(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185071
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】航空機ギャレー水分配マニホルド
(51)【国際特許分類】
E03C 1/02 20060101AFI20170814BHJP
B64D 11/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
E03C1/02
B64D11/00
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-535789(P2015-535789)
(86)(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公表番号】特表2015-532371(P2015-532371A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(86)【国際出願番号】US2013063308
(87)【国際公開番号】WO2014055785
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2015年4月2日
(31)【優先権主張番号】61/709,834
(32)【優先日】2012年10月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/044,487
(32)【優先日】2013年10月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500413696
【氏名又は名称】ビーイー・エアロスペース・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】B/E Aerospace, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】バード、ピーター ジョン レスリー
【審査官】
七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−525466(JP,A)
【文献】
特開2008−121887(JP,A)
【文献】
特開2000−179017(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0276998(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00−1/10
B64D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機水供給および排水システム用のモジュール式飲料水分配マニホルドであって、
個別のねじ付き部からなる長さ調節可能な管状部と、
流れ制御ポペット弁を有し、柔軟なホースコネクタまたは終端自己通気/自己排水デバイスと結合するように構成されたマニホルドクイックコネクタと、
前記マニホルドクイックコネクタを前記終端自己通気/自己排水デバイスと結合させる回転フェルールと、
を備え、
前記終端自己通気/自己排水デバイスは、空気抜きキャップと、空気抜き穴と、ポペットフロートを持つ通気ポペット弁と、Oリングシールと、サービスキャップと、を有し、
前記マニホルドクイックコネクタの流れ制御ポペット弁は、主要な水流方向における水流を容易にするように構成されていることを特徴とするモジュール式飲料水分配マニホルド。
【請求項2】
各管状部の端部がベル型チャンバを有することを特徴とする請求項1に記載のモジュール式飲料水分配マニホルド。
【請求項3】
前記マニホルドクイックコネクタが取付具に接続されたとき、水が前記流れ制御ポペット弁の周りで前記取付具を通過するように前記流れ制御ポペット弁が伸びることを特徴とする請求項1に記載のモジュール式飲料水分配マニホルド。
【請求項4】
前記回転フェルールに角度が付いていることを特徴とする請求項1に記載のモジュール式飲料水分配マニホルド。
【請求項5】
前記通気ポペット弁は前記Oリングシールから離れる方向に自由に移動し、水が前記モジュール式飲料水分配マニホルドに入るとき、前記通気ポペット弁が前記Oリングシールから外れている間に前記通気ポペット弁を越えて空気が逃げることを特徴とする請求項1に記載のモジュール式飲料水分配マニホルド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年10月4日に出願された米国特許出願第61/709,834号の優先権を要求し、その全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
機内ケータリングサービスを行う民間航空機では、航空機に備え付けられた一つ以上のギャレーが「ウェット」である、すなわち水供給(飲料水)、排水(廃水)および廃棄物処理ユニット内で使用された必要水(汚水−使用後)を有しているのが普通である。飲料水が加圧下でギャレーに供給される一方、排水および廃水処理では重力(真空による補助が可能である)が使用される。飲料水、飲料の作成および調理(例えばスチームオーブン、炊飯器など)に飲料水が使用される。したがって、人の消費に適したものとするために、飲料水は安全規準を満たす必要がある。すなわち、飲料水は、最小限の健康および安全規準を満たさなければならない。味と臭いを改善し、航空会社の指針に従って細菌を除去するために、通常は飲料水が濾過される。航空機配管システムは、ギャレーにおけるあらゆる態様の水の使用に及び、関連するハードウェア、部品、および水を消費するか水処理を容易にするギャレー設備を包含する。
【0003】
飲料水システム、廃水システムおよび下水システムが完全に機能し、二次汚染が発生しないように分離されていることを保証するために、全てのギャレー配管システムは、航空機メーカによって規定される設計要件および実証実験をパスし検査を受けなければならない。また、フライトの終了後にまたは長期間の保管やメンテナンスのために航空機がシャットダウンされるとき、配管システムの全ては指定された時間内で完全に排水可能でなければならない。潜在的に汚染される可能性があるあらゆる残留水が、航空機ギャレー配管システムから除去されなければならない。したがって、システムは、充填サイクル中に配管システムのパイプ、ホース、部品内に含まれている空気を水で置き換える(空気を放出する)ことができ、排水/追い出しサイクル中に、空気で水を置き換え(空気を入れる)て急速な排水が可能になっている。
【0004】
サービスの再開時に、飲料水供給回路は、手動による助けなしに自動的に充填が可能でなければならず、潜在的に空気を閉じ込めることがある全ての区画が自己通気可能でなければならない。この目的のために重視すべき事項は、航空機および設計に応じて圧力が変化するという点である。
【0005】
安全の観点から、配管システムは、ギャレーインサート(galley inserts:GAINS)から蛇口への温水の逆流を防止しなければならない。さらに、流れを改善し水消費性能を向上するために、水圧を低減することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、削減された「ウェットな」ギャレー領域内で航空機用飲料水を分配する航空機ギャレー配管システムである。水濾過/マニホルドブロックから水を消費するGAINSおよびギャレー水蛇口へと供給される飲料水を分配する二次コネクタを持つモジュール式の管状マニホルドが開示される。
【0007】
本発明の動作を例示として図解する添付の図面とともに好適な実施形態についての以下の詳細な説明から、本発明の他の特徴および利点がさらに明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】水分配マニホルドの一部の拡大上面図である。
【
図3a】閉じた構成のクイック分離部の断面図である。
【
図3b】開いた構成のクイック分離部の断面図である。
【
図4】自己通気/自己排水マニホルドとクイック分離部の断面図である。
【
図5a】クイック分離部と、クイック分離部を出て左に向かう流れと結合する柔軟ホースコネクタの断面図である。
【
図5b】クイック分離部と、クイック分離部を出て右に向かう流れと結合する柔軟ホースコネクタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示す配管システムは、設置面積を削減した冷蔵/ウェットギャレー内で使用するために設計されたコンパクト統合配管システムの模式図である。モニュメントの底部から水が供給される底供給飲料水配送システムを介して水が提供されるが、同様のシステムは上部からの水が供給される。本発明はいずれのシステムにも適しており、同様に他の配管システムとも良く機能する。(矢印10で示す)飲料水は、リモート操作される非常止水弁を含む「T字形」弁12を介して配管システムに入る。主要供給管14は、二方向弁または三方向弁17を通して水分配/濾過ブロック16に水を供給する。ここで、例えば、自己通気ユニット18を含むスピンオン型浄水カートリッジなどの選択された濾過方法を使用して水が濾過される。二つ以上のフィルタ18を使用してシステム内の背圧を低減し、航空会社が、異なるレベルの濾過、GAINS供給ライン水フィルタ18a、および蛇口供給ライン水フィルタ18bを選択できるようにすると好ましい。フィルタ18aに接続される一方のライン20は、コーヒーメーカ、冷凍機、スチームオーブンなどへのGAIN水分配マニホルド28を介してギャレーインサート設備(galley insert equipment:GAINS)に水を供給する。フィルタ18bからの他方のライン22は新鮮な水の蛇口24に水を供給する。分配/フィルタブロック16は、リモート非常用飲料水止水弁21と、ケーブル27によって制御される逆流防止弁手動オーバーライド23と、を備える。
【0010】
Tバルブ12の第2分岐は、コンパクト圧力逆止弁26に所定の圧力で加圧された水を供給する。この逆止弁26は弁12を閉じ、GAIN水分配マニホルド28からの排水を防止する。分配マニホルド28は、クイック分離取付具30を介して飲料水を供給する。GAINSは、柔軟ホース32によってマニホルド28に接続される。マニホルド28は、蛇口24のように、(飲料水の)充填過程を助ける自己通気デバイス34を含むことが好ましい。蛇口24からの水、復水排水キャッチポット38を経由するGAINドリップトレイ36からの水、およびギャレー空冷ユニットからの復水が、排水ライン52を通りT部品42を通って排水ライン44に捨てられる。シンクに入る廃水の排水は、廃水排水ライン44内のT部品42と、部分真空下で動作するコンパクト逆流防止デバイスまたは空気停止弁46と、によって実現される。手動オーバーライドは分配フィルタブロック16にリモートで接続される。飲料水排水ライン52と廃水ライン44の両方が、ライン48を通って航空機廃水タンク内に排水する。
【0011】
上述の配管システムでは、全ての廃水が航空機廃水タンク(図示せず)に排水される。濾過された水は、フィルタ18aからGAINSマニホルド28に分配され、その後、柔軟なホース接続32を介してGAINSに分配される。このシステムは、様々な自己通気デバイス34、水フィルタ18および蛇口24を通して自己通気する。システムの汚染を防止するために、全ての静水を迅速に通気させることができ、これは飲料水システムの規則に適合している。
【0012】
図2は、
図1の分配マニホルド28の一部を示す。本発明のマニホルド28は、ねじ式カップリングを使用して同様の管状部に機械的に連結可能である固い管状部を備えており、サイズ可変の水分配マニホルドを提供する。各部の雌端部は、マニホルドクイックコネクタ106を装着可能であるか、これを使用しない場合にブランキングキャップまたは封止キャップ108を装着可能である二つ以上のポート104を有しているベル型チャンバ102が設けられる。マニホルドクイックコネクタ(manifold quick connector:MQC)106は、柔軟ホースコネクタ(flexible hose connector:FHC)110に結合するように設計されている。FHC110は、フランジ結合または溶接結合を含んでもよい。または代替的に、クイックコネクタ106が、終端自己通気/自己排水(self-venting/self-draining:SV/SD)デバイス112を組み込んでもよい。
図3aおよび3bはそれぞれ、閉じた構成および開いた構成でのMQC106の断面図を示す。MQC106と何も結合していない場合、ポペット弁114がMQC106の開口部にもたれかかり、デバイスを通る流れを防止する。しかしながら、MQC106が取付具に接続されると、
図3bに示すようにポペット弁114が伸び、ポペット弁の周りで取付具を通る流れが可能になる。このようにして、MQC106の存在に基づき、自動流量制御デバイスが形成される。
【0013】
図4に示すSV/SDマニホルド112は、空気抜きキャップ120と、空気抜き穴122と、ポペットフロート126を持つ通気ポペット弁124と、Oリングシール128と、サービスキャップ130と、を備えている。マニホルドは、MQC106と結合する回転フェルール132も備えている。代替的に、角度の付いたフェルール132で直線のフェルールを置換してもよい。回転フェルール132によって、完全なシステムを分解する必要なく、SV/SDマニホルド112をMQC106に取り付けたり、またはMQC106からSV/SDマニホルド112を取り外すことが可能になる。接続および分離を助けるために、MQC106には、把持および回転をより容易にするサムグリップ134が備えられていてもよい。二重のOリング136によって、デバイスからの水漏れが防止される。MQC106の自己封止ポペット弁114を開くために、固定ピン138が設けられている。加工組立を助けるために、フローティング部は二つの部分で形成されており、サービスキャップを通してアクセスされる。
【0014】
航空機ギャレー配管システムを飲料水で充填するとき、エアロックを防止し一貫した水流を確保するために、空気を追い出す必要がある。これを達成するために、通気ポペット弁124が封止Oリング128に対して自由に移動し、および/または封止Oリング128に保持される。ギャレー配管システムに入った水が、ポペットヘッドを越えて逃げる空気と入れ替わる一方、ポペット弁はOリング128から外れる。飲料水がデバイス112に達すると、水背圧がポペットフロート126を介してポペット弁124を閉じる。ポペットフロート126は、コルクまたはエアフロートなどの適切な浮揚性材料で作成される。フライトが終わり、航空機の水供給が切られると、ギャレー配管システム内の水圧が落ち、ポペット弁124を開いて、システムの急速な排水が生じる。水が閉じ込められて残らないようにするため、SV/SDマニホルド112にはエアキャップ120が装着されており、空気が配管システムに入れるようにしつつ、潜在的な汚染を排除している。
【0015】
図5aおよび5bに示すマニホルドクイックコネクタ106および柔軟ホースコネクタ110の動作時、両方の取付部の主な接続はねじ山140を用いて行われる。両方のコネクタ106、110は、柔軟ホース32の取り外し後の過度の水の損失を防止するために、接続または分離中に自動的に動作する相互依存開放/閉鎖構造を有するポペット弁を用いて、自己封止するように設計されている。コネクタポペット弁142は流量制限を減らすように設計されている。したがって、主要な水流方向(すなわち、場合によって、ホース32からマニホルド106へ向かう流れ、またはマニホルド106からホース32へ向かう流れのいずれか)に味方する(都合がよい:favor)ような形状とされている。
【0016】
図5a、5bのFHC110に結合されるMQC106には二つの変形例がある。両方の場合において、ポペット弁が開き、コネクタ106、110が互いにねじ込まれてアセンブリを通して水を流すときに、ポペット弁が互いに作用するように設計されている。最初のケースでは、FHC110は、柔軟ホース32をクリンプするためのフェルール150を備えている。フェルール150を回転してMQC106に接続することが可能であり、二つの「O」リングシール154によって柔軟ホース32とコネクタ本体152に対してフェルール150が封止される。ポペット弁142は通常、ばね160によって閉じられ、「O」リングシール162に対して封止をして、ポペット弁が中に開いているベル型チャンバ164を通る水の制限が減じられている。ねじ付き接続部140は、FHC110とMQC106をつなげ、コネクタ間の主要な防水ジョイントを提供する第1封止ワッシャ168を備えている。MQC106の自己閉鎖ポペット弁114は、マニホルドベル型チャンバ内に開き、ポペット弁114を閉じるように付勢するばね172によって制御される。マニホルドカップリングシール119がポペット弁114上に配置され、カップリング本体106の間の漏れを防止する。
図5bに示すように、ポペット弁142a、114aの形状および方向は、矢印200で示す水流の主要な方向に応じて変化してもよい。ポペット弁142aはその前面または後面にシール143を有する一方、MQCポペット弁114aは「O」リング115を封止する。水流を改善し制限を減じるのとは別に、両方のカップリングのシール115、143は、水流との直接接触からカップリングを遠ざけることによって、流れによる露出面の浸食を減じるように配置されている。パーツ点数を合理化するために、ポペット弁のシャフト長と高さは互いに置き替え可能である。
【0017】
本発明は、パーツ点数および複雑さを劇的に削減しつつ順応性を増大させる、拡張可能なモジュール式水分配マニホルドシステムを提供する。固く非金属のマニホルド配管と非金属のコネクタが重量を削減するので航空機ギャレーに非常に適している。さらに、自己封止マニホルドと相互作動するポペット弁とが、漏れを排除しつつシステムの排水を促進する。より詳細には、方向が最適化されたポペットヘッドが、主要な水流方向における水流を容易にする。接続部におけるベル型チャンバの使用により、水圧が減少する。また、マニホルドを阻害することなく取り外し、取り付け、再配置等が可能である柔軟ホースの使用によって、接続の容易さが強化される。さらに、別個の固いマニホルド区画同士を必要に応じて柔軟なホースによって接合することができる。各マニホルド接合場所において利用可能である二つの柔軟ホース接続点の使用によって、適応性が増加する。また、自己通気/自己排水デバイスをモジュール式マニホルドの端点に取り付けることができる。
【0018】
本発明の配管システムは、異なるGAIN供給要件に適合することができ、またギャレーのサイズに関わらず共通のシステムを使用することができる。自己封止マニホルド弁および柔軟ホースにより、システムを減圧することなくGAINを取り外すことが可能になる。また、単純な封止キャップを用いて未使用の接続部を封止することができる。区画を追加/除去することによってシステムのサイズを変更することができる。また、システムの大規模な変更なしに、水を消費するGAINSを追加または取り外すことができる。システムに組み込まれた自己通気/排水デバイス(単数または複数)によって、統合されたコンパクトなギャレー配管システムの自動充填および自動排水が可能になる。本システムは、実用的なコネクタ(ボルト締めフランジ)または封止された(溶接された)コネクタのいずれにも適合することができる。本発明は、新規のおよび既存の航空機タイプまたはその変形タイプ用の、あらゆる種類の胴体幅の狭いまたは幅の広い民間航空機モニュメントに適している。
【0019】
本発明について一般的な説明をしてきたが、上記の説明および付属の図面は、いかなる方法によっても限定を意図したものではない。当業者であれば本明細書に記載の実施形態に対して多くの変更および置換を想像することが可能であり、本発明はそのような変更および置換の全てを包含するように意図されている。したがって、本発明の範囲は、添付の請求項の語句によって適切に評価されるものであり、上述の実施形態または図示の実施形態のいずれかに厳密に解釈されるものではない。