(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属が、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Sn、Pb、Sb、Bi、La、Ce、Gdからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
前記界面活性剤が、炭水化物ポリマー、ポリアニリン、ポリイミド、ポリビニルピロリドンまたはポリビニルアルコールである可溶性ポリマー界面活性剤である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
前記界面活性剤が、ポリペプチド、グリコサミノグリカン、DNAまたはポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドである高分子電解質である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
溶液から析出した金属水酸化物を分離する工程b’)を含み、かつ、工程c)が水性液体に金属水酸化物を再懸濁する工程を含む、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
工程d)と工程e)の間に行われる、工程d)で懸濁液から形成された粒子を分離し、水性液体で前記粒子を洗浄する工程d’)を含む、請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
多孔質シリカマトリックス内に金属の粒子を形成するために、多孔質シリカマトリックス内で金属酸化物を還元する工程f)をさらに含む、請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
金属が、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Sn、Pb、Sb、Bi、La、Ce、Gdからなる群から選択される、請求項30に記載の複合物質。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の選択肢を、単独でまたは任意の好適な組み合わせにおいて、前記第1態様と同時に用いてよい。
【0013】
金属は遷移金属であってよい。金属は貴金属であってよい。金属は希土類金属であってよい。金属は、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni,Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Sn、Pb、Sb、Bi、La、CeおよびGdからなる群から選択し得る。これらの任意の2以上の混合物も使用し得る。いくつかの実施態様において、金属は、Cu、Ni、Cr、V、Co、Mn、ZnおよびFeからなる群から選択される。
【0014】
界面活性剤は可溶性ポリマー界面活性剤であてよい。界面活性剤は高分子電解質であってよい。界面活性剤はアルキルアンモニウム塩であってよい。界面活性剤は、カチオン性であってよく、またはアニオン性であってよく、または非イオン性であってよく、双生イオン性であってよい。界面活性剤の好適な混合物も使用し得る。特定の例においては、共界面活性剤も使用し得る。可溶性ポリマー界面活性剤は、例えば、炭水化物ポリマー、ポリアニリン、ポリイミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等であり得る。高分子電解質は、例えば、ポリペプチド、グリコサミノグリカン、DNAまたはポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)であり得る。
【0015】
アルキルアンモニウム塩は、4級窒素原子に直接的に結合したC
8〜C
18アルキル基を含んでよい。アルキルアンモニウム塩はテトラアルキルアンモニウム塩であってよい。アルキルアンモニウム塩はC
8〜C
18アルキルトリ(C
1〜C
4アルキル)アンモニウム塩であってよい。アルキルアンモニウム塩は、例えばセチルトリメチルアンモニウム塩であってよい。
【0016】
工程a)の溶液は水溶液であってよい。前記溶液は、モル比で約1:10〜約10:1の金属の可溶性塩と界面活性剤(例えば、アルキルアンモニウム塩)の比率を有していてよい。前記溶液は、モル比で約1:2〜約2:1の金属の可溶性塩と界面活性剤(例えば、アルキルアンモニウム塩)の比率を有していてよい。
【0017】
工程b)は、工程a)の溶液に水溶性水酸化物塩を添加することを含み得る。水溶性水酸化物塩は、水酸化ナトリウムであってもよく、水酸化カリウムであってもよく、または水酸化アンモニウムであってもよく、あるいはこれらの任意の2つまたは全ての混合物であってもよい。
【0018】
多孔質シリカマトリックス中に分散した金属酸化物の粒子を含む複合物質の製造方法は、溶液から析出した金属水酸化物を分離する工程b’)を含んでいてよい。工程c)は、水性液体、例えば水へ金属水酸化物を再懸濁する工程を含んでいてよい。工程c)は、再懸濁された金属水酸化物の懸濁液を、7を超えるまたは10を超えるpHに調整することも含み得る。
【0019】
アルコキシシランはトリアルコキシシランまたはテトラアルコキシシランであってよい。これはテトラエトキシシランまたはテトラメトキシシランであり得る。アルコキシシランは、約1:8〜約8:1の金属水酸化物に対するモル比で添加され得る。アルコキシシランは、約1:2〜約2:1の金属水酸化物に対するモル比で添加され得る。アルコキシシランをアルコール溶液に加えてもよい。アルコキシシランは、約1〜約100μmol/秒の速度で添加され得る。
【0020】
工程d)は、アルコキシシランの添加後、懸濁液を撹拌することをさらに含んでいてよく、前記撹拌は、少なくとも約10時間、または少なくとも約24、36または48時間、または約10〜約60時間、あるいは約24〜60、36〜48、48〜60または30〜40時間、例えば約12、18、24、30、36、42、48、54または60時間続く。本発明の方法は、工程d)とe)の間で行われる、懸濁液から工程d)で形成された粒子を分離することおよび水性液体で前記粒子を洗浄する工程d’)を含んでいてよい。水性液体は脱イオン水であってよい。
【0021】
工程e)は、少なくとも約1時間粒子を加熱することを含んでいてよい。工程e)は、約1〜約5時間粒子を加熱することを含んでいてよい。工程e)は、約2時間粒子を加熱することを含んでいてよい。前記加熱は、約400〜約700℃、例えば約500℃までの温度であり得る。
【0022】
本発明の方法は、多孔質シリカマトリックス内に金属粒子を形成するために多孔質シリカマトリックス中で金属酸化物を還元する工程f)をさらに含んでいてよい。工程f)は、金属酸化物を水素または1種以上の還元剤にさらすことを含み得る。したがって、工程f)が本発明の方法に含まれる場合、この方法は、多孔質シリカマトリックス中に分散した金属粒子を含む複合物質の製造方法である。
【0023】
金属酸化物、または工程f)を実施する場合には金属は、触媒活性であってよい。金属酸化物または工程f)を実施する場合には金属は、メタノール合成および改質、メタンの水蒸気改質およびCO
2改質、フィッシャー−トロプシュ合成、CO酸化、触媒バイオマスタール分解、SO
2酸化、NO還元およびメタン酸化からなる群から選択される反応を触媒活性し得る。金属酸化物は、ケミカルループ燃焼における酸化剤として有用であり得る。
【0024】
第1態様の特定例において、本発明の方法は、
a)金属の可溶性塩およびセチルトリメチルアンモニウム塩を含む水溶液を調製すること;
b)工程a)の溶液から金属水酸化物を析出させるために、工程a)の溶液に水酸化ナトリウム溶液を加えること;
b’)溶液から析出した金属水酸化物を分離すること;
c)水性液体に金属水酸化物を再懸濁し、得られる懸濁液を7を超える、場合によって10を超えるpHに調整すること;
d)シリカで少なくとも部分的に被覆された金属水酸化物を含む粒子を形成するために、撹拌しながら、前記懸濁液にテトラアルコキシシランのアルコール溶液を加えること;
d’)懸濁液から工程d)で形成された粒子を分離し、前記粒子を水で洗浄すること;および
e)複合物質を製造するために、工程d)で得られた粒子を、約500℃で約1〜約5時間焼成すること
を含む。
【0025】
一態様において、多孔質シリカマトリックス中に分散した金属酸化物の粒子を含む複合物質の製造方法であって、前記金属がCu、Ni、Cr、V、Co、Mn、ZnおよびFeからなる群から選択され、前記方法が、
a)金属可溶性塩およびC
8〜C
18アルキルトリ(C
1〜C
4アルキル)アンモニウム塩を、約1:2〜約2:1の金属可溶性塩とC
8〜C
18アルキルトリ(C
1〜C
4アルキル)アンモニウム塩の比率(モル比)で含む溶液を調製すること;
b)金属水酸化物が溶液から析出する塩基性のpHに溶液を調整すること、ここで前記調整は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムまたは水酸化アンモニウムを添加することを含む;
c)金属水酸化物の水性懸濁液を調製すること、ここで前記懸濁液は7を超える、場合によって10を超えるpHである;
d)少なくとも部分的に、場合によっては完全にシリカにより被覆された金属水酸化物を含む複合体を形成するために、撹拌しながら、前記懸濁液にテトラエトキシシランまたはテトラメトキシシランのようなアルコキシシランを加えること(ここで、アルコキシシランと金属水酸化物のモル比は約1:2〜約2:1である)、および、アルコキシシランの添加後、少なくとも約10時間懸濁液を撹拌すること;および
e)複合物質を製造するため、工程d)で得られた複合体を、約1〜約5時間、約400〜約700℃の温度で焼成すること
を含む方法が提供される。
【0026】
別の実施態様において、多孔質シリカマトリックス中に分散した金属酸化物の粒子を含む複合物質の製造方法であって、前記金属がCu、Ni、Co、MnまたはFeであって、前記方法が、
a)金属可溶性塩およびC
8〜C
18アルキルトリ(C
1〜C
4アルキル)アンモニウム塩を、約1:2〜約2:1の金属可溶性塩とC
8〜C
18アルキルトリ(C
1〜C
4アルキル)アンモニウム塩の比率(モル比)で含む溶液を調製すること;
b)金属水酸化物が溶液から析出する塩基性のpHに溶液を調整すること、ここで前記調整は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを添加することを含む;
c)金属水酸化物の水性懸濁液を調製すること、ここで前記懸濁液は7を超える、場合によって10を超えるpHである;
d)少なくとも部分的に、場合によっては完全にシリカにより被覆された金属水酸化物を含む複合体を形成するために、撹拌しながら、前記懸濁液に、例えばテトラエトキシシランまたはテトラメトキシシランのようなアルコキシシランを加えること(ここで、アルコキシシランと金属水酸化物のモル比は約1:2〜約2:1である)、および、アルコキシシランの添加後、少なくとも約10時間懸濁液を撹拌すること;
e)複合物質を製造するため、工程d)で得られた複合体を、約1〜約5時間、約400〜約700℃の温度で焼成すること;および
f)多孔質シリカマトリックス中で金属酸化物を還元し、多孔質シリカマトリックス中に金属粒子を形成するために、金属酸化物を水素または1種以上の他の還元剤にさらすこと
を含む方法が提供される。
【0027】
さらに別の実施態様において、多孔質シリカマトリックス中に分散した金属酸化物の粒子を含む複合物質の製造方法であって、前記金属がCu、NiまたはFeであって、前記方法が、
a)金属可溶性塩およびセチルトリメチルアンモニウム塩を、約1:10〜約10:1の金属可溶性塩とセチルトリメチルアンモニウム塩との比率(モル比)で含む溶液を調製すること;
b)金属水酸化物が溶液から析出する塩基性のpHに溶液を調整すること、ここで前記調整は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを添加することを含む;
c)金属水酸化物の水性懸濁液を調製すること、ここで前記懸濁液は7を超える、場合によって10を超えるpHである;
d)少なくとも部分的に、場合によっては完全にシリカにより被覆された金属水酸化物を含む複合体を形成するために、撹拌しながら、前記懸濁液に、例えばテトラエトキシシランまたはテトラメトキシシランのようなアルコキシシランを加えること(ここで、アルコキシシランと金属水酸化物のモル比は約1:8〜約8:1であり、アルコキシシランは約1〜約100μmol/秒の速度でアルコール溶液に加えられる)、および、アルコキシシランの添加後、少なくとも約10時間懸濁液を撹拌すること;
e)複合物質を製造するため、工程d)で得られた複合体を、約1〜約5時間、約400〜約700℃の温度で焼成すること;および
f)多孔質シリカマトリックス中で金属酸化物を還元し、多孔質シリカマトリックス中に金属粒子を形成するために、金属酸化物を水素または1種以上の他の還元剤にさらすこと
を含む方法が提供される。
【0028】
さらなる実施態様において、多孔質シリカマトリックス中に分散した金属酸化物の粒子を含む複合物質の製造方法であって、前記金属がCu、Ni、Cr、V、Co、Mn、ZnまたはFeであって、前記方法が
a)金属の可溶性塩およびセチルトリメチルアンモニウム塩を含む水溶液を調製すること;
b)工程a)の溶液から金属水酸化物を析出させるために、工程a)の溶液に水酸化ナトリウム溶液を加えること;
b’)溶液から析出した金属水酸化物を分離すること;
c)水性液体に金属水酸化物を再懸濁し、得られる懸濁液を7を超える、場合によって10を超えるpHに調整すること;
d)少なくとも部分的にシリカにより被覆された金属水酸化物を含む粒子を形成するために、撹拌しながら、前記懸濁液に、テトラアルコキシシランのアルコール溶液を加えること(ここで、テトラアルコキシシランと金属水酸化物のモル比は約1:8〜約8:1であり、テトラアルコキシシランは約1〜約100μmol/秒の速度でアルコール溶液に加えられる);
d’)懸濁液から工程d)で形成された粒子を分離し、前記粒子を水で洗浄すること;および
e)複合物質を製造するために、工程d)で得られた粒子を、約500℃で約1〜約5時間焼成すること
を含む。
【0029】
本発明の第2態様によれば、本発明の前記第1態様の方法により調製された複合物質が提供される。
【0030】
本発明の第3態様によれば、 多孔質シリカマトリックス中に分散した金属酸化物の粒子を含む複合物質が提供される。また、多孔質シリカマトリックス中に分散した金属粒子を含む複合物質も提供される。第3態様の複合物質は、第1態様の方法により製造される(または製造され得る)。
【0031】
以下の選択肢を、単独でまたは任意の好適な組み合わせにおいて、前記第2または第3の態様と同時に用いてよい。
【0032】
金属は遷移金属であってよい。金属は貴金属であってよい。金属は希土類金属であってよい。金属は、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni,Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Sn、Pb、Sb、Bi、La、CeおよびGdからなる群から選択され得る。金属は、Cu、Ni、Cr、V、Co、Mn、ZnおよびFeからなる群から選択され得る。多孔質シリカマトリックスはメソ細孔であってよい。それは直径約1〜約5nmの細孔を有していてよい。多孔質シリカマトリックスは、直径約2〜約3nmの細孔を有していてよい。多孔質シリカマトリックスは、さらに直径約10〜約100nmの細孔を有していてよい。それはさらに直径約10〜約50nmの細孔を有していてよい。金属酸化物の粒子は、約2〜約10nmの平均粒子径を有していてよい。これらは約5nmの平均粒子径を有していてよい。これらは粒子サイズにおいて実質的に単分散であってよい。これらはナノ粒子であり得る。
【0033】
複合物質は微粒子形状であってよい。前記物質の粒子は、少なくとも約10のアスペクト比(すなわち、長さと直径の比)を有していてよい。金属酸化物は酸化銅であってよく、複合物質は棒状構造であり得る。棒状構造は、約10〜約100nmの直径を有していてよく、約20〜約50nmの直径を有していてよい。金属酸化物は酸化ニッケルであってよく、または酸化鉄であってよく、前記物質はシート状構造を有していてよく、これによりこの物質の粒子が少なくとも約10のアスペクト比を有する場合、アスペクト比は、シート状構造の長さと厚さの比を意味する。前記複合物質の各粒子は、そこに分散した金属酸化物の複数の粒子を含んでいてよい。前記複合物質の各粒子は、平均で、少なくとも約100個のそこに分散した金属酸化物の粒子を含み得る。
【0034】
複合物質は、少なくとも約200m
2/gのBET比表面積を有していてよく、少なくとも約500m
2/gのBET比表面積を有していてよい。複合物質は、約200〜約1000m
2/gの、または約400〜約700m
2/gの、または約500〜約700m
2/gのBET比表面積を有していてよい。複合物質は、金属酸化物の表面まで反応性物質が浸透するように、シリカマトリックスの外表面から金属酸化物の外表面へ連続的に広がる細孔を有していてよい。
【0035】
一実施態様において、金属がCu、Ni、Cr、V、Co、Mn、ZnおよびFeからなる群から選択され、多孔質シリカマトリックスが直径約2〜約3nmの細孔と、さらに直径約10〜約50nmの細孔を有し、複合物質が粒子形状である、多孔質シリカマトリックス中に分散した金属粒子または金属酸化物粒子を含む複合物質が提供される。
【0036】
別の実施態様において、金属がCu、Ni、Co、MnおよびFeからなる群から選択され、多孔質シリカマトリックスが直径約2〜約3nmの細孔と、さらに直径約10〜約50nmの細孔を有し、金属酸化物の粒子が約5nmの平均粒子径を有し、複合物質が粒子形状であり、前記物質の粒子が少なくとも約10のアスペクト比(すなわち、長さと直径の比)を有する、多孔質シリカマトリックス中に分散した金属粒子または金属酸化物粒子を含む複合物質が提供される。
【0037】
さらなる実施態様において、複合物質が直径約20〜約50nmの棒状構造であり、複合物質が粒子形状であって、約200〜約1000m
2/gのBET比表面積を有しており、金属酸化物の表面まで反応性物質が浸透するように、多孔質シリカマトリックスがシリカマトリックスの外表面から金属酸化物の外表面へと連続的に広がる細孔を含む、酸化銅の粒子を含む複合物質が提供される。
【0038】
さらに別の実施態様において、酸化ニッケルまたは酸化鉄の粒子を含む複合物質であって、複合物質が少なくとも約10のアスペクト比を有するシート状構造であり(ここで、前記アスペクト比は、シート状構造の長さと厚さの比を意味する)、複合物質が粒子形状であって、約200〜約1000m
2/gのBET比表面積を有しており、金属酸化物の表面まで反応性物質が浸透するように、多孔質シリカマトリックスがシリカマトリックスの外表面から金属酸化物の外表面へと連続的に広がる細孔を含む、酸化ニッケルまたは酸化鉄の粒子を含む複合物質が提供される。
【0039】
本発明の第4態様によれば、メタノール合成および改質、メタンの水蒸気改質およびCO
2改質、フィッシャー−トロプシュ合成、CO酸化、触媒バイオマスタール分解、SO
2酸化、NO還元およびメタン酸化およびケミカルループ燃焼からなる群から選択される応用における、前記第2または第3の態様による複合物質の使用が提供される。
【0040】
本発明の第5態様によれば、燃料の酸化方法であって、前記燃料を、燃料の燃焼に十分な温度で前記第2または第3の態様による複合物質にさらすことを含む、燃料の酸化方法が提供される。この態様において、複合物質は、多孔質シリカマトリックス中に分散した金属酸化物の粒子を含む。
【0041】
以下の選択肢を、単独でまたは任意の好適な組み合わせにおいて、前記第5態様と同時に用いてよい。
【0042】
温度は少なくとも約500℃であってよく、約500〜1000℃であってよく、または約850℃であってよい。金属は銅であってよい。該方法はケミカルループ燃焼であってよい。
【0043】
一実施態様において、燃料の酸化方法であって、燃料の燃焼のために少なくとも約500℃の温度で前記燃料を前記第2または第3の態様による複合物質にさらすことを含み、前記複合物質が多孔質シリカマトリックス中に分散した酸化銅の粒子を含む方法が提供される。
【0044】
別の実施態様において、燃料を酸化するためのケミカルループ燃焼方法であって、燃料の燃焼のために約500℃〜1000℃の温度で前記燃料を前記第2または第3の態様による複合物質にさらすことを含み、前記複合物質が多孔質シリカマトリックス中に分散した金属酸化物の粒子を含む方法が提供される。
【0045】
図1は、多孔質SiO
2マトリックスに封入された高分散CuOナノ粒子の合成スキームである。
図2は、CTABによりキャップされたCu(OH)
2の(a,b)、SiO
2マトリックスに封入されたCu(OH)
2の(c,d)、および多孔質SiO
2マトリックスに封入されたCuOのTEMイメージを示す。
図3は、SiO
2マトリックスにおけるCu相のインサイチューXRDパターン(a)、および温度に応じたCu相の平均粒子径(b)を示す。
図4は、N
2吸着−脱着等温線(a)、および500℃で焼成されたSiO
2マトリックス中に封入された50重量%のCuOの粒度分布(b)を示す。
図5は、500℃で焼成されたSiO
2マトリックス中に封入された50重量%のCuOのH
2TPR(Temperature−Programmed Reduction:温度プログラム化した還元)曲線を示す。還元ピークは150〜250℃に位置し、H
2ガスにより到達可能であり、CuOが容易に還元され得ることを示している。
図6は、TPR分析後、500℃で焼成されたSiO
2マトリックス中に封入された50重量%のCuOのTEMイメージを示す:コア−シェル構造は、H
2により、150〜300℃で、および850℃まで加熱することによりCuO@SiO
2がCu@SiO
2に還元された後も安定したままである。
図7は、500℃で焼成されたSiO
2マトリックス中に封入された50重量%のCuO(a)、および850℃でのCLC適用における市販のCuOナノ粉末(b)の性能比較を示す。
図8は、CTABによりキャップされたNi(OH)
2の(a)、および500℃で焼成されたSiO
2マトリックス中に封入された50重量%NiO(b,c)のTEMイメージ、およびN
2吸着−脱着等温線(d)、および500℃で焼成されたSiO
2マトリックス中に封入された50重量%のNiOの粒度分布(e)を示す。
図9は、TEMイメージ(a、b)、N
2吸着−脱着等温線(c)および500℃で焼成されたSiO
2マトリックス中に封入された50重量%のFe
2O
3の粒度分布(d)を示す。
【0046】
本明細書において、専門用語A@Bは、B中に封入されたAを意味する。したがって、例えば、MeOx@SiO
2は、シリカ中に封入された金属酸化物を意味する。
【0047】
本発明は、特定の実施態様において、SiO
2マトリックスに封入された高分散金属酸化物ナノ粒子(MeOx@SiO
2)の簡易で効果的な合成方法に関する。シリカは多孔質であってよく、特にメソ細孔、マイクロ細孔、またはマイクロ細孔とメソ細孔の組み合わせであってよい。マイクロ細孔材料は、平均直径約2nm未満の細孔を有するものであると考えられ、メソ細孔材料は、平均直径約2〜約50nmの細孔を有するものであると考えられる。このナノ複合体の形成は、室温および大気圧下、金属およびSiO
2のほぼ100%回収率で実行することができる。関連する材料に関するほとんどの既存合成技術は、コアナノ粒子の形成に関する熱水またはマイクロエマルション法を必要とし、これは合成の複雑さ、低い収率および高いコストを強いる。これに対して、簡単で高収率である本方法は、本発明を商業的に実施可能とする。この方法は、高い耐熱性および高い表面積を有し、それによる高い触媒性能を有する貴金属、遷移金属および遷移金属酸化物触媒を含む様々なタイプの不均一系触媒の大規模生産に有用である。これらの触媒は、例えば、Cuに基づく触媒におけるメタノール合成および改質、Niに基づく触媒におけるメタンの水蒸気改質およびCO
2改質、Feに基づく触媒およびCoに基づく触媒におけるフィッシャー−トロプシュ反応、Ptに基づく触媒におけるCO酸化、酸化鉄触媒における触媒バイオマスタール分解、遷移金属酸化物(V
2O
5または酸化鉄に基づく)触媒におけるSO
2酸化、CuOに基づく触媒におけるNO還元およびCoO
x触媒におけるメタン酸化などの広範囲の重要な不均一系触媒反応法に利用することができる。本発明は、高度なケミカルループ燃焼のためのナノサイズの酸素担体、例えばNiO、Fe
2O
3、CuOおよびMn
3O
4などの製造にも使用することができる。
【0048】
本発明の新規態様は、従来の方法において一般的に使用されている金属または金属酸化物の複雑な合成に代わる第1段階としての金属水酸化物析出物(Me(OH)x)の調製である。発明者等は、驚くべきことに、単に前駆体金属塩の供給速度(したがって、得られる金属水酸化物の析出速度)を制御することにより、およびセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)などのカチオン性界面活性剤を使用することにより、特定の形状を有する超微細なナノ粒子として金属水酸化物を製造し得ることを見出した。これは自己集合の生成物であると考えられる。したがって、Me(OH)
X中のOH基とカチオン性界面活性剤中のカチオン性N
+間の水素結合が結晶成長方向の制御に影響を及ぼし、一方、界面活性剤の疎水性尾部がナノスケールにおける粒子径を保持していると仮定される。いくつかの形態において、本発明はカチオン性アンモニウムに基づく界面活性剤以外の界面活性剤を使用する。この場合、望ましい構造を得るために、関連する会合が同様の自己集合を指向すると仮定される。本発明のさらなる新規態様は、細孔、場合によってはメソ細孔、高表面積シェルを形成する、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)のようなシランのインサイチューポリマー化によるMe(OH)xコアへの多孔質SiO
2シェルのコーティングである。TEOSなどのシランは、架橋結合剤および固体状SiO
2前駆体として機能することができる。これらの化合物の加水分解は、Si−O−Si結合の形成を介してゾル−ゲルSiO
2を生じ得る。pHを制御することにより、実質上単分散した多孔質SiO
2をナノサイズのMe(OH)
xコア上に形成し得る。形成されたコア−シェル構造化Me(OH)
x@SiO
2のMeOx@SiO
2への変換および構造指向剤の除去は焼成により容易に達成することができる。
【0049】
この方法により調製された、SiO
2中に封入された金属酸化物触媒(MeO
x@SiO
2)、SiO
2中に封入された遷移金属および貴金属触媒(Me@SiO
2)は、いくつかの重要な工業的方法における高性能触媒として利用することができる。SiO
2中に封入されたNiO、Fe
2O
3、CuOおよびMn
3O
4をケミカルループ燃焼応用で使用することができる。これらの各場合において、シリカは細孔、場合によってはメソ細孔であってよい。この技術は、バイオセンサーおよび薬物送達応用にも適用することができる。
【0050】
したがって、一実施態様において、本発明はメソ細孔SiO
2マトリックス中に封入された高分散金属または金属酸化物ナノ粒子の合成、およびそれらの不均一系触媒反応およびケミカルループ燃焼における適用に関する。
【0051】
本明細書には、簡単で効果的であり、環境的に無害なSiO
2マトリックス中に封入された高分散金属酸化物ナノ粒子(MeOx@SiO
2)の合成方法が記載されている。前記方法は、以下の3つのカギとなる工程を含む:(1)通常、室温および大気圧下での金属水酸化物析出物(Me(OH)
x)の調製;(2)構造指向剤を用いた、Me(OH)
xコア上へのSiO
2のインサイチューコーティング;(3)焼成による、形成されたコア−シェル構造化Me(OH)
x@SiO
2のMeOx@SiO
2への変換および構造指向剤の除去。この方法により調製されたSiO
2ナノ複合体に封入されたMeOxは、一般的に狭い粒度分布(約5nmの平均粒子径)を有するMeOxの高分散体を有しているだけでなく、通常、金属酸化物へ十分に到達可能なメソ細孔を有する高い表面積(約300〜500m
2/g)および高温下での優れた熱安定性も有している。さらに、小さな粒子径を維持したまま、複合体における金属酸化物の負荷を50%まで、またはそれ以上に増やすことができる。この合成方法は、容易に商業的生産に拡大可能であり、十分に簡易である。これらの特徴は、複合体に広範な応用可能性、ならびに不均一系触媒反応および他の応用における触媒および酸素担体としての商業的価値を与える。
【0052】
適当な金属塩を選択することにより、SiO
2マトリックスに封入された遷移金属酸化物(例えばCuO、NiO、V
2O
5、Co
3O
4、MnO
2、ZnOおよびFe
2O
3など)を前記合成戦略に基づき調製することができる。発明者等は、適当な還元反応により、SiO
2シェルに封入された金属(例えば遷移金属)酸化物を、コア−シェル構造を破壊することなく対応するSiO
2に包まれた金属に還元することができることを示す。したがって、発明者等は、簡単で広く応用可能なMeOx@SiO
2およびMe@SiO
2の製造方法を見出した。
【0053】
本発明は、多孔質シリカマトリックス中に分散した金属酸化物の粒子を含む複合物質の製造方法を提供する。この方法の1つの形態において、溶液は金属の可溶性塩およびアルキルアンモニウム塩を含み、調製される。この溶液を、溶液から金属水酸化物が析出する塩基性のpHに調整する。
【0054】
その後、塩基性懸濁液を調製するために析出した水酸化物を使用し、そこへアルコキシシランを添加し、これにより少なくとも部分的に、場合によって完全にシリカにより被覆された金属水酸化物を含む複合体を形成する。その後、複合物質を製造するためにこれらの複合体を焼成する。
【0055】
金属は、通常遷移金属であるが、例えば、貴金属および希土類金属などの他の金属を時々使用してもよい。適当な金属としては、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni,Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Sn、Pb、Sb、Bi、La、CeおよびGdが挙げられる。いくつかの場合において、任意の2種以上のこれらの金属の混合物を用いてもよい。
【0056】
本発明の方法に適当な界面活性剤としては、アルキルアンモニウム塩が挙げられる。アルキルアンモニウム塩は、4級窒素原子に直接的に結合したC8〜C18アルキル基を含んでいてよい。それは、4級窒素に直接的に結合したそのような基を1、2、3または4個含み得る。各アルキル基は、独立して、C8〜C18、またはC8〜C12またはC12〜C18またはC10〜C14、例えばC8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17またはC18であってよい。いくつかの場合においては、4級窒素に結合した1つ以上の基はC8〜C18アルキル基ではない。この場合、これらは、例えばアリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基またはいくつかの他の基であり得る。別の場合には、1種以上の前記基が短鎖アルキル基、例えばC1〜C8、またはC1〜C4、またはC4〜C8、例えばC1、C2、C3、C4、C5、C6、C7またはC8などであってよい。いくつかの例において、アルキルアンモニウム塩はC8〜C18アルキルトリ(C1〜C4アルキル)アンモニウム塩、例えば、C8〜C18アルキルトリメチルアンモニウム塩、例えばセチルトリメチルアンモニウム塩である。対イオンは任意の好適な対イオン、例えばハロゲン化物(Cl、Br、I)であってよく、有機または無機であってよい。いくつかの例において、他のカチオン性界面活性剤を使用してよく、または非イオン性、アニオン性または双生イオン性などの他の界面活性剤をも使用してよい。
【0057】
金属塩の溶液は水溶液であってよい。該溶液は、水以外に他の溶媒を含まなくてよく、有機溶媒を含まなくてよく、または共溶媒、例えば水混和性有機溶剤(例えば、メタノール、エタノール、アセトン、THFなど)を含んでいてよい。共溶媒が存在する場合、共溶媒は、析出のための溶液成分を生じない十分に低濃度でなければならない。本発明の範囲において、用語「可溶性」は、溶液中の溶質が使用する溶媒に可溶性であることを示すことに関することが理解されるであろう。特に、所望する濃度および所望する温度で前記溶媒に可溶性であり得る。
【0058】
溶液中の金属塩とアルキルアンモニウム塩の比率は、通常、モル比で約1:10〜約10:1または約1:5〜5:1、1:2〜2:1、2:3〜3:2、1:10〜1:1、1:5〜1:1、1:2〜1:1、2:3〜1:1、10:1〜1:1、5:1〜1:1、2:1〜1:1、3:2〜1:1、あるいは他のいくつかの適当な範囲である。それは、約10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、3:2、1:1、2:3、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9または1:10であってよい。
【0059】
pHを調整する工程は、例えば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの水酸化物塩を溶液へ加えることを含む。水酸化物塩は、例えば水溶液のような溶液として加えてもよく、または固体として加えてもよい。所望のpHに達するために十分な量を加えてよい。いくつかの例においては、適当な緩衝pHを有する十分な量の緩衝剤の添加によりpHを調整してもよい。あるいは、溶液を水酸化物塩に(場合によっては溶液に溶液自体を)加えてもよい。いずれの場合も、添加は撹拌しながら、または他の適当なかき混ぜを伴って行われる。金属水酸化物の所望する粒子径(通常、約10nm未満)に達するよう十分に速く行ってよい。素早く添加し得る。例えば、約5L/分、または約10L/分〜約1L/分、例えば約6L/分〜約1L/分または約4L/分〜約10L/分、または約4L/分〜約6L/分、例えば約10L/分、9L/分、8L/分、7L/分、6L/分、5L/分、4L/分、3L/分、2L/分または1L/分の速度で添加し得る。
【0060】
pH調整は、溶液からの金属水酸化物の析出をもたらす。これはその後任意の適当な方法(例えば、沈降/デカント、遠心分離、ろ過など)により分離されてよく、再懸濁される。再懸濁する前に例えば水により洗浄してもよい。この場合、再懸濁した金属水酸化物を、約7を超える、または約8、9、10、10.5、11または11.5を超えるpHに、例えば約10、10.5、11、11.5または12のpHにすべきである。これは金属水酸化物を再懸濁し、その後所望するpH(例えば、上述したようなpH)に得られた懸濁液のpHを調整することにより達成することができ、または適当なpHの液体に分離した金属水酸化物を懸濁することを含んでよい。
【0061】
金属水酸化物懸濁液に添加されるアルコキシシランは、通常、トリアルコキシシランまたはテトラアルコキシシランあるいはそれらの混合物を含む(場合によっては、これらから実質的になる)。いくつかの例において、比較的少量(例えば約10重量%未満)のジアルコキシシランを使用してよく、または場合によりモノアルコキシシランを使用してよい。シランのアルコキシ基は、独立して、直鎖状または(C3以上の場合)分枝状であり得るC1〜C6アルキル基を含んでよい。これらはC1、C2、C3、C4、C5またはC6であってよい。一般的な例として、テトラエトキシシランまたはテトラメトキシシランが挙げられる。トリアルコキシシランを用いる場合、得られるシリカマトリックスが有機シリカマトリックスであることが理解されるであろう。トリアルコキシシランは、いくつかのケイ素原子上のアルキル基、またはアリール基を有していてよく、それらはそれぞれ任意に置換されていてよい(例えば、アミン基、チオール基、ヒドロキシル基または他のいくつかの適当な基により置換されてよい)。アルコキシシランは有機溶液に添加してもよい。溶媒は、水混和性有機溶媒、例えばアセトン、THF、THP、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどであってよい。アルコール溶媒は、いくつかのアルキル基をアルコキシシラン上のアルコキシ基として、またはアルコキシシラン上のアルコキシ基を有していてよい(例えば、アルコキシシランがエトキシシランの場合、溶媒はエタノールであってよい)。
【0062】
アルコキシシランは、約1:8〜約8:1、または約1:5〜5:1、1:2〜2:1、2:3〜3:2、1:8〜1:1、1:5〜1:1、1:2〜1:1、2:3〜1:1、8:1〜1:1、5:1〜1:1、2:1〜1:1、3:2〜1:1またはいくつかの他の適当な範囲の金属水酸化物に対するモル比で添加され得る。アルコキシシランは、約8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、3:2、1:1、2:3、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9または1:10のモル比で添加され得る。アルコキシシランは、約1〜約100μmol/秒、または約1〜50、1〜20、1〜10、1〜5、1〜2、2〜100、5〜100、10〜100、20〜100、50〜100、5〜50、5〜20または20〜50μmol/秒、例えば、約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90または100μmol/秒の速度で、あるいは他の適当な速度で添加され得る。比率は所望する構造を得るための任意の好適な比率であってよい。
【0063】
懸濁液は、アルコキシシランの添加中、添加後またはその両方で、例えば撹拌され、旋回され、超音波分解され、振とうされるなどしてかき混ぜられてよい。撹拌は、いくつかの例では以下の時間より長く続いてもよいが、少なくとも約10時間、少なくとも約12、18、24、30、36、42、48、54または60時間、または約10〜約60時間、または約24〜60、36〜48、12〜24、18〜30あるいは24〜48時間、例えば約10、12、14、16、20、24、32、40、48、54または60時間の間続いけてよい(アルコキシシランの添加開始時または前記添加の終了時のいずれかから行う)。これは、多孔質シリカ構造が金属水酸化物粒子の周辺に形成されるゾル−ゲル法を導く。
【0064】
得られた粒子を懸濁液から分離してよい。得られた粒子を、例えば水性液体、場合によっては水により洗浄してよい。分離には沈降/デカント、遠心分離、ろ過等の1種以上が含まれ得る。洗浄には、洗浄液中の粒子を懸濁すること、場合によっては撹拌することおよびその後それらを分離することが含まれてよく、または、粒子ベッドに洗浄液を流すことが含まれていてよく、あるいはいくつかの他の洗浄形態が含まれていてよい。
【0065】
粒子は焼成されてよい。これは、粒子から実質的に全ての有機物質を除去するのに役立ち得る。特にこれは界面活性剤または少なくともその有機部分の除去に役立ち得る。トリアルコキシシラン(あるいはジ−またはモノ−アルコキシシラン)をシリカマトリックスの形成のために使用した場合、焼成はシランに由来する付随有機基の除去にも役立ち得る。焼成は、少なくとも約0.5時間、または少なくとも約1、2、3、4または5時間、または約0.5〜約5時間、または約0.5〜2、0.5〜1、1〜5、2〜5または1〜3時間、例えば約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5または5時間加熱することを含んでいてよい。焼成は、例えば少なくとも約90%、または少なくとも約95%または99%など、好適な程度の有機物除去を達成するための十分な時間および十分な温度であってよい。さらに焼成は、金属水酸化物を対応する金属酸化物に変換し得る。焼成は大気中、または例えば窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気下で行ってよい。焼成は、少なくとも約400℃、または少なくとも約450、500、550、600、650または700℃、あるいは約400〜約700℃、または約400〜600、400〜500、500〜700、600〜700または500〜600℃の温度であってよい。約400、450、500、550、600、650または700℃あるいはさらに高温であってもよい。複合物質から有機物を除去するために、および/または封入された金属水酸化物ナノ粒子を対応する金属酸化物に変換するために十分な温度であってよい。使用する温度が高くなるほど、通常、適当な焼成に必要とされる時間が短くなることは理解されるであろう。焼成は、シリカマトリックスを溶解するには十分でない温度でなければならない。焼成は、金属酸化物および/または金属を溶解するには十分でない温度であってよい。
【0066】
上述した方法は、多孔質シリカマトリックスに分散した金属酸化物粒子を有する多孔質シリカマトリックスの粒子を製造することができる。これらは、金属酸化物が触媒活性である場合に触媒として有用であるかもしれず、または、金属酸化物が酸化物などの試薬として作用することができる場合に試薬として有用であり得る。このような場合、試薬を利用することができ、生成物を放出することができる間、多孔質シリカマトリックスは活性触媒/試薬粒子に対する機械的保護をもたらす。
【0067】
しかしながら、いくつかの例においては、金属自身がより活性触媒であり得る。この場合、多孔質シリカマトリックス中で金属粒子を形成するために、金属酸化物を多孔質シリカマトリックス中で金属に還元することが望ましいであろう。これは金属酸化物を水素または1種以上の他の還元剤にさらすことを含んでいてよい。特に、シリカマトリックスの多孔性は金属酸化物粒子への接近を可能にするため、粒子を還元剤にさらすことを含んでいてよい。適当な還元剤は水素ガスであるが、当業者は適当であろう他の還元剤を容易に認識するであろう。還元剤は流体であってもよい。還元剤は液体であってもよく、気体であってもよく、プラズマであってもよく、これらの任意の2種以上の混合物であってもよい。溶液(例えば、溶媒における活性還元剤の溶液)であってもよい。金属酸化物の粒子に接近するために、還元剤は多孔質シリカマトリックスの細孔を通り抜けることのできるものであってよい。それは、前記細孔を通り抜けることができるよう十分に低い粘度を有していてよい。
【0068】
したがって、金属または金属酸化物は、メタノール合成および改質、メタンの水蒸気改質およびCO
2改質、フィッシャー−トロプシュ合成、CO酸化、触媒バイオマスタール分解、SO
2酸化、NO還元およびメタン酸化を含む1種以上の反応に対して触媒活性であり得る。金属酸化物は、酸化剤としてケミカルループ燃焼に有用であり得る。
【0069】
さらに、本発明は、上述した方法により調製されたまたは調製され得る複合物質を包含する。本発明の複合物質は、多孔質シリカマトリックス中に分散した金属酸化物の粒子、または金属自身の粒子を含む。多孔質シリカマトリックスは、直径約0.5〜約5nm、約0.5〜2、1〜3、3〜4、2〜3、1〜5または2〜4nmの細孔を有していてよい。多孔質シリカマトリックスは、約0.5、1、2、3、4または5nmの平均細孔径を有する細孔集団を含んでいてよい。さらに、または、これに代えて多孔質シリカマトリックスは、直径約10〜約500nm、または約10〜200、10〜100、10〜50、10〜20、20〜500、50〜500、100〜500、200〜500、20〜200、50〜200、50〜100、100〜300または30〜70nmの細孔を有していてよい。多孔質シリカマトリックスは、平均直径約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450または500nmの細孔集団を有していてよい。多孔質シリカマトリックスは、二峰性細孔分布を有していてよい。この例において、多孔質シリカマトリックスは、約0.5〜約5nmの範囲の第1細孔集団および約10〜約100nmの範囲の第2細孔集団を有していてよい。二峰性分布の細孔の場合、小さい細孔集団はゾル−ゲルシリカマトリックスの固有のナノ細孔性に起因し、大きい細孔集団は凝集したシリカ粒子間の空隙に起因すると考えられる。二峰性分布の二つの集団は時にわずかに重複していてよいことは理解されるであろう。しかしながら、このような例において、細孔径分布のグラフは、グラフ中の2つの明確に表れた極大値の存在により明確に2つの細孔集団を示す。細孔径分布、または細孔径分布の各モードは狭くてもよい。
【0070】
金属酸化物粒子(または金属自身の粒子)は、約2〜約10nm、または約2〜5、5〜10または3〜7nm、例えば約2、3、4、5、6、7、8、9または10nmの平均粒子径を有していてよい。これらは粒子径において実質的に単分散であってよい。これらは、20%の平均粒子径に、あるいは10または5%の平均粒子径に少なくとも約90%の粒子を有していてよい。金属酸化物粒子、または金属自身の粒子は、複合物質の少なくとも約20重量%、または少なくとも約25、30、35、40、45または50重量%、あるいは約20〜約70重量%、または約20〜50、20〜30、30〜70、50〜70、50〜60、30〜50または40〜50%、例えば約20、25、30、35、40、45、50、55、60、65または70重量%であってよい。これらは、実質的に球形であってよく、またはいくつかの別の形状、例えば多面体、針状、卵形、扁平球状、針状、円盤状、薄片状または不規則などであってよい。
【0071】
複合物質は、微粒子であってよく、またはモノリスであってよい。複合物質が微粒子の場合、それらの粒子は、少なくとも約10、または少なくとも約15、20、25、30、35、40、45または50、あるいは約10〜約50、または約10〜30、10〜20、20〜50または20〜30、例えば約10、15、20、25、30、35、40、45または50のアスペクト比(すなわち、長さと直径の比率)を有していてよい。粒子は棒状形態を有していてよい。あるいは、形態としては球状、多面体、卵形、扁平球状、針状および不規則形態が挙げられる。いくつかの例において、混合形態が存在し得る。いくつかの例において、複合物質の粒子は、任意の1種以上のこれらの形状を有する粒子の集合体であってよい。複合物質の粒子(または集合体)は、約0.1〜約10ミクロン、または約0.1〜1、1〜10、1〜5、5〜10、0.5〜5または0.5〜1ミクロン、例えば約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5または10ミクロンの平均直径を有していてよい。
【0072】
1つの特定の実施態様において、金属酸化物は酸化銅である。この場合、複合物質は棒状構造であり得る。これらは、一般的に、約10〜約100nmの直径を有し、約10〜50、10〜20、20〜100、50〜100または20〜50nm、例えば約10、20、30、40、50、60、70、80、90または100nmの範囲内にあってよい。
【0073】
他の特定の実施態様において、金属酸化物は酸化ニッケルまたは酸化鉄である。この場合、金属酸化物はシート状構造であってよい。シート状構造において、アスペクト比はシートの長さと厚さの比率を意味する。
【0074】
本発明の複合物質において、各粒子は共通して、そこに分散した金属酸化物または金属の複数の粒子を含む。これらの粒子は、実質的に不均一にそこに分散されていてもよく、不均一に分布し得る。
【0075】
平均で、複合物質の各粒子は、少なくとも約100個のそこに分散した金属酸化物の粒子、または、少なくとも約150、200、250、300、350、400、450または500個の粒子、または約100〜約1000個の粒子、あるいは約100〜500、100〜200、200〜1000、500〜1000または300〜700個の粒子、例えば約100、150、200、250、300、340、400、450、500、600、700、800、900または1000個の粒子を含んでいてよく、時にはそれを超えることもある。
【0076】
複合物質は、少なくとも約200m
2/g、または少なくとも約250、300、350、400、450、500、600、700、800、900または1000m
2/g、あるいは約200〜約1000m
2/g、または約200〜500、200〜300、300〜500、300〜1000、500〜1000、400〜700または500〜800m
2/g、例えば約200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900または1000m
2/gのBET比表面積を有していてよい。
【0077】
複合物質は、好ましくは、反応性物質が金属酸化物の表面へ浸透できるように、シリカマトリックスの外表面から金属酸化物の外表面へ連続的に広がる細孔を有している。複合物質は、より高い孔隙率を有していてもよいが、少なくとも約5%、または少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45または50%、あるいは約5〜約50%、または約5〜25、5〜10、10〜50、20〜50または20〜40%、例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45または50%の孔隙率を有していてよい。
【0078】
本発明の複合物質は、種々の応用に用いることができる。これらは主に、触媒としての前記物質の使用に関する。この物質により触媒され得る典型的な反応には、メタノール合成および改質、メタンの水蒸気改質およびCO
2改質、フィッシャー−トロプシュ合成、CO酸化、触媒バイオマスタール分解、SO
2酸化、NO還元、メタン酸化およびケミカルループ燃焼が挙げられる。触媒される反応の性質は、シリカマトリックス内に分散している金属酸化物または金属粒子の性質に依存するであろう。したがって、一般的に、特定の金属(例えば遷移金属)または金属酸化物(例えば遷移金属酸化物)により触媒され得る(またはその他の使用され得る)反応は、特定の金属または金属酸化物が複合物質の粒子により分散している粒子状である本発明の複合物質によっても触媒され得る(または他の使用をし得る)であろう。本発明において、用語「他の使用」は、試薬としての使用、毒物および/または複製生物の捕捉剤としての使用、あるいは他の関連する使用を意味し得る。
【0079】
複合物質は、使用において対面する温度での焼結に対して耐性であってよい。
【0080】
特定の例は、金属酸化物が基質の高温酸化を可能とするものである。この応用に好適な金属は銅であり、これにより分散した粒子は酸化銅である。この例においては、燃料を本発明の好適な複合物質による複合物質に、燃料の燃焼に十分な温度でさらす。温度は、通常、少なくとも約500℃、または少なくとも約600、700、800、900または1000℃、あるいは約500〜約1000℃、または約500〜900、500〜800、600〜1000、700〜1000、800〜1000、600〜800、700〜900または800〜900℃、例えば約500、550、600、650、700、750、800、850、900、950または1000℃である。
【0081】
別の例において、複合物質をケミカルループ燃焼において使用し得る。この応用に好適な金属酸化物ナノ粒子としては、NiO、Fe
2O
3、CuOおよびMn
3O
4が挙げられる。
【実施例】
【0082】
MeOx@SiO
2の合成
CuO@SiO
2の合成:50重量%CuO@SiO
2の典型的な合成において、6.08gのCu(NO
3)
2および10gのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)を、400mlのH
2Oに溶解させた後、4.0gのNaOHを含む80mlのNaOH水溶液を室温で注ぐことにより添加した。次いで、CTABによりキャップされた明るい青色のCu(OH)
2析出物を、遠心分離により収集した。前記析出物を320mlの水に分散させ、懸濁液を形成した。この懸濁液のpH値を12より上に調整した。その後、80mlエタノール中の7.6mlのテトラエトキシシラン(TEOS)を、懸濁液へゆっくりと滴下し、一定の撹拌下48時間室温で維持し、Cu(OH)
2析出物上に被覆されたSiO
2シェルを形成した。遠心分離後、得られたSiO
2シェルを有するCu(OH)
2を脱イオン水で十分に洗浄し、複合体中のナトリウム残渣を除去し、80℃で乾燥させた。最終的に、500
oC、2時間の焼成により、50重量%のCuO@SiO
2を得た。
【0083】
他のMeOx@SiO
2の合成:50%のNiO@SiO
2および50重量%のFe
2O
3@SiO
2の合成方法は、50重量%のCuO@SiO
2の前記合成と同様である。Ni(NO
3)
2・6H
2O(7.8g)およびFe(NO
3)
3・9H
2O(10.3g)を、それぞれ、Ni(OH)
2およびFe(OH)
3の析出のための前駆体として使用した。
【0084】
特性化
MeOx@SiO
2の粒子径および形態は、透過電子顕微鏡(TEM、HR−TEM、JEOL JEM−2010F)により特定した。結晶サイズおよび相数変換は、CuKα放射(λ=0.154nm)を備えたBruker D8 Advance X線回折計、およびインサイチューX線回折計をそれぞれ用いたX線回折により決定した。N
2吸着−脱着等温線は、Micromeritics ASAP 2420 V2.05(V2.05J)で収集した。H
2温度プログラム化還元(H
2−TPR)測定は、50mgのフレッシュ触媒により行った。測定前、試料をAr流下、200℃で2時間熱処理をし、水分および他の汚れを除去した。反応器を30℃から850℃へ10℃/分、5%H
2/Ar50ml/分の速度で加熱した。水素消費は、熱伝導度検出器(TCD)により観測した。
【0085】
ケミカルループ燃焼測定
酸素担体(OC)としてのMeOx@SiO
2の反応性を試験するために、固定ベッド反応器を用いた。0.5gのMeOx@SiO
2を、石英ウールを用いる内径10mmの石英管の真ん中に置き、試料を定位置に固定した。管内のデッドボリュームを減らすガスの均一分布のため、およびガスの逆混合のために、試料に対して石英チップを管端部から配置した。この管を炉内に配置し、850℃で一定に加熱した。OCによるCH
4の還元反応およびOCによる空気の酸化反応は以下のような業績であった:調製されたOCをAr流中で850℃の反応温度まで加熱し、その後還元のために10%CH
4(残りはAr)を100ml/分の流速で5分間導入した。次いで、CH
4供給を停止して、反応器にアルゴンガスを通過させ、残っているメタンガスをパージした。5分間のアルゴンガス走行の後、反応器に清浄空気50ml/分を貫流させえ、5分間金属を酸化させた。その後、アルゴンガスを5分間流し酸素ガスをパージし、反応器にメタンを通過させ、全反応を一巡した。反応器からの排気筒ガスを質量分析計で観測した。
【0086】
結果および検討
本発明の金属酸化物/シリカコア−シェル構造化ナノ複合体の合成方法は以下の3つのカギとなる工程を含む:(1)従来方法の複雑な金属または金属酸化物の合成方法に代わる、室温および大気圧下での金属水酸化物析出物(Me(OH)
x)の調製;(2)構造指向剤を用いたMe(OH)
xコア上へのSiO
2のインサイチューコーティング;(3)焼成による、得られたコア−シェル構造化Me(OH)
x@SiO
2のMeOx@SiO
2への変換および構造指向剤の除去。第4の工程は、Me@SiO
2に対する:(4)H
2還元またはH
2、NaBH
4、ヒドラジン、エチレングリコール等の剤を用いた還元によるMeOxのMeへの変換である。
【0087】
合成戦略に基づき調製されたSiO
2マトリックスに封入されたCuO、NiOおよびFe
2O
3の合成および特定は以下の通りである。
【0088】
マトリックスに封入された50%CuO
【0089】
図1は、前記合成戦略を用いたSiO
2マトリックスに封入された50重量%CuOナノ粒子の合成を示す。初めに、CTABを含むCu(NO
3)
2溶液中へのNaOHの素早い注入添加によりCTABによりキャップされたCu(OH)
2析出物を調製した。第2に、テンプレートとしてCTABの指示下、シリカシェルをCu(OH)
2の表面にインサイチューで堆積させた。第3に、シリカシェルにメソ細孔を残したまま、焼成によりCu(OH)
2をCuOに変換し、CTABを除去し、最終的に、シリカマトリックスに封入された高分散CuOナノ粒子を得た。
【0090】
図2のTEMイメージは、異なる合成工程におけるCu化合物とSiO
2の形態を示す。CTABによりキャップされたCu(OH)
2析出物は、ランダムナノワイヤ化したまたはナノリボン化用構造を有し、Cu(OH)
2ナノ粒子からなる(
図2aおよびb)。CTAB指示下でのSiO
2のインサイチューコーティングの後、
図2cおよびdに示されるように、主にSiO
2相互作用に起因するように、ランダムCu(OH)
2が、Cu(OH)
2ナノ粒子がシリカマトリックスに高分散され、各ナノ粒子がナノスケールシリカ層により分離される規則正しい束状構造に転換される。最終的に500℃での焼成により、高分散CuOナノ粒子がSiO
2マトリックスにおいて形成される(
図2eおよびf)。XRDパターンから算出される平均粒子径は6.6nmである。
【0091】
合成中のCu相の変換をさらに理解するために、大気中、25℃から850℃の試験温度で5℃/分の加熱速度で、インサイチューXRD分析を行った。XRDパターンはを各特定の温度で3分間放置して得た。
図3aからわかるように、25℃〜150℃の温度範囲においてCu相は銅水酸化物である。温度を250℃まで上げた場合、Cu相はCu(OH)
2からCuOへ完全に転換された。温度との関係におけるCuの結晶サイズを
図3bに示す。25℃で10.6nmのCu(OH)
2に対する粒子径は、250℃で2.8nmのCuOに対する粒子径まで急激に減少することが理解される。これはCu(OH)
2からCuOへの格子収縮の減少に起因すると考えられる。その後、粒子径は、750℃で4nmまで非常にゆっくりと成長し、850℃まで温度を上げると7.6nmまで急速に増加する。これはCuO/SiO
2複合体が良好な熱安定性を有することを示す。
【0092】
500℃で焼成されたシリカマトリックスに封入された50%CuOのテクスチャー構造を窒素物理吸着により特定した。ナノ複合体のN
2吸着−脱着等温線を、0.2〜0.3の低圧範囲(P/P
0)において比較的速い吸着量の増加を伴い、メソ細孔の存在を示す
図4aの表示方式IV等温線に示す。メソ細孔分布(
図4b)は、5.3nmの平均細孔径を有する2.5nmで中心となる鋭いピークを示し、均一なメソ細孔構造を示す。BET比表面積および累積細孔のBJH堆積累積体積は、それぞれ576m
2/gおよび0.76m
3/gであり、SiO
2マトリックスが高いメソ細孔構造を有することを示す。
【0093】
コア−シェル構造化物質における反応物質へのコアの接近しやすさは、触媒反応および気固反応に非常に重要である。
図5は、30℃〜850℃、10℃/分の速度で測定された、500℃で焼成されたSiO
2マトリックスに封入された50重量%のCuOのH
2TPR曲線を示す。複合体中の多くのCuOは300℃未満で容易に還元することができ、これは市販のCuOナノ粒子粉末の還元挙動と比較される。さらに、標準CuO粉末の同じ重量ピーク面積の比較により、複合体中のCuO負荷が45%であると算出され、これは本発明の生成物における50%の公称含量に非常に近似しており、90%を超えるCuOナノ粒子が反応に利用可能でSiO
2マトリックスがCuOコアへの反応性物質拡散のための効果的な経路を提供することができることを示している。TEMイメージ(
図6aおよびb)に示されるように、最大850℃において還元された後も、束状構造は未だ保持されたままであり、Cuナノ粒子はSiO
2マトリックスに未だ封入されている。粒子径は未だ10nm未満である。これは、さらに本発明の物質が良好な熱安定性を有していることを示している。
【0094】
酸素担体としてのCuOは、メタン燃焼に対して非常に高い反応性および選択性を有しているが、CLC応用においてCu金属の重大な焼結問題に対面する。結果として、SiO
2マトリックス中の50%CuOを含む本発明の複合物質は、CLCの操作条件下において研究された。
図7は、CLC応用におけるその性能を示す。この反応は850℃で行われた。10サイクルの操作の後、性能において複合体は実質的に崩壊しないことがわかるであろう。しかしながら、市販のCuOナノ粒子は、重大なCu焼結によりたった1サイクルの後その活性のほとんどが失われた。これは、反応後、多量のCuO粒子が形成されたにもかかわらず、シリカマトリックスに封入されたCuOが優れた熱安定性を有していることを示す。以前、20重量%未満のCu負荷で不活性物質に担持されたCuOは、重大なCu焼結を回避するためにデモンストレーション装置で使用されている。本発明における最大50重量%Cu負荷の例により、焼結なしで達成することができ、反応効率を非常に促進することができる。
【0095】
SiO
2マトリックスに封入された他の金属酸化物
SiO2マトリックスに封入された50重量%NiOナノ粒子を、CuOに対して上述した方法と同じ方法で調製した。
図8に示すように、Ni(OH)
2は層状構造を有しており、これはナノワイヤ化またはナノリボン化Cu(OH)
2析出物とは異なる(
図8a)。Cu(OH)
2とNi(OH)
2の異なる結晶成長メカニズムに起因するものと考えられる。SiO
2による被覆と500℃での焼成後、5nm未満の粒子径を有する高分散NiOがSiO
2マトリックス中に形成された(
図8bおよびc)。XRDパターンにより得られた平均粒子径は2.6nmであった。また、ナノ複合体の得られたN
2吸着および脱着等温線(
図8d)は、ナノ複合体が406m
2/gの高いBET比表面積と1.3m
3/gの細孔容積を有するメソ細孔を有することを示す。
図8eに示される細孔サイズ分布は、2.2nmを中心とする1つの鋭いピークがSiO
2マトリックスの骨格に由来することに起因し得り、および33.3nmでの他の広いピークが、
図8bで観測されるようなその不規則な形状により、SiO
2マトリックスの集合粒子間の間質空間に起因し得る2つのピークを示す。
【0096】
合成技術は、SiO
2に封入された50重量%Fe
2O
3の調製にまで拡張される。
図9aおよびbは、この生成物のTEMイメージを示す。これは、<5nmの粒子径を有するFe
2O
3ナノ粒子をSiO
2マトリックスに高分散させ、SiO
2層により近接する粒子から各Fe
2O
3粒子がよく分離されることを観察することができる。N
2吸着および脱着等温線により特徴づけられるテクスチャー構造を、
図9cに示す。低圧範囲でN
2量の増加があり、複合体がメソ細孔であることを示している。高BET比表面積および細孔容積は、それぞれ、532m
2/gおよび1.7m
3/gである。これらは、SiO
2に封入されたNiOと同様の細孔サイズ分布を有し(
図9d)、2つのピークを2.3nmおよび220nmに見ることができる。
【0097】
Co
3O
4、V
2O
5、Mn
3O
4およびZnOなどの他の金属酸化物を、ここに記載する方法を用いて多孔質シリカマトリックスに封入することができる。
【0098】
従来方法における金属または金属酸化物ナノ粒子の代わりに、カギとなる中間体として金属水酸化物析出物を用いて、多孔質SiO
2マトリックスに封入された高分散金属酸化物ナノ粒子を容易に、かつ、効果的に合成する方法が開発された。多孔質SiO
2マトリックスに封入された3種の金属酸化物(CuO、NiOおよびFe
2O
3)をうまく調製する。本方法で調製されたSiO
2に封入された金属酸化物はナノ複合体であり、狭い分布および約5nmの平均粒子径を有する金属酸化物の高い分散を有するだけでなく、金属酸化物への豊富な利用可能なメソ細孔を有する高表面積(300〜500m
2/g)および高温における優れた熱安定性も有する。さらに、複合体内の金属酸化物の負荷は、50%まで、またはさらに上まで増加させることができる。合成方法は、商業的生産に容易に拡張できる非常に容易な方法である。これらの特徴は、この複合体に広範な利用可能性、ならびに触媒としてのおよび不均一系触媒反応およびケミカルループ燃焼における酸素担体として商業的価値をもたらす。
【0099】
本発明のSiO
2封入金属酸化物は、Cu、NiおよびFe酸化物以外の多くの遷移金属に拡張することができる。これらとしては、酸化物触媒として広く使用されているV
2O
5、ZnO、Co
3O
4、MnO
2が挙げられる。発明者等は、多孔質SiO
2マトリックスに封入された遷移金属、レドックスMeO
x@SiO
2を還元することにより容易にMe@SiO
2を製造することができることを示した。同様に、多孔質SiO
2マトリックスに封入された貴金属(Pt、Au、Pd、Rh等)を、本発明の方法により合成することもできる。これらの全ては、種々の不均一系触媒反応方法における応用を見出すことができる。