(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185228
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】受電制御回路、ワイヤレス受電装置の制御方法、電子機器
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20170814BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20170814BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20170814BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20170814BHJP
H01M 10/46 20060101ALI20170814BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
H02J7/00 301D
H02J50/10
H02J7/10 B
H02J7/10 H
H02J7/04 L
H02J7/10 L
H01M10/46
H01M10/44 101
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-229112(P2012-229112)
(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公開番号】特開2014-82864(P2014-82864A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 竜也
(72)【発明者】
【氏名】安岡 一嘉
(72)【発明者】
【氏名】井上 直樹
(72)【発明者】
【氏名】内本 大介
【審査官】
坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−028935(JP,A)
【文献】
特開2005−245078(JP,A)
【文献】
特開2008−173003(JP,A)
【文献】
特開2012−110085(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/035545(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/44
H01M 10/46
H02J 7/04
H02J 7/10
H02J 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信コイルからの交流のコイル電流を受け、2次電池を充電する充電回路に安定化された直流の出力電圧を供給する受電制御回路であって、
前記コイル電流を整流する整流回路と、
前記整流回路の出力と接続された平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサに生ずる整流電圧を受け、所定の目標レベルに安定化された前記出力電圧を生成するレギュレータと、
前記2次電池への充電電流の量と前記整流電圧の目標値の関係が定められており、前記充電電流の量を検出し、前記関係にしたがい前記充電電流の検出量に応じて、ワイヤレス給電装置が送信すべき電力を指示する情報を前記ワイヤレス給電装置に送信する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記充電電流の検出量と前記整流電圧の目標値との前記関係が変更可能に構成されることを特徴とする受電制御回路。
【請求項2】
前記制御部は、前記受電制御回路の温度に応じて、前記充電電流の検出量と前記整流電圧の目標値の関係を変化させることを特徴とする請求項1に記載の受電制御回路。
【請求項3】
前記制御部は、前記充電電流が相対的に小さな領域において、前記充電電流の検出値と前記整流電圧の目標値の積を、前記温度が高いほど低下させることを特徴とする請求項2に記載の受電制御回路。
【請求項4】
前記制御部は、前記温度と所定のしきい値の比較結果にもとづいて、前記充電電流の検出量と前記整流電圧の目標値の関係を変化させることを特徴とする請求項3に記載の受電制御回路。
【請求項5】
前記制御部は、前記温度に加えて、外部からの制御信号に応じて、前記充電電流の検出量と前記整流電圧の目標値の関係を変化させることを特徴とする請求項2に記載の受電制御回路。
【請求項6】
前記レギュレータは、その出力電圧の前記目標レベルを外部から設定可能に構成され、
前記制御信号は、前記レギュレータの出力電圧の前記目標レベルを設定するための信号であることを特徴とする請求項5に記載の受電制御回路。
【請求項7】
前記制御部は、外部からの制御信号に応じて、前記充電電流の検出量と前記整流電圧の目標値の関係を切りかえることを特徴とする請求項1に記載の受電制御回路。
【請求項8】
前記レギュレータは、その出力電圧の前記目標レベルを外部から設定可能に構成され、
前記制御信号は、前記レギュレータの出力電圧の前記目標レベルを設定するための信号であることを特徴とする請求項7に記載の受電制御回路。
【請求項9】
前記関係は、前記整流電圧の目標値が前記充電電流の検出量が小さいほど高くなるよう定められることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の受電制御回路。
【請求項10】
Qi規格に準拠していることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の受電制御回路。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の受電制御回路を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項12】
ワイヤレス受電装置の制御方法であって、
前記ワイヤレス受電装置は、
受信コイルと、
前記受信コイルに流れる電流を整流する整流回路と、
前記整流回路の出力と接続された平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサに生ずる整流電圧を受け、所定の目標レベルに安定化された出力電圧を生成するレギュレータと、
前記出力電圧を受け、2次電池を充電する充電回路と、
を備え、
前記制御方法は、
前記ワイヤレス受電装置の状態に応じて、前記2次電池への充電電流の量と前記整流電圧の目標値の関係を定めるステップと、
前記2次電池への充電電流の量を検出するステップと、
前記関係にしたがい前記充電電流の検出量に応じて、ワイヤレス給電装置が送信すべき電力を指示する情報を前記ワイヤレス給電装置に送信するステップと、
を備えることを特徴とする制御方法。
【請求項13】
前記ワイヤレス受電装置の状態は、温度であることを特徴とする請求項12に記載の制御方法。
【請求項14】
前記充電電流が相対的に小さな領域において、前記充電電流の検出値と前記整流電圧の目標値の積を、温度が高いほど低下させることを特徴とする請求項13に記載の制御方法。
【請求項15】
前記ワイヤレス受電装置の状態は、前記温度に加えて、外部からの制御信号を含むことを特徴とする請求項13に記載の制御方法。
【請求項16】
前記レギュレータは、その出力電圧の前記目標レベルを外部から設定可能に構成され、
前記制御信号は、前記レギュレータの出力電圧の前記目標レベルを設定するための信号であることを特徴とする請求項15に記載の制御方法。
【請求項17】
前記ワイヤレス受電装置の状態は、外部からの制御信号を含むことを特徴とする請求項12に記載の制御方法。
【請求項18】
前記レギュレータは、その出力電圧の前記目標レベルを外部から設定可能に構成され、
前記制御信号は、前記レギュレータの出力電圧の前記目標レベルを設定するための信号であることを特徴とする請求項17に記載の制御方法。
【請求項19】
前記関係は、前記整流電圧の目標値が前記充電電流の検出量が小さいほど高くなるよう定められることを特徴とする請求項12から18のいずれかに記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス給電技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に電力を供給するために、無接点電力伝送(非接触給電、ワイヤレス給電ともいう)が普及し始めている。異なるメーカーの製品間の相互利用を促進するために、WPC(Wireless Power Consortium)が組織され、WPCにより国際標準規格であるQi(チー)規格が策定された。
【0003】
Qi規格に準拠したワイヤレス給電システムでは、ワイヤレス受電装置(レシーバ)とワイヤレス給電装置(トランスミッタ)の間の通信によって、給電される電力が制御可能となっている。今後はQi規格に限らずに、受電装置からの指令により給電電力が制御可能なシステムが普及するものと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在のワイヤレス受電装置では、2次電池に安定した電力を供給することに主眼が置かれており、ワイヤレス受電装置が使用される環境、プラットフォームによっては、給電効率が低下したり、温度が高くなるという問題が生じうる。
【0005】
本発明は係る状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、給電効率の改善、および/または、温度上昇の抑制などが可能なワイヤレス受電装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、受信コイルからの交流のコイル電流を受け、2次電池を充電する充電回路に安定化された直流の出力電圧を供給する受電制御回路に関する。受電制御回路は、コイル電流を整流する整流回路と、整流回路の出力と接続された平滑コンデンサと、平滑コンデンサに生ずる整流電圧を受け、所定の目標レベルに安定化された出力電圧を生成するレギュレータと、2次電池への充電電流の量と整流電圧の目標値の関係が定められており、充電電流の量を検出し、その関係にしたがい充電電流の検出量に応じて、ワイヤレス給電装置が送信すべき電力を指示する情報をワイヤレス給電装置に送信する制御部と、を備える。制御部は、充電電流の検出量と整流電圧の目標値との関係が変更可能に構成される。
【0007】
「充電電流の検出量」は、実際の充電電流の測定値であってもよいし、定電流充電を行う場合には、充電電流の指令値であってもよい。
受電制御回路の消費電力は、充電電流の検出量と平滑コンデンサに生ずる整流電圧の積に応じているため、整流電圧の目標値を、充電電流の検出量に応じて制御することにより、給電される電力を安定させることができる。
【0008】
加えて、2次電池への充電電流の量と整流電圧の目標値の関係を変更可能とし、ワイヤレス受電装置の状態に応じて、適切な関係を選択することにより、受電制御回路の使用環境、プラットフォーム等にかかわらず、高い効率を得ることができ、あるいは、温度上昇を抑制できる。
【0009】
制御部は、温度に応じて、充電電流の検出量と整流電圧の目標値の関係を変化させてもよい。
温度が上昇したとき、充電電流を減少させることにより、充電回路の消費電力を低減させ、充電回路のさらなる発熱を抑制することができる。ところがこのときに、受電制御回路において、温度にかかわらず常に同じ関係にしたがって整流電圧を制御すると、充電電流の減少にともない整流電圧が上昇するため、受電制御回路における消費電力は低下せず、その発熱は抑制されない。これに対して、温度に応じて充電電流と整流電圧の関係を変化させることにより、充電電流が減少したときの整流電圧の上昇を抑制でき、温度の上昇を抑制できる。
【0010】
制御部は、充電電流が相対的に小さな領域において、充電電流の検出値と整流電圧の目標値の積を、温度が高いほど低下させてもよい。
【0011】
制御部は、温度と所定のしきい値の比較結果にもとづいて、充電電流の検出量と整流電圧の目標値の関係を変化させてもよい。
【0012】
制御部は、温度に加えて、外部からの制御信号に応じて、充電電流の検出量と整流電圧の目標値の関係を変化させてもよい。
【0013】
レギュレータは、その出力電圧の目標レベルを外部から設定可能に構成され、制御信号は、レギュレータの目標レベルを設定するための信号であってもよい。
リニアレギュレータの消費電力は、その入力電圧である整流電圧と、その出力電圧との差分に比例する。この態様によれば、出力電圧の目標値に応じて、整流電圧の電圧レベルを適切に設定できるため、リニアレギュレータの不要な消費電力を低減でき、効率を高めることができる。
【0014】
制御部は、外部からの制御信号に応じて、充電電流の検出量と整流電圧の目標値の関係を切りかえてもよい。
【0015】
レギュレータは、その出力電圧の目標レベルを外部から設定可能に構成されてもよい。制御信号は、レギュレータの目標レベルを設定するための信号であってもよい。この場合、リニアレギュレータの不要な消費電力を低減できる。
【0016】
制御信号は、温度を示す信号であってもよい。この場合、温度の上昇を抑制できる。
【0017】
関係は、整流電圧の目標値が、充電電流の検出量が小さいほど高くなるよう定められてもよい。これにより、給電電力を一定に制御できる。
【0018】
ある態様の受電制御回路は、Qi規格に準拠していてもよい。
【0019】
受電制御回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。
「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。
回路を1つのICとして集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0020】
本発明の別の態様は電子機器に関する。電子機器は、上述のいずれかの受電制御回路を備えてもよい。
【0021】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0022】
本発明のある態様によれば、給電効率を改善でき、あるいは温度上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】比較技術に係るワイヤレス給電システムを示す回路図である。
【
図2】充電電流の量と整流電圧の目標値の関係(制御特性)の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る受電制御回路の構成を示す回路図である。
【
図4】
図4(a)〜(c)は、第1の実施の形態における制御特性の温度依存性を示す図である。
【
図5】第2の実施の形態に係る受電制御回路の構成を示す回路図である。
【
図6】第2の実施の形態における制御特性の出力電圧依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0025】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0026】
(比較技術)
はじめに、ワイヤレス給電システムにおける問題点を明確化するため、本発明者らが事前に検討した比較技術について説明する。
【0027】
図1は、比較技術に係るワイヤレス給電システムを示す回路図である。ワイヤレス給電システム1rは、ワイヤレス給電装置2と、ワイヤレス受電装置3rを備える。
【0028】
ワイヤレス給電装置2は、送信コイル7、ドライバ8、制御部9を備える。ドライバ8は、送信コイル7に交流のコイル電流I
TXを発生させる。送信コイル7からは、コイル電流I
TXに応じた電力信号S1が送信される。
【0029】
このワイヤレス給電システム1rでは、ワイヤレス給電装置2からの送信電力が、ワイヤレス受電装置3からの制御指令に応じて制御可能となっている。このようなシステムとしては、Qi(チー)規格に準拠した給電システムが例示されるが、本発明はそれには限定されない。
【0030】
制御部9は、後述するようにワイヤレス受電装置3rからの制御指令S2にもとづいて、ドライバ8が制御し、送信コイル7に流れる電流I
TXの振幅を調節し、電力信号S1の強度すなわち給電電力を調節する。
【0031】
ワイヤレス受電装置3rは、2次電池4、充電回路5、受信コイル6、受電制御回路100rを備える。
【0032】
受信コイル6は、ワイヤレス給電装置2の送信コイル7からの電力信号S1を受け、それに応じた交流のコイル電流I
RXを発生させる。受電制御回路300rは、コイル電流I
RXを受け、それを整流し、所定レベルに安定化された直流の出力電圧V
OUTを生成する受電制御回路100rは、整流回路102、平滑コンデンサ104、リニアレギュレータ(LDO:Low Drop Output)106、制御部108を含む。整流回路102、リニアレギュレータ106、制御部108はひとつの半導体基板に機能IC(Integrated Circuit)として集積化され、平滑コンデンサ104は、機能ICに外付けされる。
【0033】
整流回路102は、コイル電流I
RXを整流する。整流回路102は、ダイオードブリッジ回路であってもよいし、Hブリッジ回路であってもよい。平滑コンデンサ104は、整流回路102の出力と接続され、整流回路102の出力電圧を平滑化する。リニアレギュレータ106は、平滑コンデンサ104に生ずる直流電圧(整流電圧という)V
RECTを受け、所定の目標レベルに安定化された出力電圧V
OUTを生成する。
【0034】
制御部108は、ワイヤレス給電装置2の制御部9に対して、ワイヤレス給電装置2が送信すべき電力を指示する制御指令S2を生成する。具体的には、制御部108には、2次電池4への充電電流I
CHGの検出量と整流電圧V
RECTの目標値の関係(制御特性ともいう)が定められている。制御特性は、テーブルの形式で用意されてもよいし、演算式の形式で用意されてもよく、その形式は特に限定されない。
【0035】
図2は、充電電流I
CHGの量と整流電圧V
RECTの目標値の関係(制御特性)の一例を示す図である。平滑コンデンサ104を電源として把握したときに、その負荷であるリニアレギュレータ106、充電回路5および2次電池4に供給される電力の合計は、整流電圧V
RECTと充電電流I
CHGの積で与えられる。整流電圧V
RECTの目標値は、充電電流I
CHGの検出量が小さいほど高くなるよう定められる。
【0036】
以上がワイヤレス給電システム1rの構成である。続いてワイヤレス給電システム1rの課題を説明する。
【0037】
課題1. ワイヤレス給電システム1rでは、大電力を給電するため、何らの対策を施さないと、ワイヤレス受電装置3rの温度は高くなってしまう。ワイヤレス受電装置3rの温度を低減するためには、受電制御回路100rの消費電力と、充電回路5の消費電力を低減する必要がある。
【0038】
充電回路5の消費電力P
CHGは、その電圧降下ΔV
CHGと充電電流I
CHGの積P
CHG=ΔV
CHG×I
CHGで与えられる。充電回路5の入力電圧である出力電圧V
OUTは一定に保たれ、その出力電圧である電池電圧V
BATもほぼ一定であるから、電圧降下ΔV
CHGは一定とみなすことができる。つまり、温度の上昇にともない、充電電流I
CHGを低減することにより、充電回路5の消費電力P
CHGを低減することができる。
【0039】
一方、リニアレギュレータ106の消費電力P
LDOは、その電圧降下ΔV
LDOと充電電流I
CHGの積ΔP
LDO=ΔV
LDO×I
CHGで与えられる。ここで、温度の上昇にともなって充電電流I
CHGを低減させると、整流電圧V
RECTは
図2の制御特性にしたがって上昇する。整流電圧V
RECTの上昇はリニアレギュレータ106の電圧降下ΔV
LDOは増大を意味するため、充電電流I
CHGを小さくしても、リニアレギュレータ106での消費電力P
LDOはそれほど小さくならず、受電制御回路100rの温度の上昇を抑制することはできない。
【0040】
課題2. 2次電池4の種類、あるいは充電回路5の種類は、受電制御回路100rが使用されるプラットフォームによってさまざまである。たとえば2次電池4が、公称電圧3.7Vのリチウムイオン電池であるとする。あるプラットフォーム(第1プラットフォームという)で使用される充電回路5は、このリチウムイオン電池4を充電するために、入力電圧V
OUTとして5V以上を必要とする。別のプラットフォーム(第2プラットフォームという)で使用される充電回路5は、その入力電圧V
OUTとして4.5Vを必要とする。この場合、受電制御回路100rをいずれのプラットフォームでも使用可能とするためには、出力電圧V
OUTの目標レベルは5Vに設定する必要がある。
【0041】
出力電圧V
OUTが5Vで設計された受電制御回路100rを、第2プラットフォームで使用すると、充電回路5において無駄な電力損失が発生する。
【0042】
以下では、比較技術において生ずる課題の少なくともひとつを解決可能な、実施の形態に係る受電制御回路について説明する。
【0043】
(第1の実施の形態)
図3は、第1の実施の形態に係る受電制御回路100の構成を示す回路図である。本実施の形態において、制御部108は、充電電流I
CHGの検出量と整流電圧V
RECTの目標値との関係である制御特性109が変更可能に構成される。たとえば制御部108は、複数の制御特性109_1〜109_nが選択可能に構成され、受電制御回路100が使用されるプラットフォーム、受電制御回路100やワイヤレス受電装置3全体の現在の状態に応じて、使用する制御特性109_1を切りかえる。
【0044】
受電制御回路100は、温度センサ110を備える。温度センサ110は、受電制御回路100の温度を検出する。制御部108は、検出された温度に応じて、制御特性を変化させる。なお、温度センサ110に代えて、外部のマイコンから温度を示すデータを受信してもよい。
【0045】
図4(a)〜(c)は、第1の実施の形態における制御特性の温度依存性を示す図である。
図4(a)に示すように、標準的な温度領域では、実線に示す低温時制御特性(i)が選択される。一方、温度が相対的に高い状態では、
図4(a)に破線で示すような高温時制御特性(ii)が選択される。高温時制御特性(ii)は、低温時制御特性(i)に比べて、充電電流I
CHGが相対的に小さな領域Aにおいて、充電電流I
CHGと整流電圧V
RECTの積、すなわち給電電力が小さくなるように定められる。別の観点から言えば、充電電流I
CHGが相対的に小さな領域Aにおいて、同じ充電電流I
CHGの検出量に対する整流電圧V
RECTの目標値が低く定められる。
【0046】
たとえば制御部108は、温度と所定のしきい値を比較し、その比較結果にもとづいて、制御特性を変化させてもよい。
図4(a)では、2つの制御特性を切りかえる場合を示すが、温度に応じて、3個以上の制御特性を切りかえてもよい。
【0047】
図4(b)、(c)には、別の高温時制御特性(iii)、(iv)が示される。これらの高温時制御特性(iii)、(iv)も、低温時制御特性(i)と比べて、充電電流I
CHGが相対的に小さな領域Aにおいて、充電電流I
CHGと整流電圧V
RECTの積が小さくなるように定められる。
【0048】
以上が第1の実施の形態に係る受電制御回路100の構成である。続いてその動作を説明する。
【0049】
温度が相対的に低い状態では、低温時制御特性が選択され、充電電流I
CHGにかかわらず、ワイヤレス受電装置3から給電される電力が一定となるように制御される。
【0050】
温度が高くなると、それ以上の温度上昇を抑制すべく、充電回路5は充電電流I
CHGを低減させる。また温度が相対的に高い状態では、制御部108において高温時制御特性が選択され、低温時制御特性を選択した状態に比べて、給電される電力が減少する。
【0051】
以上が受電制御回路100の動作である。
この受電制御回路100によれば、高温時に、充電電流I
CHGを減少させることにより、充電回路5の消費電力を低減することができる。加えて、ワイヤレス給電装置2から供給される電力も減少することから、リニアレギュレータ106の消費電力も低減することができる。つまりリニアレギュレータ106と充電回路5の消費電力を低減し、発熱を抑制できることから、上述の課題1を解決することができる。
【0052】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態に係る受電制御回路100aの構成を示す回路図である。
第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、制御部108aは、制御特性が切りかえ可能となっている。受電制御回路100aは、温度センサ110に代えて制御端子112を備える。制御端子112には、外部からの制御信号S3が入力される。
【0053】
制御部108aは、制御信号S3に応じて、制御特性を切りかえる。これにより、ワイヤレス受電装置3の外部から、受電制御回路100aが使用されるプラットフォームに適した制御特性を選択、設定することができる。
【0054】
好ましくは、レギュレータ106aは、その出力電圧V
OUTの目標レベルが制御信号S3によって外部から設定可能に構成される。そして、制御部108は、出力電圧V
OUTを設定するための制御信号S3に応じて制御特性を選択する。
【0055】
図6は、第2の実施の形態における制御特性の出力電圧依存性を示す図である。たとえばリニアレギュレータ106の出力電圧V
OUTは、制御信号S3の値に応じて、N段階(Nは2以上の整数)で切りかえ可能となっている。そして制御部108aは、出力電圧V
OUTの設定値ごとに定められたN個の制御特性が選択可能となっている。
【0056】
ここでは説明の簡潔化のため、N=2とする。出力電圧V
OUTの目標値が第1の値V
OUT1であるとき、実線に示す第1の制御特性(i)が、出力電圧V
OUTの目標値が第1の値V
OUT1より低い第2の値V
OUT2であるとき、破線で示す第2の制御特性(ii)が選択される。
【0057】
本実施の形態では、制御特性(i)、(ii)でそれぞれ規定される整流電圧V
RECTの最小値V
RECT_MIN1、V
RECT_MIN2は、出力電圧V
OUTの設定値V
OUT1、V
OUT2に応じて定められる。
【0058】
より具体的には、出力電圧V
OUTの設定値V
OUTxに対して、整流電圧V
RECTの最小値V
RECT_MINを、V
RECT_MIN≒V
OUTx+I
CHG_MAX×R
ONを満たすように定めている。R
ONは、リニアレギュレータ106のオン抵抗であり、I
CHG_MAXは想定される最大の充電電流である。
【0059】
最小値V
RECT_MIN以外の電圧レベルについても、第1の制御特性(i)は、第2の制御特性(ii)に比べて高く定められる。
【0060】
以上が受電制御回路100aの構成である。続いてその利点を説明する。
比較技術に関連して説明したように、ワイヤレス受電装置3が搭載されるプラットフォームごとに、充電回路5の入力電圧V
OUTの最適な値は異なる。第2の実施の形態では、プラットフォーム毎に最適な電圧V
OUTを充電回路5に供給できるため、充電回路5における無駄な電力損失を低減できる。
【0061】
加えて、制御部108aは、制御信号S3すなわち出力電圧V
OUTの設定値に応じて、制御特性すなわち整流電圧V
RECTの目標値を変化させることができる。つまり出力電圧V
OUTが低いプラットフォームでは、それに追従して整流電圧V
RECTの電圧レベルを低下させることができ、リニアレギュレータ106における無駄な電力損失を低減できる。つまり、上述の課題2を解決することができる。
【0062】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態は、第1の実施の形態と第2の実施の形態の組み合わせである。すなわち制御部108は、温度に加えて、外部からの制御信号に応じて、制御特性を変化させる。これにより、課題1,2を解決することができる。
【0063】
最後に、第1から第3の実施の形態に係るワイヤレス受電装置3を用いた電子機器の例を説明する。
【0064】
図7は、電子機器の一例を示す図である。
図7の電子機器500は、タブレットPCや携帯型ゲーム機、携帯型オーディオプレイヤであり、筐体502の内部には、上述の2次電池4、充電回路5、受信コイル6、受電制御回路100が内蔵される。マイクロコントローラ10は、電子機器500を統括的に制御するホストプロセッサであり、2次電池4からの電力を受けて動作する。
【0065】
以上、本発明について、第1から第3の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0066】
実施の形態では、温度や、出力電圧を設定する制御信号に応じて、制御特性を切りかえる場合を説明したが、本発明はそれらには限定されなず、そのほかの受電制御回路100やワイヤレス受電装置3の状態に応じて、制御特性を切りかえてもよい。たとえば、ワイヤレス給電装置2の残量や、充電回路による連続充電時間などに応じて、制御特性を切りかえてもよい。こうした変形例によっても、効率の改善や発熱量の抑制といった効果を得ることができる。
【0067】
実施の形態では、Qi規格に準拠する受電装置について説明したが、本発明はそれに限定されず、将来策定されるであろう規格に準拠する受電装置にも適用しうる。
【0068】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0069】
1…ワイヤレス給電システム、2…ワイヤレス給電装置、3…ワイヤレス受電装置、4…2次電池、5…充電回路、6…受信コイル、7…送信コイル、8…ドライバ、9…制御部、100…受電制御回路、102…整流回路、104…平滑コンデンサ、106…リニアレギュレータ、108…制御部、109…制御特性、110…温度センサ、112…制御端子、10…マイクロコントローラ。