(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも一つの誘電体膜と少なくとも一つの金属蒸着膜とが交互に積層されてなる構造の積層体と、この積層体の積層方向の表面を覆うように配した保護フィルムとを有し、且つメタリコン電極が形成されるべき該積層体の積層方向に直交する方向において対応する二つの側面に開口して、該メタリコン電極の一部の侵入を許容する隙間が、該二つの側面の位置する該積層体の端部にそれぞれ設けられたフィルムコンデンサ素子に対して、熱エージング処理を行うためのフィルムコンデンサ素子のエージング装置であって、
前記フィルムコンデンサ素子を収容する収容チャンバと、
該収容チャンバ内に収容された前記フィルムコンデンサ素子を加熱する加熱手段と、
該収容チャンバ内に収容された前記フィルムコンデンサ素子を構成する前記積層体における前記誘電体膜と前記金属蒸着膜の積層方向において、前記収容チャンバ内を流体密に二つに仕切って、該収容チャンバ内に、該フィルムコンデンサ素子が収容される真空室と、該フィルムコンデンサ素子が収容されない圧空室とを画成するダイヤフラムと、
前記収容チャンバ内に収容された前記フィルムコンデンサ素子の前記ダイヤフラム側とは反対側の面に接触して、該収容チャンバ内での該フィルムコンデンサ素子の該ダイヤフラム側とは反対側への変位を規制する規制手段と、
前記収容チャンバの前記真空室内の空気を排出して、該真空室内を真空状態とする排気手段と、
前記収容チャンバの前記圧空室内に圧縮空気を供給して、該圧縮空気により、前記ダイヤフラムを前記真空室側に向かって変位させて、該収容チャンバ内に収容された前記フィルムコンデンサ素子の該ダイヤフラム側の面を加圧せしめる圧縮空気供給手段と、
前記収容チャンバの前記真空室内に配置され、該真空室内の前記フィルムコンデンサ素子の前記ダイヤフラム側の面が、前記圧縮空気により変位せしめられた該ダイヤフラムにて加圧されたときに、該フィルムコンデンサ素子と該ダイヤフラムとの間に介在して、該フィルムコンデンサ素子を構成する前記積層体の前記隙間が形成された部位の曲がり変形を阻止する変形防止手段と、
を含むことを特徴とするフィルムコンデンサ素子のエージング装置。
前記変形防止手段が、前記収容チャンバの前記真空室内に収容された前記フィルムコンデンサ素子と前記ダイヤフラムとの間に変位可能に配置され、該フィルムコンデンサ素子の該ダイヤフラム側の面が、該ダイヤフラムにて加圧されたときに、該フィルムコンデンサ素子の該ダイヤフラム側の面に接触して、該フィルムコンデンサ素子を前記規制手段との間で挟圧する挟圧平板にて構成されている請求項1に記載のフィルムコンデンサ素子のエージング装置。
前記規制手段における前記フィルムコンデンサ素子との接触面を含む接触部分が、前記ダイヤフラムの加圧力によって該フィルムコンデンサ素子に生ずる歪みを許容するように弾性変形する弾性体にて構成されている請求項1乃至請求項4のうちの何れか1項に記載のフィルムコンデンサ素子のエージング装置。
少なくとも一つの誘電体膜と少なくとも一つの金属蒸着膜とが交互に積層されてなる構造の積層体と、この積層体の積層方向の表面を覆うように配した保護フィルムとを有し、且つメタリコン電極が形成されるべき該積層体の積層方向に直交する方向において対応する二つの側面に開口して、該メタリコン電極の一部の侵入を許容する隙間が、該二つの側面の位置する該積層体の端部にそれぞれ設けられたフィルムコンデンサ素子に対して、熱エージング処理を行うためのフィルムコンデンサ素子のエージング方法であって、
前記フィルムコンデンサ素子を収容チャンバ内に収容する工程と、
該収容チャンバ内に収容された該フィルムコンデンサ素子における前記誘電体膜と前記金属蒸着膜との積層方向の一方側の面を、該収容チャンバ内に位置固定に配置された規制部材に接触させることにより、該フィルムコンデンサ素子を、該収容チャンバ内での該積層方向の一方側への変位が規制されるように配置する工程と、
該収容チャンバ内に収容した該フィルムコンデンサ素子を加熱しつつ、該収容チャンバ内の雰囲気を排気して、真空とする第一の熱エージング処理工程と、
該収容チャンバ内に配置されたダイヤフラムを、該収容チャンバ内に供給される圧縮空気にて変位させることにより、前記規制部材への接触状態で該収容チャンバ内に収容された前記フィルムコンデンサ素子の前記積層方向の他方側の面を、該ダイヤフラムにて加圧すると共に、該ダイヤフラムと該フィルムコンデンサ素子との間に、前記積層体の前記隙間が形成された部位の該ダイヤフラムの加圧力による曲がり変形を阻止する変形防止手段を介在させて、かかる積層体の曲がり変形を阻止しつつ、加熱する第二の熱エージング処理工程と、
を含むことを特徴とするフィルムコンデンサ素子のエージング方法。
少なくとも一つの誘電体膜と少なくとも一つの金属蒸着膜とが交互に積層されてなる構造の積層体と、この積層体の積層方向の表面を覆うように配した保護フィルムとを有し、且つメタリコン電極が形成されるべき該積層体の積層方向に直交する方向において対応する二つの側面に開口して、該メタリコン電極の一部の侵入を許容する隙間が、該二つの側面の位置する該積層体の端部にそれぞれ設けられたフィルムコンデンサ素子を製造する装置であって、
前記保護フィルムの一部を構成する長尺な第一の帯状体を連続的に供給して、その長手方向に連続走行させる第一の供給手段と、
前記積層体の複数が互いに積層されて、若しくは該積層体が巻回により積層されて、構成されてなる素子構成ユニットの複数を、該素子構成ユニットの積層方向における一つの面が該第一の帯状体上に重ね合わされ、且つ該第一の帯状体の走行方向において互いに所定の間隔を隔てて位置するように、順次載置せしめる載置手段と、
前記保護フィルムの残余の部分を構成する長尺な第二の帯状体を連続的に供給して、該第一の帯状体上に載置された前記複数の素子構成ユニット上に配置することにより、該素子構成ユニットの複数を、該第一の帯状体と該第二の帯状体にて挟んだ重合せ物として、それら帯状体の走行方向に搬送する第二の供給手段と、
該第二の供給手段により搬送される前記重合せ物の搬送途中において、該重合せ物における前記素子構成ユニットの存在部位に対して熱エージング処理を行う前記請求項1乃至請求項5のうちの何れか1項に記載のエージング装置と、
前記重合せ物の搬送方向における前記エージング装置よりも下流側に配置されて、該エージング装置にて熱エージング処理された該重合せ物の前記素子構成ユニットの隣接するものの間に位置する前記第一の帯状体と前記第二の帯状体とを切断して、個々のフィルムコンデンサ素子として分離せしめる切断手段と、
を含んで構成されていることを特徴とするフィルムコンデンサ素子の製造装置。
少なくとも一つの誘電体膜と少なくとも一つの金属蒸着膜とが交互に積層されてなる構造の積層体と、この積層体の積層方向の表面を覆うように配した保護フィルムとを有し、且つメタリコン電極が形成されるべき該積層体の積層方向に直交する方向において対応する二つの側面に開口して、該メタリコン電極の一部の侵入を許容する隙間が、該二つの側面の位置する該積層体の端部にそれぞれ設けられたフィルムコンデンサ素子を製造する方法であって、
前記保護フィルムの一部を構成する長尺な第一の帯状体を連続的に供給して、その長手方向に連続走行させる工程と、
前記積層体の複数が互いに積層されて、若しくは該積層体が巻回により積層されて、構成されてなる素子構成ユニットの複数を、該素子構成ユニットの積層方向における一つの面が該第一の帯状体上に重ね合わされるように、且つ該第一の帯状体の走行方向において互いに所定の間隔を隔てて位置するように、該第一の帯状体上に、順次載置せしめる工程と、
前記保護フィルムの残余の部分を構成する長尺な第二の帯状体を連続的に供給して、該第一の帯状体上に載置された前記複数の素子構成ユニット上に配置することにより、該素子構成ユニットの複数を該第一の帯状体と該第二の帯状体にて挟んだ重合せ物として、それら帯状体の走行方向に搬送する工程と、
かかる重合せ物の搬送途中において、該重合せ物における前記素子構成ユニットの存在部位に対する熱エージング処理を、前記請求項6に記載の方法によって実施する工程と、
該熱エージング処理の施された前記重合せ物の前記素子構成ユニットの隣接するものの間に位置する前記第一の帯状体と前記第二の帯状体とを切断して、個々のフィルムコンデンサ素子として分離せしめる工程と、
を含むことを特徴とするフィルムコンデンサ素子の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器に使用されるフィルムコンデンサとして、積層タイプと巻回タイプとがある。例えば、特公平5−63094号公報(特許文献1)や特公平8−24096号公報(特許文献2)等に明らかにされるように、それら積層タイプと巻回タイプのフィルムコンデンサは、何れも、金属化フィルムの一つ又は複数を用いて製造されている。なお、よく知られているように、金属化フィルムは、誘電体膜としての樹脂フィルムの少なくとも一方の面に金属蒸着膜を積層した積層体として構成されるものである。
【0003】
すなわち、積層タイプのフィルムコンデンサは、例えば、金属化フィルムの複数を、樹脂フィルムと金属蒸着膜とが交互に位置するように積層して、素子構成ユニットを得た後、この素子構成ユニットの積層方向(金属化フィルムの積層方向)両側に保護フィルムを更に積層することにより、保護フィルムを、素子構成ユニットの積層方向の表面を覆うように配して、フィルムコンデンサ素子を作製し、その後、かかるフィルムコンデンサ素子における素子構成ユニットの積層方向に直交する方向において対応する二つの側面にメタリコン電極を形成することによって、製造されている。また、巻回タイプのフィルムコンデンサは、例えば、金属化フィルムと樹脂フィルムとを重ね合わせた状態で巻回することにより、それら金属化フィルムと樹脂フィルムコンデンサとを積層してなる素子構成ユニットを得た後、この素子構成ユニットの積層方向の表面を覆うように配して、フィルムコンデンサ素子を作製し、その後、かかるフィルムコンデンサ素子の二つの側面にメタリコン電極を形成することによって製造されている。
【0004】
また、近年では、フィルムコンデンサに対する小型・大容量化の要請に対応するために、例えば、特開2011−181885号公報(特許文献3)等に明らかにされる如く、フィルムコンデンサ素子の誘電体を、ナノオーダーの膜厚で成膜が可能な蒸着重合膜にて構成することも、提案されている。
【0005】
ところで、樹脂フィルムや蒸着重合膜等からなる誘電体膜と金属蒸着膜とが交互に積層された構造の積層体を用いて構成されると共に、かかる積層体を積層乃至は巻回して得られた素子構成ユニットに保護フィルムが外装されてなるフィルムコンデンサ素子にあっては、誘電体膜と金属蒸着膜層との積層面間や、互いに積層される積層体の積層面間、或いは積層体と保護フィルムの積層面間等に水分が存在していると、そのような水分と金属蒸着膜の構成金属との反応によって非導電物が生成され、それにより、電極面積が減少して、直列等価抵抗が増加し、その結果、静電容量が低下したり、或いは絶縁抵抗が低下して、耐電圧が低下するといった問題等が惹起される可能性がある。また、誘電体膜と金属蒸着膜層との積層面間や、互いに積層される積層体の積層面間等に空気が存在していると、放電によるショートが生ずる恐れがある。更に、フィルムコンデンサ素子では、その製造時に生ずる内部応力が誘電体膜や金属蒸着膜に残留したままであると、それら誘電体膜と金属蒸着膜との間や、互いに積層される積層体間、積層体と保護フィルムとの間の密着性が著しく低下するといった不具合が生ずる可能性がある。
【0006】
そこで、上記の如き構造のフィルムコンデンサ素子を用いてフィルムコンデンサを製造する際には、一般に、メタリコン電極が形成される前のフィルムコンデンサ素子に対して、熱エージング処理が施され、それによって、フィルムコンデンサ素子内から、水分や空気、更には残留応力が除去されている。
【0007】
この熱エージング処理は、例えば、特開2012−60032号公報(特許文献4)等に明らかにされるように、通常、フィルムコンデンサ素子を加圧する加圧装置と加熱炉とを用いて実施される。加圧装置は、互いに所定距離を隔てて対向配置された上板及び下板と、それら上板と下板の外周部同士を相互に連結する複数の連結ロッドとからなる装置本体を有している。そして、この装置本体の上板と下板の対向面間には、複数の加圧板が、その外周部において複数の連結ロッドに挿通された状態で、上板及び下板と対向し、且つ上下方向に変位可能に配置されている。また、装置本体の上板には、一つ又は複数の締付ボルトが螺入されて、かかる締付ボルトの先端が、複数の加圧板のうちの最上位に位置する加圧板に固定されている。
【0008】
そして、そのような加圧装置を用いてフィルムコンデンサ素子に対する熱エージング処理を行う際には、先ず、幾つかのフィルムコンデンサ素子を、誘電体膜と金属蒸着膜の積層方向が複数の加圧板の対向方向と一致する向きで、加圧装置の複数の加圧板間や加圧板と下板との間に挟んで配置する。そして、締付ボルトを締め付けることにより、幾つかのフィルムコンデンサ素子を、複数の加圧板や下板にて加圧した状態で加圧装置に取り付ける。その後、加圧装置に取り付けられたフィルムコンデンサ素子を、加圧装置と共に、加熱炉内に投入して、加熱する。かくして、フィルムコンデンサ素子に対する加圧装置による加圧により、積層体間や積層体と保護フィルムとの間の密着性を高めつつ、加熱炉内での加熱により、誘電体膜と金属蒸着膜との積層面間や、互いに積層される積層体の積層面間、或いは積層体と保護フィルムとの積層面間から水分や空気を除去すると共に、誘電体膜と金属蒸着膜の残留応力を取り除くのである。
【0009】
ところが、そのような加圧装置と加熱炉とを用いた従来の熱エージング処理には、以下の如き数多くの問題が内在していた。
【0010】
すなわち、従来の熱エージング処理では、フィルムコンデンサ素子に対する加圧装置による加圧により、互いに積層される積層体同士や積層体と保護フィルムとが強固に圧接される。そのため、誘電体膜と金属蒸着膜の積層面間や、互いに積層される積層体の積層面間、或いは積層体と保護フィルムの積層面間に空気が閉じ込められてしまい、それによって、それらの積層面間から空気を完全に除去することが難しくなる恐れがあった。
【0011】
そして、そのように、誘電体膜と金属蒸着膜の積層面間や、互いに積層される積層体の積層面間、或いは積層体と保護フィルムの積層面間に空気層(空気溜まり)が存在したままで、互いに積層される積層体同士や積層体と保護フィルムとを強固に圧接して、加熱する熱エージング処理を行った場合、空気層によって、フィルムコンデンサ素子の内部に熱が伝わり難くなる。それ故、従来の熱エージング処理は、誘電体膜と金属蒸着膜の積層面間や、互いに積層される積層体の積層面間、或いは積層体と保護フィルムの積層面間に存在する水分を完全に除去して、誘電体膜と金属蒸着膜の残留応力を十分に除去するために、通常、10時間以上もの極めて長い時間を掛ける必要があったのである。
【0012】
また、フィルムコンデンサ素子が、加圧装置の締付ボルトの締付力によって加圧されるため、フィルムコンデンサ素子を加圧する加圧板や下板の締付圧力バランスが良好とは言えず、フィルムコンデンサ素子の被加圧面の全体に対して、荷重を均等に加えることが困難であった。それ故、誘電体膜と金属蒸着膜との積層面間や、互いに隣り合う積層体の積層面間、積層体と保護フィルムとの積層面間の密着性を、それらの積層面の全面において均一に高めることが難しかったのである。
【0013】
加えて、従来の熱エージング処理では、加圧装置と加熱炉の少なくとも二つの装置が必要とされ、しかも、加熱炉が、幾つかのフィルムコンデンサ素子を加圧装置ごと投入できる程の大きさを有するものでなければならないため、熱エージング処理に用いられる装置が、高価で且つ大型なものとなることが避けられなかったのである。
【0014】
かかる状況下、特開2008−272899号公報(特許文献5)には、回路基板を製造するに際して、表面に導電パターンが形成された基材層と絶縁フィルムとを積層し、密着させるのに用いられる積層装置が明らかにされている。
【0015】
この積層装置は、上側部材と下側部材とからなる収容チャンバを有しており、かかる収容チャンバは、上側部材と下側部材の相互の離隔乃至接近移動により開閉可能とされて、基材層と絶縁フィルムの積層体が、内部に収容可能とされている。また、収容チャンバの上側部材には、真空ポンプが接続されており、下側部材には、圧縮空気を供給するコンプレッサが接続されている。更に、かかる収容チャンバ内には、内部に収容された積層体を加熱するための上側加熱板と下側加熱板とが上下方向に対向配置されていると共に、下側加熱板上に、ダイヤフラムが配設されている。
【0016】
このような積層装置を用いて、基材層と絶縁フィルムとを密着させるには、先ず、収容チャンバの真空室内に、基材層と絶縁フィルムとの積層体を収容配置した状態下で、かかる積層体を上側及び下側加熱板にて加熱すると共に、真空室内を真空ポンプにて真空引きする。また、その一方で、コンプレッサから圧空室内に供給される圧縮空気により、ダイヤフラムを弾性変形させて、積層体の下面を加圧し、以て、積層体を、弾性変形したダイヤフラムと上側加熱板との間で上下方向において挟圧するのである。
【0017】
そして、特開2008−272899号公報には、かくの如き構造を有する積層装置を用いることによって、基材層と絶縁フィルムとを有利に密着させることができ、しかも、それら基材層と絶縁フィルムとの間の空気溜まりの発生を抑制し得ることが、記載されている。
【0018】
従って、このような回路基板の製造に用いられる基材層と絶縁フィルムの積層装置を、フィルムコンデンサ素子のエージング装置に利用することによって、フィルムコンデンサ素子内からの空気の除去に係る問題や、誘電体膜と金属蒸着膜との積層面間や、互いに隣り合う積層体の積層面間、積層体と保護フィルムとの積層面間の密着性に関する問題の解消を図ることが、考えられる。
【0019】
しかしながら、フィルムコンデンサ素子が回路基板にはない構造を有しているところから、従来の積層装置を、フィルムコンデンサ素子のエージング装置として、そのまま使用することができなかった。
【0020】
すなわち、一般に、フィルムコンデンサ素子においては、複数の積層体が幅方向に互い違いにずらされるように積層されることにより、或いはそのような積層状態で巻回されることにより、フィルムコンデンサ素子の両側面に、側方に開口して、メタリコン電極の侵入を許容する隙間が設けられ、そして、この隙間内に、側方開口部を通じて、メタリコン電極の一部が侵入することによって、メタリコン電極が、各積層フィルムの金属蒸着膜の幅方向端部に対して確実に接続されるようになっているのであるが、基板回路には、そのような隙間が全く存在しない。それ故、かかる基板回路の基材層と絶縁フィルムの積層装置を、そのまま、フィルムコンデンサ素子のエージング装置に利用した場合、フィルムコンデンサ素子が、弾性変形したダイヤフラムと規制部材との間で挟圧されたときに、フィルムコンデンサ素子の両側面に設けられる隙間が潰れてしまう恐れがある。そして、そうなると、メタリコン電極の一部が、フィルムコンデンサ素子の両側面に設けられた隙間内に侵入することができなくなり、その結果、隙間内に露出する各積層フィルムの金属蒸着膜とメタリコン電極との電気的な接続が不安定なものとなって、コンデンサ性能が低下する可能性があるのである。
【0021】
また、そのようなフィルムコンデンサ素子の挟圧時の隙間の潰れは、隙間の大きさ、具体的には、隙間が設けられる両側面の対向方向における隙間の長さを可及的に短くすることによって、ある程度、抑制されると考えられる。しかしながら、かかる隙間の長さが余りに短いと、隙間内に侵入するメタリコン電極の侵入量が過少となり、その結果、隙間内に露出する各積層体の金属蒸着膜と、メタリコン電極との電気的な接続が不安定なものとなって、コンデンサ性能が低下する恐れがあるのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
ここにおいて、本発明は、上記した事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、フィルムコンデンサ素子を大型化させることなく、フィルムコンデンサ素子の二つの側面にそれぞれ設けられた、メタリコン電極の侵入を許容する隙間を潰さずに、フィルムコンデンサ素子内から空気や水分を短時間に且つ確実に除去でき、しかも、誘電体膜と金属蒸着膜との積層面間や、互いに積層される積層体の積層面間、積層体と保護フィルムとの積層面間の密着性を、各積層面の全面において均一に高めることができる、小型で且つ低コストな、フィルムコンデンサ素子のエージング装置を提供することにある。また、本発明は、フィルムコンデンサ素子を大型化させることなく、フィルムコンデンサ素子の二つの側面にそれぞれ設けられた、メタリコン電極の侵入を許容する隙間を潰さずに、フィルムコンデンサ素子内から空気や水分を短時間に且つ確実に除去でき、しかも、誘電体膜と金属蒸着膜との積層面間や、互いに積層される積層体の積層面間、積層体と保護フィルムとの積層面間の密着性を、各積層面の全面において均一に高めることができるフィルムコンデンサ素子のエージング方法を提供することも、解決課題とするものである。更に、本発明は、二つの側面に設けられた隙間内に露出する積層体の金属蒸着膜とメタリコン電極との電気的な接続が安定的に確保され得るフィルムコンデンサとフィルムコンデンサ素子を提供することをも、解決課題とするものである。更にまた、本発明は、そのようなフィルムコンデンサ素子を有利に製造可能な装置と方法を提供することをも、その解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
そして、本発明は、上記した課題の解決のために、(a)少なくとも一つの誘電体膜と少なくとも一つの金属蒸着膜とが交互に積層されてなる構造を有する積層体と、この積層体の積層方向の表面を覆うように配した保護フィルムとを有するフィルムコンデンサ素子と、(b)該積層体の積層方向に直交する方向において対応する側面にそれぞれ形成された二つのメタリコン電極と、(c)該積層体の該二つの側面のそれぞれにおいて外方に開口して設けられた隙間内に、該メタリコン電極の一部が侵入するように形成されて、該メタリコン電極と前記積層体の金属蒸着膜とを接続する接続部とを有して構成されたフィルムコンデンサにおいて、前記積層体の前記二つの側面の対応する方向における前記接続部の長さが0.1〜5mmの範囲内の値とされていることを特徴とするフィルムコンデンサを、その要旨とするものである。
【0025】
また、本発明は、少なくとも一つの誘電体膜と少なくとも一つの金属蒸着膜とが交互に積層されてなる構造の積層体と、この積層体の積層方向の表面を覆うように配した保護フィルムとを有し、且つメタリコン電極が形成されるべき該積層体の積層方向に直交する方向において対応する二つの側面に開口して、該メタリコン電極の一部の侵入を許容する隙間が、該二つの側面の位置する該積層体の端部にそれぞれ設けられたフィルムコンデンサ素子において、前記積層体の前記二つの側面の対応する方向における前記隙間の長さが0.1〜5mmの範囲内の値とされていることを特徴とするフィルムコンデンサ素子をも、その要旨とするものである。
【0026】
そして、本発明は、少なくとも一つの誘電体膜と少なくとも一つの金属蒸着膜とが交互に積層されてなる構造の積層体と、この積層体の積層方向の表面を覆うように配した保護フィルムとを有し、且つメタリコン電極が形成されるべき該積層体の積層方向に直交する方向において対応する二つの側面に開口して、該メタリコン電極の一部の侵入を許容する隙間が、該二つの側面の位置する該積層体の端部にそれぞれ設けられたフィルムコンデンサ素子に対して、熱エージング処理を行うためのフィルムコンデンサ素子のエージング装置であって、(a)前記フィルムコンデンサ素子を収容する収容チャンバと、(b)該収容チャンバ内に収容された前記フィルムコンデンサ素子を加熱する加熱手段と、(c)該収容チャンバ内に収容された前記フィルムコンデンサ素子を構成する前記積層体における前記誘電体膜と前記金属蒸着膜の積層方向において、前記収容チャンバ内を流体密に二つに仕切って、該収容チャンバ内に、該フィルムコンデンサ素子が収容される真空室と、該フィルムコンデンサ素子が収容されない圧空室とを画成するダイヤフラムと、(d)前記収容チャンバ内に収容された前記フィルムコンデンサ素子の前記ダイヤフラム側とは反対側の面に接触して、該収容チャンバ内での該フィルムコンデンサ素子の該ダイヤフラム側とは反対側への変位を規制する規制手段と、(e)前記収容チャンバの前記真空室内の空気を排出して、該真空室内を真空状態とする排気手段と、(f)前記収容チャンバの前記圧空室内に圧縮空気を供給して、該圧縮空気により、前記ダイヤフラムを前記真空室側に向かって変位させて、該収容チャンバ内に収容された前記フィルムコンデンサ素子の該ダイヤフラム側の面を加圧せしめる圧縮空気供給手段と、(g)前記収容チャンバの前記真空室内に配置され、該真空室内の前記フィルムコンデンサ素子の前記ダイヤフラム側の面が、前記圧縮空気により変位せしめられた該ダイヤフラムにて加圧されたときに、該フィルムコンデンサ素子と該ダイヤフラムとの間に介在して、該フィルムコンデンサ素子を構成する前記積層体の前記隙間形成部位の曲がり変形を阻止する変形防止手段とを含むことを特徴とするフィルムコンデンサ素子のエージング装置をも、また、その要旨とするものである。
【0027】
なお、本発明の好ましい態様の一つによれば、前記変形防止手段が、前記収容チャンバの前記真空室内に収容された前記フィルムコンデンサ素子と前記ダイヤフラムとの間に変位可能に配置され、該フィルムコンデンサ素子の該ダイヤフラム側の面が、該ダイヤフラムにて加圧されたときに、該フィルムコンデンサ素子の該ダイヤフラム側の面に接触して、該フィルムコンデンサ素子を前記規制手段との間で挟圧する挟圧平板にて構成される。
【0028】
また、本発明の望ましい態様の一つによれば、前記挟圧平板が、前記ダイヤフラムの前記圧縮空気による弾性変形に追従して弾性変形するものの、そのときの弾性変形量が、該ダイヤフラムの弾性変形量よりも小さな量となる弾性を有して、構成される。
【0029】
さらに、本発明の有利な態様の一つによれば、前記挟圧平板が、前記フィルムコンデンサ素子を構成する前記積層体の二つの側面からそれぞれ外方に延出する延出部を有し、該延出部にて、前記積層体の前記隙間形成部位の該ダイヤフラムの加圧力による曲がり変形が阻止されるように構成されることとなる。
【0030】
更にまた、本発明の好適な態様の一つによれば、前記変形防止手段が、前記フィルムコンデンサ素子と前記ダイヤフラムとの間において、前記積層体の前記隙間形成部位を含む該フィルムコンデンサ素子の端部と該ダイヤフラムとの間のみに配置される。
【0031】
また、本発明の別の望ましい態様の一つよれば、前記規制手段における前記フィルムコンデンサ素子との接触面を含む接触部分が、前記ダイヤフラムの加圧力によって該フィルムコンデンサ素子に生ずる歪みを許容するように弾性変形する弾性体にて構成される。
【0032】
そして、本発明は、前記した課題の解決のために、少なくとも一つの誘電体膜と少なくとも一つの金属蒸着膜とが交互に積層されてなる構造の積層体と、この積層体の積層方向の表面を覆うように配した保護フィルムとを有し、且つメタリコン電極が形成されるべき該積層体の積層方向に直交する方向において対応する二つの側面に開口して、該メタリコン電極の一部の侵入を許容する隙間が、該二つの側面の位置する該積層体の端部にそれぞれ設けられたフィルムコンデンサ素子に対して、熱エージング処理を行うためのフィルムコンデンサ素子のエージング方法であって、(a)前記フィルムコンデンサ素子を収容チャンバ内に収容する工程と、(b)該収容チャンバ内に収容された該フィルムコンデンサ素子における前記誘電体膜と前記金属蒸着膜との積層方向の一方側の面を、該収容チャンバ内に位置固定に配置された規制部材に接触させることにより、該フィルムコンデンサ素子を、該収容チャンバ内での該積層方向一方側への変位が規制されるように配置する工程と、(c)該収容チャンバ内に収容した該フィルムコンデンサ素子を加熱しつつ、該収容チャンバ内の雰囲気を排気して、真空とする第一の熱エージング処理工程と、(d)該収容チャンバ内に配置されたダイヤフラムを、該収容チャンバ内に供給される圧縮空気にて変位させることにより、前記規制部材への接触状態で該収容チャンバ内に収容された前記フィルムコンデンサ素子の前記積層方向の他方側の面を、該ダイヤフラムにて加圧すると共に、該ダイヤフラムと該フィルムコンデンサ素子との間に、前記積層体の前記隙間形成部位の該ダイヤフラムの加圧力による曲がり変形を阻止する変形防止手段を介在させて、かかる積層体の曲がり変形を阻止しつつ、加熱する第二の熱エージング処理工程とを含むことを特徴とするフィルムコンデンサ素子のエージング方法をも、また、その要旨とするものである。
【0033】
そして、本発明は、前記した課題を解決するために、少なくとも一つの誘電体膜と少なくとも一つの金属蒸着膜とが交互に積層されてなる構造の積層体と、この積層体の積層方向の表面を覆うように配した保護フィルムとを有し、且つメタリコン電極が形成されるべき該積層体の積層方向に直交する方向において対応する二つの側面に開口して、該メタリコン電極の一部の侵入を許容する隙間が、該二つの側面の位置する該積層体の端部にそれぞれ設けられたフィルムコンデンサ素子を製造する装置であって、(a)前記保護フィルムの一部を構成する長尺な第一の帯状体を連続的に供給して、その長手方向に連続走行させる第一の供給手段と、(b)前記積層体の複数が互いに積層されて、若しくは該積層体が巻回により積層されて、構成されてなる素子構成ユニットの複数を、該素子構成ユニットの積層方向における一つの面が該第一の帯状体上に重ね合わされ、且つ該第一の帯状体の走行方向において互いに所定の間隔を隔てて位置するように、順次載置せしめる載置手段と、(c)前記保護フィルムの残余の部分を構成する長尺な第二の帯状体を連続的に供給して、該第一の帯状体上に載置された前記複数の素子構成ユニット上に配置することにより、該素子構成ユニットの複数を、該第一の帯状体と該第二の帯状体にて挟んだ重合せ物として、それら帯状体の走行方向に搬送する第二の供給手段と、(d)該第二の供給手段により搬送される前記重合せ物の搬送途中において、該重合せ物における前記素子構成ユニットの存在部位に対して熱エージング処理を行う前記した特徴を有するエージング装置と、(e)前記重合せ物の搬送方向における前記エージング装置よりも下流側に配置されて、該エージング装置にて熱エージング処理された該重合せ物の前記素子構成ユニットの隣接するものの間に位置する前記第一の帯状体と前記第二の帯状体とを切断して、個々のフィルムコンデンサ素子として分離せしめる切断手段とを含んで構成されていることを特徴とするフィルムコンデンサ素子の製造装置をも、その要旨とするものである。
【0034】
また、本発明は、前記した課題の解決のために、少なくとも一つの誘電体膜と少なくとも一つの金属蒸着膜とが交互に積層されてなる構造の積層体と、この積層体の積層方向の表面を覆うように配した保護フィルムとを有し、且つメタリコン電極が形成されるべき該積層体の積層方向に直交する方向において対応する二つの側面に開口して、該メタリコン電極の一部の侵入を許容する隙間が、該二つの側面の位置する該積層体の端部にそれぞれ設けられたフィルムコンデンサ素子を製造する方法であって、(a)前記保護フィルムの一部を構成する長尺な第一の帯状体を連続的に供給して、その長手方向に連続走行させる工程と、(b)前記積層体の複数が互いに積層されて、若しくは該積層体が巻回により積層されて、構成されてなる素子構成ユニットの複数を、該素子構成ユニットの積層方向における一つの面が該第一の帯状体上に重ね合わされるように、且つ該第一の帯状体の走行方向において互いに所定の間隔を隔てて位置するように、該第一の帯状体上に、順次載置せしめる工程と、(c)前記保護フィルムの残余の部分を構成する長尺な第二の帯状体を連続的に供給して、該第一の帯状体上に載置された前記複数の素子構成ユニット上に配置することにより、該素子構成ユニットの複数を該第一の帯状体と該第二の帯状体にて挟んだ重合せ物として、それら帯状体の走行方向に搬送する工程と、(d)かかる重合せ物の搬送途中において、該重合せ物における前記素子構成ユニットの存在部位に対する熱エージング処理を、前記した特徴を有する方法によって実施する工程と、(e)該熱エージング処理の施された前記重合せ物の前記素子構成ユニットの隣接するものの間に位置する前記第一の帯状体と前記第二の帯状体とを切断して、個々のフィルムコンデンサ素子として分離せしめる工程とを含むことを特徴とするフィルムコンデンサ素子の製造方法をも、また、その要旨とするものである。
【発明の効果】
【0035】
すなわち、本発明に従うフィルムコンデンサにあっては、フィルムコンデンサ素子を構成する積層体の積層方向に直交する方向において対応する二つの側面に設けられた隙間内にメタリコン電極の一部が侵入して形成される接続部が、それら二つの側面の互いに対応する方向に沿った特定の長さを有している。これにより、隙間内に露出する各積層体の金属蒸着膜と、メタリコン電極との電気的な接続が安定的に確保され得るのであり、しかも、かかる隙間の形成によるフィルムコンデンサ全体の大型化が有利に防止され得るのである。
【0036】
また、本発明に従うフィルムコンデンサ素子においては、二つの側面に設けられた、メタリコン電極の侵入を許容する隙間の長さが特定の範囲内の値とされている。これにより、隙間内に露出する各積層体の金属蒸着膜と、メタリコン電極との電気的な接続が安定的に確保され得るのであり、しかも、かかる隙間の形成によるフィルムコンデンサ素子全体の大型化が有利に防止され得るのである。
【0037】
そして、本発明に従うエージング装置にあっては、真空状態とされた真空室内で、ダイヤフラムが圧縮空気にてドーム状に弾性変形(変位)するため、ダイヤフラムが弾性変形すると、先ず、ダイヤフラムと規制部材との間で、フィルムコンデンサ素子の中心部が挟圧される。次いで、ダイヤフラムと規制部材との間で挟圧されるフィルムコンデンサ素子部分が、フィルムコンデンサ素子の中心部から外周部に向かって徐々に広がっていき、それに伴って、フィルムコンデンサ素子内の誘電体膜と金属蒸着膜の積層面間や、互いに積層される積層体の積層面間、或いは積層体と保護フィルムの積層面間から、空気や水分が、フィルムコンデンサ素子の中心部から外周部に向かって移動させつつ、真空室内の空気と共に吸い出すことができる。また、そのように、フィルムコンデンサ素子内から空気が確実に除去されることに加えて、弾性変形したダイヤフラムと規制手段との間でフィルムコンデンサ素子を挟圧したときに、フィルムコンデンサ素子に対して極端に大きな圧力が加えられるものでない。そのため、加熱による熱が、フィルムコンデンサ素子の内部に十分に伝わるようになり、それによって、フィルムコンデンサ素子内の水分を効率的に蒸発させ得ると共に、フィルムコンデンサ素子の残留応力を効率的に除去することができる。従って、フィルムコンデンサ素子内からの空気と水分の除去と、フィルムコンデンサ素子の残留応力の除去とを短時間に且つ確実に実施することが可能となる。しかも、誘電体膜と金属蒸着膜との積層面間や、互いに積層される積層体の積層面間、積層体と保護フィルムとの積層面間の密着性を、それら各積層面の全面において均一に高めることができ、更に、そのような効果を短時間で得ることができる。
【0038】
また、本発明に係るエージング装置は、従来のエージング装置、即ち、幾つかのフィルムコンデンサ素子が取り付けられる加圧装置と、それら幾つかのフィルムコンデンサ素子が、加圧装置ごと投入される大型の加熱炉とを備えた従来装置とは異なって、少なくとも大型の加熱炉を何等有するものでないところから、従来のエージング装置に比して、有利に小型化され得ると共に、低コスト化が効果的に図られ得る。
【0039】
さらに、本発明に従うエージング装置にあっては、弾性変形したダイヤフラムと規制手段との間でフィルムコンデンサ素子を挟圧したときに、変形防止手段によって、フィルムコンデンサ素子の二つの端部に設けられる積層体の隙間形成部位の曲がり変形が阻止される。これによって、フィルムコンデンサ素子の一対の端部にそれぞれ設けられた、メタリコン電極の侵入を許容する隙間が、弾性変形したダイヤフラムと規制手段との間でのフィルムコンデンサ素子の挟圧時に潰れてしまうようなことが、効果的に抑制乃至は解消され得る。
【0040】
従って、かくの如き本発明に従うフィルムコンデンサ素子のエージング装置を用いれば、フィルムコンデンサ素子に対する熱エージング処理の実施により、フィルムコンデンサ素子において、静電容量の増加、直列等価抵抗の低減化、耐電圧の向上、メタリコン電極と金属蒸着膜との安定した接続等が、悉く有利に実現されて、コンデンサ性能の向上が、効果的に図られ得ることとなるのであり、しかも、そのようなフィルムコンデンサ素子に対する熱エージング処理が、コンパクトなスペースで、且つ可及的に低いコストで、しかも極めて短い時間で、確実に実施することが可能となるのである。
【0041】
そして、発明に係るフィルムコンデンサ素子のエージング方法によれば、フィルムコンデンサ素子の二つの端部に設けられた、メタリコン電極の侵入を許容する隙間を潰すことなく、フィルムコンデンサ素子内から空気や水分を短時間に且つ確実に除去でき、しかも、誘電体膜と金属蒸着膜との積層面間や、互いに積層される積層体の積層面間、積層体と保護フィルムとの積層面間の密着性を、各積層面の全面において均一に高めることができる。そして、その結果として、フィルムコンデンサ素子において、静電容量の増加、直列等価抵抗の低減化、耐電圧の向上等が、悉く有利に実現されて、コンデンサ性能の向上が、効果的に図られ得ることとなるのであり、その上、そのようなフィルムコンデンサ素子に対する熱エージング処理が、コンパクトなスペースで、且つ可及的に低いコストで、しかも極めて短い時間で、確実に実施することが可能となるのである。
【0042】
また、本発明に従うフィルムコンデンサ素子の製造装置によれば、前記した特徴を有するフィルムコンデンサ素子が、極めて効率的且つ迅速に製造され得るのである。
【0043】
さらに、本発明に従うフィルムコンデンサ素子の製造方法によっても、前記した特徴を有するフィルムコンデンサ素子が、極めて効率的且つ迅速に製造され得るのである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0046】
先ず、
図1には、本発明に従う構造を有するエージング装置を用いてエージング処理されるべきフィルムコンデンサ素子の一例が、その縦断面形態において示されている。かかる
図1から明らかなように、フィルムコンデンサ素子10は、積層体としての複数(ここでは8個)の金属化フィルム12を有し、それら複数の金属化フィルム12が互いに積層されてなる素子構成ユニット13の積層方向の一方側の面に、保護フィルム14aが、また他方側の面に、保護フィルム14bが、それぞれ、それら両方の面を覆うように積層されて構成されている。なお、
図1及び後述する
図2においては、フィルムコンデンサ素子10の構造の理解を容易とするために、金属化フィルム12と保護フィルム14a,14bの厚さが、それらの幅や長さ等に比して誇張して、大きな寸法で示されていることが理解されるべきである。
【0047】
より具体的には、金属化フィルム12は、ベースとしての樹脂フィルム16の一方の面に金属蒸着膜18が積層形成されてなっている。また、かかる金属化フィルム12の幅方向(
図1の左右方向)の一端部には、樹脂フィルム16に金属蒸着膜18が積層されていないマージン部20が設けられている。
【0048】
金属化フィルム12を構成する樹脂フィルム16は、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート等からなる二軸延伸フィルムにて構成されている。また、金属蒸着膜18は、例えば、アルミニウムや亜鉛等からなり、PVDやCVDの範疇に属する、従来から公知の蒸着法を実施することによって、樹脂フィルム16上に積層形成されている。更に、保護フィルム14は、例えば、樹脂フィルム16と同じポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート等からなっている。
【0049】
そして、一つの保護フィルム14a上に、複数の金属化フィルム12が相互に積層され、また、そのような複数の金属化フィルム12の積層状態下で、各金属化フィルム12の樹脂フィルム16と金属蒸着膜18とが交互に一つずつ位置し、且つ各金属化フィルム12のマージン部20が、金属化フィルム12の幅方向において互い違いに位置するように、配置されている。更に、それら複数の金属化フィルム12のうちの最上層に位置する金属化フィルム12の金属蒸着膜18上に、別の一つの保護フィルム14bが、更に積層されている。かくして、フィルムコンデンサ素子10が、複数の金属化フィルム12からなる素子構成ユニット13と二つの保護フィルム14a,14bとの積層構造をもって構成されているのである。
【0050】
また、かかるフィルムコンデンサ素子10では、互いに隣り合う金属化フィルム12が、それらのうちの一方の金属化フィルム12の端部を、他方の金属化フィルム12のマージン部20側の端縁から側方に突出させた状態で、相互に重ね合わされている。これにより、一つの金属化フィルム12を間に挟んで、その両側に位置する二つの金属化フィルム12の幅方向端部同士の間に、フィルムコンデンサ素子10の幅方向両側の側面21,21において側方に向かって開口する隙間22が、それぞれ形成されている。また、かかる隙間22を形成する二つの金属化フィルム12のうちの下側に位置する金属化フィルム12の金属蒸着膜18の端部が、かかる隙間22に露出するように配置されている。これらのことから明らかなように、本実施形態では、一つの金属化フィルム12を間に挟んで、その両側に位置する二つの金属化フィルム12の幅方向端部にて、隙間形成部位が構成されている。
【0051】
そして、
図2に示されるように、上記の如き構造とされたフィルムコンデンサ素子10は、その幅方向両側の側面21,21に、メタリコン電極24が溶射等にてそれぞれ形成されることにより、フィルムコンデンサ26として構成されるようになっている。また、それら二つのメタリコン電極24,24は、フィルムコンデンサ素子10の幅方向両側の側面21,21において側方に開口する隙間22内に侵入し、かかる隙間22に露出する金属蒸着膜18の一端部に固着されている。これにより、それら各隙間22内に、各メタリコン電極24と隙間22内に露出する金属蒸着膜18の一端部とを接続する接続部23が、それぞれ形成されて、それらメタリコン電極24と金属蒸着膜18とが、電気的に確実に接続されるようになっている。なお、かくして得られるフィルムコンデンサ26には、必要に応じて、二つのメタリコン電極24,24に対して、図示しない端子等が、それぞれ接続されることとなる。
【0052】
そして、フィルムコンデンサ素子10においては、メタリコン電極24,24がそれぞれ形成されるべき二つの側面21,21に設けられた隙間22におけるフィルムコンデンサ素子10の幅方向に沿った長さ、つまり、一つの金属化フィルム12を間に挟んで、その両側に位置して、隙間22を形成する二つの金属化フィルム12,12の幅方向一端面から、それら二つの金属化フィルム12,12の間に位置する一つの金属化フィルム12の幅方向一端面までの距離(
図1にDで示される寸法)が、0.1〜5mmの範囲内の値とされている。また、フィルムコンデンサ26にあっては、接続部23におけるフィルムコンデンサ26の幅方向に沿った長さが(
図2にDで示される寸法)が、0.1〜5mmの範囲内の値とされている。
【0053】
何故なら、かかる隙間22や接続部23の長さ:Dが0.1mmよりも短い場合には、隙間22内に侵入するメタリコン電極24部分の量(長さ)が過小となり、また、接続部23が短過ぎて、隙間22内に露出する金属蒸着膜18とメタリコン電極24との電気的な接続が不安定となり、フィルムコンデンサ26の性能が低下するからである。一方、隙間22や接続部23の長さ:Dが5mmよりも長いと、フィルムコンデンサ素子10やフィルムコンデンサ26の幅寸法が無用に大きくなって、それらが大型化するだけでなく、隙間22の最深部(二つの金属化フィルム12,12の間に挟まれて位置する一つの金属化フィルム12の幅方向の端面)にまで、メタリコン電極24を到達させることが困難となるからである。
【0054】
ところで、
図1に示される如き構造を有するフィルムコンデンサ素子10においては、メタリコン電極24が、幅方向両側の側面21,21にそれぞれ形成される前に、熱エージング処理が施される。それにより、各金属化フィルム12の樹脂フィルム16と金属蒸着膜18との間や、互いに隣り合う金属化フィルム12同士の間、保護フィルム14a,14bとそれらに積層される金属化フィルム12,12との間等から空気や水分等の異物が排除されると共に、各金属化フィルム12の樹脂フィルム16と金属蒸着膜18、或いは保護フィルム14a,14bにそれぞれ残留する応力が除去されて、金属化フィルム12の樹脂フィルム16と金属蒸着膜18や、互いに隣り合う金属化フィルム12同士、或いは金属化フィルム12と保護フィルム14a,14bとが、相互に密着させられるようになる。
【0055】
図3には、そのようなフィルムコンデンサ素子10に対する熱エージング処理を実施する際に用いられる、本発明に従う構造を備えたエージング装置の一実施形態が、概略的に示されている。以下、本実施形態のエージング装置について説明する。
【0056】
図3から明らかなように、本実施形態のエージング装置28は、フィルムコンデンサ素子10を作製して、一方向に搬送する搬送装置30を備えたフィルムコンデンサ素子の製造装置に組み込まれている。そして、かかるエージング装置28は、搬送装置30によるフィルムコンデンサ素子10の搬送路の途中に設置された熱エージング処理機32を有して、構成されている。
【0057】
より詳細には、搬送装置30は、帯状の保護フィルム14aを巻回してなるロール36aが装着される第一の巻出しローラ38(第一の供給手段)を備えている。この第一の巻出しローラ38は、図示しない電動モータ等の回転駆動装置により、水平に延びる回転軸回りの一方向(ここでは、
図3に矢印で示された反時計回りの方向)に回転駆動して、第一の巻出しローラ38に装着されたロール36aから、保護フィルム14a(第一の保護フィルム)を連続的に巻き出し可能に構成されている。そして、かかる第一の巻出しローラ38にて、ロール36aから巻き出された保護フィルム14aが、幾つかの案内ローラ40に案内されつつ、水平方向の一方向(
図3の左方向)に走行させられるようになっている。
【0058】
また、搬送装置30においては、複数の金属化フィルム12を相互に積層してなる素子構成ユニット13が、上記のようにして水平方向の一方向に走行する保護フィルム14a上に、公知の構造を有するロボットアーム41(載置手段)等にて支持された状態で、別の場所から移送されてきて、一定の時間間隔で、次々と載置されるようになっている。これにより、複数の素子構成ユニット13が、長尺な帯状の保護フィルム14a上に、積層方向の両側に位置する二つの面のうちの一方の面を重ね合せ、且つ互いに一定の距離を隔てつつ載置された状態で、保護フィルム14aの走行方向に、順次、搬送されるようになっているのである。
【0059】
なお、
図3には明示されてはいないものの、ここでは、複数の素子構成ユニット13が、何れも、長さ方向を、保護フィルム14aの走行方向(
図3の左右方向)に一致させた向きで、保護フィルム14a上に自動的に配置される。即ち、各素子構成ユニット13の幅方向両側面21,21に設けられた隙間22が、保護フィルム14aの走行方向に対して直角な方向(
図3の紙面に直角な方向)に向かって開口するように、換言すれば、かかる隙間22が設けられる幅方向両側面21,21が、保護フィルム14aの走行方向に対して直角な方向の両側にそれぞれ位置するように、各素子構成ユニット13が、保護フィルム14a上に配置されるのである。
【0060】
また、第一の巻出しローラ38にて、ロール36aから巻き出されて、走行させられる保護フィルム14aの上方にも、帯状の保護フィルム14bを巻回してなるロール36bが装着される第二の巻出しローラ42(第二の供給手段)が設置されている。この第二の巻出しローラ42は、図示しない電動モータ等の回転駆動装置により、水平に延びる回転軸回りにおいて、第一の巻出しローラ38の回転方向とは反対の方向(ここでは、
図3に矢印で示された時計回りの方向)に回転駆動して、第二の巻出しローラ42に装着されたロール36bから、保護フィルム14bを連続的に巻き出すようになっている。そして、かかる第二の巻出しローラ42にて、ロール36bから巻き出された保護フィルム14bが、第一の巻出しローラ38に装着されたロール36aから巻き出されて、走行する保護フィルム14a上に載置された素子構成ユニット13の上面に重ね合わされつつ、第一の巻出しローラ38にてロール36aから巻き出された保護フィルム14aと共に、水平方向の一方向に走行させられるようになっている。なお、
図3中、44は、第二の巻出しローラ42にて、ローラ36bから巻き出された保護フィルム14bの走行方向を変更するテンションローラである。
【0061】
かくして、搬送装置30にあっては、第一及び第二巻出しローラ38,42による二つのロール36a,36bからの保護フィルム14a,14bの巻出しと、ロボットアーム41による素子構成ユニット13の保護フィルム14a上への移送により、素子構成ユニット13の複数を、二つの長尺な保護フィルム14a,14bにて挟まれた重合せ物11として、保護フィルム14a,14bの搬送方向に、順次、搬送し得るようになっている。
【0062】
一方、熱エージング処理機32は、収容チャンバ46を備えている。この収容チャンバ46は、上側分割体48と下側分割体50とからなる分割構造を有している。上側分割体48は、下方に向かって開口する矩形の筐体からなり、上側底壁部52と周壁部54とを一体的に有している。一方、下側分割体50は、上方に向かって開口する矩形の筐体からなり、下側底壁部56と周壁部58とを一体的に有している。また、ここでは、下側分割体50が、図示しない可動装置によって上下方向に移動可能とされている。なお、かかる可動装置としては、例えば、油圧シリンダや、ピニオンとラックとを有するギヤ機構と電動モータとを組み合わせた装置等の公知の装置が、適宜に採用される。
【0063】
そして、下側分割体50が、可動装置(図示せず)にて上方に移動させられて、下側分割体50と上側分割体48の各周壁部54,58の端面同士が互いに突き合わされることにより、上側分割体48と下側分割体50とが相互に組み付けられて、収容チャンバ46内に、外部から密閉された収容空間60が形成されるようになっている。この収容空間60は、素子構成ユニット13(フィルムコンデンサ素子10)を収容可能な大きさを有している。一方、上側分割体48と下側分割体50の組付状態から、下側分割体50が、可動装置にて下方に移動させられることにより、上側分割体48と下側分割体50の組付状態が解消されて、収容チャンバ46の収容空間60が、外部に開放されるようになっている(
図4参照)。
【0064】
また、収容チャンバ46の上側分割体48と下側分割体50は、前記した搬送装置30により、水平方向の一方向に走行する二つの保護フィルム14a,14bを間に挟んだ上側と下側とに、それぞれ配置されている。そして、ここでは、搬送装置30にて搬送される重合せ物11のうち、素子構成ユニット13が二つの保護フィルム14a,14bにて挟まれた部分、つまり、重合せ物11における素子構成ユニット13の存在部位が、上側分割体48と下側分割体50との間に到達したときに、下側分割体50が上方に移動して、上側分割体48と下側分割体50とが相互に組み付けられるようになっている。それにより、搬送装置30にて搬送される重合せ物11の素子構成ユニット13の存在部位が、収容チャンバ46の収容空間60内に自動的に収容されるようになっている。なお、後述するように、重合せ物11における素子構成ユニット13の存在部位は、切断装置109による保護フィルム14a,14bの切断によって、個々のフィルムコンデンサ素子10として形成される部分である。それ故、以下からは、重合せ物11における素子構成ユニット13の存在部位を、フィルムコンデンサ素子10と言うこととする。
【0065】
なお、本実施形態のエージング装置28においては、上側分割体48と下側分割体50の相互に組付けによって、フィルムコンデンサ素子10が収容空間60内に収容されたときに、搬送装置30による重合せ物11の搬送が、自動的に、一旦停止して、フィルムコンデンサ素子10の搬送方向前方側と後方側にそれぞれ位置する保護フィルム14a,14b部分が、上側分割体48と下側分割体50の各周壁部54,58の端面間に挟まれ、それによって、フィルムコンデンサ素子10が、その前後に位置する保護フィルム14a,14b部分にて支持されつつ、収容空間60内で、中空に浮いた状態で配置されるようになっている。そして、上側分割体48と下側分割体50の相互の組付けから所定時間が経過したときに、下側分割体50が下方に移動して、収容空間60が外部に開放されると共に、搬送装置30による重合せ物11の搬送が、再開されるようになっている。
【0066】
また、収容チャンバ46の下側分割体50の内側には、ゴム薄膜からなるダイヤフラム62が収容されている。このダイヤフラム62は、下側分割体50における下側底壁部56の内面の面積より大きな面積を有し、下側分割体50の内側の高さ方向中間部において、下側底壁部56の内面と所定距離を隔てて対向配置されている。そして、かかるダイヤフラム62の外周部が、その全周に亘って、下側分割体50の周壁部58の内面に形成された周溝64内に突入して、かかる周溝64の内面に固着されている。これにより、下側分割体50の内側空間が、ダイヤフラム62にて、下側底壁部56側と上方への開口部側の二つに流体密に仕切られている。
【0067】
かくして、上側分割体48と下側分割体50との相互の組付けによって収容チャンバ46内に形成される収容空間60が、ダイヤフラム62により、上下方向において、流体密に二つに仕切られるようになっている。そして、それにより、収容チャンバ46内に、上側分割体48の上側底壁部52及び周壁部54と下側分割体50の周壁部58とダイヤフラム62にて囲まれてなる真空室66と、下側分割体50の下側底壁部56及び周壁部58とダイヤフラム62にて囲まれてなる圧空室68とが、ダイヤフラム62を間に挟んで上下にそれぞれ位置するように画成されている。即ち、収容チャンバ46内の収容空間60が、ダイヤフラム62を間に挟んで上側に位置する真空室66と下側に位置する圧空室68とにて構成されているのである。なお、ダイヤフラム62は、ゴム薄膜に代えて、例えば、公知のエラストマや弾性変形可能な樹脂からなる薄膜にて構成することも可能である。
【0068】
そして、かかる収容チャンバ46を有する熱エージング処理機32においては、フィルムコンデンサ素子10が、搬送装置30による搬送途中で、収容空間60の真空室66内に、収容配置されるようになっている。
【0069】
また、真空室66内には、上側加熱板70が、真空室66内に収容されるフィルムコンデンサ素子10の上側に位置するように配置されている。この上側加熱板70は、電熱ヒータ等の公知の加熱装置を内蔵した矩形の平板からなり、真空室66内において、厚さ方向が上下方向となる向きで水平に配置されている。かかる上側加熱板70の下面には、弾性体としてのゴム板72が固着されている。このゴム板72は、薄肉の平板からなり、上側加熱板70側とは反対側の下面が、フィルムコンデンサ素子10の上面よりも大きな面積を有する平坦面とされている。なお、かかるゴム板72に代えて、例えば、公知のエラストマや弾性変形可能な樹脂部品からなる板状弾性体を、上側加熱板70の下面に固着しても良い。
【0070】
そして、そのようなゴム板72が固着された上側加熱板70が、上側分割体48の上側底壁部52の内面に対して、固定ブラケット74,74を介して固定されており、また、かかる固定状態下で、上側加熱板70のゴム板72の平坦な下面が、真空室66内に収容配置されたフィルムコンデンサ素子10の上面(素子構成ユニット13の上側に積層される保護フィルム14b部分の上面)の全面に対して、弾性的に接触配置されている。これにより、真空室66内に収容配置されたフィルムコンデンサ素子10の真空室66内での上方への移動が規制乃至は阻止されるようになっている。このことから明らかなように、本実施形態では、ゴム板72と、それが下面に固着された上側加熱板70とにて、規制手段乃至は規制部材が構成されている。
【0071】
一方、圧空室68内には、下側加熱板76が収容されている。この下側加熱板76も、上側加熱板70と同様に、電熱ヒータ等の公知の加熱装置を内蔵した矩形の平板からなっている。そして、圧空室68内に収容された下側加熱板76は、真空室66内に固定された上側加熱板70に対して、ダイヤフラム62を間に挟んで対向配置された状態で、下側分割体50の下側底壁部56に対して、固定ブラケット78,78を介して固定されている。
【0072】
かくして、熱エージング処理機32においては、真空室66内と圧空室68内とが、上側及び下側加熱板70,76に内蔵の電熱ヒータにて、それぞれ加熱されるようになっている。そして、それにより、真空室66内に収容配置されたフィルムコンデンサ素子10が、上側加熱板70と下側加熱板76とにて、上下両側から加熱されるようになっている。このことから明らかなように、本実施形態では、上側加熱板70と下側加熱板76にて、加熱手段が構成されている。なお、ここでは、上側及び下側加熱板70,76に内蔵された電熱ヒータの加熱温度が、図示しないコントローラにて制御されるようになっている。
【0073】
また、収容チャンバ46の上側分割体48の上側底壁部52と下側分割体50の下側底壁部56には、貫通孔80が、それぞれ形成されている。更に、上側分割体48の上側底壁部52に設けられた貫通孔80には、排気パイプ82が接続されている。一方、下側分割体50の下側底壁部56に設けられた貫通孔80には、給気パイプ84が接続されている。そして、排気パイプ82の途中には、真空ポンプ86が設置されており、また、給気パイプ84の先端には、コンプレッサ88が接続されている。
【0074】
かくして、上側分割体48と下側分割体50と相互に組み付けられて、収容チャンバ46内に真空室66と圧空室68とが画成された状態下で、真空ポンプ86が作動することにより、真空室66内の空気が、排気パイプ82を通じて外部に排出されて、真空室66内が真空状態とされるようになっている。また、コンプレッサ88の作動により、圧空室68内に、給気パイプ84を通じて圧縮空気が供給され、圧空室68内が加圧されて、ダイヤフラム62が、真空室66側に向かって弾性変形するようになっている。そして、それにより、真空室66内に収容されたフィルムコンデンサ素子10の下面の全面が、弾性変形したダイヤフラム62にて均一に加圧されて、かかるフィルムコンデンサ素子10の下面の全面に対して、等分布荷重が加えられるようになっているのである。このことから明らかなように、本実施形態では、排気パイプ82と真空ポンプ86とにて、排気手段が構成されている一方、給気パイプ84とコンプレッサ88とにて、圧縮空気供給手段が構成されている。
【0075】
また、
図3乃至
図5から明らかなように、熱エージング処理機32においては、変形防止手段としての挟圧平板90が、ダイヤフラム62上に載置されて、ダイヤフラム62と上側加熱板70に固着されたゴム板72との間に配置されている。
【0076】
この挟圧平板90は、ここでは、弾性変形可能な薄肉矩形平板からなり、その長さ(
図7にL
1 で示される寸法)が、フィルムコンデンサ素子10(素子構成ユニット13)の長さ(
図7にL
2 で示される寸法で、搬送装置30による重合せ物11の搬送方向に沿った寸法)と略同じ寸法とされている一方、その幅(
図8にW
1 で示される寸法)が、フィルムコンデンサ素子10(素子構成ユニット13)の幅(
図8にW
2 で示される寸法で、搬送装置30による重合せ物11の搬送方向に対して直角な方向に沿った寸法)よりも、所定寸法だけ大きくされている。
【0077】
そして、そのような挟圧平板90は、長さ方向の両側端縁が、真空室66内に収容配置されたフィルムコンデンサ素子10の長さ方向両端縁に対して、鉛直方向においてそれぞれ対応位置し、且つ幅方向の両側端部が、フィルムコンデンサ素子10の幅方向両端縁から側方に延出して位置するように、ダイヤフラム62上に配置されている(
図7及び
図8参照)。また、挟圧平板90は、かかる配置状態下で、ダイヤフラム62の上面の中央部に対して、例えば、接着剤等を用いて固着されている。
【0078】
かくして、かかる挟圧平板90にあっては、ダイヤフラム62が、圧空室68内への圧縮空気の供給によって真空室66側に弾性変形したときに、真空室66内に収容されたフィルムコンデンサ素子10が位置する上方に移動し、また、ダイヤフラム62が、かかるフィルムコンデンサ素子10の下面の全面を加圧したときに、フィルムコンデンサ素子10の下面の全面に対して押圧接触するようになっている。そして、それにより、挟圧平板90が、フィルムコンデンサ素子10を、その上面の全面に接触位置する上側加熱板70のゴム板72との間で、ダイヤフラム62の加圧力に基づいて挟圧するようになっているのである。
【0079】
そして、ここでは、特に、挟圧平板90が、弾性変形したダイヤフラム62に追従して、弾性変形可能とされている。これによって、フィルムコンデンサ素子10とダイヤフラム62との間に挟圧平板90が介装されているにも拘わらず、弾性変形したダイヤフラム62による加圧力が、フィルムコンデンサ素子10の下面の全面に対して、挟圧平板90を介して均一に作用し、以て、フィルムコンデンサ素子10の上面の全面と下面の全面に対して、上側加熱板70のゴム板72と挟圧平板90とから、等分布荷重が、それぞれ加えられるようになっている。
【0080】
また、後述するように、ダイヤフラム62は、圧縮空気によって、先ず、ドーム状に膨らむように弾性変形して、フィルムコンデンサ素子10の下面の中心部を加圧し、それから、更なる弾性変形によって、フィルムコンデンサ素子10の下面の全面を加圧するようになる。それ故、かかるダイヤフラム62に追従して弾性変形する挟圧平板90も、弾性変形したダイヤフラム62の加圧力に基づいて、上側加熱板70(ゴム板72)との間で、先ず、フィルムコンデンサ素子10の中心部を挟圧し、それから、フィルムコンデンサ素子10の全体を挟圧するようになる。これにより、後に詳述するように、フィルムコンデンサ素子10の内部に存在する空気や水分を、フィルムコンデンサ素子10の外周部に押し出しながら移動させ得るようになっているのである。
【0081】
そして、挟圧平板90は、圧縮空気の圧力(例えば、0.05〜3MPa程度)により弾性変形したダイヤフラム62に追従して弾性変形したときの弾性変形量が、かかるダイヤフラム62の弾性変形量よりも小さな弾性変形量となるように構成されている。それ故、圧縮空気の圧力により弾性変形したダイヤフラム62が、挟圧平板90を介して、フィルムコンデンサ素子10の下面の全面を加圧したときに、フィルムコンデンサ素子10の幅方向両端縁部を加圧するダイヤフラム62部分の弾性変形が、フィルムコンデンサ素子10の幅方向両端縁から側方に延出する挟圧平板90の幅方向両端部にて抑制されて、かかるダイヤフラム62部分からフィルムコンデンサ素子10の幅方向両端縁に及ぼされる加圧力が緩和される。
【0082】
すなわち、挟圧平板90は、圧縮空気の圧力(例えば、0.05〜3MPa程度)により弾性変形したダイヤフラム62に追従して弾性変形するものの、そのときの弾性変形量が、ダイヤフラム62の弾性変形量よりも小さくなる材質、つまり、ダイヤフラム62よりも弾性変形し難い、ある程度硬い材質であることが望ましい。これは、以下の理由による。即ち、圧縮空気の圧力により弾性変形したダイヤフラム62に追従して弾性変形したときの弾性変形量がダイヤフラムよりも大きくなる材質のもので挟圧平板90が構成されていると、つまり、挟圧平板90が、ダイヤフラム62よりも弾性変形し易い軟らかい材質のものであると、挟圧平板90の幅方向両端部にて、フィルムコンデンサ素子10の幅方向両端縁部を加圧するダイヤフラム62部分の弾性変形を十分に抑制することが困難となって、フィルムコンデンサ素子10を挟圧平板90とダイヤフラム62との間で挟圧したときに、フィルムコンデンサ素子10の幅方向両端部に設けられた隙間22の潰れを阻止することが難しくなる恐れがあるからである。また、挟圧平板90が、圧縮空気の圧力により弾性変形したダイヤフラム62に追従しての弾性変形が不能な材質のもので構成されていると、フィルムコンデンサ素子10の下面に対して等分布荷重を加えることや、フィルムコンデンサ素子10の内部に存在する空気や水分を、フィルムコンデンサ素子10の外周部に押し出すように移動させることが難しくなってしまう可能性があるからである。
【0083】
かくして、熱エージング処理機32においては、前記したように、フィルムコンデンサ素子10の幅方向両側に側面21,21に設けられた隙間22におけるフィルムコンデンサ素子10の幅方向に沿った長さ:Dが、0.1mm以上の大きさとされているにも拘わらず、フィルムコンデンサ素子10を挟圧平板90と上側加熱板70との間で挟圧したときに、フィルムコンデンサ素子10のうち、隙間22を有するために変形強度が中心部よりも小さくされた幅方向両端部(各金属化フィルム12の幅方向両端部)が、弾性変形したダイヤフラム62の加圧力によって曲がり変形することが可及的に防止される。そして、その結果、フィルムコンデンサ素子10の幅方向両側面21,21に設けられた隙間22が潰れてしまうようなことが、阻止されるようになっている。
【0084】
なお、圧縮空気の圧力(例えば、0.05〜3MPa程度)により弾性変形したダイヤフラム62に追従して弾性変形したときの弾性変形量が、かかるダイヤフラム62の弾性変形量よりも小さな弾性変形量となる挟圧平板90の形成材料としては、アルミニウムの他、鉄等の金属材料や、カルク入り炭素繊維強化樹脂やガラス繊維強化樹脂複合樹脂材料が例示され、また、そのような金属材料や樹脂材料は、耐熱性を有していることが望ましい。
【0085】
このように、上記の如き構造とされた熱エージング処理機32にあっては、収容チャンバ46の真空室66内に収容されたフィルムコンデンサ素子10を、上側及び下側加熱板70,76にて所定の温度にまで加熱すると共に、真空ポンプ86にて真空室66内を真空引きして、所定の真空状態とし、また、その一方で、コンプレッサ88から圧空室68内に供給された圧縮空気にて弾性変形したダイヤフラム62の加圧力に基づいて、挟圧平板90と上側加熱板70のゴム板72との間で挟圧するようになっている。これによって、フィルムコンデンサ素子10内の空気や水分を除去すると共に、フィルムコンデンサ素子10を構成する金属化フィルム12の樹脂フィルム16及び金属蒸着膜18と保護フィルム14の残留応力を除去する熱エージング処理を実施し得るように構成されているのである。
【0086】
また、本実施形態のエージング装置28は、搬送装置30による重合せ物11の搬送方向において、加熱プレス機34の前方側に、公知のカッタ105,105を有する切断装置109(切断手段)が設置されている。そして、熱エージング処理機32にて熱エージング処理されたフィルムコンデンサ素子10が、切断装置109の設置位置まで搬送されてきたら、互いに隣り合って位置するフィルムコンデンサ素子10を連結する二つの保護フィルム14a,14b部分が、カッタ105,105にて、それぞれ切断されるようになっている。そうして、
図1に示される如き構造を有するフィルムコンデンサ素子10の個々のものが次々と得られるようになっているのである。
【0087】
ところで、かくの如き構造を有する本実施形態のエージング装置28を備えたフィルムコンデンサ素子10の製造装置を用いて、フィルムコンデンサ素子10に対する熱エージング処理を行って、フィルムコンデンサ素子10を得る際には、例えば、以下のようにして、その作業が進められることとなる。
【0088】
すなわち、先ず、
図4に示されるように、搬送装置30の第一巻出しローラ38に装着されたロール36aから保護フィルム14aを巻き出して、かかる保護フィルム14a上に、素子構成ユニット13を、ロボットアーム41により、一定の間隔を空けて、順次、載置する一方、第二の巻出しローラ42に装着されたロール36bから保護フィルム14bを巻き出して、保護フィルム14a上の素子構成ユニット13に重ね合わせる。それにより、重合せ物11を作製して、それを熱エージング処理機32に向かって、連続的に搬送する。
【0089】
なお、
図4には明示されてはいないものの、複数の素子構成ユニット13を保護フィルム14a上に載置する際には、前述したように、各素子構成ユニット13の幅方向両側面21,21に設けられた隙間22が、保護フィルム14aの搬送方向に対して直角な方向(
図4の紙面に直角な方向)に向かって開口するように、各素子構成ユニット13を、保護フィルム14a上に配置する。
【0090】
そして、搬送装置30にて搬送される重合せ物11における素子構成ユニット13の存在部位、つまり、保護フィルム14a,14bにて互いに連結された複数のフィルムコンデンサ素子10のうちの一つが、熱エージング処理機32における収容チャンバ46の互いに離間配置された上側分割体48と下側分割体50との間に到達したら、そこで、搬送装置30の作動を、一旦、停止させる。
【0091】
このとき、
図5に示されるように、上側分割体48と下側分割体50との間に配置されたフィルムコンデンサ素子10を、素子構成ユニット13の上面に重ね合わされる保護フィルム14b部分の上面の全面において、上側分割体48の内側に固定された上側加熱板70の下面に固着されるゴム板72に接触するように位置させる。これにより、上側分割体48と下側分割体50との間に配置されたフィルムコンデンサ素子10の上方への変位を不能とする。また、それと共に、かかるフィルムコンデンサ素子10を、下側分割体50の内側に固定されたダイヤフラム62上に載置される挟圧平板90の鉛直上方において、挟圧平板90の長さ方向(
図5の左右方向)の両端縁が、フィルムコンデンサ素子10の長さ方向(
図5の左右方向)両端縁にそれぞれ対応し、且つ挟圧平板90の幅方向(
図5の紙面に直角な方向)の両端部が、フィルムコンデンサ素子10の幅方向(
図5の紙面に直角な方向)の両端縁から側方に突出位置するように配置する(
図8参照)。
【0092】
次に、
図6に示されるように、搬送装置30の一時停止のままで、可動装置(図示せず)にて、下側分割体50を上方に移動させて、上側分割体48と下側分割体50とを相互に組み付けて、それらの組付体からなる収容チャンバ46を構成する。これにより、かかる収容チャンバ46内に収容空間60を形成すると共に、そのような収容空間60内に、真空室66と圧空室68とを、ダイヤフラム62を間に挟んだ上側と下側とに、それぞれ画成する。また、このとき、重合せ物11の搬送方向(
図6の左右方向)において、フィルムコンデンサ素子10(素子構成ユニット13)を間に挟んだ前方側と後方側にそれぞれ位置する二つの保護フィルム14a,14b部分を、下側分割体50の周壁部58の上端面と上側分割体48の周壁部54の下端面との間で挟み付ける。そうして、フィルムコンデンサ素子10を、真空室66内に、中空に浮かせた状態で支持する。
【0093】
そして、そのように、上側分割体48と下側分割体50とを相互に組み付けた後、或いはそれらを組み付ける前に、上側加熱板70を下側加熱板76とを、それらに内蔵された加熱装置にて加熱する。これにより、収容空間60内を加熱して、真空室66内に収容されたフィルムコンデンサ素子10を所定の温度にまで加熱する。
【0094】
なお、上側及び下側加熱板70,76にて加熱されるフィルムコンデンサ素子10の温度は、特に限定されるものではないものの、90〜105℃程度の範囲内の温度とされることが望ましい。何故なら、真空室66内でのフィルムコンデンサ素子10の温度が90℃よりも低い場合には、フィルムコンデンサ素子10内に存在する水分を蒸発させる操作や、金属化フィルム12の樹脂フィルム16と金属蒸着膜18の残留応力を除去する操作等を含む後述する熱エージング処理を十分に行うことが困難となる恐れがあるからである。また、真空室66内でのフィルムコンデンサ素子10の温度が105℃よりも高いと、フィルムコンデンサ素子10を構成する樹脂フィルム16が加熱溶融する恐れがあるからである。
【0095】
その後、
図7に示されるように、真空ポンプ86を作動させて、真空室66内の空気を外部に排出することにより、真空室66内を真空状態とする。また、真空ポンプ86を作動させると同時に、或いは真空ポンプの作動前又は作動後に、コンプレッサ88を作動させて、圧空室68内に圧縮空気を供給する。それにより、圧空室68内を加圧状態として、ダイヤフラム62を真空室66側に弾性変形させて、真空室66内に収容配置されたフィルムコンデンサ素子10を、弾性変形したダイヤフラム62と上側加熱板70との間で挟圧する。
【0096】
本工程では、フィルムコンデンサ素子10が収容配置される真空室66内が真空状態とされるため、真空室66内に収容配置されたフィルムコンデンサ素子10を構成する金属化フィルム12の樹脂フィルム16と金属蒸着膜18との積層面間や、互いに隣り合う金属化フィルム12の積層面間、更には保護フィルム14a,14bとそれらに積層される金属化フィルム12との積層面間に、それぞれ存在する空気や水分が、真空ポンプ86による真空引きによって、各積層面間から強制的に吸い取られる。なお、真空状態とされたときの真空室66内の圧力は、特に限定されるものではないものの、一般には20〜100Pa程度の圧力とされる。
【0097】
また、本工程においては、圧空室68内に圧縮空気を供給した際に、ダイヤフラム62が、先ず、
図7に二点鎖線で示されるように、中心部が最も大きく膨出したドーム状に膨らむように弾性変形し、そのような弾性変形状態のダイヤフラム62の中心部分にて、真空室66内に収容されたフィルムコンデンサ素子10の下面の中心部分を加圧する。その後、圧空室68内への圧縮空気の供給量の増加に伴って、ダイヤフラム62の外周部も真空室66側に向かって膨らみ出し、それにより、フィルムコンデンサ素子10の下面のうち、ダイヤフラム62にて加圧される部分が、中心部から外周縁側に向かって徐々に広がっていく。そして、
図7に実線で示されるように、圧空室68内への圧縮空気の供給量の更なる増加により、ダイヤフラム62が、フィルムコンデンサ素子10の下面の形状や、上側加熱板70のゴム板72の下面のうち、フィルムコンデンサ素子10よりも外側に位置する部分の形状に対応した形状に弾性変形することによって、フィルムコンデンサ素子10の下面の全面を、弾性変形したダイヤフラム62にて加圧するようになる。このとき、ダイヤフラム62とフィルムコンデンサ素子10との間に配置された挟圧平板90が、ダイヤフラム62の弾性変形に追従して、弾性変形しつつ、フィルムコンデンサ素子10の下面に押圧接触する。
【0098】
かくして、本工程では、弾性変形したダイヤフラム62の加圧力に基づいて、フィルムコンデンサ素子10が、挟圧平板90と上側加熱板70との間で、先ず、中心部が挟圧され、その後、被挟圧部分が、外周縁側に広がっていき、やがて、フィルムコンデンサ素子10の全体が、挟圧平板90と上側加熱板70との間で挟圧されるようになる。
【0099】
このとき、フィルムコンデンサ素子10の被挟圧部分が、フィルムコンデンサ素子10の中心部から外周縁側に広がっていくにつれて、フィルムコンデンサ素子10を構成する各金属化フィルム12の樹脂フィルム16と金属蒸着膜18との積層面間や、互いに隣り合う金属化フィルム12の積層面間、或いは保護フィルム14a,14bとそれらに積層される金属化フィルム12の積層面間に、それぞれ存在する空気や水分が、フィルムコンデンサ素子10の外周縁側に押し出されるように移動する。また、この際には、挟圧平板90が、ダイヤフラム62に追従して弾性変形するため、フィルムコンデンサ素子10内での空気や水分の移動の外周縁側への移動が、挟圧平板90によって阻害されることがない。そして、フィルムコンデンサ素子10の上記した各積層面間において、フィルムコンデンサ素子10の外周縁側に移動した空気や水分が、真空ポンプ86による真空引きによって、各積層面間から、より迅速に且つ確実に吸い取られることとなる。また、上側及び下側加熱板70,76によるフィルムコンデンサ素子10の加熱によって、フィルムコンデンサ素子10の各積層面間から、水分が蒸発させられる。なお、加圧状態とされたときの圧空室68内の圧力は、何等限定されるものではないものの、好ましくは0.05〜3.0MPa程度の圧力とされる。
【0100】
また、本工程では、フィルムコンデンサ素子10が、単に、圧縮空気の圧力(ダイヤフラム62の加圧力)に基づいて、挟圧平板90と上側加熱板70との間で挟圧されるだけであるところから、例えば、圧縮空気の圧力よりも大きな締付ボルトの締付力に基づいて、フィルムコンデンサ素子10を挟圧するようにした、従来のエージング処理装置を用いる場合とは異なって、フィルムコンデンサ素子10を構成する金属化フィルム12の樹脂フィルム16と金属蒸着膜18とが、また、互いに積層される金属化フィルム12同士が、更には保護フィルム14a,14bとそれらに積層される金属化フィルム12とが、それぞれ、必要以上に強固に圧接されることはない。それ故、挟圧平板90と上側加熱板70との間での挟圧により、フィルムコンデンサ素子10内の空気や水分が、金属化フィルム12の樹脂フィルム16と金属蒸着膜18の積層面間や、互いに積層される金属化フィルム12の積層面間、或いは保護フィルム14a,14bと金属化フィルム12の積層面間に閉じ込められてしまうようなこともない。また、そのように、フィルムコンデンサ素子10内に、熱伝導を阻害する空気溜まりが完全に消失されるため、加熱による熱が、フィルムコンデンサ素子10の内部に、より迅速に伝わるようになる。そして、それによって、フィルムコンデンサ素子10内の水分の蒸発が、有利に促進される。
【0101】
さらに、本工程においては、フィルムコンデンサ素子10が90〜105℃程度の範囲内の温度で加熱されつつ、圧縮空気により弾性変形したダイヤフラム62の加圧力に基づいて、挟圧平板90と上側加熱板70との間で挟圧される。これによって、フィルムコンデンサ素子10を構成する各金属化フィルム12の樹脂フィルム16及び金属蒸着膜18と保護フィルム14a,14bの残留応力が除去される。また、フィルムコンデンサ素子10内に空気溜まりが完全に消失されることで、フィルムコンデンサ素子10内部への熱伝導が効果的に高められるため、樹脂フィルム16及び金属蒸着膜18と保護フィルム14a,14bの残留応力の除去が、より一層効率的且つ確実に実施される。そして、その結果として、各金属化フィルム12の樹脂フィルム16と金属蒸着膜18との積層面間や、互いに積層される金属化フィルム12の積層面間、更には、保護フィルム14a,14bとそれらに積層される金属化フィルム12との積層面間における密着性が、それぞれ、効果的に高められる。
【0102】
しかも、本工程では、フィルムコンデンサ素子10が、挟圧平板90と上側加熱板70との間で挟圧される際に、フィルムコンデンサ素子10の上面と下面とに対して、挟圧平板90と上側加熱板70のゴム板72とから等分布荷重が加えられる。このため、フィルムコンデンサ素子10の上記した各積層面が、それらの全面において、より均一に密着される。また、上述したように、それら各積層面が必要以上に強固に圧接されないことで、フィルムコンデンサ素子10の内部に、上側及び下側加熱板70,76の加熱による熱が十分に伝えられるところから、フィルムコンデンサ素子10を構成する各金属化フィルム12の樹脂フィルム16及び金属蒸着膜18と保護フィルム14a,14bの残留応力が、より短時間に除去され得る。
【0103】
また、本工程においては、フィルムコンデンサ素子10の上面と下面の全面が、弾性体からなる挟圧平板90とゴム板72に押し付けられつつ、フィルムコンデンサ素子10が、弾性変形したダイヤフラム62の加圧力に基づいて、挟圧平板90と上側加熱板70との間で挟圧される。それ故、フィルムコンデンサ素子10の挟圧時に、挟圧平板90と上側加熱板70のゴム板72が、それら挟圧平板90と上側加熱板70との間での挟圧力によってフィルムコンデンサ素子10に生ずる変形を許容乃至は吸収するように弾性変形する。
【0104】
さらに、
図7に示されるように、本工程では、加熱されたフィルムコンデンサ素子10の長さ方向両側端面(側面)と、フィルムコンデンサ素子10と略同一長さを有する挟圧平板90の長さ方向両側端面(側面)とに対して、弾性変形したダイヤフラム62が、それらの端面を外側から覆うように押圧接触する。このため、フィルムコンデンサ素子10の素子構成ユニット13の長さ方向両端面(側面)に対して、二つの保護フィルム14a,14bが密着し、それによって、フィルムコンデンサ素子10の長さ方向両側端面の保護が図られるようになる。
【0105】
そして、前述したように、圧縮空気により弾性変形したダイヤフラム62に追従して弾性変形したときの挟圧平板90の弾性変形量が、ダイヤフラム62の弾性変形量よりも小さくされているため、
図8及び
図9に示される如く、本工程では、圧縮空気により弾性変形したダイヤフラム62の加圧力に基づいて、フィルムコンデンサ素子10を挟圧平板90と上側加熱板70との間で挟圧したときに、フィルムコンデンサ素子10の、隙間形成部位たる幅方向両端部を加圧するダイヤフラム62部分の弾性変形が、フィルムコンデンサ素子10の幅方向両端から側方に延出する、挟圧平板90の幅方向両端部からなる延出部108,108にて抑制されて、かかるダイヤフラム62部分からフィルムコンデンサ素子10の幅方向両端部に及ぼされる加圧力が緩和される。これによって、挟圧平板90と上側加熱板70との間でのフィルムコンデンサ素子10の挟圧時に、フィルムコンデンサ素子10を構成する複数の金属化フィルム12の幅方向両端部が曲がり変形することが阻止される。その結果、フィルムコンデンサ素子10の幅方向両側の側面21において側方に開口する複数の隙間22が、弾性変形したダイヤフラム62の加圧力によって変形することが可及的に防止されて、それらの隙間22が潰れてしまうことが阻止される。
【0106】
また、本工程では、挟圧平板90に延出部108,108が設けられていることで、保護フィルム14aが、フィルムコンデンサ素子10の幅方向両側の側面21,21に対して、それらの側面21,21に設けられた隙間22を閉塞するように密着することが阻止される。それによって、例えば、フィルムコンデンサ素子10の幅方向両側側面21,21へのメタリコン電極24,24の形成前に、それら幅方向両側側面21,21に密着した保護フィルム14aを除去するための余分な作業を行う必要がない。
【0107】
かくして、本工程では、真空室66内に収容配置されたフィルムコンデンサ素子10を90〜105℃程度にまで加熱しながら、収容チャンバ46の真空室66内を20〜100Pa程度にまで減圧すると共に、圧空室68内を0.05〜3.0MPa程度にまで加圧して、かかる圧空室68内の加圧により弾性変形したダイヤフラム62の加圧力に基づいて、フィルムコンデンサ素子10を挟圧平板90と上側加熱板70との間で挟圧する一連の操作からなる熱エージング処理を実施することにより、フィルムコンデンサ素子10内の空気と水分を除去すると共に、フィルムコンデンサ素子10内の残留応力の除去するのである。
【0108】
なお、真空室66内の減圧と圧空室68内の加圧は、瞬時に完了する。従って、熱エージング処理機32を用いたフィルムコンデンサ素子10に対する本工程の熱エージング処理は、具体的には、収容チャンバ46内で90〜105℃程度の温度にまで加熱されたフィルムコンデンサ素子10を、挟圧平板90と上側加熱板70との間で、30〜120秒間程度の時間、挟圧することによって実施される。
【0109】
そして、そのようなフィルムコンデンサ素子10に対する熱エージング処理が終了したら、
図4に示されるように、熱エージング処理機32の収容チャンバ46の下側分割体50を下方に移動させて、熱エージング処理が完了したフィルムコンデンサ素子10を、収容チャンバ46の収容空間60内から離脱させた後、搬送装置30による重合せ物11の搬送により、かかるフィルムコンデンサ素子10を切断装置109の設置箇所まで搬送する。その後、かかる切断装置109のカッタ105,105にて、フィルムコンデンサ素子10から、その長さ方向に延び出す保護フィルム14a,14bをそれぞれ切除する。かくして、
図1に示される如き構造を有する、独立したフィルムコンデンサ素子10を得るのである。そしてまた、そのようなフィルムコンデンサ素子10の幅方向両側面にメタリコン電極24がそれぞれ形成されて、
図2に示される如き構造を有するフィルムコンデンサ26を得るのである。
【0110】
以上の説明から明らかなように、本実施形態のエージング装置28にあっては、フィルムコンデンサ素子10に対する熱エージング処理が、極めて短時間に且つ効率的に実施できる。そして、そのような熱エージング処理により、フィルムコンデンサ素子10の幅方向両側の側面21,21にそれぞれ設けられた、メタリコン電極24が侵入可能な隙間22を潰すことなしに、フィルムコンデンサ素子10内から空気や水分を短時間に且つ確実に除去できると共に、フィルムコンデンサ素子10を構成する金属化フィルム12の樹脂フィルム16と金属蒸着膜18との積層面間や、互いに積層される金属化フィルム12の積層面間、保護フィルム14a,14bとそれらに積層される金属化フィルム12との積層面間における密着性を、各積層面の全面において均一に高めることができる。
【0111】
しかも、かかる熱エージング処理の実施に際して、フィルムコンデンサ素子10が、熱エージング処理機32内に配置される上側及び下側加熱板70,76にて加熱されるため、エージング装置28から大型の加熱炉が省略され、それによって、エージング装置28の小型化と低コスト化が、有利に図られ得る。
【0112】
従って、本実施形態のエージング装置28を用いれば、フィルムコンデンサ素子10に対する熱エージング処理の実施により、フィルムコンデンサ素子10において、静電容量の増加、直列等価抵抗の低減化、耐電圧の向上、メタリコン電極24と金属蒸着膜18との安定した接続等が、悉く有利に実現されて、コンデンサ性能の向上が、効果的に図られ得る。その上、そのようなフィルムコンデンサ素子10に対する熱エージング処理が、コンパクトなスペースで、且つ可及的に低いコストで、しかも極めて短い時間で、確実に実施することが可能となるのである。
【0113】
また、本実施形態のエージング装置28では、フィルムコンデンサ素子10に対する熱エージング処理を熱エージング処理機32にて実施する際に、挟圧平板90と上側加熱板70との間での挟圧力によって、フィルムコンデンサ素子10に生ずる変形が、挟圧平板90と上側加熱板70のゴム板72の弾性変形によって許容乃至は吸収されるようになっている。これにより、挟圧平板90と上側加熱板70との間でのフィルムコンデンサ素子10の挟圧力に起因して、フィルムコンデンサ素子10の上面や下面に皺が生じたり、或いはフィルムコンデンサ素子10が損傷したりすることが、有利に防止され得る。
【0114】
加えて、本実施形態のエージング装置28を有するフィルムコンデンサ素子10の製造装置を用いれば、上記の如き数々の優れた特徴を有するフィルムコンデンサ素子10の複数を、極めて短い時間の間に、効率的に且つ確実に製造することが可能となる。
【0115】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0116】
例えば、前記実施形態では、複数の金属化フィルム12を積層してなる素子構成ユニット13の両側に保護フィルム14a,14bが積層されてなるフィルムコンデンサ素子10に対して、熱エージング処理が施されるようになっていたが、かかるフィルムコンデンサ素子10は、少なくとも一つの誘電体膜と少なくとも一つの金属蒸着膜とが交互に積層されてなる構造を有する積層体を用いて構成されると共に、保護フィルムが、積層体の積層方向の表面を覆うように配してなる構造を有しておれば良い。
【0117】
従って、フィルムコンデンサ素子が、例えば、積層体たる金属化フィルム12を巻回することにより、かかる金属化フィルム12を積層してなる(素子構成ユニット)に対して、保護フィルム14を更に巻回してなる、所謂巻回タイプの構造を有するものであっても良く、或いは、蒸着重合膜からなる誘電体膜と金属蒸着膜が交互に積層されてなる構造を有する積層体を積層乃至は巻回して得た素子構成ユニットに、保護フィルムが、かかる素子構成ユニットの積層方向の表面覆うように配してなる構造を有するものであっても良いのである。
【0118】
また、金属化フィルム12は、金属蒸着膜18が樹脂フィルム16の両面にそれぞれ積層形成されてなる構造を有していても良い。このような構造の金属化フィルム12を用いる場合には、例えば、かかる金属化フィルム12と、金属蒸着膜18が何等積層形成されていない樹脂フィルム16とを積層した構造の積層体を用いて、フィルムコンデンサ素子10が形成される。
【0119】
さらに、例えば、複数の金属化フィルム12を積層して、積層体を構成しても良い。そして、そのような積層体を更に積層して、或いは巻回して得た素子構成ユニットを用いて、フィルムコンデンサ素子10を構成することも可能である。また、そうして形成されたフィルムコンデンサ素子10においては、複数の金属化フィルム12からなる積層体の一つを間に挟んで、その両側に位置する二つの積層体の幅方向端部同士の間に、フィルムコンデンサ素子10の幅方向両側の側面21,21において側方に開口する隙間22が形成される。
【0120】
また、前記実施形態では、複数の金属化フィルム12を幅方向に互い違いにずらしながらて積層することにより、一つの金属化フィルム12を間に挟んで、その両側に位置する二つの金属化フィルム12,12の幅方向端部同士の間に、隙間22が形成されていた。しかしながら、例えば、幅の広い金属化フィルム12(積層体)と幅の狭い金属化フィルム12(積層体)とを交互に積層することによって、互いに隣合う広幅の金属化フィルム12同士の間に、隙間22を形成することも可能である。
【0121】
さらに、前記実施形態のエージング装置28にあっては、二つの保護フィルム14a,14bにより互いに連結された複数のフィルムコンデンサ素子10を有する重合せ物11を、二つの保護フィルム14a,14bで連続的に搬送する搬送装置30を有していた。そして、この搬送装置30にて、複数のフィルムコンデンサ素子10を搬送しながら、その搬送途中で、フィルムコンデンサ素子10を熱エージング処理機32に次々と投入することにより、それら複数のフィルムコンデンサ素子10に対する熱エージング処理が連続的に実施されるようになっていた。しかしながら、エージング装置28から搬送装置30を省略して、互いに独立したフィルムコンデンサ素子10の一つ一つを、熱エージング処理機32内に、非連続的に投入し、所謂バッチ式で、フィルムコンデンサ素子10に対する熱エージング処理を実施することも可能である。
【0122】
更にまた、熱エージング処理機32の収容チャンバ46内に収容されたフィルムコンデンサ素子10のダイヤフラム62による加圧方向(
図3の上側方向)への変位を規制する規制手段と、かかるフィルムコンデンサ素子10を加熱する加熱手段とを、別個の部材乃至は装置にて構成することもできる。
【0123】
また、挟圧平板90は、フィルムコンデンサ素子10の挟圧平板90との接触面に対応した形状と、かかるフィルムコンデンサ素子10の接触面の全面に接触可能な大きさとを有し、しかも、フィルムコンデンサ素子との接触時に、フィルムコンデンサ素子10の隙間22が設けられる両側側面21,21から側方に延出する延出部108,108を一体的に備えていることが望ましいが、挟圧平板90の構造は、何等これに限定されるものではない。即ち、挟圧平板90の形状が、フィルムコンデンサ素子10の挟圧平板90との接触面とは異なる形状とされていても良い。また、挟圧平板90の大きさが、フィルムコンデンサ素子10の挟圧平板90との接触面よりも、多少、小さな大きさとされていても良い。更に、フィルムコンデンサ素子10の隙間22が設けられる両側側面21,21から側方に延出する延出部108,108が、挟圧平板90から省略されていても良い。但し、延出部108,108を省略する場合にあっても、
図10に示されるように、挟圧平板90の両側の端部111(
図10には片側の端部111のみを示す)が、金属化フィルム12(積層体)の積層方向において、フィルムコンデンサ素子10の両側側面21(
図10には片側の側面21のみを示す)に設けられる隙間22と対応位置している必要がある。
【0124】
さらに、変形防止手段は、例示された挟圧平板90に、何等、限定されるものではなく、圧縮空気により弾性変形したダイヤフラム62の加圧力により、金属化フィルム12の幅方向両端部からなる隙間形成部位の曲がり変形を阻止し得る構造を有するものであれば、様々な構造が採用され得る。
【0125】
例えば、
図11に示されるように、金属等の剛性を有する材料にて構成された平板状の変形防止板110,110にて、変形防止手段を構成しても良い。そして、これらの変形防止板110,110は、例えば、ダイヤフラム62上に接着されて、ダイヤフラム62が圧縮空気により弾性変形したときに、フィルムコンデンサ素子10の幅方向両側の端部とダイヤフラム62との間に介在させられることにより、フィルムコンデンサ素子10の幅方向両側の端部に位置する各金属化フィルム12の隙間形成部位の曲がり変形を阻止して、隙間22の潰れ変形を阻止するように構成される。このような構成によれば、変形防止板110,110に邪魔されることなく、フィルムコンデンサ素子10が、弾性変形したダイヤフラム62にて、より良好に加圧され、以て、フィルムコンデンサ素子10内部からの空気や水分の除去が、更に一層確実に且つ効率的に行われ得る。
【0126】
また、そのような変形防止板110,110にて変形防止手段を構成する場合には、例えば、
図12に示されるように、変形防止板110,110を、上下方向にスライド移動可能に配置しても良い。即ち、下側分割体50の周壁部58のうち、収容チャンバ46内に収容されたフィルムコンデンサ素子10の幅方向に対応する方向において互い対向する部分に、溝部112をそれぞれ設けると共に、それら各溝部124内に、上下方向に延びる案内軸114をそれぞれ形成する。そして、各変形防止板110の一端部を、各溝部112内に突入させて、かかる一端部に、案内軸114を摺動可能に挿通させる。これにより、各変形防止板110を、案内溝114にて案内されつつ、上下方向にスライド移動可能とするのである。このような構造によれば、弾性変形したときのダイヤフラム62の膨出形態に拘わらず、変形防止板110が、フィルムコンデンサ素子10の幅方向両端部とダイヤフラム62との間の特定の位置に介在させられる。そして、その結果として、フィルムコンデンサ素子10の幅方向両側面21,21に設けられた隙間22の潰れ変形が、更に一層効果的に且つ確実に阻止され得ることとなる。
【0127】
なお、
図11及び
図12に示されるような構造を採用する場合にあっては、変形防止板110を、矩形の枠体形状をもって構成しても良い。この場合には、かかる枠体の長さ方向乃至は幅方向のうちの何れか一方向の両側に位置する部分が、弾性変形したダイヤフラム62の加圧力に基づいて、隙間22が設けられるフィルムコンデンサ素子10の二つの端部にそれぞれ接触位置させられる一方、ダイヤフラム62が弾性変形したときにも、それらのうちの他方向の両側に位置する部分が、フィルムコンデンサ素子10には接触しないように配置させられることとなる。
【0128】
また、変形防止手段は、収容チャンバ46の真空室66内のダイヤフラム62と規制部材としての上側加熱板70との間において、必ずしも変位可能とされている必要はなく、真空室66内に位置固定に配置されていても良い。しかしながら、その場合にあっても、フィルムコンデンサ素子10が収容チャンバ46内に収容されたときに、かかるフィルムコンデンサ素子10の、隙間22が形成される二つの端部とダイヤフラム62との間に位置するように配置されている必要がある。
【0129】
さらに、上記したように、変形防止手段は、弾性を有していても良く、或いは弾性を有していなくても良い。しかしながら、変形防止手段が弾性を有する場合には、ダイヤフラム62の圧縮空気による弾性変形に追従して弾性変形するものの、そのときの弾性変形量が、ダイヤフラム62の弾性変形量よりも小さくなるよう弾性を有しているこのが望ましい。従って、変形防止手段を構成する材料としては、特に限定されるものではないものの、上記の如き弾性や剛性を有するものが、適宜に採用される。また、変形防止手段の形状も、フィルムコンデンサ素子10の大きさや形状等に応じて、適宜に変更可能である。
【0130】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。