(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のシリンダー錠は、所謂チェンジキーとなるニュートラルキーを有し、現状運用中の専用キーであるファーストキーの状態を、ニュートラルキーによりリセットして、それを抜いて別の専用キーであるセカンドキーを挿すことで変更、すなわち切り換えを行なう。すなわち、運用中のキーに対応するリセットキーをそれぞれ持つ必要があった。このようなニュートラルキーの存在は、紛失や数が増える等、管理上、不都合の生じることがある。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、当初の専用キーであるファーストキーで運用されているシリンダー錠に、ニュートラルキーなどの別途キーを必要とせず、別の専用キーとなるセカンドキーを使用するだけで、キーチェンジを行うことができる、すなわち新たに使用する別の専用キーにて操作を行なうのみで、その新たな専用キーでのみ操作可能となるシリンダー錠の構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のシリンダー錠11の構造は、鍵穴37を有し外筒21の内側に回転自在に収容される内筒23と、
前記内筒23から突出して前記外筒21のロック溝41に進入して前記内筒23の回転を阻止するとともに前記内筒23への後退が許容されることで前記内筒23を回転可能にするロッキングバー25と、
前記内筒23に移動自在に設けられ前記鍵穴37に挿入されたキーの使用によりタンブラ側バー進入凹部51を前記ロッキングバー25の前記内筒23への後退を許容する位置に配置する
とともに、一端側と他端側に窪んだ一端側凹所59と他端側凹所61を有して穿設される切替溝57を備える可変タンブラ27と、
前記切替溝57に係合する可変ピン69が突設されており、前記可変タンブラ27の移動方向と略同方向に相対移動自在とされるとともに、該可変タンブラ27に対して一方向にのみ移動自在とされ、
前記切替溝57と
前記可変ピン69との係合により該可変タンブラ27に対する相対移動不能となる係合位置を段階的に複数備え、前記キーとは別のキーの使用によって前記ロッキングバー25の進入を許容していた前記タンブラ側バー進入凹部51のバー進入を不能にして異なる位置でバー進入を許容するチップ側バー進入凹部65を備える可変チップ29と、
を具備することを特徴とする。
【0007】
このシリンダー錠11の構造では、キー(ファーストキー13)を挿入した状態において、ロッキングバー25とバー進入凹部67とが一致し、ロッキングバー25の内筒23への後退が許容される状態となる。ここで、バー進入凹部67は、タンブラ側バー進入凹部51と、チップ側バー進入凹部65とが重なり合って所定凹部幅となっている。このキー(ファーストキー13)の運用状態において、このキーとは別のキー(セカンドキー15)を挿入すると、バー進入凹部67は、ロッキングバー25に合わない。この状態でセカンドキー15が使用されると、可変チップ29とともにチップ側バー進入凹部65が移動され、切替溝57と可変ピン69との係合位置が変り、バー進入凹部67の所定凹部幅が変わる。つまり、シリンダー錠11は、別のキー(セカンドキー15)の運用状態となる。この別のキー(セカンドキー15)の運用時に、当初のキー(ファーストキー13)を挿入しても、変更されたバー進入凹部67が一致せず、施解錠操作は不可能となる。
【0008】
本発明の請求項2記載のシリンダー錠の構造は、請求項1記載のシリンダー錠11(71)の構造であって、
前記切替溝57(81)が一端側凹所59と他端側凹所61とを有する略へ字状に形成され、
前記可変チップ29(75)は、前記可変ピン69が前記切替溝57(81)の一端側凹所59または他端側凹所61に配置されることで、前記可変タンブラ27(73)に対して二位置に段階的に切り替え配置されることを特徴とする。
【0009】
このシリンダー錠11の構造では、ロッキングバー25の押圧によって可変チップ29(75)が移動されると、可変チップ29(75)の可変ピン69が、可変タンブラ27(73)の略へ字状の切替溝57(81)に沿って一端側凹所59から他端側凹所61へ移動される。つまり、可変チップ29(75)が二位置に切り替え配置される。これにより、チップ側バー進入凹部65がタンブラ側バー進入凹部51に対して移動され、バー進入凹部67は、キー(ファーストキー13)挿入時にロッキングバー25の後退を許容する所定凹部幅から、別のキー(セカンドキー15)挿入時にロッキングバー25の後退を許容する異なる所定凹部幅へと変更される。
【0010】
本発明の請求項3記載のシリンダー錠11の構造は、請求項2記載のシリンダー錠11の構造であって、
前記内筒23には、前記ロッキングバー25の前記内筒23への後退により押圧されて半径方向内側に移動される可変仕切板31が設けられ、
前記可変仕切板31に前記可変チップ29がタンブラ付勢バネ63により付勢されて設けられ、
前記ロッキングバー25の後退により前記可変仕切板31とともに
前記可変チップ29が移動し、該可変チップ29の可変ピン69が前記タンブラ付勢バネ63の付勢力によって前記切替溝57の一端側凹所59から他端側凹所61に移動されて、前記可変チップ29が、前記可変タンブラ27に対し移動することを特徴とする。
【0011】
このシリンダー錠11の構造では、別のキー(セカンドキー15)を回転開始すると、ロッキングバー25が可変チップ29と可変仕切板31を持ち上げるように径方向内側方向へ押し込む。このときの可変タンブラ27は、可変仕切板31に対して、タンブラ側バー進入凹部51がロッキングバー25を許容する位置のままに保持される。また、可変チップ29の可変ピン69は、可変タンブラ27の略へ字状(好ましくはコ字状)の切替溝57を奥方向に移動される。セカンドキー15の回転を戻した直後、可変チップ29の可変ピン69は、タンブラ付勢バネ63によって切替溝57の一端側凹所59から他端側凹所61に移動されている。その結果、チップ側バー進入凹部65は、移動され、バー進入凹部67の位置が変わる。可変仕切板31の位置が戻ると、可変ピン69が切替溝57のコ字状の他端側凹所61に係合し、その位置に保持される。別のキー(セカンドキー15)の抜脱の後、シリンダー錠11は、別のキー(セカンドキー15)の運用状態となり、当初のキー(ファーストキー13)は使用不能となる。
【0012】
本発明の請求項4記載のシリンダー錠71の構造は、請求項2記載のシリンダー錠11の構造であって、
切替中心軸77と摺動長穴79を係合させることで前記可変チップ75が前記可変タンブラ73に対して揺動及び前記摺動長穴79の長手方向に移動自在に設けられ、
前記内筒23と前記可変チップ75との間には前記可変チップ75を前記摺動長穴79の長手方向に付勢するタンブラ付勢バネ63が設けられ、
前記ロッキングバー25の後退により
前記可変チップ75が押圧され
、前記可変チップ75の可変ピン69が前記タンブラ付勢バネ63の付勢力によっ
てへ字状の前記切替溝81の一端側凹所59から他端側凹所61に移動され
て、前記可変チップ75が、前記可変タンブラ73に対し移動することを特徴とする。
【0013】
このシリンダー錠71の構造では、別のキー(セカンドキー15)を回転開始すると、ロッキングバー25が可変チップ75を持ち上げ、切替中心軸77を中心に揺動される。同時に、可変チップ75は、切替中心軸77に対して摺動長穴79を摺動させて、タンブラ付勢バネ63の付勢力によって移動される。このときの可変タンブラ73は、可変仕切板31に対して、タンブラ側バー進入凹部51がロッキングバー25を許容する位置のままに保持される。この移動により、可変チップ75の可変ピン69は、可変タンブラ73のへ字状の切替溝81を奥方向に移動される。別のキー(セカンドキー15)の回転を戻した直後、可変チップ75の可変ピン69は、タンブラ付勢バネ63によって切替溝81の他端側凹所61に移動されてその位置に保持される。その結果、チップ側バー進入凹部65が移動され、バー進入凹部67の位置が変わり、シリンダー錠71は、セカンドキー15の運用状態となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る請求項1記載のシリンダー錠の構造によれば、当初使用するキー(ファーストキー)で運用されているシリンダー錠に、ニュートラルキーなどの別途キーを必要とせず、新たな別のキー(セカンドキー)を使用するだけで、キーチェンジを行うことができる。また、この新たな別のキー(セカンドキー)を使用した後は、当初のキー(ファーストキー)を使用することは不可能となる。
【0015】
本発明に係る請求項2記載のシリンダー錠の構造によれば、切替溝の一端側凹所または他端側凹所に可変ピンを配置することで、簡素な構造により、可変チップを、当初のキー(ファーストキー)の使用可能位置から新たな別のキー(セカンドキー)の使用可能な位置へ不可逆的に2位置切り替えできる。
【0016】
本発明に係る請求項3記載のシリンダー錠の構造によれば、内筒の回転によって後退するロッキングバーを利用して可変仕切板を移動し、可変仕切板の移動によって可変ピンをコ字状の切替溝の一端側凹所から他端側凹所に移動して、可変タンブラに対して可変チップを、確実な不可逆構造で2位置切り替えでき、防犯性を高めることができる。
【0017】
本発明に係る請求項4記載のシリンダー錠の構造によれば、内筒の回転によって後退するロッキングバーを利用して可変チップを揺動し、タンブラ付勢バネと摺動長穴とによって、可変ピンをへ字状の切替溝の一端側凹所から他端側凹所に移動して、可変タンブラに対して可変チップを、少ない部品点数で不可逆的に2位置切り替えでき、製品を小型且つ安価に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るシリンダー錠の構造を表す断面図である。
【
図2】
図1に示したシリンダー錠の分解正面図である。
【
図3】(a)はファーストキー運用時の第1実施形態に係るシリンダー錠の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図である。
【
図4】(a)はセカンドキー挿入時の第1実施形態に係るシリンダー錠の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図である。
【
図5】(a)はセカンドキー回転時の第1実施形態に係るシリンダー錠の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図である。
【
図6】(a)はセカンドキーの回転が戻された第1実施形態に係るシリンダー錠の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図である。
【
図7】(a)はセカンドキーに切替完了後の第1実施形態に係るシリンダー錠の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図である。
【
図8】(a)はセカンドキーが抜かれた状態の第1実施形態に係るシリンダー錠の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図である。
【
図9】(a)はセカンドキー運用時にファーストキーが使用された状態の第1実施形態に係るシリンダー錠の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図である。
【
図10】ファーストキー運用時にマスターキーが挿入された状態の第1実施形態に係るシリンダー錠の断面図である。
【
図11】セカンドキー運用時にマスターキーが挿入された状態の第1実施形態に係るシリンダー錠の断面図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係るシリンダー錠の構造を表す断面図である。
【
図14】(a)は
図13に示した可変タンブラの拡大正面図、(b)は(a)の平面図、(c)は
図13に示した可変チップの拡大正面図、(d)は(c)の平面図である。
【
図15】(a)はファーストキー運用時の第2実施形態に係るシリンダー錠の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図である。
【
図16】(a)はセカンドキー挿入時の第2実施形態に係るシリンダー錠の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図である。
【
図17】(a)はセカンドキー回転時の第2実施形態に係るシリンダー錠の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図である。
【
図18】(a)はセカンドキーの回転が戻された第2実施形態に係るシリンダー錠の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図である。
【
図19】(a)はセカンドキーに切替完了後の第2実施形態に係るシリンダー錠の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図である。
【
図20】(a)はセカンドキーが抜かれた状態の第2実施形態に係るシリンダー錠の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図である。
【
図21】(a)はセカンドキー運用時にファーストキーが使用された状態の第2実施形態に係るシリンダー錠の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図である。
【
図22】ファーストキー運用時にマスターキーが挿入された状態の第2実施形態に係るシリンダー錠の断面図である。
【
図23】セカンドキー運用時にマスターキーが挿入された状態の第2実施形態に係るシリンダー錠の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係るシリンダー錠の構造を表す断面図、
図2は
図1に示したシリンダー錠の分解正面図である。
このシリンダー錠の構造は、
図1に示すシリンダー錠11に適用される。なお、
図1中の上半分の機構は、下半分と同様機構のため説明を省略する。シリンダー錠11は、少なくとも上下片側の機構を有することで本発明の作用効果を奏する。上下に機構を設ければ鍵違い数を増加させることができる。また、片側半分の機構はオプションと考えてもよい。
【0020】
シリンダー錠11には、当初使用されるキーであるファーストキー13、新たに使用される別のキーであるセカンドキー15、及びマスターキー17が使用される。これらファーストキー13、セカンドキー15、マスターキー17は、異なる刻み深さのキー刻み19を有する。シリンダー錠11は、外筒21と、内筒23と、ロッキングバー25と、可変タンブラ27と、可変チップ29と、可変仕切板31と、を有している。
【0021】
外筒21の内方には左右一対の支持柱33と上下一対のガイド軸35が固定され、支持柱33及びガイド軸35は外筒21の軸線に沿う方向に延在してそれぞれが鍵穴37を挟んで配設される。外筒21の内側には内筒23が回転自在に収容され、内筒23は鍵穴37を有している。内筒23にはバー収容溝39が形成され、バー収容溝39には不図示のバー付勢バネによってロッキングバー25が半径方向外側に付勢されて収容されている。ロッキングバー25は、内筒23から突出して外筒21のロック溝41に進入して内筒23の回転を阻止するとともに、内筒23への後退が許容されることで内筒23を回転可能にする。
【0022】
内筒23には可変仕切板31が半径方向に移動自在に設けられ、可変仕切板31はロッキングバー25の内筒23への後退により押圧されて半径方向内側に移動される。可変仕切板31は、直径方向両側に設けられる一対の可変バネ43によって外筒21内で半径方向外側に付勢されている。
【0023】
外筒21の内方にはガイド軸35にガイド穴45を係合して可変タンブラ27が設けられ、可変タンブラ27はガイド軸35にガイド穴45を摺動させて外筒21の直径に沿う方向に移動自在となっている。可変タンブラ27の上縁にはキー進入部47が形成され、キー進入部47は鍵穴37の半部である下半部を包囲する。キー進入部47には係合肩部49が形成され、係合肩部49は鍵穴37に挿入されたファーストキー13、セカンドキー15、マスターキー17のキー刻み19によってそれぞれの所定の位置へ可変タンブラ27を移動させる。可変タンブラ27の下縁にはタンブラ側バー進入凹部51が形成され、タンブラ側バー進入凹部51はロッキングバー25の内筒23への後退を許容する。すなわち、可変タンブラ27は、内筒23に移動自在に設けられ、鍵穴37に挿入されたキー(ファーストキー13)の使用によりタンブラ側バー進入凹部51をロッキングバー25の内筒23への後退を許容する位置に配置する。
【0024】
可変タンブラ27の正面には規制ピン53が突設され、規制ピン53は可変仕切板31の上縁に形成される規制解除溝55に係合する。可変タンブラ27は、規制ピン53が規制解除溝55に係合することで、可変仕切板31に対しての移動が規制される。可変タンブラ27にはコ字状の切替溝57が穿設され、切替溝57は一端側と他端側に窪んだ一端側凹所59と他端側凹所61を有している。
【0025】
可変仕切板31には可変チップ29がタンブラ付勢バネ63により、可変タンブラ31の移動方向と同方向となり、且つ可変タンブラ31に対してその移動方向が一方向となるよう付勢されて設けられている。可変チップ29の下縁にはチップ側バー進入凹部65が形成される。ここで、タンブラ側バー進入凹部51は広凹部幅に形成され、チップ側バー進入凹部65は狭凹部幅に形成される。これらタンブラ側バー進入凹部51と、チップ側バー進入凹部65とは、重なり合って所定凹部幅のバー進入凹部67(
図1参照)を構成している。従って、可変タンブラ27に対して可変チップ29が移動されれば、バー進入凹部67の凹部幅は変更される。つまり、ロッキングバー25の受け入れ、受け入れ拒否が変更される。
【0026】
可変チップ29は、ロッキングバー25の後退により可変仕切板31とともに移動されると、タンブラ付勢バネ63の付勢力によって可変タンブラ27に対しコ字状の切替溝57の一端側から他端側に移動される。可変チップ29は、可変ピン69が切替溝57のコ字状の一端側または他端側に配置され係合することで、可変タンブラ27に対して2位置に切り替え配置される。可変チップ29は、切替溝57と可変ピン69を係合させることで、可変タンブラ27に相対移動自在となるとともに、一端側凹所59または他端側凹所61に係合することで相対移動不能となり、セカンドキー15の使用によってロッキングバー25の進入を許容していたタンブラ側バー進入凹部51のバー進入を不能にして、異なる位置でバー進入を許容することとなる。
【0027】
次に、上記構成を有するシリンダー錠11の構造の作用を説明する。
図3(a)はファーストキー運用時の第1実施形態に係るシリンダー錠11の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図、
図4(a)はセカンドキー挿入時の第1実施形態に係るシリンダー錠11の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図、
図5(a)はセカンドキー回転時の第1実施形態に係るシリンダー錠11の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図、
図6(a)はセカンドキー15の回転が戻された第1実施形態に係るシリンダー錠11の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図、
図7(a)はセカンドキー15に切替完了後の第1実施形態に係るシリンダー錠11の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図、
図8(a)はセカンドキー15が抜かれた状態の第1実施形態に係るシリンダー錠11の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図、
図9(a)はセカンドキー運用時にファーストキー13が使用された状態の第1実施形態に係るシリンダー錠11の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図、
図10はファーストキー運用時にマスターキー17が挿入された状態の第1実施形態に係るシリンダー錠11の断面図、
図11はセカンドキー運用時にマスターキー17が挿入された状態の第1実施形態に係るシリンダー錠11の断面図である。
このシリンダー錠11の構造では、
図3に示すファーストキー13を挿入した状態において、ロッキングバー25とバー進入凹部67とが一致し、ロッキングバー25の内筒23への後退が許容される状態となる。
【0028】
ここで、バー進入凹部67は、狭凹部幅のタンブラ側バー進入凹部51と、広凹部幅のチップ側バー進入凹部65とが重なり合って所定凹部幅となっている。このファーストキー13の運用状態において、
図4に示すようにセカンドキー15を挿入すると、バー進入凹部67は、ロッキングバー25に合わない。この状態で
図5に示すようにセカンドキー15を回転開始すると、ロッキングバー25が可変バネ43に抗して、可変チップ29と可変仕切板31を持ち上げるように径方向内側方向へ押し込む。なお、可変タンブラ27は、上縁が支持柱33に当接していて押し込まれない。
【0029】
このときの可変タンブラ27は、可変仕切板31に対して、可変仕切板31に形成されている規制解除溝55に規制ピン53が係合し、タンブラ側バー進入凹部51がロッキングバー25を許容する位置のままに保持される。また、可変チップ29の可変ピン69は、可変タンブラ27の切替溝57を
図5の左斜め上となる奥方向(移動可能位置)に移動される。
【0030】
図6に示すようにセカンドキー15の回転を戻した直後、可変チップ29の可変ピン69は、タンブラ付勢バネ63によって切替溝57の一端側凹所59から他端側凹所61に移動されている。その結果、チップ側バー進入凹部65は、移動され、バー進入凹部67の位置が変わる。
【0031】
図7に示すように可変バネ43の付勢力で可変仕切板31の位置が戻ると、可変ピン69が切替溝57のコ字状の他端側凹所61に係合し、その位置に保持される。すなわち、切替溝57に対する可変ピン69の係合位置が変更され、またその係合位置を戻すことなく切り替え後の状態が維持される。
図8に示すセカンドキー15の抜脱の後、シリンダー錠11は、セカンドキー15の運用状態となる。
【0032】
図9に示すようにセカンドキー15の運用時に、ファーストキー13をシリンダー錠11に挿入しても、変更されたバー進入凹部67が一致せず、ファーストキー13は使用不能となって施解錠操作は不可能となる。
【0033】
また、マスターキー17を使用する場合、
図10に示すようにファーストキー13にて運用中のシリンダー錠11にマスターキー17を挿入しても、
図11に示すようにセカンドキー15にて運用中のシリンダー錠11にマスターキー17を挿入しても、バー進入凹部67の幅長が、ファーストキー13、セカンドキー15、マスターキー17のそれぞれに対応するよう設定されていることで、何れの運用状態においても施解錠が可能となる。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態に係るシリンダー錠71の構造を説明する。
図12は本発明の第2実施形態に係るシリンダー錠71の構造を表す断面図、
図13は
図12に示したシリンダー錠71の分解正面図、
図14(a)は
図13に示した可変タンブラ73の拡大正面図、(b)は(a)の平面図、(c)は
図13に示した可変チップ75の拡大正面図、(d)は(c)の平面図である。なお、
図1〜
図11に示した部材及び部位と同等の部材及び部位には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
このシリンダー錠71の構造は、上記の可変仕切板31を備えない。可変チップ75は、可変タンブラ73に直接設けられている。可変タンブラ73には切替中心軸77が正面に突設される。内筒23と可変チップ75との間には、可変チップ75を摺動長穴79の長手方向に付勢するタンブラ付勢バネ63が設けられている。可変チップ75は、ロッキングバー25によって押し上げられて揺動されるようになっている。
【0035】
図14に示すように、可変タンブラ73にはへ字状の切替溝81が穿設される。一方、可変チップ75には切替中心軸77に係合する摺動長穴79が穿設される。また、可変チップ75には切替溝81に係合する可変ピン69が突設される。つまり、可変チップ75は、切替中心軸77に対して揺動自在且つスライド自在に支持されることで、可変ピン69が切替溝81の一端側凹所59から他端側凹所61へ移動可能となっている。ロッキングバー25の後退により押圧された可変チップ75は、タンブラ付勢バネ63の付勢力によって可変タンブラ73に対しへ字状の切替溝81の一端側から他端側に移動される。
【0036】
次に、第2実施形態に係るシリンダー錠71の構造の作用を説明する。
図15(a)はファーストキー運用時の第2実施形態に係るシリンダー錠71の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図、
図16(a)はセカンドキー挿入時の第2実施形態に係るシリンダー錠71の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図、
図17(a)はセカンドキー回転時の第2実施形態に係るシリンダー錠71の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図、
図18(a)はセカンドキー15の回転が戻された第2実施形態に係るシリンダー錠71の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図、
図19(a)はセカンドキー15に切替完了後の第2実施形態に係るシリンダー錠71の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図、
図20(a)はセカンドキー15が抜かれた状態の第2実施形態に係るシリンダー錠71の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図、
図21(a)はセカンドキー運用時にファーストキー13が使用された状態の第2実施形態に係るシリンダー錠71の断面図、(b)は(a)の要部分解正面図、
図22はファーストキー運用時にマスターキー17が挿入された状態の第2実施形態に係るシリンダー錠71の断面図、
図23はセカンドキー運用時にマスターキー17が挿入された状態の第2実施形態に係るシリンダー錠71の断面図である。
このシリンダー錠71の構造では、
図15に示すファーストキー13を挿入した状態において、ロッキングバー25とバー進入凹部67とが一致し、ロッキングバー25の内筒23への後退が許容される状態となる。
【0037】
このファーストキー13の運用状態において、
図16に示すようにセカンドキー15を挿入すると、バー進入凹部67は、可変チップ75に干渉してロッキングバー25に合わない。この状態で
図17に示すようにセカンドキー15を回転開始すると、ロッキングバー25が可変チップ75を持ち上げ、切替中心軸77を中心に揺動される。なお、可変チップ75は、上縁が支持柱33に当接していて押し込まれない。同時に、可変チップ75は、切替中心軸77に対して摺動長穴79を摺動させて、タンブラ付勢バネ63の付勢力によって移動される。
【0038】
図18に示すようにセカンドキー15の回転を戻した直後、可変チップ75の可変ピン69は、タンブラ付勢バネ63によって切替溝81の他端側に移動されている。その結果、チップ側バー進入凹部65は、移動され、バー進入凹部67の位置が変わる。
【0039】
図19に示すようにタンブラ付勢バネ63による可変チップ75の移動が完了すると、可変ピン69が切替溝81のへ字状の他端側に係合し、その係合位置に保持される。
図20に示すセカンドキー15の抜脱の後、シリンダー錠71は、セカンドキー15の運用状態となる。
【0040】
図21に示すようにセカンドキー15の運用時に、ファーストキー13をシリンダー錠71に挿入しても、変更されたバー進入凹部67が一致せず、施解錠操作は不可能となる。
【0041】
また、マスターキー17を使用する場合、
図22に示すようにファーストキー13にて運用中のシリンダー錠71にマスターキー17を挿入しても、
図23に示すようにセカンドキー15にて運用中のシリンダー錠71にマスターキー17を挿入しても、バー進入凹部67の幅長が、ファーストキー13、セカンドキー15、マスターキー17のそれぞれに対応するよう設定されていることで、何れの運用状態においても施解錠が可能となる。
【0042】
このシリンダー錠71の構造によれば、内筒23の回転によって後退するロッキングバー25を利用して可変チップ75を揺動し、タンブラ付勢バネ63と摺動長穴79とによって、可変ピン69をへ字状の切替溝57の一端側から他端側に移動して、可変タンブラ73に対して可変チップ75を、少ない部品点数で不可逆的に2位置切り替えでき、製品を小型且つ安価に構成できる。
【0043】
従って、本実施形態に係るシリンダー錠11及びシリンダー錠71の構造によれば、ファーストキー13で運用されている状態から、ニュートラルキーなどの別途キーを必要とせず、セカンドキー15を使用するだけで、キーチェンジを行うことができる。