特許第6185192号(P6185192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185192
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】アミノチアジン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 513/04 20060101AFI20170814BHJP
   A61K 31/542 20060101ALI20170814BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   C07D513/04 375
   C07D513/04CSP
   A61K31/542
   A61P25/28
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-554440(P2016-554440)
(86)(22)【出願日】2015年3月5日
(65)【公表番号】特表2017-506658(P2017-506658A)
(43)【公表日】2017年3月9日
(86)【国際出願番号】US2015018909
(87)【国際公開番号】WO2015138208
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2016年8月26日
(31)【優先権主張番号】61/953,206
(32)【優先日】2014年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】フィオナ・ミッチェル・マーティン
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/091016(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/151832(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/013076(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/147762(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/147763(WO,A1)
【文献】 特表2013−531645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 513/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式の化合物:
【化1】
またはその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
N−[2−[(4aR,7aR)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−ピリジル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドである、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項3】
N−[2−[(4aR,7aR)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−ピリジル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドである、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
アルツハイマー病治療剤の製造における請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用
【請求項5】
求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物
【請求項6】
さらに1種以上の薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
アルツハイマー病の治療のための請求項5または6に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規アミノチアジン化合物、その化合物を含む医薬組成物、生理学的障害を治療するためにその化合物を使用する方法、ならびにその化合物の合成に有用な中間体およびプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、アルツハイマー病ならびにアミロイドβ(Aベータ)ペプチド、神経毒性およびアミロイド前駆体タンパク質(APP)の高度に凝集したペプチド断片に関与する他の疾患および障害の治療の分野である。アルツハイマー病は世界中で数百万人の患者に影響を及ぼす破壊的な神経変性障害である。患者に一時的にのみ対症効果をもたらす市販の現在承認されている薬剤を考慮して、アルツハイマー病の治療において重大なまだ満たされていない必要性が存在している。
【0003】
アルツハイマー病は、脳内のAベータの生成、凝集および沈殿によって特徴付けられる。β−セクレターゼ(β−部位アミロイド前駆体タンパク質切断酵素;BACE)の完全または部分的な阻害は、マウスモデルにおいてプラークに関連したおよびプラーク依存性の病変に対して有意な効果を有することが示されており、Aベータペプチドレベルのさらに少しの低下が、プラーク負荷およびシナプス欠損の長期間の有意な減少を生じ得るので、特にアルツハイマー病の治療において有意な治療的有用性を提供することを示唆している。
【0004】
特許文献1は、アルツハイマー型認知症などの、Aベータペプチドによって引き起こされる神経変性疾患を治療するのに有用なBACE阻害剤であるイソチオ尿素誘導体を開示している。特許文献2は、BACE阻害活性を有する縮合アミノジヒドロチアジン誘導体を開示しており、それはアルツハイマー型認知症などの、Aベータペプチドによって引き起こされる神経変性疾患について有用な治療剤としてさらに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/013076号
【特許文献2】米国特許第8,158,620号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
中枢神経系(CNS)に浸透する有効なBACE阻害剤は、アルツハイマー病などのAベータペプチド媒介性障害のための治療を提供することが望まれる。本発明はBACEの阻害剤である特定の新規化合物を提供する。さらに、本発明は、CNSに浸透し、改善された副作用プロファイル、および改善された物理化学的特性、例えば改善された溶解度を有する特定の新規化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、式Iの化合物:
【化1】
またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0008】
本発明はまた、アルツハイマー病を治療する方法であって、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を、このような治療を必要とする患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0009】
本発明はさらに、患者における軽度認識障害のアルツハイマー病への進行を予防する方法であって、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を、このような治療を必要とする患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、患者におけるBACEを阻害する方法であって、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を、このような治療を必要とする患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0011】
本発明はまた、アミロイド前駆体タンパク質のBACE媒介性切断を阻害する方法であって、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を、このような治療を必要とする患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0012】
本発明はさらに、Aベータペプチドの生成を阻害する方法であって、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を、このような治療を必要とする患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、療法に使用するための式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。加えて、本発明は、アルツハイマー病の治療に使用するための式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。本発明は、軽度認識障害のアルツハイマー病への進行の予防に使用するための式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。なおさらに、本発明は、アルツハイマー病を治療するための医薬を製造するための、式Iの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用を提供する。本発明はまた、軽度認識障害のアルツハイマー病への進行を予防するための医薬を製造するための、式Iの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の使用を提供する。
【0014】
本発明はさらに、1種以上の薬学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤と共に、式Iの化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含む、医薬組成物を提供する。特定の実施形態において、組成物はさらに、1種以上の他の治療剤を含む。本発明はまた、式Iの化合物を合成するための新規中間体およびプロセスを包含する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
「軽度認識障害からアルツハイマー病への進行の予防」という用語は、患者における軽度認識障害からアルツハイマー病への進行を遅延、停止または反転することを含む。
【0016】
本明細書で使用される場合、「治療する」または「治療すること」という用語は、既存の症状または障害の進行または重症度を抑制、遅延、停止、または反転することを含む。
【0017】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、ヒトを指す。
【0018】
「Aベータペプチドの産生の阻害」という用語は、患者におけるAベータペプチドのインビボレベルの減少を意味すると解釈される。
【0019】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、患者へ単回または複数回投与すると、診断または治療下の患者に所望の効果を提供する、本発明の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の量または用量を指す。
【0020】
有効量は、公知の技術の使用によって、および同様の条件下で得られた結果を観察することによって、当業者としての担当医によって容易に決定され得る。患者についての有効量を決定する際に、限定されないが、患者の種;その大きさ、年齢および全体的な健康;関与する特定の疾患または障害;疾患または障害の関与の程度または重症度;個々の患者の反応;投与される特定の化合物;投与様式;投与される製剤のバイオアベイラビリティ特性;選択される投与レジメン;併用薬の使用;および他の関連状況を含む、複数の要因が担当医によって決定される。
【0021】
本発明の化合物は、広い投与量範囲にわたり全体的に効果がある。例えば、1日当たりの投薬は、通常、約0.01〜約20mg/kg体重の範囲内である。一部の場合、上述の範囲の下限値以下の投薬レベルが十分以上であってもよく、一方、他の場合、さらに多い用量が許容可能な副作用で利用されてもよく、したがって、上記の投薬範囲は本発明の範囲を限定することを決して意図しているわけではない。
【0022】
本発明の化合物は、好ましくは、経口および非経口経路を含む、生物学的に利用可能な化合物を生じる、任意の経路によって投与される医薬組成物として製剤化される。最も好ましくは、このような組成物は経口投与用である。このような医薬組成物およびそれを調製するためのプロセスは当該分野において周知である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(D.B.Troy編、第21版、Lippincott、Williams&Wilkins、2006)を参照のこと)。
【0023】
式Iの化合物は特に本発明の治療方法に有用であるが、特定の基、置換基、および構造が式Iの化合物にとって好ましい。以下の段落は、このような好ましい基、置換基、および構造を記載している。これらの選択は本発明の治療方法および新規化合物の両方に適用可能であることは理解されるであろう。
【0024】
cis構造における以下の式の化合物:
【化2】
またはその薬学的に許容可能な塩が好ましい。
【0025】
N−[2−[(4aR,7aR)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−ピリジル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドまたはその薬学的に許容可能な塩がさらに好ましい。
【0026】
N−[2−[(4aR,7aR)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−ピリジル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドが特に好ましい。
【0027】
当業者は、本発明の化合物が、下記のスキームAに示されるように2つのキラル中心を含有するコアから構成されることを理解するであろう。
【化3】
【0028】
本発明は、前記化合物の全ての個々の光学異性体およびジアステレオマー、ならびにラセミ体を含む光学異性体の混合物を意図するが、スキームAに例示されるように1および2で標識した炭素原子において絶対配置である化合物が本発明の好ましい化合物である。
【0029】
当業者は、本発明の化合物がスキームBに示されるように互変異性型で存在し得ることは理解するであろう。この適用において本発明の化合物の特定の互変異性体の1つに対して任意の参照が与えられる場合、互変異性型およびその全ての混合物の両方を包含することが理解される。
【化4】
【0030】
特定の立体化学中心は明確さの目的のために特定されていないままであり、調製例および実施例の教示に限定することを意図しているわけでは決してない。さらに、個々の異性体、光学異性体、およびジアステレオマーは、選択的結晶化技術またはキラルクロマトグラフィーなどの方法によって式Iの化合物の合成の任意の簡便な点で当業者により分離または分割されてもよい(例えば、J.Jacquesら、「Enantiomers,Racemates,and Resolutions」、John Wiley and Sons,Inc.、1981、およびE.L.Eliel and S.H.Wilen、「Stereochemistry of Organic Compounds」、Wiley−Interscience、1994を参照のこと)。「異性体1」および「異性体2」の指定は、最初および次にそれぞれキラルクロマトグラフィーから溶出する化合物を指し、キラルクロマトグラフィーが合成の初期に開始される場合、同じ指定がその後の中間体および実施例に適用される。
【0031】
さらに、以下の調製例に記載される特定の中間体は1種以上の窒素保護基を含有してもよい。可変保護基は、実施される特定の反応条件および特定の変換に応じて各出現において同じであってもよく、異なっていてもよい。保護および脱保護条件は当業者に周知であり、文献に記載されている(例えば、Peter G.M.Wuts and Theodora W.Greene、John Wiley and Sons,Inc.2007による「Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis」、第4版を参照のこと)。
【0032】
特定の略語は以下の通り定義される:「APP」はアミロイド前駆体タンパク質を指し、「DMEM」はダルベッコ改変イーグル培地を指し、「DMSO」はジメチルスルホキシドを指し、「F12」はHam’sF12培地を指し、「FBS」はウシ胎仔血清を指し、「FRET」は蛍光共鳴エネルギー移動を指し、「HB−PS」はHEPES緩衝化生理食塩液を指し、「HEK」はヒト胚腎臓を指し、「HEPES」は2―[4―(2―ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル]エタンスルホン酸を指し、「HPLC」は高速液体クロマトグラフィーを指し、「IC50」は薬剤についての可能な最大阻害反応の50%を生じるその薬剤の濃度を指し、「JohnPhos」はditert−ブチル−(2−フェニルフェニル)ホスファンを指し、「min」は分を指し、「MTBE」はメチルtert−ブチルエーテルを指し、「PDAPP」は血小板由来アミロイド前駆体タンパク質を指し、「RFU」は相対的な蛍光ユニットを指し、「SFC」は超臨界流体クロマトグラフィーを指し、「SEM」は平均値の標準誤差を指す。
【0033】
本発明の化合物、またはその塩は、当業者に公知の種々の手順によって調製でき、それらのいくつかは、以下の調製例、および実施例に例示される。記載される経路の各々についての特定の合成工程は、式Iの化合物、またはその塩を調製するために異なる手段で組み合わされてもよい。以下の調製例および実施例における各工程の生成物は、抽出、蒸発、沈殿、クロマトグラフィー、濾過、粉砕、および結晶化を含む、当該分野において周知の従来の方法によって回収できる。試薬および出発物質は当業者に容易に利用可能である。
【0034】
任意の工程において、塩酸塩などの式Iの化合物の薬学的に許容可能な塩は、標準条件下で適切な溶媒中の適切な薬学的に許容可能な酸との式Iの適切な遊離塩基の反応により形成できる。さらに、このような塩の形成は窒素保護基の脱保護と同時に起こり得る。このような塩の形成は当該分野において周知であり、理解されている。例えば、Gould,P.L.、「Salt selection for basic drugs」、International Journal of Pharmaceutics、33:201−217(1986);Bastin,R.J.ら、「Salt Selection and Optimization Procedures for Pharmaceutical New Chemical Entities」、Organic Process Research and Development、4:427−435(2000);およびBerge,S.M.ら、「Pharmaceutical Salts」、Journal of Pharmaceutical Sciences、66:1−19、(1977)を参照のこと。
【0035】
以下の調製例および実施例は本発明をさらに例示する。
【実施例】
【0036】
調製例1
(tert−ブトキシカルボニルアミノ)tert−ブチルカルボネート
【化5】
ヒドロキシルアミン塩酸塩(550.0g、7.9mol)、水(5.5L)およびヘプタン/MTBE(5:1、5.5L)の溶液の混合物を−5℃に冷却する。ヘプタン/MTBE(5:1、1.1L)中の溶液としてジ−t−ブチルジカルボネート(3.55Kg、16.3mol)、トリエチルアミン(1.67Kg、16.5mol)の予め冷却した(−5℃)溶液を2時間にわたってゆっくり加える。反応物を−5℃にて1時間撹拌し、次いで室温に加温し、一晩撹拌する。層を分離し、有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液(2L)および飽和塩化ナトリウム水溶液(1L)で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して油を得、それを白色固体に結晶化する。固体を氷水浴中でヘプタン(1L)で撹拌し、濾過して標題生成物(1360.2g、73%)を得る。H NMR(d6−DMSO)δ10.83−10.58(m,1H),1.43(d,J=11.3Hz,18H)。
【0037】
調製例2
[tert−ブトキシカルボニル−[(4−メトキシフェニル)メチル]アミノ]tert−ブチルカルボネート
【化6】
窒素下で、20Lの反応器に、(tert−ブトキシカルボニルアミノ)tert−ブチルカルボネート(812.9g、3.48mol)、ジメチルホルムアミド(4.4L)、炭酸カリウム(626.5g、4.52mol)および1−(クロロメチル)−4−メトキシ−ベンゼン(462mL、2.56mol)を入れる。混合物を40℃にて一晩撹拌する。H NMR分析は不完全な反応を示す。追加の炭酸カリウム(626.5g、4.52mol)を加え、混合物を40℃にて撹拌する。48時間後のH NMR分析は、反応が不完全なままであることを示す。追加の炭酸カリウム(482g、3.49mol)を加え、混合物を40℃にて撹拌する。一晩反応後のH NMR分析は、出発物質が残存していない完全な反応を示す。水(5L)およびMTBE(5L)を加え、層を分離する。有機層を水(3×3L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して標題化合物(1.21Kg、98%)を得る。H NMR(d6−DMSO)δ7.20(d,J=8.3Hz,2H),6.91(d,J=8.3Hz,2H),3.73(s,2H),3.35(s,3H),1.41(s,18H)。
【0038】
調製例3
N−[(4−メトキシフェニル)メチル]ヒドロキシルアミン塩酸塩
【化7】
[tert−ブトキシカルボニル−[(4−メトキシフェニル)メチル]アミノ]tert−ブチルカルボネート(1.125Kg、3.1mol)を1,4−ジオキサン(2.8L)に溶解し、塩化水素溶液(ジオキサン中に4M、3.15L、12.4mol)を1時間30分にわたって滴下して加える。溶液を室温にて一晩撹拌する。標題生成物を白色固体(488.0g、81%)として濾過により回収する。H NMR(d6−DMSO)δ11.71(s,2H),10.94(s,1H),7.44(d,J=8.8Hz,2H),6.95(d,J=8.8Hz,2H),4.22(s,2H),3.75(s,3H)。
【0039】
調製例4
2−(アリル(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)酢酸
【化8】
0℃にて炭酸カリウム(100g、724mmol)、ヨウ化ナトリウム(110g、727mmol)、ジメチルホルムアミド(300mL)、トリエチルアミン(200mL、1.44mol)および2−プロペン−1−アミン(24g、426mmol)を含有する丸底フラスコに、ジメチルホルムアミド(40mL)中のエチル2−ブロモアセテート(60.2g、360mmol)の溶液を滴下して加える。反応物を周囲温度に加温し、14時間撹拌する。固体を濾過により除去し、ジエチルエーテルで洗浄する。飽和塩化ナトリウム水溶液(1L)を濾液に加え、層を分離する。水層をジエチルエーテルで抽出する。有機相を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去して残渣を得る。エタノール(500ml)中の粗残渣およびトリエチルアミン(40g、395mmol)の0℃の溶液に、ジ−t−ブチルジカルボネート(105g、467mmol)を一度に加える。反応物を室温に加温し、14時間撹拌する。反応物を減圧下で濃縮し、水(200mL)および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)で希釈し、ジエチルエーテルで抽出する。有機相を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して残渣を得る。この残渣をメタノール(200mL)中に取り、2Nの水酸化ナトリウム(500mL)を加える。得られた溶液を室温にて3時間撹拌する。減圧下で体積を約200mlまで減少させ、得られた溶液を塩酸(12N)を使用してpH4に酸性化する。得られた薄い橙色の固体を濾過により回収し、水で洗浄し、乾燥させて標題化合物(50g、65%)を得る。H NMR(CDCl)2つの回転異性体(50:50)の混合物δ1.43,1.45(s,9H),3.86−3.99(m,4H),5.10−5.20(m,2H),5.71−5.83(m,1H)。
【0040】
調製例5
tert−ブチルN−アリル−N−[2−(メトキシ(メチル)アミノ)−2−オキソ−エチル]カルバメート
【化9】
2−(アリル(tert−ブトキシカルボニル)アミノ)酢酸(49.6g、156mmol)を0℃にてテトラヒドロフラン(600mL)に加え、続いてトリエチルアミン(36.3g、359mmol)および塩化ピバロイル(31g、353mmol)を加える。反応物を室温にて3時間撹拌し、次いで0℃に冷却する。次いでN,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(28g、283mmol)、トリエチルアミン(33mL、237mmol)およびテトラヒドロフラン(400mL)を加える。氷浴を取り除き、反応物を室温にて3時間撹拌し、減圧下で濃縮する。得られた固体を水に溶解し、酢酸エチルで抽出する。有機相を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去して残渣を得る。残渣を、ヘキサン中のアセトンの0〜50%勾配で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物(32g、54%)を得る。H NMR(CDCl)2つの回転異性体(60:40)の混合物δ1.42,1.44(s,9H),3.16,3.17(s,3H),3.66,3.69(s,3H),3.88−3.98(m,2H),4.01,4.11(s,2H),5.10−5.18(m,2H),5.73−5.85(m,1H)。
【0041】
調製例6
4−クロロ−N−メトキシ−N−メチル−ピリジン−2−カルボキサミド
【化10】
4−クロロピリジン−2−カルボン酸(40.9g、259.59mmol)を、撹拌し、防湿しながら(シリカゲル乾燥チューブを使用する)、無水ジクロロメタン(700mL)に懸濁する。得られた溶液を0℃に冷却し、N−メチルモルホリン(129mL、1.17mol)、N,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(35.45g、363.43mmol)を加え、続いて1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(69.67g、363.43mmol)を少しずつ加える。この添加を完了した後、反応物を室温に加温し、その温度で一晩撹拌する。水(600mL)を加え、層を分離する。水層をジクロロメタン(300mL)で2回再抽出する。有機層を合わせ、ブライン(400mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を減圧下で除去してダーク油を得る。これを、イソヘキサン中の0〜50%の酢酸エチルの勾配を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物(23.7g、46%)を得る。ES/MS(m/e)201/203。
【0042】
調製例7
1−(4−クロロピリジン−2−イル)エタノン
【化11】
メチルマグネシウムブロミド(ジエチルエーテル中に3M)(59mL;177.20mmol)を窒素下で撹拌しながら無水テトラヒドロフラン(150mL)に加える。得られた溶液を−15℃に冷却し、無水テトラヒドロフラン(150mL)中の4−クロロ−N−メトキシ−N−メチル−ピリジン−2−カルボキサミド(23.7g 1.00 118.13mmol)の溶液を、0〜−15℃の温度を維持しながら20分にわたって滴下して加える。この添加が完了した後、反応物を45分間、0℃にて撹拌する。次いで反応物を−15℃に冷却し、水(250mL)を注意深く滴下して加えることによってゆっくりクエンチする。飽和塩化アンモニウム水溶液(250mL)およびジエチルエーテル(200mL)を加える。層を分離し、水層をジエチルエーテル(200mL)で2回再抽出する。合わせた有機抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去して、黄色の油(18.6g)として標題化合物を得る。ES/MS156/158(M+1)。
【0043】
調製例8
2−ブロモ−1−(4−クロロ−2−ピリジル)エタノン
【化12】
1−(4−クロロ−2−ピリジル)エタノン(24.4g、156.83mmol)を撹拌しながら氷酢酸(224mL)に溶解する。臭化水素(酢酸中に32%)(34mL)の溶液を加え、続いて臭素(8.2mL、159.97mmol)をゆっくり加える。得られた溶液を75℃にて3.5時間加熱し、次いで氷浴中で即座に冷却する。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1L)を、撹拌しながら冷やした反応混合物にゆっくり加え、続いて固体の炭酸水素ナトリウムによって溶液のpHを7に調整する。次いで酢酸エチル(400mL)を加え、層を分離する。水層を酢酸エチル(3×400mL)で再抽出する。有機抽出物を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して茶色の結晶性固体を得る。単離した固体をイソヘキサンで粉砕し、真空下でさらに乾燥させて標題化合物(21g)を得る。イソヘキサン中に残存する生成物を、イソヘキサン中の0〜40%のジクロロメタン勾配を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより回収して、合わせた収率(26.5g、72%)を与える追加の5.5gの標題生成物を得る。ES/MS(m/e)234/236/238(M+1)。
【0044】
調製例9
1−(4−クロロ−2−ピリジル)−2−(ジアリルアミノ)エタノン
【化13】
N−アリルプロパ−2−エン−1−アミン(15.8g、158.2mmol)を、撹拌しながら窒素下で無水テトラヒドロフラン(283mL)に溶解する。トリエチルアミン(79mL)を加え、得られた溶液を0℃に冷却する。無水テトラヒドロフラン(126mL)中の2−ブロモ−1−(4−クロロ−2−ピリジル)エタノン(26.5g、113.0mmol)の溶液を滴下して加える(この添加の間、反応物の色は無色から黄色、橙色、次いで最終的に赤色に変化する)。1.5時間後、水(500mL)を加え、溶媒を減圧下で除去する。得られた水溶液を酢酸エチル(5×250mL)で抽出する。合わせた有機抽出物に無水硫酸ナトリウムを加える。得られた懸濁液をシリカゲルおよび珪藻土の薄いパッドで濾過する。パッドを酢酸エチル(1L)で洗浄する。次いで濾液を減圧下で濃縮して標題化合物(23.6g)を得る。ES/MS(m/e)251/253 (M+1)。この中間体は安定性に限界があり、保存せず、さらに精製せずに直接使用する。
【0045】
調製例10
5−アリル−6a−(4−クロロ−2−ピリジル)−1−[(4−メトキシフェニル)メチル]−3,3a,4,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]イソオキサゾール
【化14】
1−(4−クロロ−2−ピリジル)−2−(ジアリルアミノ)エタノン(23.6g、94.4mmol)を窒素下で撹拌しながら無水トルエン(343mL)に溶解する。N−[(4−メトキシフェニル)メチル]ヒドロキシルアミン塩酸塩(27.9g、146.9mmol)、トリエチルアミン(23.6mL、169.5mmol)、およびチタン(IV)エトキシド(35.4mL、38.7g、169.5mmol)を連続して加える。得られた反応混合物を窒素下で70℃にて加熱する。8時間後、反応物を冷却し、室温にて週末にわたって撹拌する。次いでジエチルエーテル(1l)および水(500mL)を加える。沈殿した固体を珪藻土のパッドで濾過する。そのパッドをジエチルエーテル(500mL)で完全に洗浄する。相を分離し、水相をジエチルエーテル(300mL)で再抽出する。合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過して茶色の油を得る。これを、クロロホルム中の0〜20%勾配のテトラヒドロフランを使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、薄茶色の油(17.5g、40%)として標題化合物を得る。ES/MS(m/e)386/388。
【0046】
調製例11
tert−ブチル6a−(4−クロロ−2−ピリジル)−1−[(4−メトキシフェニル)メチル]−3,3a,4,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]イソオキサゾール−5−カルボキシレート
【化15】
5−アリル−6a−(4−クロロ−2−ピリジル)−1−[(4−メトキシフェニル)メチル]−3,3a,4,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]イソオキサゾール(17.5g、45.35mmol)を窒素下で撹拌しながら無水ジクロロメタン(230mL)に溶解する。N,N−ジメチルバルビツール酸(38.24g、244.89mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィノ)パラジウム(5.24g、4.53mmol)を窒素ストリーム下で加え、窒素を数分間溶液に通して泡立てる。次いで得られた溶液を窒素下で30℃にて2時間加熱する。次いで反応物を室温に冷却する。ジ−t−ブチルジカルボネート(10.10g、46.26mmol)およびトリエチルアミン(7mL、52.15mmol)を加え、得られた溶液を室温にて2時間撹拌する。反応混合物を減圧下で濃縮して琥珀色の半固体を得、次いでそれを酢酸エチル(500mL)に再溶解する。得られた溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2×250mL)で洗浄する。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮してダーク油を得る。その油を、イソヘキサン勾配において0〜70%の酢酸エチルを使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、黄色の泡状物(14.8g、73%)として標題化合物を得る。ES/MS(m/e)446(M+1)。
【0047】
調製例12
tert−ブチルN−アリル−N−[2−(4−クロロ−2−ピリジル)−2−オキソ−エチル]カルバメート
【化16】
−10℃(メタノール−氷浴)にて窒素下でテトラヒドロフラン(60mL)の撹拌溶液にイソプロピルマグネシウムクロリドリチウムクロリド錯体溶液(56.84mL、73.89mmol、テトラヒドロフラン中に1.3M)を加える。テトラヒドロフラン(60mL)中の2−ブロモ−4−クロロ−ピリジン(9.48g、49.26mmol)の溶液を、添加の間に温度が0℃を超えないことを確実にしながら滴下して加える。40分後、溶液は透明な明るい橙色になり、テトラヒドロフラン(27mL)中のtert−ブチルN−アリル−N−[2−(メトキシ(メチル)アミノ)−2−オキソ−エチル]カルバメート(19.09g、73.89mmol)を、温度が0℃を超えないことを確実にしながら再び加える。添加が完了した後、得られた茶色の溶液を次いで室温に加温する。2時間後、飽和塩化アンモニウム水溶液、続いて少量の水に添加によって反応をクエンチする。酢酸エチルを加え、層を分離する。水層を酢酸エチル(4×)で再抽出する。有機層を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して茶色の油を得る。粗生成物を、イソヘキサン中の0〜30%酢酸エチルの勾配を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、透明な淡黄色の油(10.1g、66%)として標題化合物を得る。ES/MS(m/e)333(M+23)。
【0048】
調製例13
tert−ブチル6a−(4−クロロ−2−ピリジル)−1−[(4−メトキシフェニル)メチル]−3,3a,4,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]イソオキサゾール−5−カルボキシレート
【化17】
窒素下でトルエン(230mL)中のtert−ブチルN−アリル−N−[2−(4−クロロ−2−ピリジル)−2−オキソ−エチル]カルバメート(10.10g、32.50mmol)の撹拌溶液に、N−[(4−メトキシフェニル)メチル]ヒドロキシルアミン塩酸塩(6.47g、34.12mmol)、トリエチルアミン(4.76mL、34.12mmol)およびチタン(IV)エトキシド(14.27mL、68.25mmol)を加える。得られた溶液を窒素下で70℃に加温する。3.5時間後、反応物を室温に冷却する。水および酢酸エチルを加え、得られた懸濁液を珪藻土で濾過する。珪藻土のパッドを酢酸エチルで十分に洗浄する。相を分離し、有機相をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して橙色の油を得る。その油を、イソヘキサン中の0〜25%酢酸エチル勾配を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、透明な黄色の油として標題化合物(11.72g;81%)を得る。ES/MS(m/e)446(M+1)。
【0049】
調製例14
tert−ブチル6a−(4−アミノ−2−ピリジル)−1−[(4−メトキシフェニル)メチル]−3,3a,4,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]イソオキサゾール−5−カルボキシレート
【化18】
tert−ブチル6a−(4−クロロ−2−ピリジル)−1−[(4−メトキシフェニル)メチル]−3,3a,4,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]イソオキサゾール−5−カルボキシレート(9.4g、21.1mmol)、JohnPhos(2.0g、6.3mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(3.0g、3.2mmol)、ベンゾフェノンイミン(7.4mL、42.3mmol)、およびナトリウムt−ブトキシド(6.1g、63.4mmol)をトルエン(121mL)中で一緒に加える。窒素ガス雰囲気下で液体窒素により凍結することによって、得られた混合物を完全に脱気し、その後、室温にて水浴中で真空下で溶解する。この手順を4回繰り返す。次いで窒素下で撹拌しながら反応物を1.5時間75℃にて加熱する。反応物を室温に冷却し、酢酸エチルで希釈する。得られた懸濁液を珪藻土のパッドで濾過し、そのパッドを酢酸エチルで十分に洗浄する。溶媒を蒸発させて中間体イミンを得る。これをメタノール(235mL)および酢酸ナトリウム(7.0g、84.6mmol)に再溶解し、ヒドロキシルアミン塩酸塩(5.9g、84.6mmol)を加える。得られた混合物を次いで室温にて1.5時間撹拌する。反応物を炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチし、メタノールを減圧下で除去する。残りの水層を次いで酢酸エチル(2×)で抽出する。合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して橙色の油を得る。粗生成物を、ジクロロメタン中のメタノール溶液中の0〜10%の2Mアンモニアの勾配を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、茶色の粘性物質および画分を含有する混合生成物として標題化合物を得る。混合画分を合わせ、ジクロロメタン中のメタノール溶液中の0〜5%の2Mアンモニアの勾配を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して2つのロットでさらに精製してさらに生成物を得、淡褐色の固体として合わせた収率の標題化合物(6.72g、75%)を得る。ES/MS(m/e)427(M+1)。
【0050】
調製例15
tert−ブチル6a−(4−アセトアミド−2−ピリジル)−1−[(4−メトキシフェニル)メチル]−3,3a,4,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]イソオキサゾール−5−カルボキシレート
【化19】
tert−ブチル6a−(4−アミノ−2−ピリジル)−1−[(4−メトキシフェニル)メチル]−3,3a,4,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]イソオキサゾール−5−カルボキシレート(3.06g、7.17mmol)を250mLフラスコに入れ、窒素下で撹拌しながら酢酸エチル(16mL)を加える。得られた懸濁液に、1−プロパンホスホン酸環状無水物(酢酸エチル中に≧50wt%)(11mL、17.92mmol)、トリエチルアミン(3.50mL、25.09mmol)および酢酸(616μL、10.75mmol)を加える。得られた溶液を窒素下で75℃にて加熱する。1時間後、反応物を室温に冷却する。酢酸エチルおよび飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加える。層を分離し、水相を酢酸エチル(2×)で再抽出する。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、琥珀色の泡状物(3.11g、92%)として標題生成物を得る。ES/MS(m/e)469(M+1)。
【0051】
調製例16
N−[2−(1,3,3a,4,5,6−ヘキサヒドロピロロ[3,4−e]イソオキサゾール−6a−イル)−4−ピリジル]アセトアミド
【化20】
tert−ブチル6a−(4−アセトアミド−2−ピリジル)−1−[(4−メトキシフェニル)メチル]−3,3a,4,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]イソオキサゾール−5−カルボキシレート(3.11g、6.64mmol)を撹拌しながらトリフルオロ酢酸(10mL)中に取り、得られた溶液を50℃にて加熱する。1.5時間後、反応物を冷却し、減圧下で濃縮する。得られたダーク油をジクロロメタン/メタノール溶液に再溶解し、2つのイオン交換カラム(25g)上に充填する。物質をメタノール、次いでメタノール溶液中の2Mアンモニアで溶出する。塩基性画分を減圧下で濃縮して厚い茶色の油(1.71g、88%)を得る。ES/MS(m/e)248(M+1)。
【0052】
調製例17
tert−ブチル6a−(4−アセトアミド−2−ピリジル)−3,3a,4,6−テトラヒドロ−1H−ピロロ[3,4−c]イソオキサゾール−5−カルボキシレート
【化21】
N−[2−(1,3,3a,4,5,6−ヘキサヒドロピロロ[3,4−c]イソオキサゾール−6a−イル)−4−ピリジル]アセトアミド(1.71g、5.85mmol)を撹拌しながらジクロロメタン(無水)(13mL)に溶解し、ジ−t−ブチルジカルボネート(1.28g、5.86mmol)を加え、続いてトリエチルアミン(810μL、5.81mmol)を加える。得られた溶液を室温にて1時間45分間撹拌する。反応物をジクロロメタンで希釈し、ブラインで洗浄する。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させて淡黄色の泡状物(2.05g、定量的)として標題生成物を得る。ES/MS(m/e)349(M+1)。
【0053】
調製例18
tert−ブチル6a−(4−アセトアミド−2−ピリジル)−1−(ベンゾイルカルバモチオイル)−3,3a,4,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]イソオキサゾール−5−カルボキシレート
【化22】
tert−ブチル6a−(4−アセトアミド−2−ピリジル)−3,3a,4,6−テトラヒドロ−1H−ピロロ[3,4−c]イソオキサゾール−5−カルボキシレート(2.05g、5.88mmol)を窒素下で撹拌しながら無水テトラヒドロフラン(15.0mL)中に取る。ベンゾイルイソチオシアネート(900μL、6.54mmol)を加え、反応物を室温にて窒素下で撹拌する。2時間後、反応物を減圧下で濃縮して淡黄色の油を得る。その油を、シクロヘキサン中の20〜100%の酢酸エチルの勾配を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、クリーム色の泡状物(2.14g、66%)として標題生成物を得る。ES/MS(m/e)512(M+1)。
【0054】
調製例19
tert−ブチル3−(4−アセトアミド−2−ピリジル)−3−(ベンゾイルカルバモチオイルアミノ)−4−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−カルボキシレート
【化23】
tert−ブチル6a−(4−アセトアミド−2−ピリジル)−1−(ベンゾイルカルバモチオイル)−3,3a,4,6−テトラヒドロピロロ[3,4−c]イソオキサゾール−5−カルボキシレート(2.14g、3.86mmol)をエタノール(40mL)に溶解し、大きなParr水素化ボトルに入れる。水酸化パラジウム(炭素上に20wt%、877mg)を窒素雰囲気下で加え、次いでそれをParr水素化装置に入れ、50psiにて24時間水素化する。反応懸濁液をエタノールで希釈し、珪藻土で濾過する。パッドを酢酸エチルで洗浄する。合わせた濾液を減圧下で濃縮して標題生成物(2.03g、96%)を得、それをさらに精製せずに使用する。ES/MS(m/e)514(M+1)。
【0055】
代替の調製例19
tert−ブチル3−(4−アセトアミド−2−ピリジル)−3−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−カルボキシレート(1.43g、4.08mmol)を無水テトラヒドロフラン(27mL)に溶解する。ベンゾイルイソチオシアネート(578.49μL、4.20mmol)を加え、得られた混合物を窒素下で室温にて2時間撹拌する。次いで溶媒を減圧下で除去して黄色の固形を得る。この物質を、シクロヘキサン中の0〜100%の酢酸エチル勾配を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、白色固体(2.1g、定量的)として標題化合物を得る。ES/MS(m/e)514(M+1)。
【0056】
調製例20
tert−ブチル3−(4−アセトアミド−2−ピリジル)−3−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−カルボキシレート
【化24】
tert−ブチル6a−(4−アセトアミド−2−ピリジル)−3,3a,4,6−テトラヒドロ−1H−ピロロ[3,4−c]イソオキサゾール−5−カルボキシレート(2.026g、5.82mmol)を超音波処理によりエタノール(145mL)に溶解する。得られた溶液を、85bar圧力および100%水素生成にて作動するフローハイドロゲネーター(flow hydrogenator)で70℃、3ml/分にて炭素midiカートリッジ上に支持した水酸化パラジウム(20wt%)により2回サイクルする。エタノールを減圧下で除去して、低レベルの不純物が存在する白色泡状物(1.98g)として標題化合物を得、それをさらに精製せずに使用する。ES/MA(m/e)351(M+1)。
【0057】
調製例21
ラセミ(cis)−tert−ブチル7a−(4−アセトアミド−2−ピリジル)−2−ベンズアミド−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボキシレート
【化25】
テトラヒドロフラン(80mL)中のtert−ブチル3−(4−アセトアミド−2−ピリジル)−3−(ベンゾイルカルバモチオイルアミノ)−4−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−カルボキシレート(5.16g、8.53mmol)の撹拌溶液に窒素下で1,1’−カルボニルジイミダゾール(1.84g、11.35mmol)を加える。得られた溶液を室温にて撹拌する。4時間後、さらなる1,1’−カルボニルジイミダゾール(968.52mg、5.97mmol)を加え、反応を室温にて継続する。さらに3.5時間後、中間体イミダゾール付加物が完全に形成する、ES/MS608(M+1)。次いで反応物を75℃に加温し、シリカゲル乾燥チューブを使用して水分を排除し、混合物を一晩撹拌する。反応物を室温に冷却し、酢酸エチルで希釈する。得られた溶液を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して黄色の油を得る。残渣を、イソヘキサン中の0〜100%の酢酸エチルの勾配を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、淡黄色の固体として標題化合物(3.31g;78%)を得る。ES/MS(m/e)496(M+1)。
【0058】
調製例22
ラセミ(cis)−N−[7a−(4−アセトアミド−2−ピリジル)−4a,5,6,7−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド
【化26】
ラセミ(cis)−tert−ブチル7a−(4−アセトアミド−2−ピリジル)−2−ベンズアミド−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−6−カルボキシレート(3.31g、6.67mmol)を撹拌しながらジクロロメタン(19mL)に懸濁する。トリフルオロ酢酸(9.5mL)を加えて透明の溶液を得る。溶液を室温にて2時間撹拌し、溶媒を減圧下で除去する。得られた残渣をメタノールに再溶解し、この溶液をイオン交換カラム(50g)上に充填する。カラムをメタノール(3カラム容積)で溶出し、次いでメタノール溶液(3カラム容積)中の2Mアンモニアで溶出する。塩基性洗浄物を合わせ、減圧下で濃縮して黄色の固体として標題化合物(2.90g、定量的)を得る。ES/MS(m/e)396(M+1)。
【0059】
調製例23
ラセミ(cis)−N−[7a−(4−アセトアミド−2−ピリジル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド
【化27】
1,4−ジオキサン(100mL)中のラセミ(cis)−N−[7a−(4−アセトアミド−2−ピリジル)−4a,5,6,7−テトラヒドロ−4H−ピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(2.90g、6.61mmol)の撹拌溶液に5−フルオロ−2−クロロピリミジン(3.15mL、33.03mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(5.8mL、33.03mmol)を加える。得られた溶液を、水分を排除して100℃にて18時間撹拌する。溶媒を減圧下で除去して茶色の油を得る。残渣を、イソヘキサン中の0〜100%の酢酸エチルの勾配を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、黄色の固体として標題化合物(2.60g;80%)を得る。ES/MS(m/e)492(M+1)。
【0060】
調製例24
ラセミ(cis)−7a−(4−アミノ−2−ピリジル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−アミン
【化28】
メタノール(106mL)中のラセミ(cis)−N−[7a−(4−アセトアミド−2−ピリジル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]ベンズアミド(2.6g、5.3mmol)の溶液に水酸化リチウム(1.3g、52.8mmol)を加える。反応物を70℃にて8時間加熱し、次いで晩の残りの間、室温にて加熱する。この時間の間に白色固体が沈殿し、濾過により回収する。濾過した固体を少量のメタノールで洗浄し、乾燥させて標題化合物(1.1g;59%)を得る。ES/MS346(M+1)。濾液に残存する生成物を、イオン交換クロマトグラフィーを使用して回収する。メタノール濾液をイオン交換カラム(50g)に直接充填し、メタノール(3カラム容積)、続いてメタノール溶液(3カラム容積)中の2Mアンモニアで溶出する。塩基性溶出液を減圧下で濃縮してさらに70%純度の700mgの標題化合物を得る。ES/MS346(M+1)。
【0061】
調製例25
ラセミ(cis)−tert−ブチルN−[7a−(4−アミノ−2−ピリジル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]カルバメート
【化29】
ジメチルホルムアミド(17mL)中のラセミ(cis)−7a−(4−アミノ−2−ピリジル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−アミン(1.08g、3.12mmol)の撹拌溶液に、ジクロロメタン(9mL)中のジ−t−ブチルジカルボネート(1.16g、5.30mmol)を加える。懸濁液を室温にて週末にわたって撹拌する。反応混合物をジクロロメタンとブライン溶液との間で分配する。有機相を分離し、十分なブライン溶液で洗浄する。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して黄色の油を得る。残渣を、ジクロロメタン中のメタノール溶液中の2Mアンモニアの0〜5%の勾配を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、透明の粘性物質として標題化合物(ラセミ体、20%の残留ジメチルホルムアミド/ジクロロメタンを有する1.60g)を得、それをさらに精製せずに直接使用する。ES/MS(m/e)446(M+1)。
【0062】
調製例26
ラセミ(cis)−tert−ブチルN−[(4aR,7aR)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−7a−[4−[(5−メトキシピラジン−2−カルボニル)アミノ]−2−ピリジル]−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]カルバメート
【化30】
ラセミ(cis)−tert−ブチルN−[7a−(4−アミノ−2−ピリジル)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]カルバメート(1.01g、2.27mmol)を撹拌しながら酢酸エチル(8mL)に溶解する。次いで1−プロパンホスホン酸環状無水物(酢酸エチル溶液中に≧50wt%)(2.31mL、3.63mmol)、トリエチルアミン(948μL、6.80mmol)および5−メトキシピラジン−2−カルボン酸(454mg、2.95mmol)を加える。得られた溶液を窒素下で80℃にて1時間20分加熱し、次いでそれを室温に冷却する。混合物を酢酸エチルおよび飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で希釈し、層を分離する。水層を酢酸エチルで再抽出する。有機層を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して茶色の固体を得る。残渣を、イソヘキサン中の酢酸エチルの0〜75%勾配を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して標題化合物(576mg、44%)を得る。ES/MS(m/e)582(M+1)。
【0063】
調製例27
tert−ブチルN−[(4aR,7aR)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−7a−[4−[(5−メトキシピラジン−2−カルボニル)アミノ]−2−ピリジル]−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]カルバメート
【化31】
ラセミ(cis)−tert−ブチルN−[(4aR,7aR)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−7a−[4−[(5−メトキシピラジン−2−カルボニル)アミノ]−2−ピリジル]−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]カルバメート(576mg、0.99mmol)をキラルSFC(カラム:OJ−H、25cm×21.2mm、5ミクロン);移動相:24%メタノール(0.1%アンモニア)76%CO;流速:UV220nmにて70mL/分;35℃;12mg/注入)によりその構成成分の鏡像異性体に分離する。第2の溶出異性体(異性体2)は標題化合物(207mg、36%)である。ES/MS(m/e)582(M+1)。
【0064】
実施例1
ラセミ(cis)−N−[2−[(4aR,7aR)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−ピリジル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミド
【化32】
ジクロロメタン(14mL)中のラセミ(cis)−tert−ブチルN−[6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−7a−[4−[(5−メトキシピラジン−2−カルボニル)アミノ]−2−ピリジル]−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]カルバメート(487mg、837.30μmol)の溶液にトリフルオロ酢酸(1.7mL)を加え、混合物を室温にて1.5時間撹拌する。反応物をジクロロメタンで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄する。層を分離し、水層をジクロロメタンで再抽出する。有機層を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して白色固体を得る。固体を、ジクロロメタン中のメタノール溶液中の2Mアンモニアの0〜5%の勾配を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して標題化合物(126mg、31%)を得る。ES/MS(m/e)482(M+1)。
【0065】
実施例2
N−[2−[(4aR,7aR)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−ピリジル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミド
【化33】
ジクロロメタン(6mL)中のtert−ブチルN−[(4aR,7aR)−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−7a−[4−[(5−メトキシピラジン−2−カルボニル)アミノ]−2−ピリジル]−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−2−イル]カルバメート(異性体2、207mg、355.90μmol)の溶液にトリフルオロ酢酸(712μL、9.41mmol)を加える。得られた溶液を室温にて1.5時間撹拌する。次いで反応物をジクロロメタンで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄する。層を分離し、水層をジクロロメタンで再抽出する。有機層を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して白色固体を得、それを35℃にて5時間、真空オーブン中で乾燥させて標題化合物(186mg、定量的)を得る。ES/MS(m/e)482(M+1)。
【0066】
N−[2−[(4aR,7aR)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−ピリジル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミドの代替調製
ラセミ(cis)−N−[2−[(4aR,7aR)−2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−ピリジル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミド(126mg、0.262mmol)を、キラルHPLC(カラム:AD−H、25cm×21.2mm、5ミクロン);移動相:1:4比のアセトニトリル対メタノール(メタノール溶液中の20mMアンモニア);流速:UV可変波長検出にて30mL/分;8mg/注入)によりその構成成分の鏡像異性体に分離する。2回目の溶出異性体が標題化合物(92mg、73%)である。ES/MS(m/e)482(M+1)。
【0067】
実施例3
ラセミ(cis)−N−[2−[2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−ピリジル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミド塩酸塩
【化34】
ラセミ(cis)−N−[2−[2−アミノ−6−(5−フルオロピリミジン−2−イル)−4,4a,5,7−テトラヒドロピロロ[3,4−d][1,3]チアジン−7a−イル]−4−ピリジル]−5−メトキシ−ピラジン−2−カルボキサミド(56mg、0.116mmol)をアセトニトリル(0.35mL)に溶解し、続いて0.1Mの塩化水素水溶液(1.1mL)を加える。得られた溶液を凍結乾燥機に一晩入れて白色固体(61mg、51%)として標題化合物を得る。ES/MS(m/e)482(M+1)。
【0068】
インビトロアッセイ手順:
インビトロ酵素および細胞アッセイのために、試験化合物をDMSO中で調製して10mMのストック溶液を作製する。このストック溶液をDMSO中で連続希釈して、インビトロ酵素および全細胞アッセイを行う前に、96ウェル丸底プレート中で10μM〜0.05nMの範囲の最終化合物濃度で10点希釈曲線を得る。
【0069】
インビトロプロテアーゼ阻害アッセイ:
huBACE1 Fcの発現および精製
ヒトBACE1(受託番号:AF190725)を、RT−PCRによって全脳cDNAからクローニングする。アミノ酸配列#1〜460に対応するヌクレオチド配列を、ヒトIgG(Fc)ポリペプチドをコードするcDNA内に挿入する(Vassarら、Science、286、735−742(1999))。huBACE1:Fcと名付けた、BACE1(1〜460)およびヒトFcのこの融合タンパク質をpJB02ベクター内に構築する。ヒトBACE1(1〜460):Fc(huBACE1:Fc)をHEK293細胞内で一時的に発現する。各構築物の250μgのcDNAをFugene6と混合し、1リットルのHEK293細胞に加える。トランスフェクションの4日後、馴化培地を精製のために収集する。プロテインAクロマトグラフィーによってhuBACE1:Fcを精製する。酵素を少しのアリコートにおいて−80℃で保存する(Yangら、J.Neurochemistry、91(6)1249−59(2004)を参照のこと)。
【0070】
BACE1 FRETアッセイ
試験化合物の連続希釈を上記のように調製する。KHPO緩衝液中で化合物をさらに20倍に希釈する。10μLの各希釈液を、反応混合物(25μLの50mM KHPO、pH4.6、1mM TRITON(登録商標)X−100、1mg/mLのウシ血清アルブミン、および15μMのFRET基質)(Yangら、J.Neurochemistry、91(6)1249−59(2004)を参照のこと)を含有する対応する低タンパク質結合ブラックプレートの列A〜Hで各ウェルに加える。内容物を10分間、プレートシェーカーで十分に混合する。KHPO緩衝液中の15μLの200pMヒトBACE1(1〜460):Fc(Vasserら、Science、286、735−741(1999)を参照のこと)を、基質および試験化合物を含有するプレートに加えて反応を開始する。プレートシェーカーで簡単に混合した後、0時における混合物のRFUを355nmの励起波長および460nmの発光波長で記録する。反応プレートをアルミニウム箔で覆い、室温にて16〜24時間、暗所の加湿したオーブン中に維持する。インキュベーションの終わりにRFUを0時で使用したのと同じ励起および発光設定で記録する。0時とインキュベーションの終わりにおけるRFUの差異は化合物処理下でのBACE1の活性を表す。RFUの差異を阻害剤濃度に対してプロットし、曲線を4パラメータロジスティック式に適合してIC50値を得る(Sinhaら、Nature、402、537−540(2000)およびMayら、Journal of Neuroscience、31、16507−16516(2011)を参照のこと)。
【0071】
実施例2の化合物を本質的に上記のように試験すると、BACE1について0.90nM(±0.36、n=10)平均±SEMのIC50を示した。
【0072】
このデータにより、実施例2の化合物が、精製した組換えBACE1酵素活性をインビトロで阻害することが実証される。
【0073】
ベータ−セクレターゼ活性の阻害を測定するための全細胞アッセイ
PDAPP初代ニューロンアッセイ
確認全細胞アッセイもまた、PDAPPトランスジェニック胚マウスから生成した初代ニューロン培養物中で実施する(Gamesら、Nature 373、523−527(1995)およびMayら、Journal of Neuroscience、31、16507−16516(2011)に記載されている)。初代皮質ニューロンを16日のPDAPP胚である胚から調製し、96ウェルプレート(DMEM/F12(1:1)プラス10%FBS中の15×10細胞/ウェル)で培養する。インビトロで2日後、培養培地を、B27補足物および2μM(最終)のAra−C(Sigma、C1768)を含有する無血清DMEM/F12(1:1)と置き換える。インビトロで5日目に、所望の濃度にて阻害剤(DMSO中で希釈した)の存在/非存在下でニューロンを37℃にて24時間インキュベートする。インキュベーションの終わりに、馴化培地を、例えば、Aベータペプチドの分析によって、ベータ−セクレターゼ活性の証拠について分析する。全Aベータペプチド(Aベータ1〜x)を、捕捉抗体としてモノクローナル266および報告抗体としてビオチン化3D6を使用して、サンドイッチELISAによって測定する。あるいは、Aベータ1〜40およびAベータ1〜42ペプチドを、Aベータ1〜40についての捕捉抗体としてモノクローナル2G3、およびAベータ1〜42についての捕捉抗体としてモノクローナル21F12を使用して、サンドイッチELISAによって測定する。Aベータ1〜40およびAベータ1〜42ELISAの両方は報告抗体としてビオチン化3D6を使用する(抗体の詳細については、Johnson−Woodら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94、1550−1555(1997)を参照のこと)。化合物処理後に馴化培地中に放出されたAベータの濃度はこのような条件下のBACE1の活性に対応する。10点阻害曲線をプロットし、4パラメータロジスティック式に適合して、Aベータ低下効果についてIC50値を得る。実施例2の化合物を本質的に上記のように試験すると、以下の活性を示す。Aベータ1〜40減少についてのIC50=0.65nM(±0.11、n=3)。Aベータ1〜42減少についてのIC50=0.91nM(±0.16、n=3)。
【0074】
このデータにより、実施例2の化合物が全細胞においてAベータ1〜40およびAベータ1〜42生成を阻害することが実証される。