(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185238
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】バイパス弁付フロート式スチームトラップ
(51)【国際特許分類】
F16T 1/22 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
F16T1/22 Z
【請求項の数】1
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願2012-265461(P2012-265461)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-109365(P2014-109365A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】小池 正
【審査官】
松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭53−154430(JP,U)
【文献】
特開2008−045615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラップケーシングに入口と、入口から連通する弁室と、弁口を介して弁室から連通する出口通路と、出口通路から連通する出口とを形成し、
弁口を開閉するフロートを弁室内に自由状態で配置すると共に、
弁室と出口通路を連通するバイパス通路をトラップケーシングに形成し、
バイパス通路をそれぞれ開閉する温度応動弁及びバイパス弁を設け、
流体中の異物を補足する濾孔を有するスクリーンを弁室内に配置したものにおいて、
入口からの流体の全てがスクリーンの濾孔を通過した後に温度応動弁及びバイパス弁のいずれか一方に直接的に至ること
を特徴とするバイパス弁付フロート式スチームトラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフロートを用いて蒸気配管系から復水を自動的に系外へ排出するフロート式スチームトラップにバイパス弁を一体に組合せたバイパス弁付フロート式スチームトラップに関する。この型式のスチームトラップは、一時的に多量の復水が発生した場合や空気障害を生じた場合にバイパス弁を開弁せしめることにより、多量の復水を短時間に排出したり空気障害を解消したりするものである。
【背景技術】
【0002】
バイパス弁付フロート式スチームトラップは、例えば、特許文献1に示されたものがある。これは、トラップケーシングに入口と、入口から連通する弁室と、弁口を介して弁室から連通する出口通路と、出口通路から連通する出口とを形成し、弁口を開閉するフロートを弁室内に自由状態で配置すると共に、弁室と出口通路を連通するバイパス通路をトラップケーシングに形成し、バイパス通路を開閉するバイパス弁を設け、流体中の異物を補足する濾孔を有するスクリーンを弁室内に配置したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−68355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のバイパス弁付フロート式スチームトラップは、一時的に多量の復水が発生した場合や空気障害を生じた場合にバイパス弁を開弁せしめることにより、多量の復水を短時間に排出したり空気障害を解消したりするものであるが、入口からの流体がスクリーンの濾孔を通過せずにバイパス弁に至るために、バイパス弁が流体中の異物によりバイパス通路を完全閉止できなくなる問題がある。
【0005】
したがって本発明が解決しようとする課題は、バイパス弁が流体中の異物によりバイパス通路を完全閉止できなくなることを防止できるバイパス弁付フロート式スチームトラップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のバイパス弁付フロート式スチームトラップは、トラップケーシングに入口と、入口から連通する弁室と、弁口を介して弁室から連通する出口通路と、出口通路から連通する出口とを形成し、弁口を開閉するフロートを弁室内に自由状態で配置すると共に、弁室と出口通路を連通するバイパス通路をトラップケーシングに形成し、バイパス通路を開閉するバイパス弁を設け、流体中の異物を補足する濾孔を有するスクリーンを弁室内に配置したものにおいて、入口からの流体の全てがスクリーンの濾孔を通過した後にバイパス弁に至ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のバイパス弁付フロート式スチームトラップは、入口からの流体の全てがスクリーンの濾孔を通過した後にバイパス弁に至るものであるので、バイパス弁が流体中の異物によりバイパス通路を完全閉止できなくなることを防止できるという優れた効果を生じる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係わるバイパス弁付フロート式スチームトラップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、
図1を参照して説明する。本体1に蓋2をボルト(図示せず)で締結して内部に弁室3を有するトラップケーシングを形成する。本体1の上部に入口4と、入口4と同一軸上に出口5を形成する。流体中の異物を補足する濾孔を有する周壁に有する円筒形状のスクリーン6を弁室3内に配置する。弁室3の横に隔壁7で隔てて出口5に連通する出口通路8を形成する。隔壁7の下部に弁口9を開口した弁座部材10をねじ結合し、弁口9を介して弁室3と出口通路8を連通する。弁室3内にステンレス鋼薄板で作った中空の球形フロート11を自由状態で配置する。フロート11は弁室3に溜る復水の水位に応じて浮上降下することにより弁口9を開閉し、弁室3に溜る復水を自動的に排出する。入口4からの流体の全てがスクリーン6の濾孔を外側から内側に通過した後に弁口9に至る。
【0010】
弁室3と出口通路8を連通するバイパス通路12を本体1の上部から蓋2を通して形成する。バイパス通路12の水平方向部にバイパス通路12を開閉する水平方向の一字状開口13を設けたボール弁からなるバイパス弁14を弁座15,16で挟んで回動操作用の弁軸17により回動自在に配置する。入口4からの流体の全てがスクリーン6の濾孔を外側から内側に通過した後にバイパス弁14に至る。弁座15は蓋2にねじ結合したプラグ18により固定する。プラグ18にバイパス通路12の一部を形成する連通路19を形成する。バイパス弁14の下流側のバイパス通路12に弁室3を連通させる排気通路20を蓋2に形成する。排気通路20に排気弁口22を開口した排気弁座23を保持ガイド24を間に挟んでねじ結合し、排気弁口22を介して弁室3と排気通路20を連通する。保持ガイド24に係止するバネ25で温度応動弁26を保持ガイド24に係止する。温度応動弁26はほぼ円板状の密閉体カプセルで図示はしていないが内部に薄板ダイヤフラムと熱膨張収縮液を充填して形成する。入口4からの流体の全てがスクリーン6の濾孔を外側から内側に通過した後に温度応動弁26に至る。バイパス弁14は弁軸17を介して回動させることにより、バイパス通路12を一字状開口13により連通した位置とバイパス通路12を遮断した位置に切換えることができる。
【0011】
上記実施の形態の作動を説明する。通常は、弁軸17を操作してバイパス弁14を図示の状態から90度回動させることにより、バイパス通路12を遮断した位置で使用する。弁室3に溜る復水の水位に応じてフロート11が浮上降下して弁口9を開閉し、弁室3に溜る復水を弁口9から出口通路8を通して出口5に自動的に排出する。また、弁室3の温度に応じて温度応動弁26が排気弁口22を開閉し、弁室3に溜る空気を排気弁口22から排気通路20、バイパス弁14の下流側のバイパス通路12、出口通路8を通して出口5に自動的に排出する。
【0012】
そして、一時的に多量に発生した復水を短時間に排出する場合や温度応動弁26が開弁できなくなった場合は、弁軸17を操作してバイパス弁14を回動させて図示の状態とすることにより、バイパス通路12を一字状開口13により連通させて、多量の復水を短時間に排出したり空気障害を解消したりする。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、フロートを用いて蒸気配管系から復水を自動的に系外へ排出するフロート式スチームトラップにバイパス弁を一体に組合せたバイパス弁付フロート式スチームトラップに利用することができる。
【符号の説明】
【0014】
1 本体
2 蓋
3 弁室
4 入口
5 出口
6 スクリーン
8 出口通路
9 弁口
11 フロート
12 バイパス通路
13 一字状開口
14 バイパス弁
20 排気通路
26 温度応動弁