特許第6185250号(P6185250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185250
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】遠隔設備管理システムおよび管理装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20170814BHJP
   H02S 40/32 20140101ALI20170814BHJP
   H02S 50/00 20140101ALI20170814BHJP
【FI】
   H02J13/00 301A
   H02S40/32
   H02S50/00
   H02J13/00 301D
   H02J13/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-22877(P2013-22877)
(22)【出願日】2013年2月8日
(65)【公開番号】特開2014-155318(P2014-155318A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】591234248
【氏名又は名称】岡田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 良太
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−147340(JP,A)
【文献】 特開2012−104750(JP,A)
【文献】 特開2012−095483(JP,A)
【文献】 特開2010−249608(JP,A)
【文献】 特表2014−511074(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/128803(WO,A1)
【文献】 特開2008−174969(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0172838(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02S 40/32
H02S 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光エネルギーを電力に変換する太陽電池モジュールと、
1ないし複数の前記太陽電池モジュールからの入力電力を所定電圧の交流電力に変換して集電盤に供給するとともに、該入力電力および該交流電力の少なくとも一方に関する状態値を測定するパワーコンディショナと、
前記パワーコンディショナからシリアル通信によって送られてくる前記状態値を示す測定データを、イーサネット(登録商標)に準じたデータに変換するシリアル−イーサネット変換器と、
前記シリアル−イーサネット変換器からの入力データを、仮想プライベートネットワークを介して接続された所定の管理装置に送信するVPNルータと、
有する複数の太陽光発電設備と、
前記太陽光発電設備の各々から前記VPNルータにより送信された前記測定データを管理する前記管理装置と、
を備える遠隔設備管理システムであって、
前記管理装置は、前記太陽電池モジュールの設置方位および設置角度を示す設置データの内容が同一または近似する複数の前記太陽光発電設備がグループ化された同一グループ内において個々の前記測定データを比較することにより、前記太陽光発電設備の各々に関する不具合の有無を判定することを特徴とする遠隔設備管理システム。
【請求項2】
前記管理装置は、前記グループには属していない前記太陽光発電設備については、前記測定データが示す状態値が前記太陽電池モジュールの設置方位および設置角度に応じた基準範囲内であるか否かによって、前記太陽光発電設備の各々に関する不具合の有無を判定することを特徴とする請求項に記載の遠隔設備管理システム。
【請求項3】
前記VPNルータは、仮想プライベートネットワークを構成する基地局に向けて、前記シリアル−イーサネット変換器からの入力データを無線送信することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遠隔設備管理システム
【請求項4】
光エネルギーを電力に変換する太陽電池モジュールと、
1ないし複数の前記太陽電池モジュールからの入力電力を所定電圧の交流電力に変換して集電盤に供給するとともに、該入力電力および該交流電力の少なくとも一方に関する状態値を測定するパワーコンディショナと、
前記パワーコンディショナにより測定された前記状態値を示す測定データを送信する送信器と、
有する複数の太陽光発電設備と、
前記太陽光発電設備の各々から前記送信器により送信された前記測定データを管理する前記管理装置と、
を備える遠隔設備管理システムであって、
前記管理装置は、前記太陽電池モジュールの設置方位および設置角度を示す設置データの内容が同一または近似する複数の前記太陽光発電設備がグループ化された同一グループ内において個々の前記測定データを比較することにより、前記太陽光発電設備の各々に関する不具合の有無を判定することを特徴とする遠隔設備管理システム。
【請求項5】
光エネルギーを電力に変換する太陽電池モジュールと、
1ないし複数の前記太陽電池モジュールからの入力電力を所定電圧の交流電力に変換して集電盤に供給するとともに、該入力電力および該交流電力の少なくとも一方に関する状態値を測定するパワーコンディショナと、
前記パワーコンディショナにより測定された前記状態値を示す測定データを送信する送信器と、
有する複数の太陽光発電設備の各々から前記送信器により送信された前記測定データを管理する管理装置であって、
前記太陽電池モジュールの設置方位および設置角度を示す設置データの内容が同一または近似する複数の前記太陽光発電設備がグループ化された同一グループ内において個々の前記測定データを比較することにより、前記太陽光発電設備の各々に関する不具合の有無を判定することを特徴とする管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光エネルギーを電力に変換する太陽光発電設備を遠隔地から管理する遠隔設備管理システムおよび管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電設備では、屋根や壁面などといった建物の未利用のスペースに、複数の太陽電池を並べて相互接続してなる太陽電池モジュールを設置するとともに、その建物の敷地内にパワーコンディショナと呼ばれる発電された電気を使用可能な安定した出力となるように調整する装置を配備し、さらにパワーコンディショナの入出力等に関する各種の測定データが建物内のPCに送られるようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、設備管理システムでは、太陽光発電設備の導入先である企業や公共施設、一般家庭などのユーザから稼動状況に問題が発生している疑いについて相談を受けた場合に、保守管理者が必要に応じて、建物内のPCに蓄積された測定データをユーザから電子メール等で保守管理者が閲覧可能なコンピュータに送ってもらう態様が採られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−164015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、太陽光発電設備では、環境面への負荷を図るための社会的推進に伴い、建物に限らず、無人の空地スペースへの導入も増加し始めている。
しかしながら、従来の太陽光発電設備では、無人の空地スペースへ導入しようとすると、パワーコンディショナに接続されるPCを空地スペースに配置することが困難となるため、設備管理システムにおいて保守管理者が測定データを得難くなり、メンテナンスに係るコストが増大しかねないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、無人の空地スペースへの導入においても、PCを置く建物を建設することなく、測定データを好適に収集することが可能な設備管理システムおよび管理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明は、少なくとも、光エネルギーを電力に変換する太陽電池モジュールと、1ないし複数の太陽電池モジュールからの入力電力を所定電圧の交流電力に変換して集電盤に供給するとともに、その入力電力および交流電力の少なくとも一方に関する状態値を測定するパワーコンディショナとを備える太陽光発電設備を含む
【0008】
そして、本発明では、シリアル−イーサネット変換器が、パワーコンディショナからシリアル通信によって送られてくる状態値を示す測定データを、イーサネット(登録商標)に準じたデータに変換し、VPNルータが、シリアル−イーサネット変換器からの入力データを、仮想プライベートネットワークを介して接続された所定の管理装置に送信するように構成した。
【0009】
このような構成では、あたかもパワーコンディショナが敷地内のコンピュータに接続されているかのように、人手を介することなく遠隔地にある管理装置に測定データを送信することが可能となる。
【0010】
また、シリアル−イーサネット変換器やVPNルータは、PCのような一般的なコンピュータと比べて、簡易な構成であることから、周囲の電磁波や、温度、湿度等の影響を受けにくいため、パワーコンディショナと同一の筐体、またはパワーコンディショナに隣接する集電盤や変電盤、送電盤等を収容するキュービクルと同一の筐体に収納することが可能である。
【0011】
したがって、本発明によれば、無人の空地スペースへの導入においても、PCを置く建物を建設することなく、測定データを好適に収集することができる。
なお、本発明において、VPNルータは、仮想プライベートネットワークに有線接続されていてもよいが、仮想プライベートネットワークを構成する基地局に向けて、シリアル−イーサネット変換器からの入力データを無線送信する方が、配線に係るコストを削減できる点で有利である。
【0012】
また、本発明は、既述の太陽光発電設備と、この設備から仮想プライベートネットワークを介して送られてくる測定データを管理する管理装置とを備える遠隔設備管理システムとして捉えることもできる。このようなシステムによれば、保守管理者がユーザに要請することなく、管理装置あるいは管理装置にアクセス可能なコンピュータを操作することで、測定データを閲覧可能となるため、ひいては保守管理者およびユーザの手間を軽減することができる。
【0013】
なお、本発明においては、保守管理者が管理装置を介して閲覧した測定データに基づいて太陽光発電設備に関する不具合を見つけるようにしてもよいが、管理装置が、測定データに基づいて太陽光発電設備に関する故障診断を行う方が、保守管理者の手間を軽減できる分、人件費を抑制することができる。
【0014】
また、後者の構成において、管理装置は、複数の太陽光発電設備を管理する場合に、これらの太陽光発電設備から仮想プライベートネットワークを介して送られてくる個々の測定データを個別に解析してもよいが、複数の測定データを相互に比較することにより、太陽光発電設備に関する不具合の有無を判定する方が効率的な場合がある。例えば、設置環境が似通った複数の太陽光発電設備に関する不具合の有無を判定する場合等に、管理装置の処理負担を軽減することができる。
【0015】
一方、このような設置環境に関する条件を満たさない場合などには、管理装置は、測定データが示す状態値が太陽光発電設備の設置環境に応じた基準範囲内であるか否かによって、個々の太陽光発電設備に関する不具合の有無を判定することにより、故障診断における確実性を増すことができる。
【0016】
さらに言えば、管理装置は、太陽光発電設備の設置環境として、太陽光発電設備を構成する太陽電池モジュールの設置方位および角度に基づいて、判定に係る個々の基準範囲を可変設定してもよい。この場合、太陽光発電設備に関する故障診断を行う際に、太陽電池モジュールの向きに応じて異なる測定データのばらつきを加味して、好適に不具合の有無を判定することができる。
【0017】
あるいは、太陽光発電設備が日射量を測定する日射量を備える構成において、管理装置は、太陽光発電設備の設置環境として日射量を含む環境データを、太陽光発電設備から仮想プライベートネットワークを介して取得し、その環境データに含まれている日射量に基づいて、判定に係る個々の基準範囲を可変設定してもよい。この場合、太陽光発電設備に関する故障診断を行う際に、天候や季節に応じて異なる測定データのばらつきを加味して、好適に不具合の有無を判定することができる。
【0018】
また、太陽光発電設備が気温を測定する気温計を備える構成において、管理装置は、環境データとして気温を含むデータを、太陽光発電設備から仮想プライベートネットワークを介して取得し、気温に基づいて基準範囲を可変設定してもよい。この場合、太陽光発電設備に関する故障診断を行う際に、気温に応じて異なる測定データのばらつきを加味して、好適に不具合の有無を判定することができる。
【0019】
なお、本発明は、太陽光発電設備以外の発電設備にも好適に用いることができる。具体的には、エネルギーを電力に変換する発電装置と、1ないし複数の発電装置からの入力電力を所定電圧の交流電力に変換して集電盤に供給するとともに、その入力電力および交流電力の少なくとも一方に関する状態値を測定する変換装置とを備える各種の発電設備に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】太陽光発電設備の構成を例示する構成図である。
図2】設備管理システムの構成を例示する構成図である。
図3】管理装置が行う処理内容を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
<太陽光発電設備の構成>
図1に示すように、本実施形態の太陽光発電設備1は、空地スペースに設置される太陽電池アレイ2と、太陽電池アレイ2からの入力電力を所定電圧の交流電力に変換してキュービクル3に供給するパワーコンディショナ4と、パワーコンディショナ4の通信ポートにシリアル接続されるシリアル−イーサネット変換器5と、仮想プライベートネットワーク6に接続されるVPNルータ7と、日射量を計測する日射計8と、気温を計測する気温計9とを備えて構成される。
【0022】
太陽電池アレイ2は、太陽電池モジュール2aを複数枚並べて設置されたものであり、複数の太陽電池モジュール2aが配線により直列接続されて太陽電池ストリング2bを構成し、さらにこの複数の太陽電池ストリング2bが配線により並列接続されることによって構成されている。
【0023】
太陽電池アレイ2を構成する個々の太陽電池モジュール2aは、シリコンなどのPN接合半導体からなる多数の太陽電池セル(非図示)からなり、これら太陽電池セルが直列または並列に接続されて矩形平板状に形成され、他の太陽電池モジュール2aと受光面が同じ方向を向くように配置されている。なお、太陽電池モジュール2aを構成する個々の太陽電池セルは、その受光面によって太陽光のエネルギー(光エネルギー)を吸収すると、PN接合部に起電力を発生し、電極を介して直流電力を出力する周知のものである。
【0024】
パワーコンディショナ4は、空地スペースにおいて太陽電池アレイ2の付近に設置された筐体4aに収容されており、太陽電池アレイ2(換言すれば、複数の太陽電池モジュール2a)からランダムな電圧で入力される直流電力を、予め定められた一定電圧の交流電力に変換することにより、使用可能な安定した出力をキュービクル3に供給可能に電力を調整する装置である。また、パワーコンディショナ4は、太陽電池アレイ2からの入力電力(即ち、直流電力)について、その電流値、電圧値、および電力値を測定するとともに、当該パワーコンディショナ4からの出力電力(即ち、交流電力)について、少なくともその電力量を測定するように構成されている。
【0025】
キュービクル3は、パワーコンディショナ4に隣接する筐体3aに収容されており、パワーコンディショナ4からの出力を集電する集電盤31と、集電盤31から出力される電力を昇圧する変電盤32と、変電盤32によって昇圧された電力を電力会社の商用系統に送電する送電盤33とによって構成されている。
【0026】
なお、送電盤33は、電力会社の商用系統から供給される電力を受電する受電盤としても構成され、変電盤32は、この受電盤から出力される電力を降圧するようにも構成されている。また、集電盤31は、太陽電池アレイ2によって供給される電力や、電力会社の商用系統から供給される電力を、空地スペースにおいて電力を必要とする電気設備に配電する配電盤としても構成されている。
【0027】
日射計8は、例えば太陽電池モジュール2aを固定するための外枠等に設置され、太陽電池モジュール2aの受光量の目安として日射量を測定する計器であり、具体的には光電素子や熱電堆などを用いて日射量に応じた電気信号を生成することにより、日射量を示すデータ(以下「環境データ」という)をシリアル−イーサネット変換器5に出力するように構成されている。
【0028】
気温計9は、例えば太陽電池モジュール2aに隣接する場所等に設置され、低温であるほど発電電力が高くなる太陽電池モジュール2aの温度依存性を考慮して気温を測定する計器であり、気温を示す環境データをシリアル−イーサネット変換器5に出力するように構成されている。
【0029】
シリアル−イーサネット変換器5は、パワーコンディショナ4とともに筐体4a(図1参照)に、あるいはキュービクル3とともに筐体3aに収容されており、パワーコンディショナ4にて測定された各種状態値(具体的には、電流値、電圧値、電力値、電力量など)を示すデータ(以下「測定データ」という)がパワーコンディショナ4からシリアル通信によって送られてくると、ローカルエリアネットワーク(LAN)で使用可能なイーサネットに準拠したデータに変換してVPNルータ7に出力するだけの簡易な構成のものである。但し、本実施形態のシリアル−イーサネット変換器5は、日射計8および気温計9にもシリアル接続されており、日射計8からシリアル通信によって環境データが送られてくると、上記同様にイーサネットに準じたデータに変換して測定データとともにVPNルータ7に出力するようになっている。なお、シリアル−イーサネット変換器5は、多入力(本実施形態では3入力)・1出力のものを使用してもよいし、1入力・1出力のものを複数備える構成であってもよい。
【0030】
仮想プライベートネットワーク6は、通信相手の固定された専用通信回線の代わりに多数の加入者で帯域共用する通信網を利用してLAN間などを接続する仮想的なネットワークであり、本実施形態ではインターネット網を介した複数の拠点間で暗号化データをカプセル化(トンネリング)して通信するインターネットVPNを採用している。
【0031】
VPNルータ7は、パワーコンディショナ4およびシリアル−イーサネット変換器5とともに筐体4a(図1参照)に、あるいはキュービクル3およびシリアル−イーサネット変換器5とともに筐体3aに収容されており、シリアル−イーサネット変換器5から入力されるデータ(本実施形態では、測定データ、環境データ)の暗号化やカプセル化を行い、予め設定されたアドレス先として後述する管理装置11に、仮想プライベートネットワーク6を介してこれらデータを送信するだけの簡易な構成のものである。但し、本実施形態のVPNルータ7は、仮想プライベートネットワーク6を構成する基地局7aに無線通信を行うための無線モジュールが搭載されており、基地局7aに向けて各種データを無線送信することにより、移動通信網に接続された基地局7aを経由し、さらに基地局7aに接続されたインターネット網を介して管理装置11にデータ送信するようになっている。
【0032】
<遠隔設備管理システムの構成>
次に、本実施形態の遠隔設備管理システム10について説明する。
図2に示すように、本実施形態の遠隔設備管理システム10は、複数の太陽光発電設備1と、複数の太陽光発電設備1から仮想プライベートネットワーク6を介して送られてくる測定データを管理する管理装置11と、管理装置11に仮想プライベートネットワーク6を介して通信可能に接続され、太陽光発電設備1に係る保守管理者が操作するためのコンピュータ15とを備えて構成される。なお、コンピュータ15は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)であってもよいし、スマートフォンや携帯電話機などであってもよい。以下では、コンピュータ15を代表的にPC15と称する。
【0033】
本実施形態の管理装置11は、インターネット上のサーバであり、仮想プライベートネットワーク6を含むインターネット網に接続するためのネットワークI/F12と、太陽光発電設備1からネットワークI/F12を介して受信する測定データなどを記憶するための記憶部13と、PC15からネットワークI/F12を介して受信する各種要求に応じて、記憶部13に記憶されている各種データの検索・抽出を行うデータベース処理や、測定データに基づいて太陽光発電設備1に関する故障診断を行うメンテナンス処理などを行う制御部14とを備えて構成される。
【0034】
記憶部13は、複数のハードディスクによって構成され、個々の太陽光発電設備1の設置エリアや、太陽電池モジュール2aおよびパワーコンディショナ4の機種や、太陽電池モジュール2aの設置数、設置方位および設置角度を示すデータ(以下「設置データ」という)を記憶している。そして、記憶部13では、これらの設置データの内容が同一または近似する複数の太陽光発電設備1がグループ化されており、このようなグループ毎に、個々の太陽光発電設備1から送られてくる測定データ(および環境データ)を時系列に沿って記憶するようになっている。但し、設置データの内容が同一または近似する他の太陽光発電設備1が存在しない場合には、グループが形成されることなく、その太陽光発電設備1から送られてくる測定データを時系列に沿って個々に記憶するようになっている。
【0035】
制御部14は、CPU,ROM,RAMなどを有する周知のマイクロコンピュータを中心に構成され、このうち、CPUが、例えばROMに記憶されたプログラムに従って、RAMを作業エリアとして用い、前述のデータベース処理やメンテナンス処理を実行するようになっている。
【0036】
<メンテナンス処理>
ここで、制御部14が実行するメンテナンス処理について、図3のフローチャートに沿って詳しく説明する。なお、本処理は、管理装置11の電源がオンされると起動し、電源がオフされるまで繰り返し実行されるものとする。
【0037】
まず、本処理が開始されると、制御部14(正確にはCPU)は、所定の周期で本処理を繰り返し行うために予め設定された実行タイミングであるか否かを判断し(S110)、このような実行タイミングになると(S110;YES)、次のステップ(S120)に移行し、実行タイミングではないと判断した場合には(S110;NO)、そのまま待機する。
【0038】
そして、S120では、記憶部13に記憶されている最新の測定データのうち、複数の太陽光発電設備1からなる同一グループ内において個々の測定データを比較することにより、予め設定された誤差範囲内にこのグループ内の全ての測定データ(各種の状態値)が含まれているか否かを判断し、ここで肯定判断した場合にはS130に移行し、否定判断した場合にはS140に移行する。
【0039】
つまり、似通った設備環境にある複数の太陽光発電設備1からは、同じような測定データが送信されてくると推測されるため、全ての測定データの内容が近いものであれば、グループ内の全ての太陽光発電設備1が正常に作動しているものとみなし、内容の大きく異なる測定データが存在すれば、その測定データの送信元である太陽光発電設備1に不具合が発生している可能性があるとみなしている。
【0040】
S130では、S120において誤差範囲外であった測定データの送信元である太陽光発電設備1について、不具合が発生している可能性が高いことを報告するためのデータ(以下「警報データ」という)を、ネットワークI/F12を介してPC15に送信して、S140に移行する。なお、警報データは、不具合が検出された測定データとともに、その検出前後に記憶部13に記憶された測定データなどが付加されており、以降の保守管理者による故障箇所の特定や故障原因の解析などに用いられる。
【0041】
S140では、記憶部13に記憶されている最新の測定データのうち、上記グループには属していない太陽光発電設備1について、順に個別の故障診断を開始する。
具体的には、この個別の故障診断では、個々の太陽光発電設備1について、測定データとともに受信した環境データと、記憶部13に記憶されている設置データとに基づき、これらデータの受信日時と、環境データが示す日射量や気温と、設置データが示す太陽電池モジュール2aおよびパワーコンディショナ4の機種や、太陽電池モジュール2aの設置数、設置方位および設置角度とをパラメータとして、測定データが正常であるとみなすことが可能な基準範囲を設定する(S150)。なお、このような太陽光発電設備1の設置環境毎によって異なる基準範囲を設定するためのテーブルが、予め記憶部13に記憶されており、このテーブルにおける上記パラメータと基準範囲との相関は、太陽電池モジュール2aやパワーコンディショナ4の仕様や、過去の統計などに基づいて予め決められている。
【0042】
そして、個別の故障診断では、個々の太陽光発電設備1について、測定データ(各種の状態値)が、S150にて設定された基準範囲内であるか否かを順に判断し(S160)、ここで、最新の測定データのうち全てが基準範囲内にあると判断した場合には(S160;YES)、本処理を終了し、一方、基準範囲外である測定データが存在すると判断した場合には(S160;NO)、S170に移行する。
【0043】
S170では、S160において基準範囲外であった測定データの送信元である太陽光発電設備1について、不具合が発生している可能性が高いことを示す前述の警報データを、ネットワークI/F12を介してPC15に送信し、本処理を終了する。
【0044】
このような処理によれば、例えば、警報データを受信したPC15が、所定の警報メッセージや警告音を出力することにより、保守管理者に警報データの受信を知らせることができ、保守管理者は、PC15の操作によって、警報データに付加されている測定データを閲覧することが可能となる。
【0045】
<効果>
以上説明したように、本実施形態の太陽光発電設備1では、シリアル−イーサネット変換器5が、パワーコンディショナ4からシリアル通信によって送られてくる状態値を示す測定データを、イーサネットに準じたデータに変換し、VPNルータ7が、シリアル−イーサネット変換器5からの入力データを、仮想プライベートネットワーク6を介して接続された管理装置11に送信するように構成されている。
【0046】
このような構成では、あたかもパワーコンディショナ4が敷地内のコンピュータに接続されているかのように、人手を介することなく遠隔地にある管理装置11に測定データを送信することができる。
【0047】
また、シリアル−イーサネット変換器5やVPNルータ7は、管理装置11やPC15のようなコンピュータと比べて、複雑な処理を行わない分、周囲の電磁波や温度、湿度等の影響を受けにくい構成であることから、パワーコンディショナ4と同一の筐体4aに収納することができる。
【0048】
したがって、太陽光発電設備1の構成によれば、無人の空地スペースへの導入においても、PC15のようなコンピュータを置く建物を建設することなく、測定データを好適に収集するための装置を好適に設置することができる。また、太陽光発電設備1では、VPNルータ7に無線モジュールが搭載されているため、管理装置11にデータ送信するための配線を用意せずに済む分、設置コストを削減することができる。
【0049】
また、本実施形態の遠隔設備管理システム10では、太陽光発電設備1から仮想プライベートネットワーク6を介して測定データが送信され、保守管理者のPC15にアクセス可能な管理装置11がこれらの測定データを蓄積するため、情報漏れのリスクを減らすとともに、保守管理者が適宜必要に応じてこれらの測定データを容易に閲覧することができる。
【0050】
また、本実施形態の遠隔設備管理システム10では、管理装置11が、測定データに基づいて太陽光発電設備1に関する故障診断を行い、不具合の可能性を発見した場合に警報データを保守管理者のPC15に送信するため、不具合があった場合に保守管理者から設備管理システム10のユーザに連絡することができ、ひいてはサービス向上に繋げることができる。
【0051】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態の太陽光発電設備1では、太陽電池アレイ2として複数の太陽電池モジュール2aが設置されているが、これに限るものではなく、一つの太陽電池モジュール2aだけが設置されている態様でもよい。
【0053】
また、上記実施形態の遠隔設備管理システム10では、管理装置11が、太陽光発電設備1から送られてくる測定データを管理する態様であるが、詳しくは、管理装置11が、太陽光発電設備1に対して測定データの送信要求を送信し、太陽光発電設備1におけるパワーコンディショナ4が、この送信要求を受信すると、測定データを管理装置11に送信することにより、管理装置11が、太陽光発電設備1から送られてくる測定データを管理する態様であってもよい。
【0054】
また、上記実施形態の遠隔設備管理システム10では、設置データが管理装置11に予め記憶されているが、これに限るものではなく、管理装置11が太陽光発電設備1から設置データを取得するように構成されてもよい。この場合、太陽光発電設備1では、例えば、太陽電池モジュール2aの設置方位および角度を検出する各種センサを備え、これらのセンサから設置データがシリアル−イーサネット変換器5を介してVPNルータ7に入力され、VPNルータ7が仮想プライベートネットワーク6を介して管理装置11に設置データを測定データとともに送信すればよい。
【0055】
また、上記実施形態の遠隔設備管理システム10において、管理装置11の制御部14が行うメンテナンス処理はあくまでも一例であるため、これに限定されるものではなく、例えば、管理対象となる太陽光発電設備1をグループ化せずに、全ての太陽光発電設備1において、個々に故障診断を行ってもよいし、さらに言えば、メンテナンス処理を行うことなく、測定データを蓄積するだけの構成でもよい。
【0056】
また、上記実施形態の遠隔設備管理システム10では、管理装置11として、PC15がアクセス可能なサーバを例示したが、これに限るものではなく、例えばサーバを経由することなく、太陽光発電設備1からPC15に測定データが直接送信される構成であってもよい。
【0057】
なお、上記実施形態の遠隔設備管理システム10では、管理装置11が複数の太陽光発電設備1を管理する構成を例示したが、これに限定されるものではなく、一つの太陽光発電設備1を管理するように構成されてもよい。
【0058】
さらに言えば、上記実施形態の遠隔設備管理システム10では、太陽光発電設備1を遠隔地にある管理装置11によって管理する構成を例示したが、太陽光発電設備1に限らず、各種の発電設備に適用することができる。例えば、遠隔設備管理システム10では、小規模な水源から出される様々な水流をエネルギーとして電力に変換することで発電する発電装置に例えばパワーコンディショナ4等の変換装置が接続された構成の発電設備を、遠隔地にある管理装置11によって管理してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…太陽光発電設備、2…太陽電池アレイ、2a…太陽電池モジュール、2b…太陽電池ストリング、3…キュービクル、4…パワーコンディショナ、3a,4a…筐体、5…イーサネット変換器、6…仮想プライベートネットワーク、7…VPNルータ、7a…基地局、8…日射計、9…気温計、10…遠隔設備管理システム、11…管理装置、12…ネットワークI/F、13…記憶部、14…制御部、15…PC、31…集電盤。
図1
図2
図3