【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度及び27年度、総務省「次世代衛星移動通信システムの構築に向けたダイナミック制御技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
地震等の災害が発生して、地上の無線通信システムに障害が発生した場合等に、通信障害が発生したエリアにおける通信を支援するシステムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、カバーエリアが互いに隣接する第1のビーム、第2のビーム及び第3のビームを含む複数のビームを放射するマルチビームアンテナを制御するアンテナ制御装置であって、複数のビームに対する無線周波数帯の割り当て状態を、第1のビームに第1の無線周波数帯が割り当てられ、第2のビームに第2の無線周波数帯が割り当てられ、第3のビームに第3の無線周波数帯が割り当てられた第1の状態から、第1のビームに第1の無線周波数帯及び第3の無線周波数帯が割り当てられ、第2のビームに第2の無線周波数帯が割り当てられ、第3のビームに第2の無線周波数帯が割り当てられた第2の状態に切り替える、アンテナ制御装置が提供される。
【0005】
上記アンテナ制御装置は、上記第2の状態において、上記第2の無線周波数帯が割り当てられた上記第2のビーム及び上記第2の無線周波数帯が割り当てられた上記第3のビームに同一の通信信号を伝送させてよい。上記アンテナ制御装置は、上記第3のビームに上記第3の無線周波数帯が割り当てられている上記第1の状態において、上記第3のビームによってカバーされる、上記第3の無線周波数帯を用いるカバーエリアに上記第3の無線周波数帯を利用する通信端末が在圏している場合に、上記第3のビームに上記第2の無線周波数帯を追加で割り当て、上記通信端末が上記第3の無線周波数帯から上記第2の無線周波数帯へ周波数ハンドオーバした後に、上記第3のビームへの上記第3の無線周波数帯の割り当てを解除して、上記第2の状態に切り替えてよい。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、カバーエリアが互いに隣接する第1のビーム、第2のビーム及び第3のビームを含む複数のビームを放射するマルチビームアンテナを制御するアンテナ制御装置であって、複数のビームに対する無線周波数帯の割り当て状態を、第1のビームに第1の無線周波数帯が割り当てられ、第2のビームに第2の無線周波数帯が割り当てられ、第3のビームに第3の無線周波数帯が割り当てられた第1の状態から、第1のビームに第1の無線周波数帯及び第2の無線周波数帯が割り当てられ、第2のビームに第2の無線周波数帯が割り当てられ、第3のビームに第3の無線周波数帯が割り当てられた第2の状態に切り替えるアンテナ制御装置が提供される。
【0007】
上記アンテナ制御装置は、上記第2の状態において、上記第2の無線周波数帯が割り当てられた上記第1のビーム及び上記第2の無線周波数帯が割り当てられた上記第2のビームに同一の通信信号を伝送させてよい。
【0008】
上記アンテナ制御装置は、ビーム間協調送受信を用いて上記同一の通信信号を伝送させてよい。ビーム間協調送受信とは、例えば、CoMP(Coordinated Multi−Point)である。上記アンテナ制御装置は、上記第2の状態における上記第2のビーム及び上記第3のビームの送信電力を、上記第1の状態における上記第2のビーム及び上記第3のビームの送信電力よりも低くさせてよい。
【0009】
上記アンテナ制御装置は上記マルチビームアンテナを有する衛星局であってよく、上記アンテナ制御装置は、地上に配置された基地局から受信した上記第1の無線周波数帯の信号、上記第2の無線周波数帯の信号及び上記第3の無線周波数帯の信号のうち、上記第2の無線周波数帯の信号を複製することにより、上記複数のビームに対する無線周波数帯の割り当て状態を上記第1の状態から上記第2の状態に切り替えてよい。
【0010】
上記マルチビームアンテナは衛星局に設置されてよく、上記アンテナ制御装置は地上に配置された基地局であってよく、上記アンテナ制御装置は、上記衛星局によって上記第1の無線周波数帯の信号とされる信号、上記第2の無線周波数帯の信号とされる信号及び上記第3の無線周波数帯の信号とされる信号を上記衛星局に送信し、上記アンテナ制御装置は、上記衛星局によって上記第1の無線周波数帯の信号とされる信号、上記第2の無線周波数帯の信号とされる信号及び上記第3の無線周波数帯の信号とされる信号のうち、上記第2の無線周波数帯の信号とされる信号を複製して上記衛星局に送信することにより、上記衛星局に、上記複数のビームに対する無線周波数帯の割り当て状態を上記第1の状態から上記第2の状態に切り替えさせてよい。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、コンピュータを、上記アンテナ制御装置として機能させるためのプログラムが提供される。
【0012】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
図1は、アンテナ制御装置200の一例を概略的に示す。本実施形態に係るアンテナ制御装置200は、複数のビームを放射するマルチビームアンテナを制御する。
【0016】
アンテナ制御装置200は、例えば、マルチビームアンテナを有する衛星100に搭載される。また、アンテナ制御装置200は、地上に配置されて、衛星100が有するマルチビームアンテナを遠隔制御する基地局であってもよい。このように、地上に配置されて衛星100を遠隔制御する基地局は、フィーダリンク局と呼ばれる場合がある。
【0017】
衛星100は、複数のビーム102を形成する。平常時、複数のビーム102のそれぞれには、隣接するビームと異なる無線周波数帯が割り当てられてよい。また、複数のビーム102の一部の複数のビームには、同一の無線周波数帯が割り当てられてよい。このように、衛星100は、同一の無線周波数帯を繰り返し利用することによって周波数利用効率を向上できる。
【0018】
図2は、アンテナ制御装置200による無線周波数帯の割り当て状態302を例示する。カバーエリア10、カバーエリア20、カバーエリア30、カバーエリア40、カバーエリア50、カバーエリア60及びカバーエリア70のそれぞれは、衛星100が出力する第1のビーム、第2のビーム、第3のビーム、第4のビーム、第5のビーム、第6のビーム及び第7のビームのそれぞれによってカバーされるエリアを示す。
【0019】
無線周波数帯80は、アンテナ制御装置200が複数のビームに割り当てる周波数帯の一例を示す。
図2に例示する無線周波数帯80は、第1の無線周波数帯f1、第2の無線周波数帯f2、第3の無線周波数帯f3、第4の無線周波数帯f4、第5の無線周波数帯f5、第6の無線周波数帯f6及び第7の無線周波数帯f7を含む。なお、ここでは、無線周波数帯80が7つの無線周波数帯を含む例を挙げているが、これに限らず、他の数であってもよい。すなわち、アンテナ制御装置200が割り当てる周波数帯は、7ビーム繰返しに限らず、他の繰り返し数であってもよい。また、「第1」から「第7」は、無線周波数帯を区別する目的で使用しており、無線周波数帯の周波数の高低の順を示すものではない。
【0020】
図2に示す通り、割り当て状態302は、第1のビームにf1、第2のビームにf2、第3のビームにf3、第4のビームにf4、第5のビームにf5、第6のビームにf6、第7のビームにf7が割り当てられている状態を示す。アンテナ制御装置200は、平常時において、割り当て状態302のように、複数のビームのそれぞれに、隣接するビームと異なる無線周波数帯を割り当ててよい。
【0021】
図3は、アンテナ制御装置200による無線周波数帯の割り当て状態304を例示する。割り当て状態304は、
図3に示す通り、第1のビームにf1及びf3、第2のビームにf2、第3のビームにf2、第4のビームにf4、第5のビームにf5、第6のビームにf6、第7のビームにf7が割り当てられている状態を示す。割り当て状態304は、カバーエリア10における通信の支援が望まれる場合に、アンテナ制御装置200が実現する割り当て状態であってよい。
【0022】
アンテナ制御装置200は、例えば、カバーエリア10において地震等の災害が発生して、カバーエリア10内の無線基地局に障害が発生した場合等に、無線周波数帯の割り当て状態を割り当て状態302から割り当て状態304に切り替える。これにより、カバーエリア10をカバーする第1のビームに対して割り当てられる無線周波数帯を増加することができ、カバーエリア10における通信を支援することができる。
【0023】
なお、カバーエリア10内の無線基地局は、例えば、GSM(登録商標)(Global System for Mobile communications)等の第2世代移動通信システム、WCDMA(登録商標)(Wideband Code Division Multiple Access)及びCDMA2000(Code Division Multiple Access 2000)等の第3世代移動通信システム、LTE(Long Term Evolution)等の第3.9世代移動通信システム、LTE−Advanced等の第4世代移動通信システム、及び第4世代移動通信システム以降の通信方式のいずれかに準拠した無線基地局であってよい。
【0024】
アンテナ制御装置200は、同一の無線周波数帯が割り当てられた第2のビーム及び第3のビームに同一の通信信号を送信させてよい。アンテナ制御装置200は、ビーム間協調送受信技術を利用して、同一の無線周波数帯が割り当てられた第2のビーム及び第3のビームに同一の通信信号を送信させてよい。
【0025】
これにより、カバーエリア20とカバーエリア30とが重複するエリアに位置する通信端末400は、第2のビームの通信信号と第3のビームの通信信号とを合成することにより、受信信号強度を高めることができる。通信端末400は、衛星通信可能な端末であれば、どのような端末であってもよく、例えば携帯電話である。カバーエリア20とカバーエリア30とが重複するエリアは、第2のビーム及び第3のビームのエッジに位置するので、それぞれのエリアの中心付近に位置する場合に比べて信号の受信強度は弱くなるところ、本実施形態に係るアンテナ制御装置200によれば、上述したように、受信信号強度を高めることができる。
【0026】
図4は、アンテナ制御装置200による無線周波数帯の割り当て状態306を例示する。
図4に示す通り、割り当て状態306は、第1のビームにf1、第2のビームにf2、第3のビームにf2及びf3、第4のビームにf4、第5のビームにf5、第6のビームにf6、第7のビームにf7が割り当てられている状態を示す。
【0027】
アンテナ制御装置200は、割り当て状態302においてカバーエリア30に通信端末400が在圏しているときに、無線周波数帯の割り当て状態を割り当て状態304に切り替える場合、一旦、割り当て状態306に切り替えてから、割り当て状態304に切り替えてよい。例えば、f3を利用する通信端末400が在圏している場合に、アンテナ制御装置200は、まず、カバーエリア30をカバーする第3のビームにf2を追加で割り当てる。次に、アンテナ制御装置200は、通信端末400がf3からf2へ周波数ハンドオーバした後に、第3のビームへのf3の割り当てを解除する。そして、アンテナ制御装置200は、第1のビームにf3を割り当てることにより、割り当て状態304への切り替えを完了させる。
【0028】
割り当て状態302においてカバーエリア30に通信端末400が在圏している状態で割り当て状態304に切り替えると、第3のビームに割り当てられる無線周波数帯がf3からf2に切り替わって、通信端末400の通信が切断されてしまう場合がある。これに対して、本実施形態に係るアンテナ制御装置200は、割り当て状態302から割り当て状態306を経て割り当て状態304に切り替えるので、通信端末400の通信が切断されてしまうことを防止できる。
【0029】
図5は、アンテナ制御装置200による無線周波数帯の割り当て状態308を例示する。
図5に示す通り、割り当て状態308は、第1のビームにf1及びf3からf7が割り当てられ、第2のビームから第7のビームにf2が割り当てられている状態を示す。
【0030】
アンテナ制御装置200は、例えば、カバーエリア10において地震等の災害が発生して、地上の無線通信システムに障害が発生した場合等に、無線周波数帯の割り当て状態を割り当て状態302から割り当て状態308に切り替えてよい。そして、アンテナ制御装置200は、同一の無線周波数帯が割り当てられた第2のビームから第7のビームに同一の通信信号を送信させてよい。これにより、カバーエリア20からカバーエリア70に通信を実行できる環境を提供しつつ、カバーエリア10における通信帯域を大幅に増強することができる。
【0031】
図6は、割り当て状態302を実現している場合のアンテナ制御装置200を概略的に示す。
図6は、アンテナ制御装置200が衛星局として機能する場合を例示する。
【0032】
アンテナ制御装置200は、受信アンテナ110及びマルチビームアンテナ130を有する。受信アンテナ110は、フィーダリンク局150からフィーダリンク160を介して、第1のビームから第7のビーム用の信号を受信する。ここでは、フィーダリンク局150が、これら7つのビーム用の信号として、第1の無線周波数帯F1、第2の無線周波数帯F2、第3の無線周波数帯F3、第4の無線周波数帯F4、第5の無線周波数帯F5、第6の無線周波数帯F6及び第7の無線周波数帯F7の信号を送信する場合を例示する。F1からF7は、f1からf7とは異なる無線周波数帯であってよい。例えば、F1からF7は10GHz帯であり、f1からf7は2GHz帯である。なお、F1からF7は、f1からf7と同じ無線周波数帯であってもよい。
【0033】
アンテナ制御装置200は、例えば、受信アンテナ110が受信したF1の信号をf1の信号に周波数変換して第1のビームに、F2の信号をf2の信号に周波数変換して第2のビームに、F3の信号をf3の信号に周波数変換して第3のビームに、F4の信号をf4の信号に周波数変換して第4のビームに、F5の信号をf5の信号に周波数変換して第5のビームに、F6の信号をf6の信号に周波数変換して第6のビームに、F7の信号をf7の信号に周波数変換して第7のビームに割り当てて、マルチビームアンテナ130に出力させる。
【0034】
図7は、割り当て状態308を実現している場合のアンテナ制御装置200を概略的に示す。
図7も、アンテナ制御装置200が衛星局として機能する場合を例示する。
【0035】
アンテナ制御装置200は、受信アンテナ110が受信したF1からF7の信号を、例えば周波数変換する等してf1からf7の信号とし、f1からf7の信号のうち、f1及びf3からf7の信号を第1のビームに割り当て、かつ、f2の信号を複製して、f2の信号を第2のビームから第7のビームのそれぞれに割り当てて、マルチビームアンテナ130に出力させる。このように、衛星局として機能するアンテナ制御装置200は、例えば、フィーダリンク局150から受信した信号を周波数変換して、適宜複製することによって、無線周波数帯の割り当て状態を切り替える。なお、アンテナ制御装置200は、フィーダリンク局150から受信した信号を適宜複製してから周波数変換してもよい。また、アンテナ制御装置200は、フィーダリンク局150から受信した信号を周波数変換せずに、適宜複製してもよい。
【0036】
図8は、衛星局として機能するアンテナ制御装置200の機能構成の一例を概略的に示す。アンテナ制御装置200は、通信信号受信部202、制御情報受信部204、信号調整部206及びビーム出力部208を有する。
【0037】
通信信号受信部202は、フィーダリンク局150から通信信号を受信する。制御情報受信部204は、フィーダリンク局150から制御情報を受信する。制御情報は、複数のビームに対する無線周波数帯の割り当てに関する情報を含んでよい。例えば、制御情報は、複数のビームのうち、無線周波数帯の割り当てを増加するビームを指定する情報を含む。また、例えば、制御情報は、予め登録された、割り当て状態302、割り当て状態304及び割り当て状態306等の割り当て状態を指定する情報を含む。
【0038】
フィーダリンク局150は、例えば、地上のあるエリアにおいて通信を支援する必要が生じた場合に、当該エリアをカバーするビームへの無線周波数帯の割り当てを増加するための制御情報をアンテナ制御装置200に送信する。地上のあるエリアにおいて通信を支援する必要が生じた場合とは、地震等の災害によって当該エリアに設置された無線基地局に障害が発生した場合を含んでよい。また、例えば、大規模なイベントの開催等によって、地上のあるエリアに多数の携帯電話の所有者が集中した場合を含んでよい。
【0039】
信号調整部206は、通信信号受信部202が受信した信号を周波数変換してよく、制御情報受信部204が受信した制御情報に従って、周波数変換した信号を調整する。例えば、信号調整部206は、制御情報受信部204が無線周波数帯の割り当てを増加するビームとして第1のビームを指定する制御情報を受信した場合、第2のビームから第7のビームの少なくともいずれかに割り当てられている無線周波数帯を第1のビームに追加で割り当てる。また、信号調整部206は、第2のビームから第7のビームに対する、第1のビームに追加で割り当てた無線周波数帯の割り当てを解除してよい。また、信号調整部206は、第2のビームから第7のビームのうち、無線周波数帯の割り当てがなくなったビームに対して、第2のビームから第7のビームのうちのいずれかに割り当てられている無線周波数帯を割り当ててよい。
【0040】
また、例えば、制御情報受信部204が割り当て状態306を指定する制御情報を受信した場合、信号調整部206は、f1及びf3からf7の信号を第1ビームに割り当て、f2の信号を複製して、第2のビームから第7のビームに割り当てる。
【0041】
信号調整部206は、無線周波数帯の割り当てを増やさないビームの1チャンネル当たりの送信電力を、無線周波数帯の割り当てを増やすビームの1チャンネル当たりの送信電力よりも低くしてよい。例えば、割り当て状態302から割り当て状態308に切り替える場合、信号調整部206は、第2のビームから第7のビームの1チャンネル当たりの送信電力を、第1のビームの1チャンネル当たりの送信電力よりも低くする。
【0042】
例えば、割り当て状態302では、7つのビームに合計で7チャンネルが含まれることになり、割り当て状態308では、7つのビームに合計で12チャンネルが含まれることになる。ここで、1チャンネル当たりの送信電力を等しくすると、割り当て状態302に対して割り当て状態308はおよそ2倍の送信電力を必要とする。これに対して、信号調整部206は、割り当て状態308において、第2のビームから第7のビームの1チャンネル当たりの送信電力を、第1のビームの1チャンネル当たりの送信電力よりも低くする。
【0043】
信号調整部206は、例えば、無線周波数帯の割り当てを増やすビームの1チャンネル当たりの送信電力を変更せずに、無線周波数帯の割り当てを増やさないビームの1チャンネル当たりの送信電力を、3dB等、予め定められた割合で低下させる。また、信号調整部206は、平常時における割り当て状態の総送信電力と等しくなるように、無線周波数帯の割り当てを増やさないビームの1チャンネル当たりの送信電力を低下させてもよい。また、信号調整部206は、予め設定された最大電力よりも低くなるように、無線周波数帯の割り当てを増やさないビームの1チャンネル当たりの送信電力を低下させてもよい。
【0044】
これにより、カバーエリア10の通信品質を低下させることなく衛星の消費電力を低減することができる。衛星通信の場合、衛星が利用できる電力には限りがあることから、信号調整部206による送信電力調整は特に効果的である。
【0045】
図9は、割り当て状態308を実現している場合のアンテナ制御装置200を概略的に示す。
図9は、アンテナ制御装置200がフィーダリンク局として機能する場合を例示する。アンテナ制御装置200は、衛星100に出力させる信号を生成する。
【0046】
アンテナ制御装置200は、割り当て状態308を実現するべく、F1からF7の信号のうち、F2の信号を複製して、F1及びF3からF7の信号を第1のビーム用に、F2を第2のビームから第7のビーム用に、フィーダリンク160を介して衛星100に送信する。衛星100は、アンテナ制御装置200が送信した信号を受信アンテナ110によって受信する。そして、衛星100は、受信した信号を周波数変換して、マルチビームアンテナ130によって複数のビームを出力する。
【0047】
図10は、フィーダリンク局として機能するアンテナ制御装置200の機能構成の一例を概略的に示す。アンテナ制御装置200は、通信信号生成部212、エリア情報受信部214、信号調整部216及び信号出力部218を有する。
【0048】
通信信号生成部212は、衛星100に送信する通信信号を生成する。エリア情報受信部214は、地上の複数のエリアの情報を示すエリア情報を受信する。エリア情報受信部214は、例えば、インターネットを介してエリア情報を受信する。
【0049】
エリア情報は、例えば、各エリアの災害の発生状況を含む。また、エリア情報は、各エリアにおける地上の無線通信システムの障害発生状況を含んでよい。また、エリア情報は、各エリアにおけるイベントの開催情報を含んでよい。また、エリア情報は、各エリアの人口密度を含んでよい。また、エリア情報は、複数のビームによってカバーされる複数のエリアのそれぞれに対する通信端末400の在圏状況を含んでよい。
【0050】
信号調整部216は、エリア情報受信部214が受信したエリア情報に基づいて、通信信号生成部212が生成した信号を調整する。信号出力部218は、信号調整部216によって調整された信号を、衛星100に送信する。
【0051】
例えば、信号調整部216は、エリア情報が、カバーエリア10の地上の無線通信システムに障害が発生したことを示す場合、第1のビームに対する無線周波数帯の割り当てを増やす。例えば、信号調整部216は、無線周波数帯の割り当て状態を割り当て状態308に切り替えるべく、通信信号生成部212が生成したF1からF7の信号のうち、F1及びF3からF7を第1のビームに割り当て、F2の信号を複製して、第2のビームから第7のビームに割り当てるべく調整する。
【0052】
また、信号調整部216は、通信端末400が在圏しているカバーエリアをカバーする一のビームに割り当てられている無線周波数帯を、一の無線周波数帯から他の無線周波数帯に切り替える場合、通信端末400の通信が切断されないように無線周波数帯を切り替えてよい。例えば、信号調整部216は、当該カバーエリアに、一旦、他の無線周波数帯を追加して、通信端末400が一の無線周波数帯から他の無線周波数帯に周波数ハンドオーバした後に、一の無線周波数帯の割り当てを解除するように信号を調整する。
【0053】
図11は、アンテナ制御装置200による無線周波数帯の割り当て状態310を例示する。
図11に示す通り、割り当て状態310は、第1のビームにf1及びf2、第2のビームにf2、第3のビームにf3、第4のビームにf4、第5のビームにf5、第6のビームにf6、第7のビームにf7が割り当てられている状態を示す。割り当て状態310は、カバーエリア10における通信の支援が望まれる場合に、アンテナ制御装置200が実現する割り当て状態であってよい。
【0054】
アンテナ制御装置200は、例えば、カバーエリア10において地震等の災害が発生して、地上の無線通信システムに障害が発生した場合等に、無線周波数帯の割り当て状態を割り当て状態302から割り当て状態310に切り替える。これにより、カバーエリア10をカバーする第1のビームに対して割り当てられる無線周波数帯を増加することができ、カバーエリア10における通信を支援することができる。
【0055】
アンテナ制御装置200は、同一の無線周波数帯が割り当てられた第1のビーム及び第2のビームに同一の通信信号を送信させてよい。アンテナ制御装置200は、ビーム間協調送受信技術を利用して、同一の無線周波数帯が割り当てられた第1のビーム及び第2のビームに同一の通信信号を送信させてよい。
【0056】
図12は、アンテナ制御装置200による無線周波数帯の割り当て状態312を例示する。割り当て状態312は、
図12に示す通り、第1のビームにf1からf7、第2のビームにf2、第3のビームにf3、第4のビームにf4、第5のビームにf5、第6のビームにf6、第7のビームにf7が割り当てられている状態を示す。
【0057】
アンテナ制御装置200は、例えば、カバーエリア10において地震等の災害が発生して、地上の無線通信システムに障害が発生した場合等に、無線周波数帯の割り当て状態を割り当て状態302から割り当て状態312に切り替えてよい。これにより、カバーエリア20からカバーエリア70において通信を実行できる環境を提供しつつ、カバーエリア10における通信帯域を増強することができる。
【0058】
図13は、アンテナ制御装置200による無線周波数帯の割り当て状態314を例示する。割り当て状態314は、すべてのビームにf2が割り当てられた状態を示す。アンテナ制御装置200は、ベースとなる無線周波数帯を複数のビームのすべてに割り当て、その他の無線周波数帯については、各エリアの状況に応じて割り当ててもよい。
【0059】
例えば、アンテナ制御装置200は、各エリアにおける通信トラフィックに応じて無線周波数帯を割り当てる。具体例として、カバーエリア10における通信トラフィックが最も高く、カバーエリア30、カバーエリア40及びカバーエリア70がそれに次いで高い場合には、アンテナ制御装置200は、割り当て状態314が示すように、第1のビームにf1、f5及びf6、第3のビームにf3、第4のビームにf4、第7のビームにf7を追加で割り当てる。
【0060】
また、アンテナ制御装置200は、各エリアにおける人口密度に応じて無線周波数帯を割り当ててもよい。すなわち、アンテナ制御装置200は、ベースとなる無線周波数帯を複数のビームのすべてに割り当て、その他の無線周波数帯を、人口密度が高いエリアをカバーするビームに優先的に割り当ててよい。
【0061】
上記実施形態では、衛星局として機能するアンテナ制御装置200が、フィーダリンク局150から受信した制御情報に従ってマルチビームアンテナ130に出力させる信号を調整する例を挙げて説明したが、これに限らない。衛星局として機能するアンテナ制御装置200は、エリア情報を受信して、エリア情報に基づいてマルチビームアンテナ130に出力させる信号を調整してもよい。
【0062】
以上の説明において、アンテナ制御装置200の各部は、ハードウエアにより実現されてもよく、ソフトウエアにより実現されてもよい。また、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせにより実現されてもよい。また、プログラムが実行されることにより、コンピュータが、アンテナ制御装置200として機能してもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な媒体又はネットワークに接続された記憶装置から、アンテナ制御装置200の少なくとも一部を構成するコンピュータにインストールされてよい。
【0063】
コンピュータにインストールされ、コンピュータを本実施形態に係るアンテナ制御装置200として機能させるプログラムは、CPU等に働きかけて、コンピュータを、アンテナ制御装置200の各部としてそれぞれ機能させる。これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータに読込まれることにより、ソフトウエアとアンテナ制御装置200のハードウエア資源とが協働した具体的手段として機能する。
【0064】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0065】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階などの各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」などと明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」などを用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。