【実施例】
【0033】
実施例1:本発明における多機能組成物
原料をそれぞれ、表1に示される海藻由来の物質と酵素阻害剤との重量比に従って秤量した。原料を直接混合して粉末組成物を形成した。代替的に原料を混合した後、水に溶解して組成物の溶液を形成した。実施例で使用されるバリダマイシンはバリダマイシンA〜バリダマイシンH又はそれらのいくつかの混合物の1つとすることができた(酵素に対する異なる異性体の阻害効果には実際に差は見られなかった)が、バリダマイシンAを主に使用した。トレハロース(α,α)、イソトレハロース(β,β)及びネオトレハロース(α,β)の混合物をトレハロースとして使用した。
【0034】
【表1】
【0035】
さらに固体組成物又は組成物の溶液を、従来法により製剤にすることができるが、ここには挙げていない。
【0036】
実験例2:本発明の多機能組成物のin vivo吸収
1. 動物及び材料
8週齢、体重20±2gの雄性ICRマウスをBeijing HFK Bioscience Co., Ltd.から購入した。
【0037】
本実験例で使用される組成物は組成物1の溶液とした。特に15gのトレハロース及び3mgのバリダマイシンを取った後、100mLの医療用滅菌水に溶解して組成物1の溶液を得て、これを後の使用のために保存した。
【0038】
2. 方法
3日間通常どおり飼育した後、水を十分に与えながらマウスを12時間絶食させた。次いでマウスを血糖に応じて4群、すなわちブランク対照群、投与群、並びに陰性対照群1及び陰性対照群2にランダムに分けた。投与群のマウスには本実験例にて調製した組成物1の溶液を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与し、ブランク対照群のマウスには医療用滅菌水を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。加えて、陰性対照群1及び陰性対照群2のマウスにはそれぞれ、トレハロースの溶液(0.15g/mL)及びバリダマイシンの溶液(0.3mg/mL)を体重1kg当たり13.3mLの同用量で胃内投与した。投与前、並びに投与の10分後、25分後、40分後及び60分後の血糖値をそれぞれ測定し、結果を表2に示した。
【0039】
【表2】
【0040】
表2のデータから、ブランク対照群、陰性対照群2及び投与群の間には、投与の前後に関係なく血糖値に有意差はないのに対して、陰性対照群1の血糖値はブランク対照群と比較して有意に増大し、その後投与後の後期ではいくらか低下したことが示された。これはトレハロースが二糖類の一種であったためであった。単独で使用すると、トレハロースは胃及び腸内の酵素によってグルコースへと分解された後、血中に吸収され、その結果血糖値が増大する。このことから、陰性対照群1の血糖値は他の群よりも明らかに高くなった。投与後の後期では、in vivo糖代謝に起因して、血糖値が幾らか低下した。他方、トレハロースとバリダマイシン(酵素阻害剤)とを一緒に使用しても(投与群)、又は酵素阻害剤のみを使用しても(陰性対照群2)、血糖値は明らかに上昇しなかった。このことから一つとして、酵素阻害剤は血糖値には影響を及ぼさないことが示された。もう一つとしてトレハロースは、血中に吸収されることで血糖値を増大させるグルコースへとin vivoにて変換されないことが示された。つまり、酵素阻害剤が酵素によるトレハロースの分解を防ぐことで、トレハロース自体が胃腸管へと入った。
【0041】
実施例3:本発明の多機能組成物の適用
本実施例で使用される組成物の溶液は下記のように調製した。
組成物1の溶液:15gのトレハロースと3mgのバリダマイシンとを秤量した後、100mLの医療用滅菌水に溶解することで、組成物1の溶液を調製し、これを後の使用のために保存した。
組成物2の溶液:300gのトレハロースと3mgのバリダマイシンとを秤量し、100mLの医療用滅菌水に溶解することで、組成物2の溶液を調製し、これを後の使用のために保存した。
組成物3の溶液:600gのトレハロースと3mgのバリダマイシンとを秤量し、100mLの医療用滅菌水に溶解することで、組成物3の溶液を調製し、これを後の使用のために保存した。
組成物4の溶液:15gのトレハロースと3mgのヘキサコナゾールとを秤量し、100mLの医療用滅菌水に溶解することで、組成物4の溶液を調製し、これを後の使用のために保存した。
組成物5の溶液:15gのトレハロースと3mgのトレハゾリンとを秤量し、100mLの医療用滅菌水に溶解することで、組成物5の溶液を調製し、これを後の使用のために保存した。
組成物6の溶液:15gの藻多糖類と3mgのバリダマイシンとを秤量し、100mLの医療用滅菌水に溶解することで、組成物6の溶液を調製し、これを後の使用のために保存した。
組成物7の溶液:150gのアルギン酸と3mgのバリダマイシンとを秤量し、100mLの医療用滅菌水に溶解することで、組成物7の溶液を調製し、これを後の使用のために保存した。
【0042】
I.血糖を下げる働きがある糖尿病用の糖代用製品の作製における本発明の多機能組成物の使用
(I).糖尿病マウスにおける血糖の低下に対する組成物の効果
1. 動物及び材料
8週齢、体重20±2gの雄性ICRマウスをBeijing HFK Bioscience Co., Ltd.から購入した。
【0043】
ここでも組成物1の溶液〜組成物7の溶液を本実施例で使用した。
【0044】
2. 方法
I.モデル化:実験を始める前に、0.1mol/Lのクエン酸ナトリウムバッファー(pH4.5)を準備した。このバッファーをオートクレーブにて滅菌した後、4℃の冷蔵庫内に保存した。モデル化を始める前に、このクエン酸ナトリウムバッファーを用いて、氷浴にて新たに10mg/mLのストレプトゾトシン(STZ)溶液を調製した。マウスを3日間通常どおり飼育した後、マウスに5日間連続して1日1回新たに調製したSTZ溶液を45mg/kgの用量で腹腔内投与した。
【0045】
II.治療:モデルの確立に成功した後、ストレプトゾトシン溶液を投与しなかったマウスを或る群、すなわち正常群に配し、通常どおり飼育した。糖尿病マウスは血糖値に応じて、モデル群、投与群1〜投与群7及び陰性対照群1〜陰性対照群3の11群にランダムに分けた。投与群1〜投与群7のマウスにはそれぞれ、本実施例にて調製した組成物1の溶液〜組成物7の溶液を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。モデル群のマウスには医療用滅菌水を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。陰性対照群1〜陰性対照群3のマウスにはそれぞれ、トレハロースの溶液(0.15g/mL)、バリダマイシンの溶液(0.3mg/mL)及び藻多糖類の溶液(0.15g/mL)を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。この投与は毎日午前9時及び午後9時に行い、血糖値は1週間おきに5週間、Rocheの血糖測定器によって確認した。結果を表3.1に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
表3.1のデータからモデル群と正常群との間に血糖値の有意差が示され、このことから糖尿病マウスモデルの確立に成功したことが示唆された。陰性対照群1〜陰性対照群3の血糖値はモデル群と同程度であり、このことから単一成分のみの使用では血糖低下には影響がないことが示された。これに対して、投与群1又は投与群2及び投与群4〜投与群7の血糖値は、モデル群よりも有意に低かった。すなわち組成物1又は組成物2及び組成物4〜組成物7は全て、糖尿病マウスにおいて血糖値を下げることができる。投与群3はモデル群及び陰性対照群1〜陰性対照群3と血糖値に差はなく、このことから組成物3には血糖を下げる働きがなかったことが示唆された。これは酵素阻害剤の含量が少なすぎたためであった。
【0048】
投与群1又は投与群2及び投与群4〜投与群7のマウスの血糖値は陰性対照群1〜陰性対照群3よりも低く、このことから組成物1又は組成物2及び組成物4〜組成物7が実際に糖尿病マウスの血糖値を下げることが示された。すなわち、組成物1又は組成物2及び組成物4〜組成物7は血糖を下げる働きがあり、投与の1週間後には働いた。言い換えれば、これらの組成物は投与の1週間後には血糖低下に対する効果を生じた。
【0049】
投与群1と投与群6との結果の比較にて、トレハロースを含む投与群1が藻多糖類を含む投与群6よりも血糖値が低かったことを容易に見出すことができ、このことから2つの物質はどちらも海藻由来の物質ではあるが、トレハロースは藻多糖類よりも血糖低下に対する効果が良好であることが示された。一方、投与群1と投与群4又は投与群5との比較から、3つ全てが酵素阻害剤ではあるが、バリダマイシンを含む投与群
1はヘキサコナゾールを含む投与群4及びトレハゾリンを含む投与群5よりも血糖値が低かったことが明らかとなった。この差はこの酵素に対するバリダマイシンの阻害効果がより良好であることに起因し得て、より多くの海藻由来の物質が吸収されることで、血糖値を下げることができた。これに対して、ヘキサコナゾールを含む組成物4及びトレハゾリンを含む組成物5については、トレハロースの一部が胃腸管にて分解され得るために、血糖値に対する効果はバリダマイシンの投与を伴う投与群1よりも低かった。
【0050】
投与群1〜投与群3の間でのデータ比較から、バリダマイシンに対するトレハロースのpbw(重量部)比を増大させることで、血糖を下げる効果がゼロになるまで徐々に低減することが示された。かかる事実から、酵素阻害剤の濃度を下げることで、海藻由来の物質の分解を防ぐ組成物の能力が徐々に低下し、それにより血糖を下げる効果がますます悪化することが示唆された。バリダマイシンに対するトレハロースのpbw比が200000:1に達すると、組成物は血糖を下げる効果がなくなり、このことから酵素阻害剤が占める質量パーセントは本発明の組成物の0.001%未満とはならないことが示唆された。
【0051】
(II).正常なヒトにおける血糖値に対する効果
6名の健常なボランティアを一晩絶食させた後、空腹時血糖について測定した。次いで、表3.2に述べられるように、ボランティアに200mLの組成物1の溶液、又は200mLのトレハロースの溶液(0.15g/mL)、又は200mLのバリダマイシンの溶液(0.3mg/mL)、又は200mLの蒸留水を経口投与した。ボランティアごとの血糖値を投与前、並びに投与の30分後、60分後及び120分後に調べた。結果を表3.2に示した。
【0052】
【表4】
【0053】
表3.2のデータから、蒸留水又はバリダマイシンの溶液の投与には血糖値に対する影響がなく、トレハロースの溶液の投与が血糖値を有意に上昇させたことが示された。他方、組成物1の溶液は血糖値の増大を抑えるばかりか、血糖値をいくらか低下させた。投与の120分後、組成物1の溶液を摂取したボランティアは血糖値が投与前の血糖値まで戻り、ボランティアによっては投与前よりも低い血糖値を示したものさえいた。これらは組成物1が実際に正常なヒトの血糖値の上昇を抑えることが可能であり、また血糖を下げる軽い効果を有することを示唆するものであった。
【0054】
(III).ヒト糖尿病における治療についての短期実験
6名のII型糖尿病患者を一晩絶食させた後、空腹時血糖値について測定した。次いで、表3.3に述べられるように、患者に200mLの組成物1の溶液、又は200mLのトレハロースの溶液(0.15g/mL)、又は200mLのバリダマイシンの溶液(0.3mg/mL)、又は200mLの蒸留水を経口投与した。患者ごとの血糖値を投与前、並びに投与の30分後、60分後及び120分後に調べた。結果を表3.3に示した。
【0055】
【表5】
【0056】
表3.3のデータから、蒸留水及びバリダマイシン溶液の投与にはII型糖尿病患者の血糖値に対する影響がなく、トレハロースの溶液の投与が血糖値を有意に上昇させることが示された。他方、組成物1の溶液は血糖値の増大を抑えるばかりか、血糖値をいくらか低下させた。投与の120分後、組成物1の溶液を服用したII型糖尿病患者は血糖値が投与前の血糖値まで戻り、患者によっては投与前よりも低い血糖値を示したものさえいた。これらは組成物1が実際にII型糖尿病患者の血糖値の上昇を抑えることが可能であり、また血糖を下げる軽い効果を有することを示唆するものであった。
【0057】
(IV).ヒト糖尿病における治療についての長期実験
6名のII型糖尿病患者を一晩絶食させた後、空腹時血糖値について測定した。次いで、表3.4に述べられるように、患者に200mLの組成物1の溶液、又は200mLのトレハロースの溶液(0.15g/mL)、又は200mLのバリダマイシンの溶液(0.3mg/mL)、又は200mLの蒸留水を経口投与した。患者ごとの血糖値を投与前、並びに投与の1日後、1週間後、2週間後及び1ヶ月後に調べた。結果を表3.4に示した。
【0058】
【表6】
【0059】
表3.4のデータから、蒸留水及びバリダマイシン溶液の投与にはII型糖尿病患者の血糖値に対する影響がなく、組成物1の溶液の投与が血糖値の上昇を効果的に抑えることが示された。治療の1ヶ月後、組成物1の溶液を服用したII型糖尿病患者は血糖値が正常なヒトの血糖値近くまで戻り、このことから組成物1の長期的使用が実際にII型糖尿病における状態を改善することが示唆された。
【0060】
II.便通を良くし、消化管をきれいにする製品の作製における本発明の多機能組成物の使用
(I).正常マウスにおける腸蠕動に対する本発明の多機能組成物の効果
1. 動物及び材料
8週齢、体重20±2gの雄性ICRマウスをBeijing HFK Bioscience Co., Ltd.から購入した。
【0061】
組成物1の溶液〜組成物7の溶液を本実施例で使用した。
【0062】
0.1g/mLの炭素粉末の懸濁液も使用した。詳細には、1gの炭素粉末を10mLの生理食塩水に添加した後、均一に懸濁させた。
【0063】
2. 方法
マウスを3日間通常どおり飼育した後、18時間〜24時間マウスに食餌を与えず、水を与えた。体重によって、マウスを11群、すなわちブランク対照群、投与群1〜投与群7及び陰性対照群1〜陰性対照群3にランダムに分けた。投与群1〜投与群7のマウスにはそれぞれ、組成物1の溶液〜組成物7の溶液を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与し、ブランク対照群のマウスには医療用滅菌水を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。陰性対照群1〜陰性対照群3のマウスにはそれぞれ、トレハロースの溶液(0.15g/mL)、バリダマイシンの溶液(0.3mg/mL)及び藻多糖類の溶液(0.15g/ml)を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。投与の20分後〜30分後に、全てのマウスに炭素粉末の懸濁液を体重10g当たり0.2mLの用量で胃内投与した。炭素粉末懸濁液の投与の15分後〜20分後、マウスを頚椎脱臼にて屠殺した後、迅速に切開して小腸を取り出した。炭素粉末の移動距離(炭素粉末の最前端から十二指腸の心臓に近い方の端部までの距離)及び小腸の全長を測定した。結果を表4.1に示した。
【0064】
【表7】
【0065】
表4.1のデータから、陰性対照群1〜陰性対照群3のマウスの小腸での炭素粉末の移動距離(炭素粉末の移動距離)はブランク対照群と同程度であることが示された。また小腸の全長に対する炭素粉末の移動距離の比は陰性対照群1〜陰性対照群3とブランク対照群とでいずれも何ら有意な差を示さなかった。これらは本組成物に由来する単一成分の使用のみでは腸を弛緩させるとともに腸管をきれいにするのには影響がないことを示唆するものであった。投与群1又は投与群2及び投与群4〜投与群7における炭素粉末の移動距離はブランク対照群よりも長く、その差は有意なものであった。その上、これらの投与群における小腸の全長に対する炭素粉末の移動距離の比もブランク対照群よりも有意に高かった。すなわち、組成物1又は組成物2及び組成物4〜組成物7は全て炭素粉末がより長く移動するように小腸を平滑にすることができる。投与群3における炭素粉末の移動距離はブランク対照群及び陰性対照群1〜陰性対照群3と差はなかった。また、小腸の全長に対する炭素粉末の移動距離の比についてもこの群とブランク対照群及び陰性対照群1〜陰性対照群3との間に明確な差はなかった。これらは全て、組成物3は酵素阻害剤の含量が少なすぎるために小腸を平滑にする役割を果たすことができないことを示唆するものであった。
【0066】
要するに投与群1又は投与群2及び投与群4〜投与群7のマウスの小腸における炭素粉末の移動距離は陰性対照群1〜陰性対照群3よりも長く、小腸の全長に対する炭素粉末の移動距離の比もまた同様であり、このことから組成物1又は組成物2及び組成物4〜組成物7は実際に炭素粉末がより長く移動するように小腸を平滑にすることができることが示唆された。言い換えれば、これらの組成物は腸を弛緩させるとともに腸管をきれいにする役割を果たすことができる。さらにこれらの組成物は投与後20分〜30分で効果が現れ、腸を弛緩させるとともに消化管をきれいにする効能が達成される。個々の差から、投与群2のマウスの小腸における炭素粉末移動距離は陰性対照群1と同程度の長さであったが、投与群2における小腸の全長に対する炭素粉末の移動距離の比は陰性対照群1よりも有意に高かった。このことは組成物1又は組成物2は実際に腸を弛緩させるとともに腸管をきれいにする効果があるという結論を支持すると考えられた。
【0067】
投与群1と投与群6との比較にて、トレハロースを含む投与群1は藻多糖類を含む投与群6よりも炭素粉末の移動距離が長かったことを容易に見出すことができ、このことから2つの物質はどちらも海藻由来の物質ではあるが、トレハロースは藻多糖類よりも腸を弛緩させるとともに腸管をきれいにする効果が良好であることが示された。その一方で、投与群1と投与群4又は投与群5との比較から、3つ全てが酵素阻害剤ではあるが、バリダマイシンを含む投与群
1はヘキサコナゾールを含む投与群4及びトレハゾリンを含む投与群5よりも炭素粉末の移動距離が長いことが明らかとなった。この差はこの酵素に対するバリダマイシンの阻害効果がより良好であることに起因し得て、より多くの海藻由来の物質が小腸に入ることで、腸を弛緩させるとともに腸管をきれいにした。これに対して、ヘキサコナゾールを含む組成物4及びトレハゾリンを含む組成物5については、トレハロースの一部が胃腸管にて分解され得るために、腸を弛緩させるとともに腸管をきれいにする効果はバリダマイシンの投与を伴う投与群1よりも低かった。
【0068】
投与群1〜投与群3の間でのデータ比較から、バリダマイシンに対するトレハロースのpbw(重量部)比を増大させることで、腸を弛緩させるとともに腸管をきれいにする効果がゼロになるまで徐々に低減することが示された。かかる事実から、酵素阻害剤の濃度を下げることで、海藻由来の物質の分解を防ぐ組成物の能力が徐々に低下し、それにより腸を弛緩させるとともに腸管をきれいにする効果がますます悪化することが示唆された。バリダマイシンに対するトレハロースのpbw比が200000:1に達すると、組成物は腸を弛緩させるとともに腸管をきれいにする効果がなくなり、このことから酵素阻害剤が占める質量パーセントは本発明の組成物の0.001%未満とはなり得ないことが示唆された。
【0069】
(II).正常マウスにおける排便量に対する効果
1. 動物及び材料
8週齢、体重20±2gの雄性ICRマウスをBeijing HFK Bioscience Co., Ltd.から購入した。
【0070】
組成物の溶液:本実施例にて調製した組成物1の溶液を使用した。
【0071】
2. 方法
マウスを3日間通常どおり飼育した後、4時間マウスに食餌を与えず、水を与えた。体重によって、マウスを2群、すなわち対照群及び投与群にランダムに分けた。投与群のマウスには本実施例にて調製した組成物1の溶液を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与し、対照群のマウスには医療用滅菌水を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。投与の20分後〜30分後に、マウスに自由に食餌を与えた。投与後1時間〜3時間での各群のマウスの排便量(各群のマウスの排便量の平均)を記録し、結果を表4.2に示した。
【0072】
【表8】
【0073】
表4.2のデータから、対照群のマウスと投与群のマウスとは投与前では同程度の糞便粒数であったが、投与の1時間〜2時間後には投与群のマウスにおける糞便粒数は対照群のマウスよりも明らかに増えたことが示された。特にこの差は投与の1時間後に最大に達した、すなわち投与群における排便量は対照群より4.3倍多かった(対照群の0.7に対して投与群の2.6)。さらに組成物1は投与の1時間後には正常マウスにおいて便通を促し、効果が現れることが証明された。投与の3時間後には投与群のマウスにおける排便量は対照群のマウスよりも少なかった。これは腸管内の糞便が投与後1時間〜2時間で殆ど排泄され、腸管内に残る糞便が大幅に減ったためであった。したがって、この時点での投与群に見られる排便量が対照群よりも少なくなった。糞便の状態の観察から、投与群のマウスの糞便は黄色がかっていたことが明らかとなった。この群のマウスは軽度の下痢を伴い、肛門近くに緩い糞便があったが、深刻な腐敗臭はしなかった。対照群のマウスの糞便は黒く、腐敗臭がした。これらは全て、組成物1が排便を容易にし、トレハロースが腐敗臭を発する糞便中の有機酸を捕捉することができることから腸管内の毒素を除去する明らかな効能を達成することができることを示していた。
【0074】
(III).便秘マウスにおける排便量に対する効果
1. 動物及び材料
8週齢、体重20±2gの雄性ICRマウスをBeijing HFK Bioscience Co., Ltd.から購入した。
【0075】
組成物の溶液:本実施例にて調製した組成物1の溶液を使用した。
【0076】
2. 実験方法
マウスを3日間通常どおり飼育した後、体重に応じて、マウスを3群、すなわち正常群、対照群及び投与群にランダムに分けた。対照群及び投与群のマウスには72時間水を与えず、食餌を与え、正常群のマウスは通常どおり飼育した。その後、投与群のマウスに組成物1の溶液を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与し、対照群のマウスに医療用滅菌水を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。一方、正常群のマウスは通常どおり飼育した。投与の20分後〜30分後に、マウスを自由に飲食させた。投与後1時間〜2時間以内での各群のマウスの排便量(各群のマウスの排便量の平均)を記録し、結果を表4.3に示した。
【0077】
【表9】
【0078】
表4.3のデータから、対照群のマウスと投与群のマウスとは投与前では同程度の糞便粒数であったが、投与の1時間〜2時間後には投与群のマウスにおける糞便粒数は対照群及び正常群のマウスよりも明らかに増えたことが示された。特にこの差は投与の1時間後に最大に達した、すなわち投与群における排便量は対照群及び正常群よりそれぞれ1.88倍及び4倍多かった(対照群の1.7に対して投与群の3.2及び正常群の0.8に対して投与群の3.2)。組成物1は投与の1時間後には便秘マウスにおいて便通を促し、効果が現れることが証明された。投与群のマウスにおける排便量は投与の2時間後には明らかに減少した。これは腸管内の糞便が投与後1時間で殆ど排泄され、腸管内に残る糞便の総量が大幅に減ったためであった。したがって、この時点での投与群における排便量が顕著に低下した。糞便の状態の観察から、投与群のマウスの糞便は黒緑色であり、軽い腐敗臭がしており、対照群のマウスの糞便は黒く、腐敗臭がしたことが明らかとなった。他方、投与群のマウスの糞便は黄色がかっていた。この群のマウスは軽度の下痢を伴い、肛門近くに緩い糞便があったが、深刻な腐敗臭はしなかった。これらは全て、組成物1が排便を容易にし、トレハロースが腐敗臭を発する糞便中の有機酸を捕捉することができることから腸管内の毒素を除去する明らかな効能を達成することができることを示していた。
【0079】
(IV).ヒトの便秘の治療実験
1. 身長160cm及び体重60kgの38歳のボランティアMr. Liuは、軽い便秘であったが、心血管疾患の病歴はなかった。彼に絶食後に本実施例にて調製した組成物1の溶液を200mL投与し、投与の30分後に食事を開始した。食事の30分後に、1回の便意及び排便があった。糞便は多少緩かった。このボランティアは実験中には明らかな腹部膨満及び腹痛又は他の不快症状を全く感じなかった。本実施例から、本発明の組成物は、腹部膨満、腹痛及び下痢等の任意の不快症状を呈することなくヒトの腸を弛緩する役割を果たし、迅速に効果が現れることが示された。
【0080】
2. 機能性便秘についてのローマIII基準を満たす22名のボランティアを選択したが、その内訳は年齢18歳〜85歳(平均48.57±17.43歳)で体重40kg〜83kg(平均61.11±12.15kg)、身長155cm〜180cm(平均165.26±7.23cm)及び肥満度指数(BMI)15.63〜28.13(平均22.24±3.35)の5名の男性ボランティア及び17名の女性ボランティアであった。下記のように投与計画を立てた。詳細には、毎朝胃を空にした状態でボランティアに200mLの本実施例にて調製した組成物1の溶液を経口投与した後、30分後に通常どおり朝食を与えた。投与は7日間続けた。
【0081】
実験結果:
1).排便頻度はこれらのボランティアにおいて顕著に増大した。組成物1の投与前、ボランティアには平均して2〜3日に1回の排便があった。組成物1の投与を開始してから、ボランティアを7日間連続して観察した。この7日間、各ボランティアには平均して1日1回の排便があった。組成物1の投与を止めてから更に1週間観察を続けた。この結果から、各ボランティアには依然平均して1日1回の排便があったことが分かった。
【0082】
2).ボランティアの排便困難は著しく軽減した。排便困難は排便困難指数を用いて分析した(排便困難指数は、3つの評価パラメータ、すなわち不完全な排便感、排便の労力(difficult defecation)及び肛門閉塞を含む患者における便秘の程度を評価する重要な指数であり、評価には1〜5の等級を採用した、すなわち1.症状なし、2.僅かな症状を呈したが、忍容性あり、3.比較的はっきりした症状を呈したが、日常生活には支障なし、4.はっきりした症状を呈し、日常生活に支障あり、5.深刻な症状を呈し、日常生活及び仕事に影響あり)。組成物1の投与前では、ボランティアにおける排便困難指数の平均は2.5〜3にランク付けられた。組成物1の投与後、排便困難指数は7日間で1以下まで低下した。組成物1の投与を止めてから更に7日間ボランティアの観察を続け、その結果から排便困難指数は1以下のままであったことが示された。
【0083】
3).ボランティアにおける他の良性応答は下記のとおりであった。組成物1の投与中、ボランティアの70%近くにおいて長い間見られなかった全身に亘る弛緩感(feeling of easiness:リラックス感)の報告があった。ボランティアの30%近くにおいて血色の改善の報告があり、ボランティアの25%近くにおいて睡眠が改善したとの報告があった。さらに数名のボランティアで健康状態の改善の報告があった。
【0084】
4).ボランティアにおける他の応答は下記のとおりであった。ボランティアが組成物1の投与の初期に腸雑音の増大及び放屁の増加等の制御可能な不快症状を頻繁に感じていたことがボランティアにおいて広く報告された。数例にて、軽い腹部膨満、排便回数の増加及び緩い糞便の報告があった。しかしながら、これらの症状は忍容性があり、何も処置しなくても約2日後には改善又は寛解した。はっきりした症状を伴う数名のボランティアでは、これらの症状は組成物1の投与の中断直後に消失した。
【0085】
5).一部のボランティアにおける特別な兆候は下記のとおりであった。73歳の女性であるボランティア1は長年便秘を患っていた。めったに便意がなく平均して3日に1回の排便であり、排便に困難が伴うこともあった。糞便には悪臭がしていた。睡眠不足であり、寝付きが悪く、目が覚めやすく、早くに起きてしまうという問題を抱えることが多かった。平均して夜4時間睡眠であった。2013年4月28日から組成物1の服用を開始した。詳細には、朝食前に200mL、夜寝る前に200mLを服用した。投与1日目、難なく1回の排便があった。投与2日目以降、睡眠の改善が感じられた。例えば、簡単に寝付き、睡眠は夜7時間〜8時間続き、睡眠の質が改善していた。翌朝全身に長い間なかった弛緩感があった。10日の連続した投与の後、規則的な毎日の排便及び睡眠の報告があった。また全身の弛緩及び良好な健康状態の報告もあった。
【0086】
85歳の女性であるボランティア2は一度パーキンソン病の診断を受け、40年超便秘を患っていた。平均して4日〜5日に1回の排便があり、糞便は乾燥していた。彼女は常に、手で掻き出すことによって多大な労力を伴って排便を行っていた。これまで様々な種類の下剤を服用していたが、効果は良好とはいえなかった。2013年8月から組成物1の服用を開始した。始めは、朝食前に200mLを服用していたが、効果は良好ではなかった。後に用量を400mLへと徐々に増やし、これは排便に有用であった。1日〜2日に1回の排便があり、糞便は全て軟らかかった。3日〜4日連続して組成物1を服用した後、1日〜2日使用を中断し、これを彼女の投与サイクルとした。約1ヶ月後、用量を1週間に1回〜2回、300mL/日へと減らした。
【0087】
この実験から組成物1の腸を弛緩させる効果が確認された。組成物1は1週間に2回〜3回から1週間に6回〜7回へと排便頻度を増やすことができ、その後維持された。服用時間を延ばした際に、排便が正常なままであれば、組成物1の用量を徐々に減らした。本実施例における観察結果によると、用量が適切であれば、腸を弛緩する効果は投与1日目には達成することができる。その後、2日〜3日投与を行った後、1日〜2日中断し、その後再び2日〜3日投与を行った。こうすることで、腸を弛緩する効果がより良好なものとなった。排便及び胃腸機能の改善に伴い、上述の4サイクルの後に組成物1の用量を徐々に減らし、2回の投与の間隔を徐々に延ばすことができ、それでも正常な排便を保つことができた。後に必要に応じて投与を止めても又は断続的に実施してもよい。
【0088】
III.痩身製品の作製における本発明の多機能組成物の使用
(I).正常マウスにおける排便量に対する組成物の効果
1. 動物及び材料
8週齢、体重20±2gの雄性ICRマウスをBeijing HFK Bioscience Co., Ltd.から購入した。
【0089】
本実施例にて調製した組成物1の溶液〜組成物7の溶液を使用した。
【0090】
2. 方法
マウスを3日間通常どおり飼育した後、4時間マウスに食餌を与えず、水を与えた。体重によって、マウスを11群、すなわちブランク対照群、投与群1〜投与群7及び陰性対照群1〜陰性対照群3にランダムに分けた。投与群1〜投与群7のマウスにはそれぞれ、組成物1の溶液〜組成物7の溶液を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。他方、ブランク対照群のマウスには医療用滅菌水を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。さらに、陰性対照群1〜陰性対照群3のマウスにはそれぞれ、トレハロースの溶液(0.15g/mL)、バリダマイシンの溶液(0.3mg/mL)及び藻多糖類の溶液(0.15g/mL)を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。投与の20分後〜30分後に、マウスに自由に食餌を与え、各群のマウスにおける投与前後の排便量(各群のマウスの糞便量の平均)、実験を通じての総排便量に対する投与前後の排便量の割合、及び体重を記録した。結果を表5.1に示した。
【0091】
【表10】
【0092】
表5.1のデータから、投与前では、陰性対照群1〜陰性対照群3における排便量がブランク対照群と同程度であり、体重について有意差は見られなかったことが示された。投与後では、陰性対照群1〜陰性対照群3における排便量はブランク対照群と比較して著しく減少したが、依然体重について有意差は見られず、このことから本組成物に由来する単一成分のみの使用では体重減少に対する効果がないことが示唆された。投与群1又は投与群2及び投与群4〜投与群7では、投与前のマウスにおける排便糞便量及び体重はどちらもブランク対照群と同程度であった。投与後ではこれらの群における排便量はブランク対照群よりも明らかに多く、体重も有意に減少した。すなわち、組成物1又は組成物2及び組成物4〜組成物7はマウスの体重を減少することが可能であった。投与前では、投与群3のマウスにおける排便量及び体重はブランク対照群及び陰性対照群1〜陰性対照群3と比較して差はなかった。投与後では、排便量はブランク対照群よりも明らかに少なかったが、体重は依然ブランク対照群及び陰性対照群1〜陰性対照群3と明らかな差はなく、このことから組成物3は酵素阻害剤の含量が少なすぎるために体重を減少する役割を果たすことができないことが示唆された。
【0093】
投与後では、投与群1又は投与群2及び投与群4〜投与群7のマウスにおける排便量は陰性対照群1〜陰性対照群3における排便量よりも多く、体重は陰性対照群1〜陰性対照群3よりも軽く、このことから組成物1又は組成物2及び組成物4〜組成物7は実際に小腸を平滑にすることで、排泄物を腸管から排泄し、体重を減少することが示唆された。これらの組成物は投与後3時間以内に効果が現れ、痩身効能を達成した。
【0094】
投与群1と投与群6との比較に基づき、トレハロースを含む投与群1は藻多糖類を含む投与群6よりも投与後の排便量が多く、またトレハロースを含む投与群1は藻多糖類を含む投与群6よりも投与後の体重が軽くなることを容易に見出すことができ、これによりどちらも海藻由来の物質ではあるが、トレハロースは藻多糖類よりも痩身効果が良好であることが示された。一方、投与群1と投与群4又は投与群5との比較から、3つ全ての物質が酵素阻害剤ではあるが、バリダマイシンを含む投与群
1はヘキサコナゾールを含む投与群4及びトレハゾリンを含む投与群5よりも投与後の排便量が多く、またバリダマイシンを含む投与群
1はヘキサコナゾールを含む投与群4及びトレハゾリンを含む投与群5よりも投与後の体重が軽いことが明らかとなった。この差はこの酵素に対するバリダマイシンの阻害効果がより良好であることに起因し得て、より多くの海藻由来の物質が小腸に吸収されることで、体重が減少した。これに対して、ヘキサコナゾールを含む組成物4及びトレハゾリンを含む組成物5については、トレハロースの一部が胃腸管にて分解され得るために、痩身効果はバリダマイシンを含む投与群1よりも低かった。
【0095】
投与群1〜投与群3の間でのデータ比較から、バリダマイシンに対するトレハロースのpbw(重量部)比を徐々に増大させることで、体重を減少する効果がゼロになるまで徐々に低減することが示され、このことから酵素阻害剤の濃度を下げることで、海藻由来の物質の分解を防ぐ組成物の能力が徐々に低下し、それにより痩身効果の低減が示されることが示唆された。バリダマイシンに対するトレハロースの重量部の比が200000:1に達すると、組成物は痩身効果がなくなり、このことから酵素阻害剤の質量パーセントは本発明の組成物の0.001%未満とはならないことが示唆された。
【0096】
(II).肥満ラットにおける体重に対する効果
1. 動物及び材料
体重150g〜180gの雄性SDラットをShanghai Sippr-BK Lab Animal Co., Ltd.から購入した。
【0097】
組成物の溶液:本実施例にて調製した組成物1の溶液を使用した。
【0098】
2. 方法
ラットを3日間通常どおり飼育した後、ラットに高脂肪飼料(80%の基礎飼料、10%のラード及び10%の卵黄粉)を30日間与えた。体重によって、ラットを2群、すなわち対照群及び投与群にランダムに分けた。投与群のラットには組成物1の溶液を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与し、対照群のラットには医療用滅菌水を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。投与は1日1回行い、30日間続けた。投与期間中、対照群のラット及び投与群のラットに高脂肪飼料を与え続け、体重を1週間に1回記録した。結果を表5.2に示した。さらに基礎飼料を与えたラットを正常群に配した。
【0099】
【表11】
【0100】
表5.2のデータから、正常群においてラットの体重は、給餌が進むにつれて投与前の約189gから投与の4週後の約280gまで安定して増大する傾向があったことが示された。その一方で、対照群及び投与群では、高脂肪食餌を採用したことに起因して、体重が投与前に約235gに達し、これは正常群との有意差を示すものであり、このことから肥満ラットモデルの確立が成功したことが示唆された。投与前、対照群のラットの体重は投与群と同等であり、有意差はなかった。しかしながら、投与の1週間後〜5週間後の投与群のラットの体重は対照群よりも明らかに低かった。特にこの差は投与の3週間後に最大に達し、体重は13%減少した(対照群の345.8gに対して投与群の300.8g)。さらに組成物1は肥満ラットにおいて体重を著しく減少させ、1週間以内に効果が現れることが証明された。したがって組成物1は体重を減少することが可能であり、明らかな痩身効果を有していた。
【0101】
(III).ヒトの食事における実験
減量の意思がある107名のボランティアを2013年4月から2013年9月まで集め、そこから39名の男性のうち6名を実験から外し、68名の女性のうち11名を実験から外し、合計90名のボランティアの経過観察を行った。本件の統計の時点まで、68名のボランティアの経過観察を1週間超行った。これら68名のデータを分析した。ボランティアの年齢は14歳〜78歳(平均41.46±13.27歳)、体重は49.5kg〜130kg(平均76.15±15.30kg)、身長は153cm〜192cm(平均165.48±7.37cm)、肥満度指数は19.83〜42.45(平均27.73±4.50)であった。下記のように投与計画を立てた。詳細には、毎朝空っぽの胃に200mLの本実施例にて調製した組成物1の溶液を与えた後、30分後に通常どおり朝食を与えた。投与は10週間続けた。基礎疾患に関しては、ボランティアは脂肪肝、高血圧、高脂血症、糖尿病、便秘、睡眠不足等の合併症を患っていた。
【0102】
ボランティアにおける平均体重の変化を
図1に示した。
図1から、元の平均体重と比較すると、これら68名のボランティアの体重は10週間の痩身試験後に5kg減少したことが分かり、このことから組成物1は明らかな痩身効果を有していたことが示唆された。
【0103】
他の実験結果は下記に提示した。
【0104】
1).排便頻度はこれらのボランティアにおいて著しく増加した。組成物1の投与前、ボランティアには平均して2日間〜3日間に1回の排便があった。組成物1の投与を開始してから、ボランティアの観察を7日間続けた。この7日間、各ボランティアには平均して1日1回排便があった。組成物1の投与を止めてから更に1週間ボランティアの観察を続けた。この結果から、便秘ボランティアには依然平均して1日1回の排便があったことが分かった。
【0105】
2).便秘ボランティアの排便困難は著しく軽減した。排便困難は排便困難指数を用いて分析した(排便困難指数は、3つの評価パラメータ、すなわち不完全な排便感、排便の労力及び肛門閉塞を含む患者における便秘の程度を評価する重要な指数であり、評価に1〜5の等級を採用した、すなわち1.症状なし、2.僅かな症状を呈したが、忍容性あり、3.比較的はっきりした症状を呈したが、日常生活には支障なし、4.はっきりした症状を呈し、日常生活に支障あり、5.深刻な症状を呈し、日常生活及び仕事に影響あり)。組成物1の投与前では、便秘ボランティアにおける排便困難指数の平均は2.5〜3にランク付けられた。組成物1の投与後、排便困難指数は7日間で1以下まで低下した。組成物1の投与を止めてから更に7日間ボランティアの観察を続け、その結果から排便困難指数は1以下のままであったことが示された。
【0106】
3).ボランティアにおける他の良性応答は下記のとおりであった。組成物1の投与中、ボランティアの70%近くにおいて長い間見られなかった全身に亘る弛緩感の報告があった。ボランティアの30%近くにおいて血色の改善の報告があり、ボランティアの25%近くにおいて睡眠が改善したとの報告があった。さらに数名のボランティアでは健康状態の改善の報告もあった。
【0107】
4).ボランティアにおける他の応答は下記のとおりであった。ボランティアが組成物1の投与の初期に腸雑音の増大及び放屁の増加等の制御可能な不快症状を頻繁に感じていたことがボランティアにおいて広く報告された。数例にて、軽い腹部膨満、排便回数の増加及び緩い糞便の報告があった。しかしながら、これらの症状は忍容性があり、何も処置しなくても約2日後には改善又は寛解した。はっきりした症状を伴う数名のボランティアでは、これらの症状は組成物1の投与の中断直後に消失した。
【0108】
5).一部のボランティアにおける特別な兆候は下記のとおりであった。73歳の女性であるボランティア1は睡眠不足を患っており、寝付きが悪く、目が覚めやすく、早くに起きてしまうという問題を抱えることが多かった。平均して夜4時間睡眠であった。2013年4月28日から組成物1の服用を開始した。詳細には、朝食前に200mL、夜寝る前に200mLを服用した。投与2日目以降、睡眠の改善が感じられた。例えば、簡単に寝付き、睡眠は夜7時間〜8時間続き、睡眠の質が改善していた。翌朝全身に長い間なかった弛緩感があった。10日の連続した投与の後、規則的な毎日の排便及び睡眠の報告があった。また全身の弛緩及び良好な健康状態の報告もあった。
【0109】
この実験結果から、組成物1の体重を減少する効果が確認された。体重は10週間で平均して5kg減少した。投与を止めた後、体重をこのレベルに維持することができ、リバウンドはないと考えられた。投与を続けた際に、体重が減り続けているようであれば、組成物1の量を徐々に減らした。実験の観察結果によると、用量が適切であれば、体重減少の効果は投与2日目には達成することができる。
【0110】
IV.美容製品の作製における本発明の多機能組成物の使用
(I).ヒトの皮膚における水分量の測定
1. 被験者及び材料
110名を本試験に参加したボランティアから選択した。被験者は皮膚の水分量が12%未満の30歳〜55歳の女性とした。
【0111】
医療用滅菌水を温水に置き換えたこと以外は、本実施例で調製した組成物1の溶液〜組成物7の溶液を使用した。
【0112】
2. 方法
皮膚の水分量によって、被験者を11群、すなわちブランク対照群、投与群1〜投与群7及び陰性対照群1〜陰性対照群3にランダムに分けた。投与群1〜投与群7の被験者はそれぞれ、午前9時及び午後9時の1日2回、200mLの組成物1の溶液〜組成物7の溶液を服用し、ブランク対照群の被験者は同じ時点で200mLの温水を服用した。加えて、陰性対照群1〜陰性対照群3の被験体はそれぞれ、200mLのトレハロースの溶液(0.15g/mL)、200mLのバリダマイシンの溶液(0.3mg/mL)及び200mLの藻多糖類の溶液(0.15g/mL)を服用した。投与は30日間続けた。皮膚の水分量は投与前及び投与後に測定した。測定は広く十分に換気された実験室にて行った。被験者を落ち着かせてから、測定位置を蒸留水で湿らせた滅菌綿球にてきれいにした。測定位置を拭き取り乾燥させて15分後、皮膚の水分量を「KAKUSAN」という商標の皮膚水分試験器によって測定した。結果を表6.1に示した。
【0113】
【表12】
【0114】
表6.1のデータから、陰性対照群1〜陰性対照群3の被験者における皮膚水分量はブランク対照群と同等であることが示され、このことから本組成物に由来する単一成分のみの使用では皮膚水分量の増加効果がないことが示唆された。投与群1又は投与群2及び投与群4〜投与群7の皮膚水分量はブランク対照群よりも高く、その差は有意なものであった。すなわち、組成物1又は組成物2及び組成物4〜組成物7は全て皮膚水分量を上昇させることができ、また美を保つとともに若さを維持する効果もあった。投与群3の皮膚水分量はブランク対照群及び陰性対照群1〜陰性対照群3と差はなく、このことから組成物3には酵素阻害剤の含量が少なすぎるために皮膚水分量を上昇する効果がないことが示された。
【0115】
投与群1又は投与群2及び投与群4〜投与群7の被験者は全て陰性対照群1〜陰性対照群3よりも皮膚水分量が高く、このことから組成物1又は組成物2及び組成物4〜組成物7が実際に皮膚水分量を増加させ、美を保つとともに若さを維持することが可能であることが示された。この効果は投与の僅か1ヶ月後には明らかとなった。
【0116】
投与群1と投与群6との比較にて、トレハロースを含む投与群1は藻多糖類を含む投与群6よりも皮膚水分量が高かったことを容易に見出すことができ、このことから両物質とも海藻由来の物質であるが、トレハロースは藻多糖類よりも皮膚水分量を増加させる効果が良好であることが示された。その一方で、投与群1と投与群4又は投与群5との比較から、3つ全てが酵素阻害剤ではあるが、バリダマイシンを含む投与群
1はヘキサコナゾールを含む投与群4及びトレハゾリンを含む投与群5よりも皮膚水分量が高いことが明らかとなった。この差はこの酵素に対するバリダマイシンの阻害効果がより良好であることに起因し得て、より多くの海藻由来の物質が小腸で吸収されることで、皮膚水分量が増加した。これに対して、ヘキサコナゾールを含む組成物4及びトレハゾリンを含む組成物5については、トレハロースの一部が胃腸管にて分解され得るために、その効果はバリダマイシンの投与を伴う投与群1よりも低かった。
【0117】
投与群1〜投与群3の間でのデータ比較から、バリダマイシンに対するトレハロースのpbw(重量部)比を増大させることで、皮膚水分量を増加させ、美を保つ効果がゼロになるまで徐々に低減することが示された。かかる事実から酵素阻害剤の濃度を下げることで、海藻由来の物質の分解を防ぐ組成物の能力が徐々に低下し、それにより美を保つ効果がますます悪化することが示唆された。バリダマイシンに対するトレハロースのpbw比が200000:1に達すると、組成物は皮膚水分量を増加させる効果がなくなり、このことから酵素阻害剤が占める質量パーセントは本発明の組成物の0.001%未満とはならないことが示唆された。
【0118】
(II).美の保持及び若さの維持に対するヒトの実験
1. 身長158cm及び体重50kgの25歳の女性であるボランティアAは、顔の広い範囲にニキビが広がっていたが、病歴はなかった。彼女は妊娠していなかった。30日間毎朝、胃を空にした状態で200mLの本実施例にて調製した組成物1の溶液を服用した。実験中は他の経口又は外用の抗ニキビ製品の使用を止めたが、食習慣は変えずに通常の食事を与えた。実験が完了した後に測定した油分量は正常範囲内であり、ニキビの数は約50%減少した。さらに皮膚の損傷度は明らかに軽減し、レベル1となった(皮膚の状態及びニキビの重症度に基づき、ニキビを臨床的に4つのレベルに分類した。レベル1:ニキビのみ;レベル2:ニキビに加えて、いくつかの炎症性丘疹あり;レベル3:ニキビに加えて、更には多くの炎症性丘疹又は膿疱あり;レベル4:ニキビに加えて、炎症性丘疹又は膿疱、更には結節及び嚢腫あり)。投与の間、被験者には何ら他の不快症状はなかった。
【0119】
2. 身長160cm及び体重55kgの35歳の女性であるボランティアBは、顔に多くの褐色斑があったが、病歴はなかった。彼女は妊娠していなかった。30日間毎朝、胃を空にした状態で200mLの本実施例にて調製した組成物1の溶液を服用した。実験中は他の経口又は外用の抗褐色斑製品の使用を止めたが、食習慣は変えずに通常の食事を与えた。実験が完了した後に顔における褐色斑の面積は低減し、色が明るくなった。投与の間、被験者には何ら他の不快症状はなかった。
【0120】
3. 身長163cm及び体重62kgの20歳の女性であるボランティアCは、ザラザラした肌触りの粗い皮膚をしていた。朝食前及び夜寝る前の1日2回、200mLの本実施例にて調製した組成物1の溶液を服用した。投与の1ヶ月後、健康状態は明らかに改善され、皮膚は滑らかに極め細かく、また何ら不快症状はなかった。
【0121】
この実験結果から、組成物1の美を保つとともに若さを維持する効果が証明された。これは、トレハロースが生体細胞に対する優れた非特異的な保護を有し、高温、乾燥及び寒さ等の過酷な条件に対する生体細胞の耐性を改善することができることに起因するものであった。組成物1の投与を続けた際に、皮膚が正常なままであれば、組成物1の用量を徐々に減らすことができる。後に必要に応じて投与を止めても又は断続的に実施してもよい。
【0122】
V.睡眠を改善する製品の作製における本発明の多機能組成物の使用
(I).正常マウスにおける睡眠に対する組成物の効果
1. 動物及び材料
8週齢、体重20±2gの雄性ICRマウスをBeijing HFK Bioscience Co., Ltd.から購入した。
【0123】
本実施例にて調製した組成物1の溶液〜組成物7の溶液を使用した。
【0124】
2. 方法
マウスを3日間通常どおり飼育した後、18時間〜24時間マウスに食餌を与えず、水を与えた。体重によって、マウスを11群、すなわちブランク対照群、投与群1〜投与群7及び陰性対照群1〜陰性対照群3にランダムに分けた。投与群1〜投与群7のマウスにはそれぞれ、組成物1の溶液〜組成物7の溶液を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与し、ブランク対照群のマウスには医療用滅菌水を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。陰性対照群1〜陰性対照群3のマウスにはそれぞれ、トレハロースの溶液(0.15g/mL)、バリダマイシンの溶液(0.3mg/mL)及び藻多糖類の溶液(0.15g/mL)を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。投与の20分後〜30分後に、全てのマウスにペントバルビタールナトリウムを閾値未満の(subdissociative)用量(15mg/kg)にて腹腔内注射した。マウスの立ち直り反射が消失した時間及び睡眠期間を記録した。結果を表7.1に示した。
【0125】
【表13】
【0126】
表7.1のデータから、陰性対照群1〜陰性対照群3のマウスにおいて立ち直り反射が消失した時間はブランク対照群と同等であり、睡眠期間について差は見られなかったことが示され、このことから本組成物に由来する単一成分のみの使用では睡眠を改善させる効果がないことが示唆された。投与群1又は投与群2及び投与群4〜投与群7では、立ち直り反射はブランク対照群よりも早く消失し、その差は有意なものだった。また、これらの投与群における睡眠期間はブランク対照群よりも長く、このことから組成物1又は組成物2及び組成物4〜組成物7はマウスにおいて睡眠の質を改善することが可能であることが示唆された。投与群3のマウスにおいて立ち直り反射が消失した時間はブランク対照群又は陰性対照群1〜陰性対照群3と差はなく、睡眠期間も差はなかった。このことから組成物3は酵素阻害剤の含量が少なすぎるために睡眠を改善する役割を果たすことができないことが示唆された。
【0127】
投与群1又は投与群2及び投与群4〜投与群7における立ち直り反射は全て、陰性対照群1〜陰性対照群3より
早く消失し、これらの投与群における睡眠期間は陰性対照群1〜陰性対照群3よりも長く、このことから組成物1又は組成物2及び組成物4〜組成物7は実際に、マウスの寝付きをより迅速にし、また睡眠期間を延ばすことで、マウスにおける睡眠の質を改善することが可能であることが示された。その上、これらの組成物は投与の20分後〜30分後に効果が現れ、睡眠を改善させる効能を達成した。
【0128】
投与群1と投与群6との比較にて、トレハロースを含む投与群1は藻多糖類を含む投与群6よりも早く立ち直り反射が消失したことを容易に見出すことができ、このことから両物質とも海藻由来の物質であるが、トレハロースは藻多糖類よりも睡眠を改善する効果が良好であることが示された。その一方で、投与群1と投与群4又は投与群5との比較から、3つ全てが酵素阻害剤ではあるが、バリダマイシンを含む投与群
1はヘキサコナゾールを含む投与群4及びトレハゾリンを含む投与群5よりも早く立ち直り反射が消失することが明らかとなった。この差はこの酵素に対するバリダマイシンの阻害効果がより良好であることに起因し得て、より多くの海藻由来の物質が小腸で吸収されることで、睡眠を改善した。これに対して、ヘキサコナゾールを含む組成物4及びトレハゾリンを含む組成物5については、トレハロースの一部が胃腸管にて分解され得るために、睡眠を改善する効果はバリダマイシンの投与を伴う投与群1よりも低かった。
【0129】
投与群1〜投与群3の間でのデータ比較から、バリダマイシンに対するトレハロースのpbw(重量部)比を増大させることで、睡眠を改善する効果がゼロになるまで徐々に低減することが示された。かかる事実から酵素阻害剤の濃度を下げることで、海藻由来の物質の分解を防ぐ組成物の能力が徐々に低下し、それにより睡眠を改善する効果がますます悪化することが示唆された。バリダマイシンに対するトレハロースのpbw比が200000:1に達すると、組成物は睡眠を改善する効果がなくなり、このことから酵素阻害剤が占める質量パーセントは本発明の組成物の0.001%未満とはならないことが示唆された。
【0130】
(II).睡眠の質の改善に対するヒトの実験
1. 長期不眠症の診断基準を満たし、睡眠を改善する意思がある10名のボランティアを選択したが、その内訳は31歳〜61歳の5名の男性及び5名の女性であった。下記のように具体的な投与計画を立てた。詳細には、200mLの本実施例にて調製した組成物1の溶液を7日間毎晩寝る前に経口投与し、他の睡眠導入剤の投与は全て止めた。
【0131】
実験結果は下記に提示した。
【0132】
(1).10名のボランティアのうち8名において、本発明の組成物の定期投与後、ほぼ1週間で徐々に、1)容易に寝付き、2)自然の睡眠中にめったに覚醒することなく、3)再び容易に寝付き、4)朝起きた後も頭は冴えていた(cool mind)ことを特徴とする睡眠の改善があった。
【0133】
(2).ボランティアにおける他の良性応答は下記のとおりであった。組成物1の投与中、ボランティアの70%近くにおいて長い間見られなかった全身に亘る弛緩感の報告があった。ボランティアの30%近くにおいて血色の改善の報告があり、ボランティアの25%近くにおいて偏頭痛及び神経衰弱の症状が著しく軽減し、数名のボランティアでは健康状態の改善の報告があった。
【0134】
2. 58歳のボランティアMr. Liuは軽度の耐糖能異常があったが、心血管疾患の病歴はなかった。彼は長年不眠多夢(insomnia and bad sleeping)を抱えており、早くに目が覚め、起きた後も疲れを感じていた。2週間毎晩寝る30分前に、200mLの本実施例にて調製した組成物1の溶液を服用した。寝付くまでの時間が明らかに短くなり、睡眠時間が長くなった。さらに、睡眠中めったに夢を見ることなく、早朝に目覚めた後は精力的に感じた。投与の間、被験者には何ら他の不快症状はなかった。
【0135】
40歳のボランティアMs. Zhaoは、中程度の長期不眠症を患っていた。毎夜寝る30分前に、200mLの本実施例にて調製した組成物1の溶液を服用した。1週間後までは効果が見られなかった。彼女は投与期間中、仕事に忙しく、毎日ほぼ午前2時〜3時に眠りについていたが、前よりも寝付きが早く、睡眠の質が良好であった。その上、朝起きた後に目眩及び疲労感なく精力的に感じられた。
【0136】
この実験結果から組成物1の睡眠を改善する効果が証明された。特に、寝付きに費やされる時間を短くし、また睡眠の質を改善することができる。組成物1の投与を続けた際に、正常な睡眠が確保することができるようであれば、組成物1の用量を徐々に減らすことができる。実験の観察結果によると、用量が適切であれば、睡眠を改善する効果は投与1日目には見ることができる。睡眠が規則的になったら、投与を2日〜3日行った後、1日〜2日中断して、その後更に2日〜3日投与を行った。こうすることで、この効果はより良好なものとなった。睡眠の質が徐々に改善していることに伴い、上述のプロセスの4サイクルの後に、正常な睡眠を確保しながら、組成物1の用量を徐々に減らし、2回の投与の間隔を徐々に延ばすこともできた。後に必要に応じて投与を止めても又は断続的に実施してもよい。
【0137】
VI.骨粗鬆症を改善する製品の作製における本発明の多機能組成物の使用
(I).卵巣切除ラットにおける骨粗鬆症の改善に対する組成物の効果
1. 動物及び材料
体重250g〜280gの雌性SDラットをShanghai Sippr-BK Lab Animal Co., Ltd.から購入した。
【0138】
本実施例にて調製した組成物1の溶液〜組成物7の溶液を使用した。
【0139】
2. 方法
卵巣切除を行った後、ラットを1週間通常どおり飼育した。体重によって、ラットを11群、すなわちブランク対照群、投与群1〜投与群7及び陰性対照群1〜陰性対照群3にランダムに分けた。投与群1〜投与群7のラットにはそれぞれ、組成物1の溶液〜組成物7の溶液を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与し、ブランク対照群のラットには医療用滅菌水を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。陰性対照群1〜陰性対照群3のマウスにはそれぞれ、トレハロースの溶液(0.15g/mL)、バリダマイシンの溶液(0.3mg/mL)及び藻多糖類の溶液(0.15g/mL)を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。投与は1日1回行い、30日間続けた。正常ラットを正常群に配し、全ての時間通常どおり飼育した。最後の投与の20分後〜30分後に、全てのラットを頚椎脱臼によって屠殺し、大腿骨を摘出した。次いで、大腿骨の骨密度及び骨塩量を測定した。結果を表8.1に示した。
【0140】
【表14】
【0141】
表8.1のデータから、ブランク対照群のラットにおける大腿骨の骨密度(以下、「骨密度」と称される)及び大腿骨の骨塩量(以下、「骨塩量」と称される)が正常群よりも明らかに低いことが示され、このことから骨粗鬆症のラットモデルの確立に成功したことが示唆された。これに基づき、比較を行った。陰性対照群1〜陰性対照群3における骨密度及び骨塩量はブランク対照群と同等であり、このことから本組成物に由来する単一成分のみの使用では骨密度及び骨塩量を増大させる効果(すなわち骨粗鬆症を改善する効果)がないことが示唆された。投与群1又は投与群2及び投与群4〜投与群7のラットにおける骨密度及び骨塩量はブランク対照群よりも高く、その差は有意なものであった。すなわち、組成物1又は組成物2及び組成物4〜組成物7は全て、骨密度及び骨塩量を増大させることで、骨粗鬆症を改善することができる。投与群3における骨密度及び骨塩量はブランク対照群及び陰性対照群1〜陰性対照群3と差はなく、このことから組成物3は酵素阻害剤の含量が少なすぎるために骨粗鬆症を改善する役割を果たすことができないことが示唆された。
【0142】
陰性対照群1〜陰性対照群3と比較して、投与群1又は投与群2及び投与群4〜投与群7は骨密度及び骨塩量が高く、このことから組成物1又は組成物2及び組成物4〜組成物7は実際に、骨密度及び骨塩量を増大させることで、骨粗鬆症を改善することが可能であることが示唆された。
【0143】
投与群1と投与群6との比較にて、トレハロースを含む投与群1は藻多糖類を含む投与群6よりも骨密度及び骨塩量が高かったことを容易に見出すことができ、このことから両物質とも海藻由来の物質であるが、トレハロースは藻多糖類よりも骨粗鬆症を改善する効果が良好であることが示された。その一方で、投与群1と投与群4又は投与群5との比較から、3つ全てが酵素阻害剤ではあるが、バリダマイシンを含む投与群
1はヘキサコナゾールを含む投与群4及びトレハゾリンを含む投与群5よりも骨密度及び骨塩量が高いことが明らかとなった。この差はこの酵素に対するバリダマイシンの阻害効果がより良好であることに起因し得て、より多くの海藻由来の物質が小腸に吸収されることで、骨粗鬆症を改善した。これに対して、ヘキサコナゾールを含む組成物4及びトレハゾリンを含む組成物5については、トレハロースの一部が胃腸管にて分解され得るために、骨粗鬆症を改善する効果はバリダマイシンの投与を伴う投与群1よりも低かった。
【0144】
投与群1〜投与群3の間でのデータ比較から、バリダマイシンに対するトレハロースのpbw(重量部)比を増大させることで、骨粗鬆症を改善する効果がゼロになるまで徐々に低減することが示された。かかる事実から酵素阻害剤の濃度を下げることで、海藻由来の物質の分解を防ぐ組成物の能力が徐々に低下し、それにより骨粗鬆症を改善する効果がますます悪化することが示唆された。バリダマイシンに対するトレハロースのpbw比が200000:1に達すると、組成物は骨粗鬆症を改善する効果がなくなり、このことから酵素阻害剤が占める質量パーセントは本発明の組成物の0.001%未満とはならないことが示唆された。
【0145】
(II).正常な幼若ラットにおける骨の発達に対する効果
1. 動物及び材料
体重20±2gの8週齢の離乳したSDラットをShanghai Sippr-BK Lab Animal Co., Ltd.から購入した。
【0146】
組成物の溶液:本実施例にて調製した組成物1の溶液を使用した。
【0147】
2. 方法
ラットを3日間通常どおり飼育した後、体重に応じて、ラットを3群、すなわち正常群、対照群及び投与群に分けた。投与群及び対照群のラットにはそれぞれ、午前9時及び午後9時の1日2回、本実施例にて調製した組成物1の溶液及び医療用滅菌水を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。投与は5週間続けた。正常群のラットは通常どおり飼育した。最後の投与の20分後〜30分後に、ラットに麻酔をかけ屠殺した。両側の大腿骨を摘出した。その後、大腿骨の長さ、重量、骨密度及び骨塩量を測定した。結果を表8.2に示した。
【0148】
【表15】
【0149】
表8.2のデータから、対照群における大腿骨の長さ、重量、骨密度及び骨塩量は正常群と有意な差はなかったことが示された。正常群及び対照群と比較して、投与群における大腿骨の長さ、重量、骨密度及び骨塩量は全て有意に増大した。これらは全て、組成物1が幼若ラットにおいて骨の発達を促し、幼若ラットにおいて大腿骨の骨密度及び骨塩量を増大させることが可能であることを示していた。この結論に基づき、組成物1が骨粗鬆症を改善することができることが示された。
【0150】
(III).ヒトにおける骨粗鬆症の改善に対する実験
1. 70歳の女性であるボランティアAは長年、骨粗鬆症を患っていた。主な症状は腰痛及び背部痛であり、長時間座るか又は立っていると悪化するようであった。2013年6月21日から、本実施例にて調製した組成物1の溶液を朝食前に200mL、その後夜寝る前に更に200mL服用を始めた。30日の連続投与の後、全身に弛緩を感じ、また良好な健康状態の報告があった。腰痛及び背部痛は明らかに軽減し、外での活動が増えた。
【0151】
2. 65歳の女性であるボランティアBは何年も前に骨粗鬆症の診断を受けていた。2013年6月25日から、200mLの本実施例にて調製した組成物1の溶液を朝食前、その後更に夜寝る前に服用を始めた。およそ1ヶ月の投与の後、腰痛が明らかに軽減したため、ウォーキングが増えた。病院にて再検査し、その結果から骨粗鬆症が大きく改善したことが示された。続く投与では、組成物1の溶液の用量を1週間に1回〜2回、各朝150mL及び更に夜に150mLへと減らした。その後も、骨粗鬆症の症状は十分に制御されていた。
【0152】
3. 61歳の女性であるボランティアCは老年性骨粗鬆症を患っていた。主な症状は腰痛及び背部痛であり、胸部圧迫等を伴い呼吸機能が弱っていた。2013年8月21日から、本実施例にて調製した組成物1の溶液を朝食前に200mL、夜寝る前に更に200mL服用を始めた。半月後、腰痛及び背部痛は明らかに軽減した。その後、投与を更に1ヶ月続けたところ、呼吸機能が回復し、胸部圧迫が消失し、骨粗鬆症の状態が大きく改善した。
【0153】
この実験結果から、骨密度及び骨塩量を増大させることができ、また骨粗鬆症によって起こる他の不快症状を軽減し、取り除くことができるといった組成物1の骨粗鬆症を改善する効果が証明された。組成物1の投与を続けた際に、骨粗鬆症が改善されているようであれば、組成物1の用量を徐々に減らすことができる。
【0154】
VII.月経障害を改善する製品の作製における本発明の多機能組成物の使用
(I).正常マウスにおける疼痛に対する組成物の効果
1. 動物及び材料
8週齢、体重20±2gの雄性ICRマウスをBeijing HFK Bioscience Co., Ltd.から購入した。
【0155】
本実施例にて調製した組成物1の溶液〜組成物7の溶液を使用した。
【0156】
2. 方法
マウスを3日間通常どおり飼育した後、体重に応じて、マウスを11群、すなわちブランク対照群、投与群1〜投与群7及び陰性対照群1〜陰性対照群3にランダムに分けた。投与群1〜投与群7のマウスにはそれぞれ、組成物1の溶液〜組成物7の溶液を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与し、ブランク対照群のマウスには医療用滅菌水を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。陰性対照群1〜陰性対照群3のマウスにはそれぞれ、トレハロースの溶液(0.15g/mL)、バリダマイシンの溶液(0.3mg/mL)及び藻多糖類の溶液(0.15g/mL)を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。投与の20分後に、マウスに0.2mlの酢酸溶液(0.6%)を腹腔内投与した。その後、ライジング(writhing)の回数及びマウスが最初にライジングを起こした時間を酢酸溶液注射後30分以内に観察して、疼痛抑制率(疼痛抑制率=(ブランク対照群におけるライジングの回数−投与群におけるライジングの回数)/ブランク対照群におけるライジングの回数)を算出した。結果を表9.1に示した。
【0157】
【表16】
【0158】
表9.1のデータから、陰性対照群1〜陰性対照群3のマウスにおけるライジングの回数はブランク対照群と同等であり、最初のライジングの時間に差はなかったことが示され、このことから本組成物に由来する単一成分のみの使用では疼痛改善に対する効果がないことが示唆された。最初のライジングは投与群1又は投与群2及び投与群4〜投与群7のマウスにおいてブランク対照群よりも後に起こり、その差は有意なものであった。その上、これらの投与群におけるライジングの回数はブランク対照群よりも有意に
少なかった。すなわち、組成物1又は組成物2及び組成物4〜組成物7は全てマウスにおいて疼痛を軽減することができた。投与群3における最初のライジングの時間はブランク対照群及び陰性対照群1〜陰性対照群3と差はなく、これはライジングの回数も差はなかった。このことから組成物3は酵素阻害剤の含量が少なすぎるために疼痛を改善する役割を果たすことができないことが示唆された。
【0159】
最初のライジングは投与群1又は投与群2及び投与群4〜投与群7のマウスにおいて陰性対照群1〜陰性対照群3よりも後に起こり、これらの投与群におけるライジングの回数は陰性対照群1〜陰性対照群3よりも
少なく、このことから組成物1又は組成物2及び組成物4〜組成物7は実際に酢酸により生じる疼痛を軽減することで、痛み止めの役割を果たし得ることが示唆された。これらの組成物は投与の20分後〜30分後に効果が現れ、疼痛を軽減する効能を達成した。
【0160】
投与群1と投与群6との比較にて、最初のライジングはトレハロースを含む投与群1において藻多糖類を含む投与群6よりも後に起こったことを容易に見出すことができる。また投与群1におけるライジングの回数は投与群6より少なく、疼痛抑制率は投与群6より大きかった。これらは全て、両物質とも海藻由来の物質であるが、トレハロースは藻多糖類よりも疼痛を改善する効果が良好であることを示唆するものであった。その一方で、投与群1と投与群4又は投与群5との比較から、最初のライジングはバリダマイシンを含む投与群
1においてヘキサコナゾールを含む投与群4及びトレハゾリンを含む投与群5よりも後に起こったことが明らかとなった。また、3つ全てが酵素阻害剤ではあるが、投与群
1におけるライジングの回数は投与群4及び投与群5より少なく、疼痛抑制率は投与群4及び投与群5より大きかった。この差はこの酵素に対するバリダマイシンの阻害効果がより良好であることに起因し得て、より多くの海藻由来の物質が小腸に吸収されることで、疼痛を改善した。これに対して、ヘキサコナゾールを含む組成物4及びトレハゾリンを含む組成物5については、トレハロースの一部が胃腸管にて分解され得るために、疼痛を改善する効果はバリダマイシンの投与を伴う投与群1よりも低かった。
【0161】
投与群1〜投与群3の間でのデータ比較から、バリダマイシンに対するトレハロースのpbw(重量部)比を増大させることで、疼痛を改善する効果がゼロになるまで徐々に低減することが示された。かかる事実から酵素阻害剤の濃度を下げることで、海藻由来の物質の分解を防ぐ組成物の能力が徐々に低下し、それにより疼痛を改善する効果がますます悪化することが示唆された。バリダマイシンに対するトレハロースのpbw比が200000:1に達すると、組成物は疼痛を改善する効果がなくなり、このことから酵素阻害剤が占める質量パーセントは本発明の組成物の0.001%未満とはならないことが示唆された。
【0162】
(II).貧血のマウスにおける赤血球数及びヘモグロビン濃度に対する効果
1. 動物及び材料
8週齢、体重20±2gの雌性ICRマウスをBeijing HFK Bioscience Co., Ltd.から購入した。
【0163】
組成物の溶液:本実施例にて調製した組成物1の溶液を使用した。
【0164】
2. 方法
マウスを3日間通常どおり飼育した後、マウスを体重によって4群、すなわち正常群、モデル群、対照群及び投与群に分けた。投与群のマウスには毎朝、組成物1の溶液を体重1kg当たり13.3mLの用量で、更には毎日午後にマイトマイシンを体重1kg当たり1mLの用量で胃内投与した。対照群のマウスには毎朝、医療用滅菌水を体重1kg当たり13.3mLの用量で、更には毎日午後にマイトマイシンを体重1kg当たり1mLの用量で胃内投与した。さらに、モデル群のマウスには毎日午後にマイトマイシンを体重1kg当たり1mLの用量で胃内投与し、正常群のマウスは通常どおり飼育した。投与は5日間続けた。最後の投与の後、血液サンプルを採取して、各群のマウスにおける赤血球数及びヘモグロビン濃度を測定した。結果を表9.2に示した。
【0165】
【表17】
【0166】
表9.2のデータから、モデル群のマウスにおける赤血球数及びヘモグロビン濃度はブランク対照群と明らかな差があることが示され、このことから貧血のマウスモデルの確立に成功したことが示唆された。投与群における赤血球数及びヘモグロビン濃度はどちらも対照群及びモデル群よりも大きく、その差は有意なものであった。すなわち、組成物1はマウスにおいて赤血球の生成を促し、また血中のヘモグロビン濃度を増大させることで、鉄欠乏性貧血を或る程度治療することができる。
【0167】
(III).女性における月経障害の改善に対する実験
1. 身長160cm及び体重50kgの35歳の女性であるボランティア1は結婚して子供もいた。乳房腫脹痛は月経の直前に深刻なものとなり、月経サイクルは乱れ、月経困難症を伴い、月経の間は情緒が不安定であった。この状況に対処するために、これまで漢方薬を服用していたが、効果は良好とはいえなかった。彼女には心血管疾患の病歴はなかった。3ヶ月間、朝晩の1日2回それぞれ200mLの組成物1の溶液を服用した。組成物1の投与の3週目に月経が来て、経血量は中程度であった。さらに、下腹部の一時的な張り以外にはっきりした月経困難症の報告はなく、月経前の乳房腫脹痛は完全になくなった。特に健康状態は良好であり、全身が弛緩していた。また月経の間、情緒は安定しており、何ら他の不快症状はなかった。3ヶ月後、月経サイクルは28日と正常な状態を保っていた。
【0168】
2. 身長170cm及び体重60kgの27歳の女性であるボランティア2は未婚で子供もいなかった。彼女には慢性下痢の病歴があり、月経サイクルは不規則であり、大体推定日の前後3日に起こっていた。毎回月経困難症が起こり、月経は大体1週間続いた。月経前1週間から月経が終わるまで、朝晩の1日2回、200mLの組成物1の溶液を服用した。このようにして組成物を3ヶ月間服用した。投与期間中、放屁が頻繁になったが、悪臭はなく、他の不快症状も感じていなかった。投与の最初の1ヶ月目、推定日の3日後に月経が来た。その後、月経サイクルは28日と正常であった。組成物1の投与以降、月経の不快症状及び月経困難症は明らかに軽減した。
【0169】
3. 35歳の女性であるボランティア3は結婚していたが、子供はいなかった。ここ2年、はっきりと体重が増加していた。月経停止が1年続いていた。彼女は多くの所から医学的助言を求め、内分泌障害との関連性を指摘されていた。薬物療法の効果は殆どなかった。3ヶ月間、毎日3回の食事の前に200mLの組成物1の溶液を服用した。2ヶ月後、月経が起こり、不快症状は感じられなかった。
【0170】
この実験結果から、組成物1の月経障害を改善する効果が証明された。組成物1の投与を続けた際に、正常な月経サイクルが保たれていれば、組成物1の用量を徐々に減らすことができる。月経サイクルの改善に従って組成物1の用量を徐々に減らすことができる。また、投与を適切に中断し、中断時間を徐々に延ばすことができる。こうすることで正常な月経サイクルを確保することができる。後に必要に応じて投与を止めても又は断続的に実施してもよい。
【0171】
VIII.抗疲労製品の作製における本発明の多機能組成物の使用
(I).正常マウスにおける負荷遊泳に対する組成物の効果
1. 動物及び材料
8週齢、体重20±2gの雌性ICRマウスをBeijing HFK Bioscience Co., Ltd.から購入した。
【0172】
本実施例にて調製した組成物1の溶液〜組成物7の溶液を使用した。
【0173】
2. 方法
マウスを3日間通常どおり飼育した後、マウスを体重によって11群、すなわちブランク対照群、投与群1〜投与群7及び陰性対照群1〜陰性対照群3にランダムに分けた。投与群1〜投与群7のマウスにはそれぞれ、組成物1の溶液〜組成物7の溶液を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与し、ブランク対照群のマウスには医療用滅菌水を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。陰性対照群1〜陰性対照群3のマウスにはそれぞれ、トレハロースの溶液(0.15g/mL)、バリダマイシンの溶液(0.3mg/mL)及び藻多糖類の溶液(0.15g/mL)を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。投与の20分後、2gの重りを各マウスの尾に固定し、マウスをプールに入れ、負荷をかけながら泳がせた。浴温は25±2℃であり、深さは30cmを超えるものとした。負荷遊泳における生存時間を記録した(マウスの全部位が10秒間水面下にあった場合に、マウスを水面に浮上することができないとみなした)。結果を表10.1に示した。
【0174】
【表18】
【0175】
表10.1のデータから、陰性対照群1〜陰性対照群3のマウスの負荷遊泳における生存時間はブランク対照群と同等であったことが示され、このことから本組成物に由来する単一成分のみの使用では負荷遊泳の時間は延びず、マウスの体力を向上させる効果がないことが示唆された。投与群1又は投与群2及び投与群4〜投与7はブランク対照群よりも負荷遊泳の時間が長く、その差は有意なものであった。すなわち、組成物1又は組成物2及び組成物4〜組成物7は全て、マウスの体力を向上させることで、マウスは負荷を受けながらより長時間泳ぐことができる。投与群3における負荷遊泳の時間はブランク対照群又は陰性対照群1〜陰性対照群3と差はなく、このことから組成物3は酵素阻害剤の含量が少なすぎるためにマウスの体力を向上させる又は疲労に耐える役割を果たすことができないことが示唆された。
【0176】
投与群1又は投与群2及び投与群4〜投与群7は陰性対照群1〜陰性対照群3よりも負荷遊泳の時間が長く、このことから組成物1又は組成物2及び組成物4〜組成物7は実際に、負荷遊泳の時間を延ばし、体力を向上させるとともに疲労に耐える役割を果たすことができることが示唆された。これらの組成物は投与の20分後〜30分後に効果が現れ、疲労に耐える効能を達成した。
【0177】
投与群1と投与群6との比較にて、トレハロースを含む投与群1は藻多糖類を含む投与群6よりも負荷遊泳の時間が長かったことを容易に見出すことができ、このことから両物質とも海藻由来の物質であるが、トレハロースは藻多糖類よりも体力の改善及び抗疲労の効果が良好であることが示された。一方、投与群1と投与群4又は投与群5との比較から、3つ全てが酵素阻害剤ではあるが、バリダマイシンを含む投与群
1はヘキサコナゾールを含む投与群4及びトレハゾリンを含む投与群5よりも負荷遊泳の時間が長いことが明らかとなった。この差はこの酵素に対するバリダマイシンの阻害効果がより良好であることに起因し得て、より多くの海藻由来の物質が小腸に吸収されることで、体力を向上させるとともに疲労に耐えた。これに対して、ヘキサコナゾールを含む組成物4及びトレハゾリンを含む組成物5については、トレハロースの一部が胃腸管にて分解され得るために、抗疲労効果はバリダマイシンの投与を伴う投与群1よりも低かった。
【0178】
投与群1〜投与群3の間でのデータ比較から、バリダマイシンに対するトレハロースのpbw(重量部)比を増大させることで、体力の改善及び抗疲労の効果がゼロになるまで徐々に低減することが示された。かかる事実から酵素阻害剤の濃度を下げることで、海藻由来の物質の分解を防ぐ組成物の能力が徐々に低下し、それにより体力の改善及び抗疲労の効果がますます悪化することが示唆された。バリダマイシンに対するトレハロースのpbw比が200000:1に達すると、組成物は体力の改善及び抗疲労の効果がなくなり、このことから酵素阻害剤が占める質量パーセントは本発明の組成物の0.001%未満とはならないことが示唆された。
【0179】
(II).正常マウスにおける
抗疲労効果
1. 動物及び材料
8週齢、体重20±2gの雌性ICRマウスをBeijing HFK Bioscience Co., Ltd.から購入した。
【0180】
組成物の溶液:本実施例における組成物1の溶液を使用した。
【0181】
2. 方法
マウスを3日間通常どおり飼育した後、マウスを体重によって3群、すなわち正常群、対照群及び投与群にランダムに分けた。投与群のマウスには組成物1の溶液を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与した。対照群のマウスには医療用滅菌水を体重1kg当たり13.3mLの用量で胃内投与し、正常群のマウスは通常どおり飼育した。投与の20分後、マウスを水浴に入れ、10分間自由に泳がせた。浴温は25±2℃であり、深さは30cmを超えるものとした。マウスの眼球を摘出し、血液を採取して、血中の尿素及び乳酸の濃度を生化学分析器によって測定した。結果を表10.2に示した。
【0182】
【表19】
【0183】
表10.2のデータから、投与群における尿素及び乳酸の濃度はどちらも対照群又はモデル群よりも低く、その差は有意なものであったことが示された。すなわち、組成物1は運動したマウスの血中の尿素及び乳酸のレベルを著しく低減させ、マウスにおける体力を向上させることで、抗疲労効果をもたらすことができる。
【0184】
(III).抗疲労に対するヒトの実験
1. 身長160cm及び体重50kgの35歳の女性であるボランティアAは結婚して子供もいた。通常、毎晩午後10時に床につき、睡眠は良好であった。本実験では、大体午後10時に200mLの組成物1の溶液を服用した後、大体0:00まで気晴らしにネットサーフィンを行った。はっきりとした眠気はなく、頭は冴えていた。午前1時に眠りにつき、通常どおり寝付くことができた。翌朝午前7時に起き、疲労感なく通常どおり仕事した。この製品の投与の間、被験者には何ら他の不快症状はなかった。
【0185】
2. 身長170cm及び体重75kgの41歳の男性であるボランティアB。彼はよく遅くまで仕事をしていたが、コーヒーを飲むことで動悸を起こすようであった。午後12時に200mLの組成物1の溶液を服用し、その後翌朝の午前4時まで仕事した。この期間、はっきりとした眠気はなく、頭は冴えていた。翌朝午前6時に起き、同用量の溶液を服用した。このように溶液を3日間服用した。投与期間中、1日1時間〜3時間しか眠らなかったが、依然何ら眠気、目眩及び虚弱の問題なく、翌日通常どおり仕事をし、会議に出ることができた。実験中、被験者には何ら他の不快症状はなかった。
【0186】
3. 身長180cm及び体重85kgの55歳の男性であるボランティアC。彼はよく中国と米国との間の飛行機に乗っており、時差ボケの問題に直面しなくてはならなかった。正午に飛行機(中国発米国行きの飛行機)を降りた後、200mLの組成物1の溶液を服用した。フライトによる疲労は明らかに軽減され、通常どおり仕事し、その夜影響なく眠ることができた。このボランティアは翌日には通常のスケジュールに戻した。
【0187】
この実験結果から組成物1の対疲労効果が証明された。かかる組成物はヒトに体力を迅速に回復させ、頭が冴えたままにし、通常のスケジュールを維持するのを助けることができる。本発明の組成物は中毒性がなかった。その投与は悪性応答なくどの時点でも止めることができる。必要に応じて服用することができる。
【0188】
本実施例における実験から、本発明の組成物には血糖を下げ、腸を弛緩させるとともに消化管をきれいにし、体重を減少させ、美を保つとともに若さを維持し、骨粗鬆症を改善し、睡眠を改善させ、月経障害を改善し、疲労に耐えるという顕著な効果があることが示された。本発明の組成物は迅速に効果が現れ、毒性及び副作用なく安全であった。本発明の組成物は経口投与用に様々な配合物へと加工し、口当たりをよくすることができる。本発明の組成物が丸薬、カプセル剤、又は他の固形経口配合物の形態である場合、患者は水又は飲料とともに直接服用することができ、本発明の組成物が顆粒剤、飲用固形物又は粉末の形態である場合、投与前に水若しくは飲料に溶解させるか、又は水若しくは飲料とともに直接服用することができ、本発明の組成物が経口液剤である場合、直接服用するか、又は投与前に水若しくは飲料で希釈することができる。本発明の組成物は患者にとって便利なものであった。