(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2移動制御部は、前記プラテンに載置された前記記録媒体の移動を開始する際、所定の第1の加速度で移動を開始させ、かつ、前記副走査方向に移動している前記記録媒体を停止させる際、所定の第2の加速度で停止させ、
前記第1の加速度の絶対値は、前記第2の加速度の絶対値よりも小さい、請求項1に記載されたインクジェットプリンタ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」ともいう。)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るプリンタ100の斜視図である。以下の説明では、プリンタ100を正面から見たときに、プリンタ100から遠ざかる方を前方、プリンタ100に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、プリンタ100を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。また、図面中の符号Yは主走査方向を示している。ここでは、主走査方向Yは左右方向である。符号Xは副走査方向を示している。ここでは、副走査方向Xは、前後方向であり、平面視において主走査方向Yと直交している。符号Zは、高さ方向、すなわち、上下方向を示している。また、本実施形態において、副走査方向Xのうち後方から前方に向かう方向を行き方向X1と称する。副走査方向Xのうち前方から後方に向かう方向を帰り方向X2と称する。そして、副走査方向Xの後方側を上流側と称し、副走査方向Xの前方側を下流側と称する。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ100の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0013】
図1に示すように、プリンタ100は、インクジェット式のプリンタである。本実施形態では、プリンタ100は、家庭用のプリンタと比較すると主走査方向Yに長い、いわゆる大型のプリンタである。例えば、プリンタ100は業務用のプリンタである。プリンタ100は、ロール状の記録媒体5を順次前方(ここでは、副走査方向Xの下流側)に移動させると共に、主走査方向Yに移動するヘッド40(
図4参照)からインクを吐出することによって、記録媒体5に画像を印刷する。記録媒体5は、画像が印刷される対象物である。なお、記録媒体5の種類は特に限定されない。記録媒体5は、例えば普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類であってもよい。また、記録媒体5は、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)またはポリエステルなどの樹脂製またはガラス製などの透明なシートであってもよいし、金属製またはゴム製などのシートであってもよい。なお、記録媒体5にコーティング剤が塗布されている場合、記録媒体5の表面に着弾したインクは、着弾箇所の周囲に浸透されず、インクは小径ドットの状態で記録媒体5に定着されるとよい。
【0014】
図1に示すように、プリンタ100は、本体10と、脚11と、操作パネル12と、カバー15と、を備えている。本体10は、主走査方向Yに延びたケーシングを有する。脚11は、本体10を支持するものであり、本体10の下面に設けられている。操作パネル12は、例えば本体10の右側の前面に設けられている。ただし、操作パネル12の位置は特に限定されない。操作パネル12は、ユーザが印刷に関する操作を行うものである。図示は省略するが、操作パネル12には、例えば、解像度、インクの濃さなどの印刷に関する情報や、印刷中のプリンタ100のステータスなどが表示される表示部、および、印刷に関する情報を入力するための入力部などが備えられている。
【0015】
カバー15は、本体10に設けられている。ここでは、カバー15は、本体10の上部に開閉自在に取り付けられている。カバー15の下方であって、本体10の下側には、記録媒体5を排出する排出口13が形成されている。排出口13の前方かつ下方の位置には、排出口13から排出される記録媒体5を案内するガイド14が設けられている。ガイド14は、排出口13から前方斜め下向きに延びている。
【0016】
図2は、プリンタ100の内部構成を示す平面図である。
図2に示すように、プリンタ100は、プラテン25を備えている。プラテン25は、記録媒体5への印刷の際、記録媒体5を支持するものである。プラテン25には、記録媒体5が載置される。記録媒体5への印刷は、プラテン25上で行われる。本実施形態では、プラテン25は、主走査方向Yに延びており、ガイド14(
図1参照)と連なっている。
【0017】
プリンタ100は、第1移動機構51と、第2移動機構52とを備えている。第1移動機構51は、プラテン25に載置された記録媒体5に対してヘッド40を相対的に主走査方向Yに移動させるものである。ここでは、第1移動機構51は、ヘッド40を主走査方向Yに向かって往復移動させる。第1移動機構51の構成は特に限定されない。本実施形態では、第1移動機構51は、ガイドレール20と、プーリ21と、プーリ22と、無端状のベルト23と、モータ24と、キャリッジ30を有している。ガイドレール20は、カバー15(
図1参照)の下方であって、かつ、プラテン25の上方に配置されている。ガイドレール20は、主走査方向Yに延びている。プーリ21は、ガイドレール20の右端部分に設けられている。プーリ22は、ガイドレール20の左端部分に設けられている。ベルト23は、プーリ21とプーリ22とに巻き掛けられている。本実施形態では、モータ24は、プーリ21に接続されている。この場合、プーリ21は駆動プーリであり、プーリ22は従動プーリである。ただし、モータ24は、プーリ22に接続されていてもよい。本実施形態では、モータ24がプーリ21を駆動することで、プーリ21とプーリ22との間においてベルト23が走行する。
【0018】
キャリッジ30は、ベルト23に取り付けられている。図示は省略するが、キャリッジ30は、ガイドレール20に係合しており、ガイドレール20に摺動自在に設けられている。キャリッジ30には、ヘッド40が搭載されている。本実施形態では、第1移動機構51は、モータ24の駆動によってベルト23が走行して、キャリッジ30が主走査方向Yに移動することに伴い、キャリッジ30に搭載されたヘッド40を主走査方向Yに移動させる。
【0019】
第2移動機構52は、プラテン25に載置された記録媒体5をヘッド40(
図4参照)に対して相対的に副走査方向Xに移動させるものである。ここでは、第2移動機構52は、プラテン25に載置された記録媒体5を副走査方向X(詳しくは、行き方向X1)に所定の距離ずつ移動させる。第2移動機構52の構成は特に限定されない。本実施形態では、第2移動機構52は、上下一対のローラ26(なお、
図2では上側のローラ26のみ図示されており、下側のローラ26は省略されている。)と、モータ27を有している。例えば、上下一対のローラ26は、プラテン25の左端部および右端部にそれぞれ配置されている。ただし、上下一対のローラ26の数および設置位置は特に限定されない。上下一対のローラ26のうち、何れか一方のローラ26は自ら回転する駆動ローラ(以下、グリッドローラともいう。)である。このグリッドローラ26には、モータ27が接続されている。モータ27が駆動することで、グリッドローラ26は回転する。他方のローラ26は、上記グリッドローラと共に記録媒体5を挟み込むための従動ローラ(以下、ピンチローラともいう。)である。ピンチローラ26は、上下方向に移動可能に構成されている。本実施形態では、第2移動機構52は、一対のローラ26に記録媒体5が挟まれた状態でモータ27が一方のローラ(グリッドローラ)26を回転させることで、プラテン25に載置された記録媒体5を副走査方向Xに搬送する。
【0020】
ところで、本実施形態では、プリンタ100は、複数の種類のインクを記録媒体5上に重ね合わせることによって、印刷物を印刷する装置である。
図3は、記録媒体5に複数の種類のインクを重ね合わせた状態を示す記録媒体5の断面図である。
図3に示すように、例えば記録媒体5上に、第1のインク6aによって形成された層、第2のインク6bによって形成された層が下方から順に積層される。具体的には、記録媒体5の表面に、第1のインク6aが吐出される。そして、記録媒体5に吐出された第1のインク6aの上に第2のインク6bが吐出される。ただし、記録媒体5上に形成されるインクの層の数は特に限定されない。例えば、記録媒体5上に形成されるインクの層は、1層であってもよいし、3層以上であってもよい。
【0021】
第1のインク6aおよび第2のインク6bのそれぞれの種類は特に限定されない。本実施形態では、第1のインク6aは下地用インクである。第2のインク6bは画像形成用インクである。ここで、「下地用インク」とは、第2のインク6bによる記録媒体5への定着性を上げるインク、および、第2のインク6bが滲むことを抑制するためのインクである。また、「下地用インク」とは、第2のインク6bの発色をよくするためのインク、および、第2のインク6bが鮮明に見えるようにするためのインクである。下地用インクの具体的なインクの種類は特に限定されない。例えば、下地用インクはホワイトインクである。「画像形成用インク」とは、記録媒体5に印刷画像を形成するためのインクである。「画像形成用インク」とは、有色インクのことである。例えば、画像形成用インクはプロセスカラーインクである。プロセスカラーインクには、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインクなどが含まれる。
【0022】
図4は、ヘッド40の底面図である。
図4に示すように、プリンタ100はヘッド40を備えている。ヘッド40は、キャリッジ30に搭載されている。ヘッド40は、プラテン25(
図2参照)よりも上方に配置され、キャリッジ30を介してガイドレール20(
図2参照)にスライド自在に係合している。ヘッド40は、第1移動機構51(
図2参照)によってガイドレール20に沿って主走査方向Yに移動する。本実施形態では、ヘッド40は、第1インクヘッド40aと、複数の第2インクヘッド40b〜40eとを有している。インクヘッド40a〜40eの数は特に限定されないが、本実施形態では5つである。各インクヘッド40a〜40eの底面には、それぞれ複数のノズル41aが副走査方向Xに並んで形成されている。各インクヘッド40a〜40eにおける複数のノズル41aは、直線状に並んで配置されているが、千鳥状に並んで配置されていてもよい。各インクヘッド40a〜40eのそれぞれのノズル41aからインクが吐出される。
【0023】
本実施形態では、複数のインクヘッド40a〜40eは、それぞれ第1のインク6aおよび第2のインク6bのうち何れかの種類のインクを吐出する。ここでは、第1インクヘッド40aは、第1のインク6aの一例であるホワイトインクを吐出する。複数の第2インクヘッド40b〜40eは、第2のインク6bの一例であるプロセスカラーインクを吐出する。具体的には、例えば、第2インクヘッド40bはシアンインクを吐出する。第2インクヘッド40cはマゼンタインクを吐出する。第2インクヘッド40dはイエローインクを吐出する。第2インクヘッド40eはブラックインクを吐出する。本実施形態では、第2インクヘッド40b〜40eの数は4つである。しかしながら、第2インクヘッド40b〜40eの数は特に限定されず、例えば、6つであってもよい。なお、本実施形態では、ヘッド40が本発明の「吐出部」に対応する。第1インクヘッド40aは、本発明の「第1吐出部」に対応する。第2インクヘッド40b〜40eは、本発明の「第2吐出部」に対応する。
【0024】
次に、複数のインクヘッド40a〜40eの位置関係について説明する。
図4に示すように、主走査方向Yにおいて、左から第1インクヘッド40a、複数の第2インクヘッド40b〜40eの順に並ぶようにして、インクヘッド40a〜40eはキャリッジ30内に配置されている。しかしながら、主走査方向Yにおけるインクヘッド40a〜40eの並び順は特に限定されない。
【0025】
本実施形態では、複数の第2インクヘッド40b〜40eは、副走査方向Xにおいて同じ位置に配置されている。第1インクヘッド40aは、複数の第2インクヘッド40b〜40eよりも後方に配置されている。第1インクヘッド40aは、複数の第2インクヘッド40b〜40eよりも副走査方向Xの上流側に配置されている。言い換えると、第1インクヘッド40aは、副走査方向Xにおいて、複数の第2インクヘッド40b〜40eよりも帰り方向X2へ向かう側に設けられている。第1インクヘッド40aの前端は、複数の第2インクヘッド40b〜40eのそれぞれの後端よりも後方に位置している。
【0026】
本実施形態では、ヘッド40には、インクカートリッジ45(
図2参照)が接続されている。ここでは、ヘッド40とインクカートリッジ45とはチューブ46(
図2参照)を介して互いに接続されている。インクカートリッジ45には、ヘッド40に供給するインク、すなわち、印刷の際に使用されるインクが収容されている。具体的には、本実施形態では、インクカートリッジ45には、第1のインク6aの一例である下地用インク、および、第2のインク6bの一例である画像形成用インクが収容されている。インクカートリッジ45に収容されたインクは、チューブ46を通じて各インクヘッド40a〜40eに供給され、
図4に示すように、ノズル41aから吐出される。なお、インクカートリッジ45の設置位置は特に限定されない。例えば、図示は省略するが、インクカートリッジ45は、本体10の上面に取り外し可能に設けられていてもよい。
【0027】
図5は、プリンタ100のブロック図である。
図5に示すように、プリンタ100は制御装置60を備えている。制御装置60は、記録媒体5への印刷を制御する装置である。制御装置60は、マイクロコンピュータからなっており、本体10の内部に設けられている。制御装置60は、中央処理装置(CPU)と、CPUが実行するプログラムなどを格納したROMと、RAMなどを備えている。ここでは、制御装置60は、マイクロコンピュータ内に保存されたプログラムを使用して、印刷に関する制御を行う。
【0028】
制御装置60は、第1移動機構51のモータ24と、第2移動機構52のモータ27と、第1インクヘッド40aと、第2インクヘッド40b〜40eと電気的に接続している。制御装置60は、モータ24、モータ27、第1インクヘッド40a、および、第2インクヘッド40b〜40eを制御する。制御装置60は、第1移動機構51のモータ24の駆動を制御することで、プーリ21の回転、および、ベルト23(
図2参照)の走行を制御する。このことで、制御装置60は、ヘッド40(詳しくは、インクヘッド40a〜40e)における主走査方向Yへの移動を制御する。制御装置60は、第2移動機構52のモータ27の駆動を制御してグリッドローラ26の回転を制御することで、プラテン25に載置された記録媒体5における副走査方向Xへの移動を制御する。制御装置60は、インクヘッド40a〜40eがインクを吐出するタイミングなどを制御する。
【0029】
制御装置60は、記憶部61と、第1移動制御部62と、吐出制御部63と、第2移動制御部64とを備えている。記憶部61には、例えば、印刷する印刷画像が記憶される。第1移動制御部62は、ヘッド40を主走査方向Yに往復移動させるように第1移動機構51を制御する。吐出制御部63は、第1移動制御部62によってヘッド40が主走査方向Yに往復移動されている間、ヘッド40からインクを吐出させる。本実施形態では、吐出制御部63は、第1吐出制御部65と、第2吐出制御部66とを備えている。第1吐出制御部65は、第1インクヘッド40aから第1のインク6a(ここでは、下地用インク)を吐出させる。第2吐出制御部66は、第2インクヘッド40b〜40eから第2のインク6b(ここでは、画像形成用インク)を吐出させる。第2移動制御部64は、第1移動制御部62によってヘッド40が主走査方向Yに往復移動された後、プラテン25に載置された記録媒体5を副走査方向X(詳しくは、後方から前方に向かう行き方向X1)に所定の距離移動させるように第2移動機構52を制御する。なお、上述した各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば、上述した各部は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
【0030】
以上、本実施形態に係るプリンタ100の構成について説明した。次に、プリンタ100が記録媒体5に印刷を行う手順について説明する。ここでは、
図3に示すように、記録媒体5の上に、第1のインク6aによって形成された層、および、第2のインク6bによって形成された層が下方から順に積層されることによって印刷物が作製される。本実施形態では、印刷対象である印刷画像が記憶部61に予め記憶されており、この印刷画像に基づいて印刷が行われる。
【0031】
本実施形態では、ヘッド40が主走査方向Yを1往復する間に、ヘッド40からインクが吐出される。ここで、ヘッド40が主走査方向Yに1往復することを「スキャン」という。最初のスキャンでは、第1移動制御部62は、主走査方向Yにヘッド40が移動するように、第1移動機構51のモータ24の駆動を制御する。このとき、記憶部61に記憶された印刷画像における第1のインク6aの位置に対応した記録媒体5の領域上を第1インクヘッド40aが通過する際、吐出制御部63の第1吐出制御部65は、プラテン25に載置された記録媒体5に第1のインク6aを第1インクヘッド40aから吐出させる。このことで、最初の1スキャン分の第1のインク6aによる印刷が行われる。
【0032】
そして、ヘッド40による主走査方向Yの1往復の移動が完了した後、第2移動制御部64は、プラテン25に載置された記録媒体5を副走査方向Xの行き方向X1へ、所定の距離の分、移動させるように、第2移動機構52のモータ27の駆動を制御する。ここで、所定の距離は、記憶部61に予め記憶されているものとする。
【0033】
次に、第1移動制御部62は、第1移動機構51のモータ24を制御して、ヘッド40を主走査方向Yへ移動させることで、次のスキャンが行われる。このとき、記憶部61に記憶された印刷画像における第1のインク6aの位置に対応した記録媒体5の領域上を第1インクヘッド40aが通過する際、第1吐出制御部65は、プラテン25に載置された記録媒体5に第1のインク6aを第1インクヘッド40aから吐出させる。同時に、印刷画像における第2のインク6bの位置に対応した記録媒体5の領域上を第2インクヘッド40b〜40eが通過する際、第2吐出制御部66は、プラテン25に載置された記録媒体5に第2のインク6bを第2インクヘッド40b〜40eから吐出させる。なお、第2のインク6bによる印刷は、第1のインク6aによる印刷が行われた後の記録媒体5の領域に対して行われる。以上のように、本実施形態では、第1のインク6aによる印刷と、第2のインク6bによる印刷が同時に行われることで、2回目以降におけるスキャンの印刷が行われる。このように、ヘッド40の主走査方向Yへの移動、および、記録媒体5の副走査方向Xの行き方向X1への移動を交互に行いながら、第1吐出制御部65による第1のインク6aに関する印刷、および、第2吐出制御部66による第2のインク6bに関する印刷が行われる。以上の手順によって、記憶部61に記憶された印刷画像の印刷が終了する。
【0034】
以下の説明において、ヘッド40による主走査方向Yへの往復移動が完了してから、プラテン25に載置された記録媒体5による副走査方向Xへの所定の距離の移動が開始するまでの時間のことを、「媒体移動開始時間」と称する。また、プラテン25に載置された記録媒体5の副走査方向Xへの所定の距離の移動が完了してから、ヘッド40による主走査方向Yへの往復移動が開始するまでの時間のことを、「ヘッド移動開始時間」と称する。ここでは、図示は省略するが、プリンタ100には、ヘッド40が待機するホームポジション(例えば、ガイドレール20の右端側)が設定されている。ヘッド40による主走査方向Yへの往復移動が完了するとは、ヘッド40が主走査方向Yを往復移動して、上記ホームポジションに到着したときのことをいう。本実施形態では、この媒体移動開始時間と、ヘッド移動開始時間とが異なる。
図6は、ヘッド40の移動速度と記録媒体5の移動速度との関係を示したタイミングチャートである。
図6に示すように、ここでは、媒体移動開始時間は、第1の時間T1である。ヘッド移動開始時間は、第2の時間T2である。第2の時間T2は、第1の時間T1よりも短い時間である。すなわち、第1の時間T1と第2の時間T2との関係は、T1>T2のように表される。なお、第1の時間T1および第2の時間T2は、記憶部61に予め記憶されている。
【0035】
本実施形態では、印刷中、第2移動制御部64は、ヘッド40による主走査方向Yへの往復移動が完了してから第1の時間T1が経過した後に、プラテン25に載置された記録媒体5を副走査方向Xに所定の距離移動させるように第2移動機構52を制御する。そして、第1移動制御部62は、プラテン25に載置された記録媒体5を第2移動制御部64によって副走査方向Xに所定の距離、移動させてから、第2の時間T2が経過した後に、ヘッド40を主走査方向Yに往復移動させる。
【0036】
なお、媒体移動開始時間である第1の時間T1、および、ヘッド移動開始時間である第2の時間T2の具体的な数値は特に限定されない。例えば、本実施形態では、記憶部61には、第1のインク6aを吐出する際の媒体移動開始時間である第1の1時間、第1のインク6aを吐出する際のヘッド移動開始時間である第2の1時間が予め記憶されている。第1の1時間は、第2の1時間よりも長い時間である。例えば、第1の1時間とは、記録媒体5に第1のインク6aのみが吐出され、第2のインク6bが吐出されない場合に設定される媒体移動開始時間のことである。第2の1時間とは、記録媒体5に第1のインク6aのみが吐出され、第2のインク6bが吐出されない場合に設定されるヘッド移動開始時間のことである。さらに、記憶部61には、第2のインク6bを吐出する際の媒体移動開始時間である第1の2時間、および、第2のインク6bを吐出する際のヘッド移動開始時間である第2の2時間が予め記憶されている。第1の2時間は、第2の2時間よりも長い時間である。例えば、第1の2時間とは、記録媒体5に第2のインク6bのみが吐出され、第1のインク6aが吐出されない場合に設定される媒体移動開始時間のことである。第2の2時間とは、記録媒体5に第2のインク6bのみが吐出され、第1のインク6aが吐出されない場合に設定されるヘッド移動開始時間のことである。
【0037】
また、本実施形態では、記憶部61には、記録媒体5の上に第1のインク6aが吐出された場合の記録媒体5と第1のインク6aとの定着性に関する情報が予め記憶されている。さらに、記憶部61には、記録媒体5に吐出された第1のインク6a上に第2のインク6bが吐出された場合の第1のインク6aと第2のインク6bとの定着性に関する情報が予め記憶されている。これら定着性に関する情報は、記録媒体5の材質、第1のインク6aおよび第2のインク6bのそれぞれに含まれる成分によって変更されるものである。
【0038】
本実施形態では、記録媒体5と第1のインク6aとの定着性が、第1のインク6aと第2のインク6bとの定着性よりも低い場合には、
図4のように、記録媒体5上に第1のインク6aの層、および、第2のインク6bの層が下方から順に積層されるようなとき、媒体移動開始時間には第1の1時間が設定され、ヘッド移動開始時間には第2の1時間が設定される。このとき、第2移動制御部64は、ヘッド40の往復移動が完了してから第1の1時間が経過した後に、プラテン25に載置された記録媒体5を移動させる。そして、第1移動制御部62は、プラテン25に載置された記録媒体5が所定の距離を移動してから、第2の1時間が経過した後に、ヘッド40の往復移動を開始させる。
【0039】
一方、第1のインク6aと第2のインク6bとの定着性が、記録媒体5と第1のインク6aとの定着性よりも低い場合には、記録媒体5上に第1のインク6aの層、および、第2のインク6bの層が下方から順に積層されるようなとき、媒体移動開始時間には第1の2時間が設定され、ヘッド移動開始時間には第2の2時間が設定される。このとき、第2移動制御部64は、ヘッド40の往復移動が完了してから第1の2時間が経過した後に、プラテン25に載置された記録媒体5を移動させる。そして、第1移動制御部62は、プラテン25に載置された記録媒体5が所定の距離を移動してから、第2の2時間が経過した後に、ヘッド40の往復移動を開始させる。
【0040】
本実施形態では、第2移動制御部64は、
図6に示すように、プラテン25に載置された記録媒体5の副走査方向Xへの移動を開始する際、所定の第1の加速度A1で移動を開始させる。第2移動制御部64は、副走査方向Xに移動している記録媒体5を停止させる際、所定の第2の加速度A2で停止させている。第1の加速度A1の絶対値は、第2の加速度A2の絶対値よりも小さい。すなわち、第1の加速度A1と第2の加速度A2との関係は、|A1|<|A2|によって表される。第1の加速度A1および第2の加速度A2は、記憶部61に予め記憶されている。なお、第1の加速度A1と第2の加速度A2との関係について、第1の加速度A1の絶対値は、第2の加速度A2の絶対値と同じであってもよいし、第2の加速度A2の絶対値よりも大きくてもよい。
【0041】
本実施形態では、
図6の例では、時間t
21において、ヘッド40の主走査方向Yへの往復移動が完了した場合、時間t
21から第1の時間T1が経過した後の時間t
22において、プラテン25に載置された記録媒体5の副走査方向Xへの移動が開始される。このとき、第1の時間T1は、例えば0.3秒である。そして、記録媒体5の副走査方向Xへの移動が開始する際、第1の加速度A1で移動が開始される。副走査方向Xに移動している記録媒体5は、第2の加速度A2で停止される。例えば、プラテン25に載置された記録媒体5の副走査方向Xへの移動の開始(
図6では時間t
22)から停止(
図6では時間t
25)までに要した時間が0.6秒である場合、記録媒体5は、時間t
22から時間t
23までの時間である0.3秒間、第1の加速度A1で移動する。そして、記録媒体5は、時間t
23から時間t
24までの時間である0.1秒間、一定の速度で移動し、時間t
24から時間t
25までの時間である0.2秒間、第2の加速度A2で移動する。例えば、プラテン25に載置された記録媒体5の副走査方向Xへの移動の開始から停止までに要した時間が0.5秒である場合、時間t
22から時間t
23までの時間は0.2秒間であり、時間t
23から時間t
24までの時間は0.1秒間であり、かつ、時間t
24から時間t
25までの時間は0.2秒間であってもよい。
【0042】
そして、
図6の例では、時間t
25において、プラテン25に載置された記録媒体5における副走査方向Xへの所定の距離の移動が完了する。そして、時間t
25から第2の時間T2が経過した後の時間t
26において、ヘッド40の主走査方向Yへの往復移動が開始される。このとき、例えば、第2の時間T2は0.2秒である。
【0043】
以上、本実施形態では、ヘッド40による主走査方向Yへの往復移動が完了してから、第1の時間T1が経過した後に、プラテン25に載置された記録媒体5の副走査方向Xへの移動が開始される。この第1の時間T1は、プラテン25に載置された記録媒体5による副走査方向Xへの所定の距離の移動が完了してから、ヘッド40の主走査方向Yへの移動が開始するまでの時間である第2の時間T2よりも長い。よって、記録媒体5に吐出されたインクの硬化が少しでも進行した状態で、記録媒体5が副走査方向Xに移動する。したがって、記録媒体5が移動することに起因して、記録媒体5に吐出されたインクの形状が歪むことを抑制することができる。
【0044】
本実施形態では、第2移動制御部64は、プラテン25に載置された記録媒体5の移動を開始する際、所定の第1の加速度A1で移動を開始させる。第2移動制御部64は、副走査方向Xに移動している記録媒体5を停止させる際、所定の第2の加速度A2で停止させる。ここで、第1の加速度A1の絶対値は、第2の加速度A2の絶対値よりも小さい。このことによって、プラテン25に載置された記録媒体5が副走査方向Xに移動する際、急激に加速しない。よって、記録媒体5に吐出されたインクの形状が歪み難い。
【0045】
本実施形態では、第1のインク6aを吐出する第1インクヘッド40aは、第2のインク6bを吐出する第2インクヘッド40b〜40eよりも副走査方向Xの上流側、言い換えると、帰り方向X2側に配置されている。このことによって、記録媒体5の行き方向X1への移動のみで、記録媒体5上に、第1のインク6aによる層、および、第2のインク6bによる層を積層した印刷物を作製することができる。したがって、種類が異なる複数のインクを重ねて印刷を行う際、印刷に要する時間を短縮することができる。また、本実施形態では、第1のインク6aが吐出された後において、少なくとも第1の時間T1および第2の時間T2が経過した後に、第1のインク6aの上に、第2のインク6bが吐出される。そのため、第1のインク6aが硬化する時間を少しでも多く確保することができる。よって、第1のインク6aと第2のインク6bとが混ざり合うことを抑制することができる。
【0046】
本実施形態では、記録媒体5と第1のインク6aとの定着性が、第1のインク6aと第2のインク6bとの定着性よりも低い場合、上記媒体移動開始時間(第1の時間T1)には、第1のインク6aを吐出する際の媒体移動開始時間である第1の1時間が設定され、上記ヘッド移動開始時間(第2の時間T2)には、第1のインク6aを吐出する際のヘッド移動開始時間である第2の1時間が設定される。一方、第1のインク6aと第2のインク6bとの定着性が、記録媒体5と第1のインク6aとの定着性よりも低い場合、上記媒体移動開始時間(第1の時間T1)には、第2のインク6bを吐出する際の媒体移動開始時間である第1の2時間が設定され、上記ヘッド移動開始時間(第2の時間T2)には、第2のインク6bを吐出する際のヘッド移動開始時間である第2の2時間が設定される。このように、記録媒体5と第1のインク6aとの定着性が、第1のインク6aと第2のインク6bとの定着性よりも低い場合、第1の1時間は第1の2時間よりも長く、第2の1時間は第2の2時間よりも長いと考えられる。一方、第1のインク6aと第2のインク6bとの定着性が、記録媒体5と第1のインク6aとの定着性よりも低い場合、第1の2時間は第1の1時間よりも長く、第2の2時間は第2の1時間よりも長いと考えられる。よって、定着性が低い場合において、より長い時間である媒体移動開始時間およびヘッド移動開始時間が設定されるため、記録媒体5に吐出されたインクの形状が歪むことをより抑制することができる。
【0047】
本実施形態では、第1のインク6aは、下地用インクである。第2のインク6bは、画像形成用インクである。このことによって、記録媒体5の上に、下地用インクによって形成された層、画像形成用インクによって形成された層が下方から順に積層されるような印刷物を作製する場合であっても、記録媒体5に吐出された下地用インクおよび画像形成用インクの形状が歪むことを抑制することができる。
【0048】
以上、第1実施形態に係るプリンタ100について説明した。本発明に係るプリンタは、第1実施形態に係るプリンタ100に限定されず、他の種々の形態で実施することができる。次に、他の実施形態について簡単に説明する。なお、以下の説明では、既に説明した構成と同様の構成には同じ符号を使用し、その説明は適宜省略する。
【0049】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るプリンタ200について説明する。
図7は、第2実施形態に係るヘッド140の底面図である。本実施形態では、
図7に示すように、ヘッド140は、複数の第1インクヘッド140b〜140eと、第2インクヘッド140aとを備えている。ここでは、第1インクヘッド140b〜140eから吐出される第1のインク6aは、画像形成用インクであり、例えばプロセスカラーインクである。第2インクヘッド140aから吐出される第2のインク6bは、下地用インクであり、例えばホワイトインクである。本実施形態では、第1実施形態と比較して、第1のインク6aの種類と、第2のインク6bの種類とが逆になっている。
【0050】
主走査方向Yにおいて、左から、画像形成用インクである第1のインク6aが吐出される第1インクヘッド140b〜140e、下地用インクである第2のインク6bが吐出される第2インクヘッド140aの順に並ぶようにして、インクヘッド140a〜140eは、キャリッジ30内に配置されている。ただし、インクヘッド140a〜140eの配置の順は特に限定されない。本実施形態では、複数の第1インクヘッド140b〜140eは、副走査方向Xにおいて同じ位置に配置されている。本実施形態では、第2インクヘッド140aは、複数の第1インクヘッド140b〜140eよりも前方に配置されている。第2インクヘッド140aは、副走査方向Xにおいて、複数の第1インクヘッド140b〜140eよりも行き方向X1へ向かう側に設けられている。第2インクヘッド140aの後端は、複数の第1インクヘッド140b〜140eのそれぞれの前端よりも前方に位置している。
【0051】
本実施形態では、記録媒体5上に、第1のインク6aである画像形成用インクの層、第2のインク6bである下地用インクの層が下方から順に積層される。ここでは、記録媒体5は、透明の材質で形成されていることが好ましい。
【0052】
なお、本実施形態に係るプリンタ200による印刷の手順は、第1実施形態に係るプリンタ100による印刷の手順と同様のため、詳しい説明は省略する。本実施形態であっても、媒体移動開始時間は第1の時間T1(
図6参照)であり、ヘッド移動開始時間は第1の時間T1よりも短い第2の時間T2(
図6参照)である。そのため、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。例えば、媒体移動開始時間は、ヘッド移動開始時間である第2の時間T2よりも長い第1の時間T1であるため、記録媒体5が移動することに起因して、記録媒体5に吐出されたインクの形状が歪むことを抑制することができる。
【0053】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係るプリンタ300について説明する。例えば、第1実施形態では、第1インクヘッド40a自体が本発明の「第1吐出部」に対応し、第2インクヘッド40b〜40e自体が本発明の「第2吐出部」に対応していた。そして、第1インクヘッド40aは、
図4に示すように、複数の第2インクヘッド40b〜40eに対して副走査方向Xにずれて配置されていた。しかしながら、第1インクヘッド40aと、複数の第2インクヘッド40b〜40eとは、副走査方向Xにずれて配置されていなくてもよい。
【0054】
図8は、第3実施形態に係るヘッド240の底面図である。本実施形態では、
図8に示すように、ヘッド240は、第1インクヘッド240aと、複数の第2インクヘッド240b〜240eとを備えている。ここでは、第1実施形態と同様に、第1インクヘッド240aから吐出される第1のインク6aは、下地用インクであり、例えばホワイトインクである。複数の第2インクヘッド240b〜240eから吐出される第2のインク6bは、画像形成用インクであり、例えばプロセスカラーインクである。
【0055】
本実施形態では、各インクヘッド240a〜240eは、主走査方向Yに並ぶように配置されている。複数のインクヘッド240a〜240eは、主走査方向Yに一列に配置されている。複数のインクヘッド240a〜240eは、互いが副走査方向Xにずれて配置されていない。各インクヘッド240a〜240eの前端の副走査方向Xの位置は、それぞれ同じである。また、各インクヘッド240a〜240eの後端の副走査方向Xの位置は、それぞれ同じである。
【0056】
本実施形態では、第1インクヘッド240aの底面には複数のノズル42aが形成されている。第2インクヘッド240bの底面には複数のノズル42bが形成され、第2インクヘッド240cの底面には複数のノズル42cが形成され、第2インクヘッド240dの底面には複数のノズル42dが形成され、かつ、第2インクヘッド240eの底面には複数のノズル42eが形成されている。各複数のノズル42a〜42eは、副走査方向Xに1列に並ぶように配置されている。ただし、各複数のノズル42a〜42eは、副走査方向Xに千鳥状に配置されていてもよい。ここでは、副走査方向Xに並んだ各複数のノズル42a〜42eの列のことを、それぞれノズル列43a〜43eという。また、各ノズル列43a〜43eのうち、前部に配置されたノズル列をそれぞれ第1ノズル列44a〜44eと称する。各ノズル列43a〜43eのうち、後部に配置されたノズル列をそれぞれ第2ノズル列45a〜45eと称する。
【0057】
各第1ノズル列44a〜44eは、各第2ノズル列45a〜45eよりも前方(詳しくは、副走査方向Xの上流側)に配置されている。各インクヘッド40a〜40eにおいて、各第2ノズル列45a〜45eの前端は、各第1ノズル列44a〜44eの後端よりも後方に配置されている。なお、第1ノズル列44a〜44eのそれぞれに属するノズル42a〜42eの数、および、第2ノズル列45a〜45eのそれぞれに属するノズル42a〜42eの数は特に限定されない。本実施形態では、第1ノズル列44a〜44eのそれぞれに属するノズル42a〜42eの数と、第2ノズル列45a〜45eのそれぞれに属するノズル42a〜42eの数は同じである。しかしながら、第1ノズル列44a〜44eのそれぞれに属するノズル42a〜42eの数は、第2ノズル列45a〜45eのそれぞれに属するノズル42a〜42eの数よりも多くてもよいし、少なくてもよい。
【0058】
本実施形態では、第1インクヘッド240aの第2ノズル列45a、および、第2インクヘッド240b〜240eのそれぞれの第1ノズル列44b〜44eが使用される。そのため、第1インクヘッド240aの第1ノズル列44a、および、第2インクヘッド240b〜240eのそれぞれの第2ノズル列45b〜45eは省略されてもよい。ここでは、第1インクヘッド240aの第2ノズル列45aを構成するノズル42aから第1のインク6a(ここでは、下地用インク(例えば、ホワイトインク))が吐出される。第2インクヘッド240b〜240eのそれぞれの第1ノズル列44b〜44eから第2のインク6b(ここでは、画像形成用インク(例えば、プロセスカラーインク))が吐出される。本実施形態では、第1インクヘッド240aの第2ノズル列45aは、本発明の「第1吐出部」に対応している。第2インクヘッド240b〜240eのそれぞれの第1ノズル列44b〜44eは、本発明の「第2吐出部」に対応している。
【0059】
次に、本実施形態に係るプリンタ300が記録媒体5に印刷を行う手順について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様に、記録媒体5の上に、第1のインク6aである下地用インクによって形成された層、および、第2のインク6bである画像形成用インクによって形成された層が下方から順に積層されることによって印刷物が作製される。
【0060】
本実施形態では、最初のスキャンでは、第1移動制御部62は、
図8に示すように、主走査方向Yにヘッド240が移動するように、第1移動機構51のモータ24(
図2参照)の駆動を制御する。このとき、記憶部61に記憶された印刷画像における第1のインク6aの位置に対応した記録媒体5の領域上を第1インクヘッド240aが通過する際、第1吐出制御部65は、プラテン25に載置された記録媒体5に第1のインク6aを第1インクヘッド240aの第2ノズル列45aから吐出させる。このことで、最初の1スキャン分の第1のインク6aによる印刷が行われる。
【0061】
そして、ヘッド240による主走査方向Yの1往復の移動が完了してから、第1の時間T1(
図6参照)が経過した後、第2移動制御部64は、プラテン25に載置された記録媒体5を副走査方向Xの行き方向X1へ、所定の距離の分、移動させるように、第2移動機構52のモータ27(
図2参照)の駆動を制御する。このとき、第2移動制御部64は、記録媒体5の副走査方向Xへの移動を開始する際、第1の加速度A1(
図6参照)で移動を開始させる。また、第2移動制御部64は、副走査方向Xに移動している記録媒体5を停止させる際、第1の加速度A1よりも絶対値が大きい第2の加速度A2(
図6参照)で停止させている。
【0062】
次に、記録媒体5の副走査方向Xへの移動が完了して、第1の時間T1よりも短い第2の時間T2(
図6参照)が経過した後、第1移動制御部62は、第1移動機構51のモータ24を制御して、ヘッド240を主走査方向Yへ移動させることで、次のスキャンが行われる。このとき、記憶部61に記憶された印刷画像における第1のインク6aの位置に対応した記録媒体5の領域上を第1インクヘッド240aが通過する際、第1吐出制御部65は、プラテン25に載置された記録媒体5に第1のインク6aを第1インクヘッド240aの第2ノズル列45aから吐出させる。同時に、印刷画像における第2のインク6bの位置に対応した記録媒体5の領域上を第2インクヘッド240b〜240eが通過する際、第2吐出制御部66は、プラテン25に載置された記録媒体5に第2のインク6bを第2インクヘッド240b〜240eの第1ノズル列44b〜44eから吐出させる。このように、ヘッド240の主走査方向Yへの移動、および、記録媒体5の副走査方向Xの行き方向X1への移動を交互に行いながら、第1吐出制御部65による第1のインク6aに関する印刷、および、第2吐出制御部66による第2のインク6bに関する印刷が行われる。
【0063】
本実施形態であっても、上記第1実施形態および上記第2実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態のようなヘッド240の構成であっても、記録媒体5の行き方向X1への移動のみで、記録媒体5上に、第1のインク6aによる層、および、第2のインク6bによる層を下方から積層した印刷物を作製することができる。したがって、種類が異なる複数のインクを重ねて印刷を行う際、印刷に要する時間を短縮することができる。
【0064】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態に係るプリンタについて説明する。第4実施形態に係るプリンタでは、インクヘッド240a〜240eの配置位置は、
図8に示すような第3実施形態に係るインクヘッド240a〜240eの配置位置である。そのため、本実施形態に係るインクヘッド240a〜240eの配置位置に関する詳しい説明は省略する。上述のように、各インクヘッド240a〜240eにおける複数のノズル42a〜42eの列のことを、それぞれノズル列43a〜43eという。また、各ノズル列43a〜43eのうち、前部に配置されたノズル列をそれぞれ第1ノズル列44a〜44eと称し、後部に配置されたノズル列をそれぞれ第2ノズル列45a〜45eと称する。
【0065】
なお、本実施形態では、第3実施形態とは異なり、インクヘッド240b〜240eが第1インクヘッドであり、インクヘッド240aが第2インクヘッドである。ここでは、第1インクヘッド240b〜240eから吐出される第1のインク6aは、画像形成用インクであり、例えばプロセスカラーインクである。第2インクヘッド240aから吐出される第2のインク6bは、下地用インクであり、例えばホワイトインクである。本実施形態では、第3実施形態と比較して、第1のインク6aの種類と、第2のインク6bの種類とが逆になっている。
【0066】
本実施形態では、第1インクヘッド240b〜240eのそれぞれの第2ノズル列45b〜45e、および、第2インクヘッド240aの第1ノズル列44aが使用される。そのため、本実施形態では、第1インクヘッド240b〜240eのそれぞれの第1ノズル列44b〜44e、および、第2インクヘッド240aの第2ノズル列45aは、省略されてもよい。ここでは、第1インクヘッド240b〜240eのそれぞれの第2ノズル列45b〜45eから第1のインク6a(ここでは、画像形成用インク)が吐出される。第2インクヘッド240aの第1ノズル列44aを構成するノズル42aから第2のインク6b(ここでは、下地用インク)が吐出される。本実施形態では、第1インクヘッド240b〜240eのそれぞれの第2ノズル列45b〜45eは、本発明の「第1吐出部」に対応している。第2インクヘッド240aの第1ノズル列44aは、本発明の「第2吐出部」に対応している。
【0067】
本実施形態では、第2実施形態と同様に、記録媒体5上に、第1のインク6aである画像形成用インクの層、第2のインク6bである下地用インクの層が下方から順に積層される。ここでは、記録媒体5は、透明の材質で形成されていることが好ましい。
【0068】
なお、本実施形態に係るプリンタによる印刷の手順は、第3実施形態に係るプリンタ300による印刷の手順と同様のため、詳しい説明は省略する。本実施形態であっても、媒体移動開始時間は第1の時間T1(
図6参照)であり、ヘッド移動開始時間は第1の時間T1よりも短い第2の時間T2(
図6参照)である。そのため、本実施形態であっても、上記各実施形態と同様の効果が得られる。
【0069】
上述したように、制御装置60の記憶部61、第1移動制御部62、吐出制御部63(詳しくは、第1吐出制御部65、および、第2吐出制御部66)、および、第2移動制御部64は、ソフトウェアによって構成されていてもよい。すなわち、上記各部は、コンピュータプログラムがコンピュータに読み込まれることにより、当該コンピュータによって実現されるようになっていてもよい。本発明には、コンピュータを上記各部として機能させるための印刷用のコンピュータプログラムが含まれる。また、本発明には、当該コンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体が含まれる。また、上記各部は、制御装置60が備える1つのプロセッサによって、実現されるものであってもよいし、複数のプロセッサによって実現されるものであってもよい。また、本発明には、各部が実行するプログラムと同様の機能が実現された回路が含まれる。
【解決手段】インクジェットプリンタ100の制御装置60は、インクを吐出する吐出部40を主走査方向Yに往復移動させる第1移動制御部62と、吐出部40が主走査方向Yに移動している間、吐出部40からインクを吐出させる吐出制御部63と、吐出部40が主走査方向Yに往復移動した後、プラテン25に載置された記録媒体5を副走査方向Xに所定の距離移動させる第2移動制御部64とを備えている。第2移動制御部64は、吐出部40の往復移動が完了してから所定の第1の時間T1が経過した後に、記録媒体5を副走査方向Xに移動させる。第1移動制御部62は、記録媒体5の副走査方向Xへの所定の距離の移動が完了した後、第1の時間T1よりも短い第2の時間T2が経過した後に、吐出部40を往復移動させる。