることが可能であると共に、同時に、昆虫による摂食に耐性であることが可能である(「スタック」遺伝子組換え体)。例えば、種子は、グリホサート耐性であると同時に、殺虫性Cry3タンパク質の発現能を有していることが可能である。
【0082】
作物はまた、従来の交配法または遺伝子操作によって得られると共に、いわゆる出力形質(例えば向上した貯蔵安定性、より高い栄養価および向上した香味)を含むものが含まれると理解されるべきである。
【0083】
本発明の化合物および組成物は、農業において用いられる他の活性処方成分または生成物と組み合わされて適用され得、殺虫剤、殺菌・殺カビ剤、除草剤、植物成長調節剤、作物増強剤、栄養分および生物学的製剤が含まれる。好適な混合相手の例は、Pesticide Manual,15th edition(British Crop Protection Council発行)に見出され得る。このような混合物は、植物、植物繁殖体もしくは植物が生長する生息地に、同時に(例えば、予配合混合物またはタンク混合として)、または、好適な時間尺度において順次に適用され得る。本発明と有害生物防除剤の共適用により、農業従事者が作物に生成物を適用するために消費する時間が短縮されるという利点が追加される。
【0084】
本発明のさらなる態様において、本発明の化合物または組成物は、作物増強効果を有する1種または複数種の他の化合物と組み合わされて適用され得る。このような化合物としては、微量元素、サッカライド、アミノ酸、フラボノイド、キニーネおよび植物活性化剤/成長刺激剤が挙げられる。例えば、このような化合物としては、天然または合成ホルモン、オーキシン、ブラシノステロイド、ジベレリン、アブシジン酸、サイトカイニン、ジャスモン酸塩、ストリゴラクトン、サリチル酸、エチレン、1−メチルシクロプロペン、トリネキサパック−エチル、または、これらの誘導体が挙げられる。このような化合物としてはまた、例えばストロビルリン(アゾキシストロビン、ピラクロストロビンを含む)およびネオニコチノイド(チアメトキサムおよびイミダクロプリドを含む)といった、作物増強効果を有する有害生物防除剤が挙げられる。
【0085】
現在では、本発明に係るこれらのストリゴラクタム誘導体もまた作物増強効果を示すことが見出されている。
【0086】
従って、本発明は、植物、植物部位、植物繁殖体、または、植物が生長する生息地に、式(I)の化合物を適用することにより、作物植物の収量を増大および/または増加させる方法を提供する。
【0087】
植物の「収量を増加させる」という用語は、植物の産物の収量が、本発明に係る組み合わせの適用を伴わないこと以外は同一の条件下で成長させた植物の同一の産物の収量を明らかに超える量で高められることを意味する。収量は、少なくとも約0.5%、好ましくは1%、より好ましくは2%、さらにより好ましくは4%またはそれ以上高められることが好ましい。少なくとも約5%、10%、15%もしくは20%またはそれ以上の収量の増加がさらに好ましい。
【0088】
本発明によれば、「作物の増強」とは、植物活力の改良、植物品質の改良、ストレス因子に対する向上した許容耐性、および/または、向上した投与物利用効率を意味する。
【0089】
本発明によれば、「植物活力の改良」とは、一定の形質が、本発明の方法が不在である同一の条件下で栽培された対照植物における同一の形質と比して、定性的または定量的に向上することを意味する。このような形質としては、これらに限定されないが、発芽の早期化および/もしくは向上、出芽の向上、使用される種子数の低減可能性、根の成長の増大、根系の発達、根粒形成の増加、苗条成長の増加、分げつの増加、より強固な分げつ枝、より生産的な分げつ枝、植物の株立本数の増大もしくは向上、植物の挫折(倒伏)の低減、植物高の増加および/もしくは改良、植物重量の増大(新鮮もしくは乾燥)、より大きな葉身、より濃緑の葉色、色素含有量の増加、光合成活性の増加、開花の早期化、より長い穂、子実成熟の早期化、種子、果実もしくは莢の大きさの増大、莢もしくは雌穂の数の増加、莢もしくは雌穂当たりの種子の数の増加、種子質量の増加、種子登熟の増強、枯れた根出葉の低減、老化の遅延、向上した植物の生命力の向上、貯蔵組織におけるアミノ酸レベルの増加、および/または、必要とされる投与物の低減(例えば必要とされる肥料、水および/または労働の低減)が挙げられる。向上した活力を有する植物は、前述の形質のいずれか、または、前述の形質のいずれかの組み合わせもしくは2種以上で向上を伴い得る。
【0090】
本発明によれば、「植物品質における改良」とは、一定の形質が、本発明の方法が不在である同一の条件下で栽培された対照植物における同一の形質と比して、定性的または定量的に向上することを意味する。このような形質としては、これらに限定されないが、植物の外観の向上、エチレンの低減(生産性の低下および/または受粉の阻害)、例えば種子、果実、葉、野菜といった収穫物の品質の向上(このような向上した品質は、収穫物の外観の向上として現れ得る)、炭水化物含有量の向上(例えば糖質および/またはデンプン量の増加、糖質酸比の向上、還元糖の低減、糖質の発現速度の増加)、タンパク質含有量の向上、油含有量および組成の向上、栄養価の向上、反栄養化合物の低減、官能特性の向上(例えば、味の向上)、および/または、消費者の健康上の有益性の向上(例えばビタミンおよび抗酸化剤レベルの増加)、収穫後の特徴の向上(例えば、貯蔵期限および/または保管安定性の増進、加工性の容易化、化合物の抽出の容易化)、作物の発達の均一化(例えば、植物の同期した発芽、開花および/または結実)、および/または、種子品質の向上(例えば次の時節における使用のため)が挙げられる。向上した品質を有する植物は、前述の形質のいずれか、または、前述の形質のいずれかの組み合わせもしくは2種以上で向上を伴い得る。
【0091】
本発明によれば、「ストレス因子に対する向上した許容耐性」とは、一定の形質が、本発明の方法が不在である同一の条件下で栽培された対照植物における同一の形質と比して、定性的または定量的に向上することを意味する。このような形質としては、これらに限定されないが、干ばつ(例えば、植物中の含水量の欠如、水の取込み能の欠如または植物への給水の低下をもたらすいずれかのストレス)、寒気曝露、高温曝露、浸透圧ストレス、UVストレス、洪水、塩分濃度の上昇(例えば、土壌中)、ミネラル曝露の増大、オゾン曝露、光度の光への曝露、および/または、利用可能な栄養分の限定(例えば窒素および/またはリン栄養分)などの最適下限生育条件をもたらす非生物的ストレス因子に対する許容耐性および/または耐性の増加が挙げられる。ストレス因子に対する向上した許容耐性を有する植物は、前述の形質のいずれか、または、前述の形質のいずれかの組み合わせもしくは2種以上で向上を伴い得る。干ばつおよび養分的ストレスの場合、このような向上した許容耐性は、例えば、水および栄養分のより効率的な取り込み、使用、または、保持による場合がある。
【0092】
本発明によれば、「向上した投与物利用効率」とは、所与のレベルの投与物を用いることで、本発明の方法が不在である同一の条件下で栽培された対照植物の成長と比して、植物がより効果的に成長可能であることを意味する。特に、投与物としては、これらに限定されないが、肥料(窒素、亜リン酸、カリウム、微量元素など)、光および水が挙げられる。向上した投与物利用効率を有する植物は、前述の投与物のいずれか、または、前述の投与物の2種以上のいずれかの組み合わせに対して向上した利用率を有し得る。
【0093】
本発明の他の作物の増強としては、植物高の低減または分げつの低減が挙げられ、これらは、より少量のバイオマスおよびより少ない分げつ枝が望ましい場合の作物における有益な特性または条件である。
【0094】
作物の増強としてはまた、作物に適用される有害生物防除剤または他の化合物の殺草効果に対する作物植物の緩和性が挙げられる。
【0095】
上記の作物増強のいずれかもしくはすべては、例えば植物生理学、植物の成長および発達ならびに/または植物構造を改良することにより、向上した収量をもたらし得る。本発明の文脈において、「収量」としては、特に限定されないが、(i)(a)植物それ自体によりもたらされる量の増加、もしくは、(b)植物収穫物を収穫する能力の向上によってもたらされ得る、バイオマス生産量、子実収量、デンプン含有量、油含有量および/もしくはタンパク質含有量の増加;(ii)収穫物の組成における向上(例えば、糖質酸比の向上、油組成の向上、栄養価の向上、反栄養化合物の低減、消費者の健康上の有益性の向上);および/または、(iii)作物の収穫能の増大/促進、作物の加工性の向上、および/または、より良好な保管安定性/保管寿命が挙げられる。農業用植物の収量の増加とは、定量的測定が可能である場合には、各々の植物の産物の収量が、本発明の方法を伴わずに同一の条件下で成長させた対照植物の同一の産物を含む収量を明らかに超える量で増加することを意味する。本発明によれば、収量は、少なくとも0.5%増加していることが好ましく、より好ましくは少なくとも1%、さらにより好ましくは少なくとも2%、さらにより好ましくは少なくとも4%、好ましくは5%、または、それ以上増加している。
【0096】
上記の作物増強のいずれかもしくはすべては、土地の向上した利用をももたらし得、すなわち、以前においては耕作には利用不可能もしくは最適下限であった土地が利用可能になり得る。例えば、干ばつ条件において高い生存能力を示す植物は、最適下限の雨量の地域、例えば、おそらくは、砂漠周辺、もしくは、砂漠自体においても耕作が可能であり得る。
【0097】
本発明の一態様において、作物の増強は、有害生物および/もしくは病害からの圧力、ならびに/または、非生物的ストレスを実質的に伴わずに達成される。本発明のさらなる態様において、植物活力、ストレス許容耐性、品質および/または収量における改良は、実質的に、有害生物および/または病害からの圧力を伴わずに達成される。例えば、有害生物および/または病害は、本発明の方法に先だって、または、本発明の方法と同時に適用される有害生物防除処理により防除されてもよい。本発明のさらなる態様において、植物活力、ストレス許容耐性、品質および/または収量における改良は、有害生物および/または病害圧力を伴わずに達成される。さらなる実施形態において、植物活力、品質および/または収量における改良は、無生物的なストレスを伴わずに、または、実質的に伴わずに達成される。
【0098】
本発明によれば、植物収量、植物活力、植物品質、ストレス因子に対する植物許容耐性、および/または、植物投与物利用効率を改良するための式(I)の化合物または式(I)の化合物を含む組成物の使用が提供されている。
【0099】
作物の増強は一連の作物において達成され得る。好適な対象作物は、特に、コムギ、オオムギ、ライ麦、カラスムギ、イネ、トウモロコシまたはモロコシ属(Sorghum)などの穀類である。しかしながら、好ましくは作物植物は、コーン、コムギ、イネ、ダイズからなる群から選択される。
【0100】
本発明の化合物は、以下の方法によって形成され得る。
【0101】
【化3】
RがC1〜C6アルキルであり、Wが酸素である式(XII)の化合物は、メタノールまたはエタノール中における硫酸などの酸の存在下でのアルコールによる処理によるエステル化によって式(XIII)の化合物から調製され得る。あるいは、Rがベンジルであり、Wが酸素である式(XII)の化合物は、炭酸セシウムなどの塩基の存在下における臭化ベンジルとの反応により式(XIII)の化合物から調製され得る。式(XIII)の化合物は、公知の化合物であるか、または、当業者に公知の方法によって形成され得る。
【0102】
【化4】
Rがアルキルまたはベンジルである式(XI)の化合物は、リチウムジイソプロピルアミドなどの塩基の存在下におけるトリフリック無水物またはN,N−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)−5−クロロ−2−ピリジルアミンなどの試薬との反応による式(XII)の化合物の処理によって形成され得る。
【0103】
あるいは、A1がC−(C1〜C6アルキル)である式(XI)の化合物は、A1〜A6が二重結合である化合物(XII)から、有機銅塩などの有機金属との反応、これに続く、得られるエノレートとトリフリック無水物またはN,N−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)−5−クロロ−2−ピリジルアミンなどの試薬との反応により調製され得る。所望の有機銅塩は、対応する有機リチウムまたは有機マグネシウムから当業者に公知の方法によって調製されることが可能である。
【0104】
Rがアルキルである式(IX)の化合物は、多くの場合パラジウム(0)錯体である好適な触媒/リガンド系の存在下における、Zがホウ素である式ZC(R45)C(R3)CH2のアリル誘導体または錫誘導体による、LGがOTfなどの脱離基である式(XI)の化合物の処理によって形成され得る。
【0105】
【化5】
あるいは、Rがアルキルであり、W=Oである式(IXa)の化合物は、LDAなどの塩基の存在下における、式MCH2CO2R(式中、M=PO(OR’)2である)のホスホネート、または、式MCH2CO2R(式中、M=SiR’3である)のシラン試薬によるケトンのオレフィン化によって、式(IXa)の化合物から調製されることが可能である。これらの反応は、WHOオレフィン化またはピーターソンオレフィン化として当業者に公知である。
【0106】
【化6】
式(VII)の化合物は、(1−クロロ−2−メチル−プロペニル)−ジメチル−アミンなどの塩化アシルの合成に用いられる試薬による式(IXb)の化合物の処理、これに続く、トリエチルアミンなどの塩基との反応により形成され得る。塩化アシルの形成は当業者にきわめて周知であり、塩化チオニル、塩化オキサリルまたは三塩化リンなどの他の多くの試薬を用いて行うことが可能である。第2の反応は、分子内ケテン環付加を介した処理により当業者に公知である。
【0107】
あるいは、式(VII)の化合物は、コリジンなどの塩基の存在下におけるトリフリック無水物などの脱水剤による式(IXc)の化合物の処理によりケテンイミニウム中間体を得、その後の分子内環付加、これに続く、得られるイミンの水による加水分解により調製され得る。
【0108】
式(IXb)の化合物は、水酸化ナトリウムまたは水酸化リチウムなどの塩基によるエステル基の加水分解による、RがC1〜C6アルキルまたはベンジルである式(IX)または(IXa)の化合物の処理によって形成され得る。
【0109】
式(IXc)の化合物は、式HN(R)2(式中、Rはメチルなど環式ではないか、または、(R)2はピロリジンなどの環式である)のアミンとの反応により、式(IXb)の化合物から調製されることが可能である。これらの反応は、DCC(N,N’−ジシクロヘキシル−カルボジイミド)、EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノ−プロピル]カルボジイミドヒドロクロリド)またはBOP−Cl(ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスホン酸クロリド)などのカップリング試薬の存在下、ピリジン、トリエチルアミン、4−(ジメチルアミノ)ピリジンまたはジイソプロピルエチルアミンなどの塩基の存在下、および、任意により、ヒドロキシベンゾトリアゾールまたは1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾールなどの求核性触媒の存在下に行われ得る。あるいは、この反応は、好ましくは酢酸エチルといった有機溶剤と、好ましくは重炭酸ナトリウムの溶液といった水性溶剤とを含む二相系において実施され得る。RがC1〜C6アルコキシである場合、エステル(IX)は、熱プロセスにおいてエステルとアミンとを一緒に加熱することによりアミドに直接的に転化され得る。式(R)2NHのアミンは、公知の化合物であるか、または、当業者に公知の方法によって形成され得る。
【0110】
【化7】
R1がHである式(VIa)の化合物は、ルイス酸またはブレンステッド酸の存在下における、XがOH、OT、OMe、OMまたはClなどの脱離基である式(VIII)の化合物との反応により、式(VII)の化合物から調製され得る。この反応は、ベックマン転位の名称で当業者にきわめて周知である。
【0111】
R1がアルキル誘導体またはベンジル誘導体である式(VI)の化合物は、アミンとハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジルなどのアルキル化剤(III)R1X(式中、Xはハロゲンまたはトシル基である)との、任意により水素化ナトリウムなどの塩基の存在下における反応によるアルキル化を介して、式(VIa)の化合物(式中、R1はHである)から調製され得る。
【0112】
カルボニル誘導体である式(VI)の化合物は、DCC(N,N’−ジシクロヘキシル−カルボジイミド)、EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノ−プロピル]カルボジイミドヒドロクロリド)またはBOP−Cl(ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスホン酸クロリド)などのカップリング試薬の存在下、ピリジン、トリエチルアミン、4−(ジメチルアミノ)ピリジンまたはジイソプロピルエチルアミンなどの塩基の存在下、および、任意により、ヒドロキシベンゾトリアゾールなどの求核性触媒の存在下における、RがOHである式(IV)の化合物とのアシル化を介してR1がHである式(VIa)の化合物から調製され得る。任意により、RがClまたはOC(O)C1〜C6アルコキシである場合、アシル化反応は、塩基性条件(例えば、ピリジン、トリエチルアミン、4−(ジメチルアミノ)ピリジンまたはジイソプロピルエチルアミンの存在下)、任意により、求核性触媒の存在下に実施され得る。あるいは、この反応は、好ましくは酢酸エチルといった有機溶剤と、好ましくは重炭酸ナトリウムの溶液といった水性溶剤とを含む二相系において実施され得る。任意により、RがC1〜C6アルコキシである場合、アミドは、式(IV)の化合物のエステル類似体と、アミド(VIa)とを一緒に加熱することにより調製され得る。R’は、アルキルまたはアルコキシ基であり得る。
【0113】
R1がアリールまたはヘテロアリールである式(VI)の化合物は、水素化ナトリウムまたは炭酸カリウムなどの塩基の存在下、最終的に、触媒、多くの場合、ジメチルエタン−1,2−ジアミンなどのリガンドを有するPd(0)錯体または銅(1)錯体の存在下で、R1がHである式(VIa)の化合物と、対応するハロゲン化アリールまたはハロゲン化ヘテロアリールとから調製されることが可能である。
【0114】
【化8】
式(II)の化合物は、リチウムジイソプロピルアミドまたはリチウムビス(トリメチルシリル)アミドなどの塩基の存在下におけるギ酸エチルなどのギ酸エステル誘導体との反応を介して式(VI)の化合物から調製され得る。あるいは、式(II)の化合物は、塩化水素などの酸による加水分解を介して式(V)の化合物から調製され得る。式(V)の化合物は、ブレデレック試薬(t−ブトキシビス(ジメチルアミノ)メタン)との反応を介して式(VI)の化合物から調製され得、ここで、Rはメチルまたは類似体である。
【0115】
【化9】
式(IIb)の化合物は、Rがtertブチルなどのアルキル基である式(IIa)の化合物から、トリフルオロ酢酸または塩化水素などの酸での処理を介して調製されることが可能である。あるいは、式(IIb)の化合物は、Rがtertブチルなどのアルキル基である式(Va)の化合物から、塩化水素などの酸での処理を介して調製されることが可能である。
【0116】
【化10】
式(I)の化合物は、例えばカリウムt−ブチレートなどの塩基の存在下における、18−クラウン−6などの添加剤を伴う、もしくは、伴わない、5位に脱離基(LG)(LGは臭素または塩素などの脱離基である)を有する5H−フラノン誘導体の求核置換を介して式(II)の化合物から調製され得る。
【0117】
【化11】
あるいは、式(I)の化合物(式中、R1はアルキル誘導体またはベンジル誘導体である)は、式(Ia)の化合物(式中、R1はHである)から、アミンとハロゲン化アルキル、ハロゲン化ベンジルなどのアルキル化剤(III)との、任意により、水素化ナトリウムまたは酸化銀などの塩基の存在下での反応によるアルキル化を介して調製され得る。
【0118】
あるいは、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物(式中、R1はHである)から、DCC(N,N’−ジシクロヘキシル−カルボ−ジイミド)、EDC(1−エチル−3−[3−ジメチル−アミノ−プロピル]カルボジイミドヒドロクロリド)またはBOP−Cl(ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィン酸クロリド)などのカップリング試薬の存在下、ピリジン、トリエチルアミン、4−(ジメチルアミノ)ピリジンまたはジイソプロピルエチルアミンなどの塩基の存在下、および、任意により、ヒドロキシベンゾトリアゾールなどの求核性触媒の存在下での、式(IV)の化合物(式中、RはOHである)によるアシル化を介して調製され得る。任意により、RがClまたはOC(O)C1〜C6アルコキシである場合、アシル化反応は、塩基性条件下(例えば、ピリジン、トリエチルアミン、4−(ジメチルアミノ)ピリジンまたはジイソプロピルエチルアミンの存在下)で、任意により、求核性触媒の存在下に実施され得る。あるいは、反応は、好ましくは酢酸エチルである有機溶剤と、好ましくは重炭酸ナトリウムの溶液である水性溶剤とを含む二相系で実施され得る。任意により、RがC1〜C6アルコキシである場合、アミドは、エステル(IV)およびアミド(Ia)を一緒に加熱することにより調製され得る。
【0119】
式(I)の化合物(式中、Wは硫黄である)は、式(I)の化合物(式中、Wは酸素である)から、ローソン試薬または五硫化リンなどのチオ移動試薬での処理により調製され得る。
【0120】
【化12】
式(Ia)の化合物は、HClまたは塩化マグネシウムなどのルイス酸などの酸による処理によって式(Ib)の化合物から調製され得る。
【実施例】
【0121】
以下のHPLC−MS法を化合物の分析に用いた。
方法A:
スペクトルを、エレクトロスプレーソース(極性:陽イオンまたは陰イオン、細管:3.00kV、コーン:30.00V、抽出器:2.00V、ソース温度:100℃、脱溶媒温度:250℃、コーンガス流:50L/Hr、脱溶媒ガス流:400L/Hr、質量範囲:100〜900Da)を備えるWaters製のZQ Mass Spectrometer(シングル四重極型質量分析計)、および、Agilent 1100 LC(溶剤デガッサ、バイナリポンプ、被加熱カラムコンパートメントおよびダイオード−アレイ検出器)で記録した。カラム:Phenomenex Gemini C18、3μm、30×3mm、温度:60℃、DAD波長範囲(nm):210〜500、溶剤勾配:A=水+5%MeOH+0.05%HCOOH、B=アセトニトリル+0.05%HCOOH:;勾配:0分0%B;2〜2.8分100%B;2.9〜3分0%B。流量(ml/min)1.7。
【0122】
方法B:スペクトルは、エレクトロスプレーソース(極性:陽イオンおよび陰イオン、毛管:3.00kV、コーン:30.00V、抽出器:2.00V、ソース温度:150℃、脱溶媒温度:250℃、コーンガス流:0L/Hr、脱溶媒ガス流:650L/Hr、質量範囲:100〜900Da)と、Waters製Acquity UPLC(バイナリポンプ、被加熱カラムコンパートメントおよびダイオード−アレイ検出器、溶剤デガッサ、バイナリポンプ、被加熱カラムコンパートメントおよびダイオード−アレイ検出器、カラム:Phenomenex Gemini C18、3μm、30×2mm、温度:60℃、流量0.85mL/min;DAD波長範囲(nm):210〜500)溶剤勾配:A=H2O+5% MeOH+0.05% HCOOH、B=アセトニトリル+0.05% HCOOH)とを備える質量分光計であるWaters製SQD質量分光計(シングル四重極型質量分析計)で記録した:勾配:0分0%B;0〜1.2分100%B;1.2〜1.50分100%B。
【0123】
方法C:
スペクトルを、エレクトロスプレーソース(極性:陽イオンまたは陰イオン、細管:3.00kV、コーン:30.00V、抽出器:2.00V、ソース温度:150℃、脱溶媒温度:350℃、コーンガス流:50L/Hr、脱溶媒ガス流:400L/Hr、質量範囲:100〜900Da)を備えるWaters製のZQ Mass Spectrometer(シングル四重極型質量分析計)、および、Waters製のAcquity UPLC(溶剤デガッサ、バイナリポンプ、被加熱カラムコンパートメントおよびダイオード−アレイ検出器)で記録した。カラム:Waters UPLC HSS T3、1.8μm、30×2.1mm、温度:60℃、DAD波長範囲(nm):210〜500、溶剤勾配:A=水+5%MeOH+0.05%HCOOH、B=アセトニトリル+0.05%HCOOH:勾配:0分10%B;1.2〜1.50分100%B。流量(ml/min)0.85。
【0124】
以下の略語を本セクションを通じて用いた:s=一重項;bs=幅広の一重項;d=二重項;dd=二重の二重項;dt=二重の三重項;t=三重項、tt=三重の三重項、q=四重項、m=多重項;Me=メチル;Et=エチル;Pr=プロピル;Bu=ブチル;M.p.=融点;RT=保持時間、MH+=分子カチオン(すなわち、計測分子量)。
【0125】
実施例1:(3E,3aR,8bS)−8,8−ジメチル−3−[(4−メチル−5−オキソ−2H−フラン−2−イル)オキシメチレン]−3a,4,5,6,7,8b−ヘキサヒドロ−1H−インデノ[1,2−b]ピロール−2−オン(P1)
ステップ1:
ベンジル2−(2−メチル−6−オキソ−シクロヘキセン−1−イル)アセテート
【化13】
酸(Org.Proc.Research & Dev 1997,p.222)(2.0g、11.9mmol)のMeOH(20mL)中の溶液を炭酸セシウム(1.93g、5.94mmol)と共に1時間撹拌し、溶剤を減圧中で除去した。残渣をDMF(20mL)中に採り、臭化ベンジル(1.84mL、15.5mmol)を添加した。この溶液を一晩室温で撹拌した。この溶液をジエチルエーテル(100mL)で希釈し、沈殿物をろ過により除去した。ろ液を塩水で洗浄し(3×50mL)、乾燥させ、濃縮した。この残渣を、シクロヘキサンおよび酢酸エチル(9/1〜4/1)で溶離するフラッシュクロマトグラフィにより精製して、無色の油(2.8g、90%)として所望の化合物を得た;1H NMR(400MHz,クロロホルム−d)7.31〜7.41(5H,m),5.12(2H,s),3.43(2H,s),2.42(4H,s),1.99(2H,quin,J=6.2Hz),1.93(3H,s)。
【0126】
ステップ2:ベンジル2−[6,6−ジメチル−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)シクロヘキセン−1−イル]アセテート:
【化14】
−20℃で冷却したヨウ化銅(1.66g、8.71mmol)のジエチルエーテル(20mL)中の懸濁液に、メチルリチウム(ジエチルエーテル中に1.6M、10.8mL、17.4mmol)をゆっくりと添加した。この溶液を−15℃でヨウ化銅が完全に溶解するまで30分間撹拌し、次いで、ジエチルエーテル(5mL)中のベンジル2−(2−メチル−6−オキソ−シクロヘキセン−1−イル)アセテート(1.50g、5.80mmol)を−20℃で添加した。この溶液を−20℃で10分間撹拌した。次いで、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)−5−クロロ−2−ピリジルアミン試薬(2.73g、7.00mmol)をTHF(10mL)中に添加し、溶液を0℃で15分間撹拌した。飽和塩化アンモニウム、続いて、ヘキサン/酢酸エチル(9/1、100mL)を添加した。青色/白色の沈殿物をろ過し、ろ液をヘキサンおよび酢酸エチル(9/1)の混合物で抽出した。組み合わせた有機層を塩水で洗浄し、乾燥させ、濃縮した。この残渣を、シクロヘキサンおよびエチルアセテート(25/1)で溶離するフラッシュクロマトグラフィにより精製して、表題の化合物を無色の油(1.90g、80%)として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.30〜7.44(5H,m),5.15(2H,s),3.22(2H,s),2.43(2H,t,J=6.4Hz),1.79(2H,m),1.52(2H,m),1.03(6H,s)ppm。
【0127】
ステップ3:ベンジル2−(2−アリル−6,6−ジメチル−シクロヘキセン−1−イル)アセテート:
【化15】
ベンジル2−[6,6−ジメチル−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)シクロヘキセン−1−イル]アセテート(2.30g、5.66mmol)のジオキサン(10mL)中の溶液をアルゴンでパージした。次いで、アリルスタナン(2.10mL、6.79mmol)、パラジウムトリフェニルホスフィンテトラキス(327mg、0.28mmol)および塩化リチウム(360mg、8.49mmol)を添加した。この溶液を還流で7時間加熱し、次いで、濃縮して粗黄色の油を得、これを、シクロヘキサンおよび酢酸エチル(25/1)で溶離するフラッシュクロマトグラフィにより精製して表題の化合物を無色の油(1.55g、92%)として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.33〜7.40(5H,m),5.72(1H,ddt,J=16.8,10.5,6.2Hz),5.11(2H,s),4.97(1H,dt,J=16.8,1.5Hz),4.96(1H,dt,J=10.5,1.5Hz),3.11(2H,s),2.71(2H,d,J=6.2Hz),2.00(2H,t,J=6.2Hz),1.58〜1.65(2H,m),1.46〜1.50(2H,m),0.97(6H,s)ppm。
【0128】
ステップ4:2−(2−アリル−6,6−ジメチル−シクロヘキセン−1−イル)酢酸:
【化16】
ベンジル2−(2−アリル−6,6−ジメチル−シクロヘキセン−1−イル)アセテート(1.5g、5.02mmol)のジオキサン(12mL)および水(4mL)中の溶液に、NaOH(2M、5.5mL)を添加した。この溶液を100℃に30時間加熱した。この溶液を減圧中で濃縮し、水を添加した。水性層をエーテルで2回抽出し、有機層を除去した。次いで、水性層のpHを1に調節した。この溶液を酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、乾燥させ、濃縮して、所望の生成物を無色の油(1.05g、定量的)として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ5.77(1H,dd,J=16.9,10.3Hz),4.88〜5.09(2H,m),3.13(2H,s),2.74(2H,d,J=6.2Hz),1.96〜2.08(2H,m),1.59〜1.69,(2H,m),1.43〜1.57(2H,m),0.98〜1.06(6H,s)ppm。
【0129】
ステップ5:2−(2−アリル−6,6−ジメチル−シクロヘキセン−1−イル)−1−ピロリジン−1−イル−エタノン:
【化17】
2−(2−アリル−6,6−ジメチル−シクロヘキセン−1−イル)酢酸(80mg、0.38mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(103mg、0.54mmol)および1−ヒドロキシ−7−アザ−ベンゾトリアゾール(73mg、0.54mmol)のDMF(2mL)中の溶液に、ピロリジン(55mg、0.77mmol)、続いて、Et3N(117mg、1.15mmol)を添加した。溶液を、Ar下で18時間撹拌した。水(20mL)を添加し、溶液をエーテルで抽出した(3×20mL)。組み合わせた有機層を水(3×30mL)および塩水で洗浄し、乾燥させ、濃縮した。この残渣を、シクロヘキサンおよび酢酸エチル(4−1〜3/1)で溶離するフラッシュクロマトグラフィにより精製して、表題の化合物を無色の油(82mg、82%)として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ5.75(1H,ddt,J=16.7,10.5,6.1,6.1Hz),4.93(2H,m,J=19.1,1.8Hz),4.93(0H,dd,J=8.1,1.8Hz),3.44(4H,td,J=6.8,4.0Hz),2.93(2H,s),2.64(2H,d,J=5.9Hz),1.89〜2.02(4H,m),1.82(2H,quin,J=6.6Hz),1.58(2H,d,J=11.7Hz),1.43〜1.50(2H,m)0.90〜0.99(6H,s)ppm。
【0130】
ステップ6:3,3−ジメチル−2a,4,5,6,7,7a−ヘキサヒドロ−1H−シクロブタ[a]インデン−2−オン:
方法1
【化18】
2−(2−アリル−6,6−ジメチル−シクロヘキセン−1−イル)−1−ピロリジン−1−イル−エタノン(60mg、0.23mmol)のジクロロメタン(3mL)中の溶液に、コリジン(31mg、0.25mmol)、続いて、トリフリック無水物(71mg、0.25mmol)のジクロロメタン(1mL)中の溶液を添加した。この溶液を室温で4時間撹拌した。コリジン(31mg、0.25mmol)およびトリフリック無水物(71mg、0.25mmol)を再度添加し、溶液を、1時間撹拌した。溶剤を減圧中で除去し、残渣を四塩化炭素(2mL)および水(2mL)中にとった。二相混合物を還流に2時間加熱した。ジクロロメタン(20mL)を添加し、水性層をジクロロメタン(20mL)で抽出した。組み合わせた有機層を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。この残渣をシクロヘキサン中の5%酢酸エチルで溶離するフラッシュクロマトグラフィにより精製して、32mgの無色の油(79%)を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ4.11〜4.22(1H,m),3.08(1H,ddd,J=17.2,7.7,4.8Hz),2.56〜2.75(3H,m),2.21(2H,dd,J=16.1,3.7Hz),1.85〜1.97(2H,m),1.59(2H,quin,J=6.2Hz),1.26〜1.43(2H,m),0.95(6H,s)ppm;ES+:191(M+H+)
方法2
【化19】
2−(2−アリル−6,6−ジメチル−シクロヘキセン−1−イル)酢酸(424mg、2.04mmol)のジクロロメタン(50mL)中の溶液に、Ghosez試薬(326mg、2.44mmol)を添加した。この溶液を1時間撹拌し、次いで、還流に加熱した。次いで、トリエチルアミン(0.567mL、4.08mmol)のジクロロメタン(1mL)中の溶液を5分間かけてゆっくりと添加し、溶液を還流で2時間加熱した。次いで、この溶液を室温に冷却し、ジクロロメタンをさらに添加した(20mL)。この溶液をHCl(1M)で洗浄し、乾燥させ、濃縮した。この残渣を、シクロヘキサン中の5%酢酸エチルで溶離するフラッシュクロマトグラフィにより精製して、310mgの無色の油(79%)を得た(方法Aと同等のデータ)。
【0131】
ステップ7:8,8−ジメチル−1,3,3a,4,5,6,7,8b−オクタヒドロインデノ[1,2−b]ピロール−2−オン:
【化20】
3,3−ジメチル−2a,4,5,6,7,7a−ヘキサヒドロ−1H−シクロブタ[a]インデン−2−オン(150mg、0.79mmol)のジクロロメタン(3mL)中の溶液に、アミノ2,4,6−トリメチルベンゼンスルホネート(水中に60%、0.280mg、0.86mmol)(Organic Process Research and Development 2009,p.263)を添加した。この溶液を室温で1時間撹拌し、溶液をジクロロメタン(10mL)で希釈し、飽和NaHCO3で洗浄した。有機層を乾燥させ、濃縮して所望のラクタムを白色の固体(200mg、定量的)として得た。この残渣を、さらに精製することなく次のステップにおいて用いた。LCMS(方法A)RT=1.61min、206(M+H+);1H NMR(400MHz,CDCl3)δ6.26(1H,br.s.),4.53(1H,d,J=7.0Hz),2.80〜3.02(1H,m),2.50〜2.69(2H,m),2.05〜2.22(2H,m),1.92(2H,q,J=6.2Hz),1.57〜1.78(2H,m,)1.30〜1.50(2H,m),1.05(3H,s),1.04(3H,s)ppm。
【0132】
ステップ8:T−ブチル8,8−ジメチル−2−オキソ−3a,4,5,6,7,8b−ヘキサヒドロ−3H−インデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレート:
【化21】
粗8,8−ジメチル−1,3,3a,4,5,6,7,8b−オクタヒドロインデノ[1,2−b]ピロール−2−オン(200mg、0.974mmol)のジクロロメタン(10mL)中の溶液に、ジ−t−ブチルジカーボネート(414mg、1.94mmol)、Et3N(0.272mL、1.94mmol)およびN,N−ジメチルアミノピリジン(12mg、0.097mmol)を添加した。この溶液を24時間撹拌した。この溶液を1N HClで洗浄し、乾燥させ、濃縮した。この残渣を、酢酸エチルおよびシクロヘキサン(1/9〜3/7)で溶離するフラッシュクロマトグラフィにより精製して133mgの黄色の油を得た(2ステップで55%)。LCMS(方法B)RT=1.17min、634(2M+Na+);1H NMR(400MHz,CDCl3)δ5.31(1H,d,J=7.3Hz),2.84(1H,ddd,J=16.5,9.2,7.3Hz),2.65(1H,dd,J=17.6,9.2Hz),2.41(1H,dd,J=16.1,7.0Hz),2.25(1H,dd,J=17.6,10.3Hz),2.01(3H,s),1.53〜1.66(11H,m),1.39〜1.52(2H,m),1.16(3H,s),0.99(3H,s)ppm。
【0133】
ステップ9:T−ブチル(3E)−3−(ジメチルアミノメチレン)−8,8−ジメチル−2−オキソ−3a,4,5,6,7,8b−ヘキサヒドロインデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレート:
【化22】
t−ブチル8,8−ジメチル−2−オキソ−3a,4,5,6,7,8b−ヘキサヒドロ−3H−インデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレート(110mg、0.36mmol)のトルエン(2mL)中の溶液に、ブレデレック試薬((t−ブトキシビス(ジメチルアミノ)メタン)(0.30mL、1.44mmol)を添加した。この溶液を110℃に5時間加熱した。この溶液を室温に冷却し、水を添加した。この溶液を酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、乾燥させ、濃縮した。この残渣を、シクロヘキサンおよび酢酸エチル(7/3〜1/1)で溶離するフラッシュクロマトグラフィにより精製して白色の固体(83mg、64%)を得た。Mp170〜172℃;LCMS(方法B)RT=1.14min、361(M+H+);1H NMR(400MHz,CDCl3)δ7.10(1H,d,J=1.8Hz),5.27(1H,d,J=8.1Hz),3.65(1H,tt,J=8.1,1.8Hz),2.99(6H,s),2.24(1H,d,J=15.4Hz),1.75〜1.97(2H,m),1.49〜1.60(11H,m),1.38〜1.46(1H,m),1.32(1H,m),1.19(3H,s),0.97(3H,s)ppm。
【0134】
ステップ10:(3E)−3−(ヒドロキシメチレン)−8,8−ジメチル−3a,4,5,6,7,8b−ヘキサヒドロ−1H−インデノ[1,2−b]ピロール−2−オン:
【化23】
t−ブチル(3E)−3−(ジメチルアミノメチレン)−8,8−ジメチル−2−オキソ−3a,4,5,6,7,8b−ヘキサヒドロインデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレート(83mg、0.23mmol)のTHF(2mL)中の溶液に、1N HCl(0.35mmol)を添加した。この溶液を室温で3時間撹拌し、水を添加した。この溶液を酢酸エチル(2×30mL)で抽出し、塩水で洗浄し、乾燥させ、濃縮して、黄色の油(78mg、定量的)を得た。この生成物を0℃でジクロロメタン(2mL)中にとり、トリフルオロ酢酸(0.2mL)を添加した。この溶液を0℃で30分間撹拌し、飽和NaHCO3を添加した。この溶液をジクロロメタンで抽出し、乾燥させ、濃縮して表題の化合物を得、これを粗生成物として次のステップに用いた(55mg、定量的)。LCMS(方法A):RT=1.54min、ES+234(M+H+)。ES−232(M−H+)。
【0135】
ステップ11:(3E,3aR,8bS)−8,8−ジメチル−3−[(4−メチル−5−オキソ−2H−フラン−2−イル)オキシメチレン]−3a,4,5,6,7,8b−ヘキサヒドロ−1H−インデノ[1,2−b]ピロール−2−オン(P1)
【化24】
0℃で、(3E)−3−(ヒドロキシメチレン)−8,8−ジメチル−3a,4,5,6,7,8b−ヘキサヒドロ−1H−インデノ[1,2−b]ピロール−2−オン(55mg、0.23mmol)のDMF(2mL)中の溶液に、カリウムtertブトキシド(35mg、0.283mmol)を添加した。30分後、ジクロロメタン(0.5mL)中のブロモブテノリド(54mg、0.30mmol、Johnson & all,J.C.S.Perkin I,1981,1734−1743に準拠して調製した)を添加し、この溶液を1時間撹拌した。水を反応混合物に添加し、この溶液を酢酸エチルで抽出し(3×15mL)、塩水で洗浄し(3×15mL)、乾燥させ、濃縮した。この残渣をフラッシュクロマトグラフィ(CyH/EA、1/1〜1/4)により精製して、ジアステレオ異性体P1を低極性異性体として、および、B1を強極性異性体として得た。
P1:1H NMR(400MHz,CDCl3)δppm 7.22(1H,d,J=2.6Hz),6.91(1H,t,J=1.5Hz),6.11(1H,t,J=1.5Hz),5.96(1H,br.S),4.61(1H,d,J=7.7Hz),3.59(1H,ddq,J=9.9,7.7,2.3Hz),2.71(1H,dd,J=16.9,9.9Hz),2.25〜2.37(1H,m),2.02(3H,t,J=1.5Hz),1.86〜1.96(2H,m),1.58〜1.68(2H,m),1.36〜1.49(2H,m),1.06(3H,s),1.05(3H,s)。LCMS(方法B):RT=0.94min、ES+330(M+H+)。
B1:1H NMR(400MHz,CDCl3)δppm 7.22(1H,d,J=2.6Hz),6.91(1H,t,J=1.5Hz),6.11〜5.96(2H,m),4.59(1H,d,J=7.7Hz),3.59(1H,ddq,J=9.9,7.7,2.3Hz),2.71(1H,dd,J=16.9,9.9Hz),2.25〜2.37(1H,m),2.01(3H,t,J=1.5Hz),1.86〜1.96(2H,m),1.58〜1.69(2H,m),1.36〜1.50(2H,m),1.06(3H,s),1.05(3H,s)。LCMS(方法B):RT=0.93min、ES+330(M+H+)。
【0136】
(3E,3aR,8bS)−8,8−ジメチル−3−[(4−メチル−5−オキソ−2H−フラン−2−イル)オキシメチレン]−3a,4,5,6,7,8b−ヘキサヒドロ−1H−インデノ[1,2−b]ピロール−2−オン(P9)
【化25】
これらの化合物は、(3E)−3−(ヒドロキシメチレン)−8,8−ジメチル−3a,4,5,6,7,8b−ヘキサヒドロ−1H−インデノ[1,2−b]ピロール−2−オンC1と、2−クロロ−3,4−ジメチル−2H−フラン−5−オン(Tetrahedron,1978,34,1935−1942)と、ジアステレオ異性体P9およびB9の混合物とから開始して同様の手法を用いて調製した。LCMS(方法C):RT=0.75min、ES+344(M+H+)。
【0137】
実施例2:(3E,3aR,4aS,8bS)−3−[[(2R)−4−メチル−5−オキソ−2H−フラン−2−イル]オキシメチレン]−1,3a,4,4a,5,6,7,8b−オクタヒドロインデノ[1,2−b]ピロール−2−オンの合成
ステップ1:
T−ブチル2−(2−アリルシクロヘキシリデン)アセテート
【化26】
−10℃で、ジイソプロピルアミン(6.60mL、46.6mmol)のTHF(200mL)中の溶液に、n−ブチルリチウム(20.4mL、44.4mmol)の2.22M溶液を添加した。この溶液を−10℃で15分間撹拌し、−78℃に冷却し、1mLのTHF中のt−ブチル2−トリメチルシリルアセテート(9.7mL、44.4mmol)を滴下した。この溶液を−78℃で15分間撹拌し、2−アリルシクロヘキサノン(3.3mL、22.2mmol)を滴下した。この反応混合物を−78℃で1時間、および、−25℃で3時間撹拌した。次いで、これを飽和NH4Clで失活させ、酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、乾燥させ、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(シクロヘキサン)による精製で、tert−ブチル2−(2−アリルシクロヘキシリデン)アセテート(5.06g、96%)を無色の液体として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)5.62(1H,m),5.41(1H,s),4.89(2H,m),3.83(1H,m),2.16(3H,m),1.90(1H,m),1.73(1H,m),1.61(1H,m),1.47〜1.22(4H,m),1.36(9H,s)。
【0138】
t−ブチル2−(2−アリルシクロペンチリデン)アセテート
【化27】
この化合物を、2−アリルシクロペンタノンから開始して同様の手法を用いて調製した。LCMS(方法C):RT=1.28min;ES+167(M−tBu+H+)。
【0139】
ステップ2:2−(2−アリルシクロヘキシリデン)酢酸
【化28】
室温で、t−ブチル2−(2−アリルシクロヘキシリデン)アセテート(1.00g、4.230mmol)のジクロロメタン(40mL)中の溶液に、トリフルオロ酢酸(0.688mL、8.883mmol)を添加し、この溶液を、室温で一晩撹拌した。次いで、溶剤を蒸発させ、過剰量のトリフルオロ酢酸をトルエンとの共蒸発により除去して、2−(2−アリルシクロヘキシリデン)酢酸(768mg、100%)を無色の油として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)5.59(1H,m),5.46(1H,s),4.82(2H,m),3.36(1H,m),2.19(1H,m),2.12(2H,m),1.93(1H,m),1.71(1H,m),1.61(1H,m),1.55(1H,m),1.47(2H,m),1.22(1H,m)。
【0140】
2−(2−アリルシクロペンチリデン)酢酸
【化29】
この化合物を、t−ブチル2−(2−アリルシクロペンチリデン)アセテートから開始して同様の手法を用いて調製した。LCMS(方法C):RT=0.90min;ES+167(M+H+)。
【0141】
ステップ3:1,2a,4,5,6,6a,7,7a−オクタヒドロシクロブタ[a]インデン−2−オン
【化30】
2−(2−アリルシクロヘキシリデン)酢酸(800mg、4.44mmol)のジクロロメタン(200mL)中の溶液をGhosez試薬(5.77mmol、0.795mL)に室温で添加した。この溶液を酸塩化物が形成されるまで45分間撹拌した。次いで、N,N−ジメチルアミノピリジン(55mg、0.45mmol)を添加し、この溶液を還流に加熱した。トリエチルアミン(8.9mmol、1.25mL)のジクロロメタン(3.75mL)中の溶液を30分間かけて滴下した。この溶液をさらに1時間還流し、溶剤を留出した。フラッシュクロマトグラフィ(ペンタン/Et2O95/5)による精製で、1,2a,4,5,6,6a,7,7a−オクタヒドロシクロブタ[a]インデン−2−オン(600mg、83%)を、四置換位置異性体20%を含む無色の液体として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)5.59(1H,brs),3.92(1H,brs),3.21(1H,dddd),2.92(1H,m),2.73(1H,m),2.51(1H,m),2.04(4H,m),1.79(1H,m),1.48(2H,m),1.05(1H,m)。
【0142】
1,2a,4,5,5a,6,6a−ヘキサヒドロシクロブタ[a]ペンタレン−2−オン
【化31】
この化合物を、唯一の位置異性体として2−(2−アリルシクロペンチリデン)酢酸から開始して同様の手法を用いて調製した。LCMS(方法C):RT=1.01min;ES+149(M+H+)。
【0143】
ステップ4:3,3a,4,4a,5,6,7,8b−オクタヒドロ−1H−インデノ[1,2−b]ピロール−2−オン
【化32】
1,2a,4,5,6,6a,7,7a−オクタヒドロシクロブタ[a]インデン−2−オン(3.70mmol、0.600g)のジクロロメタン(40mL)中の溶液に、O−メシチレンスルホニルヒドロキシルアミン(4.44mmol、1.47g)を添加し、溶液を、室温で3時間撹拌した。混合物を飽和NaHCO3で洗浄し、乾燥させ、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィ(酢酸エチル)による精製でラクタム(562mg、85%)を、四置換位置異性体20%を含む黄色の油として得た。1H NMR(400MHz,MeOD)5.53(1H,d),4.30(1H,d),2.97(1H,m),2.63(2H,m),2.50(1H,m),2.04(4H,m),1.83(1H,m),1.68(1H,m),1.51(1H,m),1.39(1H,m),1.02(1H,m).);LCMS(方法B):RT=0.76min;ES+178(M+H+)。
【0144】
3,3a,4,5,6,7,8,8b−オクタヒドロ−1H−インデノ[1,2−b]ピロール−2−オン
【化33】
3,3a,4,4a,5,6,7,8b−オクタヒドロ−1H−インデノ[1,2−b]ピロール−2−オン(600mg、3.38mmol)のクロロホルム−d−3(4mL)中の溶液に、アルゴン下で、トリフリック酸(0.152mL)を添加し、この溶液を、40℃で4時間撹拌した。この溶液を冷却し、セライトに通し、ジクロロメタンで洗浄し、蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィ(酢酸エチル)による精製で3,3a,4,5,6,7,8,8b−オクタヒドロ−1H−インデノ[1,2−b]ピロール−2−オン(322mg、53%)をオレンジ油として得た。LCMS(方法B):0.76min;ES+178(M+H+)。
【0145】
(3aR,4aS,7bS)−1,3,3a,4,4a,5,6,7b−オクタヒドロペンタレノ[1,2−b]ピロール−2−オン
【化34】
この化合物を、1,2a,4,5,5a,6,6a−ヘキサヒドロシクロブタ[a]ペンタレン−2−オンから開始して同様の手法を用いて調製した。LCMS(方法C):RT=0.69min;ES+164(M+H+)。
【0146】
1,3,3a,4,4a,5,6,7,7a,7b−デカヒドロペンタレノ[1,2−b]ピロール−2−オン
【化35】
この化合物を、1,2a,4,5,5a,6,6a−ヘキサヒドロシクロブタ[a]ペンタレン−2−オンから開始して同様の手法を用い、3当量のO−メシチレンスルホニルヒドロキシルアミンを用い、一晩反応させて調製した。LCMS(方法C):RT=0.71min;ES+166(M+H+)。
【0147】
ステップ5:
t−ブチル−2−オキソ−3,3a,4,4a,5,6,7,8b−オクタヒドロインデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレート
【化36】
3,3a,4,4a,5,6,7,8b−オクタヒドロ−1H−インデノ[1,2−b]ピロール−2−オン(547mg、3.08mmol)のCH2Cl2(30mL)中の溶液に、ジ−t−ブチルジカーボネート(2.1mL、9.25mmol)、Et3N(1.3mL、9.25mmol)およびN,N−ジメチルアミノピリジン(38mg、0.31mmol)を添加した。この溶液を20時間撹拌し、水中に注ぎいれ、CH2Cl2で抽出した。組み合わせた有機層を塩水で洗浄し、乾燥させ、濃縮し、粗残渣をフラッシュクロマトグラフィ(シクロヘキサン/酢酸エチル3/1)により精製して、所望の化合物を、四置換位置異性体20%を含む黄色の油(403mg、47%)として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)6.01(1H,brs),4.81(1H,d),2.78(2H,m),2.44(1H,m),2.27(1H,m),2.02(4H,m),1.81(2H,m),1.51(9H,s),1.32(1H,m),0.99(1H,m);LCMS(方法B):RT=1.09min;ES+577(2M+Na+)。
【0148】
t−ブチル−2−オキソ−(3aR,4aS,7bS)、3,3a,4,4a,5,6,7b−オクタヒドロペンタレノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレート
【化37】
この化合物を、1,3,3a,4,4a,5,6,7b−オクタヒドロペンタレノ[1,2−b]ピロール−2−オンから開始して同様の手法を用いて調製した;LCMS(方法C):RT=1.02min;ES+286(M+Na+)。
【0149】
t−ブチル2−オキソ−3a,4,4a,5,6,7,7a,7b−オクタヒドロ−3H−ペンタレノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレート
【化38】
この化合物を、1,3,3a,4,4a,5,6,7,7a,7b−デカヒドロペンタレノ[1,2−b]ピロール−2−オンから開始して同様の手法を用いて調製した;LCMS(方法B):RT=1.04min;ES+288(M+Na+)。
【0150】
t−ブチル(3aR,8bS)−2−オキソ−3,3a,4,5,6,7,8,8b−オクタヒドロインデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレート
【化39】
この化合物を、3,3a,4,5,6,7,8,8b−オクタヒドロ−1H−インデノ[1,2−b]ピロール−2−オンから開始して同様の手法を用いて調製した;LCMS(方法C):RT=1.09min;ES+577(2M+Na+)。
【0151】
ステップ6:
t−ブチル(3E,3aR,4aS,8bS)−3−(ジメチルアミノメチレン)−2−オキソ−3a,4,4a,5,6,7,8b−ヘプタヒドロ−インデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレート
【化40】
t−ブチル2−オキソ−3,3a,4,4a,5,6,7,8b−オクタヒドロインデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレート(349mg、1.26mmol)のトルエン(13mL)中の溶液に、t−ブトキシビス(ジメチルアミノ)メタン(0.78mL、3.77mmol)を添加した。この溶液を110℃で2時間加熱した。次いで、これを室温に冷却し、水(20mL)中に注ぎいれ、酢酸エチル(20mL)で希釈し、3回抽出した。組み合わせた有機層を塩水で洗浄し、乾燥させ、濃縮し、フラッシュクロマトグラフィ(酢酸エチル)により精製して、所望の化合物を、四置換位置異性体20%を含むオレンジ色の油(392mg、89%)として得た;1H NMR(400MHz,CDCl3)7.11(1H,s),5.97(1H,m),4.68(1H,d),3.52(1H,m),3.02(6H,s),2.39(1H,m),1.98(4H,m),1.71(1H,m),1.57(1H,m),1.53(9H,s),1.40(1H,m),0.96(1H,m);LCMS(方法B):RT=1.10min;ES+687(2M+Na+)。
【0152】
t−ブチル(3E,3aR,4aS,7bS)−3−(ジメチルアミノメチレン)−2−オキソ−3a,4,4a,5,6,7b−ヘキサヒドロペンタレノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレート
【化41】
この化合物を、t−ブチル−2−オキソ−3,3a,4,4a,5,6,7b−オクタヒドロペンタレノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートから開始して同様の手法を用いて調製した;1H NMR(400MHz,CDCl3)7.06(1H,s),5.57(1H,m),4.55(1H,d),3.78(1H,t),3.05(1H,m),3.02(6H,s),2.58(1H,m),2.45(1H,m),2.01(1H,m),1.96(1H,m),1.53(9H,s),1.40(2H,m)。
【0153】
t−ブチル(3E,3aR,4aS,7aS,7bR)−3−(ジメチルアミノメチレン)−2−オキソ−3a,4,4a,5,6,7,7a,7b−オクタヒドロペンタレノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレート
【化42】
この化合物を、t−ブチル2−オキソ−3a,4,4a,5,6,7,7a,7b−オクタヒドロ−3H−ペンタレノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートから開始して同様の手法を用いて調製した。LCMS(方法B):RT=1.08min;ES+321(M+H+)。
【0154】
t−ブチル(3E,3aR,8bS)−3−(ジメチルアミノメチレン)−2−オキソ−4,5,6,7,8,8b−ヘキサヒドロ−3aH−インデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレート
【化43】
この化合物を、t−ブチル2−オキソ−3,3a,4,5,6,7,8,8b−オクタヒドロインデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートから開始して同様の手法を用いて調製した。LCMS(方法B):RT=1.11min;ES+333(M+H+)。
【0155】
ステップ7:
t−ブチル(3Z,3aR,4aS,8bS)−3−(ヒドロキシメチレン)−2−オキソ−4,4a,5,6,7,8b−ヘキサヒドロ−3aH−インデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートC2
【化44】
t−ブチル(3E,3aR,4aS,8bS)−3−(ジメチルアミノメチレン)−2−オキソ−4,4a,5,6,7,8b−ヘキサヒドロ−3aH−インデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレート(380mg、1.09mmol)のジオキサン(10mL)中の溶液を塩酸(2M、1.63mL、3.27mmol)と共に室温で1.5時間撹拌した。この溶液を酢酸エチルで希釈し、水および塩水で洗浄し、乾燥させ、濃縮して所望の化合物を、四置換位置異性体20%を含む黄色の油(324mg、97%)として得た;1H NMR(400MHz,DMSO−d6)10.79(1H,d),7.38(1H,d),5.94(1H,brs),4.69(1H,d),2.17(2H,m),1.98(4H,m),1.69(1H,m),1.46(9H,s),1.18(2H,m),0〜91(1H,m)。LCMS(方法C):RT=1.04min;ES+328(M+Na+)。
【0156】
t−ブチル(3E,3aR,4aS,7bS)−3−(ヒドロキシメチレン)−2−オキソ−3a,4,4a,5,6,7b−ヘキサヒドロペンタレノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートC3
【化45】
この化合物を、t−ブチル3−(ジメチルアミノメチレン)−2−オキソ−3a,4,4a,5,6,7b−ヘキサヒドロペンタレノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートから開始して同様の手法を用いて調製した;LCMS(方法C):RT=0.99min;ES+314(M+Na+)。
【0157】
t−ブチル(3E,3aR,4aS,7aS,7bR)−3−(ヒドロキシメチレン)−2−オキソ−3a,4,4a,5,6,7,7a,7b−オクタヒドロペンタレノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートC4
【化46】
この化合物を、t−ブチル(3E,3aR,4aS,7aS,7bR)−3−(ジメチルアミノメチレン)−2−オキソ−3a,4,4a,5,6,7,7a,7b−オクタヒドロペンタレノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートから開始して同様の手法を用いて調製した。LCMS(方法B):RT=1.02min;ES−292(M−H+)。
【0158】
t−ブチル(3Z,3aR,8bS)−3−(ヒドロキシメチレン)−2−オキソ−4,5,6,7,8,8b−ヘキサヒドロ−3aH−インデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートC5
【化47】
この化合物を、t−ブチルt−ブチル(3E,3aR,8bS)−3−(ジメチルアミノメチレン)−2−オキソ−4,5,6,7,8,8b−ヘキサヒドロ−3aH−インデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートから開始して同様の手法を用いて調製した。LCMS(方法B):RT=1.06min;ES+328(M+Na+)。
【0159】
ステップ8:
t−ブチル(3E,3aR,4aS,8bS)−3−[(4−メチル−5−オキソ−2H−フラン−2−イル)オキシメチレン]−2−オキソ−4,4a,5,6,7,8b−ヘキサヒドロ−3aH−インデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートP3およびB3
【化48】
t−ブチル(3Z,3aR,4aS,8bS)−3−(ヒドロキシメチレン)−2−オキソ−4,4a,5,6,7,8b−ヘキサヒドロ−3aH−インデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレート(324mg、1.06mmol)の0℃に冷却したTHF(10mL)中の溶液に、カリウムt−ブトキシド(1.59mmol、0.184g)および18−クラウン−6(1.59mmol、0.420g)を添加した。10分後、1mLのTHF中の2−クロロ−4−メチル−2H−フラン−5−オン(1.27mmol、0.169g)を添加し、この溶液を、1時間撹拌した。水を添加し、水性層を酢酸エチルで抽出した(4×20mL)。組み合わせた有機層を乾燥させ、濃縮した。生成物をフラッシュクロマトグラフィ(シクロヘキサン中の30%酢酸エチル〜50%酢酸エチル)により精製して、所望の生成物を、ステップ3由来の四置換位置異性体20%をそれぞれ含有する2種の異性体として得た。
−低極性ジアステレオ異性体:t−ブチル(3E,3aR,4aS,8bS)−3−[[(2R)−4−メチル−5−オキソ−2H−フラン−2−イル]オキシメチレン]−2−オキソ−4,4a,5,6,7,8b−ヘキサヒドロ−3aH−インデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートP3(83mg、19%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)7.49(1H,d),6.91(1H,s),6.14(1H,s),6.02(1H,brs),4.79(1H,d),3.34(1H,dd),2.28(1H,m),2.17(1H,m),2.04(2H,m),2.01(3H,s),1.75(1H,m),1.60(9H,s),1.40(1H,m),1.28(1H,m),0.96(1H,m)。LCMS(方法B):RT=1.13min;ES+402(M+H+)。
−強極性ジアステレオ異性体:t−ブチル(3E,3aR,4aS,8bS)−3−[[(2S)−4−メチル−5−オキソ−2H−フラン−2−イル]オキシメチレン]−2−オキソ−4,4a,5,6,7,8b−ヘキサヒドロ−3aH−インデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートB3(79mg、18%)。1H NMR(400MHz,CDCl3)7.49(1H,d),6.91(1H,s),6.12(1H,s),6.01(1H,brs),4.79(1H,d),3.32(1H,dd),2.28(1H,m),2.14(1H,dd),2.04(3H,m),2.01(3H,s),1.72(1H,m),1.60(9H,s),1.40(1H,m),1.25(1H,m),0.92(1H,m)。LCMS(方法B):RT=1.14min;ES+402(M+H+)。
【0160】
T−ブチル(3E,3aR,4aS,7bS)−3−[[4−メチル−5−オキソ−2H−フラン−2−イル]オキシメチレン]−2−オキソ−3a,4,4a,5,6,7b−ヘキサヒドロペンタレノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートP5
【化49】
この化合物を、異性体P5およびB5の混合物としてのt−ブチル3−(ヒドロキシメチレン)−2−オキソ−3a,4,4a,5,6,7b−ヘキサヒドロペンタレノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートから開始して同様の手法を用いて調製した:LCMS(方法C):RT=1.09min;ES+797(2M+Na+)。
【0161】
t−ブチル(3E,3aR,4aS,7aS,7bR)−3−[4−メチル−5−オキソ−2H−フラン−2−イル]オキシメチレン]−2−オキソ−3a,4,4a,5,6,7,7a,7b−オクタヒドロペンタレノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートP7およびB7。
【化50】
この化合物を、異性体P7およびB7の混合物としてのt−ブチル(3E,3aR,4aS,7aS,7bR)−3−(ヒドロキシメチレン)−2−オキソ−3a,4,4a,5,6,7,7a,7b−オクタヒドロペンタレノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートから開始して同様の手法を用いて調製した。LCMS(方法B):RT=1.12min;ES+390(M+H+)。
【0162】
t−ブチル(3E,3aR,8bS)−3−[[(2R)−4−メチル−5−オキソ−2H−フラン−2−イル]オキシメチレン]−2−オキソ−4,5,6,7,8,8b−ヘキサヒドロ−3aH−インデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートP10およびB10。
【化51】
この化合物を、異性体P10およびB10の混合物としてのt−ブチル(3Z,3aR,8bS)−3−(ヒドロキシメチレン)−2−オキソ−4,5,6,7,8,8b−ヘキサヒドロ−3aH−インデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートから開始して同様の手法を用いて調製した。LCMS(方法B):RT=1.15min;ES+465(M+MeCN+Na+)。
【0163】
ステップ9:
(3E,3aR,4aS,8bS)−3−[[(2R)−4−メチル−5−オキソ−2H−フラン−2−イル]オキシメチレン]−1,3a,4,4a,5,6,7,8b−オクタヒドロインデノ[1,2−b]ピロール−2−オンP2
【化52】
P3(70mg、0.174mmol)および塩化マグネシウム(25mg、0.261mmol)のアセトニトリル(2.0mL)中の溶液を40℃で一晩撹拌した。この溶液を酢酸エチルで希釈し、ろ過し、ろ液を蒸発させた。生成物をフラッシュクロマトグラフィ(酢酸エチル)により精製して、四置換異性体20%を含む所望の生成物P2(36mg、68%)を得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)7.21(1H,brs),6.92(1H,brs),6.11(1H,brs),5.70(1H,brs),4.26(1H,d),3.49(1H,dd),2.37(1H,m),2.11(1H,m),2.01(3H,s),1.99(2H,m),1.76(1H,m),1.62(1H,m),1.38(2H,m),0.96(1H,m)。LCMS(方法B):RT=0.90min;ES+302(M+H+)。
【0164】
(3E,3aR,4aS,8bS)−3−[[(2S)−4−メチル−5−オキソ−2H−フラン−2−イル]オキシメチレン]−1,3a,4,4a,5,6,7,8b−オクタヒドロインデノ[1,2−b]ピロール−2−オンB2
【化53】
表題の化合物をB3から同様の手法を用いて調製した。(方法B):0.89min;ES+302(M+H+)。
【0165】
3E3−[[4−メチル−5−オキソ−2H−フラン−2−イル]オキシメチレン]−1,3a,4,4a,5,6,7b−ヘキサヒドロ−ペンタレノ[1,2−b]ピロール−2−オンP4
【化54】
表題の化合物を、P5およびB5の1:1混合物から同様の手法を用いて調製した。LCMS(方法C):RT=0.85min;ES+288(M+H+)。
【0166】
(3E,3aR,4aS,7aS,7bR)−3−[(4−メチル−5−オキソ−2H−フラン−2−イル)オキシメチレン]−3a,4,4a,5,6,7,7a,7b−オクタヒドロ−1H−ペンタレノ[1,2−b]ピロール−2−オンP8およびB8
【化55】
表題の化合物を、P7およびB7の1:1混合物から同様の手法を用いて調製した。LCMS(方法C):RT=0.85min;ES+290(M+H+)。
【0167】
(3E,3aR,4aS,7aS,7bR)−3−[(4−メチル−5−オキソ−2H−フラン−2−イル)オキシメチレン]−3a,4,4a,5,6,7,7a,7b−オクタヒドロ−1H−ペンタレノ[1,2−b]ピロール−2−オンP11およびB11
【化56】
化合物を、t−ブチル(3E,3aR,8bS)−3−[[(2R)−4−メチル−5−オキソ−2H−フラン−2−イル]オキシメチレン]−2−オキソ−4,5,6,7,8,8b−ヘキサヒドロ−3aH−インデノ[1,2−b]ピロール−1−カルボキシレートP10およびB10の1:1混合物から同様の手法を用いて調製した。LCMS(方法C):RT=0.90min;ES+290(M+H+)。
【0168】
ステップ10:
(3E,3aR,4aS,7bS)1−アセチル−3−[(4−メチル−5−オキソ−2H−フラン−2−イル)オキシメチレン]−3a,4,4a,5,6,7b−ヘキサヒドロペンタレノ[1,2−b]ピロール−2−オンP6
【化57】
3E3−[[4−メチル−5−オキソ−2H−フラン−2−イル]オキシメチレン]−1,3a,4,4a,5,6,7b−ヘキサヒドロ−ペンタレノ[1,2−b]ピロール−2−オンP4およびB4、ならびに、N,N−ジメチルアミノピリジン(0.9mg、0.007mmol)をジクロロメタン(1mL)に溶解し、トリエチルアミン(0.019mL、0.14mmol)、続いて、無水酢酸(0.010mL、0.11mmol)を滴下し、この反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム溶液に注ぎいれ、酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、溶剤を蒸発させた。生成物をフラッシュクロマトグラフィ(1:1酢酸エチルおよびシクロヘキサン)により精製してP6およびB6(4mg、35%)を得た。LCMS(方法C):RT=0.97min;ES+330(M+H+)。
【0169】
【表15】
【0170】
【表16】
【0171】
【表17】
【0172】
【表18】
【0173】
生物学的実施例
ハマウツボ(Orobanche cumana Wallr)の発芽に対する式(I)の化合物の効果。種子をペトリ皿中のガラスファイバーフィルタ紙(GFFP)上で評価した。水分および好適な温度で種子をプレコンディショニングして特定の化学発芽刺激剤に対して応答性とした。
【0174】
テスト化合物をDMSO(10000mg l-1)に溶解させ、乾燥剤の入っているデシケータ内において室温で保管した。ストック溶液を適切な最終テスト濃度に脱イオン水で溶解した。
【0175】
ハマウツボ(O.cumana)品種「F」の種子を2006年(IN146)および2008年(IN153)それぞれにManzanilla(Seville,Spain)のヒマワリ畑から収穫し、室温で保管した。種子を重い有機質の細片から分離するために、Hartman & Tanimonure(Plant Disease(1991),75,p.494)に記載の変性スクロース浮遊技術を適用した。種子を分液漏斗に入れ、水の中で撹拌した。種子が表面に浮かんだら、重い細片を含有する水画分を廃棄した。種子を2.5Mスクロース溶液(比重1.20)の中に再度懸濁させ、重い細片を60分間かけて沈降させた。細片を取り除いた後、種子を1%次亜塩素酸ナトリウム溶液および0.025%(v/v)Tween 20中で2分間消毒した。種子を2重のチーズクロスにデカントし、滅菌脱イオン水ですすぎ、滅菌脱イオン水中に再懸濁させた。およそ150〜400粒の種子を含有する2mlの種子懸濁液を、ペトリ皿(9cm径)中の2層の滅菌ガラスファイバーろ紙ディスク(9mm径)の上に均一にひろげた。ディスクを3mlの滅菌脱イオン水で濡らした後、ペトリ皿をパラフィルムで密封した。種子を暗中に20℃で10日間インキュベートして、種子をコンディショニングした。コンディショニングした種子が載っている上方のディスクを簡単に乾燥させ、乾燥したGFFPディスクを敷いたペトリ皿に移し、6mlの適切なテスト溶液で濡らした。式(I)の化合物は、0.001、0.01および0.1mg l-1の濃度でテストした。ストリゴラクトン類似体GR24を陽性対照として含ませ、0.001%DMSOを陰性対照として含ませた。すべての処理を5回反復でテストした。種子を暗中に20℃で再度インキュベートし、10日後に発芽試験をした。出芽した種子の幼根を、Long et al.(Seed Science Research(2008),18,p.125)に準拠して、5%酢酸中の青いインク(MIGROS,Switzerland)で5分間染色した。染色後、デジタルSLRカメラ(Canon製EOS 5D)を備えつけたカメラスタンドを用いて種子を撮影した。反復毎の100個の種子の発芽をデジタル画像で評価した。種子は種皮から幼根が突出していたら出芽とみなした。ハマウツボ属(Orobanche)種子発芽テストの結果を表3〜6に示す。
【0176】
【表19】
【0177】
【表20】
【0178】
【表21】
【0179】
【表22】
【0180】
結果から、化合物P1、P2、B2、P4およびP5は発芽誘起効果をもたらすことが分る。
【0181】
生物学的実施例
ヤセイカンラン(Brassica oleracea cv Botrytis)または一般的なカリフラワーの発芽に対する式(I)の化合物の効果を、温帯種および熱帯種の2種のカリフラワーでテストした。発芽の最中に光条件および温度に対して異なる感受性を示すために、これらの2つの種を選択した。感受的な温帯種の発芽を10℃で光により阻害する一方で、熱帯種については、光の下に20度で発芽を刺激する。従って、光の下で10℃および暗中で20℃が、2つの種の発芽についてそれぞれ最適以下またはストレス条件としてみなされる。
【0182】
テストした温帯種子バッチは、10℃で光に対して感受性であることが知られている種々の品種の商業的に生産された種子バッチの一部である。これらの種子を、標準的な商業的な手法に従って収穫し、洗浄した。Ready種子バッチを用いた(Readyは、これらの種子の処理レベルを示す:これらは洗浄済みで、サイズが揃えられているが、それ以外の処理は行われていない)。テストした熱帯性種子バッチは、基本的な種子(親系統維持のため)として生産された種子バッチの一部であり、しかるべく処理した。
【0183】
ブラシカ属(Brassica)に対する標準的な紙を用いた発芽テストを用いて発芽率を査定した:閉じた矩形の発芽箱中において、適切な溶液で湿らせた青い発芽紙の上に50粒の種子を置いた。各条件を二重にテストした。発芽箱を、適切な温度および光条件に制御された発芽キャビネット中に置いた。種子の発芽を定期的に計数した。種子は、種皮および内乳から突き出た場合に発芽したとみなした(根のサイズはおよそ1mm)。パラメータ:Gmax(最大発芽率)およびt50(Gmaxの50%に達するのに必要な時間)を得るために発芽力試験分析ツールを用いて発芽動態学を分析した。発芽力試験分析ツールは、University of Wageningen:Joosen,R.V.L.,J.Kodde,et al.(2010).(“Germinator:A Software Package for High−Throughput Scoring and Curve Fitting of Arabidopsis Seed Germination.”The Plant Journal 62(1):148−159.)によって開発されたexcel用のアドインである。
【0184】
テスト化合物を50mMの濃度でDMSO中に溶解させ、−20℃で保管した。ストリゴラクトン類似体GR24(2種のジアステレオ異性体のラセミ混合物として市販されており、「合成ストリゴラクトンGR−24」と称され、Johnson A.W.&allによって初めて調製された:Journal of the Chemical Society,Perkin Transactions 1,1981,page 1734−1743)を陽性対照として含めた。発芽溶液を、ストック溶液を脱イオン水で25μMまで希釈することにより調製した。対照溶液として、脱イオン水および0.05% v/v DMSO溶液を用いた。
【0185】
発芽に対するストリゴラクトン誘導体の効果は表7および8に示されている。これらの結果は、ストリゴラクトンが最適以下の条件で発芽を刺激することを示す。
【0186】
【表23】
【0187】
【表24】