(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カワラタケ抽出物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および/またはガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)にさらに供する、請求項1記載の方法。
前記癌または腫瘍が、脳腫瘍、上咽頭癌、肺癌、リンパ腫、結腸癌、肝臓癌、胃がん(stomach cancer)、食道癌、膀胱癌、および胃癌(gastric cancer)からなる群より選択される、請求項8記載の医薬組成物。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹(帯状疱疹)、ヘルペスウイルス-8、サイトメガロウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型(HTLV-1)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、エプスタイン・バーウイルス、コロナウイルス、マイコバクテリア、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、大腸菌(Escherichii coli)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、アマゾンリーシュマニア(L. amazonensis)、ニューモシスティス(Pneumocystis)、トキソプラズマ(Toxoplasma)、カンジダ、および/またはアスペルギルスによる感染を治療するために使用される、請求項11記載の医薬組成物。
【発明の概要】
【0008】
発明の簡単な概要
本発明は、治療上の使用のためにカワラタケ抽出物を調製する効率的かつ簡便な方法を提供する。一態様において、本発明は、カワラタケ抽出物を調製する、および/またはカワラタケから生物学的に活性な化学成分を単離する方法であって、
a)カワラタケの、十分な量の原料を用意する工程;
b)カワラタケ抽出物および残留物を産生するために約15℃〜約30℃の温度にて極性溶媒でカワラタケの原料を抽出する工程、ここで、工程b)は一回または一回以上行われる;ならびに
c) カワラタケ抽出物を回収する工程
を含む方法を提供する。カワラタケ抽出物は、多糖クレスチン(PSK)等の多糖ペプチド(PSP)またはその他の生物活性低分子を含む生物学的に活性な化学成分を含むことが好ましい。一態様において、カワラタケ抽出物をさらに蒸発させて、固体または半固体組成物を生成できる。
【0009】
さらに、本発明は、本抽出方法によって生成されるカワラタケ抽出物を提供する。治療上有効量の本カワラタケ抽出物、および、任意で、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供する。また、本発明は、本発明のカワラタケ抽出物を含む栄養補助食品および健康食品または飲料製剤も提供する。
【0010】
さらなる態様において、本方法は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および/またはガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)の組合せを使用して、カワラタケ抽出物についての化学的プロファイルを作成する工程を含む。
【0011】
本発明は、免疫反応の調節が有益な疾患または病態を予防、治療または改善する方法も提供する。一態様において、本方法は、そのような治療を必要とする対象に、治療上有効量の本発明のカワラタケ抽出物を含む有効量の組成物を投与する工程を含む。
【0012】
一態様において、本発明の組成物を使用して、脳腫瘍、上咽頭癌、乳癌、肺癌、白血病、リンパ腫、結腸癌、肝臓癌、胃がん、食道癌、膀胱癌、および胃癌を含む(ただし、これらに限定されない)癌または腫瘍を治療または改善できる。
【0013】
好適な態様において、本発明は、多形性神経膠芽腫、上咽頭癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、および/または結腸癌を治療または改善するために使用できる。
【0014】
別の態様において、本発明は、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ならびに水痘帯状疱疹、サイトメガロウイルス、およびヘルペスウイルス-8等の(ただし、これらに限定されない)関連するヘルペスウイルスによる感染を治療または改善するために使用できる。これらのウイルス感染は、癌患者または免疫不全患者においてよくみとめられる。
[本発明1001]
a)カワラタケ(Coriolus versicolor)の、十分な量の原料を用意する工程;ならびに
b)カワラタケアルコール抽出物および残留物を産生するために前記カワラタケの原料を約15℃〜約30℃の温度のアルコールまたはアルコール-水混合液である極性溶媒で抽出して、カワラタケアルコール抽出物を回収する工程
を含み、該工程b)が一回または一回以上行われる、カワラタケ抽出物を調製する方法。
[本発明1002]
第二のカワラタケ抽出物を産生するために前記残留物を約60℃以上の温度のアルカリ溶液で抽出する工程をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記極性溶媒がエタノールまたは水-エタノール混合液である、本発明1001の方法。
[本発明1004]
固体または半固体組成物を生成するために前記カワラタケ抽出物を蒸発させる工程をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1005]
前記カワラタケ抽出物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および/またはガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)にさらに供する、本発明1001の方法。
[本発明1006]
前記工程a)およびb)から本質的になり、該工程b)が一回または一回以上行われる、本発明1001の方法。
[本発明1007]
a)カワラタケの、十分な量の原料を用意する工程;
b)カワラタケアルコール抽出物および残留物を産生するために前記カワラタケの原料をアルコールまたはアルコール-水混合液である極性溶媒で抽出して、カワラタケアルコール抽出物を回収する工程、ここで、工程b)は、一回または一回以上行われる;
c)水性抽出物を産生するために該工程b)で得た残留物をアルカリ性水溶液で抽出して、該水性抽出物を回収する工程、ここで、工程c)は、一回または一回以上行われる;ならびに
d)カワラタケ抽出物を産生するために、該b)およびc)で得られた1つ以上の抽出物を混ぜ合わせる工程
を含む、カワラタケ抽出物を調製する方法。
[本発明1008]
前記極性溶媒がエタノールまたは水-エタノール混合液である、本発明1007の方法。
[本発明1009]
前記工程a)〜d)から本質的になる、本発明1007の方法。
[本発明1010]
本発明1001の方法によって得られるカワラタケ抽出物。
[本発明1011]
本発明1007の方法によって得られるカワラタケ抽出物。
[本発明1012]
図2A、2B、2Cもしくは
図4に示すフラクション1〜3のいずれかに示す高速液体クロマトグラフィー(HPLC)プロファイル、および/または
図3Aもしくは3Bに示すガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)プロファイルを有するカワラタケ抽出物。
[本発明1013]
免疫反応の調節が有益となりうる疾患または病態を治療する方法であって、そのような治療を必要とする対象に、本発明1010および/または本発明1011のカワラタケ抽出物を含む有効量の組成物を投与する工程を含む、方法。
[本発明1014]
IL-10生成を低減および/またはIFNβ生成を増加するために使用される、本発明1013の方法。
[本発明1015]
腫瘍または癌を治療するために使用される、本発明1013の方法。
[本発明1016]
前記癌または腫瘍が、脳腫瘍、上咽頭癌、乳癌、肺癌、白血病、リンパ腫、結腸癌、肝臓癌、胃がん(stomach cancer)、食道癌、膀胱癌、および胃癌(gastric cancer)からなる群より選択される、本発明1015の方法。
[本発明1017]
多形性神経膠芽腫、上咽頭癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、および/または結腸癌を治療するために使用される、本発明1016の方法。
[本発明1018]
ウイルス感染、細菌感染、原虫感染、真菌感染、および/または微生物感染を治療するために使用される、本発明1013の方法。
[本発明1019]
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹(帯状疱疹)、ヘルペスウイルス-8、サイトメガロウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型(HTLV-1)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、エプスタイン・バーウイルス、コロナウイルス、マイコバクテリア、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、大腸菌(Escherichii coli)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、アマゾンリーシュマニア(L. amazonensis)、ニューモシスティス(Pneumocystis)、トキソプラズマ(Toxoplasma)、カンジダ、および/またはアスペルギルスによる感染を治療するために使用される、本発明1018の方法。
[本発明1020]
単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹、サイトメガロウイルス、および/またはヘルペスウイルス-8による感染を治療するために使用される、本発明1018の方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、カワラタケ抽出物を調製する効率的かつ簡便な方法を提供する。一つの好適な態様において、カワラタケ抽出物は、水、エタノール、またはエタノール-水の混合液を溶媒として使用して室温にて調製される。一態様において、カワラタケ抽出物をさらに蒸発させて固体または半固体組成物を生成することができる。
【0017】
本発明はさらに、本抽出方法によって生成されたカワラタケ抽出物を提供する。また、治療上有効量の本カワラタケ抽出物、および任意で、薬学的に許容される担体を含む治療組成物または医薬組成物も提供する。本発明は、本発明のカワラタケ抽出物を含む栄養補助食品、および健康食品または飲料製剤も提供する。
【0018】
さらなる態様において、本方法は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および/またはガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)の組合せを使用して、カワラタケ抽出物についての化学的プロファイルを作成する工程を含む。
【0019】
また、本発明は、免疫反応の調節が有益な疾患または病態を予防、治療または改善する方法も提供する。一態様において、この方法は、そのような治療を必要とする対象に、本発明のカワラタケ抽出物を含む有効量の組成物を投与する工程を含む。
【0020】
具体的には、本発明の組成物は、IFNβ生成の促進、ならびに/またはTNF-α、IL10および/もしくはMMP-3生成の低下が有益な疾患または病態を治療または改善するために使用できる。
【0021】
好適な態様において、本発明を使用して多形性神経膠芽腫および/または上咽頭癌を治療することができる。別の態様において、本発明を使用して、細菌感染、ウイルス感染、および/または微生物感染を治療することができる。特定の態様において、本発明を使用して、癌または免疫不全患者においてよくみとめられるウイルス感染である水痘帯状疱疹、サイトメガロウイルス、およびヘルペスウイルス8感染等の(ただし、これらに限定されない)感染を治療することができる。
【0022】
カワラタケ抽出物
本発明の一局面は、カワラタケ抽出物を調製する方法を提供する。また、本方法を使用してカワラタケから生物学的に活性な化学成分を単離できる。また、本発明により調製したカワラタケ抽出物も提供する。
【0023】
好適な態様において、本発明は、
a)カワラタケの、十分な量の原料を用意する工程;
b)カワラタケ抽出物および残留物を産生するために約15℃〜約30℃の温度にて極性溶媒でカワラタケの原料を抽出する工程、ここで、工程b)は、一回または一回以上行われる;および
c)カワラタケ抽出物を回収する工程
を含むか、これらの工程から本質的になるか、またはこれらの工程からなる、カワラタケ抽出物を調製する方法、および/またはカワラタケから生物学的に活性な化学成分を単離する方法を提供する。
【0024】
有利なことに、約15℃〜約30℃の温度で極性溶媒を使用することで、抗癌および/または抗ウイルス効果を有する1つ以上の生物学的に活性な低分子化学成分の抽出が容易になる。
【0025】
カワラタケの原料は乾燥および粉末粉砕されることが好ましい。カワラタケ抽出物は、多糖類クレスチン(PSK)等の多糖ペプチド(PSP)を含む生物学的に活性な化学成分を含むことが好ましい。原料はカワラタケ子実体であることが好ましい。
【0026】
特定の態様において、カワラタケの調製に適した溶媒としては、アルコール(例えば、C
1-C
8アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノール;C
1-C
8アルキルポリオール);C
1-C
8ケトン(例えば、アセトン)またはアルキルケトン;クロロホルム;酢酸;水;ならびに塩酸等の無機酸が挙げられるがこれらに限定されない。一態様において、本発明は、1:5〜1:20、好ましくは約1:10、1:12、または1:15のカワラタケ 対 溶媒比(v/v)を利用する。好適な態様において、本抽出手順は、水、アルコール(例えば、エタノール)、またはアルコール-水の混合液(例えば、エタノール-水)を溶媒として利用する。アルコール-水(例えば、エタノール-水)混合液は、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%のアルコール(例えば、エタノール)を含み得る。
【0027】
抽出手順の工程(b)は室温で行うことが好ましい。工程(b)は室温より僅かに上下する温度においても行うことができる。一態様において、工程(b)は約15℃〜約30℃、約18℃〜約28℃、約20℃〜約28℃、または約22℃〜約26℃の温度で行う。特定の態様において、工程(b)は約25℃で行う。
【0028】
一態様において、抽出手順の工程(b)の間、カワラタケの原料を好ましくは室温または室温未満の冷たい溶媒中で浸軟させる。一態様において、抽出手順の工程(b)の前および/または該工程中、溶媒もカワラタケの原料も、50℃を上回るかまたは45℃を上回る温度に煮沸または加熱されない。
【0029】
一態様において、カワラタケの原料を媒と少なくとも約15分間混合して、生物学的に活性な化学成分を抽出する。抽出時間は少なくとも約20分間、30分間、40分間、50分間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、4時間または5時間であることが好ましい。
【0030】
抽出の工程(b)は連続的な超音波処理により行うことが好ましい。超音波処理は、場合によって、乾燥した医薬材料から化合物を抽出する際の効率を改善し、抽出時間を短くし得る方法である。このような向上の根本にあるメカニズムとしては、質量移動が強まり、溶媒が医薬材料の中により入り易くなることがある。従って、超音波処理は、従来の抽出技術に代わる迅速、安価かつ効率的な代替法であり、場合によっては、超臨界流体およびマイクロ波支援型抽出よりも優れている。
【0031】
好適な態様において、工程(b)中、少なくとも約5分間、10分間、15分間、20分間、30分間、40分間、50分間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、4時間または5時間の連続的な超音波処理によって、カワラタケの原料を溶媒と混合する。しかし、本発明者らによって、特定の場合においては、超音波処理が、医薬原料から溶媒に簡単に浸出し得る特定の化学成分の抽出収率を改善しないかもしれないことが分かっている。このような場合、超音波処理無しで、またはわずかな超音波処理で抽出手順を行うことが好ましい。
【0032】
カワラタケ抽出物は、例えば、溶媒抽出物を含む液相から固相(例えば、残留物)を分離し易くする技術(遠心分離等)によって回収できる。例えば、濾過によって残留物を除去して抽出物を収集できる。一態様において、カワラタケ抽出物をさらに蒸発させて固体または半固体組成物を生成してもよい。別の態様において、カワラタケ抽出物は濃縮および/または精製してもよい。
【0033】
カワラタケ抽出物は、単回抽出または連続抽出を介して得ることができる。一態様において、一回目の抽出物を回収した後、残留物を同じ溶媒に再度溶解してさらに抽出してもよい。別の態様において、溶媒-抽出物または残留物を毎回異なる溶媒で抽出して所望の生物学的に活性な化学成分を抽出することによって、連続抽出によりカワラタケ抽出物を得ることができる。
【0034】
一態様において、本発明の抽出方法は、工程(a)〜(b)の後、第二のカワラタケ抽出物および第二の残留物を産生するために、加熱条件(約60℃以上の温度等)下でカワラタケ残留物を極性溶媒で抽出する工程をさらに含むか、該工程から本質的になるか、または該工程からなる。
【0035】
別の態様において、本発明の抽出方法は、工程(a)〜(b)の後、第二のカワラタケ抽出物および第二の残留物を産生するために、加熱条件(約60℃以上の温度等)下でカワラタケ残留物をアルカリ性水溶液(NaOHおよびKOH等)で抽出する工程をさらに含むか、該工程から本質的になるか、または該工程からなる。一態様において、アルカリ性水溶液は、0.1N、または0.1N未満の任意の値(0.05N、0.02N、0.01Nまたは0.001N等)の規定度を有する。
【0036】
具体的な態様において、本発明の抽出方法は、
a)カワラタケの、十分な量の原料を用意する工程;
b)第一のカワラタケ抽出物および第一の残留物を産生するために、約15℃〜約30℃の温度にて該カワラタケの原料を第一の極性溶媒で抽出する工程;
c)第二のカワラタケ抽出物および第二の残留物を産生するために、加熱条件(約60℃以上の温度等)下で該第一の残留物を第二の極性溶媒で抽出する工程;
d)第三のカワラタケ抽出物および第三の残留物を産生するために、加熱条件(約60℃以上の温度等)下で該第二の残留物をアルカリ溶液で抽出する工程;ならびに
e)カワラタケ抽出物を回収する工程
を含む。
【0037】
別の具体的な態様において、本発明の抽出方法は、
a)カワラタケの、十分な量の原料を用意する工程;
b)第一のカワラタケ抽出物および第一の残留物を産生するために、加熱条件(約60℃以上の温度等)下で該カワラタケの原料を第一の極性溶媒で抽出する工程;
c)第二のカワラタケ抽出物および第二の残留物を産生するために、加熱条件(約60℃以上の温度等)下で該第一の残留物をアルカリ性水溶液(NaOHおよびKOH等)で抽出する工程;ならびに
d)カワラタケ抽出物を回収する工程
を含む。
【0038】
一態様において、本発明の抽出方法は、
a)カワラタケの、十分な量の原料を用意する工程;
b)カワラタケ抽出物および残留物を産生するためにカワラタケの原料を極性溶媒で抽出して、カワラタケ抽出物を回収する工程、ここで、工程b)は、一回または一回以上行われる;
c)水性抽出物を産生するために該工程b)で得た残留物をアルカリ性水溶液で抽出して、水性抽出物を回収する工程、ここで、工程c)は、一回または一回以上行われる;ならびに
d)カワラタケ抽出物を産生するために、該工程b)およびc)から得た1つ以上の抽出物を混ぜ合わせる工程
を含むか、それらの工程から本質的になるか、またはそれらの工程からなる。
【0039】
特定の態様において、加熱条件下でカワラタケを抽出するために使用する極性溶媒は、C
1-C
8アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノール)を含む。特定の態様において、加熱条件下でカワラタケを抽出するために使用する極性溶媒はエタノールまたはエタノール-水混合液である。ある決まった態様において、加熱条件下でカワラタケを抽出するために使用する極性溶媒は水ではない。
【0040】
本発明によれば、加熱は、60℃を上回る、65℃を上回る、70℃を上回る、75℃を上回る、80℃を上回る、85℃を上回る、90℃を上回る、95℃を上回る、または100℃を上回る温度にて行うことができる。
【0041】
図1A〜Cは、本発明の抽出方法の好適な態様を図示する。
【0042】
有利なことに、アルカリ溶液を溶媒として使用すると、多糖類クレスチン(PSK)等の多糖ペプチド(PSP)を含む生物学的に活性な高分子化学成分が抽出し易い。
【0043】
さらなる態様において、カワラタケ粗抽出物を分画するかまたは分けて、所望の生物学的に活性な化学成分を含む1つ以上のフラクションを産生することができる。一態様において、カワラタケ粗抽出物を、水-アセトニトリルを移動相として使用するHPLCに供する。具体的な態様において、カワラタケ粗抽出物を、表1に示す溶出パラメータを使用するHPLCに供して、
図4に示す5つのフラクションを産生する。
【0044】
さらなる態様において、本方法は、HPLCおよび/またはガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)の組合せを使用してカワラタケ抽出物についての化学的プロファイルを作成する工程を含む。一態様において、本方法は、抽出物をHPLCに供する工程、該抽出物を溶出する工程、およびHPLC後の抽出物についての化学的プロファイルを作成する工程を含む。別の態様において、本方法は、抽出物をガスクロマトグラフィー質量分析法に供する工程、および該抽出物についてのクロマトグラフィー/質量分析プロファイルを作成する工程を含む。
【0045】
本発明は、本抽出方法によって生成したカワラタケ抽出物をさらに提供する。具体的な態様において、カワラタケ抽出物は、
図2A、2B、2C、もしくは
図4に示すフラクション1〜5のいずれかに示す高速液体クロマトグラフィー(HPLC)プロファイル;および/または
図3Aもしくは3Bに示すガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)プロファイルを有する。
【0046】
本明細書で使用する「から本質的になる」という用語は、本発明の範囲を、特定の工程、ならびに本発明の基本的および新規な特徴(すなわち、カワラタケ抽出物を調製するおよび/またはカワラタケから生物学的に活性な化学成分を単離する方法)に実質的に影響しない工程に限定する。例えば、「から本質的になる」を使用すると、カワラタケ抽出物の調製方法は、カワラタケを抽出するまたはそれに接触する工程のうち特定されていないあらゆる工程(例えば、特定されていない溶媒によりカワラタケを抽出するもしくはそれに接触させるような追加の工程、または特定する条件とは異なる条件下(例えば、温度)でカワラタケを抽出する工程)を含まない。また、「から本質的になる」という用語を使用することで、本プロセスは、カワラタケからの生物学的に活性な化学成分の抽出に実質的に影響しない工程(カワラタケ抽出物を収集または回収する工程、カワラタケ抽出物を濃縮する工程、複数のカワラタケ抽出物を単一の組成物に混ぜ合わす工程、カワラタケ抽出物を固体または半固体組成物に凍結乾燥または乾燥させる工程、カワラタケ抽出物を溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、煎じ薬、およびチンキ剤等の医薬組成物に製剤化する工程、カワラタケ抽出物を薬学的に許容される担体、賦形剤、香味料、緩衝剤、および/または乳化剤と混合する工程、ならびにカワラタケ抽出物を包装する工程を含む)を含み得る。
【0047】
免疫反応の調節
本発明の別の局面は、免疫反応を調節するためのカワラタケ抽出物の治療的な使用を提供する。有利なことに、本発明のカワラタケ抽出物は、保護的な免疫反応を刺激する一方で、疾患を生じ得る望ましくない免疫反応を抑制する。例えば、カワラタケ抽出物は、例えば、抗癌剤の投与に起因する免疫系機能の低下を回復または改善することができる。別の態様において、カワラタケ抽出物は、ウイルス感染、細菌感染、および/または微生物感染から防御する保護的な免疫反応を刺激できる。さらに、本発明のカワラタケ抽出物は、転移を促すために特定の腫瘍細胞によって利用されるTNF-αの生成およびそれによるメタロプロテイナーゼ生成の誘導等の望ましくない免疫反応を抑制できる。
【0048】
特に、今回、本発明者らは、カワラタケが、病原性感染および腫瘍発生に対する急性期免疫反応において重要な役割を果たす炎症性メディエータであるTNF-αの生成を低減することを発見した。TNF-αはまた、細胞外マトリックスタンパク質を分解するマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)およびMMPファミリーメンバーの生成を誘導する。しかし、特定の腫瘍細胞(膠芽腫細胞、上咽頭癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、および結腸癌等)は、TNF-αの細胞傷害性作用に対する耐性を発達させている。その結果、これらの腫瘍細胞は、TNF-αによるMMPの誘導を利用して、近隣組織、および身体の遠位部分にある器官に浸潤する。
【0049】
有利なことに、カワラタケは、腫瘍細胞におけるTNF-α生成を阻害するため、TNF-αに対して耐性の悪性腫瘍細胞(膠芽腫細胞、上咽頭癌、乳癌、肺癌、前立腺癌細胞、および結腸癌等)の転移拡散の予防または低減のために特に有用である。
【0050】
さらに、今回、本発明者らは、カワラタケが、炎症性サイトカインの発現を下方制御する抗炎症性サイトカインであるIL-10の生成を低減することを発見した。また、本発明者らによって、カワラタケが、病原性浸潤に対する急性期免疫反応を刺激するIFN-βの生成を向上することも発見されている。
【0051】
一態様において、本発明は、免疫反応の調節が有益であり得る疾患または病態を予防、治療または改善する方法を提供する。この方法は、そのような治療を必要とする対象に、本発明のカワラタケ抽出物を含む有効量の組成物を投与する工程を含む。具体的には、本発明の組成物は、IFNβ生成の促進、ならびに/またはTNF-αおよび/もしくはIL-10生成の低減が有益であり得る疾患または病態を治療または改善するために使用できる。
【0052】
本明細書において使用される「対象」という用語は、本発明の組成物での治療を行うことができる霊長類等の哺乳動物を含む生物を表す。開示の治療方法によって益を得る哺乳動物種としては、類人猿、チンパンジー、オランウータン、ヒト、サル;イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ等の家畜;ならびにマウス、ラット、モルモット、およびハムスター等のその他の動物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0053】
本明細書で使用する「治療」という用語またはその文法的な変化形(例えば、治療する、治療している、および治療、等)としては、疾患の症状または病態を改善または軽減すること、進行、重症度および/または病態の範囲を低下、抑制、阻害、少なくする、またはそれらに作用することが挙げられるがこれらに限定されない。
【0054】
本明細書で使用する「予防」という用語またはその文法的な変化形(例えば、予防する、予防している、および予防、等)としては、症状の発症の遅延、疾患の再発の予防、症候性発作の間の潜在期間を長くすること、またはそれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。本明細書で使用する予防は、症状が完全に無くなることを必要としない。
【0055】
本明細書で使用する「有効量」という用語は、疾患または病態を治療もしくは改善可能な量、または意図する治療効果をもたらすことが可能な量を指す。特定の態様において、有効量は、TNF-αおよび/またはIL-10生成の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の低下を可能にする。特定の態様において、有効量は、IFNβ生成の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の増加を可能にする。
【0056】
一態様においては、本発明の組成物を使用して、脳腫瘍、上咽頭癌、乳癌、白血病、リンパ腫、結腸癌、肝臓癌、胃がん、食道癌、膀胱癌、および胃癌を含む(ただし、これらに限定されない)癌または腫瘍を治療または改善することができる。
【0057】
好適な態様においては、本発明を使用して、腫瘍細胞、特にTNF-αの細胞傷害性作用に対して耐性になる腫瘍細胞の転移拡散を予防または軽減できる。具体的な態様においては、本発明を使用して、多形性神経膠芽腫、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、および/または上咽頭癌を治療することができる。さらに具体的な態様においては、本発明を使用して、多形性神経膠芽腫、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、および/または上咽頭癌の転移拡散を予防または低減することができる。
【0058】
一態様において、本発明を使用して、免疫系を強化、および/または免疫系機能を回復もしくは改善することができる。具体的な態様において、本発明の組成物を使用して、化学療法および/または放射線療法の免疫抑制効果を治療または改善することができる。一態様において、免疫系に対する化学治療剤の抑制効果に対抗するために、本発明の組成物は化学治療剤の投与の前、途中および/または後に投与される。
【0059】
さらに、本発明の組成物を使用して、細菌、ウイルス、真菌、原虫、および/もしくは他の微生物による感染、または病原性の感染を予防、治療または改善することができる。有利なことに、本発明の組成物は、病原性感染に反応する免疫系機能を調節および/または強化する。
【0060】
一態様において、本発明の組成物を使用して、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹(帯状疱疹)、ヘルペスウイルス-8、サイトメガロウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルスI型(HTLV-1)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、エプスタイン・バーウイルス、およびコロナウイルスによる感染等のウイルス感染を治療または改善することができる。
【0061】
特定の態様においては、本発明の組成物を使用して、カンジダおよびアスペルギルス属による感染を含む(ただし、これらに限定されない)真菌感染;マイコバクテリア(結核菌(M. tuberculosis)等)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、大腸菌(Escherichii coli)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、およびアマゾンリーシュマニア(L.amazonensis)による感染を含む(ただし、これらに限定されない)細菌感染;ならびにニューモシスティス(Pneumocystis)およびトキソプラズマ(Toxoplasma)属による感染を含む(ただし、これらに限定されない)原虫感染、を治療または改善できる。
【0062】
一態様において、本発明の組成物を使用して、肝機能障害、気道感染、および気管支炎を治療することができる。
【0063】
治療組成物および製剤
本発明は、治療上有効量の本発明のカワラタケ抽出物、および、任意で、薬学的に許容される担体を含む治療組成物または医薬組成物を提供する。また、本発明は、本発明によってカワラタケから単離された生物学的に活性な化合物または化学成分を含む治療組成物または医薬組成物も提供する。本発明はまた、本発明のカワラタケ抽出物を含む栄養補助食品、ならびに健康食品または飲料製剤も具現化する。
【0064】
「担体」という用語は、化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。このような医薬担体は、水および油(鉱油等の石油、ピーナッツ油、ダイズ油、およびゴマ油等の植物油、動物油、または合成由来源の油のもの等)等の滅菌液体であり得る。生理食塩溶液、ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶液も、特に注射可能溶液用の液体担体として採用できる。
【0065】
適切な医薬賦形剤としては、デンプン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。治療組成物は、必要に応じて、少量の湿潤剤、乳化剤、またはpH緩衝剤も含み得る。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、持続放出製剤等の形態を取り得る。組成物は、トリグリセリド等の従来の結合剤および担体と共に製剤化され得る。適切な医薬担体の例は、E.W. Martinによる"Remington's Pharmaceutical Sciences"に記載されている。患者に正確な投与を提供するために、このような組成物は、治療上有効量の治療組成物を適切な量の担体と共に含む。製剤は投与の様式に適したものであるべきである。
【0066】
本発明の治療組成物または医薬組成物は、中性または塩の形態で製剤化され得る。薬学的に許容される塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、ナトリウム、カリウム、アンモニア、カルシウム、水酸化鉄等で形成される塩が挙げられるがこれらに限定されない。
【0067】
本発明は、本発明の医薬組成物の1つ以上の成分(例えば、化合物、担体)で満たされた1つ以上の容器を含む医薬パックまたはキットも提供する。
【0068】
本発明の組成物はまた、従来の漢方医薬実践に沿うように製剤化されてもよい。特定の疾患、病態または障害の治療において効果的な製剤の組成および投与量は、標準的な臨床技術による疾患、病態または障害の性質に依存する。
【0069】
従来の漢方医薬は、処方量で、ヒトまたは動物に投与するのに適したあらゆる形態の薬物に容易に作ることができる。適切な形態としては、例えば、チンキ剤、煎じ薬、および乾燥抽出物が挙げられる。これらは経口的に摂取、静脈注射、または粘膜により適用され得る。活性成分は、カプセル、粉末、パレット(pallet)、トローチ、坐薬、経口溶液、低温殺菌胃腸懸濁注射剤、少量または大量の注射剤、凍結粉末注射剤、低温殺菌粉末注射剤等にも製剤化され得る。上記方法は全て、当業者に公知であり、文献に記載されており、植物薬の医師によって一般的に使用されている。
【0070】
チンキ剤は、医薬原料(例えば、薬草および真菌)を、例えば、ワインまたは蒸留酒等のアルコール溶液に懸濁することによって調製される。懸濁期間の後、液体(アルコール溶液)は、例えば、一回にティースプーン一杯を、一日に二、三回投与され得る。
【0071】
抽出物は、医薬原料の基本的成分の濃縮調製物である。典型的に、医薬原料(例えば、薬草および真菌)を、適切に選択した溶媒(典型的に、水、エタノール/水混合液、メタノール、ブタノール、イソブタノール、アセトン、ヘキサン、石油エーテル、または他の有機溶媒)に懸濁することにより、基本的成分が医薬原料から抽出される。抽出プロセスは、浸軟、パーコレーション、連続パーコレーション、向流抽出、ターボ抽出(turbo-extraction)、または二酸化炭素超臨界(温度/圧力)抽出の手段によってさらに容易にすることができる。薬草残屑を取り除くために濾過した後、抽出溶液をさらに蒸発させて、したがって濃縮して、軟抽出物(extractum spissum)、および/または最終的に、噴霧乾燥、真空炉乾燥、流動層乾燥、もしくは凍結乾燥によって乾燥抽出物(extractum siccum)を産生してもよい。軟抽出物または乾燥抽出物は、所望の濃度まで適切な液体にさらに溶解されて、投与されるか、または丸薬、カプセル、注射剤等の形態に加工され得る。
【0072】
投与経路
本発明の化合物および組成物は、経口、吸入、または静脈内、皮下、局所、経皮、皮内、経粘膜、腹腔内、筋内、嚢内、眼窩内、心腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、髄腔内、硬膜外および胸骨内の注射、点滴、ならびにエレクトロポレーションを含む非経口投与を含む標準的な経路によって、治療される対象に投与され、また、対象に(一時的または永久的に)挿入されるあらゆる医療機器または物体の構成要素として同時投与され得る。好適な態様において、本発明の化合物および組成物は経口投与によって対象に投与される。
【0073】
特定の疾患、病態または障害の治療において有効な本発明の治療組成物または医薬組成物の量は、投与の経路、および疾患、病態または障害の重症度に依存し、医師の判断、および各患者の状況に応じて決定されるべきである。一般的に、投薬量は約0.001mg/kg〜約3g/kgにわたる。
【0074】
例えば、適切な単位投薬量は、約0.01〜約500 mg、約0.01〜約400 mg、約0.01〜約300 mg、約0.01〜約200 mg、約0.01〜約100 mg、約0.01〜約50 mg、約0.01〜約30 mg、約0.01〜約20 mg、約0.01〜約10 mg. 約0.01〜約5 mg、約0.01〜約3 mg、約0.01〜約1 mg、または約0.01〜約0.5 mgであり得る。このような単位用量は、一日に二回以上、例えば、一日に二、三回投与され得る。
【0075】
単回投薬量形態を生成するために担体材料と組み合わせられ得る活性成分の量は、病態の種類および治療される対象に応じて異なる。一般的に、治療組成物は、約5%〜約95%の活性成分(w/w)を含む。より具体的には、治療組成物は、約20%(w/w)〜約80%、または約30%〜約70%の活性成分(w/w)を含む。
【0076】
一旦、患者の病態が改善されたら、必要に応じて、維持用量が投与される。その後、改善された状態が保持されるレベルになるように、症状に比例して投薬量もしくは投与の頻度、または両方を少なくしてもよい。症状が所望のレベルまで軽減された際には、治療を停止する。しかし、疾患症状の再発の際には、患者は長期的に断続的な治療を必要とする場合がある。
【0077】
さらに、インビトロアッセイを任意で採用して、最適な投薬量範囲を特定する助けにすることができる。製剤において採用される正確な用量も、投与の経路、および疾患、病態または障害の重症度に依存し、医師の判断および各患者の状況に応じて決定されるべきである。有効用量は、インビトロまたは動物モデル検査系から導き出した用量応答曲線から推定され得る。
【0078】
材料および方法
バイオアッセイ用の細胞培養
初代ヒト血液マクロファージおよびヒト白血病単球リンパ腫細胞(U937)を、免疫系に対するカワラタケ抽出物の影響を検査するバイオアッセイに使用した。健康なドナーの血液サンプル(香港赤十字輸血サービス(Hong Kong Red Cross Blood Transfusion Service))からFicoll-Paque遠心分離によって血液単核細胞を単離し、以前に記載されている接着方法(adherence method)によって精製した(27〜28)。
【0079】
手短に述べると、血液サンプルを3000rpmにて15分間遠心分離し、血漿と細胞層とに分離した。細胞層を、1:1の比率でリン酸緩衝化生理食塩(PBS)で希釈した。希釈した細胞をゆっくりFicoll(GE Healthcare)上に重ね、2300rpmにて20分間遠心分離して、赤血球から単核細胞を分離させた。単核細胞層を取り除き、上清が透明になるまでRPMI1640培地(Gibco)で洗浄した。
【0080】
細胞ペレットを、5%自家血漿、1%ペニシリンおよびストレプトマイシン(Gibco)が補充されたRPMI1640に再懸濁した。懸濁液をペトリ皿に蒔き、37℃にて1時間インキュベートして単球接着させた。RPMI1640での洗浄、および一晩のインキュベーションの後、接着単球を、5mM EDTAを含有する冷たいRPMI1640で剥離させた。
【0081】
単球を、0.5×10
6細胞/ウェルの密度で24ウェル組織培養プレート上に播種し、5%自家血漿、1%ペニシリンおよびストレプトマイシンが補充されたRPMI1640とインキュベートした。本発明者らの以前の報告(27、30)に記載されているように、14日間のインビトロ培養後に分化マクロファージを得た。
【0082】
American Type Culture Collectionから得たマウスマクロファージ(RAW 264.7)およびヒト神経芽細胞(SKNSH)を培養で維持し、それぞれ一酸化窒素アッセイおよび単純ヘルペスウイルス感染アッセイに使用した。
【0083】
mRNAを分析するためのリアルタイム逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応
TRIzol試薬(Invitrogen)を製造元の指示書に従って使用して全RNA抽出を行った。全RNAをデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)で処理した後、オリゴ(dT)プライマーを使用してSuperscript II逆転写酵素(Invitrogen)で逆転写した。本発明者らの以前の報告(27-30)に記載されているように、TaqMan遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems)を使用して、サイトカインのmRNAレベルをアッセイした。
【0084】
サイトカインを分析するための酵素免疫吸着アッセイ
市販のアッセイキット(R & D Systems)を使用した酵素免疫吸着アッセイ(ELISA)により(27-30)、細胞培養上清中のサイトカインのタンパク質レベルを測定した。各サンプルを二重にアッセイした。
【実施例】
【0085】
以下は、本発明を実施するための手順を例示する実施例である。これらの実施例は、限定するものと解釈されるべきではない。
【0086】
実施例1 - カワラタケ抽出物の調製
本実施例は、カワラタケ抽出物を調製するための好ましい抽出スキームを例示する。
【0087】
図1Aは、抽出スキームの一態様を示す。手短に述べると、カワラタケの原料を12倍量のEtOH中で浸軟させ、室温にて連続的な超音波処理で1時間抽出し、遠心分離して、エタノール抽出物および残留物を産生した。残留物を10倍量のEtOH中で浸軟させ、
図1Aに示すように抽出手順を二回繰り返した。抽出物を収集し、混ぜ合わせ、真空下で蒸発乾燥させて、カワラタケ抽出物を含む顆粒を生成した。
【0088】
一態様では、カワラタケの原料をエタノール中で18時間浸軟させ、遠心分離してエタノール抽出物および残留物を産生した。
【0089】
一態様では、ミリQ水を、カワラタケ抽出物を調製するための溶媒として使用した。手短に述べると、カワラタケの原料を15倍量のミリQ水中で浸軟させ、室温にて連続的な超音波処理で30分間抽出し、遠心分離して、水抽出物および残留物を産生した。残留物を10倍量の水に再度溶解し、抽出手順を二回繰り返した。水抽出物を収集し、混ぜ合わせ、真空下で蒸発乾燥させて、カワラタケ水抽出物を含む顆粒を生成した。
【0090】
PSK等の多糖ペプチド(PSP)を含む生物活性高分子、およびその他の生物活性低分子を抽出し易くするために、カワラタケの原料またはカワラタケ残留物をさらにアルカリ溶液(例えば、NaOH、KOH)で抽出した。
【0091】
図1Bは、抽出スキームの別態様を示す。手短に述べると、カワラタケの原料を、連続的な超音波処理を行いながら、室温にて12倍量のエタノール中で1時間浸軟させた。遠心分離後、第一の抽出物および第一の残留物を得た。この手順を二回繰り返した。第一の残留物を、室温にて10倍量の50%エタノール中で2時間浸軟させた。その後、エタノール中で浸軟させた残留物をさらに2時間煮沸した。不溶性物質を濾過により上清から分離して、第二の残留物および第二の抽出物を産生した。第二の残留物を10×0.04%NaOHに加え、6時間煮沸した。不溶性物質を濾過により上清から分離して、第三の残留物および第三の抽出物を産生した。抽出物を収集し、混ぜ合わせ、凍結乾燥させた。
【0092】
図1Cは、抽出スキームの別態様を示す。手短に述べると、室温にてカワラタケの原料を10倍の50%エタノール中で2時間浸軟させた。エタノール中で浸軟させたカワラタケ原料をさらに2時間煮沸した。不溶性物質を濾過により上清から分離して、第一の残留物および第一の抽出物を産生した。第一の残留物を10×0.04%NaOHに加え、さらに6時間煮沸した。不溶性物質を濾過により上清から分離して、第二の残留物および第二の抽出物を産生した。抽出物を収集し、混ぜ合わせ、凍結乾燥させた。
【0093】
実施例2 - カワラタケ抽出物の高速液体クロマトグラフィー分析
本実施例では、カワラタケ抽出物の化学フィンガープリントを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析する。
図1A、1Bに示す抽出スキームを使用するか、またはカワラタケの原料をエタノール中で18時間浸軟させて、カワラタケ抽出物を得た。
【0094】
手短に述べると、PDA検出器(G1315C)およびオートサンプラー(G1367C)を備えたAgilent 1200シリーズHPLC系(バイナリーポンプSL、G1312B)を使用して、100 ug/uLのEtOH抽出物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析に供した。クロマトグラフィーカラム(4.6×250 mm)にはODS結合シリカゲル(Lichrospher 100 RP C18、EC 5um)をパックし、分離の間はカラム温度を室温に維持した。
【0095】
5 mlのカワラタケ抽出物をHPLC系に注入した。1.0 ml/分の流速で水およびアセトニトリルの混合液を移動相として使用してHPLCを行った。表1に示すように勾配溶出方法論を採用した。210、254、および280 nmにセットしたAgilent 1200シリーズ高速走査フォトダイオードアレイ検出器を用いてピーク検出を達成した。
図2A〜Cは、HPLC後のカワラタケエタノール抽出物の化学的プロファイルを示す。
【0096】
(表1)
図1Aおよび1Bの抽出スキームを使用して得たカワラタケ抽出物のフィンガープリント分析に適用したHPLC勾配溶出プロファイル
【0097】
実施例3 - カワラタケ抽出物のガスクロマトグラフィー質量分析法
本実施例では、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)によりカワラタケ抽出物の化学フィンガープリントをさらに分析する。
図1Aに示す抽出スキームを使用するか、またはカワラタケの原料をエタノール中で18時間浸軟させて、カワラタケ抽出物を得た。
【0098】
GC-MSによる分析の前に、カワラタケ抽出物をシリル化に供した。簡単に言うと、100 ulの抽出物(30 ug/μL)含有アセトニトリルを1 ml反応バイアル(Alltech)に移した後、50 ulのピリジン、および幅広い極性化合物と反応する50 ulの誘導化剤BSTFA[N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド]を加えて、極性化合物の不安定水素原子を-Si(CH
3)
3基で置き換えた。70℃にて2時間のインキュベーションの後、GC-MS分析のための混合液が準備できた。
【0099】
混合液を、(GC: Agilent、7890A;MS: Agilent、5975C)およびHP-5MSカラム(30m×250um×0.25um)を使用してGC-MSで分析した。1:50の分割比を有するヘリウムを担体ガスとして使用し、1 ulヘリウムを1 ml/分の流量でカラムに注入した。初期オーブン温度は70℃であり、これを1分間維持し、10℃/分の速度で180℃まで上げ、180℃で2分間維持し、10℃/分の速度で280℃まで上げ、280℃で3分間維持した。注入装置の温度は275℃、界面温度は250℃、イオン源温度は230℃で、電子衝突イオン化(EI)を200eVで行った。50〜700原子質量単位(amu)の範囲において、22分間の実行時間で質量スペクトルを分析し、Agilent G1701EAケムステーション(chemstation)を使用してデータを処理した。
図3は、GC-MS分析後のカワラタケエタノール抽出物のクロマトグラフィープロファイルを示す。
【0100】
実施例4 - カワラタケ抽出物の分画
図1Aに示す抽出スキームを使用して得たカワラタケエタノール抽出物(MPUB-EtOH)を、1525 HPLCバイナリーポンプ、2998フォトダイオードアレイ検出器、およびWatersフラクションコレクターIIIを備えたWaters分取液体クロマトグラフィー系を使用して、さらに5つのフラクションに分けた(
図4)。分画は、逆相カラム(Lichrospher 100 RP C18、EC 5um)を使用して行い、検出波長は210、254、および280 nmにセットした。勾配プログラムは、以下のように2つの溶媒((A)水および(B)アセトニトリル)で1 ml/分の流速で構成した:0〜16分間、10〜90%B、16〜18分間、90%B、および18〜22分間、10%B。
【0101】
実施例5 - サイトカイン生成に対するカワラタケ抽出物の影響
IFNβおよびIL-10生成に対するカワラタケ抽出物(MPUB-EtOH)の影響を調べるために、初代ヒト血液マクロファージを50ug/mlのMPUB-EtOHで18時間前処理した。その後、細胞をポリイノシン-ポリシチジル酸(ポリI:C)(50ug/ml)で3時間処理した。IFNβmRNAおよびIL-10 mRNAレベルをTaqMan遺伝子発現アッセイで分析した。
図5A〜Bに示すように、カワラタケ抽出物は、IFNβ生成を増加し、IL-10生成を阻害した。
【0102】
LPS誘導型TNFα生成に対するカワラタケ抽出物(MPUB-EtOH)の影響を調べるために、初代ヒト血液マクロファージを様々な濃度(1、10および50ug/ml)のMPUB-EtOHで18時間前処理した。次いで、細胞をリポ多糖類(LPS)(lng/ml)で3および24時間処理した。TNFαmRNAレベルおよびタンパク質レベルを、それぞれTaqMan遺伝子発現アッセイおよび酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により分析した。
図6A〜Bに示すように、カワラタケ抽出物はTNFα生成を用量依存的に低減した。
【0103】
LPS誘導型亜硝酸塩の生成に対するカワラタケ抽出物(MPUB-EtOH)の影響を調べるために、マウスマクロファージ(RAW 264.7)を様々な濃度(20、50および100ug/ml)のMPUB-EtOHで24時間前処理した。次いで、細胞をLPS(100ng/ml)で18時間処理し、亜硝酸塩濃度(uM)をグリース試薬で測定した。
図7に示すように、カワラタケ抽出物は、用量依存的に亜硝酸塩の生成を阻害した。
【0104】
実施例6 - カワラタケ抽出物の抗ウイルス効果の決定
カワラタケ抽出物の抗ウイルス効果を調べるために、ヒト神経細胞(SKNSH)を10ug/mlのMPUB-EtOHで18時間前処理した。培養上清を連続インキュベーションのために確保した。その後、細胞を単純ヘルペスウイルス(HSV)に0.01のm.o.i.(multiplicity of infection:感染多重度)で1時間感染させた。ウイルス感染後、細胞をPBSで二回洗浄し、確保した培養上清とさらに18時間インキュベートした。ウイルス価を決定するために培養上清を収集し、T98G(ヒト膠芽腫細胞系統)細胞の感染の間の組織培養感染量
50(TCID
50)を滴定することにより測定した。
【0105】
実施例4に記載したように、MPUB-EtOHをさらに5つのフラクションに分画した。SKNSH細胞をMPUB-EtOH-1 、-2および-3で前処理し、上述したようにHSVウイルスに感染させた。培養上清のウイルス価(TCID
50)を測定した。MPUB-EtOH-4および-5は、細胞に対して細胞傷害性であったため(データは示していない)、抗ウイルス効果についてそれ以上調べなかった。
図8Aおよび8Cに示す全てのデータは、少なくとも3つの独立した実験の平均値±SDとしてプロットした。<0.001(
**)のp値を統計的に有意であるとみなした。
【0106】
図8に示すように、カワラタケ抽出物は培養上清においてウイルス価を有意に低減し、フラクション3が最も強力な抗ウイルス効果を示した(
図8Bおよび8C)。
【0107】
実施例7 - MMP-3発現に対するカワラタケ抽出物の影響
本実施例は、カワラタケ抽出物がMMP-3 発現を低減することを示す(
図9)。手短に述べると、膠芽腫細胞(T98G、脳細胞)を、異なる濃度(1、10および50ug/ml)のMPUB-EtOHで18時間、次いで組換えヒトTNFα(10ng/ml)で3時間前処理した。MMP-3mRNAレベルをTaqMan遺伝子発現アッセイで分析した。全てのデータは、少なくとも3つの独立した実験の平均値±SDとしてプロットした。<0.05(
*)のp値を統計的に有意であるとみなした。
【0108】
実施例8 - カワラタケ抽出物のインビボでの抗ウイルス効果の判定
カワラタケ抽出物のインビボでの抗ウイルス効果を調べるために、3週齢のオスBALB/cマウス(1グループ当たり15匹のマウス)に、ジメチルスルホキシド(DMSO)(MPUB-EtOH用の溶媒)またはMPUB-EtOH(250mg/kg)を、一日一回、24時間の間隔で、7日間腹腔内(ip)投与した。
【0109】
手短に述べると、0日目に、1×10
5TCID
50/mlでHSVを腹腔内接種して、マウスを感染させた。感染の1時間後から開始して、DMSO、MPUB-EtOH、またはアシクロビル(l0mg/kg)を、一日に一回、24時間の間隔で、5日間、腹腔内投与した。マウスを毎日調査し、以下の採点システムに基づいて後肢麻痺によって疾患重症度を測定した: 0、麻痺無し;1 、後肢を動かすのが明らかに困難;2、一本の後肢が不完全麻痺;3、一本の後肢が完全麻痺;4、両方の後肢が不完全麻痺;5、両方の後肢が完全麻痺。
【0110】
図10に示すように、カワラタケ抽出物(MPUB-EtOH)は、マウスにおけるHSV感染の重症度を、DMSO処置した対照と比べて有意に低減した。カワラタケ抽出物の抗ウイルス効果は、アシクロビルの抗ウイルス効果に匹敵した。
【0111】
本明細書で引用する文献、特許出願および特許を含む全ての参考文献は、各参考文献を個別かつ具体的に参照により組み込むと表記したのと等しく、本明細書において全体が記載されるのと同じ意味合いで、参照により本明細書に組み込む。
【0112】
本発明を説明する上で、単数形および定冠詞、ならびに同様の指示語は、本明細書において特に表示されない限り、または文脈に明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を含むと解釈される。
【0113】
本明細書における値の範囲の列挙は、特に指定のない限り、その範囲内に当てはまる異なる値を個別に参照する簡易な方法の役割を果たしていることを意図しているに過ぎず、各個別の値は、本明細書に個別に列挙されるのと同等の意味で明細書に組み入れられる。特に明記しない限り、本明細書で提示する全ての厳密な値は対応する近似値を代表するものである(例えば、特定の因子または測定値に関して提示する例示としての厳密な値は全て、適切な場合には「約」で修飾されて、対応する近似測定値も提示すると考えられ得る)。
【0114】
本明細書で提示する実施例または例示の文体(例えば、「等」)の使用はどれも、本発明をより良く理解しやすくするために意図しているに過ぎず、特に記述しない限り本発明の範囲を限定することを提起するものではない。明細書のいずれの文体も、そのように明確に記述しない限り、どの構成要素もが本発明の実施のために必須であることを示すと解釈されるべきではない。
【0115】
一つ以上の構成要素に関して「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、または「含む(containing)」等の用語を使用する、本明細書における本発明のあらゆる局面または態様の記載は、特に記述しない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、その特定のひとつ以上の構成要素「からなる」か、「から本質的になる」か、または「実質的に含む」本発明の類似の局面または態様について示唆することを意図している(例えば、特定の構成要素を含む本明細書に記載の組成物は、特に記述しない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、その構成要素からなる組成物も記載していると理解されるべきである)。
【0116】
本明細書に記載の実施例および態様は例示の目的のためのみであり、それらを考慮した様々な改変および変更が当業者に示唆され、本出願の精神および範囲に含まれることが理解されるべきである。
【0117】
参考文献