(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
よって、本発明の一実施形態では、CNTは比較的低純度(95%C純度以下、好ましくは少なくとも約90%C純度)多層CNTであって、好ましくは官能基化されていない。
【0023】
また、本発明のさらなる利点は、従来の樹脂混合並びにプリプレグ器材および処理を用いる樹脂系および複合体における高CNT内容物の安全な操作およびよりよい分散制御を可能とすることである。
【0024】
本発明の第1の態様の組成物は、好ましくは、質量分率w(CNF)が約0.1%〜約30%、好ましくは約0.1%〜約20%、約0.1%〜約19%、約0.1%〜約15%、好ましくは約1%〜約10%、および典型的には約3%〜約8%となる量で導電性ナノフィラー(CNF)を含み、w(CNF)は、
w(CNF)=m(CNF)/(m(A)+m(CNF))
のように計算され、
m(CNF)は組成物における導電性ナノフィラーの質量であり、m(A)は組成物における熱可塑性ポリマー(A)の質量である。
【0025】
本発明の第1の態様の組成物は、ペレット化した生成物、微細化された微粒子生成物、連続したまたは切断された繊維、繊維状物質、織布または不織布を含む従来技術のような、様々な物理的形態を有し得る。好ましくは、本発明の第1の態様の組成物は、粉状(pulverant)の組成物ではなく、つまり、粉末状ではない。
【0026】
一実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、ペレット形態であり、ペレットはナノフィラーを、例えば、一軸または二軸押出機における従来の溶融押出法を用いて、溶解した熱可塑性ポリマーに混合することにより調製される。熱可塑性ポリマーおよびナノフィラーは、同時にまたは順次、押出機に供給されることとしてもよく、好ましくは、ナノフィラーおよびポリマーの均一な物理的混合であることとする。押出機内の温度は、押出機内の熱可塑性物質の最適な流体力学に適するものとし、典型的には、約230℃〜約400℃の範囲である。様々な温度のプロファイルは、押出機の長さに沿って用いられることとしてもよい。押出機は、フィラーのタイプおよび内容並びにポリマーの流体力学的挙動に応じて従来の低いまたは高いせん断力/混合性またはその組み合わせを有するスクリューを備えることとしてもよい。実施形態の一つでは、連続した低いせん断力の従来のミキシングスクリュー部が、満足できる分散レベルを達成するために用いられることとしてもよい。好ましい実施形態では、押出機は、分散レベルを最適化する筒内のせん断力および圧力間の最適なバランスを作り出すために、カオス混合部に関連する従来の混合部分を含む高せん断力スクリュープロファイルを備えることとしてもよく、そのような処理条件は、L/D比が40:1である24mm連れ回りツインスクリューを備えるPrism TS24HC押出機の使用により達成される。異なる材料(ナノフィラーまたはポリマーペレット)に適する異なる供給スクリューを有する2つの異なる供給システムを用いることとしてもよい。60〜95%の最大トルクを達成するため、約200〜300RPMのスクリュースピードと複数の加熱領域における特定の温度プロファイルを所与の混合物のために開発することとしてもよい。
【0027】
好ましい実施形態では、微細化された微粒子形状は熱硬化樹脂マトリックスにおける分散性を増加させ、ナノフィラーの再凝集を低減するので、本発明の第1の態様の組成物は、微細化された微粒子形状である。微細化された微粒子形状は、典型的には組成物のペレットおよび/または押し出し形状から得られる。例えば、回転衝撃粉砕、ロートプレックス(rotoplex)粉砕、分級機粉砕、ボールミル粉砕、コントラペックス(contrapex)粉砕、流動床対向ジェットミル、螺旋流ジェットミル、低温ミルのような従来技術に従って微粒子化を行うこととしてもよい。好ましい実施形態では、異なる回転粉砕媒体を備える低温ミルシステム(例えば、Alpineシステム)を用いる。約5〜約300μm、好ましくは約10〜約150μm、さらに好ましくは約20〜約90μmの範囲の平均粒度分散(d50)を示す微細化された微粒子を達成するために、スタッド(stud)、ビーター(beater)、旋回ビーター、プレートビーターディスクを用いた一連のステップを開発することとしてもよい。
【0028】
別の好ましい実施形態では、本発明の第1の態様の組成物は、参照によりその開示が組み込まれる米国特許出願第2006/0252334号に開示されているような繊維、フィルム、織布、不織布、マット、織物、またはベール等の形態である。繊維は、スパンストランド、押出ストランド、キャストストランド、連続ストランド、連続繊維、二成分繊維、多成分繊維、ランダム繊維、ステープルファイバ、不連続繊維、切断繊維、ウィスカ、中空繊維、およびフィラメント、並びにその組み合わせの単一繊維の糸の形態であって
もよい。繊維は、複数の単一フィラメントからなる糸または一つおよび複数の単一フィラメントから作られる糸の両方であってもよい。マイクロファイバは、シース/コア、サイド/サイド、パイセグメント、海島型(islands−in−a−sea)のような、より複雑な構造物を有することとしてもよく、異なるポリマーまたはその混合物から作られることとしてもよい。ポリマーマイクロファイバは、さらなる有機もしくは無機フィラーまたは調節剤を含むこととしてもよい。
【0029】
組成物は、リボン、テープ、ベール、フリース、およびこれらの組み合わせ、並びに上記繊維形態の組み合わせの形態であることとしてもよい。好ましくは、繊維(または糸)は、約100μm以下の直径をそれぞれが有する繊維を含む。好ましくは、繊維またはフィラメントは直径dを有し、または厚さtのフィルム、テープ、もしくはリボンであり、dまたはtは約100μm以下の範囲であり、好ましくは約1〜約80μmであり、より好ましくは約10〜約50μmである。ベールは、好ましくは約2cm〜500cm幅の寸法で提供され、好ましくは約50cm〜200cm幅である。本発明の第1の態様の組成物から作られるベールは、実施における、特に以下でさらに記載する樹脂注入技術での使用に適する実施における、構造補強繊維(例えば、炭素繊維)の隣り合うプライ間に挿入するのに、およびこれに対して接触するのに特に適する。そのような繊維、フィルム、不織マットおよびベール等を作成する適切な方法は、参照によりその開示が組み込まれる米国特許出願第2006/0252334号に開示されている。
【0030】
本発明の第1の態様の組成物から作られた繊維を含む織布または織物は、共織(co−woven)補強繊維を含む炭素繊維のような補強剤の繊維をさらに含むハイブリッド繊維を含む。そのような繊維の例は、PRIFORM(商標)(Cytec Engineered Materials)として市販されている樹脂可溶性繊維含有織物を含む。
【0031】
本発明の第1の態様の組成物を、処理(本明細書ではin situ重合という。)により調製することとしてもよく、導電性ナノフィラーは、熱可塑性ポリマーの合成中に存在する。重合反応の開始前または重合反応中のいずれかにて、反応混合物を、任意にいずれかの触媒の存在下で、ナノフィラーと単に接触することとしてもよい。このように、ナノフィラーが反応の開始時にその全体に存在するように、ナノフィラーを単に重合反応容器に導入することとしてもよく、または、反応が進行するにつれて、ナノフィラーは、連続的にまたは段階的に、反応混合物に導入されまたは反応混合物と接触することとしてもよい。例えば、in situ重合処理は、(i)不活性溶媒の導電性ナノフィラーの懸濁液を調製するステップと、(ii)ナノフィラー懸濁液および任意の触媒から、単量体の反応物を添加し、重合反応を行うことによって反応混合物を調製するステップと、を含むこととしてもよい。
【0032】
in situ重合反応は、導電性ナノフィラーの表面でまたは表面上に熱可塑性ポリマーの重合を含み得、より効果的な、熱可塑性ポリマーでの導電性ナノフィラーのコーティングまたは被覆をもたらし得る。また、in situ重合が、熱可塑性ポリマーにおけるナノフィラーの分散を向上させ得、その後の再凝集の傾向を低減し得る。コーティングされたナノフィラー粒子を、従来技術を用いて反応混合物から回収し、ペレット化し、微粒子化し、またはそうでなければ通常の方法で処理することとしてもよい。
【0033】
よって、本発明の第2の態様では、本発明は本明細書に記載されているように、導電性ナノフィラーおよび1つまたはそれ以上のポリアリールエーテルスルホン熱可塑性ポリマー(A)を含む組成物の製造方法を提供する。1つの好ましい実施形態では、例えば、二軸押出機で、好ましくは高せん断力およびカオス混合性を利用して、組成物をナノフィラーおよび溶解した熱可塑性ポリマー(A)を混合し、任意にその後微粒子化し、熱硬化剤に溶解することにより調製する。好ましい実施形態では、ポリアリールエーテルスルホン
は硬化時に相分離し、マイクロメートルまたはサブミクロンの粒子形態を得る。驚くべきことに、得られた樹脂の機械および熱特性が維持されるかまたは向上さえなされる。
【0034】
ポリアリールエーテルスルホン熱可塑性ポリマー(A)
ポリアリールエーテルスルホン熱可塑性ポリマー(A)は、エーテル結合された繰り返し単位を含み、任意にさらにチオエーテル結合された繰り返し単位をさらに含み、単位は−[ArSO
2Ar]
n−および任意に−[Ar]
a−から選択され、
Arはフェニレンであり、
n=1〜2であって分数でもよく、
a=1〜3であって分数でもよく、aが1を超える場合には、フェニレン基は単化学結合または−SO
2−以外の二価基で直線的に結合し(好ましくは、二価基は−C(R
9)
2−基であり、各R
9は、同じまたは異なってもよく、HおよびC
1-8アルキル(特にメチル)から選択されてもよい。)、または互いに融合しており、ただし、繰り返し単位−[ArSO
2Ar]
n−は、存在する各ポリマー鎖で、平均して少なくとも2つの−[ArSO
2Ar]
n−単位が連続するような割合で、常にポリアリールエーテルスルホンに存在することを条件とし、
ポリアリールエーテルスルホンは、1つまたはそれ以上の反応性ペンダント基および/または末端基を有する。
【0035】
「分数」により、は、nまたはaの様々な値を有する単位を含む所与のポリマー鎖の平均値にへの参照がなされる。
【0036】
一実施形態では、ポリアリールエーテルスルホンのフェニレン基は、単結合で結合している。
【0037】
ポリアリールエーテルスルホンのフェニレン基は、それぞれ独立してC
1-8分岐鎖もしくは直鎖脂肪族、飽和もしくは不飽和脂肪族、またはO、S、N、またはハロ(例えば、ClまたはF)から選択される1つまたはそれ以上のヘテロ原子を任意に含む部分から選択される1つまたはそれ以上の置換基;および/または、活性水素、特にOH、NH
2、NHR
a、または−SHを提供する基であって、R
aが8つまでの炭素原子を含む炭化水素基であるもの、または、特に、ビニル、アリル、またはマレインイミド、無水物、オキサゾリン、および不飽和を含むモノマーにおけるベンズオキサジン、エポキシ、(メタ)アクリレート、シアネート、イソシアネート、アセチレン、またはエチレンのような、他の架橋作用を提供するものを含む基により置換されることとしてもよい。
【0038】
好ましくは、フェニレン基は、メタ−またはパラ−(好ましくはパラ)である。形態の混合(特に、メタ−およびパラ−形態)がポリマー骨格に沿って存在することとしてもよい。
【0039】
好ましくは、ポリアリールエーテルスルホンは、エーテルおよび/またはチオエーテル結合により、好ましくはエーテル結合により結合された−[ArSO
2Ar]
n−および−[Ar]
a−繰り返し単位の組み合わせを含む。このように、好ましくはポリアリールエーテルスルホンは、ポリエーテルスルホン(PES)およびポリエーテルエーテルスルホン(PEES)エーテル結合された繰り返し単位の組み合わせを含む。
【0040】
−[ArSO
2Ar]
n−および−[Ar]
a−繰り返し単位の相対的割合は、平均して少なくとも2つの−[ArSO
2Ar]
n−繰り返し単位が、存在する各ポリマー鎖において互いに続けて連続しているものであり、−[Ar]
a−単位に対する−[ArSO
2Ar]
n−単位の割合が、好ましくは1:99〜99:1の範囲、好ましくは10:90〜90:10の範囲となるようになされる。典型的には、[ArSO
2Ar]
n:[Ar]
aの
割合が75:25〜50:50の範囲である。
【0041】
一実施形態では、ポリアリールエーテルスルホンにおける好ましい繰り返し単位は、
(I):−X−Ar−SO
2−Ar−X−Ar−SO
2−Ar−(本明細書では、「PES単位」を指す)および
(II):−X−(Ar)
a−X−Ar−SO
2−Ar−(本明細書では、「PEES単位」を指す)であって、
XはOまたはS(好ましくはO)であり、単位と単位で異なってもよく、
I:IIの割合は、好ましくは10:90〜80:20の範囲であり、より好ましくは10:90〜55:45の範囲であり、より好ましくは25:75〜50:50の範囲であり、一実施形態では、I:IIの割合は、20:80〜70:30の範囲であり、より好ましくは30:70〜70:30の範囲であり、最も好ましくは35:65〜65:35の範囲である。
【0042】
ポリアリールエーテルスルホンされた繰り返し単位の好ましい相対的な割合は、(SO
2の重量)/(繰り返し単位の平均重量)の100倍で定義されるSO
2内容物の重量%で表されることとしてもよい。好ましいSO
2内容物は少なくとも22、好ましくは23〜25%である。a=1であるとき、これは、少なくとも20:80のPES/PEESの割合、好ましくは35:65〜65:35の割合に対応する。
【0043】
ポリエーテルエーテルスルホンの流れ温度は、一般的に対応するMnポリエーテルスルホンの温度より低いが、両方は同様の機械的特性を有する。よって、上記nおよびaの値を決定することにより、割合を決定することとしてもよい。
【0044】
米国特許第6437080号は、所望する選択された分子量でモノマー前駆体を分離する態様で、モノマー前駆体からそのような組成物を得るための方法を開示し、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
上記割合は、言及した単位にのみ関するものである。そのような単位に加えて、ポリアリールエーテルスルホンは、他の繰り返し単位の50%までのモル濃度、好ましくは25%までのモル濃度を含み、その際好ましいSO
2内容物の範囲は、ポリマー全体に適用される。そのような単位は、例えば、式:
【化1】
であってもよく、Lは直接結合、酸素、硫黄、−CO−、または二価基(好ましくは二価炭化水素ラジカル、好ましくは二価基が−C(R
12)
2−の基であって、各R
12は同じまたは異なってもよく、HおよびC
1-8アルキルから選択される(好ましくはメチル)。
【0046】
ポリアリールエーテルスルホンは、求核性合成の生成物であるとき、その単位は、例えば、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、レソルシノール、ジヒドロキシナフタレン(2,6および他の異性体)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジ(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび−メタンから選択される1つまたはそれ以上のビスフェノールおよび/または対応するビス−チオールまたはフェノールチオールに由来する。ビス−チオールが使用される場合、in situで形成され得、つまり、ジハロゲン化物は、アルカリ硫化物、または多硫化物、またはチオ硫酸塩で反応が行われる。
【0047】
そのような追加単位の他の例では、式:
【化2】
であって、QとQ’は同じまたは異なってもよく、COまたはSO
2であり、Ar’は二価芳香族ラジカルであり、pは0、1、2、または3であり、ただし、QがSO
2のときpは0ではないことを条件とする。Ar’は、好ましくはフェニレン、ビフェニレン、またはテルフェニレンから選択される少なくとも1つの二価芳香族ラジカルである。特定の単位は、式:
【化3】
を有し、qは1、2、または3である。ポリマーが求核性合成の生成物である場合、そのような単位は、例えば、4,4’−ジハロベンゾフェノン、4,4’ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ビフェニル、1,4,ビス(4−ハロベンゾイル)ベンゼン、および4,4’−ビス(4−ハロベンゾイル)ビフェニルから選択される1つまたはそれ以上のジハロゲン化物由来である。それらはもちろん部分的に対応するビスフェノールに由来することとしてもよい。
【0048】
ポリアリールエーテルスルホンは、ハロフェノールおよび/またはハロチオフェノールからの求核性合成の生成物であることとしてもよい。いずれの求核性合成において、塩素または臭素のハロゲンは、銅触媒の存在により活性化され得る。そのような活性化は、ハロゲンが電子求引性基により活性化されるときには不必要な場合もよくある。いずれにしても、フッ化物は、通常塩化物よりもより活性である。ポリアリールエーテルスルホンのいかなる求核性合成も、好ましくは、化学量論を超える10%モル濃度までのKOH、NaOH、または、K
2CO
3のような1つまたはそれ以上のアルカリ金属塩の存在下で行われる。
【0049】
上述のように、ポリアリールエーテルスルホンは1つまたはそれ以上の反応性ペンダント基および/または末端基を含み、好ましい実施形態では、ポリアリールエーテルスルホンは、2つのそのような反応性ペンダント基および/または末端基を含む。一実施形態では、ポリアリールエーテルスルホンは、1つのそのような反応性ペンダント基および/または末端基を含む。好ましくは、反応性ペンダント基および/または末端基は、活性水素、特にOH、NH
2、NHR
b、または−SHを提供する基(R
bは、8つまでの炭素原子を含む炭化水素基である)であり、または他の架橋作用を提供する基、例えば、ビニル、アリル、またはマレインイミド、無水物、オキサザリン(oxazaline)および飽和を含むモノマーにおける、特にベンズオキサジン、エポキシ、(メタ)アクリレート、シアネート、イソシアネート、アセチレン、またはエチレンである。一実施形態では、反応性ペンダント基および/または末端基は、式−A’−Yであり、A’は結合または二価炭化水素基、好ましくは芳香族、好ましくはフェニルである。Yの例は、活性水素、特にOH、NH
2、NHR
b、および−SHを提供する基(R
bは、8つまでの炭素原子を含む
炭化水素基である)であり、または他の架橋作用を提供する基、例えば、ビニル、アリル、またはマレインイミド、無水物、オキサザリン(oxazaline)および飽和を含むモノマーにおける、特にベンズオキサジン、エポキシ、(メタ)アクリレート、シアネート、イソシアネート、アセチレン、またはエチレンである。他の架橋作用を提供する基は、直接結合を介して、または、本明細書で上述したようにエーテル、チオエーテル、スルホン、−CO−、または二価炭化水素ラジカル結合を介して、最も典型的にはエーテル、チオエーテル、スルホン結合を介して、ポリアリールエーテルスルホンのAr基に結合することとしてもよい。さらなる実施形態では、末端基は、好ましくは比較的少量以下の割合であるが、ハロ基(特に、クロロ)から選択されることとしてもよい。反応性末端基は、分離の前にまたはその後に、モノマーの反応により、またはその後の生成物ポリマーの変換により得ることとしてもよい。例えば、ポリマーの出発材料として活性化した芳香族ハロゲン化物(例えば、ジクロロジフェニルスルホン)を用いた反応性ペンダント基および/または末端基の導入の一方法では、合成方法は、化学量論よりも少し多くの活性化された芳香族ハロゲン化物を用い、末端ハロゲン化基を有する得られたポリマーは、その後アミノフェノール(例えば、m−アミノフェノール)と反応させて、アミノ末端基をつくる。
【0050】
反応性ペンダント基および/または末端基は、好ましくは活性水素を提供する基、特にOHおよびNH
2、特にNH
2から選択される。好ましくは、ポリマーは2つのそのような基を含む。
【0051】
ポリアリールエーテルスルホンの数平均モル質量M
nは、約2,000〜約30,000、好ましくは約2,000〜約25,000、好ましくは約2,000〜約15,000、および一実施形態では約3,000〜約10,000g/molの範囲が適している。
【0052】
ポリアリールエーテルスルホンの合成は、米国特許出願第2004/0044141号および米国特許第6437080号にさらに記載されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
導電性ナノフィラー
用語「導電性ナノフィラー」は、本明細書で用いられる場合、当該技術において一重壁カーボンナノチューブ(SWCNT)、二重壁カーボンナノチューブ(DWCNT)、および多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を含むカーボンナノチューブ(CNTs)、カーボンナノ粒子、カーボンナノ繊維、カーボンナノロープ、カーボンナノリボン、カーボンナノ原線維、カーボンナノニードル、カーボンナノシート、カーボンナノロッド、カーボンナノコーン、カーボンナノスクロール、およびカーボンナノオームと称される成分、並びに対応する窒化ホウ素成分を含むがこれらに限定されるものではない。一実施形態では、用語「導電性ナノフィラー」は、炭素系導電性ナノフィラーを指し、上述の炭素系成分を含むがこれに限定されるものではない。用語「導電性ナノフィラー」は、さらに、部分的にまたは全体に金属コーティングもしくは他のフラーレン材料およびその組み合わせを有するまたは有しない、グラファイトナノ小板、もしくはナノドット、切断された/短い炭素繊維、カーボンブラック、またはこれらの組み合わせを含む。
【0054】
カーボンナノチューブは、いずれのキラリテイーを有していてもよい。カーボンナノチューブは、アームチェア型ナノチューブであってもよい。ナノチューブは、半電導性ナノチューブまたは電気的伝導性を示す他のいかなるタイプでもよい。
【0055】
カーボンナノチューブは、化学蒸着(CVD)、触媒化学蒸着(CCVD)、炭素触媒化学蒸着(CCVD)、高圧一酸化炭素法(HiPco)、アーク放電、レーザ蒸着によ
り産生することとしてもよく、または当業者にとって公知の他の方法を本発明の処理に用いることとしてもよい。
【0056】
本発明の好ましいナノフィラーは、カーボンナノチューブであり、特に多壁のカーボンナノチューブである。典型的には、カーボンナノチューブは、約0.4nm〜約100nmの範囲の外径を有する管状の、糸状の構造物である。好ましくは、外径は約50nm以下であり、好ましくは約25nm以下であり、一実施形態では約15nm以下である。好ましくは、外径が少なくとも約1nmであり、一実施形態では少なくとも約5nmである。
【0057】
導電性ナノフィラーは、好ましくは10000:1以下好ましくは1000:1以下の縦横比を有する。好ましくは、導電性ナノフィラーは少なくとも100:1の縦横比を有する。本明細書で用いられる縦横比という用語は、3次元体の最も長い寸法と最も短い寸法の比を指すと理解される。
【0058】
熱硬化重合体マトリックス
本明細書で用いられる場合、「硬化性ポリマー組成物」は、硬化前の組成物を指し、「熱硬化樹脂組成物」は、硬化後の組成物を指す。
【0059】
本発明の第3の態様において、1つまたはそれ以上の導電性ナノフィラーと、1つまたはそれ以上のポリアリールエーテルスルホン熱可塑性ポリマー(A)と、1つまたはそれ以上の未硬化の熱硬化樹脂前駆体(P)と、任意にそのための1つまたはそれ以上の硬化剤とを含む熱硬化樹脂系または硬化性ポリマー組成物を提供する。
【0060】
好ましい実施形態では、本発明の第3の態様の熱硬化樹脂系または硬化性ポリマー組成物は、本明細書に定義される本発明の第1の態様に係るポリアリールエーテルスルホン被覆ナノフィラー組成物と、1つまたはそれ以上の未硬化の熱硬化樹脂前駆体(P)と、任意にそのための1つまたはそれ以上の硬化剤を含む。
【0061】
上述のように、導電性ナノフィラーの少なくとも一部は、熱硬化樹脂前駆体と混合または接触する前に、熱可塑性ポリマーに分散され、または熱可塑性ポリマーにコーティングされ、または覆われていることが好ましい。このように、本発明の第3の態様の組成物は、
(i)1つまたはそれ以上のポリアリールエーテルスルホン熱可塑性ポリマー(A)と、1つまたはそれ以上の未硬化の熱硬化樹脂前駆体(P)と、任意にそのための1つまたはそれ以上の硬化剤とを含む組成物にまたは組成物とともに導電性ナノフィラーを混合または分散すること、または
(ii)好ましい実施形態では、本発明の第1の態様に係る組成物を、1つまたはそれ以上の未硬化の熱硬化樹脂前駆体(P)に、任意にそのための1つまたはそれ以上の硬化剤と、混合または分散すること、または
(iii)さらに好ましい実施形態では、本発明の第1の態様に係る組成物を、1つまたはそれ以上の未硬化の熱硬化樹脂前駆体(P)を含み、さらに本明細書に定義される(第1の態様の組成物におけるポリアリールエーテルスルホンと同じまたは異なる)1つまたはそれ以上のポリアリールエーテルスルホンと、本明細書に定義される(第1の態様の組成物におけるナノフィラーと同じまたは異なる)1つまたはそれ以上の導電性ナノフィラーと、任意にそのための1つまたはそれ以上の硬化剤とを含む組成物に、またはこれらを含む組成物とともに混合または分散することにより、得られることができる。
【0062】
硬化剤が存在する場合、本発明の第3の態様の組成物は、好ましくは、当該1つまたはそれ以上の未硬化の熱硬化樹脂前駆体(P)、1つまたはそれ以上のポリアリールエーテ
ルスルホンと、導電性ナノフィラーとの混合の後の、硬化剤の添加により得られる。
【0063】
本発明の第4の態様は、1つまたはそれ以上の導電性炭素系ナノフィラーと、1つまたはそれ以上のポリアリールエーテルスルホン熱可塑性ポリマー(A)と、1つまたはそれ以上の未硬化の熱硬化樹脂前駆体(P)と、任意にそのための1つまたはそれ以上の硬化剤とを含む、本発明の第3の態様で定義した組成物由来の硬化した熱硬化樹脂組成物(R)を提供する。
【0064】
好ましい実施形態では、本発明の第4の態様の組成物は、本明細書に定義されるポリアリールエーテルスルホン被覆ナノフィラーと、1つまたはそれ以上の未硬化の熱硬化樹脂前駆体(P)と、任意にそのための1つまたはそれ以上の硬化剤とを含む組成物由来である。
【0065】
処理の間、樹脂系のゲル化点になる前に、熱可塑性物質を樹脂系で溶解し、再凝集することなく分子レベルでのナノフィラーのよく分散したネットワークを提供する。このネットワークは、樹脂マトリックスおよびこのマトリックスから形成された複合材の電気的伝導性および誘電率における著しい増加をもたらす。
【0066】
本発明は、主に1つまたはそれ以上のエポキシ樹脂前駆体由来の熱硬化エポキシ樹脂に関する。エポキシ樹脂前駆体は、好ましくは、1分子あたり少なくとも2つのエポキシド基を有し、1分子あたり、3つ、4つ、またはそれ以上のエポキシド基を有する多官能性エポキシドであることとしてもよい。エポキシ樹脂前駆体は、適切には周囲温度で液体である。適切なエポキシ樹脂前駆体は、芳香族ジアミン、芳香族モノ第一級アミン、アミノフェノール、多価フェノール、多価アルコール、ポリカルボン酸類等またはそれらの混合物からなる1つまたはそれ以上の化合物の基のモノグリシジル誘導体またはポリグリシジル誘導体を含む。
【0067】
好ましいエポキシ樹脂前駆体は、
(i)ビスフェノールA、ビスフェノールF、ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジヒドロキシベンゾフェノン、およびジヒドロキシジフェニルのグリシジルエーテル;
(ii)ノボラックに基づくエポキシ樹脂;および
(iii)m−またはp−アミノフェノール、m−またはp−フェニレンジアミン、2,4−、2,6−、または3,4−トルイレンジアミン、3,3’−または4,4’−ジアミノジフェニルメタンのグリシジル官能基反応生成物から選択され、
特に当該エポキシ樹脂前駆体は、1分子あたり少なくとも2つのエポキシド基を有する。
【0068】
特に好ましいエポキシ樹脂前駆体は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA);ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(DGEBF);O,N,N−トリグリシジル−パラ−アミノフェノール(TGPAP);O,N,N−トリグリシジル−メタ−アミノフェノール(TGMAP);およびN,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)から選択される。一実施形態では、エポキシ樹脂前駆体はDGEBAおよびDGEBFから選択される。好ましい実施形態では、エポキシ樹脂前駆体はDGEBFおよびTGPAP、並びにそれらの混合物から選択される。
【0069】
アミノ水素当量比(amino hydrogen equivalent ratio)に対するエポキシ基は、好ましくは1.0〜2.0の範囲である。過剰なエポキシを示す公式は、正確な化学量論であることが好ましい。
【0070】
本発明での使用に適する市販のエポキシ樹脂前駆体は、N,N,N’,N’−テトラグ
リシジルジアミノジフェニルメタン(たとえば、グレードMY9663、MY720またはMY721;Huntsman);N,N,N’,N’−テトラグリシジル−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソ−プロピルベンゼン(例えば、EPON1071;Momentive);N,N,N’,N’−テトラクリシジル(tetraclycidyl)−ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン,(例えば、EPON1072;Momentive);p−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(例えば、MY0510;Hunstman);m−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(例えば、MY0610;Hunstman);2,2−ビス(4,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパンのようなビスフェノールA系材料のジグリシジルエーテル(例えば、DER661(Dow)、またはEPON828(Momentive)およびノボラック樹脂であって好ましくは25℃で粘度が8〜20Paのもの;フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル(例えば、DEN431またはDEN438;Dow);ジ−シクロペンタジエン系フェノールのノボラック(例えば、Tactix556,Huntsman);ジグリシジル1,2−フタレート(たとえば、GLY CEL A−100);ジヒドロキシジフェニルメタンのジグリシジル誘導体(ビスフェノールF)(例えば、PY306;Huntsman)を含む。他のエポキシ樹脂前駆体は、3’,4’−エポキシシクロヘキシル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、CY179;Huntsman)のような環状脂肪族を含む。
【0071】
本発明の一実施形態では、熱硬化樹脂系または硬化性ポリマー組成物は、同じもしくは異なる官能基性を有する(この文脈における用語「官能基性」は、官能基であるエポキシド基の数を意味する)エポキシ樹脂前駆体の混合物を含む。エポキシ樹脂前駆体の混合物は、1分子あたり2つのエポキシド基(以後、前駆体P2という)を有する1つまたはそれ以上のエポキシ樹脂前駆体、および/または1分子あたり3つのエポキシド基(以後、前駆体P3という)を有する1つまたはそれ以上のエポキシ樹脂前駆体、および/または1分子あたり4つのエポキシド基(以後、前駆体P4という)を有する1つまたはそれ以上のエポキシ樹脂前駆体を含むこととしてもよい。当該混合物は、1分子あたり5つ以上のエポキシド基(以後、前駆体PPという)を有する1つまたはそれ以上のエポキシ樹脂前駆体をも含むこととしてもよい。一実施形態では、P3前駆体のみが存在することとしてもよい。代替的な実施形態では、P4前駆体のみが存在することとしてもよい。一実施形態では、エポキシ樹脂前駆体の混合物は、
(i)約0重量%〜約60重量%のエポキシ樹脂前駆体(P2);
(ii)約0重量%〜約55重量%のエポキシ樹脂前駆体(P3);および
(iii)約0重量%〜約80重量%のエポキシ樹脂前駆体(P4)
を含む。
【0072】
一実施形態では、混合物は、上記の割合で所与の官能基性の1つのエポキシ樹脂前駆体のみを含む。
【0073】
本発明の熱硬化樹脂系または硬化性ポリマー組成物は、熱硬化性である。
硬化剤および/または触媒の添加は任意であるが、所望する場合には、そのような使用は硬化率を増加させおよび/または硬化温度を低減する。好ましい実施形態では、1つまたはそれ以上の硬化剤が、任意に1つまたはそれ以上の触媒とともに使用される。代替的な実施形態では、本明細書に記載されている熱硬化樹脂系または硬化性ポリマー組成物が、硬化剤または触媒を使用することなく熱硬化される。
【0074】
好ましくは、しかしながら、熱硬化樹脂系または硬化性ポリマー組成物は、1つまたはそれ以上の硬化剤を含む。硬化剤は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許第A−0311349号、欧州特許第A−0486197号、欧州特許第A−0365
168号、または米国特許第6013730号に記載されている、アミノ基あたり500までの分子量を有するアミノ化合物など(例えば、芳香族アミンまたはグアニジン誘導体)の公知の硬化剤から適切に選択される。芳香族アミン硬化剤が好ましく、好ましくは1分子あたり少なくとも2つのアミノ基を有する芳香族アミン、特に好ましくはジアミノジフェニルスルホンであって、例えば、アミノ基は、スルホン基に対してメタ−またはパラ−位である。具体例は、3,3’−および4−,4’−ジアミノジフェニルスルホン(DDS);メチレンジアニリン;ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン;ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン;4,4’メチレンビス−(2,6−ジエチル)−アニリン(MDEA;Lonza);4,4’メチレンビス−(3−クロロ,2,6−ジエチル)−アニリン(MCDEA;Lonza);4,4’メチレンビス−(2,6−ジイソプロピル)−アニリン(M−DIPA;Lonza);3,5−ジエチルトルエン−2,4/2,6−ジアミン(D−ETDA80;Lonza);4,4’メチレンビス−(2−イソプロピル−6−メチル)−アニリン(M−MIPA;Lonza);4−クロロフェニル−N,N−ジメチル−ウレア(例えばMonuron);3,4−ジクロロフェニル−N,N−ジメチル−ウレア(例えば、Diuron(商標))およびジシアノジアミド(Amicure(商標)CG1200;Pacific Anchor Chemical)である。ビスフェノール−Sまたはチオジフェノールのようなビスフェノール鎖延長剤は、エポキシ樹脂の硬化剤としても有用である。本発明で特に使用に好ましいのは3,3’−および4−,4’−DDSである。適切な硬化剤は、無水物、特に、ポリカルボン酸無水物、例えば、ナディック無水物、メチルナディック無水物、フタル無水物、テトラヒドロフタル無水物、ヘキサヒドロフタル無水物、メチルテトラヒドロフタル無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル無水物、またはトリメリット酸無水物も含む。
【0075】
一実施形態では、熱硬化樹脂系または硬化性ポリマー組成物は、硬化反応を促進するための1つまたはそれ以上の触媒を含む。適切な触媒は公知であり、ルイス酸または塩基を含む。具体的な例は、エーテラートまたはそのアミン付加体(例えば、三フッ化ホウ素およびエチルアミンの付加体)のような三フッ化ホウ素を含む組成物を含み、特にエポキシ樹脂前駆体は、上記アミン硬化剤と合わせて用いられる。
【0076】
硬化性ポリマー組成物は、例えば、参照によりその内容が本明細書に組み込まれる米国特許第6265491号に開示されているように、硬化剤および触媒を含むこととしてもよい。
【0077】
樹脂前駆体と組み合わされるまたはこれに添加される熱可塑性ポリマー(A)の量は、好ましくは、質量分率w(A)がw(A)=m(A)/mとして計算され(m(A)は、質量mを有する硬化した熱硬化樹脂組成物に存在する熱可塑性ポリマー(A)の質量である)、0.5%〜40%、好ましくは1%〜35%、そしてより好ましくは2%〜30%となる量である。
【0078】
硬化剤は、典型的には、組成物における熱硬化樹脂前駆体と硬化剤とを組み合わせた総重量の約1〜60重量%で存在し、好ましくは約20〜50重量%、典型的には約25〜40重量%で存在する。
【0079】
このように、本発明は、硬化した熱硬化樹脂組成物(R)の準備方法を提供し、当該方法は、
(i)本明細書に記載された熱可塑性物質被覆ナノフィラーを準備することと、
(ii)本明細書に記載された1つまたはそれ以上の未硬化の熱硬化樹脂前駆体(P)で当該熱可塑性物質被覆ナノフィラーを混合および/または溶解することと、
(iii)例えば、低下させた温度で硬化剤/触媒に溶解/分散し、その後の硬化をもた
らすことにより、混合物を硬化すること、のステップを含む。
【0080】
用途
本明細書に記載された組成物を、鋳物または成形構造材料の製造に用いることができ、特に、繊維補強耐荷重性または耐衝撃性複合体構造物の製造に適する。組成物をそのままでまたはフィラーまたは繊維で補強された複合材として用いることとしてもよい。いくつかの実施形態では、組成物を、複合体のz方向の電気的伝導性の向上のために用いることができ、いくつかの他の実施形態では、組成物を、複合体構造物にシグネチャーコントロール性能を付与するために用いることができる。
【0081】
このように、本発明のさらなる態様によれば、本発明で定義される、または、本発明で定義される硬化性ポリマー組成物から誘導され得る、熱硬化樹脂組成物のいずれかを含む成形または鋳物製品を提供する。
【0082】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書にて上述の熱硬化樹脂組成物または硬化性ポリマー組成物を含むまたはそれらから誘導される複合材が提供され、特に、複合材はプリプレグであるか、またはこれを含む。
【0083】
成形された生成物は、熱可塑性被覆導電性ナノフィラーを1つまたはそれ以上の未硬化の熱硬化樹脂前駆体(P)で混合し、必要に応じて硬化剤および触媒を添加し、そのようにして得られた混合物を均一化し、混合物を型に流し込んで成形生成物を得て、成形生成物を少なくとも100℃に上昇した温度で硬化して硬化した成形生成物を形成する一般的なステップにより、本発明の組成物から得られる。
【0084】
ひとつの好ましい実施形態では、特に耐荷重性または耐衝撃性構造物の製造について、組成物は、繊維またはフィラーのような補強材をさらに含む複合材である。
【0085】
短いまたは切断された、典型的には平均繊維長さが約2cm以下、典型的には少なくとも約0.1mm、例えば6mmの繊維を加えることができる。あるいは、好ましくは、繊維は連続的であり、例えば、プリプレグを形成するための一方向性に配置された繊維、織布、組まれた、編まれた、または不織の布であることとしてもよい。本明細書で用いられる場合、用語「プリプレグ」は、予め含漬された非硬化繊維補強複合材を指す。プリプレグは、典型的には連続した繊維を含むが、短いおよび/または切断繊維と連続繊維の両方の組み合わせを用いることとしてもよい。いくつかの用途では、プリプレグ繊維は、短いおよび/または切断された一方向繊維単体から選択することができる。繊維補強材は、合成もしくは天然繊維、またはその組み合わせを含むハイブリッドまたは混合繊維系から選択することとしてもよい。
【0086】
繊維は大きさが規格化されていてもされていなくてもよい。繊維を、典型的には5〜35重量%、好ましくは少なくとも20重量%の濃度で添加することができる。構造的な用途については、例えば、ガラスまたは炭素の連続繊維を、特に30〜70体積%、さらには50〜70体積%で用いることが好ましい。
【0087】
繊維は、有機的、例えば、アラミド繊維、金属化ポリマー繊維(ポリマーは樹脂混合物で可溶性または非可溶性である。)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維であってもよく、もしくは無機的、またはこれらの組み合わせでもよい。無機繊維では、「E」、「A」、「E−CR」、「C」、「D」、「R」、「S」、もしくは石英の繊維のようなガラス繊維、またはアルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、金属化ガラス、他のセラミック化合物もしくは金属を用いることができる。とても適切な補強繊維は、特にグラファイトとしての炭素である。グラファイトまたは炭素繊維は、(不連続のまたは連続した金属層
で)金属化され得る。本発明で特に有用であると認められたグラファイト繊維は、商品記号T650−35、T650−42、およびT300のCytecにより供給されるもの;商品記号T800−HBのTorayにより供給されるもの;商品記号AS4、AU4、IM8、およびIM7のHexcelにより供給されるものである。
【0088】
有機または炭素繊維は、有害な反応のない、液体前駆体組成物における可溶性の観点で、または、本明細書に記載される繊維および熱硬化/熱可塑性組成物への両方に対する結合の観点で、本発明の組成物と適合する材料で好ましくは大きさが規格化されておらず、または規格化されている。特に、樹脂前駆体またはポリアリールエーテルスルホンで、大きさが規格化されていない、または、規格化されている、炭素またはグラファイト繊維が好ましい。無機的繊維は、好ましくは、繊維およびポリマー組成物にともに結合する材料で大きさが規格化されており、例えば、ガラス繊維に適用されるオルガノシランカップリング剤である。
【0089】
本明細書の上記に定義されるポリアリールエーテルスルホン熱可塑性ポリマー(A)は、熱硬化樹脂における導電性ナノフィラー用の相溶化剤および熱硬化樹脂用の強化剤の両方として機能する。本明細書に記載された組成物は、さらに追加の強化剤を含んでいることとしてもよく、例えば、ポリアミド、コポリアミド、ポリイミド、アラミド、ポリケトン、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスフォン(polysuphone)、ポリスフィド(polysuphide)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、変性PPO、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリフェニルスルホン、高性能炭化水素重合体、液晶重合体、エラストマー、およびセグメント化エラストマー、本明細書の上記に定義されるポリアリールエーテルスルホン、例えば予め形成した微粒子であって、重合体粒子、セラミック微粒子、炭素微粒子、ガラスビーズ、金属微粒子、合金微粒子、ゴム粒子、およびゴムコーティングガラスビーズのような微粒子強化剤、ポリテトラフルオロエチレン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、グラファイト、窒化ホウ素、雲母、タルク、およびバーミキュライトのようなフィラー、色素/染料、核化剤、湿潤剤、粘度調整剤/流れ調整剤、難燃剤、可塑剤、UV吸収剤、抗菌化合物、粘着剤、阻害剤、およびリン酸塩のような安定剤の単体または組み合わせのいずれかのホモポリマーまたはコポリマーである。反応基を有する液状ゴムが使用されることとしてもよい。組成物におけるそのような材料の総量およびあらゆる繊維の補強材は、典型的には少なくとも、組成物の総体積のパーセンテージとして、20体積%である。繊維およびそのような他の材料のパーセンテージは、以下に定義される温度での反応または処理後の総組成物で算出される。一実施形態では、組成物に存在する強化剤は、高Tgエンジニアリング熱可塑性物質、好ましくは、本明細書の上記に定義されるポリアリールエーテルスルホン熱可塑性ポリマーを含む、好ましくはこれらからなる。
【0090】
複合体は、本明細書で上述した硬化性ポリマー組成物の成分を、繊維補強材および/または他の材料と組み合わせることにより作られる硬化性ポリマー組成物から得られる。例えば、プリプレグの製造は、典型的には、熱可塑性物質被覆ナノフィラーおよび未硬化の熱硬化樹脂前駆体(P)を混合すること、必要に応じて硬化剤および触媒を添加すること、そのようにして得られた混合物を均一化することと、均一化した混合物を、一束のまたは一房の平行に配置された繊維もしくは繊維織、または組まれた、編まれた、もしくは非不織の布に適用してプリプレグを形成すること、のステップを含む。溶剤は、処理を補助するために存在することとしてもよい。溶剤とその割合は、成分の混合が、少なくとも安定した乳濁液、好ましくは安定した明らかな単相溶液を形成するように選択される。典型的には、溶剤の混合物が用いられ、例えば、適切には99:1から85:15の範囲の割
合で、ハロゲン化炭化水素およびアルコールである。従来、そのような混合物における溶剤は、100℃未満、1atmの圧力で加熱し、用いられる割合で相互に混和するべきものである。あるいは、成分をホットメルトおよび/または高せん断により合わせてもよい。混合物を十分均一になるまで撹拌する。その後、あらゆる溶剤を蒸発により取り除く。蒸発は50〜200℃が適切であり、少なくとも最終段階では、準大気圧、例えば13.33Pa〜1333Pa(0.1〜10mmHg)の範囲であり得る。組成物は、好ましくは揮発性溶剤の5重量%まで含み、繊維を含浸させる場合に流れを補助する。この残りの溶剤は、含浸装置のホットローラに接触して取り除かれる。
【0091】
より具体的には、本発明の組成物からの構成品および複合体の製造は以下のとおりである。樹脂溶液の形態の組成物は、パネル、プリプレグ等の準備のために適切な鋳型または成形型に移され、鋳型または成形型は、所望の脱気温度で予め加熱されている。安定した乳濁液が、いずれの補強、強靱化、充填、造核材または薬剤等とも組み合わされ、温度を、その硬化を開始するように上昇させる。適切に、硬化は、200℃までの上昇した温度で行われ、好ましくは、160〜200℃の範囲、より好ましくは170〜190℃の範囲であり、脱気の影響での変形を抑制するため、またはボイド形成を抑制するために上昇した圧力を使用し、適切には10barまでの圧力、好ましくは3〜7bar absの範囲の圧力で使用する。適切に、硬化温度は、5℃/分までの加熱により得られ、例えば2℃〜3℃/分であり、9時間まで、好ましくは6時間まで、例えば2〜4時間のような必要とされる期間中維持される。触媒の使用は、低硬化温度さえ可能にする。圧力を全体にわたって解放し、温度を5℃/分まで、例えば3℃/分までの冷却により低下させる。190℃〜200℃範囲の温度での後硬化が、大気圧で、生成物またはその他のガラス転移温度を向上するための適切な加熱率を用いて行われることとしてもよい。鋳型または成形型は、あらゆる適切な材料、例えば、不飽和ポリエステルまたは熱硬化樹脂、例えば、採用される形成温度を超える耐熱性を有するエポキシまたはビス−マレインイミドで構成されることとしてもよい。補強は、ガラス繊維の形態で適切に提供される。複合体の鋳型は、従来の方法で準備されることとしてもよい。
【0092】
組成物は、すでに存在するまたは新たに追加されたいくつかの揮発性溶剤をおそらく含んでおり、例えば接着剤として、または表面をコーティングするため、もしくは発砲状態で注型することにより固体構造物を製造するために使用することができる。短繊維補強は、その硬化前に組成物に組み込まれることとしてもよい。好ましくは、繊維補強組成物は、実質的に連続した繊維を、そのような樹脂組成物に接触させて通らせることにより作られる。得られた含浸繊維補強剤は、成形構成品を形成するために、単独でまたは他の材料、例えば、さらなる量の同じまたは異なるポリマー、樹脂前駆体、混合物とともに使用されることとしてもよい。この技術は、欧州特許第A−56703号、欧州特許第A−102158号、および欧州特許第A−102159号に、より詳細に記載されている。
【0093】
さらなる手順は、不完全な硬化組成物をフィルムに、例えば、加圧成形、押し出し、熱相転換法、またはベルト鋳造により形成し、混合物を流し繊維を含浸するのに十分な温度と圧力の条件にて、例えば、比較的に短い繊維の不織マット、織布、または実質的に連続する繊維の形態で、繊維補強材にそのようなフィルムを積層し、得られた積層品を硬化することを含む。
【0094】
含浸繊維補強剤のプライは、特に、欧州特許第A−56703号、欧州特許第A−102158号、欧州特許第A−102159号のうちの1つまたはそれ以上の手順により作成されるものは、例えば、オートクレーブ、真空、加圧成形または加熱ローラーのような加熱および加圧により、熱硬化樹脂の硬化温度を超える温度で、または硬化がすでに起こっている場合には、便宜的には少なくとも180℃および典型的には200℃までの、混合物のガラス転移温度を超える温度で、特に1barを超える圧力、好ましくは1〜10
barの範囲の圧力で、ともに積層され得る。
【0095】
得られた多層積層物は、繊維が連続し、一方向性であって実質的に互いに平行に配向される、異方性であり得、または各層で繊維が斜めに配向される、準等方性であり、ほとんどの準等方性積層でそうであるように便宜的には45°であり、プライの上下における層に対しては、例えば30°、60°、90°、または中間の角度であり得る。異方性と準等方性の中間の配向および組み合わされた積層が用いられることとしてもよい。適切な積層は、少なくとも4つの、好ましくは少なくとも8つのプライを含む。プライの数は積層の適用により、例えば、必要とされる強度、32またはそれ以上の例えば数百のプライを含む積層が望ましいこととしてもよい。上述のように、層間には集合体があることとしてもよい。織布は、準等方性、または異方性と準等方性の中間の一例である。
【0096】
硬化性ポリマー組成物は、その中でまたはその上で樹脂組成物を硬化することを意図する鋳型または成形型を構成する材料が多少なりとも感熱するより低い温度で、適切に適用され、硬化される。
【0097】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書に定義される硬化性ポリマー組成物を、それを形成する適切な鋳型もしくは成形型に配置すること、または同様の状態に配置すること、組成物を適切な圧力で、例えば大気圧で所望の上昇した温度に供すること、および本明細書に上述した必要な期間温度を維持すること、を含む熱硬化樹脂組成物の製造ための方法が提供される。
【0098】
本発明のさらなる態様によれば、例えばオートクレーブ、圧縮成形、または加熱ローラーによって、ポリマー組成物の硬化温度を超える温度で、熱および圧力で互いに積層された本明細書で定義されるプリプレグを含む複合体が提供される。
【0099】
本発明のさらなる態様によれば、1〜40GHzの範囲のうちの1つまたはそれ以上のレーダー周波数帯域における吸収能を有するレーダー吸収複合体であって、本明細書に定義される樹脂組成物または本明細書に定義される硬化性ポリマー組成物から誘導され得る樹脂組成物を含む1つまたはそれ以上の層を有するレーダー吸収複合体を提供する。本明細書に定義されるように、レーダー周波数帯域は、1つまたはそれ以上のL帯域(1〜2GHz)、S帯域(2〜4GHz)、C帯域(4〜8GHz)、X帯域(8〜12GHz)、Ku帯域(12〜18GHz)、K帯域(18〜26,5GHz)、およびKa帯域(26,5〜40GHz)から選択される。本発明の一実施形態では、X帯域でレーダーを吸収可能なレーダー吸収複合体が提供される。
【0100】
本明細書に定義されるように、各層は、異なる硬化性ポリマー組成物由来であることとしてもよく、または異なる繊維補強材またはフィラーを有することとしてもよい。各層は、本明細書に定義されるように、単層ラミネートまたは多層ラミネートであることとしてもよい。
【0101】
レーダー吸収複合体は、選択された周波数の範囲で、電磁的反射を低減する/最小化する、目的に合わせた複合誘電率と厚さを有する、単一の吸収層1であることとしてもよく(
図1)、本明細書に定義される樹脂組成物または本明細書に定義される硬化性ポリマー組成物から誘導され得る樹脂組成物を含む例の層3、4、5(
図2)のような多層吸収体であってもよい。多層吸収体は例えば、低い比誘電率を有する層3、および吸収体の直交する方向に沿って増加する複合誘電量を有する連続する層4、5を含む。吸収体の各層は、本明細書に定義される熱硬化樹脂組成物および異なるナノフィラー含有物を含むこととしてもよい。
【0102】
組成物をそのままで、または繊維もしくはフィラーで補強された複合材として用いることとしてもよい。繊維補強材は、好ましくは、石英または「E」、「A」、「E−CR」、「C」、「D」、「R」および、「S」ガラスのようなタイプのガラスのような、低い比誘電率を有する繊維を含む。繊維は連続していてもよく、例えば一方向性に繊維、織布、組まれた、編まれた、または不織の布を配置して、プリプレグを形成することとしてもよく、マット、織物、ベール等の形態であることとしてもよい。本発明の一実施形態では、Astroquartz織布を用いることができる。
【0103】
組成物は、向上した吸収能を提供するための、または、さらにレーダー吸収材料の厚さを低減するための、磁性フィラーをさらに含むこととしてもよく、磁性フィラーは、カルボニル鉄粉末、フェライト、ヘキサフェライト、金属磁性ナノ粒子およびナノ結晶のような金属磁性微粒子を含むこととしてもよい。
【0104】
本発明のさらなる態様によれば、1〜40GHzの範囲における1つまたはそれ以上のレーダー周波数帯域で低減されたレーダー断面積を有するレーダー吸収パネルを提供し、レーダー吸収パネルは本明細書に定義されるレーダー吸収複合体および高導電性基板2を含み、そのような高導電性基板は、好ましくは構造炭素繊維補強複合体である。そのような構造物は、特にシグネチャーコントロール性能および低減されたレーダー断面積を有する耐荷重性または耐衝撃性構造の製造に適する。
【0105】
本発明は、従来のプリプレグ技術による、また、(例えば、米国特許出願第2004/0041128号に記載されているような)樹脂注入技術による、複合体の製造に適用し得る。樹脂注入は一般的な用語であり、樹脂トランスファ成形(RTM)、液体樹脂注入(LRI)、真空補助樹脂注入成形(VARTM)、可撓性成形用具下での樹脂注入(RIFT)、真空補助樹脂注入(VARI)、樹脂フィルム注入(RFI)、制御された大気圧樹脂注入(CAPRI)、VAP(Vacuum assisted Process)、およびシングルライン注入(SLI)のような処理技術を包含する。本明細書に記載される複合体は、特に、参照によりその開示が本明細書に組み込まれる米国特許出願第2006/0252334号に記載された樹脂注入処理で、樹脂可溶性熱可塑性物質のベールの使用により形成された複合体を含む。一実施形態では、複合体は樹脂注入により製造され、構造補強繊維(ドライ)および樹脂可溶性熱可塑性物質のベールエレメントを含む支持構造物が、バッグ、鋳型、または成形型に配置され、予備成形物を提供し、硬化性樹脂マトリックス組成物を、複合構造補強繊維およびベールに直接注入し/流し込み、その後硬化させる。
【0106】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で上述した組成物、プリプレグ、または複合体を含むまたはこれらに由来する、熱可塑(thermoplast)または熱可塑変性、熱硬化樹脂形態生成物、特に本明細書で上述したような方法により得られるものを提供する。
【0107】
本発明の組成物は、複合材に対する、向上した導電率の付与が求められるあらゆる分野における利用性を見出す。本発明の一実施形態によれば、導電率の向上は、従来の炭素繊維補強材料に比べて1桁またはそれ以上である。導電率におけるより大きな向上は、導電性補強材を含まない複合材に付与される。
【0108】
本発明の組成物は、選択された周波数の範囲で目的に合わせた誘電量が求められる、複合体成分に対するシグネチャーコントロール性能の付与が求められる、または電磁的環境の制御が求められる、あらゆる分野における利用性を見出す。例えば、風力タービン翼の高先端速度および大きなレーダー断面は、航空交通管制、航行、天候モニタリングに使用されるレーダーシステムに影響を与え得る。よって、風力タービン翼のレーダー断面の低
減は、例えば、空港の近くのウインドファームおよび沖合設備の重要な要件である。さらに、低減されたレーダー断面積を有する航空機複合体構造物は、電磁波の伝播の制御、および搭載されたアンテナにより発生したシグナルに対する散乱現象および攪乱の低減を可能とする。さらに、本発明の組成物は、低視認車両用の複合体構造物における利用性をも見出す。本発明は、低レーダー断面を必要とする、レーダー吸収複合材および構造物の作成を可能とする。
【0109】
本発明は、例えば、一次および二次航空機構造物、並びに、宇宙および飛行物体の構造物を含む、(航空宇宙、航空、船舶、および自動車、鉄道、バス(coach)産業を含む陸上車を含む)輸送用途での使用に適する部品の製造に適用される。そのような構造部品は、複合体翼構造物を含む。本発明は、建築物/構造物の用途および他の商業的用途における利用性を見出す。本明細書に記載されるように、本発明の組成物は、特に耐荷重性または耐衝撃性構造物の製造に適する。
【0110】
本発明は、以下の例を参照して、限定されない態様で説明される。
【実施例】
【0111】
測定方法
本発明の組成物は、以下に記載される方法を用いて特徴づけられる。
【0112】
導電率
硬化したプラークおよび複合体の導電率を、ブリッジ法における印加電圧と電流間の比として抵抗値を記録するBurster−Resistomat 2316ミリオーム計を用いて測定した。Kelvin test Probesを使用して、2つのサンプル表面間の接触を作成した。全ての測定は、4端子測定法にそって、標準湿度状態の室温で行われた。
【0113】
樹脂系の導電率は、平らで、滑らかで、均一なプラークから抽出された硬化樹脂クーポン(coupon)で測定された。約3mm厚さの四角いクーポン(辺長=40mm±0.1mm)が特徴づけられた。市販の銀ペーストを用いて、2つの電極を対抗するクーポンの表面に作成した。
【0114】
複合体のz方向の導電率は、EN2565方法Bに沿って準備された無欠陥パネルから抽出されたクーポン上で測定された。約2mm厚さの準等方性の正方形サンプル(辺長=40mm±0.1mm)が特徴づけられた。
【0115】
複合体の試料の表面は、上部の樹脂に富む層を除いて、その下の炭素繊維を露出することにより準備し、電極との直接的な接触を確保した。その後、市販の銀ペーストを用いて、2つの電極を対抗するクーポンの表面に作成した。
【0116】
1つの材料および積層材あたり、少なくとも5つのサンプルが試験された。
【0117】
DC電気的伝導性を、以下の式に沿って[S/m]で算出した。
【数1】
ここで、Rは測定した抵抗[Ohm];
lはサンプルの厚さ[m];
Sはサンプルの表面面積[m
2]である。
【0118】
8〜12GHz周波数範囲における複合誘電率
硬化樹脂組成物で電磁的データを測定した。液体樹脂は、6mmの厚さを有する標準的な矩形のアルミニウムWR90フランジに流し込み硬化した。硬化樹脂のサンプルを含む長方形のフランジを、その後導波管ATM WR90−120 A−666によりネットワーク解析装置Anritsu 37347Cに接続し、8〜12GHzの周波数範囲でスキャンした。効果的な複合相対誘電率ε
effは、一般的に、実数と虚数の部分(それぞれ、ε’およびε’’)で表されている。8〜12GHzの周波数範囲における誘電率の実数と虚数の部分は、サンプル全体にわたって反射したシグナル、S11、および透過したシグナル、S21の測定から算出される。
【0119】
自由空間条件におけるレーダ吸収
レーダー吸収効果の測定を40cm×40cmの四角い試料で行った。テストセットアップは、標準的な四角い導波管ATM WR90−120 A−666により、ホーンアンテナATM90−441−6に接続したネットワーク解析装置Anritsu 37347Cを含む。アンテナを、パネルの前に配置し、自由空間条件におけるパネルから反射したEMシグナルのエミッタおよびレシーバーとして使用した。下記の式を用いて、各周波数で反射係数を算出した。
Γ
dB(f)=20
*log
10(Γ(f))
ここで、Γ=|Γ
p(f)/Γ
m(f)|は、テストパネルで測定した反射係数Γ
p(f)間の比および参照金属板で測定した反射係数Γ
m(f)である。
【0120】
8〜12GHzの間での周波数範囲をスキャンした。
【0121】
形態
形態は、Field Emission Gun−Scanning Electron Microscopy(FEG−SEM)を用いて測定した。SEM分析の前に、試料を5分間液体窒素中の状態にし、破砕してクリアな破面を得た。試料を、その後Quorum Technologies SC7620イオンスパッタ装置により金膜で覆い、LEO152 Gemini 1525 FEG−SEMにより実験した。得られた形態分析を、均一なものまたは相分離したもののいずれかとして分類した。相分離では、形態を以下のように分類した。
(i)マクロ相分離:樹脂系の不均質を目で視認可能である。樹脂はマクロスケールで不均質である。
(ii)ミクロンサイズの形態:樹脂はマクロスケールで均質であるが、SEMにより精査すると、ミクロンスケールで不均質を示す(特に1〜100μm)。
(iii)サブミクロンサイズの形態:樹脂はマクロスケールで均一である。SEMにより精査すると、20nmより大きく1μmまでの寸法の第2の相を示す。
【0122】
ミクロンサイズおよびサブミクロンサイズの形態は、それらの構造物に応じていずれかに分類されることとしてもよい:
(a)共連続体:熱硬化性マトリックスの2つの完全に入り組んだ連続相で形成される第2の相を表すもの(つまり、無限クラスタ)。その系は、相互侵入高分子網目(interpenetrated polymer network:IPN)として表すこともできる。
(b)半連続:連続熱硬化性マトリックス内の分断連続網目(つまり、有限クラスタ)を形成する第2の相を表すもの。その系は、半高分子網目(semi−IPN)として表すこともできる。
(c)微粒子体:第2の相が微粒子に分散する形態を表すもの。微粒子は、分散するかまたは集合して連続網目を形成することとしてもよい。微粒子形態は「海島型(islan
ds−in−the−sea)」構造物であって、海が連続する樹脂マトリックスに対応し、島が微粒子に対応するものとして表すこととしてもよい。
【0123】
微粒子サイズ
微粒子サイズ分布を、0.02μm〜2000μmの範囲で操作されるMalvern
Mastersizer2000を用いて測定した。
【0124】
ガラス転移温度
ガラス転移温度は、サンプルが、振動変位に供されたときに、温度の上昇とともに機械的に劇的な変化および減衰挙動を示す温度として定義される。Tgオンセットは、ガラス転移事象発生の前後の貯蔵弾性率曲線(storage modulus curve)の観点から記載される外挿タンジェントの温度交点(intersection)の温度として定義される。試験は、単一片持曲げモードで、約50℃〜300℃の温度の範囲、5±0.2℃/分の加熱率および1Hzの周波数にて、TAQ800を用いて行われた。これらの試料は試験され、Tgの結果がこれらの平均の±2℃以内であった。
【0125】
破壊靱性
ASTM D5045−99スタンダートによる小型引張(CT)方法を用いて、硬化したエポキシの破壊靱性を測定した。CT試料は、基準寸法41.2×39.6×5mmを有した。鋭い予亀裂をレザーブレードタッピング方法により各CT試料に入れ、残留応力の影響および亀裂まわりの塑性変形を最小限にした。ASTM D5045−99一定の負荷速度10mm/分を推奨するものとして適用した。A MTS 60484(最大1.8mm)伸縮計を使用して亀裂開口変位を測定した。
【0126】
実験
I:CNT変性熱可塑性ポリマーの調製
3つの異なる濃度のNanocyl(登録商標)NC7000多壁カーボンナノチューブ(90%C純度;9.5nm平均直径,1.5μm平均長さ;ベルギーのNanocylより入手)を、二軸押出機における融解混合処理を介して、アミン末端ポリアリールエーテルスルホン熱可塑性物質(本明細書で成分(A)として定義される、分子量9000〜12000のPES:PEESコポリマー)に分散した。同じポリアリールエーテルスルホンの純粋なサンプルを対照として使用した。ナノフィラーの完全性を損傷することなく分散レベルを最適にする筒内で、せん断力と圧力との間の最適なバランスを形成するためのカオス混合ユニットに伴う従来の混合セグメントを含む、高せん断力スクリュー性が用いられた。温度プロファイルおよび使用した処理条件を表1.Aに報告する。
【0127】
【表1】
【0128】
得られた化合物をペレット化し、Collin P300 P加熱平衡プレートプレスを用いて、その後円柱状の鋳型(直径=5cm;2mm厚さ)内で硬化した。1つの混合物あたり5つの試料を、その後、上述のように試験した。対応する導電率の結果を表1.B.に報告する。
【0129】
【表2】
【0130】
結果は、比較的低いMWCNT含有量での、ポリアリールエーテルスルホンの電気的伝導性の劇的な向上における分散方法の効果を証明する。具体的には、15桁分よりも大きな向上が10%w/wナノフィラーの装填で達成された。
【0131】
II:CNT変性硬化エポキシ樹脂の調製
このように、例1bおよび1cのサンプルは、異なる回転粉砕媒体を備えるAlpine低温ミルシステム用いて、90μm未満の平均粒度に低温粉砕される。具体的には、目標微粒子サイズ分布を達成するために、スタッド(stud)、ビーター(beater
)、旋回ビーター、プレートビーターを用いる複数のパスが必要とされる。CNT変性熱可塑性物質を、硬化剤(Aradur 9664; Huntsman)を加える前に、配合物のエポキシ成分に溶解した(Araldite MY0510およびAraldite PY306;Huntsmanより)。サンプルを、硬化前に180℃で3時間脱気し、例2aおよび2bを産生した。対照配合物を同様に硬化した。2つのさらなる実験では、熱可塑性物質(PES:PEESコポリマー)の溶解および硬化剤(Aradur9664;Huntsman)を添加する前に、高速回転インペラミキサーを用いて、同様の配合物を、同じ濃度で同じMWCNTをエポキシ樹脂(Araldite MY0510およびAraldite PY306; Huntsman)に直接分散することにより調製した。得られた配合物を、その後、同様に脱気して硬化した。10GHzでのDC電気的伝導性および誘電率の結果を表2.A.に報告する(「TP」は「熱可塑性物質」を表す。)。
【0132】
【表3】
【0133】
結果は、ナノフィラーが熱可塑性ポリマーで前処理されている場合、ナノフィラーがエポキシ配合物に直接分散されているサンプルと比較して、エポキシ樹脂へのナノフィラーの分散がより効果的であるということを証明する。例2bは、非変性サンプルと比較して、15桁分よりも大きく硬化樹脂の導電量を向上し、最もよい結果をもたらした。例2aおよび2b配合物の硬化サンプルのFEG−SEM顕微鏡写真を示す
図3および
図4では、評価したMWCNT濃度の両方で、達成された優れたレベルの分散を確認した。
【0134】
大きなナノチューブの集合体(40〜70μm)が、同じ濃度で同じナノフィラーを含む例2cおよび2dの硬化した配合物の代わりに明確に視認可能である(
図5および
図6)。顕微鏡解析は、処理および硬化中に再凝集することなく、熱硬化樹脂組成物における最適なナノフィラー分散レベルを達成する、ポリアリールエーテルスルホン(polyarylethersulfone)分散方法の効率性をさらに証明する。
【0135】
複合誘電率は、本明細書に記載される方法を用いて測定された。結果は、
図7a(誘電
率(ε’)の実数の部分)および
図7b(誘電率(ε’’)の虚数の部分)に、周波数の関数として示される。
【0136】
樹脂におけるナノフィラーのポリアリールエーテルスルホン(polyarylethersulfone)補助分散は、実数および虚数部分の両方における、実質的な向上を確認する。複合誘電率の虚数部分は、エネルギー散逸に直接関連し、ポリアリールエーテルスルホン(polyarylethersulfone)/MWCNT変性系の場合に、ナノフィラーがエポキシ配合物に直接分散されているサンプルと比較して、一層速くフィラー内容物の機能として増加するということがみとめられた。そのような結果は、本発明に開示される分散方法により達成される、よりよい分散レベルに基づいて説明することができる。比較的低いCNT含有量で達成される複合誘電率の虚数部分のより高い値は、設計者に、強力な成形型を提供して、厚み低減することができ、それによる単位重量および多層電磁波吸収体の重量を低減することができる。
【0137】
硬化樹脂組成物の熱特性におけるMWCNT/PES:PEES分散の影響を、Dynamic Mechanical Analysis(DMA)により評価した。
【0138】
例2bおよび対照2の組成物は、脱気し、180℃で3時間硬化した。一配合物あたり3クーポンを無欠陥プラークから抽出した。
【0139】
ポリアリールエーテルスルホンMWCNT分散の使用は、実質的に変性硬化樹脂のガラス転移温度に影響しない。1℃未満の差が、非変性(対照2)およびCNT変性(例2b)配合物間で測定された。
【0140】
硬化樹脂組成物の破壊靱性(K
Ic)へのMWCNT PES:PEES分散の影響を、本明細書に記載されるCompact Tension(CT)法に従って評価した。ポリアリールエーテルスルホンMWCNT分散の使用は、例2bのように、実質的に変性系の破壊靱性値に影響しない。5%未満の差が、対照2の性能と例2bのMWCNT変性配合物の性能間で観察された。
【0141】
III:繊維補強複合体サンプルの調製
例2bの樹脂系を用いて、シリコン剥離紙上でフィルムにした。得られた樹脂フィルムを、パイロットスケールのUD樹脂浸透加工材を用いて、一方向性の中間弾性率炭素繊維上で含浸させ、樹脂含量38%にて、196g/m
2繊維範囲重さでプリプレグを産生した。
【0142】
テストパネル(本明細書では例3を指す)を、180℃、3時間で8つのプライのプリプレグ(準等方性積層材)をオートクレーブにて硬化するEN2565に従って製造した。
【0143】
効果を比較するために、対照2の樹脂系を用いて、同一形状の一方向性のテープおよびテストパネル(対照3)を別の方法で準備した。得られた複合体サンプルにおけるDC電気的導電量を、4端子電圧−電流測定法に従ってその後測定した。結果を表3.Aに示す。
【0144】
【表4】
【0145】
例3および対照3に従って製造したバッチにて、様々な機械的試験を行い、その結果を表3.Bに示す。
【0146】
【表5】
【0147】
全ての試験および表にした物理的特性は、本明細書に別段の記載がない限り、または、参照した試験方法および手順に記載がない限り、大気圧および室温(つまり20℃)で測定された。本願に開示したアプローチを用いたNC7000MWCNTの3%までの分散は、構造複合材の機械的特性における注目に値する影響を有していないといえる。
【0148】
IV:単層EM吸収パネルの準備
4つの異なる濃度の多壁カーボンナノチューブ(98%C純度、平均径15nm、Future Carbon(登録商標)、ドイツより入手)を、例Iに記載される手順にしたがって、溶解混合処理を介して、アミン末端ポリアリールエーテルスルホン熱可塑性物質(成分(A)に関して本明細書で定義される分子量9000〜12000のPES:PEESコポリマー)に分散した。
【0149】
【表6】
【0150】
得られた化合物をペレット化し、異なる回転粉砕媒体を備えるAlpine低温ミルシステムを用いて90μm未満の平均粒度に低温粉砕した。CNT変性熱可塑性物質を、硬化剤(Aradur9664;Huntsman)の添加前に、表4.Bに報告する配合物のエポキシ成分(Araldite MY0510およびAraldite PY306;Huntsmanより)に溶解した。
【0151】
【表7】
【0152】
得られた組成物を脱気し、WR90矩形フランジに流し込み、180℃で3時間硬化した。
【0153】
例4e、4f、4g、および4h並びに対照2に記載される配合物に関する、周波数の関数としての誘電率の実数(ε’)と虚数(ε’’)部分を
図8aおよび
図8bにぞれぞれ報告する(誘電率の虚数部分)。実験結果は、誘電率における制御された増加は、8〜12GHzの周波数の範囲で多壁カーボンナノチューブ含有量の増加を達成できるということを証明する。本明細書に記載されるポリマー分散方法は、フォーミュレータに、ナノフィラー濃度と、その後の変性樹脂系の複合誘電率を細かく調節するための強力なツールを提供する。
【0154】
例4cに報告する樹脂系は、まずシリコン剥離紙上でフィルムにされ、その後Astroquartz(登録商標)III 8−Harness Satin繊維を含浸させるために用いて、樹脂含量38%w/wにて、285g/m
2繊維範囲重さでプリプレグを産生した。12のプライを積層し、6atmの圧力にて180℃で3時間、オートクレーブにて硬化し、3mmの基準厚さで複合体パネルを産生した。第2の繊維補強準等方性[QI]
2s複合体パネルを、例3(対照3)に記載される、8つのプライの一方向性のプリプレグと同じ条件で硬化して製造し、対照2の樹脂で中間弾性率繊維を含浸することにより産生した。単層レーダー吸収パネルを、
図1の相互に結合する2つのパネルの概略図に従って、FM(登録商標)300−2M 0.030psf接着剤フィルム(Cytec
Engineered Materialsより入手)を用いて、121℃、90分のオートクレーブにて産生した。
【0155】
図9は、本明細書に記載される自由空間条件で測定された複合体パネルの反射損失を報告する。複合体パネルは、10GHzで約30dBの最大値で、8〜12GHz帯域全体にわたって10dBよりも大きい吸収効率性を示した。この結果は、本願発明の使用に関し、一般的には申し分のないものであると考えられる。
【0156】
効果を比較するために、対照2の樹脂系を用いて、別の方法で同一の予め含浸したAstroquartzファブリックおよびテストパネル(対照5パネル)を準備した。対照
5のパネルを、その後、上記FM(登録商標)300−2M 0.030psf接着剤フィルムを用いて、同一の準等方性炭素繊維補強パネルにて互いに結合した。測定した吸収効率性は、測定された周波数の範囲で(8〜12GHz)2dB未満であった。
【0157】
記載されている本発明の構造物の性能は、同じ厚さおよび構造を有するパネル(対照6)では達成することはできない。
【0158】
樹脂マトリックスにおけるCNTのCNTポリマー補助分散は、変性樹脂組成物およびプレ含浸材料の誘電量を精度よく制御する可撓性成形型を提供し、軽量な構造EM吸収パネルの設計と製造を可能とする。
【0159】
V:比較例5:エポキシ樹脂前駆体における乾燥CNTの分散
エポキシ樹脂系の電気的伝導性を高める可能性を、市販のカーボンナノチューブ生成物を用いて調査した。ナノチューブを、樹脂系の様々な濃度のエポキシ成分で混合し、その後、ソニケーションまたは3回の高せん断力ロールミルのいずれかを用いて分散した。
【0160】
比較例5a〜5b
比較例に関し、対照2の配合物を、目的ナノフィラー濃度に応じて、例1cの異なる含有量のポリアリールエーテルスルホン(polyarylethersulfone)/CNTプレ分散を用いて変性した。
【0161】
比較例5c〜5d
Nanocyl(登録商標)NC3100(MWCNT;外径9.5nm;95+%純度)を、Hielscher UP200Sソニケーター(24kHZ;室温;30分で操作)を用いて、報告した配合物のエポキシ樹脂に分散した。
【0162】
比較例5e〜5f
NanoAmor(登録商標)MWCNT(内径5〜10nm;外径50〜100nm;95%純度;米国のNanostructured&Amorphous Materials Incより入手)を、Cole Parmer 750Wソニケーター(20kHZ;振幅=37%;パルス=3秒ON,1秒OFF;室温;30分で操作)を用いて、報告した配合物のエポキシ樹脂に分散した。
【0163】
比較例5g〜5h
NanoAmor(登録商標)MWCNTを、Exaktトリプルロールミルを用いて2回通し、報告した配合物のエポキシ樹脂に分散した。1回目の通過では、最初の隙間は15μm、2番目の隙間は5μmであった。2回目の通過では、最初の隙間は5μmであり、1μm未満の2番目の隙間を維持するために力を加えた。
【0164】
比較例5a〜5hのそれぞれに関し、その後、硬化剤をエポキシプレ分散物に100℃で添加し、得られた系を脱気して180℃で3時間硬化した。硬化したサンプルの導電率を、その後、本明細書に記載する試験に従って測定した。同様に硬化した対照2のサンプルの導電率は1×10
-14S/m未満であった。
【0165】
【表8】
【0166】
高純度Nanocyl(登録商標)NC3100により変性したサンプルは、NanoAmor(登録商標)MWCNTサンプルよりもよい導電率を示した。同じ基準の炭素純度(>95%)分散方法および条件を用いたので、性能の違いは、異なるナノフィラーの縦横比および合成方法に帰する可能性がある。超音波処理したNanoAmor(登録商標)サンプルは、粉砕したNanoAmor(登録商標)サンプルよりもわずかによい導電率を示し、これは、低い分散レベルまたは高せん断力粉砕処理中におけるMWCNTへの損傷の結果であり得る。しかしながら、一般的には、濃度が0.2%w/wを超えるMWCNTに関し、約11〜12桁の間での導電率の増加が観察された。達成された最良の導電率は、約1.5×10
-2S/mであり、それは、ソニケーションによりエポキシ成分に分散された、1%w/wの濃度の高純度(>95%)Nanocyl(登録商標)3100MWCNTで観察された。
【0167】
本発明における例に関し、上記表5.Aに報告される導電性は、比較例5bに対して、エポキシ樹脂マトリックスにCNTが分散しているポリアリールエーテルスルホン熱可塑性ポリマーの効果を証明する。実際には、1%w/wCNT充填にて、1.4×10
-1S
/mまでのかなり高い導電量が、低純度ナノフィラー(90%)で達成された。
【0168】
VI: 比較例6:エポキシ樹脂前駆体におけるCNTのプレ分散
いくつかのエポキシ樹脂前駆体におけるカーボンナノチューブのプレ分散が市販されており、一連の実験は以下の製品を用いて行った:
(A):EpoCyl(登録商標)NC E128−02(ビスフェノールAエポキシにおけるNC7000 MWCNT(90%C純度)マスターバッチ;Nanocyl(登録商標));
(B):EpoCyl(登録商標)NC E1MY−02(TGMDA(テトラグリシジルメチレンジアニリン)エポキシにおけるNC7000 MWCNT(90%C純度)マスターバッチ;Nanocyl(登録商標));
(C):Graphistrength CS1−25ペレット(ビスフェノールAエポキシにおける25%w/wMWCNT(90%C純度)マスターバッチ;Arkema(登録商標))。
【0169】
これらの分散を用いて、対照2の樹脂系における全てのまたは部分的なエポキシ成分を置換した。比較例6aに関し、EpoCyl(登録商標)NC E128−02を、唯一のエポキシ成分として配合物に用い、生成物の最大限の可能性を評価した。比較例6bに関し、分離におけるプレ分散は、試みたあらゆる温度および真空条件でも処理できなかったので、比較例6aのビスフェノールAエポキシ分散を組み合わせて用いた(50:50w/w)。硬化剤を全てのエポキシ混合物に100℃で加え、180℃で3時間の硬化前に、混合物を真空下にて脱気した。その後、本明細書に記載される手順により、導電率についてサンプルの試験をした。
【0170】
【表9】
【0171】
比較例6aおよび6bに関し、得られた最良の導電量はそれぞれ6×10
-6S/mおよび3×10
-11S/mであり、よって、本発明の組成物よりも有意に低い。
【0172】
比較例6c.1、6c.2、6c.3に関し、Arkema Graphistrength(登録商標)CS1−25エポキシプレ分散を異なる濃度で用いて、目的MWCNT含有量に応じて、対照2の樹脂系におけるエポキシ成分の二官能の部分が置換された。よい導電率の向上を、エポキシ樹脂における最終濃度が3%w/wCNTであるサンプルについて観察される最大0.3S/mで測定した。
【0173】
図10は、例6c.2配合物の硬化したサンプルのFEG−SEM顕微鏡写真を示す。不連続のパーコレーションネットワークが観察されたものの、エポキシ樹脂の組成物におけるナノフィラーを適切に分散するCS1−25エポキシ/MWCNTマスターバッチの非効率性を証明する、20〜40μmの範囲の大きなMWCNT凝集体が明確に見られた。
【0174】
結果は、本発明の組成物は、比較的高価なマスターバッチに頼る必要性がなく、従来技術よりもずっとよく導電量の達成に機能するということを示す。開示された技術は、フォーミュレータに、高い濃度のMWCNTによる特別な利益を提供する。従来の混合装置を用いる、および標準的なプリプレグ製造方法中の、樹脂配合物におけるMWCNT導入の効果的な制御の可能性により、処理の利益をも提供する。
【0175】
VII:比較例7:エポキシ樹脂にCNTを運ぶための従来の熱可塑性ポリマーにおけるCNTのプレ分散
静電気放電(ESD)保護アプリケーション用に設計された熱可塑性物質ターポリマー(スチレン/ブタジエン/メチルメタクリレート)における高配合(約30%w/w)のMWCNTを有するGraphistrength(登録商標)C M13−30(Arkema,France)は市販のマスターバッチである。表に報告した樹脂系のエポキシ成分に、超音波破砕(Cole Parmerソニケーター 130℃の操作温度を除いて上述のように操作した)しながら溶解した、異なる濃度のC M13−30マスターバッチを用いて一連の実験を行った。総樹脂系組成物に対するMWCNTの濃度は、0.5〜3%w/wの範囲であった。
【0176】
硬化剤をその後添加して、得られた系を脱気して、180℃で3時間硬化した。その後、本明細書に記載される手順に従って、導電率についてサンプルの試験をした。
【0177】
【表10】
【0178】
パーコレーション閾値は、約1.2%w/wより高いMWCNT濃度でのみ達成された。達成された最も高い導電性は、3%w/wCNT充填でたった約2×10
-1S/mであった。比較的小さい導電率の増加は、樹脂配合物におけるマスターバッチの最適以下の適合性により達成し得るのが不十分な分散レベルであること、ナノフィラーとメタクリレートポリマー間の制限された相互作用または相互作用がないことの結果であるかもしれない。
図11は、例8aの硬化サンプルのFEG−SEM顕微鏡写真を示す。硬化した系は、樹脂マトリックスに分布するマイクロメートルの熱可塑性物質ドメインで微粒子形態を示す。樹脂マトリックスにおける、ナノフィラーの制限された分散および少ない分布の結果として3〜5μmの範囲のサイズを有するMWCNT凝集体が明らかにみられた。
【0179】
本発明の例に関し、表2に報告される導電量は、エポキシ樹脂マトリックスにCNTを分散したポリアリールエーテルスルホン熱可塑性ポリマーの比較例7に対する効果を証明する。
【0180】
VIII:比較例8:エポキシ樹脂にCNTを運ぶための熱可塑性ポリマーへのCNTの分散
一連の実験は、例1〜5で用いたポリアリールエーテルスルホン熱可塑性ポリマーを、エポキシ樹脂系の導電率を増加させる性能に関する市販の熱可塑性物質強化剤と比較するために行われた。用いた熱可塑性物質(TP)はポリイミド(Matrimid(登録商標)9725;Huntsman)およびポリエーテルイミド(Ultem(登録商標)1000;GE Plastics)であった。熱可塑性物質における10%w/wCNT濃度を実験全体で用いた。Nanocyl NC7000工業用MWCNTs(90%C純度)を、24mm連れ回りツインスクリューを備えるPrism押出機を用いて、40:1のL/D比で熱可塑性ポリマーに分散した。表8.Bに報告する温度プロファイル
は、筒に沿って最適なせん断/圧力量を確保するため、熱可塑性物質マトリックスにおける最適なナノフィラー分散レベルを確保するために開発された。
【0181】
【表11】
【0182】
【表12】
【0183】
CNT変性熱可塑性物質は、硬化剤の添加前に、上記例2に記載されている樹脂系のエポキシ成分と組み合わされた。その後、サンプルを、180℃で3時間の硬化前に脱気した。導電率を、本明細書に記載する方法により測定した。各CNT変性硬化エポキシ樹脂系の結果を以下表8.Cに示す。
【0184】
【表13】
【0185】
結果は、市販のポリイミドおよびポリエーテルイミド熱可塑性物質強化剤に対して、ポリアリールエーテルスルホンがエポキシ樹脂におけるCNTの分散に用いられたサンプルの増加した導電率を証明する。
【0186】
IX:比較例9:エポキシ樹脂にCNTを運ぶための熱可塑性ポリマーへのCNTの分散
一連の実験は、エポキシ樹脂系の導電率の増加性能について、例1〜5で用いたアミン末端ポリアリールエーテルスルホン熱可塑性ポリマーを、100%非反応性塩素末端ポリアリールエーテルスルホン(polyarylethersulfone)強化剤と比較するために行われた。中程度に過剰な活性化した芳香族ハロゲン化物を用いて、100%末端ハロゲン化基を有するポリマーを産生するために、国際公開第9943731A2号に記載の手順に従って熱可塑性物質を合成した。
【0187】
2つの異なる濃度のNanocyl(登録商標)NC7000多壁カーボンナノチューブ(90%C純度;平均径9.5nm,平均長さ1.5μm;Nanocyl(登録商標)、ベルギーより入手)を、例1に記載の融解混合処理を介して塩素末端ポリエーテルスルホン熱可塑性物質(分子量15〜18KのPESポリマー)に分散した。用いた温度プロファイルおよび処理条件は表9.Aに報告する。
【0188】
【表14】
【0189】
【表15】
【0190】
CNT変性熱可塑性物質を、硬化剤の添加前に、例2に記載される樹脂系のエポキシ成分と組み合わせた。その後、サンプルは、180℃で3時間硬化する前に脱気した。導電率を本明細書に記載する方法に従って測定した。各CNT変性硬化エポキシ樹脂系の結果を、下記の表9.Cに示す。
【0191】
【表16】
【0192】
結果は、非反応性塩素末端ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)に対する、エポキシ樹脂におけるCNTの分散に特許請求の範囲の記載される反応性ポリアリールエーテルスルホンを用いたサンプルの増加した導電率を証明する。
【0193】
X:in−situ重合ルートを介したポリエーテルスルホン(polyethersulfone)/CNT分散の準備
1gの単壁カーボンナノチューブ(Thomas Swan;英国)を、100mlのスルホランを含む容器に加え、ソニケーターを用いて分散した。ソニケーターマイクロチップは、懸濁液に約1cm浸漬し、37%振幅に設定した。プローブを3秒オンにし1秒オフにして振動させた。これを4時間行い、そのため、合計の振動がオンの時間は3時間となった。この材料は、本明細書に組み込まれる国際公開第9943731A2号の例1.1に記載されている合成ルートを用いたPES:PEESコポリマーの合成のために溶剤の200mlの半分として用いた。65.000gのジクロロジフェニルスルホン(dichlorodiphenylsulfone)、21.741gのビスフェノールS、14.348gのヒドロキノン、および2.002gのメタアミノフェノールを500mlの反応容器に添加した。100mlのCNT/スルホランのプレ分散は、さらなる100mlのスルホランとともに現段階でなされた。モノマーは、室温にて窒素下で一晩混合した。32.203gの炭酸カリウムを、さらなる50mlのスルホランとともに、混合物に添加した。容器を180℃に加熱し、30分維持し、その後210℃まで上げて1時間維持し、最後に230℃まで上げて4時間維持した。得られた黒色の粘性のある液体ポリマーを水に沈殿させて、熱水で数回洗浄した。洗浄段階では、最終的に灰色の粉末を得た。
【0194】
XI:複合in−situ重合/溶解押し出し経路を介したポリエーテルスルホン(polyethersulfone)/CNT繊維の準備
得られたポリアリールエーテルスルホン(polyarylethersulfone)/CNT分散を、L/D比が40:1の24mm連れ回りツインスクリューを備えるPrism押出機に供給した。表1の例1a/bの報告されるものと同じ温度プロファイルを、筒に沿って最適なせん断/圧力量および熱可塑性マトリックスにおいて最適なナノフィラー分散レベルを確保するために使用した。約100〜200ミクロンの繊維を産生した。