(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185068
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】歯車キャリヤー可撓マウントの潤滑
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20170814BHJP
F16H 1/28 20060101ALI20170814BHJP
F01D 25/16 20060101ALI20170814BHJP
F02C 7/32 20060101ALI20170814BHJP
F02C 7/06 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
F16H57/04 D
F16H57/04 J
F16H1/28
F01D25/16 E
F02C7/32
F02C7/06 D
【請求項の数】18
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-530162(P2015-530162)
(86)(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公表番号】特表2015-528552(P2015-528552A)
(43)【公表日】2015年9月28日
(86)【国際出願番号】US2013059440
(87)【国際公開番号】WO2014046960
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2015年2月27日
(31)【優先権主張番号】61/704,044
(32)【優先日】2012年9月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/727,868
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005449
【氏名又は名称】ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】コフィン,ジェームズ,ビー.
(72)【発明者】
【氏名】マッキューン,マイケル,イー.
(72)【発明者】
【氏名】シェリダン,ウィリアム,ジー.
【審査官】
高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−014489(JP,A)
【文献】
米国特許第05391125(US,A)
【文献】
特開2004−308910(JP,A)
【文献】
特表平08−511605(JP,A)
【文献】
米国特許第6409414(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/16
F02C 7/06
F02C 7/32
F16H 1/28
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊星歯車列アセンブリであって、
キャリヤーによって受容される曲げピンを有し、前記曲げピンおよび前記キャリヤーはそれぞれ、リテーナピンを受容するように構成された第1のピン開口部および第2のピン開口部の少なくとも一部を含み、前記曲げピンは、前記第1のピン開口部と別個の潤滑油導管をさらに含む、遊星歯車列アセンブリ。
【請求項2】
前記潤滑油導管は、前記キャリヤーの外部の軸受潤滑油供給源と連通している、請求項1に記載の遊星歯車列アセンブリ。
【請求項3】
前記潤滑油導管は第1の潤滑油導管であり、前記キャリヤーは、前記軸受潤滑油供給源と前記第1の潤滑油導管との間で潤滑油を連通させる第2の潤滑油導管を含む、請求項2に記載の遊星歯車列アセンブリ。
【請求項4】
前記第2の潤滑油導管から前記第1の潤滑油導管への潤滑油の流れを計量する計量デバイスを含む、請求項3に記載の遊星歯車列アセンブリ。
【請求項5】
前記計量デバイスは、前記曲げピン内に部分的に受容されている、請求項4に記載の遊星歯車列アセンブリ。
【請求項6】
前記潤滑油導管は、潤滑油を前記曲げピンとブッシングとの間のインターフェースへ供給する、請求項1に記載の遊星歯車列アセンブリ。
【請求項7】
前記ブッシングを受容するトルクフレームを含む、請求項6に記載の遊星歯車列アセンブリ。
【請求項8】
前記リテーナピンはボルトである、請求項1に記載の遊星歯車列アセンブリ。
【請求項9】
前記潤滑油導管は、歯車の回転軸に対して横方向に延びる第1の部分と、前記歯車の回転軸に対して平行に延びる第2の部分とを含む、請求項1に記載の遊星歯車列アセンブリ。
【請求項10】
前記曲げピンの外面上のクロッキングフィーチャを含み、前記クロッキングフィーチャは、前記第1のピン開口部の位置を示している、請求項1に記載の遊星歯車列アセンブリ。
【請求項11】
遊星歯車列アセンブリを備えるファン駆動歯車装置であって、前記遊星歯車列アセンブリは、
キャリヤーブッシングを受容するキャリヤーと、
トルクフレームブッシングを受容するトルクフレームと、
前記キャリヤーブッシングおよび前記トルクフレームブッシングによって受容される曲げピンと、を有し、前記キャリヤーおよび前記曲げピンはそれぞれ、前記曲げピンと、前記キャリヤーブッシングおよび前記トルクフレームブッシングのうちの少なくとも1つと、の間のインターフェースへ潤滑油を供給するように構成された潤滑油導管の一部を提供している、ファン駆動歯車装置。
【請求項12】
前記キャリヤー曲げピンおよび前記キャリヤーはそれぞれ、リテーナピンを受容するように構成された第1のピン開口部および第2のピン開口部を含む、請求項11に記載のファン駆動歯車装置。
【請求項13】
前記潤滑油導管は、前記キャリヤーの外部の軸受潤滑油供給源と連通している、請求項11に記載のファン駆動歯車装置。
【請求項14】
前記キャリヤーは、複数の円周方向に間隔を空けて配置された中間歯車を支持し、前記トルクフレームは、前記キャリヤーへ固定された複数の円周方向に間隔を空けて配置された突出部を有する、請求項11に記載のファン駆動歯車装置。
【請求項15】
ターボ機械のインターフェースを潤滑する方法であって、
曲げピンを用いてキャリヤーをトルクフレームへ固定し、
前記キャリヤー中の潤滑油通路および前記トルクフレーム中の潤滑油通路を通じて移動した潤滑油を用いて前記曲げピンのインターフェースを潤滑することを含み、
前記ターボ機械のインターフェースは、遊星歯車列アセンブリのインターフェースである方法。
【請求項16】
前記潤滑油は、前記キャリヤーの外部の潤滑油供給源から前記キャリヤー中の前記潤滑油通路へ移動する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記キャリヤーから前記曲げピン中の穴を通じて延びるリテーナピンを用いて前記ピンの移動を制限することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記穴および前記潤滑油通路は交わらない、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車列アセンブリに関し、特に、歯車キャリヤーの可撓マウントの潤滑に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械(例えば、ガスタービンエンジン)は典型的には、ファン部、圧縮部、燃焼部およびタービン部を含む。ターボ機械は、圧縮部の部分をファン部へ接続する歯車式アーキテクチャを用い得る。歯車式アーキテクチャは、キャリヤーへ固定され得る。キャリヤーは、ブッシングによって支持されたピンによってトルクフレームへ連結される。トルクフレームは、エンジンの他の部分へ固定される。キャリヤーへの偏った荷重およびその結果発生する歯車不整列を制限するため、トルクフレームは、キャリヤー上への曲げ荷重を制限する様態でキャリヤーを支持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
トルクフレームピン、トルクフレームおよびキャリヤー間の相対運動のために、多様なコンポーネントが摩耗し得る。これらのコンポーネント間のインターフェースの位置のために、これらのコンポーネント間の摩耗を制限することが困難となる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の例示的態様による遊星歯車列アセンブリは、特に、キャリヤーによって受容された曲げピンを含む。曲げピンおよびキャリヤーは、リテーナピンを受容するように構成された第1のピン開口部および第2のピン開口部をそれぞれ含む。曲げピンは、第1のピン開口部と別個の潤滑油導管をさらに含む。
【0005】
上記の遊星歯車列アセンブリのさらなる非限定的な実施形態において、潤滑油導管は、キャリヤーの外部の軸受潤滑油供給源と連通し得る。
【0006】
上記の遊星歯車列アセンブリのいずれかのさらなる非限定的な実施形態において、潤滑油導管は第1の潤滑油導管であり、キャリヤーは、第2の潤滑油導管を含む。第2の潤滑油導管は、軸受潤滑油供給源と第1の潤滑油導管との間で潤滑油を連通させ得る。
【0007】
上記の遊星歯車アセンブリのいずれかのさらなる非限定的な実施形態において、アセンブリは、計量デバイスを含み得る。計量デバイスは、第2の潤滑油導管から第1の潤滑油導管への潤滑油の流れを計量する。
【0008】
上記の遊星歯車列アセンブリのうちのいずれかのさらなる非限定的な実施形態において、計量デバイスは、曲げピン内に部分的に受容され得る。
【0009】
上記の遊星歯車列アセンブリのうちいずれかのさらなる非限定的な実施形態において、潤滑油導管は、曲げピンとブッシングとの間のインターフェースへ潤滑油を供給し得る。
【0010】
上記の遊星歯車列アセンブリのうちいずれかのさらなる非限定的な実施形態において、アセンブリは、ブッシングを受容するトルクフレームを含み得る。
【0011】
上記の遊星歯車列アセンブリのうちいずれかのさらなる非限定的な実施形態において、リテーナピンは、ボルトであり得る。
【0012】
上記の遊星歯車列アセンブリのうちいずれかのさらなる非限定的な実施形態において、潤滑油導管は、歯車の回転軸に対して横方向に延びる第1の部分と、歯車の回転軸に対して平行に延びる第2の部分とを含み得る。
【0013】
上記の遊星歯車列アセンブリのうちいずれかのさらなる非限定的な実施形態において、アセンブリは、曲げピンの外面上のクロッキングフィーチャを含み得、クロッキングフィーチャは、第1のピン開口部の位置を示す。
【0014】
本開示の例示的態様によるファン駆動歯車装置は、特に、キャリヤーブッシングを受容するキャリヤーを含む。トルクフレームは、トルクフレームブッシングを受容する。曲げピンは、キャリヤーブッシングおよびトルクフレームブッシングによって受容される。キャリヤーおよび曲げピンはそれぞれ、曲げピンとキャリヤーブッシングおよびトルクフレームブッシングのうちの少なくとも1つとの間のインターフェースへ潤滑油を供給するように構成された潤滑油導管の一部を提供する。
【0015】
上記のファン駆動歯車装置のさらなる非限定的な実施形態において、キャリヤー曲げピンおよびキャリヤーはそれぞれ、リテーナピンを受容するように構成された第1のピン開口部および第2のピン開口部を含み得る。
【0016】
上記のファン駆動歯車装置のうちいずれかのさらなる非限定的な実施形態において、潤滑油導管は、キャリヤーの外部の軸受潤滑油供給源と連通し得る。
【0017】
上記のファン駆動歯車装置のうちいずれかのさらなる非限定的な実施形態において、キャリヤーは、複数の円周方向に間隔を空けて配置された中間歯車を支持し得、トルクフレームは、キャリヤーへ固定された複数の円周方向に間隔を空けて配置された突出部を持ち得る。
【0018】
本開示の例示的態様によるターボ機械インターフェースを潤滑する方法は、特に、曲げピンを用いてキャリヤーをトルクフレームへ固定することと、キャリヤー中の潤滑油通路を通じて移動した潤滑油を用いて曲げピンのインターフェースを潤滑することとを含む。トルクフレームは、潤滑油通路を含む。
【0019】
上記の潤滑方法のさらなる非限定的な実施形態において、潤滑油は、キャリヤーの外部の潤滑油供給源からキャリヤー中の潤滑油通路へ移動し得る。
【0020】
上記の潤滑方法のうちいずれかのさらなる非限定的な実施形態において、方法は、キャリヤーから曲げピン中の穴を通じて延びるリテーナピンを用いてピンの移動を制限することを含み得る。
【0021】
上記の潤滑方法のうちいずれかのさらなる非限定的な実施形態において、穴および潤滑油通路は、交わらない。
【0022】
当業者には、詳細な説明から開示の例の多様な特徴および利点が明らかとなろう。詳細な説明に添付される図面を以下に簡潔に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】
図1のターボ機械の歯車式アーキテクチャおよびキャリヤーの側面図である。
【
図3】
図2の歯車式アーキテクチャおよびキャリヤーの斜視図である。
【
図5】
図2中の領域5(AREA 5)の詳細図である。
【
図6】
図2のキャリヤーからの曲げピンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、例示的なターボ機械の模式図である。このターボ機械は、本例においてはガスタービンエンジン20である。ガスタービンエンジン20は、2軸ターボファンガスタービンエンジンであり、主にファン部22と、圧縮部24と、燃焼部26と、タービン部28とを含む。
【0025】
開示の非限定的な実施形態において2軸ターボファンガスタービンエンジンとして図示されているが、本明細書中に記載されるコンセプトは、ターボファンとの利用に限定されないことが理解されるべきである。すなわち、本教示は、他の種類のターボ機械およびタービンエンジン(例えば、3軸アーキテクチャ)にも適用することができる。さらに、本明細書中に記載されるコンセプトは、ターボ機械環境以外の環境および航空宇宙用途以外の用途において用いられる。
【0026】
例示的エンジン20において、空気流はファン部22からバイパス流路Bおよびコア流路Cへ流れる。バイパス流路Bからの空気流は、エンジン20によって生成される前方推進力の大部分を生成する。圧縮部24は、コア流路Cに沿って空気を送る。圧縮部24からの圧縮空気は、燃焼部26を通じて連通する。燃焼生成物は、タービン部28を通じて膨張する。
【0027】
例示的エンジン20は、エンジン中心軸Aを中心に回転するように取り付けられた低速スプール30および高速スプール32を概して含む。低速スプール30および高速スプール32は、いくつかの軸受システム38によって回転可能に支持される。多様な軸受システム38を多様な位置において代替的にまたは追加的に設けてもよいことが理解されるべきである。
【0028】
低速スプール30は、シャフト40を主に含む。シャフト40は、ファン42、低圧コンプレッサ44および低圧タービン46を相互接続させる。シャフト40は、歯車式アーキテクチャ48を通じてファン42へ接続されて、ファン42を低速スプール30よりも低速で駆動する。
【0029】
高速スプール32は、シャフト50を含む。シャフト50は、高圧コンプレッサ52および高圧タービン54を相互接続させる。
【0030】
シャフト40およびシャフト50は同心であり、軸受システム38を介してエンジン中心長手方向軸Aを中心に回転する。エンジン中心長手方向軸Aは、シャフト40およびシャフト50の長手方向軸と同一直線上である。
【0031】
燃焼部26は、円周方向に分配された燃焼器56のアレイを含む。これらの燃焼器56は、高圧コンプレッサ52と高圧タービン54との間において概して軸方向に配置される。
【0032】
いくつかの非限定的な例において、エンジン20は、高バイパス歯車式航空機エンジンである。さらなる例において、エンジン20のバイパス比は、約6(6:1)を超える。
【0033】
例示的エンジン20の歯車式アーキテクチャ48は、遊星歯車列(例えば、プラネタリ歯車装置、星形歯車装置または他の歯車装置)を含む。例示的な遊星歯車列のギア減速比は、約2.3(2.3:1)を超える。
【0034】
低圧タービン46の圧力比は、エンジン20の排気ノズルの前の低圧タービン46の出口における圧力に対する低圧タービン46の入口の前で測定される圧力である。1つの非限定的な実施形態において、エンジン20のバイパス比は、約10(10:1)を超える。ファン直径は、低圧コンプレッサ44よりもずっと大きく、低圧タービン46の圧力比は約5(5:1)を超える。本実施形態の歯車式アーキテクチャ48は遊星歯車列であり、ギア減速比は約2.3(2.3:1)を超える。しかし、上記のパラメータは、歯車式アーキテクチャエンジンの一実施形態の一例に過ぎず、本開示は他のガスタービンエンジン(例えば、直接駆動ターボファン)にも適用可能であることが理解されるべきである。
【0035】
例示的エンジン20の本実施形態において、高バイパス比に起因して、大量の推進力がバイパス流れにより提供される。エンジン20のファン部22は、特定の飛行状態(典型的には、約0.8マッハおよび約35,000フィートにおける巡航)に合わせて設計される。この飛行状態においては、エンジン20の燃費が最良になっており、「バケット巡航」推力当たり燃料消費率(TSFC)としても知られている。TSFCは、推力単位の燃費の業界で標準的なパラメータである。
【0036】
ファン圧力比は、ファン出口案内ベーンシステムの前のファン部22のブレードにわたる圧力比である。例示的エンジン20の1つの非限定的な実施形態による低ファン圧力比は、1.45(1.45:1)未満である。
【0037】
「低ファン先端補正速度」は、実際のファン先端速度(単位:フィート/秒)を、業界標準の温度補正値である[(Tram°R)/(518.7°R)]^0.5によって除算したものである。この温度は、ランキン度の周囲温度を示す。例示的エンジン20の1つの非限定的な実施形態による低ファン先端補正速度は、約1150fps(351m/s)未満である。
【0038】
1つの例示的な歯車式アーキテクチャ48である星型構成を
図2〜
図4に示す。低速スプール30は、入力太陽歯車60を軸Aを中心に回転駆動する。中間星歯車62(
図4に示す)は、円周方向において入力太陽歯車60の周囲に配置され、入力太陽歯車60と相互に噛み合う。リングギア64は、中間歯車62を包囲し、中間歯車62と相互に噛み合う。図示の例示的な星型構成において、リングギア64は、ファンシャフトを介してファン42(
図1)を回転駆動する。別の例示的な遊星歯車式アーキテクチャにおいて、中間歯車62は(トルクフレーム66を介して)ファンシャフトを駆動して、ファン42を駆動する。
【0039】
例示的な歯車式アーキテクチャ48は、中間歯車62が入力歯車60の回転軸に対して回転しない種類である。すなわち、星歯車は、それらの各回転軸を中心に回転するが、入力歯車60の回転軸を中心には回転しない。
【0040】
エンジン20の比較的静的な構造68により、可撓性支持部70が保持される。トルクフレーム66を可撓性支持部70へ固定することにより、入力歯車60の回転軸Aを中心とするトルクフレーム66の回転を回避する。遊星構成において、トルクフレーム66は回転軸A周りで回転し、リングギア64は固定構造へ連結される。
【0041】
トルクフレーム66は、複数の突出部72(またはアーム)を含む。一例において、トルクフレーム66は、5個の均等に円周方向に間隔を空けて配置された突出部72を含む。これらの突出部72は、キャリヤー74に円周方向に中間歯車62間に固定される。トルクフレーム66は、曲げピン(flexture pin)76によってキャリヤー74へ固定される。曲げピン76は、キャリヤー74からの反作用トルクを静的な構造68へ伝達し、大きな曲げ荷重はキャリヤー74中へ伝達しない。例示的なキャリヤー74は、少なくとも中間歯車62を支持する。
【0042】
さらに
図2〜
図4を参照して
図5〜
図7を参照して、各曲げピン76は、軸Aに対して径方向に延びる各軸Pに沿って長手方向に延びる。例示的な曲げピン76は、軸Pに対して垂直に延びる開口部または穴80を提供する。本例において、穴80の部分は、キャリヤー74によって完成され得る。別の例において、穴80の円周全体は、曲げピン76によって提供される。曲げピン76中の穴80は、キャリヤー74中の対応する開口部または穴82と整列する。キャリヤー74中の穴82の端部は、キャリヤー74の外部からアクセス可能となっている。すなわち、穴82は、キャリヤー74の一部を通じて軸方向に完全に延びる。説明するように、穴80は、軸Pからオフセットする。
【0043】
曲げピン76は、穴80および82が同軸であり、かつ軸方向に整列されてリテーナピン78を受容する通路を形成する位置まで移動可能である。リテーナピン78は、本例において、キャリヤー74の片側から軸方向に整列された穴80および82中へ挿入される。リテーナピン78が穴80および82内に取り付けられると、リテーナピン78は曲げピン76に対して垂直方向となる。
【0044】
例示的なリテーナピン78により、曲げピン76のキャリヤー74に対する径方向移動および回転移動が回避される。本例において、曲げピン76はニトラロイ製であり、硬化(窒化処理)されて耐摩耗性を達成する。
【0045】
例示的なリテーナピン78は、418ステンレススチール(例えば、グリーク アスコロイ(Greek Ascoloy)(登録商標)または別の硬質金属合金)製であり、平滑な円筒外面を有する。リテーナピン78は、整列された穴80および82に対して軸方向にスライド可能である。さらに、例示的なリテーナピン78は、ねじ切りしてもよいし、部分的にねじ切りしてもよいしあるいはねじ切りしなくてもよい。ねじ切りされていないかおよび部分的にねじ切りされているリテーナピンの実施形態は、ボルトとして、回転無しまたは実質的に回転無しで整列した穴80および82中へ挿入される。
【0046】
穴80および82が整列すると、リテーナピン78を穴82中に挿入することができる。その後、軸方向荷重を例えばプレスツールを用いてリテーナピン78へ付加して、リテーナピン78がキャリヤー74上の最低位置に来るまで、リテーナピン78を穴80および82中へかつ穴80および82を通じて押圧することができる。その後、締結具を取り付けて、エンジン動作時においてリテーナピン78が後退する事態を回避することができる。リテーナピン78は、このような後退を回避するロックねじも含み得る。
【0047】
トルクフレーム66の突出部72中の開口部はそれぞれ、トルクフレームブッシング84を受容する。キャリヤー74中の開口部は、キャリヤーブッシング88aおよび88bを受容する。曲げピン76は、ブッシング84、88aおよび88bによって保持される。
【0048】
トルクフレームブッシング84を突出部72に圧入して、トルクフレームブッシング84と突出部72との間の相対的回転を制限する。キャリヤーブッシング88aおよび88bも、同様にキャリヤー74中に圧入される。この圧入により、ブッシング88aおよび88bとキャリヤー74との間の相対運動が制限される。トルクフレームブッシング84と、キャリヤーブッシング88aおよび88bとは、フランジ91を有する。フランジ91は、取付を容易にし、キャリヤー74および突出部72に対する径方向移動を制限する。例示的なブッシングは、突出部72およびキャリヤー74と化学的に適合するAMS4590製である。これらのブッシングは、いくつかの例において犠牲的なものであり得る。
【0049】
キャリヤーブッシング88aおよび88bと曲げピン76との間のインターフェースまたは「嵌め合い」は比較的緩く、トルクフレームブッシング84と曲げピン76との間のインターフェースはさらに緩い。このようにインターフェースを構築することにより、動作時において周囲環境が撓んで調節されるに従って、曲げピン76が軸P周りでトルクフレームブッシング84に対して移動することが可能になる。このような構造により、潤滑油が曲げピン76とトルクフレームブッシング84との間に流れることが可能になる。曲げピン76がトルクフレームブッシング84に固着した場合、曲げピン76は、軸P周りでキャリヤーブッシング88aおよび88bに対して移動し得る。
【0050】
本例において、潤滑油導管90は、潤滑油をトルクフレームブッシング84と曲げピン76との間のインターフェースへ供給する。供給された潤滑油により、曲げピン76とトルクフレームブッシング84との間の相対移動が可能になる。潤滑油導管90は、第1の部分92aおよび第2の部分92bを含む。第1の部分92aは、曲げピン76を通じて軸Pに沿って延びる。第2の部分92bは、(軸Pに対して)第1の部分92aから半径方向に延びる。
【0051】
なお、穴80は半径方向に軸Pからオフセットしているため、穴80および潤滑油導管90は交わらない。その結果、潤滑油が穴80から逃げること無く潤滑油導管90内に留まることが可能になる。
【0052】
計量デバイス(例えば、ジャンパーチューブ94)は、潤滑油を曲げピン76へ連通させる。ジャンパーチューブ94は、潤滑油導管90の一部を提供する。ジャンパーチューブ94は、曲げピン76内に受容される一部を含む。ジャンパーチューブ94の別の部分は、歯車式アーキテクチャ48のスプレーバー95中へ延びる。ジャンパーチューブ94は、幅狭部分96を含む。幅狭部分96は、曲げピン76中への潤滑油の流れを減圧するかまたは計量する。流れを計量することにより、トルクフレームブッシング84中の密封不具合または過度の摩耗の場合における油損失が制限される。
【0053】
ジャンパーチューブ94は、エンジン軸Aに対して平行な方向においてスプレーバー95を通じてジャンパーチューブ94からジャンパーチューブ98へ延びる潤滑油導管90の一部から潤滑油を受容する。ジャンパーチューブ98は、本例において、潤滑油導管90の軸方向における最外部分を提供する。
【0054】
ジャンパーチューブ98は、軸方向においてキャリヤー74の外部にある潤滑油供給源100から潤滑油を受容する。供給源100は、潤滑油をスプレーバー95へさらに提供し得る。供給源100は、歯車式アーキテクチャ48内の潤滑油と比較して清浄な潤滑油である。なぜならば、供給源100からの潤滑油は、曲げピン76へ供給される直前において、歯車式アーキテクチャ48の歯車を通じて移動していないからである。潤滑油を歯車式アーキテクチャ48からではなく供給源100からトルクフレームブッシング84と曲げピン76との間のインターフェースへ移動させることにより、破片および汚染物質がインターフェースへ入る可能性が低下する。
【0055】
潤滑油がトルクフレームブッシング84と曲げピン76との間のインターフェースへ移動した後、潤滑油は軸Pの方向に移動し、サンプ(図示せず)中に収集される。その後、潤滑油を清浄し、潤滑油供給源100中へ再循環させることができる。
【0056】
例示的な曲げピン76は、クロッキングフィーチャ106を含む。クロッキングフィーチャ106は、組み立て時において穴80が穴82と並ぶように曲げピン76を整列させるために、用いられる。クロッキングフィーチャ106により、曲げピン76の軸Pに対する方向が明らかとなり、これにより、オペレータは穴80を穴82と容易に整列させることができる。また、クロッキングフィーチャ106により、オペレータが潤滑油導管90の第2の部分92bをエンジン軸Aに対して平行に整列させることも可能になる。
【0057】
曲げピン76は、取外しフィーチャ108も含む。ツールが取外しフィーチャ108と係合して、曲げピン76がブッシング84、88aおよび88bから離され、曲げピン76の取外しが可能となる。取外しフィーチャ108は、いくつかの例においてねじ切り型である。
【0058】
開示の例の特徴は、コスト効果の高い、信頼性のある、歯車式アーキテクチャのキャリヤーの潤滑方法および保持方法を含む。潤滑油をブッシングへ供給する潤滑孔は、エンジンの中心線に対して平行である。さらに、トルクフレームピン、トルクフレームおよびキャリヤー間の相対運動を多様なコンポーネントの摩耗無しに発生させることができる。
【0059】
例示的な実施形態を述べてきたが、当業者であれば、特定の変更が特許請求の範囲内に収まることを認識する。よって、以下の特許請求の範囲をみれば、その真なる内容および範囲を判断することができる。