特許第6185067号(P6185067)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185067
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ニコチン組成物
(51)【国際特許分類】
   A24F 47/00 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   A24F47/00
【請求項の数】32
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-529114(P2015-529114)
(86)(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公表番号】特表2015-527071(P2015-527071A)
(43)【公表日】2015年9月17日
(86)【国際出願番号】GB2013052231
(87)【国際公開番号】WO2014033437
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2016年2月16日
(31)【優先権主張番号】1215273.2
(32)【優先日】2012年8月28日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】510000482
【氏名又は名称】カインド・コンシューマー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KIND CONSUMER LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(72)【発明者】
【氏名】アレックス・ハーン
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート・ビムセン・ロウ
(72)【発明者】
【氏名】リティカ・グプタ
(72)【発明者】
【氏名】クリス・モイセス
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−531188(JP,A)
【文献】 特表2012−513275(JP,A)
【文献】 特表2014−504852(JP,A)
【文献】 特表2014−501105(JP,A)
【文献】 特表2011−519641(JP,A)
【文献】 特表2015−509702(JP,A)
【文献】 特公平04−069990(JP,B2)
【文献】 中国特許出願公開第102266125(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102080276(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101084801(CN,A)
【文献】 特表2005−533770(JP,A)
【文献】 特開2010−280721(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第01017032(GB,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0002520(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/107737(WO,A1)
【文献】 特表2013−520982(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0018840(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0213021(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩;
少なくとも90%(w/w)の、噴射剤(ここで、該噴射剤はヒドロフルオロカーボンである)
一価アルコール;および
0.1〜1%(w/w)の、グリコールおよび/またはグリコールエーテル(ここで、該グリコールおよび/またはグリコールエーテルは、プロピレングリコールを含む)
を含む吸入用組成物であって、一価アルコール:グリコールまたはグリコールエーテルの重量比が6:1〜1:1であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
一価アルコール:グリコールまたはグリコールエーテルの重量比が5:1〜1.5:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
グリコールおよび/またはグリコールエーテルが、プロピレングリコールと、ポリプロピレングリコールおよび/またはポリエチレングリコール(PEG)の組み合わせである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
一価アルコールがエタノールである、請求項1〜3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物の総重量に基づいて0.5〜1.5%(w/w)のエタノールを含む、請求項1〜3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物がさらにヒトTAS2R苦味受容体アゴニストを含み、好ましくは、ヒトTAS2R苦味受容体アゴニストがサッカリンである、請求項1〜5の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
組成物がさらにサッカリンを含み、ニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩:サッカリンの重量比が12:1〜5.5:1である、請求項1〜6の何れか1項に記載の組成物。
【請求項8】
さらに風味成分、好ましくはメントールおよび/またはバニリンを含む、請求項1〜7の何れか1項に記載の組成物。
【請求項9】
組成物が、組成物の総重量に基づいて0.1%(w/w)以下のメントールを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物の総重量に基づいて0.001%(w/w)〜0.045%(w/w)のニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩を含む、請求項1〜9の何れか1項に記載の組成物。
【請求項11】
組成物の総重量に基づいて0.04%(w/w)〜0.07%(w/w)のニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩を含む、請求項1〜9の何れか1項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物の総重量に基づいて0.065%(w/w)〜0.1%(w/w)のニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩を含む、請求項1〜9の何れか1項に記載の組成物。
【請求項13】
組成物の総重量に基づいて、
0.03〜0.05%(w/w)のメントール、
0.25〜0.4%(w/w)のプロピレングリコール、
0.9〜1%(w/w)のエタノール、
サッカリン、および、
(i) 0.025%(w/w)〜0.03%(w/w)のニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩、または
(ii) 0.054%(w/w)〜0.058%(w/w)のニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩、または
(iii) 0.08%(w/w)〜0.088%(w/w)のニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩の何れかを含み、残りはHFA-134aである組成物であって、ニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩:サッカリンの比が9.5:1〜8:1(w/w)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか1項に記載の組成物を含む加圧容器。
【請求項15】
3×10Pa〜1.5×10Paの圧力で加圧した請求項14に記載の加圧容器。
【請求項16】
ハウジング;
ハウジング内の吸入用組成物の加圧リザーバー;
リザーバーからハウジングの外への吸入用組成物のための出口であって、少なくとも幾らかの液滴が10μm以下の直径を有する液滴の形態で吸入用組成物を排出するよう設定された出口;および
出口を通る吸入用組成物の流れを制御するための出口バルブ
を含む擬似タバコであって、吸入用組成物が請求項1〜13の何れか1項に記載されたものである、擬似タバコ。
【請求項17】
出口バルブが呼吸作動型バルブである、請求項16に記載の擬似タバコ。
【請求項18】
少なくとも50%のリザーバー容積を満たし、出口に向かって吸入用組成物を逃すよう設定された、出口バルブ近くからリザーバーに伸びるキャピラリープラグをさらに含む、請求項16または17に記載の擬似タバコ。
【請求項19】
ハウジングが出口末端および反対側の末端を有し、さらに、
組成物がリザーバーから流路に沿ってハウジングの出口末端の出口から外へ流れるための組成物流路;
空気入口からハウジングの出口末端の空気出口への空気流路を規定するハウジング内の柔軟な隔壁;
隔壁と共に動ける、バイアス力によって組成物流路を閉じる位置に傾くバルブ構成要素
を含む擬似タバコであって、出口末端での吸引で、空気流路を通る流れが起こり、バルブ構成要素に圧力差を提供し、それによって、バイアス力に抵抗して組成物流路を開くようバルブ構成要素を持ち上げ、
吸引を止めると、組成物流路が閉じるようバイアス力が設定される、請求項17に記載の擬似タバコ。
【請求項20】
呼吸作動型バルブが出口とリザーバーの間の非定量バルブであり、呼吸作動型バルブが、リザーバーから出口末端に伸びる流路を含み、流路の少なくとも一部が変形可能なチューブであり、吸引する力が装置にかかっていないときは変形可能なチューブを締めて閉じ、出口で吸引されているときは流路を開くようチューブを開放してリザーバーから出口へ途切れのない流れを提供する締め具を含む、請求項17に記載の擬似タバコ。
【請求項21】
さらにリザーバーと連通している詰め替えバルブを含み、それを介してリザーバーの詰め替えができる、請求項16〜20の何れか1項に記載の擬似タバコ。
【請求項22】
リザーバーのサイズ、リザーバー内の圧力および最も狭い点での出口のサイズが、出口バルブを完全に開いたときに、リザーバーが30秒未満で排出するようにした請求項16〜21の何れか1項に記載の擬似タバコ。
【請求項23】
液滴の少なくとも99%volが10μm未満の直径を有するものである組成物の液滴を排出するよう設定された請求項16〜22の何れか1項に記載の擬似タバコ。
【請求項24】
20μm未満のDv90、および/または
5μm未満のDv50、および/または
2μm未満のDv10
のサイズプロファイルを有する組成物の液滴を排出するよう設定された請求項16〜23の何れか1項に記載の擬似タバコ。
【請求項25】
使用者に15ng/ml以下のニコチン動脈Cmaxおよび/または10秒〜20分のtmaxを提供するよう設定された請求項16〜24の何れか1項に記載の擬似タバコ。
【請求項26】
0.5〜3L/分の速度で排出するよう設定された請求項16〜25の何れか1項に記載の擬似タバコ。
【請求項27】
1〜7kPaの吸入抵抗を提供するよう設定された請求項16〜26の何れか1項に記載の擬似タバコ。
【請求項28】
0.01〜0.06mg/mlの速度でニコチンを使用者に送達するよう設定された請求項16〜27の何れか1項に記載の擬似タバコ。
【請求項29】
請求項1〜13の何れか1項に記載の組成物を製造する方法であって、
多価アルコール:グリコールまたはグリコールエーテルの重量比が6:1〜1:1である多価アルコールおよびグリコールまたはグリコールエーテルおよび所望によりTAS2R味覚受容体アゴニストおよび/または風味成分を含む予混合物を調製し;
ニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩を予混合物に加えて、ニコチン含有混合物を得て;そして
噴射剤をニコチン含有混合物に加える
ことを含む方法。
【請求項30】
組成物がTAS2R味覚受容体アゴニストおよび/または風味成分を含み、TAS2R味覚受容体アゴニストおよび/または風味成分を添加する前に、多価アルコールおよびグリコールまたはグリコールエーテルを合わせる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
使用者に15ng/ml以下のニコチン動脈Cmaxおよび/または10秒〜20分のtmaxを提供するよう設定された請求項16〜25の何れか1項に記載の擬似タバコ。
【請求項32】
請求項1〜13の何れか1項に記載の組成物を含むアルツハイマー病およびパーキンソン病から選択されるニコチン中毒および神経変性疾患の治療剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニコチンを含む吸入用組成物、その製造方法および該吸入用組成物を含む擬似タバコに関する。
【背景技術】
【0002】
喫煙は、ニコチンによって引き起こされる快感に関係する中毒性活動であり、喫煙者の常用癖および習慣的行為によって強固になる。これらの特性は、一酸化炭素、タールおよび他のタバコ燃焼産物の多数の健康への有害作用にもかかわらず、禁煙を非常に難しくする。ニコチン自体が健康に有害なのではなく、むしろタバコの煙の副産物が有害なのである。
【0003】
ニコチン皮膚パッチ、ニコチン含有ガム、ニコチンカートリッジおよびニコチン吸入器のような多くの禁煙補助剤が現在市販されている。これらの補助剤は、付随する危険な副産物なしでタバコの煙によって提供される血中ニコチン含量の増加を達成しようとするが、喫煙の習慣性の面にはほとんど対処していない。さらに、上記禁煙補助剤の送達特性の詳細な分析は、送達速度、濃度、持続性およびバイオアベイラビリティーに関する作用の広範な変動を明らかにした(Hukkanen et al., Pharmacol. Rev. 2005, 57, 79)。従って、これらの補助剤は従来のタバコに似た薬物動態プロファイルを提供しないため、有効なニコチン置換療法(NRT)または従来のタバコの快楽を得るための喫煙代替物としてのこれらの用途は、極めて限定的でしかない。
【0004】
WO2011/095781は、ニコチン組成物を含む缶およびタバコのような形状の詰め替え可能な吸入器を含む擬似喫煙装置を記載する。GB1528391は、ニコチンまたはニコチン塩、その溶解用溶媒、風味剤および噴射剤を含む組成物を記載する。WO2006/004646は、有機酸、HFAおよび所望により共溶媒と共に遊離塩基ニコチンを含む吸入用ニコチン組成物を記載する。しかし、これらの組成物は、従来のタバコに類似した薬物動態プロファイルを使用者に提供しない。US2009/005423は、喫煙によって生じる血漿ニコチン濃度、すなわち口腔粘膜に組成物を適用した後の急速で強い濃度ピークを模倣することを目的としたニコチン組成物の適用を記載する。しかし、この組成物によって提供されるピークは、従来の喫煙の結果として典型的に観察されるものより時間スケールが短く、急速に減衰する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、先行技術に関連する課題の少なくとも幾つかに対処しようとするものであるか、または、少なくともその商業的に許容される代替解決法を提供しようとするものである。
【0006】
第一の局面において、本発明は、
ニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩;
噴射剤;
一価アルコール;および
グリコールおよび/またはグリコールエーテル
を含む吸入用組成物であって、一価アルコール:グリコールおよび/またはグリコールエーテルの重量比が、6:1〜1:1であることを特徴とする吸入用組成物を提供する。
【0007】
本明細書で定義された局面または態様はそれぞれ、明らかに反しない限り、他の局面または態様の何れかと組み合わせてよい。特に、好ましいかまたは好都合であるとして示された何らかの特徴は、好ましいかまたは好都合であるとして示された任意の1個または複数個の特徴と組み合わせてよい。
【0008】
用語“直径”は、本明細書で使用されるとき、液滴の最大の大きさを包含する。本明細書でいう液滴直径は、Malvern Spraytec deviceを用いて測定され得る。
【0009】
用語“Dv10”は、本明細書で使用されるとき、組成物中10%vol未満の液滴がそれより小さい直径を有する液滴直径をいう。用語“Dv50”は、本明細書で使用されるとき、組成物中50%vol未満の液滴がそれより小さい直径を有する液滴直径をいう。用語“Dv90”は、本明細書で使用されるとき、組成物中90%vol未満の液滴がそれより小さい直径を有する液滴直径をいう。Dv10、Dv50およびDv90値は、Malvern Spraytec deviceを用いて決定され得る。
【0010】
用語“ニコチン遊離塩基”は、本明細書で使用されるとき、高pHレベルで、すなわち7より高いpHレベルで優位であるニコチンの形態をいう。
用語“Cmax”は、本明細書で使用されるとき、対象の血流中の化合物の、この場合はニコチンの最大測定濃度をいう。
用語“tmax”は、本明細書で使用されるとき、化合物の投与からCmaxに達するまでにかかる時間をいう。
【0011】
本開示またはその好ましい態様の要素を示すとき、単数および“当該”という記載は、1個以上の要素を意味することを意図する。用語“含む”および“有する”は、包含的であることを意図しており、記載された要素以外のさらなる要素があってもよいことを意味する。
【0012】
本発明の組成物は、経口吸入によって使用者に送達され得る。従って、それが喫煙の習慣的な面の幾つかを模倣するため、ニコチン置換療法(NRT)の使用に有効であるか、または、従来の快楽を得るための喫煙代替物としての使用に有効である。
【0013】
従来のタバコおよび電子“e”タバコの双方で、吸入によって使用者に送達されるために、ニコチンを加熱しなければならない(従来のタバコの場合は燃焼となり、電子タバコの場合は気化となる)。このような加熱は、アルデヒド、ケトン、ニトロソアミンおよび重金属のような有害な副産物の発生をもたらし、それらもまた吸入によって使用者に送達される。対照的に、本発明の組成物は、加熱せずに吸入によって送達され得る。このことは、使用者に送達される有害な種のレベルを著しく減少させることを意味する。さらに、加熱工程が存在しないことは、バッテリーのような動力源(電子タバコの場合)またはマッチのような点火手段(従来のタバコの場合)の必要がないため、好都合である。
【0014】
グリコールおよび/またはグリコールエーテルは、ニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩の組成物への溶解を助ける。これは、使用者への送達の際に刺激を起こし得る、組成物中のニコチン(または存在するならば他の添加物、例えばサッカリン)の沈殿物の存在を防ぐ。さらに、グリコールまたはグリコールエーテルの存在は、経時的に起こるニコチンの分解を減らし、それによって、組成物の長期間安定性または“貯蔵寿命(shelf life)”を延長する。例えば、40℃、相対湿度75%で6カ月貯蔵後の本発明の第一の局面による組成物のクロマトグラフィー分析は、ニコチンフラクションに対して次に示す不純物フラクションのパーセンテージを示し得る:0.3%面積以下のアナバシン;0.3%面積以下のアナタビン;0.3%面積以下のβ−ニコチリン;0.3%面積以下のコチニン;0.3%面積以下のミオスミン;0.3%面積以下のニコチン n−オキシド;0.3%面積以下のノルニコチン。これらの不純物の限度は、ニコチン出発物質についての欧州薬局方規格の範囲内であり、組成物の有効期間にわたって好ましい分解特性を示す。これにもかかわらず、欧州薬局方が、本発明で主張する許容できる不純物許容度を多少なりとも制限するとみなすべきではない。
【0015】
一価アルコールは、グリコールまたはグリコールエーテルより小さい粘度を有する。従って、本組成物は、一価アルコールが存在しない組成物より小さい直径の液滴を形成できる。本発明者らにより、驚くべきことに、上に特記した一価アルコール:グリコールまたはグリコールエーテルの比は、長期安定性(例えば組成物は2〜40℃の温度で少なくとも1週間単相として存在する)および小さい液滴サイズの両方を望ましい組み合わせで有する組成物をもたらすことが分かった。
【0016】
好都合には、このような一価アルコール:グリコールまたはグリコールエーテルの比を有するニコチン組成物が、従来の加圧式定量吸入器(pMDI)によって送達されるとき、本組成物は、一部(例えば少なくとも10%vol)が10μm未満の、典型的には5μm未満の直径を有する液滴の形態で送達される。典型的には、液滴の大部分(例えば少なくとも50%vol)が5μm未満の直径を有し、典型的には液滴の実質的に全て(例えば少なくとも90%vol、またはさらに少なくとも95%vol)が5μm未満の直径を有する。好都合には、使用者に投与されたとき、10μm未満のサイズを有する液滴は、例えば中咽頭よりむしろ肺に沈着する傾向がある。従って、ニコチンの少なくとも一部(例えば少なくとも10%(w/w))、典型的には実質的に全て(例えば少なくとも90%(w/w))が肺経路によって血流に入る。このことは、本組成物が、経口で吸入されるとき、先行技術のニコチン組成物よりも、従来のタバコの薬物動態プロファイルを模倣できることを意味する。本組成物は、経口吸入により投与されて従来のタバコの薬物動態プロファイルを模倣できるため、特に、NRTまたは従来のタバコの快楽を得るための喫煙代替物としての使用に有効である。
【0017】
典型的には、液滴の少なくとも一部(例えば少なくとも10%vol)は、0.5〜3μmのサイズを有する。このような液滴は、肺深部に沈着でき、そのため、特に肺経路によって血流に入ることができる。典型的には、液滴の少なくとも一部(例えば少なくとも10%vol)は、0.4〜0.5μmの直径を有する。従来のタバコの煙が0.4〜0.5μmの範囲の平均粒径を有するため、このような液滴は、特に従来のタバコの薬物動態プロファイルを模倣できる。
【0018】
先行技術の組成物と対照的に、本発明の組成物は、有機酸を使用せずに小さい直径の液滴を形成できる。その結果、組成物の使用者が感じる刺激レベルは低下する。
【0019】
本発明の組成物が下に記載された擬似タバコの1つによって使用者に送達されるとき、液滴は、次に示す液滴サイズプロファイルを示し得る:
20μm未満、典型的に5μm未満、より典型的に3μm未満、さらにより典型的に2.9μm未満のDv90、および/または
6μm未満、典型的に0.8μm未満、より典型的に0.7μm未満、さらにより典型的に0.6μm未満のDv50、および/または
2μm未満、典型的に0.3μm未満、より典型的に0.25μm未満、さらにより典型的に0.2μm未満のDv10。
【0020】
この特定の液滴サイズプロファイルは、タバコの煙の粒径プロファイルに類似している。その結果、送達された組成物の薬物動態プロファイルは、従来のタバコの薬物動態プロファイルを密接に模倣する。特に、本組成物の使用者への送達は、高ニコチン濃度の長いピークと共に、短いtmax、すなわち最初の吸入から最大ニコチン血漿レベルまでの時間を生じる。結果として、本組成物は、ニコチン置換療法(NRT)または従来のタバコの快楽を得るための喫煙代替物としての使用に非常に効果的である。
【0021】
要約すると、本発明の第一の局面の組成物は、とりわけ安定であり、使用者にほとんど刺激を与えず、従来のタバコの薬物動態プロファイルを模倣でき、熱を適用せずに経口吸入により送達され、結果として、従来のタバコまたは電子タバコより、使用者に送達する有害な種が少ない。
【0022】
あらゆる適当なソースのニコチンを用いてよい。例えば、ニコチンは、ニコチン遊離塩基、ニコチン誘導体および/またはニコチン塩であってよい。ニコチン遊離塩基を用いるとき、液体の形態で用いてよい。ニコチン塩を用いるとき、それを溶液の形態で用いてよい。適当なニコチン塩は、酢酸、プロピオン酸、1,2−酪酸、メチル酪酸、吉草酸、ラウリン酸、パルミチン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、アルギン酸、塩酸、クロロ白金酸、シリコタングステン酸(silicotungstic)、ピルビン酸、グルタミン酸およびアスパラギン酸と形成される塩を含む。他のニコチン塩、例えば酒石酸水素ニコチン二水和物もまた用いられ得る。2種以上のニコチン塩の混合物を用い得る。ニコチン塩はまた、リポソーム封入してよい。このような封入は、ニコチンの沈殿が起こることなく、組成物のニコチン濃度をさらに上げることを可能にし得る。
【0023】
上記の通り、一価アルコール:グリコールまたはグリコールエーテルの重量比は、安定性および望ましい液滴サイズプロファイルの組み合わせをもたらす。好ましくは一価アルコール:グリコールまたはグリコールエーテルの重量比は、5:1〜1.5:1、好ましくは4:1〜2:1、より好ましくは3:1〜2.5:1、さらにより好ましくは約2.8:1である。
【0024】
グリコールおよび/またはグリコールエーテルは、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリエチレングリコール(PEG)、またはその2種以上の組み合わせから選択され得る。適当には、ポリエチレングリコールは、20,000g/mol未満の分子量を有し得る。適当なポリエチレングリコールの例はPEG 400である。好ましくは、グリコールまたはグリコールエーテルは、プロピレングリコールである。プロピレングリコールは、特に望ましい液滴サイズプロファイルを有する組成物を提供し、添加物の溶媒和を向上し、添加物の分解を減らす。好ましくは、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.1〜2%(w/w)、好ましくは0.1〜1%(w/w)、より好ましくは0.2〜0.5%(w/w)、さらにより好ましくは0.25〜0.4%(w/w)、またさらにより好ましくは約0.34%(w/w)のプロピレングリコールを含む。
【0025】
好ましくは、一価アルコールは、エタノールである。エタノールは、グリコールまたはグリコールエーテルと比べて特に低い粘度を有し、従って、組成物が小さな直径の液滴を形成するのを可能にするのに特に効果的である。さらに、エタノールは安価であり、比較的毒性がなく、容易に入手できる。好ましくは、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.5〜1.5%(w/w)、好ましくは0.7〜1.3%(w/w)、より好ましくは0.9〜1%(w/w)、さらにより好ましくは約0.95%(w/w)のエタノールを含む。
【0026】
好ましくは、組成物は、さらに、ヒトTAS2R苦味受容体アゴニストを含む。ヒトTAS2R苦味受容体アゴニストの使用は気管支拡張を誘発し、結果として、送達関連咳嗽のレベルを減少させる。その結果、本組成物は刺激をほとんど起こさないため、使用者は、本組成物をはるかに許容することができる。
【0027】
ヒトTAS2R苦味受容体アゴニストは、天然に存在する化合物であっても合成化合物であってもよい。適当な天然に存在する化合物の例は、アブシンチン、アロイン、アマロゲンチン、アンドログラホリド、アルボレシン、アルグラビン、アルテモリン、樟脳、カスカリリン、クニシン、クリスポリド、エチルピラジン、ファルカリンジオール、ヘリシン、フムロン異性体、リモニン、ノスカピン、パパベリン、パルテノライド、クアシン、シニグリンおよびチアミンを含む。適当な合成化合物の例は、アセスルファムK、ベンゾイン、カリソプロドール、クロロキン、クロモリン、ダプソン、安息香酸デナトニウム、ジメチルチオホルムアミド、ジフェンヒドラミン、ジビニルスルホキシド、ファモチジン、サッカリン、安息香酸ナトリウムおよびシクラミン酸ナトリウムを含む。
【0028】
好ましくは、ヒトTAS2R苦味受容体アゴニストはサッカリンである。サッカリンは、ヒトTAS2R苦味受容体アゴニストとして特に有効であり、組成物に容易に溶解し得て、容易に利用可能であり、組成物に望ましい味のプロファイルを提供する。好ましくは、ニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩:サッカリンの重量比は、12:1〜5.5:1、好ましくは11:1〜6:1、より好ましくは10:1〜7:1、さらにより好ましくは9.5:1〜8:1、さらにより好ましくは約8.75:1である。低レベルのサッカリンは、許容されない耐用性を有する組成物をもたらす。高レベルのサッカリンは、サッカリンが組成物中でサッカリンの沈殿を形成し、組成物が投与されたときにそれが刺激を起こし得るか、または組成物を擬似タバコに組み込む際にそれが妨害物となり得るため、許容される耐用性であるが好ましくない。このような割合はまた、最適な味のプロファイルを有する組成物を提供する。
【0029】
噴射剤は、ヒドロフルオロカーボンであってよく、好ましくはヒドロフルオロアルカン、さらにより好ましくは1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFA-134a)または1,1,1,2,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC-227)である。当該化合物は、噴射剤として特に有効であり、身体への有害作用を有さない。
【0030】
組成物は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも60%(w/w)の噴射剤、好ましくは90〜99.5%(w/w)、好ましくは96〜99%(w/w)、より好ましくは98〜99%(w/w)の噴射剤を含んでよい。噴射剤は、好ましくは液化している。
【0031】
組成物は、さらに風味成分を含んでよい。ニコチンは、しばしば舌が焼けるような味覚を生じさせ得る苦い長く続く味を有する。風味成分の使用は、この味をマスクし得る。適当な風味成分は、典型的にタバコ製品に添加されている風味成分を含む。例は、カロテノイド製品、アルケノール、アルデヒド、エステルおよびδ−ラクトン風味成分を含む。適当なカロテノイド製品は、β−イオノン、α−イオノン、β−ダマスコン、β−ダマセノン、オキソ−エデュラン I、オキソ−エデュラン II、テアスピロン、4−オキソ−β−イオノン、3−オキソ−α−イオノン、ジヒドロアクチニジオリド、4−オキソイソホロン、サフラナール、β−シクロシトラールを含む。適当なアルケノールは、C〜C10アルケノールを含み、好ましくはC〜Cアルケノールである。具体的な例は、cis−2−ペンテン−1−オール、cis−2−ヘキセン−1−オール、trans−2−ヘキセン−1−オール、trans−2−ヘキセン−1−オール、cis−3−ヘキセン−1−オール、trans−3−ヘキセン−1−オール、trans−2−ヘプテン−1−オール、cis−3−ヘプテン−1−オール、trans−3−ヘプテン−1−オール、cis−4−ヘプテン−1−オール、trans−2−オクテン−1−オール、cis−3−オクテン−1−オール、cis−5−オクテン−1−オール、1−オクテン−3−オールおよび3−オクテン−2−オールを含む。適当なアルデヒドは、ベンズアルデヒド、ブドウ糖およびシンナムアルデヒドを含む。適当なエステルは、ヘキサン酸アリル、酢酸ベンジル、酢酸ボルニル、酪酸ブチル、酪酸エチル、ヘキサン酸エチル、桂皮酸エチル、蟻酸エチル、ヘプタン酸エチル、イソ吉草酸エチル、乳酸エチル、ノナン酸エチル、吉草酸エチル、酢酸ゲラニル、酪酸ゲラニル、酢酸イソブチル、蟻酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸イソプロピル、酢酸リナリル、酪酸リナリル、蟻酸リナリル、酢酸メチル、アントラニル酸メチル、安息香酸メチル、ベンジル酢酸メチル、酪酸メチル、桂皮酸メチル、ペンタン酸メチル、フェニル酢酸メチル、サリチル酸メチル(冬緑油)、カプリル酸ノニル、酢酸オクチル、酪酸オクチル、酢酸アミル(酢酸ペンチル)、ヘキサン酸ペンチル、ペンタン酸ペンチル、エタン酸プロピル、イソ酪酸プロピル、酪酸テルペニル、蟻酸エチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、吉草酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、オクタン酸エチル、ノナン酸エチル、デカン酸エチル、ドデカン酸エチル、ミリスチン酸エチル、パルミチン酸エチルを含む。適当なδ−ラクトン風味成分は、δ−ヘキサラクトン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、マッソイアラクトン、ジャスミンラクトンおよび6−ペンチル−α−ピロンを含む。風味成分は、不快なニコチンの味をマスクするために役立ち得る。
【0032】
風味成分は、好ましくはメントールおよび/またはバニリンである。サッカリンと共にメントールが存在することで、使用者が感じる刺激を減らす。好ましくは、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.1%(w/w)以下、好ましくは0.01%(w/w)〜0.08%(w/w)、より好ましくは0.02%(w/w)〜0.06%(w/w)、さらに好ましくは0.03%(w/w)〜0.05%(w/w)、いっそう好ましくは約0.04%(w/w)のメントールを含む。
【0033】
組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.001%(w/w)〜0.045%(w/w)、好ましくは0.01%(w/w)〜0.045%(w/w)、より好ましくは0.015%(w/w)〜0.04%(w/w)、さらにより好ましくは0.02%(w/w)〜0.035%(w/w)、またさらにより好ましくは0.025%(w/w)〜0.03%(w/w)、最も好ましくは約0.028%(w/w)のニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩を含み得る。このような組成物は、“低濃度”ニコチンタバコの作用に類似する作用を提供する。
【0034】
組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.04%(w/w)〜0.07%(w/w)、好ましくは0.045%(w/w)〜0.065%(w/w)、より好ましくは0.05%(w/w)〜0.06%(w/w)、さらにより好ましくは0.054%(w/w)〜0.058%(w/w)、またさらにより好ましくは約0.056%(w/w)のニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩を含み得る。このような組成物は、“中間濃度”ニコチンタバコに類似する作用を提供する。
【0035】
組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.065%(w/w)〜0.1%(w/w)、好ましくは0.07%(w/w)〜0.095%(w/w)、より好ましくは0.075%(w/w)〜0.09%(w/w)、さらにより好ましくは0.08%(w/w)〜0.088%(w/w)、またさらにより好ましくは約0.084%(w/w)のニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩を含み得る。このような組成物は、“高濃度”ニコチンタバコに類似する作用を提供する。
【0036】
特に好ましい組成物は、組成物の総重量に基づいて、
0.03〜0.05%(w/w)、好ましくは約0.04%(w/w)のメントール、
0.25〜0.4%(w/w)、好ましくは約0.34%(w/w)のプロピレングリコール、
0.9〜1%(w/w)、好ましくは約0.95%(w/w)のエタノール、
サッカリン、および、
(i) 0.025%(w/w)〜0.03%(w/w)、好ましくは約0.028%(w/w)のニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩、または
(ii) 0.054%(w/w)〜0.058%(w/w)、好ましくは約0.056%(w/w)のニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩、または
(iii) 0.08%(w/w)〜0.088%(w/w)、好ましくは約0.084%(w/w)のニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩
の何れかを含み、残りがHFA-134aであり、ニコチン:サッカリンの重量比が9.5:1〜8:1、好ましくは約8.75:1である。このような組成物は、特に望ましい上記利点の組み合わせを示す。
【0037】
好ましくは、溶媒の総含量、すなわち一価アルコールおよびグリコールおよび/またはグリコールエーテルの総含量が、組成物の総重量に基づいて、35%(w/w)未満、好ましくは6%(w/w)未満、より好ましくは0.1%(w/w)〜2.5%(w/w)である。組成物の溶媒総含量を減らせば、その粘度が低下し、そのことは、より好ましい液滴サイズを形成できることを意味する。
【0038】
好ましくは、組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.01%(w/w)未満、より好ましくは0.005%(w/w)未満、さらにより好ましくは0.001%(w/w)未満のニコチン酸を含む。最も好ましくは、組成物は、実質的にニコチン酸を含まない。ニコチン酸の存在は、組成物中の沈殿形成をもたらし得る。
【0039】
第一の局面の組成物は、上記成分“からなる”ものであり得る。第一の局面の組成物は、不可避の不純物と共に、上記成分“からなる”ものであり得る。
【0040】
第二の局面において、本発明は、第一の局面の組成物を含む加圧容器を提供する。
本発明の第二の局面の加圧容器は、第一の局面のニコチン組成物のガス流を使用者に放出するために使用され得る。例えば、加圧容器は、容器の内容物を使用者の肺に送達する手段と共に提供され得る。このような手段は、ボタン、トリガーまたは呼吸作動型メカニズムの形態をとり得る。加圧容器は、定量ではないニコチンを使用者に送達するために使用され得る。これは、使用者が、吸入したい組成物のニコチンの量を制御できるニコチン置換制御の自律を可能にするため、NRTの従来方法、例えば現在市販されている従来の吸入器、鼻用スプレー、ロゼンジおよびパッチよりも好都合であり得る。さらに、加圧容器は、従来のタバコの快楽を得るための喫煙代替物として使用できる。
【0041】
本発明の加圧容器は、別のエネルギー源を必要とせずに、使用者に組成物を放出するために使用され得る。例えば、組成物は、物質の加熱、物質の燃焼または電気を動力とするバッテリーを必要とせずに放出され得る。上で論じた通り、このことは、使用者に送達される有害な副産物のレベルを減少させ得る。
【0042】
本発明の加圧容器は、加圧された缶、例えば加圧されたアルミニウム缶の形態をとり得る。缶は、完全にリサイクル可能および/または再使用可能であり得る。缶は、高圧勾配下で望ましい組成物を含む自動販売機またはより大きな容器によって、必要に応じて詰め替えされ得る。一つの態様において、缶は、AW5052 アルミニウム缶である。
【0043】
加圧容器は、擬似タバコであってよい。
加圧容器は、エアロゾル化した液滴の混合物として組成物を分配し得る。好ましくは、混合物は、タバコの煙と類似した粒径分布を有する。混合物は、蒸気または煙の見かけを有し得る。
【0044】
加圧容器は、3×10Pa〜1.5×10Pa、好ましくは5×10Pa〜2×10Pa、より好ましくは5.5×10Pa〜1×10Pa、さらにより好ましくは約6×10Paの圧力まで加圧され得る。
【0045】
加圧容器は、擬似タバコ、特に下記の本発明の第三の局面の擬似タバコを詰め替えるために使用され得る。
【0046】
加圧容器内容物は、16〜18mgのニコチン、好ましくは約17.18mgのニコチン;7〜9mgのメントール、好ましくは約8.176mgのメントール;1〜3mgのサッカリン、好ましくは約1.963mgのサッカリン;68〜72mgのプロピレングリコール、好ましくは約69.5mgのプロピレングリコール;190〜200mgのエタノール、好ましくは約194.2mgのエタノール;および18〜22gのHFA-134a、好ましくは約20.15gのHFA-134aを含み得る。あるいは、加圧容器内容物は、10〜12mgのニコチン、好ましくは約11.45mgのニコチン;7〜9mgのメントール、好ましくは約8.176mgのメントール;1.1〜1.4mgのサッカリン、好ましくは約1.288mgのサッカリン;68〜72mgのプロピレングリコール、好ましくは約69.5mgのプロピレングリコール;190〜200mgのエタノール、好ましくは約194.2mgのエタノール;18〜22gのHFA-134a、好ましくは約20.16gのHFA-134aを含み得る。あるいは、加圧容器内容物は、5〜7mgのニコチン、好ましくは約5.73mgのニコチン;7〜9mgのメントール、好ましくは約8.176mgのメントール;0.5〜0.8mgのサッカリン、好ましくは約0.654mgのサッカリン;68〜72mgのプロピレングリコール、好ましくは約69.5mgのプロピレングリコール;190〜200mgのエタノール、好ましくは約194.2mgのエタノール;および18〜22gのHFA-134a、好ましくは約20.16gのHFA-134aを含み得る。あるいは、加圧容器内容物は、約7〜9mgのメントール、好ましくは8.176mgのメントール;0.1〜0.3mgのサッカリン、好ましくは約0.204mgのサッカリン;68〜72mgのプロピレングリコール、好ましくは約69.5mgのプロピレングリコール;190〜200mgのエタノール、好ましくは約194.2mgのエタノール;および18〜22gのHFA-134a、好ましくは約20.17gのHFA-134aを含み得る。
【0047】
加圧容器は擬似タバコを詰め替えるために使用され得る。当該“詰め替え”容器は、0.6〜0.7mgのニコチン、好ましくは約0.672mgのニコチン;0.2〜0.4mgのメントール、好ましくは約0.32mgのメントール;0.07〜0.09mgのサッカリン、好ましくは約0.077mgのサッカリン;2.5〜2.9mgのプロピレングリコール、好ましくは約2.72mgのプロピレングリコール;7〜9mgのエタノール、好ましくは約7.6mgのエタノール;および760〜800mgのHFA-13a、好ましくは約788.6mgのHFA-134aを含み得る。あるいは、当該詰め替え品は、0.4〜0.5mgのニコチン、好ましくは約0.448mgのニコチン;0.2〜0.4mgのメントール、好ましくは約0.32mgのメントール;0.04〜0.06mgのサッカリン、好ましくは約0.051mgのサッカリン;2.5〜2.9mgのプロピレングリコール、好ましくは約2.72mgのプロピレングリコール;7〜9mgのエタノール、好ましくは約7.6mgのエタノール;および760〜800mgのHFA-134a、好ましくは約788.9mgのHFA-134aを含み得る。あるいは、詰め替え品はそれぞれ、0.1〜0.3mgのニコチン、好ましくは約0.224mgのニコチン、0.2〜0.4mgのメントール、好ましくは約0.32mgのメントール;0.01〜0.03mgのサッカリン、好ましくは約0.026mgのサッカリン、2.5〜2.9mgのプロピレングリコール、好ましくは約2.72mgのプロピレングリコール、7〜9mgのエタノール、好ましくは約7.6mgのエタノールおよび760〜800mgのHFA-134a、好ましくは約789.1mgのHFA-134aを含み得る。あるいは、当該詰め替え品は、0.2〜0.4mgのメントール、好ましくは約0.32mgのメントール、0.007mg〜0.009mgのサッカリン、好ましくは約0.008mgのサッカリン、2.5〜2.9mgのプロピレングリコール、好ましくは約2.72mgのプロピレングリコール;7〜9mgのエタノール、好ましくは約7.6mgのエタノール;および760〜800mgのHFA-134a、好ましくは約789.4mgのHFA-134aを含み得る。
【0048】
上記の加圧容器内容物中のニコチンは、当然に、その薬学的に許容される誘導体または塩と置換され得る。
【0049】
第三の局面において、本発明は、
ハウジング;
ハウジング内の吸入用組成物の加圧リザーバー;
吸入用組成物がリザーバーからハウジング外へ出る出口であって、少なくとも液滴の一部が10μm以下の直径を有する液滴の形態で吸入用組成物を排出するよう設定された出口;および
出口を通る吸入用組成物の流れを制御するための出口バルブ
を含む擬似タバコ装置であって、吸入用組成物が第一の局面に従うものである、擬似タバコ装置を提供する。
【0050】
例えば、出口は、少なくとも液滴の1%volが10μm以下の直径を有する液滴の形態で、吸入用組成物を排出するよう設定され得る。
【0051】
好ましくは、液滴の大部分(例えば少なくとも50%vol)が10μm以下の直径を有し、より好ましくは実質的に全ての液滴(例えば少なくとも90%vol)が10μm以下の直径を有する。好ましくは少なくとも幾らかの液滴(例えば少なくとも1%vol)が5μm以下の直径を有し、好ましくは大多数の液滴(例えば少なくとも50%vol)が5μm以下の直径を有し、より好ましくは実質的に全ての液滴(例えば少なくとも90%vol)が5μm以下の直径を有する。
【0052】
好ましくは、出口バルブは、呼吸作動型バルブである。
好ましくは、擬似タバコは、さらに、少なくとも50%のリザーバー容積を満たし、出口に向かって吸入用組成物を逃すよう設定された、出口バルブ近くからリザーバーに伸びるキャピラリープラグを含む。
【0053】
好ましくは、擬似タバコは、呼吸作動型バルブを有し、ハウジングは出口末端および反対側の末端を有し、擬似タバコは、さらに、
組成物がリザーバーから流路に沿ってハウジングの出口末端の出口から外へ流れるための組成物流路;
空気入口からハウジングの出口末端の空気出口への空気流路を規定するハウジング内の柔軟な隔壁;
隔壁と共に動ける、バイアス力によって組成物流路を閉じる位置に傾くバルブ構成要素
を含み、出口末端での吸引で、空気流路を通る流れが起こり、バルブ構成要素に圧力差を提供し、それによって、バイアス力に抵抗して組成物流路を開くようバルブ構成要素を持ち上げ、
吸引を止めると、組成物流路が閉じるようバイアス力が設定されるものである。
【0054】
好ましくは、擬似タバコは、呼吸作動型バルブを有し、該呼吸作動型バルブは、出口とリザーバーの間の非定量バルブであり、該呼吸作動型バルブは、リザーバーから出口末端に伸びる流路を含み、流路の少なくとも一部は変形可能なチューブであり、吸引する力が装置にかかっていないときは変形可能なチューブを締めて閉じ、出口で吸引されているときは流路を開くようチューブを開放してリザーバーから出口へ途切れのない流れを提供する締め具を含む。この擬似タバコは、以降“ピンチバルブ”擬似タバコという。
【0055】
好ましくは、擬似タバコは、さらにリザーバーと連通している詰め替えバルブを含み、それを介してリザーバーの詰め替えができる。擬似タバコを、本発明の第二の局面に従って、容器から詰め替え得る。
【0056】
好ましくは、リザーバーのサイズ、リザーバー内の圧力および最も狭い点での出口のサイズは、出口バルブを完全に開いたときに、リザーバーが30秒未満で排出するようにする。
【0057】
好ましくは、擬似タバコは、液滴の少なくとも97%vol、好ましくは少なくとも98%vol、より好ましくは少なくとも98.5%vol、さらにより好ましくは少なくとも99%volが10μm未満の直径を有するものである、組成物の液滴を排出するよう設定される。直径10μm未満の液滴は肺に沈着し、これは従来のタバコの薬物動態プロファイルと類似する薬物動態プロファイルが提供されることを意味する。
【0058】
好ましくは、擬似タバコは、次に示すサイズプロファイルを有する組成物の液滴を排出するよう設定される:
20μm未満、好ましくは5μm未満、より好ましくは3μm未満、さらにより好ましくは2.9μm未満のDv90、および/または
6μm未満、好ましくは0.8μm未満、より好ましくは0.7μm未満、さらにより好ましくは0.6μm未満のDv50、および/または
2μm未満、好ましくは0.3μm未満、より好ましくは0.25μm未満、さらにより好ましくは0.2μm未満のDv10。
【0059】
よって、一つの態様において、擬似タバコは、下記のサイズプロファイルを有する液滴を排出するよう設定される:Dv90<20μm、Dv50<6μmおよびDv10<2μm;好ましくは、Dv90<5μm、Dv50<0.8μmおよびDv10<0.3μm;より好ましくは、Dv90<3μm、Dv50<0.7μmおよびDv10<0.25μm;さらにより好ましくは、Dv90<2.9μm、Dv50<0.6μmおよびDv10<0.2μm。
【0060】
このようなサイズプロファイルは、従来のタバコのサイズプロファイルに類似しており、このことは、従来のタバコの薬物動態プロファイルを密接に模倣した薬物動態プロファイルが提供されることを意味する。
【0061】
擬似タバコは、使用者に、15ng/ml、典型的に2〜10ng/mlまたはさらに4〜8ng/mlのニコチン動脈Cmaxを提供し得る。約2ng/mlより大きいCmax値は、使用者に、従来のタバコを吸うときに経験する“恍惚感”(head rush)を提供する。
【0062】
擬似タバコは、10秒〜20分、典型的には5分〜15分、しばしば約12分のtmaxでこれらのCmax値を提供し得る。従来技術の擬似タバコ装置と比較して、このようなtmax値は、従来のタバコが示すtmax値により近い。その結果、本発明は、従来のタバコの薬物動態プロファイルをより密接に模倣し、そのため、特に、NRTまたは従来のタバコの快楽を得るための喫煙代替物として使用するのに有効である。
【0063】
好ましくは、擬似タバコは、0.5〜3L/分の速度で排出するよう設定される。この速度は、従来のタバコから煙が排出される速度と類似している。好ましくは、擬似タバコは、1〜7kPa、好ましくは約4kPaの吸入抵抗を提供するよう設定される。この吸入抵抗は、従来のタバコによって提供される吸入抵抗と類似している。擬似タバコが上記排出速度および/または吸入抵抗を有するよう設定されるとき、好ましくは、擬似タバコは、0.01〜0.06mg/mlの速度でニコチンを使用者に送達するよう設定される。これは、従来のタバコより少ない。しかし、喫煙の習慣的な面を上記排出速度および吸入抵抗によって模倣しているため、使用者は、従来の禁煙補助剤と比較して、より低レベルの吸入ニコチンで同レベルの満足を得る。
【0064】
第四の局面において、本発明は、第一の局面の組成物を製造する方法であって、
多価アルコール:グリコールまたはグリコールエーテルの重量比が6:1〜1:1である、多価アルコール、および、グリコールおよび/またはグリコールエーテル、および所望によりTAS2R味覚受容体アゴニストおよび/または風味剤を含む予混合物を調製し;
ニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩を予混合物に加えて、ニコチン含有混合物を得て;そして
噴射剤をニコチン含有混合物に加える
ことを含む方法を提供する。
【0065】
多価アルコールおよびグリコールまたはグリコールエーテルを合わせる前にニコチンを加えた場合、ニコチンの沈殿が起こり得る。同様に、組成物が他の成分、例えば風味成分またはTAS2R味覚受容体アゴニストを含む場合、ニコチンの沈殿を避けるためには、ニコチンを加える前にこれらの成分を予混合物に完全に混合するべきである。特に、組成物がメントールを含むとき、ニコチンの沈殿を避けるためには、ニコチンを加える前にメントールを予混合物に完全に溶解するべきである。
【0066】
組成物がTAS2R味覚受容体アゴニストおよび/または風味成分を含むとき、好ましくは、TAS2R味覚受容体アゴニストおよび/または風味成分を加える前に、多価アルコールおよびグリコールまたはグリコールエーテルを合わせる。これにより、風味成分またはTAS2R味覚受容体アゴニストの沈殿が避けられる。
【0067】
第五の局面において、本発明は、
ニコチンまたはその薬学的に許容される誘導体または塩;
一価アルコール;および
グリコールおよび/またはグリコールエーテル
を含む組成物であって、一価アルコール:グリコールまたはグリコールエーテルの重量比が6:1〜1:1であることを特徴とする組成物を提供する。
【0068】
このような組成物は、第一の局面の組成物の製造における中間体として使用され得る。第一の局面の好ましい追加成分、濃度および比は、第五の局面でも好ましい。
【0069】
第六の局面において、本発明は、使用者に15ng/ml以下のニコチン静脈Cmaxおよび/または10秒〜20分のtmaxを提供するよう設定された擬似タバコを提供する。
【0070】
第七の局面において、本発明は、本発明の第一の局面の組成物を使用して、ニコチン中毒および神経変性疾患、例えばアルツハイマー病およびパーキンソン病から選択される状態を処置する方法を提供する。
【0071】
本発明の第一の局面の態様は、従来技術に対して下記の利点を示し得る。組成物中の溶媒の同一性および相対濃度は、向上した長期間安定性を提供するよう最適化され(例えば、沈殿が存在しない、相分離しない、副産物の形成が無視できる程度であること、不純物発生率が低いことによって特徴付けられる)、さらに、組成物中の揮発性および非揮発性溶媒の同一性および相対濃度は、適当な送達方法によって生じるエアロゾルが肺中に沈着し、その結果、それに含まれるニコチンが、肺経路によって血流に入るように最適化される(例えば、最適化された液滴/粒子のサイズ分布によって特徴付けられる)。さらに、組成物中の風味剤およびTAS2R苦味受容体アゴニストの濃度は、使用者が喫煙のように組成物を繰り返し投与したいと思うように、味および耐容性を向上するよう最適化され得る(例えば、組成物の肺への効果的な送達を阻害し得る、咳および呼吸管/咽喉の刺激感などの有害事象の発生率の低下によって特徴付けられる)。また、さらには、組成物は、喫煙の“感覚”を効果的に模倣する擬似タバコ装置によって使用者に送達され得る。また、さらには、ニコチン、TAS2R苦味受容体アゴニストおよび/または風味剤が、沈殿形成を避けながら、全て望ましいレベルで組み込まれ得るように、製造方法および試薬添加の順序を最適化する。さらには、従来可能であったよりも少ないニコチン送達用量で、喫煙者に使いやすい投与レジメンで、臨床的結果(例えば好ましい欲求スコアおよびタバコと類似したtmaxによって特徴づけられる)を達成できるように、組成物を投与でき、それによって、使用者の体験を改善し、組成物を可燃性タバコ製品の代替物としてより有効にする。さらなる利点は、医学的状態の処置として組成物を使用するときに得られる。
【0072】
本発明は、下記の非限定的な図面に関する実施例によって記載される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1図1は、本発明の第一の局面の“高濃度”、“中間濃度”または“低濃度”ニコチン組成物を投与した対象における、時間に対する平均動脈血漿ニコチン濃度のグラフを示す。
図2図2は、本発明の第一の局面の“高濃度”、“中間濃度”または“低濃度”ニコチン組成物を投与した対象における、時間に対する平均欲求VASスコアのグラフを示す。
図3図3は、本発明の第一の局面の“高濃度”ニコチン組成物の吸入後に、間を置いて測定された動脈および静脈のニコチン濃度のプロットを示す。
図4図4は、本発明の第一の局面の“中間濃度”ニコチン組成物の吸入後に、間を置いて測定された動脈および静脈ニコチン濃度のプロットを示す。
【実施例】
【0074】
本発明は、下記の非限定的な実施例についての記載で説明される。
【0075】
製造方法
下記の出発物質を用いた:
サッカリン (Ph. Eur)
プロピレングリコール (EPグレード)
メントール (Ph Eur.)
エタノール (100% BP, Ph. Eur.)
ニコチン (Ph. Eur)
HFA-134a (CPMP 1994)
【0076】
出発物質を下記の順で混合容器に加えた:(i) 5.14gのサッカリン、(ii) 227.0gのプロピレングリコール、(iii) 32.5gのメントール、および(iv) 774.0gのエタノール。メントールペレットが完全に溶解し、透明な液体が観察されるまで、混合物を600rpmで15分間撹拌した。45.6gのニコチンを混合物に加え、撹拌を600rpmでさらに10分間続けた。得られた混合物を、HFA 134aでパージした圧力容器に加えた。容器を密封した後、内部温度が8〜12℃に至るまで冷却し、その温度を維持した。約40kgのHFA-134aを容器に放出した後、マグネチックスターラーで210rpmで撹拌を開始した。合計80kgを添加するまでHFAを容器に放出し続け、その時点で、組成物を210rpmでさらに110分間撹拌した。さらに撹拌しながら、確かに圧力が4.5barを越えないように、そして最終圧力が3〜4barであるように圧力を制御した。撹拌後、組成物を缶に入れた。
【0077】
サッカリンを加える前、または、メントールを完全に溶解する前の何れかでニコチンを添加することによって方法を変更すると、ニコチンの沈殿が起こった。
【0078】
安定性
エタノール:プロピレングリコールの比を変更して幾つかの組成物を調製した。様々な条件下での組成物の安定性を視覚的に決定し、結果を表1および2に示す。エタノール:プロピレングリコールの比1:1未満を有する組成物は、1週間以内に2相に分離した。
【0079】
表1:様々なエタノール:プロピレングリコール比についての安定性データ(サンプル1および2は比較例である)
【表1】
【0080】
表2:様々なエタノール:プロピレングリコール比についての安定性データ
【表2】
用語“可溶”は、沈殿が観察されなかったことを示す。
【0081】
液滴サイズプロファイル
下記の組成物を調製した:
0.04%(w/w)のメントール、
0.006%(w/w)のサッカリン、
0.34%(w/w)のプロピレングリコール、
0.95%(w/w)のエタノール、
0.056%(w/w)のニコチン、
残りHFA-134a。
【0082】
組成物を9個のピンチバルブ擬似タバコに入れた。各装置から5回用量が放出され、それぞれの液滴サイズプロファイルをMalvern Spraytec deviceを使用して測定した。結果を表3に示す。
【0083】
表3:液滴サイズプロファイル
【表3】
【0084】
不純物
下記の組成物を調製した:
0.04%(w/w)のメントール、
0.0032%(w/w)のサッカリン、
0.34%(w/w)のプロピレングリコール、
0.95%(w/w)のエタノール、
0.028%(w/w)のニコチン、
残りHFA-134a。
【0085】
組成物を加圧容器に入れた。ニコチン濃度に対する不純物の容積%を、充填時および6カ月後にクロマトグラフィーで評価した。結果を表4に示す。
【0086】
表4:安定性データ(転置, 40℃/75% RH)(N=1、2および3は、組成物の同じバッチの異なる加圧容器をいう)
【表4】
【0087】
臨床試験
臨床試験は、本発明の第一の局面に従う組成物を含むピンチバルブ擬似タバコによる経口吸入ニコチンの安全性、耐容性および薬物動態を測定するための3パートの試験であった。
【0088】
下記の組成物を試験した:
(1)“高濃度”ニコチン:0.04%(w/w)のメントール、0.0096%(w/w)のサッカリン、0.34%w/wのプロピレングリコール、0.95%(w/w)のエタノール、0.084%(w/w)のニコチン、および、98.5764%(w/w)のHFA-134a。
(2)“中間濃度”ニコチン:0.04%(w/w)のメントール、0.0063%(w/w)のサッカリン、0.34%(w/w)のプロピレングリコール、0.95%(w/w)のエタノール、0.056%(w/w)のニコチン、および、98.6077%(w/w)のHFA-134a。
(3)“低濃度”ニコチン:0.04%(w/w)のメントール、0.0032%(w/w)のサッカリン、0.34%(w/w)のプロピレングリコール、0.95%(w/w)のエタノール、0.028%(w/w)のニコチン、および、98.6388%(w/w)のHFA-134a。
【0089】
パートAは、3種の用量レベルのピンチバルブ擬似タバコによる経口吸入ニコチン組成物の1回投与の安全性、耐容性および動脈薬物動態を評価するものである。パートBは、ピンチバルブ擬似タバコによる経口吸入ニコチンの1回投与の静脈薬物動態を評価するものである。パートCは、ピンチバルブ擬似タバコによる経口吸入ニコチンの繰り返し投与の安全性、耐容性および薬物動態を評価するものである。
【0090】
この試験は、ここ1年間で1日に少なくとも10本の製造タバコを喫煙した男性および女性の参加者について行った。試験はオーストラリアのパースの1つの施設で健康な志願者で行った。
【0091】
参加する試験投与の6週前までにスクリーニング評価を行い、試験に登録した適格な参加者を、−1日目に計画した試験投与の前に継続試験妥当性について再度評価した。試験投与前に止めた登録参加者は何れも交代させた。
【0092】
最少60人の健康な志願者が試験の3パートへの登録を計画した。参加者は試験の1パートより多くのパートに参加できない。
【0093】
パートA:これは、0.028%(w/w)(低濃度)、0.056%(w/w)(中間濃度)および0.084%(w/w)(高濃度)の3種の用量のニコチンでのピンチバルブ擬似タバコによる経口吸入ニコチンの耐容性および動脈薬物動態を評価するための、一重盲無作為化多回投与レベル試験であった。全身循環への送達の迅速性を調べるために、動脈血サンプリングをこのパートの試験に要した。18人の参加者が処置群Aに登録され、ピンチバルブ擬似タバコによって、3種の用量レベルのうち2種を1試験日に与えられるよう無作為化された。ニコチン用量レベルは、0.028%(w/w)(低濃度)、0.056%(w/w)(中間濃度)および0.084%(高濃度)であった。
【0094】
18人の参加者は、それぞれ6人の参加者を含む3群に無作為化された。1群は低用量ニコチンに続いて中間用量ニコチンを与えられ;1群は低用量ニコチンに続いて高用量ニコチンを与えられ;1群は中間用量ニコチンに続いて高用量ニコチンを与えられる。1回目の投与はおよそ午前8時に行い、2回目はおよそ午後1.30に行う。これにより、確かに1回目の投与の循環ニコチン濃度が排泄によりベースラインレベルに至った後、2回目の投与を吸入した。参加者は、自分が与えられたピンチバルブ擬似タバコによる経口吸入ニコチンの用量レベルに関して盲検的であった。
【0095】
パートAの終了時、パートAから得た薬物動態、安全性および耐容性データを、試験した3種の投与レベルのうち、どの2種をパートBで使用するかを決定するためにレビューした。
【0096】
パートB:これは、2用量レベルのピンチバルブ擬似タバコによる経口吸入ニコチンの静脈薬物動態を評価するための、非盲検/一重盲無作為化3群クロスオーバー試験であった。参加者は、自分が与えられたピンチバルブ擬似タバコのニコチン用量レベルに関して盲検的であった。
【0097】
24人の参加者を処置群Bに登録した。参加者はそれぞれ、1日目にあるニコチン用量レベルのピンチバルブ擬似タバコの詰め替え品全部を与えられ、2日目に第2ニコチン用量レベルのピンチバルブ擬似タバコの詰め替え品全部を与えられ、3日目に従来のニコチン吸入器(10mg)の処置を行う、連続3日間に限定された臨床試験ユニットに参加した。処置を受けた順序を無作為化した。
【0098】
パートBの終了時、パートAおよびBから得た薬物動態、安全性および耐容性データを、試験した2種の用量レベルのうち、どれをパートCで使用するかを決定するためにレビューした。
【0099】
パートC:これは、ある用量レベルのニコチンのピンチバルブ擬似タバコによる経口吸入ニコチンの繰り返し投与の耐容性および静脈薬物動態を評価するための、非盲検試験であった。
【0100】
18人の参加者を処置群Cに登録した。参加者はそれぞれ、1日間にニコチンの繰り返し投与を受けた。全ての参加者は、ピンチバルブ擬似タバコによって、同じ用量のニコチンを投与された。ピンチバルブ擬似タバコの詰め替え品全部を毎時12時間吸入した。1回目の投与はおよそ午前8時に行った。
【0101】
表5:試験集団
【表5】
【0102】
薬物動態データ:
薬物動態データを図1に示し、表6に記載する。図1から、動脈サンプリング時間が、薬物動態プロファイルを明確に定義するのに十分であること、特に血漿ニコチンCmaxを定義するのに十分であることが分かった。完了するのに約2分間かかる吸入の開始から、全てのタイミングで採取した。+2分の最初のサンプリング時点で、すでに動脈血へのニコチンの取り込みが明らかである。例えば、0.056%(w/w)の平均動脈ニコチン濃度には、投与前のゼロから2分で2.06ng/ml、すなわち、最終Cmaxの半量未満に上昇した。これから、血漿ニコチンは吸入中に迅速に上昇すると推論できる。平均最大ニコチン濃度は、低濃度、中間濃度、高濃度組成物でそれぞれ2.11ng/ml、3.73ng/mlおよび4.38ng/mlであり、対応するtmaxは、吸入開始後10.2分、7.3分および6.5分であった。
【0103】
動脈薬物動態データの作成には、血管アクセスの点での技術的な困難はないが、試験のこのパートで動脈データはニコチンが動脈循環に到達する迅速性を証明する点で有益である。組成物は経口で吸入されるため、例えば従来のニコチン吸入器によって提供される口腔粘膜送達はもっと遅いことから、ニコチン送達のこの速度は、肺送達の程度であることを示すと結論付けられる。
【0104】
表6:薬物動態データ(動脈濃度)
【表6】
AUCallは“曲線下面積”をいう。
【0105】
薬物動力学データ:
試験の全4部に含まれる薬物動力学測定は、視覚的アナログ尺度(VAS)を使用した欲求反復評価および喫煙衝動の簡単な質問票(QSU−B)である。VASに基づく薬物動力学データを図2に示す。
【0106】
ピンチバルブ擬似タバコからのニコチンエアロゾルの吸入は、欲求を減らす明らかな効果を有し、これは試験の4パート全てで明白である。パートAにおいて、吸入に対する欲求を急激に感じ、次の5時間に亘って徐々にベースラインに戻る。パートAについて統計学的な試験は行っていないが、応答パターンは、3種のニコチン用量全てに亘って一致している。
【0107】
パートAにおいて欲求について明確な用量応答関係性はなかったことが顕著であるが、これは、おそらく循環ニコチン濃度の上昇の薬理学的作用と同様に、喫煙の手から口への習慣的行為および喉ごし(throuat catch)の重要性を反映している。QSU−Bは、低用量(0.028%(w/w))投与後40分、および、中間用量(0.056%(w/w))および高用量(0.084%(w/w))投与後20分で成分スコアおよび総スコアで、欲求VASと一致したパターンを示した。これは、低用量で喫煙衝動に陽性作用を有するが、中間用量および高用量ではそれがより長いことを示唆している。
【0108】
動脈 対 静脈プロット:
図3および4は、高濃度”および“中間濃度”組成物の使用者が体験する動脈および静脈ニコチン濃度のプロットを示す。これらのプロットは、動脈循環に到達する速度を示す。組成物は経口で吸入されるため、ニコチン送達速度は、肺送達の程度と一致している。例えば市販の吸入器によって提供される口腔粘膜送達は、もっと遅い。
【0109】
耐容性
全ての有害事象は軽度または中程度に分類され、重度と報告された有害事象は存在しなかった。試験を通して有意な有害事象(AE)または死亡は見られず、AEによる処置中止となった参加者はいなかった。
【0110】
口内知覚異常は、圧倒的に最も頻繁に報告された治療により発現する有害事象(TEAE)であり、試験の全パートで報告され、少なくとも1回は口内知覚異常を報告したのが合計40人の参加者(68%)であった。関連するTEAEとして、59人の参加者のうち17人(29%)が咽喉刺激感を報告し、9人の参加者(15%)が頭痛を報告し、8人の参加者(14%)が口内知覚鈍麻を報告し、6人の参加者(10%)がめまいを報告した。残りのTEAEは全患者集団の10%未満で起こった。
結果の概要を表7に示す。
【0111】
表7:記録された有害事象
【表7】
【0112】
前述の詳細な説明は、説明および例示の目的で提供したものであり、請求の範囲を限定することを意図しない。本明細書で例示された好ましい態様の多くの変更は、当業者に明らかであり、請求の範囲およびその等価物の範囲内である。
図1
図2
図3
図4