(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185086
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20170814BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
A61B1/00 S
A61B1/00 714
G02B23/24 A
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-559433(P2015-559433)
(86)(22)【出願日】2014年1月6日
(65)【公表番号】特表2016-509877(P2016-509877A)
(43)【公表日】2016年4月4日
(86)【国際出願番号】EP2014000007
(87)【国際公開番号】WO2014131481
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2016年8月15日
(31)【優先権主張番号】102013003315.2
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510320416
【氏名又は名称】オリンパス・ウィンター・アンド・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100179154
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 真衣
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100184424
【弁理士】
【氏名又は名称】増屋 徹
(72)【発明者】
【氏名】シェーラー,ウーヴェ
【審査官】
田邉 英治
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−052397(JP,A)
【文献】
特開2012−110423(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0208001(US,A1)
【文献】
特開2005−30528(JP,A)
【文献】
特開2008−18014(JP,A)
【文献】
特開2012−40307(JP,A)
【文献】
実開昭56−19201(JP,U)
【文献】
特開昭58−61721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00− 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部領域により剛直な区域(2,3)に押し嵌められて、その上で半径方向に作用するクランプ装置(5,7,12)によって封止式にクランプされる弾性的なホースで取り囲まれた、剛直な区域(2,3)に接する柔軟な区域(4)を少なくとも1つの端部に有する内視鏡において、前記クランプ装置(5,7,12)はクランプされた状態のときに前記ホース(4)へ少なくとも2つの巻回により巻きつく金属からなるループ部材(7,12)として構成されていて、前記ループ部材は、平形テープ(7)として構成されており、前記ループ部材では少なくとも2つの巻回が相互に溶接されて構成されていることを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記ループ部材(7)は、一方の端部にアイレット(9)を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記平形テープ(7)は、前記アイレット(9)の領域(8)で拡張されて構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の内視鏡。
【請求項4】
一方の端部領域により剛直な区域(2,3)に押し嵌められて、その上で半径方向に作用するクランプ装置(5,7,12)によって封止式にクランプされる弾性的なホースで取り囲まれた、剛直な区域(2,3)に接する柔軟な区域(4)を少なくとも1つの端部に有する内視鏡(1)を製造する方法であって、前記クランプ装置(5,7,12)はクランプされた状態のときに前記ホース(4)へ少なくとも2つの巻回により巻きつく金属からなるループ部材(7,12)として構成されていて、前記ループ部材では少なくとも2つの巻回が相互に溶接されて構成されている、内視鏡(1)を製造する方法において、
前記ホース(4)が一方の端部領域により前記剛直な区域(2,3)に押し嵌められ、前記ループ部材(7,12)が前記端部領域の周囲へ少なくとも2回だけ巻きつけられ、前記端部から張力をかけられ、次いで前記ループ部材(7,12)の巻回が相互に溶接されており、レーザによって溶接が行われることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、まず前記ループ部材(7,12)が、前記ループ部材(7,12)の一方の端部に設けられたアイレット(9)に差し込まれ、このように形成されたループが前記端部領域の周囲に配置されて引き締められてから、巻きつけが開始されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提項に記載されている種類の内視鏡、ならびに、これを製造する方法、および内視鏡のためのループ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば泌尿器科や腹腔鏡検査などで用いられる、多くの場合に金属管で包囲される剛直な内視鏡と並んで、互いに接し合う剛直な区域と柔軟な区域とを有する当分野の内視鏡が知られている。全面的に柔軟と称される内視鏡、たとえば胃腸検査のための内視鏡でさえ、少なくともその近位の取扱部分では剛直に構成されていて、そこで柔軟な区域から剛直な区域への移行部を有している。このとき、工業上の用途のための内視鏡だけでなく、特に医療用の内視鏡においても、内視鏡の外側の封止が決定的に重要となる。
【0003】
外側の封止は、特に、内視鏡が前処理されるべきである場合に非常に重要となる。前処理とは洗浄と殺菌のことであると理解され、すなわち、液体やたとえば高温蒸気を用いての作業であり、光学的、電子的なデバイスを含む内視鏡の複雑な内部機構がこれらに対して防護されるべきである。
【0004】
内視鏡の柔軟な区域は、互いに枢着結合された部品からなる、あるいはコイルばねのような形式の部材からなる、少なくとも1つの補強用の骨組みを内部に有している。さらに、このような柔軟な区域を、液体封止を保証する弾性的なホースが常に取り囲んでいる。
【0005】
このとき問題となるのはホースの端部の封止であり、この封止は通常、当分野においては、剛直な区域の上に押し嵌めて半径方向でクランプすることによって行われる。その際には封止問題の全体が、クランプ装置の正確な作用へと移る。
【0006】
工業の多くの分野で通常用いられる、普通のホース金具の形態のクランプ装置は、この場合には考慮の対象とならない。外方に向かって突き出し、場合により鋭いエッジがある部品は、患者の体内で使用する場合には許容されないからである。
【0007】
1つの公知の解決法は、剛直な区域の上に押し嵌められたホースを釣り糸に似た細いプラスチック糸で結束し、これに張力をかけて端部で結ぶことにある。最終的に接着材料、塗装、または粘着テープで被覆することによってクランプ装置が完成する。このような構造は利用者にとって良好な結果をもたらすが、製造のときに欠点を有している。クランプ装置の機械式の製作が可能ではない。このクランプ装置は、非常に熟練した指をもつ人間によってしか製作することができない。その場合には高い製造コストが生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、冒頭に述べた種類の内視鏡を、高い確実性でいっそう低コストにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1の特徴部の構成要件によって解決され、ならびに請求項6に記載の方法、および請求項9に記載のループ部材によって解決される。
【0010】
本発明は、それぞれの巻回が溶接される金属のループ部材を利用する。このようなクランプ装置は、低い失敗率で機械式に取り付けることができる。それによってコストが低下し、信頼性が高くなり、すなわち、特に医療上の用途のケースでは患者の安全性が高くなる。
【0011】
請求項2により、ループ部材の端部にはアイレットが設けられているのが好ましい。アイレットによって、巻きつけプロセスの開始を容易にするループを非常に簡単に形成することができる。
【0012】
請求項3により、ループ部材は平形テープとして構成されているのが好ましい。平形テープは少ない厚みで高い強度を可能にするとともに、平形テープの幅で簡単かつ確実な溶接を可能にする。さらに、平坦な構成によって怪我の危険性を減らすことができる。
【0013】
このとき請求項4により、平形テープはアイレットの領域で拡張しているのが好ましい。このことはアイレットの高い縁部強度を与えるとともに、ホースへの巻きつけ後に、アイレットを介して巻き戻された平形テープをそこで溶接するという可能性を与え、拡張された領域は溶接プロセスによる作用に対してホースを防護する。
【0014】
請求項5により、ループ部材は線材として構成されているのが好ましい。それによっても、鋭いエッジの個所を有さず、ホースを損傷せずに確実に溶接可能であるクランプ装置の好ましい実施形態を創出することができる。
【0015】
内視鏡の製造は、請求項6から8のいずれか1項の構成要件に基づいて行われるのが好ましい。
【0016】
請求項9は、本発明によるループ部材を権利申請するものである。
【0017】
図面には本発明が一例として模式的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】2つのクランプ装置を備える本発明による内視鏡を示す側面図である。
【
図2】ループ部材を備えるクランプ装置の領域で
図1の内視鏡を示す拡大断面図である。
【
図3】ループを形成するときの別の実施形態のループ部材である。
【
図4】敷設と溶接が完了した後の
図3のループ部材である。
【
図5】
図1の内視鏡を別の実施形態のクランプ装置の領域で示す、大きく拡大した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、内視鏡1のシャフトの縦断面図を側面図として示している。近位の接続・取扱部分、および遠位の終端部分は簡略化のため省略されている。図示した内視鏡1は工業用または医療用の内視鏡であってよく、図示しない内部にイメージガイド、電気導線、気体通路および/または液体通路、およびその他の装置を収納することができる。
【0020】
図示している領域では内視鏡1は3つの区域からなっていて、すなわち、剛直な区域2と、別の剛直な区域3とを含んでいる。これらは両方とも、図示している外面でたとえば鋼管として構成されていてもよい。
【0021】
両方の剛直な区域2および3の間に、柔軟な区域4が配置されている。柔軟な区域4はその外面で弾性的なホースによって形成され、このホースは、
図1に破線で示す第2の曲げ位置によって図示されているように、柔軟な区域4の撓んで曲がることを可能にする。
【0022】
柔軟な区域4の両方の端部領域には、(
図1では破線で示す)クランプ装置5が配置されている。
図2は、剛直な区域2に向かって位置するクランプ装置の領域で、
図1に示す構造の拡大した断面を示している。
【0023】
図2は、柔軟な区域4に向かって位置する端部領域6が直径に関して縮小されている、金属管として構成された剛直な区域2を示している。柔軟な区域4のうち、ここでは弾性的なホースだけが示されている。柔軟な区域4の内部全体は省略されている。ホースは剛直な区域2に、すなわちその縮小された端部領域6に押し嵌められ、それにより、ホース4と剛直な区域2との間には外面が平滑な移行部が生じている。
【0024】
剛直な区域2の縮小された端部領域6の上に据えつけられたホース4の端部領域では、ホース4の周囲に外側からクランプ装置が配置され、このクランプ装置は、
図2では、帯状に構成された周回するループ部材5として模式的に示されている。
【0025】
ループ部材5は、弾性的なホース4の周囲で力により張力をかけられて、
図2に示すようにその表面に押し込まれ、そのようにして、ホース4の内面と剛直な区域2の外面との間での長期に及ぶクランプ応力を端部領域6で保証する。その結果、ホース4の弾性的な材料構成に基づき、良好な封止作用がもたらされる。
【0026】
図3および4は、クランプ装置の第1の具体的な構成を示している。ここではループ部材は、一方の端部で拡張された領域8にアイレット9を有する、金属からなる平形テープ7として構成されている。
【0027】
図3の構造は、
図1に示すクランプ装置の両方の敷設個所のうちの一方に敷設することができる。このとき平形テープ7はホース4の周囲に巻きつけられ、アイレット9に差し込まれる。平形テープ7の自由端をもって、図示している矢印の方向へ引っ張ると、
図3に示すループがホース4の周囲で引き締められ、ついには、最終位置でホースを
図2に示すような形態で固定的に包囲する。
【0028】
最終的に
図4に示すクランプ装置の敷設個所となり、ここで、それぞれ上下で切断されている、平形テープ7の相上下する3つの巻回を有する
図4で示したクランプ装置の実施例が示される。
【0029】
第1の巻回が
図3に示されている。矢印方向でアイレット9を通して引っ張られる平形テープ7は、第2および第3の巻回で相上下するように、柔軟な区域4のホースの周囲に巻回される。第3の巻回は、
図4の線10のところで終了する。テープが弛みのないように引っ張られ、ついには、
図2に図示するように高い力で当接する。次いで、良好に溶接能力のある適当な金属からなる平形テープ7の異なる巻回の溶接による固定が行われる。
図4は、たとえば金属テープ7のもっとも外側の巻回に対して横向きに、後続する拡張した領域8にまで引かれた溶接継目11を示している。すなわち溶接継目11は、第1の巻回と第3の巻回とを結合する。このとき貫通溶接を行うこともでき、それにより、すべての巻回が相互に溶接される。
図4に示すとおり、溶接継目11はテープ7を側方に超えて拡張した領域8まで容易に引き伸ばすことができ、ホース4の材料が損傷されることはない。
【0030】
図5は、クランプ装置の別案の実施形態を示し、すなわち、ここでは断面では
図2に示すのとちょうど同じように構成されていてよい剛直な区域2の上で、弾性的なホース4がクランプされる個所で示している。しかしこのクランプ装置は、クランプ装置のループ部材が平形テープ7として構成される
図3および4とは別様に構成されている。それに対して
図5の実施形態では、ループ部材は金属線12で構成されている。
【0031】
平形テープ7の巻回が相上下して巻かれる
図3および4の実施形態とは異なり、
図5の実施形態では、金属線12の複数の巻回が相並んで巻かれる。
図5の図示した実施例では、これは4つの巻回である。
【0032】
適当な巻取り機を用いて、
図5に示すように金属線がホース4の周囲に複数回巻きつけられて、高い力で引き締められ、その様子は
図5にホース4への作用によっても図示されている。そして金属線12が弛みなく巻かれた位置で保持されて、溶接によって固定される。溶接は
図5に示すように行われる。
【0033】
このとき2つの巻回の間に、常に1つの溶接継目11が配置されている。すなわち、これは全部で4つの溶接継目である。これらは比較的小さい円周領域で、それぞれ2つの巻回の間の接触線に沿って配置されている。それぞれの巻回が十分に密接して巻かれていれば、その下に位置するホースを損傷させることなく、ここで溶接をすることができる。
【0034】
溶接継目11の図示した構成とは異なり、内視鏡の軸の方向での、すなわち
図5に示す溶接継目の位置に対して実質的に横向きでの、溶接継目の配置も適用することができる。
【0035】
図3および4の実施例でも同様に、溶接継目は、適当な光学系によって十分に密接して焦点合わせが可能である溶接レーザを用いて行えるのが好ましく、そのようにしても、
図5に大きく拡大して図示するように、細い溶接継目を整然と作成することができる。実際の実施例では、たとえば図示している内視鏡の直径はわずか約5mmである。そのとき金属線12は0.05から0.2mmの厚みを有することになり、溶接継目11は約0.05mmの幅を有することになる。