(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ワーク保持ユニットを前記クロスアームから分離したときに、前記ワーク保持ユニットに対する前記ツールホルダーの相対位置を所定に保持するシフト方向位置決め機構が備えられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプレス機械のワーク搬送装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、プレスマシンへの搬入・搬出、プレスマシン間などにおけるワークの搬送装置として、種々のものが提案されている。
【0003】
特許文献1に記載されているワーク搬送装置は、クロスバーの両端部側にアタッチメントを配置し、そのアタッチメントに、クロスバーに対して当該アタッチメントをクロスバーの長軸方向にシフトさせる(ワーク搬送方向に略直交する水平方向(横方向、Y軸方向)へ相対移動させる)シフト駆動機構、及び該シフトをガイドするシフトガイド機構を配置している。
【0004】
特許文献1の前記シフト駆動機構はサーボモータを含んで構成されており、アタッチメント交換(ツール交換)時には、動力線(駆動電力供給ケーブル)とエンコーダ線(制御関連ケーブル)を搬送装置に対して分離する必要がある。このため、自動でのアタッチメント交換は難しく手作業にて交換することとなる。アタッチメントを手作業にて交換する場合、かなりの時間がかかり、この間生産を止めているためプレス生産効率は落ちることになる。
【0005】
すなわち、サーボモータを含んで構成されているアタッチメントを、搬送装置から自動で外すことは可能であるが、サーボモータを搬送装置から外すとシフト駆動機構における位置情報を消失してしまうことになる。従って、再度、搬送装置にアタッチメント(シフト駆動機構)を取り付ける場合、搬送装置上のシフト基準位置にセンサー等を持ち来たして原点設定作業を行う必要があるため、ツール交換に要する時間としては、取り外す作業は自動化により手作業の場合よりは短くできるが、原点設定作業が必要になるため、トータルのツール交換時間としては大きく削減することができない、といった問題がある。
【0006】
また、特許文献2には、
図22(A)に示すように、2台のスカラロボットのアームユニットを相互独立に制御可能に構成し、各スカラロボットのアームユニットの先端をスライドアームで連結したワークの搬送装置が記載されている。
【0007】
より詳細には、特許文献2には、
プレスステージ間適所に配置される基体に回動可能に支持される第1アームユニット及び第2アームユニットと、
両アームユニットを昇降させる昇降ユニットと、を備え、
前記第1アームユニットは第1スライドアームを備え、
前記第2アームユニットは第2スライドアームを備え、
第1スライドアームと第2スライドアームとが、これらの相互間隔が可変となるように、スライド機構を介してスライド可能に結合されていると共に、
前記第1スライドアームが第1ワーク把持部を備え、
前記第2スライドアームが第2ワーク把持部を備え、
第1アームユニット及び第2アームユニットが独立に可動するものであり、
両アームユニットの挙動により、ワーク把持部同士の間隔を調整可能としたワーク搬送装置が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係るプレス機械のワーク搬送装置の一例を示す実施の形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
本実施の形態に係るプレス機械のワーク搬送装置は、プレスマシンに対するワークの搬入・搬出の他、複数のプレスマシンが上流工程から下流工程へ並べられたプレスラインのプレスマシン間におけるワークの搬送に利用することができる。従って、ワークには、素材としての金属板状部材、プレス成形後の完成製品の他、複数のプレスマシンによるプレス加工を受ける場合は加工途中の製品が含まれると共に、一枚の金属板状部材がプレス加工後に複数に分割されたものなども含まれる。
【0020】
本実施の形態に係るプレス機械のワーク搬送装置1は、
図1〜
図5に示すように、
ワーク搬送方向の幅方向(横方向:Y軸方向)に沿ってプレスライン(プレスマシン)に固定的に設置される固定フレームFに対して上下方向(Z軸方向)に移動可能に支持されると共に、2つのアーム(第1アーム21と第2アーム31)を有するアームユニット20A(20B)を備えた2台のロボット(スカラロボット)101A、101Bと、
2台のロボット101A、101Bを夫々独立して(相互独立に)固定フレームFに対して昇降動作させる昇降機構10A、10Bと、
2つのアームユニット20A、20Bのそれぞれの第2アーム31の先端に接続される一(共通)のクロスアーム102 と、
クロスアーム102に接続されたクロスバーユニット103と、
を有している。
【0021】
なお、ロボット(スカラロボット)101Aは、ワーク搬送中心を通る垂直面(XZ平面)に関して、ロボット(スカラロボット)101Bと略対称(面対称)に構成されている。
【0022】
ロボット101A(101B)を昇降(Z軸方向へ移動)させる昇降機構10A(10B)は、サーボモータ2、ボールネジ3、ボールネジナット(スクリュウ)4、リニアガイドレール5を含んで構成され、略垂直(Z軸方向)に配設されるボールネジ3に対して昇降(上下動)されるボールネジナット4にロボット101A(101B)の昇降フレーム11が接続された構成になっている。
【0023】
そして、サーボモータ2の駆動力によりボールネジ3が回転されると、このボールネジ3に螺合しているボールネジナット4が昇降動作され、このボールネジナット4に昇降フレーム11を介して接続されたロボット101A(101B)を上下方向(Z軸方向)に昇降動作させることができるようになっている。
【0024】
サーボモータ2は、夫々のロボット101A(101B)の昇降のために、それぞれに1台ずつ設置されており、通常はそれぞれのサーボモータ2を同期させて(同じ位置から同じタイミングで同じ方向に同じ速度で同じ距離だけ移動するように)駆動することによりZ軸方向に夫々のロボット101A(101B)を同期させて昇降動作させる。
【0025】
また、本実施の形態では、それぞれのサーボモータ2を相互独立に駆動することができ、これによりZ軸方向に夫々のロボット101A(101B)を相互独立して昇降させることができるようになっている。
【0026】
ここで、2台のロボット101A(101B)は、夫々、対応するアームユニット20A(20B)を備えて構成されるが、アームユニット20A(20B)は、
昇降フレーム11に第1関節10X(垂直軸、Z軸)を介して水平面内(XY平面内)を回転自在に支持される第1アーム21と、
第1アーム21の先端に第2関節20X(垂直軸、Z軸)を介して水平面内(XY平面内)を回転(或いは回動、枢動。以下、同様)自在に支持される第2アーム31と、
アームユニット20A(20B)の夫々の第2アーム31の先端の間に第3関節30Xを介して水平面内(XY平面内)を回転自在に連結されるクロスアーム102と、
第1アーム21を昇降フレーム11に対して第1関節10X廻りに回転駆動する第1アーム駆動機構DM1(サーボモータ13、減速機14)と、
第2アーム31を第1アーム21に対して第2関節20X廻りに回転駆動する第2アーム駆動機構DM2(サーボモータ22及び減速機23)と、
を備えて構成されている。
【0027】
ロボット101A、101Bの各第2アーム31の先端には、クロスアーム102が各ベアリング32により各第3関節30Xに関して回転可能に接続(軸支)されている。
【0028】
2台のロボット101A(101B)のアームユニット20A(20B)を、互いに同期的に駆動制御して、ワーク搬送方向中心を通る垂直面(XZ平面)に関して対称(面対称)にて動作させることで、例えば、各サーボモータ13、22により、各第1アーム21と各第2アーム31を各関節廻りに回転させることで、クロスアーム102(延いてはワークW)をワーク搬送方向(X軸方向)へ移動(ワーク搬送)させる(
図4(A)から
図4(E)を参照)。
【0029】
また、2台のロボット101A(101B)のアームユニット20A(20B)を同期させず、夫々の第1アーム21と第2アーム31のアーム角度(各関節廻りの回転量)を制御することにより、シフト方向(Y軸方向)への動作が可能となる(
図19参照)と共に、Z軸廻りの回転動作が可能となる(
図20参照)。
【0030】
なお、上述したように、ロボット101A、101Bのそれぞれに対応して備えられているサーボモータ2は相互独立に駆動制御可能であり、夫々のロボット101A、101Bを相互独立に昇降動作させることができる。このため、通常は昇降(Z軸方向移動)のために2台のサーボモータ2を同期させて昇降動作を行うが、2台のサーボモータ2の速度を異ならせて運転することにより、単なる昇降だけでなく、左右のロボット101A、101BのZ軸方向(高さ方向)の位置を変更でき、クロスアーム102延いてはクロスバーユニット103(クロスバーユニット103に保持(把持、支持)されるワークW)をYZ平面内にてX軸廻りに傾斜させることができる(
図21参照)。
【0031】
ここで、本実施の形態では、クロスアーム102延いてはクロスバーユニット103(クロスバーユニット103に保持されるワークW)のみをYZ平面内にてX軸廻りに傾斜(ローリング)させることができるため、特許文献1に記載のワーク搬送装置のようにアームユニット全体を傾斜させる場合に比べて、回転エネルギーを小さくすることができるため、駆動モータサイズを小容量化することができ、装置の軽量化、コンパクト化を図ることができる。
【0032】
更に、本実施の形態では、比較的短尺なクロスアーム102延いてはクロスバーユニット103(クロスバーユニット103に保持されるワークW)のみを傾斜させるため、特許文献1に記載のワーク搬送装置のように長尺なアームユニット全体を傾斜させる場合に比べて、他部との干渉が起き難いため、傾斜角(ローリング角)を大きくとることができる。
【0033】
なお、クロスアーム102は、センターアーム51と、該センターアーム51の両端に配置されロボット101A(101B)の各第2アーム31の先端に接続される2つのホルダー45と、を含み、各ホルダー45とセンターアーム51とは上下方向に(YZ平面内を)回転可能に、第4関節40X(X軸)廻りに回転自在なベアリング54を介して接続されている。
【0034】
これにより、左右のロボット101A、101Bの昇降位置(Z軸方向位置:高さ位置)が変わると、センターアーム51が傾斜し、そのセンターアーム51に接続されたクロスバーユニット103延いてはワークWを傾斜させることが可能になる(
図21参照)。
【0035】
また、クロスアーム102の一端にて、センターアーム51とホルダー45を連結しているベアリング54は、クロスアーム102の長手方向に沿ってセンターアーム51(或いはホルダー45)に対して直進微小移動可能とする。これにより、左右のアームユニット20A、20Bの制御誤差による機械へのストレスを緩和することができる。
【0036】
更に、本実施の形態においては、クロスアーム102の両端のホルダー45と第2アーム31の先端と、の間に、チルト機構TMが配置されている。
【0037】
チルト機構TMは、第3関節30Xを介して第2アーム31に連結されているブラケット41、サーボモータ42、減速機43を含んで構成され、センターアーム51をブラケット41(延いては第2アーム31)に対してY軸(シフト軸)(センターアーム51の長手方向と平行な回転軸)廻りに回転(チルト)させることが可能となっている(
図6参照)。
【0038】
但し、チルト機構TMを、クロスバーユニット103側に設け、クロスバー71をクロスバー71の長手方向と平行な回転軸廻りに回転(チルト)させる構成とすることもできる。
【0039】
なお、クロスアーム102のセンターアーム51の中央下部にはカプラ61、62により、クロスバーユニット103が着脱可能に接続されている(
図8、
図9参照)。カプラ61、62としては、例えば、入手容易な市販のクイックチェンジャ(ツールチェンジャ)(ビー・エル・オートテック株式会社製)などを採用することができる。
【0040】
クロスバーユニット103は、ワーク搬送方向に直交する方向(Y軸方向:シフト方向)に長い棒状のクロスバー71、把持(保持)ツール81を含んで構成され、把持ツール81はスパイダー(パイプ状要素)81A、バキュームカップ81B等を含んで構成され、バキュームカップ81BによりワークW1、W2を吸着保持したり、吸着保持しているワークW1,W2を解放することができるように構成されている。
【0041】
ここで、本実施の形態に係るワーク搬送装置1のクロスアーム102には、
図7(A)、
図7(B)、
図8(A)、
図8(B)に示すように、2つのシフト装置S1A、S1Bが備えられている(搭載されている)。
【0042】
シフト装置S1A及びシフト装置S1Bは同様の構成を有しており、シフト装置S1A、S1Bは、それぞれ、シフト動作用駆動源としてのサーボモータS2、ボールネジS3、リニアガイドS4、駆動側シフト部材S5を含んで構成されている。
【0043】
なお、ボールネジS3は、クロスアーム102(クロスバー71)の長軸方向(Y軸方向)に沿って配設され、サーボモータS2の出力回転軸と一体的に回転される。該ボールネジS3の外周ネジ部と螺合される駆動側シフト部材S5は、サーボモータS2延いてはボールネジS3の回転(正回転或いは逆回転)により、ボールネジS3の長軸方向(Y軸方向)に沿って移動(往復移動)可能に構成されている。そして、駆動側シフト部材S5のボールネジS3の長軸方向(Y軸方向)に沿った移動を直動案内するように、駆動側シフト部材S5にはリニアガイドS4が係合されている。
【0044】
これにより、本実施の形態に係るシフト装置S1A(或いはS1B)の駆動側シフト部材S5は、クロスアーム102の長軸方向(Y軸方向)の任意の位置へ移動可能であると共に、その位置にて停止維持(位置決め)可能となっている。
【0045】
駆動側シフト部材S5の下端部は、凹形状(或いは凸形状)を有しており、この形状に対応した凸形状(或いは凹形状)の上端部を有する被駆動側(従動側)シフト部材(ピン)S14と係合可能となっている。このため、駆動側シフト部材S5の下端部と、被駆動側シフト部材S14の上端部と、が上下方向(Z軸方向)において接近して係合されると(
図8(A)、
図9(A)参照)、シフト装置S1A(或いはS1B)による駆動側シフト部材S5のシフト方向(Y軸方向)へのシフト動作と略一体となって被駆動側シフト部材S14は従動され、駆動側シフト部材S5と同一のシフト方向(Y軸方向)へシフト動作(スライド動作)されるようになっている。
【0046】
ここで、被駆動側シフト部材S14は、スライド装置S11A(S11B)の構成部品であり、スライド装置S11A(S11B)は、シフト装置S1A(S1B)に対応してクロスバーユニット103(クロスバー71)側に搭載されている(備えられている)。
【0047】
スライド装置S11A、S11Bは、それぞれ、リニアガイドS12a、ツールホルダーS13a、前記被駆動側シフト部材S14を含んで構成されている。
【0048】
また、クロスバー71の長軸方向中心を挟んでスライド装置S11A、S11Bの反対側には、従動側スライド装置S21A、S21Bが配設され、それぞれ、リニアガイドS12b、ツールホルダーS13bを含んで構成されている。
【0049】
従動側スライド装置S21A(S21B)のツールホルダーS13bは、ブリッジ(接続部材)S29を介して、スライド装置S11A(S11B)のツールホルダーS13aと略一体的に接続されていて、ツールホルダーS13bはツールホルダーS13aと連動して(ツールホルダーS13aに従動され)、リニアガイドS12bにより直動案内されながら、クロスバー長軸方向(Y軸方向)に沿ってツールホルダーS13aの移動方向と同一方向に移動可能に構成されている。
【0050】
このため、シフト装置S1A(或いはS1B)による駆動側シフト部材S5のシフト方向(Y軸方向)へのシフト動作に連動して、前記被駆動側シフト部材S14がシフト方向(Y軸方向)へシフト動作(スライド動作)されると、該被駆動側シフト部材S14と略一体のツールホルダーS13a延いてはブリッジ(接続部材)S29を介して接続されるツールホルダーS13bが連動してクロスバー長軸方向(Y軸方向)に沿って同一方向に移動されることになる。
【0051】
なお、スライド装置S11A及び従動側スライド装置S21Aは、
図7(A)に示す中心点(クロスアーム102の中心)に関して、スライド装置S11B及び従動側スライド装置S21Bと対角位置に配設されている。かかる配置により、重量物であるシフト動作用駆動源(サーボモータS2)等の重量バランスが保たれるが、当該配置に限定されるものではなく、例えば、サーボモータを増やしたり(被駆動側に代えて独立に駆動させるためにサーボモータを設けたり)、バランサを搭載するなどの方法により、他の配置とすることも可能である。
【0052】
また、
図7や
図8に示すように、ツールホルダーS13a、S13bには、ワークを把持(保持、支持)する把持ツール81が取り付けられている。上述したように、把持ツール81はスパイダー(パイプ状要素)81A、バキュームカップ81B等を含んで構成され、バキュームカップ81Bによりワークを吸着保持したり、吸着保持しているワークを解放することができるように構成されている。
【0053】
2つのシフト装置S1A、S1BのサーボモータS2の駆動をそれぞれ制御することにより、駆動側シフト部材S5をシフト方向(Y軸方向)へシフト動作させると、これに連動して、前記被駆動側シフト部材S14が従動されてシフト方向(Y軸方向)へシフト動作(スライド動作)され、延いてはブリッジ(接続部材)S29及びツールホルダーS13a、S13b、ワーク保持ツール81、ワークW1、W2がクロスバー長軸方向(Y軸方向)に沿って任意の位置に移動される。
【0054】
なお、2つのシフト装置S1A、S1BのサーボモータS2の駆動をそれぞれ相互独立に制御することにより、2つのシフト装置S1A、S1Bの駆動側シフト部材S5のシフト方向(移動方向)をそれぞれ同じ方向(同位相)とすることができるし、
図9(A)、
図9(B)に示すように、逆方向(逆位相)(相互に接近する方向、相互に離間する方向)とすることで、ワークW1、W2の相互間隔を変更することが可能である。また、2つのシフト装置S1A、S1BのサーボモータS2のうちの一方のみを駆動して、一方の駆動側シフト部材S5(ワークW1、W2の一方)の位置はそのままに他方の駆動側シフト部材S5(ワークW1、W2の他方)の位置を前記一方の駆動側シフト部材S5(ワークW1、W2の前記一方)に対して接近させたり離間させたりすることなども可能である。
【0055】
以上のように、本実施の形態に係るワーク搬送装置1によれば、比較的簡単かつ低コストで、かつ、軽量・コンパクトな構成でありながら、ワークの搬送姿勢(搬送中の姿勢、特にワークのY軸方向へのシフト動作)を自由度高く変更することができるプレス機械のワーク搬送装置を提供することができる。
【0056】
また、本実施の形態に係るワーク搬送装置1では、シフト機構用駆動源(サーボモータ)であるサーボモータS2をワーク搬送装置1(クロスアーム102)側に備えることができるように工夫したので、ツール交換の際に、従来(特許文献1)の装置のようにシフト機構用サーボモータを含んで構成されているツールアタッチメントをワーク搬送装置から切り離すことがないため、シフト機構用サーボモータ(サーボモータS2相当)への電力供給は継続されるため、従来(特許文献1)の装置のようなツール交換毎にシフト機構用サーボモータ(サーボモータ等)の位置情報を消失してしまうといったおそれがなく、再接続する際に、原点設定作業の必要がないので、ツール交換時間を大幅に削減することができる。
【0057】
また、本実施の形態では、シフト動作用駆動源としてサーボモータS2を利用する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、サーボモータ以外の電動モータやリニアモータなどをシフト動作用駆動源として利用することも可能である。
【0058】
ここで、本実施の形態に係るワーク搬送装置1のクロスバーユニットの交換動作について説明する。
<クロスバー着脱動作(ツール交換)>
(ステップA)
次に(今回)使用するクロスバーユニット103が搭載された台車502を、
図11の退避位置1から
図11のツール交換位置へ移動させると共に、前に(前回)使用していたクロスバーユニットを既に取り外された状態(空の状態)のワーク搬送装置1(クロスアーム102)をツール交換位置に移動させる(
図11参照)。
なお、
図11に示すように、前に使用していたクロスバーユニット1031は、
図11のツール交換位置にて、ワーク搬送装置1から自動的に分離(離脱)されて(外されて)別の台車5021に搭載された後、
図11の退避位置2に移動されている。
【0059】
(ステップB)
図11の状態から、ワーク搬送装置1のクロスアーム102を降下させて、クロスアーム102側のカプラ61を次クロスバーユニット103側のカプラ62に密着させる(
図12参照)。
このとき、ワーク搬送装置1(クロスアーム102)の降下動作にて、駆動側シフト部材S5と、被駆動側シフト部材S14と、が係合される(
図8、
図10等参照)。
また、ワーク搬送装置1(クロスアーム102)の降下動作にて、クロスアーム102のカプラ61と、クロスバーユニット103のカプラ62と、が係合され、カプラ61側からカプラ62側へのエアの供給が開始されることにより自動的にチャック(付着)される。
【0060】
(ステップC)
続いて、ワーク搬送装置1のクロスアーム102を上昇させると、クロスアーム102側のカプラ61と次クロスバーユニット103側のカプラ62とが係合されているので、台車502から次クロスバーユニット103が離れ、ワーク搬送装置1は次クロスバーユニット103を携えて所定の生産位置へ移動され、台車502は退避位置1へ戻されて、プレス加工(生産)が開始される(
図13参照)。
【0061】
なお、本実施の形態では、
図14に示すように、台車502(台車5021も同様)のクロスバーユニット103を受けて支持する受け台503a、503bの上面には、位置固定ピン504a、504bが凸状に立設されている。
【0062】
一方で、クロスバーユニット103のツールホルダーS13a(S13b)には、クロスバー71に対する相対的な所定位置(例えば、ツールホルダーS13a、13bの最大離間位置(ツールホルダーS13aが最右位置でツールホルダーS13bが最左位置にある状態)にて、前記位置固定ピン504a、504bに対応する位置に、係合穴S131a,S131bが設けられている。なお、クロスバー71に対する相対的な所定位置は、サーボモータS2の基準位置(所定回転角度位置)に対応している。
【0063】
このため、ツール交換(ツール脱)の際に、
図14に示すように、ワーク搬送装置1を操作して、空の台車502の上方にクロスアーム102及びクロスバーユニット103を持ち来たすが、その際に、サーボモータS2を駆動して、各ツールホルダーS13a(S13b)(
図7、
図8等参照)を所定位置まで移動させる。そして、その状態で、クロスアーム102を降下してクロスバーユニット103を台車502の受け台503a、503bに載置させると、台車502側の位置固定ピン504a、504bと、クロスバーユニット103側の係合穴S131a,S131bと、が係合され、ツールホルダーS13a(S13b)延いては被駆動側シフト部材S14の位置を所定位置に維持した状態で台車502に載置することができる。
【0064】
このとき、カプラ61側からのカプラ62側へのエアの供給を停止することで、クロスアーム102のカプラ61と、クロスバーユニット103のカプラ62と、の係合が自動的に解放され、ワーク搬送装置1を操作してクロスアーム102を上昇させると、クロスアーム102からクロスバーユニット103が分離(離脱)され、クロスバーユニット103だけを台車502に置くことができる(
図15、
図16参照)。
【0065】
なお、ワーク搬送装置1が、このクロスバーユニット103を次に取りに来るときには、位置固定ピン504a、504bと係合穴S131a,S131bとの係合により、ツールホルダーS13a及び被駆動側シフト部材S14は所定位置に維持されているので、その位置に対応する駆動側シフト部材S5の位置(すなわち、サーボモータS2の所定回転角度量(基準位置からの駆動量))も判っているので、その位置に調整することで、容易に駆動側シフト部材S5と被駆動側シフト部材S14を係合させながら、クロスバーユニット103を自動的に接続することができる。このため、以降のサーボモータS2の駆動制御はいわゆる脱調等(サーボモータS2のエンコーダ等に基づく位置情報と、ツールホルダーS13aの位置情報と、の不符号・不整合など)を招くことなく、そのまま継続してシフト動作を行うことができる。
【0066】
また、本実施の形態では、シフト動作用駆動源であるサーボモータS2をワーク搬送装置1(クロスアーム102)側に備える構成としたので、ツール交換の際に、従来(特許文献1)の装置のようにシフト動作用駆動源(サーボモータS2相当)を含んで構成されているツールアタッチメントをワーク搬送装置から切り離すことがないため、シフト動作用駆動源(サーボモータS2相当)への電力供給は継続されるため、従来(特許文献1)の装置のようなツール交換毎にシフト動作用駆動源(サーボモータ等)の位置情報を消失してしまうおそれがない。
【0067】
すなわち、従来(特許文献1)の装置のように、ツール交換の際に、サーボモータ側とツール側とを一旦切り離すと、再接続する際には、サーボモータ側の位置情報と、ツール側の位置情報と、を対応させるために、再度、原点設定作業が必要になるが、本実施の形態によれば、そのような必要がないので、ツール交換時間を大幅に削減することができる。
【0068】
なお、位置固定ピン504a、504bと係合穴S131a,S131bが、本発明に係るシフト方向位置決め機構の一例に相当する。
【0069】
ところで、
図14に例示した場合に限らず、台車502側に係合穴を設け、ツールホルダーS13a、S13b側に位置固定ピンを下に凸状に設ける構成とすることも可能である。
【0070】
シフト方向位置決め機構の他の一例としては、
図17、
図18に示すようなブレーキ装置600を利用することができる。
【0071】
ブレーキ装置600は、ツールホルダー13a、13b毎に備えられ、クロスバー71或いはリニアガイドS12a(S12b)に対して摩擦要素604を当接・解放することで、クロスバー71或いはリニアガイドS12a(S12b)に対してツールホルダー13a、13bを、クロスバー71或いはリニアガイドS12a(S12b)の長手方向に対して所定位置に固定・解放可能に構成されている。
【0072】
このブレーキ装置600は、例えば、NBK(鍋屋バイテック会社)製のリニアクランプ(製品名「リニアクランパ・ズィー(Linear Clamper−Zee)」(登録商標))を利用することができる。
【0073】
より詳細には、リニアクランプ(ブレーキ装置の一例)600の一例としては、クロスバー71或いはリニアガイドS12a(S12b)のレールの長手方向(シフト方向)に摺動自在なリニアクランプボディ610(ツールホルダー13a、13bと略一体の部材)の内部に、スプリング601により
図18中下方に弾性付勢されるピストン602が備えられ、このピストン602の裏面(
図18において下側)には、
図18中下側が細まったクサビ要素603が取り付けられている。
【0074】
クサビ要素603の
図18中左側には摩擦要素604がクロスバー71或いはリニアガイドS12a(S12b)のレールに面して設けられており、クサビ要素603の上下動に応じて摩擦要素604がクロスバー71或いはリニアガイドS12a(S12b)のレールに対して接離するようになっている。
【0075】
すなわち、エア圧等をピストン602の裏面に作用させない状態(カップリング61と62が分離された状態)では、ピストン602はスプリング601により押圧されて
図18中下方に弾性付勢された状態となる。このとき、ピストン602の下のクサビ要素603も連動して
図18中下側に移動されるため、クサビ要素603の基端側(
図18中上側)の太い部分によって、摩擦要素604がクロスバー71側に押されて当接するため、摩擦要素604とクロスバー71或いはリニアガイドS12a(S12b)との間に摩擦力が生じて、リニアクランプボディ610(ツールホルダー13a、13bと略一体の部材)は、クロスバー71に対して固定保持されることになる。
【0076】
このため、ツール交換(ツール脱)の際に、カップリング61とカップリング62を切り離す前に、サーボモータS2を駆動して、各ツールホルダーS13a(S13b)を所定位置まで移動させておき、その状態で、クロスアーム102を降下してクロスバーユニット103を台車502の受け台に載置させて、カップリング61とカップリング62を分離すると、それによりエア供給が停止され、ブレーキ装置600により、ツールホルダー13a、13b(被駆動側シフト部材S14)は、クロスバー71に対して所定位置に固定保持される。
【0077】
一方で、空のクロスアーム102にツールを付着させる際には、サーボモータS2を駆動してツールホルダー13a、13b(被駆動側シフト部材S14)の所定位置に対応する位置へ駆動側シフト部材S5を移動させた状態にして、クロスアーム102をクロスバーユニット103に接近させてカップリング61とカップリング62を接続すると、エア供給が開始されるため、ブレーキ装置600の摩擦要素604による固定保持が解放され、ツールホルダー13a、13bは、クロスバー71に対して自在に移動可能となる。このため、以降のサーボモータS2の駆動制御はいわゆる脱調等(サーボモータS2のエンコーダ等に基づく位置情報と、ツールホルダーS13aの位置情報と、の不符号・不整合など)を招くことなく、そのまま継続してシフト動作を行うことができる。
【0078】
なお、ツールホルダー13a、13bは、ブリッジ(接続部材)S29を介して略一体的に接続されているので、ブレーキ装置600は、スライド装置S11A,S11Bのツールホルダー13a、または従動側スライド装置S21A、S21Bのツールホルダー13bの少なくとも一方に備える構成とすることも可能である。
【0079】
ここで、本実施の形態に係るワーク搬送装置1の基本的なワーク搬送動作について説明しておく。
<ワーク搬送動作(X軸方向(ワーク搬送方向)への移動及びZ軸方向(高さ方向、上下方向)への移動)>
<ステップ1>
ステップ1では、
図4(A)に示すように、ワークWの次工程への搬送(プレスマシンへの搬入或いはプレスマシンからの搬出など)は、スカラロボット101A(101B)の各サーボモータ(13、22)を駆動し、第1アーム21、第2アーム31を回転作動させて、クロスバーユニット103を搬送すべきワークW(搬送コンベア上或いは前工程プレスマシンの金型上のワークなど)の上方に移動させる。
【0080】
この段階或いはこの段階に至る前から、各サーボモータ2を同期駆動して、スカラロボット101A、101Bを同期させながら下降させ、クロスバー71に配置された把持ツール81の吸着部(バキュームカップ81B)をワークWの上面と密着させる。この状態で把持ツール81の吸着部(バキュームカップ81B等)の吸着力作用(負圧による吸着或いは磁気による吸着など)によりワークWが吸着把持される。
【0081】
各把持ツール81に吸着されたワークWは、サーボモータ2によるロボット101A(101B)全体の上昇により持ち上げられる。
【0082】
<ステップ2>
ステップ2では、ロボット101A、101Bの各第1アーム21、各第2アーム31や各サーボモータ13、22等の作用により、ステップ1にて持ち上げられたワークWを、ワーク搬送方向(X軸方向)下流側に向けて搬送する(
図4(B)→
図4(C)→
図4(D)参照)。
【0083】
<ステップ3>
ステップ3では、
図4(E)に示すように、ワークWが搬送すべき位置の上方まで搬送されたので、各サーボモータ13、22等を停止して各第1アーム21、各第2アーム31の動作を停止する一方、各サーボモータ2により、ロボット101A、101B全体を下降させる。
【0084】
<ステップ4>
ステップ4では、クロスバー71に取り付けられている把持ツール81の吸着部の吸着力を停止してワークWを解放して、ワークの搬送を完了する。
【0085】
そして、ワークWの搬送が完了すると、ツール81を上昇させる。この上昇は、各サーボモータ2により、ロボット101A、101Bを同期させて上昇させることで実行する。
【0086】
その後、ロボット101A、101Bの各第1アーム21、各第2アーム31や各サーボモータ13、22等の作用により、クロスバー71や把持ツール81を次に搬送するワークWのある場所の上方まで移動させる(
図4(E)の状態から
図4(A)の状態へのリターン動作を行う、言い換えると
図4の矢印と逆向きの動作を実行する)。
以降は、この一連の動作を繰り返すことで、順次、ワークを下降工程へ搬送する。
【0087】
<X軸廻りの回転動作(ローリング)>
また、本実施の形態に係るワーク搬送装置1は、金型を斜めに設置した場合(例えば、仕上がり品質(パンチ穴の見栄えなど)の観点からパンチが厚み方向に沿って真っすぐに打ち込まれるようにしたい場合など)には、把持したワークWをYZ平面(高さ方向)において傾斜(例えばX軸廻りに回転:ローリング)させる必要があるが、このような要求に応えることができる。
すなわち、
図21示したように、左右のロボット101A,101Bの各サーボモータ2を相互独立に制御(高さ位置を異ならせるように制御)することで、クロスバー71や把持ツール81をYZ平面内にて傾斜させることができ、かかる傾斜状態にて左右のロボット101A,101Bを下降させることで、傾斜して配置された金型の上にワークを置くことが可能となる。
【0088】
<Y軸廻りの回転動作(ピッチング:チルト)>
また、本実施の形態に係るワーク搬送装置1は、クロスバー71や把持したワークWをY軸廻りに回転(チルト:ピッチング)させたいといった要求に応えることができる。
すなわち、
図5に示したように、クロスアーム102の両端のホルダー45と第2アーム31の先端と、の間に配設されているチルト機構TM(サーボモータ42、減速機43など)を駆動することにより、Y軸(シフト軸)廻りにワークW(センターアーム51、クロスバー71、把持ツール81)を回転(チルト)させることが可能となっている。
【0089】
<Z軸廻りの回転動作(ヨーイング)>
また、本実施の形態に係るワーク搬送装置1は、クロスバー71や把持したワークWを水平面内(XY平面)にて回転(Z軸廻りの回転:ヨーイング)させたいといった要求に応えることができる。
すなわち、
図20に示したように、左右のロボット101A,101Bのアームユニット20A、20B(各第1アーム21、各第2アーム31)の動作を相互独立に制御(各第1関節10X,各第2関節20Xの回転角度位置を異ならせるように各第1アーム駆動機構DM1、各第2アーム駆動機構DM2を制御)することで、クロスバー71や把持ツール81をZ軸廻りに回転させることができる。
【0090】
<Y軸方向への移動(シフト)動作>
更に、本実施の形態に係るワーク搬送装置1は、クロスバー71や把持したワークWをワーク搬送方向(X軸方向)に対して横方向(Y軸方向:幅方向)に移動(シフト)させたいといった要求に応えることができる。
すなわち、
図19に示したように、左右のロボット101A,101Bのアームユニット20A、20B(各第1アーム21、各第2アーム31)の動作を相互独立に制御(各第1関節10X,各第2関節20Xの回転角度位置を異ならせるように各第1アーム駆動機構DM1、各第2アーム駆動機構DM2を制御)することで、クロスバー71や把持ツール81をワーク搬送方向(X軸方向)に対して横方向(Y軸方向)に移動(シフト)させることができる。
【0091】
なお、上記では、第2アーム31の先端に、垂直枢軸(Z軸廻りの枢軸)である第3関節30Xを介して、クロスアーム102を接続すると共に、クロスアーム102をX軸廻りに回転動作(ローリング)させることができるようにするために、センターアーム51の両端と、第2アーム31に第3関節廻りに回転自在に接続されるブラケット41と、を、X軸廻りに回転自在なベアリング54(第4関節40X)を介して接続している。
【0092】
以上説明したように、本実施の形態に係るワーク搬送装置1によれば、X軸廻りの回転(ローリング)、Y軸廻りの回転(チルト)、Z軸廻りの回転(ヨーイング)、Z軸方向への移動(リフト)、Y軸方向への移動(シフト)を可能にしながら、ワークをワーク搬送方向(X軸方向)に搬送することができる。
【0093】
すなわち、本実施の形態に係るワーク搬送装置1によれば、比較的簡単かつ低コストで、かつ、軽量・コンパクトな構成でありながら、ワークの搬送姿勢を自由度高く変更可能にしたプレス機械のワーク搬送装置を提供することができる。
【0094】
なお、本発明に係るシフト装置及びスライド装置は、本実施の形態に係る搬送ロボット101A,101Bを相互独立に上下方向(Z軸方向)へ移動可能に構成した装置に適用される場合に限定されるものではなく、例えば、特許文献2に記載されているようなワーク搬送装置のように2台のスカラロボットを共通の支持フレームに支持した構成のワーク搬送装置などにも適用することができるものである。
【0095】
以上で説明した実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【解決手段】本発明は、昇降フレーム11に第1関節10Xを介して支持される第1アーム21と、第2関節20Xを介して支持される第2アーム31と、第1アームを回転駆動する第1アーム駆動機構DM1と、第2アームを回転駆動する第2アーム駆動機構DM2と、を含むスカラロボット101A,101Bを2台備えると共に、前記2台のスカラロボットを上下動させる昇降機構と、第2アーム31の先端同士を連結するクロスアーム102と、クロスアーム102に着脱可能に接続されツールホルダーを介してワークを解放可能に保持するワーク保持ユニット103と、を備え、駆動側シフト部材S5をシフト動作させるシフト装置S1A,S1Bがクロスアーム102に備えられ、被駆動側シフト部材が駆動側シフト部材により従動されることでツールホルダーS13Aをシフト動作させるスライド装置S21A,S21Bがワーク保持ユニット103に備えられる。