特許第6185217号(P6185217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6185217シリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子、その製造方法及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6185217
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】シリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子、その製造方法及びその用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20170814BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20170814BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20170814BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20170814BHJP
   B01J 13/06 20060101ALI20170814BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20170814BHJP
   C01B 33/159 20060101ALI20170814BHJP
   C09D 5/33 20060101ALI20170814BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170814BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20170814BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   A61K8/25
   A61K8/81
   A61K8/11
   A61Q1/12
   B01J13/06
   B32B27/18
   C01B33/159
   C09D5/33
   C09D7/12
   G02B1/04
   G02B5/02
【請求項の数】14
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-530355(P2017-530355)
(86)(22)【出願日】2017年2月27日
(86)【国際出願番号】JP2017007390
【審査請求日】2017年6月7日
(31)【優先権主張番号】特願2016-37351(P2016-37351)
(32)【優先日】2016年2月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】日下 明芳
(72)【発明者】
【氏名】山地 慶尚
(72)【発明者】
【氏名】原田 良祐
【審査官】 石川 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−523336(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/037202(WO,A1)
【文献】 特開2011−225381(JP,A)
【文献】 特開2009−209209(JP,A)
【文献】 特開2012−167286(JP,A)
【文献】 特開2005−082746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/25
A61K 8/11
A61K 8/81
A61Q 1/12
B01J 13/06
B32B 27/18
C01B 33/159
C09D 5/33
C09D 7/12
G02B 1/04
G02B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ポリマーから構成される外殻と、前記外殻により区画された空洞とを備え、前記空洞の内部にシリカ粒子が互いに連結された多孔質構造体を含み、0.5〜100μmの体積平均粒子径を有するシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子。
【請求項2】
前記多孔質構造体が、前記シリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子の全重量の5〜50%の重量を有し、前記空洞に中空構造を与える請求項1に記載のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子。
【請求項3】
前記外殻が多孔質状である請求項1に記載のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子。
【請求項4】
前記外殻が多孔質状であり、150〜500ml/100gの吸油量を有する請求項1に記載のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子。
【請求項5】
前記外殻が非孔質状であり、0.3〜1.0g/cmの見かけ比重を有する請求項1に記載のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子。
【請求項6】
請求項1に記載のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子の製造方法であり、
ラジカル重合性の単官能単量体100重量部及び架橋性単量体20〜80重量部と、シリカ前駆体としてのシリコーンアルコキシド60〜200重量部とを含む混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下、水系媒体中で懸濁重合させることで、架橋ポリマーから構成される外殻と、前記外殻により区画された空洞とを形成する工程と、前記外殻の形成後又は外殻の形成と同時にシリコーンアルコキシドをゲル化させることで、前記空洞の内部にシリカ粒子が互いに連結された多孔質構造体を形成する工程と含むシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
前記シリコーンアルコキシドが、単量体及びオリゴマーからなる混合物である請求項6に記載のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
前記懸濁重合が、非反応性有機溶剤の非存在下、チタン、ジルコニウム又はアルミニウムのアルコキシド化合物の存在下で行われる請求項6に記載のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子の製造方法。
【請求項9】
前記ゲル化が、前記外殻により区画された空洞内の酸又は塩基を触媒として行われ、前記酸又は塩基が、潜在性pH調整剤のエネルギー放射線又は熱による外部刺激により生じ、前記潜在性pH調整剤が、前記懸濁重合時の混合物中に前記潜在性pH調整剤を溶解させることにより前記空洞内に存在する請求項6に記載のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子を配合した化粧料。
【請求項11】
請求項1に記載のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子を配合した塗料組成物。
【請求項12】
請求項1に記載のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子を配合した断熱性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1に記載のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子を配合した光拡散性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1に記載のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子を配合した光拡散フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子、その製造方法及びその用途に関する。更に詳しくは、本発明は、特異な形状を有するシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子、その製造方法及びその用途に関する。本発明のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子は、その特性を活かした化粧料、塗料組成物、断熱性樹脂組成物、光拡散性樹脂組成物、光拡散フィルム等の用途に適している。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料、塗料組成物、断熱性樹脂組成物、光拡散性樹脂組成物、光拡散フィルム等の用途において、触感の改良、ソフトフォーカス効果、艶消し性、光拡散性の付与等のために、樹脂粒子、シリカ粒子、ガラス粒子や、酸化チタン、アルミナ、炭酸カルシウム等の無機系微粒子が添加剤として使用されている。
具体的な添加剤として、例えば、中空樹脂粒子(特開2009−237342号公報:特許文献1、国際公開第2014/030754号:特許文献2)が提案されている。
また、ミクロンサイズの中空粒子合成法を適用し、シリカ前駆体を内包したマイクロカプセル粒子を作製後、ゾルゲル反応を行うことで単一又は複数個のシリカ粒子を内包したマイクロカプセル粒子を得る方法が提案されている(Polymer Preprint,Japan Vol.64,No.2(2015) 1R11(ポリマーカプセル内ゾルゲル反応によるシリカ内包マイクロカプセルの作製 鈴木ら):非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−237342号公報
【特許文献2】国際公開第2014/030754号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Polymer Preprint,Japan Vol.64,No.2(2015) 1R11(ポリマーカプセル内ゾルゲル反応によるシリカ内包マイクロカプセルの作製 鈴木ら)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2の中空樹脂粒子及び非特許文献1の単一又は複数個のシリカ粒子を内包したマイクロカプセル粒子は、例えば、内部の空間による光の散乱性が十分とはいえず、高度な光拡散特性、隠ぺい性を得るには不十分であった。そのため、高度な光拡散特性を有する樹脂粒子の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者等は、外殻が架橋されたポリマーからなり、カプセル内部に多孔質構造のシリカを含有してなるシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
かくして本発明によれば、架橋ポリマーから構成される外殻と、前記外殻により区画された空洞とを備え、前記空洞の内部にシリカ粒子が互いに連結された多孔質構造体を含み、0.5〜100μmの体積平均粒子径を有するシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子が提供される。
また、本発明によれば、上記シリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子の製造方法であり、
ラジカル重合性の単官能単量体100重量部及び架橋性単量体20〜80重量部と、シリカ前駆体としてのシリコーンアルコキシド60〜200重量部とを含む混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下、水系媒体中で懸濁重合させることで、架橋ポリマーから構成される外殻と、前記外殻により区画された空洞とを形成する工程と、前記外殻の形成後又は外殻の形成と同時にシリコーンアルコキシドをゲル化させることで、前記空洞の内部にシリカ粒子が互いに連結された多孔質構造体を形成する工程と含むシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子の製造方法が提供される。
【0007】
更に、本発明によれば、上記シリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子を配合した化粧料が提供される。
また、本発明によれば、上記シリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子を配合した塗料組成物が提供される。
更に、本発明によれば、上記シリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子を配合した断熱性樹脂組成物が提供される。
また、本発明によれば、上記シリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子を配合した光拡散性樹脂組成物が提供される。
更に、本発明によれば、上記シリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子を配合した光拡散フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた光拡散性及び隠ぺい性という顕著な効果を奏するシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子を提供できる。
また、以下のいずれかの場合、より優れた光拡散性及び隠ぺい性という顕著な効果を奏するシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子を提供できる。
(1)多孔質構造体が、シリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子の全重量の5〜50%の重量を有し、空洞に中空構造を与える。
(2)外殻が多孔質状である。
(3)外殻が多孔質状であり、150〜500ml/100gの吸油量を有する。
(4)外殻が非孔質状であり、0.3〜1.0g/cmの見かけ比重を有する。
更に、以下のいずれかの場合、上記シリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子をより簡便に製造し得る方法を提供できる。
(a)シリコーンアルコキシドが、単量体及びオリゴマーからなる混合物である。
(b)懸濁重合が、非反応性有機溶剤の非存在下、チタン、ジルコニウム又はアルミニウムのアルコキシド化合物の存在下で行われる。
(c)ゲル化が、外殻により区画された空洞内の酸又は塩基を触媒として行われ、酸又は塩基が、潜在性pH調整剤のエネルギー放射線又は熱による外部刺激により生じ、潜在性pH調整剤が、懸濁重合時の混合物中に潜在性pH調整剤を溶解させることにより空洞内に存在する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子の表面写真及び断面写真である。
図2】実施例2のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子の表面写真及び断面写真である。
図3】実施例3のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子の表面写真及び断面写真である。
図4】実施例4のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子の表面写真及び断面写真である。
図5】実施例8のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子の表面写真及び断面写真である。
図6】実施例9のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子の表面写真及び断面写真である。
図7】紫外可視近赤外光の反射特性評価における各種粒子の各波長に対する光反射率を示すグラフである。
図8】実施例12のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子の表面写真及び断面写真である。
図9】実施例13のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子の表面写真及び断面写真である
【発明を実施するための形態】
【0010】
(シリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子)
シリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子(以下、シリカ内包粒子とも称する)は、架橋ポリマーから構成される外殻と、外殻により区画された空洞とを備えている。また、シリカ内包粒子は、空洞の内部にシリカ粒子が互いに連結された多孔質構造体を含む。更に、シリカ内包粒子は、0.5〜100μmの体積平均粒子径を有している。
【0011】
(1)外殻
架橋ポリマーは、外殻を構成できさえすればその種類は特に限定されない。架橋ポリマーとしては、ラジカル重合性の単量体に由来するポリマーが挙げられ、具体的には、ビニル基を1つ有する単官能単量体とビニル基を2つ以上有する架橋性単量体との共重合体が挙げられる。
ビニル基を1つ有する単官能単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、無水マレイン酸、N−ビニルカルバゾール;スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系単量体等が挙げられる。これらの単官能単量体を単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0012】
ビニル基を2つ以上有する架橋性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリルエステル、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能アクリルアミド誘導体、ジアリルアミン、テトラアリロキシエタン等の多官能アリル誘導体等、ジビニルベンゼン等の芳香族系ジビニル化合物等が挙げられる。これらの架橋性単量体を単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0013】
架橋性単量体は、全ラジカル単量体100重量に対して、10重量部以上の割合で外殻に含まれていることが好ましい。架橋性単量体の含有量が10重量部未満の場合、十分な強度を有する外殻が形成されないことがある。含有量が80重量部より多い場合、外殻が多孔質状となり、用途によってはシリカ内包粒子内部へのバインダー樹脂等の浸透を抑制できないことがある。非多孔質状の外殻を得ようとする場合、含有量は20〜70重量部、より好ましくは30〜55重量部であることがより好ましい。多孔質状の外殻を得ようとする場合、含有量は80重量部より多いことが好ましい。
【0014】
(2)シリカからなる多孔質構造体
多孔質構造体は、シリカ粒子が互いに連結された構成を有する。ここで、多孔質構造とは、複数のシリカ粒子の一部が互いに連結し、かつ未連結部において、シリカ粒子間にマクロ多孔としての間隙が形成された構造を意味する。多孔質構造体は、下記諸物性の欄に記載した、空洞の全体積に対する割合の範囲の体積を有することが好ましい。
更に、個々のシリカ粒子は、主としてSiOからなる。シリカ粒子は、例えば、シリカ前駆体をゲル化させることで得ることができる。シリカ前駆体としては、同一分子内に1つ以上のケイ素原子とアルコキシ基(例えば、炭素数1〜4)を有するシリコーンアルコキシドが挙げられる。具体的には、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシラン等が挙げられる。また、テトラメトキシシランの部分加水分解オリゴマーであるメチルシリケートオリゴマー(三菱化学社製 商品名;MKCシリケート)、テトラエトキシシランの部分加水分解オリゴマーであるエチルシリケートオリゴマー(多摩化学社製 製品名;シリケート45(5量体)、シリケート48(10量体))、シロキサンオリゴマー等のオリゴマーが挙げられる。これらのシリカ前駆体を単独又は複数を組み合わせて用いることができる。この内、単官能のシリカ前駆体として、テトラエトキシシランが、オリゴマーであるシリカ前駆体として、エチルシリケートシロキサンオリゴマーが好ましい。
多孔質構造体は、優れた光拡散性及び隠ぺい性をシリカ内包粒子に付与するために、外殻の内壁に存在することが好ましい。
【0015】
(3)諸物性
(a)体積平均粒子径
シリカ内包粒子は、0.5〜100μmの体積平均粒子径を有する。体積平均粒子径が0.5μm未満の場合、微小なカプセル粒子を得ることが困難である。100μmより大きい場合、カプセル粒子のつぶれにより製造が困難である。体積平均粒子径は、0.5μm、1μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、70μm、90μm、100μmをとり得る。用途にもよるが、体積平均粒子径は、3〜80μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。
【0016】
(b)見かけ比重
外殻が非多孔質状の場合、シリカ内包粒子は、0.3〜1.0g/cmの見かけ比重を有することが好ましい。見かけ比重が0.3g/cm未満の場合、外殻の樹脂層が薄く、強度が低下となることがある。1.0g/cmより大きい場合、内部のシリカからなる多孔質構造体による効果が十分に発揮されないことがある。見かけ比重は0.3g/cm、0.4g/cm、0.5g/cm、0.6g/cm、0.7g/cm、0.8g/cm、0.9g/cm、1.0g/cmをとり得る。見かけ比重は0.3〜0.9g/cmであることが好ましい。
【0017】
(c)外形等
シリカ内包粒子の外形は特に限定されないが、できるだけ球状に近いことが好ましい。
外殻の厚さは、体積平均粒子径の5〜40%であることが好ましい。厚さが5%未満の場合、外殻が十分な強度を有さないことがある。40%より大きい場合、内部のシリカ構造による効果が不十分となることがある。厚さは、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%をとり得る。厚さは、10〜30%であることがより好ましい。
外殻は多孔質であってもよい。多孔質であることで、一般的なシリカ多孔質状樹脂粒子と比べて、粒子自体の強度の向上が期待でき、崩壊しづらい粒子を提供できる。また、空隙率を向上することも可能である。また、一般的な多孔質樹脂粒子は多量の多孔化剤(溶剤)を使用して多孔質化しており、吸油量の大きな微粒子を得るには多量の多孔化剤を使用する必要があり、生産性が著しく低下する等の課題がある。それに対して本発明の粒子では、多量の多孔化剤を使用することなくマイクロカプセル内部のシリカからなる多孔質構造において空隙率90%を超えることも可能である。多孔質の程度は、吸油量により規定できる。吸油量は、150〜500ml/100gであることが好ましい。吸油量は、150ml/100g、200ml/100g、250ml/100g、300ml/100g、350ml/100g、400ml/100g、450ml/100g、500ml/100gをとり得る。細孔径、細孔容積等の他の指標により多孔質の程度を規定することも可能である。
【0018】
シリカよりなる多孔質構造体は、シリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子の全重量の5〜50%の重量を有していることが好ましい。多孔質構造体の重量が5%未満の場合、シリカによる多孔質体の形成が不十分となることがある。50%より大きい場合、相対的に外殻の割合が低下し、十分な強度を有さないことがある。重量は、全重量の5%、10%、20%、30%、40%、45%、50%をとり得る。重量は、10〜45%であることが好ましい。
【0019】
(シリカ内包粒子の製造方法)
シリカ内包粒子の製造方法は、水性媒体中に乳化分散したシリカ前駆体とラジカル重合性の単量体とを含む混合物中の単量体を重合させてシリカ前駆体を内部に含むマイクロカプセルを得る重合工程と、マイクロカプセル中のシリカ前駆体をゲル化させることによりシリカ粒子とするゲル化工程とを含む。
【0020】
(1)重合工程
重合工程では、まず、シリカ前駆体と単量体とを含む混合物を水性媒体中に乳化により分散させる。なお、単量体の使用量と、外殻を構成する単量体由来成分の含有量は、実質的に一致している。
乳化分散は、特に限定されず、所望の粒径のシリカ内包粒子が得られるように、撹拌速度、撹拌時間等の諸条件を適宜調整しつつ行われる。
【0021】
単量体の重合は、重合開始剤の存在下で行われることが好ましい。重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、クメンハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジメチルビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ビス(tert−ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ブチル−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレラート、2−エチルヘキサンペルオキシ酸tert−ブチル、ジベンゾイルパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド及びtert−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物類、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−エチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(2,2’−アゾビス(2−メチル−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルカプロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−エトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−n−ブトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピネート)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、ジメチル−2,2'−アゾビス(2−メチルプロピネート)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)等のアゾ化合物類が挙げられる。これらの重合開始剤を単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0022】
重合開始剤は、混合物中に、単量体100重量部に対して、0.05〜5重量部含まれていることが好ましい。
水性媒体としては、例えば、水、水と水溶性有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコール)との混合物等が挙げられる。
また、重合は、非反応性有機溶剤の存在下で行ってもよい。非反応性有機溶剤としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、デカン、ヘキサデカン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1,4−ジオキサン、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。これらの非反応性有機溶剤を単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
非反応性溶媒の添加量は、特に限定されないが、単量体100重量部に対して、0〜300重量部である。300重量部を超えると、マイクロカプセルの形成が不十分となることがある。
本発明において、非多孔性の外殻を有するシリカ内包マイクロカプセルを得るには、単量体100重量部に対し、非反応性有機溶媒を10〜50重量部の範囲で用いればよい。用いる溶媒の種類にもよるが50重量部を超えると多孔性の外殻を有するシリカ内包マイクロカプセルが得られやすくなる。
【0023】
更に、重合は、シランアルコキシドと比較し、加水分解性の高いチタン、ジルコニウム又はアルミニウムのアルコキシド化合物の存在下で行うことにより、容易にカプセル内にシリカ多孔質構造を形成できる。これらアルコキシド化合物を使用する場合、非反応性有機溶媒を使用しなくてもよい。即ち、これら化合物は、シランアルコキシドのようなシリカ前駆体よりも加水分解性が高いため、マイクロカプセル内でゲル化し、シリカ前駆体のカプセル内での移動を抑制して、多孔質化を促進する効果があると発明者等は考えている。
チタンのアルコキシド化合物としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(n−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)ジイソプロピルチタネート、テトラメチルオルソチタネート、テトラエチルオルソチタネート、テトラプロピルオルソチタネート、テトライソプロピルテトラエチルオルソチタネート、テトラブチルオルソチタネート、ブチルポリチタネート、テトライソブチルオルソチタネート、2−エチルヘキシルチタネート、ステアリルチタネート、クレシルチタネートモノマー、クレシルチタネートポリマー、ジイソプロポキシ−ビス−(2,4−ペンタジオネート)チタニウム(IV)、ジイソプロピル−ビス−トリエタノールアミノチタネート、オクチレングリコールチタネート、チタニウムラクテート、アセトアセティックエステルチタネート、ジイソプロポキシビス8アセチルアセトナト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアルミナト)チタン、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタン、チタニウム−イソプロポキシオクチレングリコレート、チトラ−n−ブトキシチタンポリマー、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレートポリマー、ブチルチタネートダイマー、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0024】
ジルコニウムのアルコキシド化合物としては、ジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブチレート、ジルコニウムラクテート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート、テトラ(トリエタノールアミン)ジルコネート、テトライソプロピルジルコネート等が挙げられる。
アルミニウムのアルコキシド化合物としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(アルキルの炭素数は1〜20)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等が挙げられる。
これらのアルコキシド化合物を単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
アルコキシド化合物の添加量は、特に限定されないが、単量体100重量部に対して、10重量部以下である。10重量部を超えると、単量体混合物を水系媒体中に懸濁・乳化する際に十分な液滴の分散安定性を保持できないため、粒子が得られないことがある。
なお、ここで非反応性有機溶媒又はシランアルコキシドと比較し、加水分解性の高いチタン、ジルコニウム又はアルミニウムのアルコキシド化合物を添加しない場合には、マイクロカプセル内部には単一又は複数個の球状シリカ粒子が生成され、本発明の目的とするカプセル内部にシリカからなる多孔質構造を有する樹脂粒子を得ることはできない。
【0025】
次に、乳化分散させた混合物は、その中の単量体を重合に付すことで、シリカ前駆体を内部に含むマイクロカプセルとなる。重合は、特に限定されず、混合物に含まれる単量体及び重合開始剤の種類に応じて、重合温度、重合時間等の諸条件を適宜調整しつつ行われる。例えば、重合温度を30〜80℃、重合時間を1〜20時間とすることができる。
【0026】
(2)ゲル化工程
ゲル化工程では、乳化液中に存在するマイクロカプセル中のシリカ前駆体が、ゲル化反応によりシリカ粒子となることでシリカ内包粒子が得られる。ゲル化反応は、乳化液をアルカリ性(例えば、pH7以上、具体的にはpH10〜14)に維持しつつ行うことが好ましい。アルカリ性の維持は、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基を乳化液に添加することによって行うことができる。塩基の添加量は、シリカ前駆体に対して、1〜10等量であることが好ましい。
ゲル化工程は、特に限定されず、シリカ前駆体がゲル化して、シリカ粒子となるために必要な条件(ゲル化のための温度、時間、撹拌速度等)下で行うことができる。例えば、ゲル化温度を30〜80℃、ゲル化時間を1〜24時間とすることができる。
ゲル化工程は、潜在性pH調整剤の共存下で行ってもよい。潜在性pH調整剤を共存させることで、乳化液に添加される塩基の量を低減することが可能となる。例えば、塩基としてアンモニアを使用する場合、潜在性pH調整剤を共存させる場合は、アンモニア量を3等量以下(例えば、アンモニア未使用、0.01〜3等量)に減らしても、効率よくゲル化を行うことができる。塩基を減らすことができることで、製造時の作業性を向上できるという効果を奏する。潜在性pH調整剤の使用量は、この剤の種類や製造条件等により変動するが、例えば、シリカ前駆体100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましい。使用量は、0.1〜5重量部であることがより好ましい。
潜在性pH調整剤とは、エネルギー放射線の照射、加熱等の外部刺激により、酸又は塩基を発生する物質が含まれる。エネルギー放射線とは、赤外線、可視光、紫外線等が挙げられる。
【0027】
以下に潜在性pH調整剤の具体例を記載する。
(i)加熱により酸が発生する潜在性pH調整剤(熱酸発生剤)としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、オキソニウム塩、鉄‐アレン錯体、芳香族シラノール・アンモニウム錯体、ジアリルヨードニウム塩−ジベンジルオキシ銅、イミダゾール誘導体、ベンジルスルホニウム塩、ヘミアセタールエステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
また、例えば、ジシアンジアミド、シクロヘキシルp−トルエンスルホネート、ジフェニル(メチル)スルホニウムテトラフルオロボラート、4−ヒドロキシフェニルベンジルメチルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、(4−アセトキシフェニル)ベンジルメチルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、4−ヒドロキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、ジ−tert−ブチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(4−フルオロフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、シクロプロピルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホン酸、2−(3,4―ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)ビニル]―4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)ビニル]―4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、4−ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボラート、(4−ニトロフェニル)(フェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリ−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリ−p−トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(1R,2S,5R)−5−メチル−2−(プロパン−2−イル)シクロヘキシル4−メチルベンゼンスルホネート、ビス[4−n−アルキル(C10〜13)フェニル)ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、シクロヘキシル4−メチルベンゼンスルホネート等が挙げられる。
また、市販品を用いてもよい。例えば、三新化学社製「サンエイドSI−60L、SI−60L、SI−100L、SI−150L」、みどり化学社製「TPS」、「DBPI」、ダウケミカル社製「UVI―6990」、チバガイギー社製「イルガキュア261」等が挙げられる。
【0028】
(ii)加熱により塩基が発生する潜在性pH調整剤(熱塩基発生剤)としては、例えば、1,2―ジイソプロピル−3−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアジニウム2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオネート、1,2―ジシクロヘキシル−4,4,5,5−テトラメチルビグアジニウムn−ブチルトリフェニルボレート、(Z)−{[ビス(ジメチルアミノ)メチリデン]アミノ}−N−シクロヘキシル(シクロヘキシルアミノ)メタンイミニウムテトラキス(3−フルオロフェニル)ボレート、アセトフェノンO−ベンゾイルオキシム、シクロヘキシルカルバミン酸1,2−ビス(4−メトキシフェニル)−2−オキソエチル、1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチル−4−(2−ニトロフェニル)−3,5−ピリジンジカルボン酸ジメチル、シクロヘキシルカルバミン酸2−ニトロベンジル、2−(9−オキソキサンテン−2−イル)プロピオン酸1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン2−(9−オキソキサンテン−2−イル)プロピオン酸1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン等が挙げられる。
【0029】
(iii)エネルギー放射線の照射により酸が発生する潜在性pH調整剤(光酸発生剤)としては、ビス(シルロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、2−メチル−2−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−1−プロパノン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−メチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニル(4−メトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メチルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、(1R,2S,5R)−5−メチル−2−(プロパン−2−イル)シクロヘキシル4−メトキシベンゼンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(4−フルオロフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、シクロプロピルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホン酸、2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、4−ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボラート、(4−ニトロフェニル)(フェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリ−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリ−p−トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
また市販品を用いても良い。例えば、三新化学社製「サンエイドSI−60L、SI−60L、SI−100L、SI−150L」、みどり化学社製「BBI−109」、「TPS」、「DBPI」、ダウケミカル社製「UVI―6990」、チバガイギー社製「イルガキュア261」等が挙げられる。
【0030】
(iv)エネルギー放射線の照射により塩基が発生する潜在性pH調整剤(光塩基発生剤)としては、(Z)−{[ビス(ジメチルアミノ)メチリデン]アミノ}−N−シクロヘキシル(シクロヘキシルアミノ)メタンイミニウムテトラキス(3−フルオロフェニル)ボレート、1,2−ジシクロヘキシル−4,4,5,5−テトラメチルビグアジニウムn−ブチルロリフェニルボレート、1,2−ジイソプロピル−3−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアジニウム2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオネート、9−アンスリルメチルN,N−ジエチルカルバメート、(E)−1−ピペリジノ−3−(2−ヒドロキシフェニル)−2−プロペン−1−オン、1−(アントラキノン−2−イル)エチルイミダゾールカルボキシレート、2−ニトロフェニルメチル4−メタクリロイルオキシピペリジン−1−カルボキシレート、アセトフェノンO−ベンゾイルオキシム、シクロヘキシルカルバミン酸1,2−ビス(4−メトキシフェニル)−2−オキソエチル、1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチル−4−(2−ニトロフェニル)−3,5−ピリジンジカルボン酸ジメチル、シクロヘキシルカルバミン酸2−ニトロベンジル、2−(9−オキソキサンテン−2−イル)プロピオン酸、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、2−(9−オキソキサンテン−2−イル)プロピオン酸1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン等が挙げられる。
【0031】
潜在性pH調整剤の添加時期は、少なくともゲル化時に外殻により区画された空洞内に存在していさえすれば、特に限定されない。例えば、懸濁重合時のシリカ前駆体と単量体とを含む混合物中に潜在性pH調整剤を溶解させることにより空洞内に存在させることができる。潜在性pH調整剤を使用する場合は、ゲル化温度を35〜180℃、ゲル化時間を0.1〜48時間とすることができる。
(3)その他の工程
ゲル化工程後のシリカ内包粒子は、必要に応じて、遠心分離、水洗及び乾燥を経ることで、乳化液から取り出すことができる。
【0032】
(用途)
シリカ内包粒子は、化粧料、塗料組成物、断熱性樹脂組成物、光拡散性樹脂組成物、光拡散フィルム等の用途で使用できる。
(1)化粧料
化粧料は、シリカ内包粒子を1〜40重量%の範囲で含んでいることが好ましい。
化粧料としては、石鹸、ボディシャンプー、洗顔クリーム、スクラブ洗顔料等の洗浄用化粧品、化粧水、クリーム、乳液、パック類、おしろい類、ファンデーション、口紅、リップクリーム、頬紅、眉目化粧品、マニキュア化粧品、洗髪用化粧品、染毛料、整髪料、芳香性化粧品、歯磨き、浴用剤、制汗剤、日焼け止め製品、サンタン製品、ボディーパウダー、ベビーパウダー等のボディー用化粧料、ひげ剃り用クリーム、プレシェーブローション、アフターシェーブローション、ボディローション等のローション等が挙げられる。
【0033】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料に一般に用いられている成分を目的に応じて配合できる。そのような成分として、例えば、水、低級アルコール、油脂及びロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、ステロール、脂肪酸エステル、金属石鹸、保湿剤、界面活性剤、高分子化合物、色材原料、香料、防腐・殺菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、特殊配合成分が挙げられる。
油脂及びロウ類としてはアボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、牛脂、ゴマ脂、小麦胚芽油、サフラワー油、シアバター、タートル油、椿油、パーシック油、ひまし油、ブドウ油、マカダミアナッツ油、ミンク油、卵黄油、モクロウ、ヤシ油、ローズヒップ油、硬化油、シリコン油、オレンジラフィー油、カルナバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ、ホホバ油、モンタンロウ、ミツロウ、ラノリン等が挙げられる。
炭化水素としては、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等が挙げられる。高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、オキシステアリン酸、リノール酸、ラノリン脂肪酸、合成脂肪酸が挙げられる。
【0034】
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール、へキシルデカノール、オクチルデカノール、イソステアリルアルコール、ホホバアルコール、デシルテトラデカノール等が挙げられる。
ステロールとしては、コレステロール、ジヒドロコレステロール、フィトコレステロール等が挙げられる。
脂肪酸エステルとしては、リノール酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキサデシル、イソオクタン酸セチル、パルミチン酸デシル、トリミリスチン酸グリセリン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリン、トリイソオクタン酸グリセリン、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリルやイソステアリン酸コレステリル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル等の環状アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0035】
金属石鹸としては、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ウンデシレン酸亜鉛等が挙げられる。
保湿剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリグリセリン、キシリット、マルチトール等が挙げられる。
界面活性剤としては、高級脂肪酸石鹸、高級アルコール硫酸エステル、N−アシルグルタミン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、アミン塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、ベタイン型、アミノ酸型、イミダゾリン型、レシチン等の両性界面活性剤、脂肪酸モノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、酸化エチレン縮合物等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0036】
高分子化合物としては、アラビアゴム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼイン等の天然高分子化合物、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース等の半合成高分子化合物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミド樹脂、シリコーン油、ナイロン粒子、ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子、シリコン粒子、ウレタン粒子、ポリエチレン粒子、シリカ粒子等の樹脂粒子等の合成高分子化合物が挙げられる。
【0037】
色材原料としては、酸化鉄、群青、コンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、マンガンバイオレット、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、雲母、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー等の無機顔料、アゾ系、ニトロ系、ニトロソ系、キサンテン系、キノリン系、アントラキノリン系、インジゴ系、トリフェニルメタン系、フタロシアニン系、ピレン系等のタール色素が挙げられる。
【0038】
ここで、上記高分子化合物や色材原料等の粉体原料については、予め表面処理が施されていてもよい。表面処理方法としては従来公知の表面処理技術が利用できる。例えば、炭化水素油、エステル油、ラノリン等による油剤処理、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等によるシリコーン処理、パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルキル基を有する重合体等によるフッ素化合物処理、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等によるシランカップリング剤処理、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート等によるチタンカップリング剤処理、金属石鹸処理、アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理、水添卵黄レシチン等によるレシチン処理、コラーゲン処理、ポリエチレン処理、保湿性処理、無機化合物処理、メカノケミカル処理等の処理方法が挙げられる。
【0039】
香料としては、ラベンダー油、ペパーミント油、ライム油等の天然香料、エチルフェニルアセテート、ゲラニオール、p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート等の合成香料が挙げられる。防腐・殺菌剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ベンザルコニウム、ベンゼトニウム等が挙げられる。
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、トコフェロール等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化鉄、微粒子酸化ジルコニウム等の無機系吸収剤、安息香酸系、パラアミノ安息香酸系、アントラニリック酸系、サルチル酸系、桂皮酸系、ベンゾフェノン系、ジベンゾイルメタン系等の有機系吸収剤が挙げられる。
【0040】
特殊配合成分としては、エストラジオール、エストロン、エチニルエストラジオール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン等のホルモン類、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、硫酸亜鉛等の皮膚収斂剤、カンタリスチンキ、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、センブリエキス、ニンニクエキス、ヒノキチオール、塩化カルプロニウム、ペンタデカン酸グリセリド、ビタミンE、エストロゲン、感光素等の発毛促進剤、リン酸−L−アスコルビン酸マグネシウム、コウジ酸等の美白剤等が挙げられる。
【0041】
(2)塗料、断熱性及び光拡散性の組成物
これら組成物は、必要に応じて、バインダー樹脂、UV硬化性樹脂、溶剤等が含まれる。バインダー樹脂としては、有機溶剤又は水に可溶な樹脂もしくは水中に分散できるエマルション型の水性樹脂を使用できる。
バインダー樹脂又はUV硬化性樹脂及びシリカ内包粒子の添加量は、形成される塗膜の膜厚、シリカ内包粒子の平均粒子径及び塗装方法によっても異なる。バインダー樹脂の添加量は、バインダー樹脂(エマルジョン型の水性樹脂を使用する場合は固形分)とシリカ内包粒子との合計に対して5〜50重量%が好ましい。より好ましい含有量は10〜50重量%であり、更に好ましい含有量は20〜40重量%である。
バインダー樹脂としては、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂等が挙げられ、UV硬化性樹脂としては多価アルコール多官能(メタ)アクリレート等のような多官能(メタ)アクリレート樹脂;ジイソシアネート、多価アルコール、及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等から合成されるような多官能ウレタンアクリレート樹脂等が挙げられる。
【0042】
UV硬化性樹脂としては、多官能(メタ)アクリレート樹脂が好ましく、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価アルコール多官能(メタ)アクリレート樹脂がより好ましい。1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価アルコール多官能(メタ)アクリレート樹脂としては、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0043】
UV硬化性樹脂を用いる場合には、通常光重合開始剤が併用される。光重合開始剤は、特に限定されない。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、α−アミノアルキルフェノン、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001−139663号公報等に記載)、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、オニウム塩類、ボレート塩、活性ハロゲン化合物、α−アシルオキシムエステル等が挙げられる。
これらバインダー樹脂又はUV硬化性樹脂は、塗装される基材への塗料の密着性や使用される環境等によって適宜選択され得る。
【0044】
溶剤としては、特に限定されないが、バインダー樹脂又はUV硬化性樹脂を溶解又は分散できる溶剤を使用することが好ましい。例えば、油系塗料であれば、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。水系塗料であれば、水、アルコール類等が使用できる。これら溶剤は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。コーティング材料中の溶剤含有量は、組成物全量に対し、通常20〜60重量%程度である。
【0045】
組成物には、必要に応じて、公知の塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料等が含まれていてもよい。
組成物を使用した塗膜の形成方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。例えば、スプレー塗装法、ロール塗装法、ハケ塗り法等の方法、及び薄層としてフィルム等基材にコーティングするにはコーティングリバースロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法、コンマコート法、スプレーコート法が挙げられる。組成物は、必要に応じて粘度を調整するために、希釈してもよい。希釈剤としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;水;アルコール系溶剤等が挙げられる。これら希釈剤は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
基材等の任意の塗工面に塗工して塗工膜を作製し、この塗工膜を乾燥させた後、必要に応じて塗工膜を硬化させることによって、塗膜を形成できる。なお、塗料組成物を使用した塗膜は各種基材にコーティングして使用され、金属、木材、ガラス、プラスチックス等特に限定されない。また、PET、PC、アクリル等の透明基材にコーティングして用いることもできる。
【0046】
(3)光拡散フィルム
光拡散フィルムは、ガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等のプラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチックレンズ、プラスチックパネル等の基材、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板等の基材の表面に前記の光拡散性組成物による光拡散層を形成したものである。用途によって異なるが、被膜が単独であるいは基材上に保護膜、ハードコート膜、平坦化膜、高屈折率膜、絶縁膜、導電性樹脂膜、導電性金属微粒子膜、導電性金属酸化物微粒子膜、その他必要に応じて用いるプライマー膜等と組み合わせて形成されている。なお、組み合わせて用いる場合、光拡散層が必ずしも最外表面に形成されている必要はない。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。まず、実施例中の測定方法について説明する。
(体積平均粒子径の測定)
シリカ内包粒子の体積平均粒子径は、コールターMultisizerTM3(ベックマン・コールター社製測定装置)により測定した。測定は、ベックマン・コールター社発行のMultisizerTM3ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施した。
なお、測定に用いるアパチャーの選択は、測定する粒子の想定の体積平均粒子径が1μm以上10μm以下の場合は50μmのサイズを有するアパチャーを選択し、測定する粒子の想定の体積平均粒子径が10μmより大きく30μm以下の場合は100μmのサイズを有するアパチャーを選択し、粒子の想定の体積平均粒子径が30μmより大きく90μm以下の場合は280μmのサイズを有するアパチャーを選択し、粒子の想定の体積平均粒子径が90μmより大きく150μm以下の場合は400μmのサイズを有するアパチャーを選択するなど、適宜行った。測定後の体積平均粒子径が想定の体積平均粒子径と異なった場合は、適正なサイズを有するアパチャーに変更して、再度測定を行った。
【0048】
また、50μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は−800、Gain(ゲイン)は4と設定し、100μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は−1600、Gain(ゲイン)は2と設定し、280μm及び400μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は−3200、Gain(ゲイン)は1と設定した。
測定用試料としては、重合体粒子0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10m1中にタッチミキサー(ヤマト科学社製、「TOUCHMIXER MT−31」)及び超音波洗浄器(ヴェルヴォクリーア社製、「ULTRASONICCLEANER VS−150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用した。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、粒子を10万個測定した時点で測定を終了した。粒子の体積平均粒子径は、10万個の粒子の体積基準の粒度分布における算術平均とした。
【0049】
(見かけ比重の測定)
JIS Z 8807:2012に準じ、以下の方法で粒子の比重を測定した。
シリカ内包粒子の比重については、まず、粒子10gをルツボに採取し、100℃で2時間乾燥させた。次いで、デシケーターにて冷却後、25mlピクノメーターに3〜4g入れ、蒸留水を加えて懸濁し、超音波バス中にて粒子の分散及び脱泡を行った後に、25℃恒温槽にて温度調整した。ピクノメーターの標線まで蒸留水を加えて容量を調整し、ピクノメーターの容量(25ml)と蒸留水の容量(ml)の差から粒子の容量(ml)を算出した。加えた粒子の重量(g)と算出された容量(ml)から密度を求めた。
【0050】
(外殻の厚さの測定)
得られた粒子の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、体積平均粒子径付近の任意の30個を観察して、平均の外殻の厚みを計測した。
なお、外殻の組成が架橋ポリマーよりなることは、得られる粒子のXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)測定等により、粒子表層にシリカ由来のピークがほとんど見られないことから確認することができた。
(シリカ内包粒子中のシリカ重量)
測定対象の粒子1.0gを計量した後、計量したシリカ内包マイクロカプセル粒子を550℃で30分間、電気炉内で焼失させて、残った残渣の重量(g)を測定した。そして、測定した残渣の重量(g)を、測定前の粒子の重量(1.0g)で除し、百分率換算して、強熱残分(重量%)を得た。得られた強熱残分(重量%)は、複合粒子中のシリカの含有量を表した。
【0051】
(吸油量測定)
シリカ内包粒子の吸油量は、JIS K 5101−13−2の測定方法をベースとして、煮アマニ油に代えて精製アマニ油を使用し、終点の判断基準を変更した(「測定板をたてて、試料が流動を開始した」時点に変更した)方法によって、測定した。吸油量の測定の詳細は、以下の通りとした。
(A)装置及び器具
測定板:300×400×5mmより大きい平滑なガラス板
パレットナイフ(ヘラ):鋼製又はステンレス製の刃を持った柄つきのもの
化学はかり(計量器): 10mgオーダーまで計れるもの
ビュレット:JIS R 3505に規定する容量10mlのもの
(B)試薬
精製アマニ油:ISO 150に規定するもの(今回は一級アマニ油(和光純薬工業社製)を用いた)
【0052】
(C)測定方法
(1)シリカ内包粒子(試料)1gを測定板上の中央部に取り、精製アマニ油をビュレットから一回に4、5滴ずつ、徐々に粒子の中央に滴下し、その都度、粒子及び精製アマニ油の全体をパレットナイフで充分練り合わせた。
(2)上記の滴下及び練り合わせを繰り返し、粒子及び精製アマニ油の全体が固いパテ状の塊になったら1滴ごとに練り合わせて、精製アマニ油の最後の1滴の滴下によりペースト(粒子及び精製アマニ油の混練物)が急激に軟らかくなり、流動を始める点を終点とした。
(3)流動の判定
精製アマニ油の最後の1滴の滴下により、ペーストが急激に軟らかくなり、測定板を垂直に立てた時にペーストが動いた場合に、ペーストが流動していると判定した。測定板を垂直に立てた時もペーストが動かない場合には、更に精製アマニ油を1滴加えた。
(4)終点に達したときの精製アマニ油の消費量をビュレット内の液量の減少分として読み取った。
(5)1回の測定時間は7〜15分以内に終了するように実施し、測定時間が15分を超えた場合は再測定し、規定の時間内で測定を終了した時の数値を採用した。
(D)吸油量の計算
下記式によりシリカ内包粒子100g当たりの吸油量を計算した。
O=(V/m)×100
ここで、O:吸油量(ml/100g)、m:シリカ内包粒子の重量(g)、V:消費した精製アマニ油の容積(ml)
【0053】
(実施例1)
単官能単量体としてのメチルメタクリレート(MMA)25g、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)25g、シリカ前駆体としてのテトラエトキシシラン(TEOS)40g、非反応性有機溶剤としてのシクロヘキサン10g、重合開始剤としての2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬社製;製品名V−70)0.5gを混合・溶解して、混合物を調製した。得られた混合物を1重量%の濃度に調製したポリビニルアルコール(PVA)(日本合成化学社製;製品名ゴーセノールGH−17)水溶液300mlに混合した。得られた混合液を1Lビーカーに投入し、ホモミキサー(プライミクス社製;製品名 ホモミキサー MK−II 2.5型)を用いて、回転数4000rpmにて3分間乳化・分散処理を行った。
得られた乳化液を500mlのガラス製セパラブルフラスコに投入し、直径8cmのタービン状攪拌翼にて200rpmにて攪拌しながら、50℃の温度にて8時間の重合を行い、シリカ前駆体としてのTEOSを内部に含むマイクロカプセルを得た。
その後、30℃の条件下にて乳化液にTEOSの1倍等量のアンモニア水を投入し、24時間攪拌することで、マイクロカプセル内のTEOSのゲル化反応の進行により、シリカ内包粒子を得た。
得られたシリカ内包粒子を、遠心分離及び上澄みの分離に付すことで乳化液から取り出し、水洗を繰り返し、精製を行った後、60℃にて真空オーブンで乾燥させた。
得られたシリカ内包粒子は、非多孔性であり、表面写真を図1(a)に、断面写真を図1(b)に示す。また、22.3μmの体積平均粒子径と0.65g/cmの見かけ比重を有していた。更に、シリカ内包粒子の外殻の厚さは2.3μm、シリカ内包粒子中のシリカ重量は17.2重量%であった。
【0054】
(実施例2)
シクロヘキサンに代えてトルエンを使用すること以外は実施例1と同様にしてシリカ内包粒子を得た。
得られたシリカ内包粒子は、非多孔性であり、表面写真を図2(a)に、断面写真を図2(b)に示す。また、12.5μmの体積平均粒子径と0.68g/cmの見かけ比重を有していた。更に、シリカ内包粒子の外殻の厚さは1.2μm、シリカ内包粒子中のシリカ重量は17.5重量%であった。
(実施例3)
TEOSを35g、シクロヘキサンに代えてトルエンを15g使用すること以外は実施例1と同様にしてシリカ内包粒子を得た。
得られたシリカ内包粒子は、非多孔性であり、表面写真を図3(a)に、断面写真を図3(b)に示す。また、20.5μmの体積平均粒子径と0.63g/cmの見かけ比重を有していた。更に、シリカ内包粒子の外殻の厚さは2.1μm、シリカ内包粒子中のシリカ重量は15.8重量%であった。
【0055】
(実施例4)
TEOSに代えてシロキサンオリゴマー(多摩化学社製;商品名 シリケート45)を50g使用し、シクロヘキサンを使用せず、アルミニウム系アルコキシド化合物としてアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピオネート(味の素ファインテクノ社製;商品名 プレンアクトAL−M)を1.5g使用すること以外は実施例1と同様にしてシリカ内包粒子を得た。
得られたシリカ内包粒子は、非多孔性であり、表面写真を図4(a)に、断面写真を図4(b)に示す。また、53.5μmの体積平均粒子径と0.73g/cmの見かけ比重を有していた。更に、シリカ内包粒子の外殻の厚さは4.8μm、シリカ内包粒子中のシリカ重量は28.2重量%であった。
(実施例5)
TEOSを90g、シクロヘキサンに代えてトルエンを使用すること以外は実施例1と同様にしてシリカ内包粒子を得た。
得られたシリカ内包粒子は、非多孔性であった。また、14.2μmの体積平均粒子径と0.58g/cmの見かけ比重を有していた。更に、シリカ内包粒子の外殻の厚さは0.8μm、シリカ内包粒子中のシリカ重量は30.3重量%であった。
【0056】
(実施例6)
TEOSを20g、シクロヘキサンに代えてトルエンを5g使用すること以外は実施例1と同様にしてシリカ内包粒子を得た。
得られたシリカ内包粒子は、非多孔性であった。また、13.5μmの体積平均粒子径と0.835g/cmの見かけ比重を有していた。更に、シリカ内包粒子の外殻の厚さは1.8μm、シリカ内包粒子中のシリカ重量は8.9重量%であった。
(実施例7)
MMAを35g、EGDMAを15g、シクロヘキサンに代えてトルエンを使用すること以外は実施例1と同様にしてシリカ内包粒子を得た。
得られたシリカ内包粒子は、非多孔性であった。また、10.8μmの体積平均粒子径と0.67g/cmの見かけ比重を有していた。更に、シリカ内包粒子の外殻の厚さは1.1μm、シリカ内包粒子中のシリカ重量は17.9重量%であった。
【0057】
(実施例8)
TEOSを15g、シクロヘキサンに代えてトルエンを35g使用すること以外は実施例1と同様にしてシリカ内包粒子を得た。
得られたシリカ内包粒子は、多孔性であり、表面写真を図5(a)に、断面写真を図5(b)に示す。また、11.8μmの体積平均粒子径を有していた。更に、シリカ内包粒子の外殻の厚さは1.1μm、シリカ内包粒子中のシリカ重量は10.8重量%、吸油量は220ml/100gであった。
(実施例9)
TEOSを25g、シクロヘキサンに代えてトルエンを25g使用すること以外は実施例1と同様にしてシリカ内包粒子を得た。
得られたシリカ内包粒子は、多孔性であり、表面写真を図6(a)に、断面写真を図6(b)に示す。また、15.7μmの体積平均粒子径を有していた。更に、シリカ内包粒子の外殻の厚さは1.6μm、シリカ内包粒子中のシリカ重量は11.0重量%、吸油量は350ml/100gであった。
【0058】
(実施例10)
TEOSを35g使用し、シクロヘキサンに代えて酢酸エチルを15g使用すること以外は実施例1と同様にしてシリカ内包粒子を得た。
得られたシリカ内包粒子は、多孔性であった。また、14.8μmの体積平均粒子径を有していた。更に、シリカ内包粒子の外殻の厚さは1.5μm、シリカ内包粒子中のシリカ重量は15.8重量%、吸油量は380ml/100gであった。
(実施例11)
TEOSを25g使用し、シクロヘキサンに代えて酢酸エチルを25g使用すること以外は実施例1と同様にしてシリカ内包粒子を得た。
得られたシリカ内包粒子は、多孔性であった。また、11μmの体積平均粒子径を有していた。更に、シリカ内包粒子の外殻の厚さは1μm、シリカ内包粒子中のシリカ重量は11.2重量%、吸油量は340ml/100gであった。
【0059】
(紫外可視近赤外光の反射特性評価)
シリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子の紫外光、可視光及び近赤外光に対する反射率を以下の手順で評価した。
反射率の測定装置として島津製作所社製の紫外可視近赤外分光光度計(Solid Spec 3700)を使用し、60mmΦ積分球を用いて、粒子を粉末試料用ホルダーに充填することで試料を得た。得られた試料の紫外光から近赤外光(波長200〜2100nm)反射特性を反射率(%R)として測定した。積分球内面は硫酸バリウムが塗装され、測定はBaSO白板を100%としたときの粒子の反射率を測定した。
なお、上記測定は、実施例2のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子、市販の多孔質樹脂粒子(積水化成品工業社製 商品名;テクポリマーMBP−8)及び真球状樹脂粒子(積水化成品工業社製 商品名;テクポリマーMBX−8)について行った。得られた結果を図7に示す。
図7から、実施例2のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子は、紫外光から近赤外光のほぼ全ての波長において、高い反射率を有することがわかる。
【0060】
(断熱性評価例)
市販の水性塗料(和信ペイント社製 商品名;水性ウレタンニス 屋内木部用 透明クリヤー)10gに対し、実施例2及び3のシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子、及び比較対象として市販の樹脂粒子(積水化成品工業社製 商品名;テクポリマーMBX−8、MBP−8)をそれぞれ2.5g加え、よく攪拌して樹脂粒子を分散し、評価用塗料を作製した。
評価用塗料を厚さ2mmのPET板状にウエット厚500μmに設定したアプリケーターにてコーティングした後、50℃に設定したオーブン中にて十分に乾燥させ、断熱性評価用サンプル板を作製した。
雰囲気温度23℃で試料付着面を上にして、スタンドにサンプル板を設置し、下から3cmの位置に赤外線ランプ(ミニレフ反射電球30W、東芝ライテック社製)を設置した後、サンプル板の上を容量150ccの容器で覆った。容器内のサンプル板の上方5cmの位置に温度計を設置し、5分間、赤外線ランプを照射し、温度を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
上記表1から、実施例2及び3のシリカ内包粒子は温度上昇が抑えられており、断熱性能を有していることが確認できた。
【0063】
(実施例12)
MMA25g、EGDMA25g、TEOS40g、トルエン10g、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5g、熱酸発生剤としての(1R,2S,5R)−5−メチル−2−(プロパン−2−イル)シクロヘキシル4−メチルベンゼンスルホネート(和光純薬工業社製;製品名WPAG−699)1g(TEOS100重量部に対して2.5重量部)を混合・溶解して、混合物を調製した。
得られた混合物を1重量%の濃度に調製したポリビニルアルコール(PVA)(日本合成化学社製;製品名ゴーセノールGH−17)水溶液300mlに混合した。得られた混合液を1Lビーカーに投入し、ホモミキサー(プライミクス社製;製品名 ホモミキサー MK−II 2.5型)を用いて、回転数4000rpmにて3分間乳化・分散処理を行った。
得られた乳化液を500mlの撹拌翼付き圧力容器に投入し、撹拌翼を200rpmにて攪拌しながら、50℃の温度にて8時間の重合を行い、シリカ前駆体としてのTEOSを内部に含むマイクロカプセルを得た。
その後、乳化液を110℃で2時間攪拌することで、マイクロカプセル内のTEOSのゲル化反応の進行により、シリカ内包粒子を得た。
得られたシリカ内包粒子を、遠心分離及び上澄みの分離に付すことで乳化液から取り出し、水洗を繰り返し、精製を行った後、60℃にて真空オーブンで乾燥させた。
得られたシリカ内包粒子は、非多孔性であり、表面写真を図8(a)に、断面写真を図8(b)に示す。また、11.7μmの体積平均粒子径と0.6g/cmの見かけ比重を有していた。更に、シリカ内包粒子の外殻の厚さは1.1μm、シリカ内包粒子中のシリカ重量は16.1重量%であった。
上記と同様に断熱性を評価したところ、ランプ照射5分後の容器内温度は45.4℃であり、温度上昇が抑えられていた。
【0064】
(実施例13)
TEOSの35g、トルエンの量を15g、(1R,2S,5R)−5−メチル−2−(プロパン−2−イル)シクロヘキシル4−メチルベンゼンスルホネートを0.875gとすること以外は実施例12と同様にしてシリカ内包粒子を得た。
得られたシリカ内包粒子は、非多孔性であり、表面写真を図9(a)に、断面写真を図9(b)に示す。また、19.6μmの体積平均粒子径と0.59g/cmの見かけ比重を有していた。更に、シリカ内包粒子の外殻の厚さは1.9μm、シリカ内包粒子中のシリカ重量は14.9重量%であった。
上記と同様に断熱性を評価したところ、ランプ照射5分後の容器内温度は45.2℃であり、温度上昇が抑えられていた。
【0065】
(塗料組成物製造例1)
実施例1で得られたシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子2重量部と、市販のアクリル系水性つやあり塗料(カンぺパピオ社製、商品名スーパーヒット)20重量部とを、攪拌脱泡装置を用いて、3分間混合し、1分間脱泡することによって、塗料組成物を得た。
得られた塗料組成物を、クリアランス75μmのブレードをセットした塗工装置を用いてABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)板上に塗布した後、乾燥することによって塗膜を得た。
【0066】
(光拡散性樹脂組成物及び光拡散フィルム製造例1)
実施例1で得られたシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子7.5重量部と、アクリル樹脂(DIC社製、製品名アクリディックA811)30重量部、架橋剤(DIC社製、製品名VM−D)10重量部、溶剤として酢酸ブチル50重量部とを攪拌脱泡装置を用いて、3分間混合し、1分間脱泡することによって、光拡散性樹脂組成物を得た。
得られた光拡散性樹脂組成物を、クリアランス50μmのブレードをセットした塗工装置を用いて、厚さ125μmのPETフィルム上に塗布した後、70℃で10分乾燥することによって光拡散フィルムを得た。
【0067】
(化粧料の処方例)
(配合例1)
パウダーファンデーションの製造
・配合量
実施例1で得られたシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子 10.0重量部
赤色酸化鉄 3.0重量部
黄色酸化鉄 2.5重量部
黒色酸化鉄 0.5重量部
酸化チタン 10.0重量部
マイカ 20.0重量部
タルク 44.0重量部
流動パラフィン 5.0重量部
ミリスチン酸オクチルドデシル 2.5重量部
ワセリン 2.5重量部
防腐剤 適量
香料 適量
・製造法
シリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化チタン、マイカ、タルクをヘンシェルミキサーで混合し、これに流動パラフィン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ワセリン及び防腐剤を混合溶解したものを加えて均一に混合する。これに、香料を加えて混合した後、粉砕して篩いに通す。これを、金皿に圧縮成形してパウダーファンデーションを得る。
【0068】
(配合例2)
化粧乳液の製造
・配合量
実施例1で得られたシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子 10.0重量部
ステアリン酸 2.5重量部
セチルアルコール 1.5重量部
ワセリン 5.0重量部
流動パラフィン 10.0重量部
ポリエチレン(10モル)モノオレイン酸エステル 2.0重量部
ポリエチレングリコール1500 3.0重量部
トリエタノールアミン 1.0重量部
精製水 64.5重量部
香料 0.5重量部
防腐剤 適量・製造法
まず、ステアリン酸、セチルアルコール、ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレンモノオレイン酸エステルを加熱溶解して、ここへシリカ内包粒子を添加・混合し、70℃に保温する(油相)。また、精製水にポリエチレングリコール、トリエタノールアミンを加え、加熱溶解し、70℃に保温する(水相)。水相に油相を加え、予備乳化を行い、その後ホモミキサーで均一に乳化し、乳化後かき混ぜながら30℃まで冷却させることで化粧乳液を得る。
【要約】
架橋ポリマーから構成される外殻と、前記外殻により区画された空洞とを備え、前記空洞の内部にシリカ粒子が互いに連結された多孔質構造体を含み、0.5〜100μmの体積平均粒子径を有するシリカ内包マイクロカプセル樹脂粒子。
図1
図2
図3
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図9