特許第6185259号(P6185259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185259
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】エアコン室外機の取付け構造
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/60 20110101AFI20170814BHJP
   F24F 1/32 20110101ALI20170814BHJP
【FI】
   F24F1/60
   F24F1/32
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-39565(P2013-39565)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-167375(P2014-167375A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2015年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100080296
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】鰐渕 憲昭
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭64−025638(JP,U)
【文献】 特開平10−009482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/60
F24F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコンの室外機の取付け構造であって、
前記室外機の配管接続側及び配管非接続側の底部にそれぞれ設けられた脚部と、
床面に対して非固定の状態とされ、前記脚部を支持する上面を有する架台と、
前記室外機の移動を抑制する接続部材と、
を備え、
前記室外機は、前記脚部に形成された締結孔を介して挿入される締結手段により前記架台上に固定され、
前記接続部材の一端部が前記室外機において重量の重い前記配管接続側の底部に設けられた脚部に対して固定され、他端部が住居の壁に固定されたことを特徴とするエアコン室外機の取付け構造。
【請求項2】
前記接続部材は、ワイヤーロープより成ることを特徴とする請求項1記載のエアコン室外機の取付け構造。
【請求項3】
前記ワイヤーロープは、配管に沿うように配設されることを特徴とする請求項2記載のエアコン室外機の取付け構造。
【請求項4】
前記接続部材は、長尺フレームより成ることを特徴とする請求項1記載のエアコン室外機の取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風によって転倒することや浮き上がることがないエアコン室外機の取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、特許文献1に示すように、家庭用のエアーコンディショナー(エアコン)は、室内に固定される室内機と、室外に設置される室外機と、室内機及び室外機の間に冷媒を循環させる配管と、配管を内包して保護する保護カバーとを備えるものが知られている。
上記エアコンを据え付ける際、例えばマンション等の集合住宅において各住居は、一般的に規約上、専用部分として取り扱われることから、各住居の所有者が任意の場所に室内機を設置,固定することが可能であるが、集合住宅においてバルコニーやベランダ等は、共用部分として取り扱われることから、バルコニー等内に室外機を床置きすることはできても、床面にボルト等で固定することができなかった。あるいは、ボルト止めすると、床面にクラックが生じ長期間経て、雨漏りの原因となる可能性も指摘されていた。また、配管においては、保護カバーが外壁に対してビス等で簡易的に固定されているものの、保護カバー内部の配管自体が外壁に対して固定されていなかった。
そのため、近年特にマンション等の高層階等において台風等による強風のために配管が壁から剥がれて、床面に設置された室外機が浮上、回転することにより損傷を受けたり、場合によっては配管が分断されて室外機が吹き飛んでしまう可能性も指摘されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−9482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するため、強風により室外機が転倒すること、あるいは、室外機が空中に浮き上がることがないエアコン室外機の取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、エアコンの室外機の取付け構造であって、室外機の配管接続側及び配管非接続側の底部にそれぞれ設けられた脚部と、床面に対して非固定の状態とされ、脚部を支持する上面を有する架台と、室外機の移動を抑制する接続部材とを備え、室外機は、脚部に形成された締結孔を介して挿入される締結手段により架台上に固定され、接続部材の一端部が室外機において重量の重い配管接続側の底部に設けられた脚部に対して固定され、他端部が住居の壁に固定された構成とした。
本発明によれば、強風によって室外機が転倒すること、あるいは、空中に浮き上がることを防止することが可能となる。
また、エアコン室外機の取付け構造の他の構成として、接続部材がワイヤーロープであれば、上記構成から生じる効果に加え、強風により接続部材としてのワイヤーロープが伸張,破断することがない。
また、エアコン室外機の取付け構造の他の構成として、ワイヤーロープが配管に沿って配設されれば、配管の折れ曲がりや室外機が配管から離れて吹き飛ばされることを防止できる。
また、エアコン室外機の取付け構造の他の構成として、接続部材が長尺フレームより成れば、室外機を移動させる際に室外機と壁との固定を解除する必要がなく、作業性を向上させることができる。
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】エアコン室外機の取付け構造を示す概略図である。
図2】エアコン室外機の取付け構造を示す側面図である。
図3】ワイヤーロープの取付例を示す斜視図及び側面図である。
図4】室外機の転倒実験結果を示す模式図である。
図5】ワイヤーロープの他の取付例を示す斜視図及び側面図である。
図6】室外機の他の取付け構造を示す概略図である。
図7】長尺フレームを用いた取付け構造を示す側面図及び斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【0008】
図1乃至図3は、本発明によるエアコン室外機の取付け構造を示す概略構成図であり、各図において、10はエアコンであり、このエアコン10は、マンション等の集合住宅において専用部分である住居(室内)等の天井11付近の壁12に固定される室内機20と、マンション等の集合住宅において共用部分であるバルコニー等の室外に床置きされる室外機40と、室内機20及び室外機40を互いに連結する配管30とを備える。
【0009】
室内機20は、室内機20の内部に配設され、配管30内を循環する冷媒により取込口21から取り込んだ室内の空気を熱交換する室内熱交換器22と、室内熱交換器22により熱交換された空気を取込口21の下方に設けられる吹出口24から室内に送り出す送風機23とを備える。
【0010】
配管30は、室外機40の室外熱交換器43で熱交換された冷媒を室内機20に向かって圧送する送り配管31と、室内熱交換器22で熱交換された冷媒を室外機40に向かって返送する戻り配管32とを備え、室内機20及び室外機40の間に冷媒を循環させる。配管30は、例えば樹脂等により形成される筒状体の保護カバー34により覆われ、ビスやボルト等の図外の固定手段により壁12に対して簡易的に固定される。
【0011】
室外機40は、冷媒を圧縮して高温高圧の冷媒に変換する圧縮機42と、圧縮機42により圧縮された冷媒と空気とを熱交換させる室外熱交換器43と、圧縮機42と反対側に設けられ、室外熱交換器43内の冷媒に対して外気を送る送風機44とを備え、圧縮機42側に配管30が接続される(配管接続側40R)。ここで、室外機40の配管接続側40Rの重量は、重量の大きい圧縮機42が配管接続側40Rにあるので、配管非接続側40Lの重量よりも大きくなっている。
【0012】
室外機40の底部には、配管接続側40R及び配管非接続側40Lに互いに離間する薄板状の取付脚47が設けられる。取付脚47の両端には、図外の締結孔が開設され、室外機40は、固定手段としてのボルト55A,ナット55Bの挿通により架台50に固定される。
【0013】
架台50は、例えば硬質性の樹脂により正面視略台形状に成形される台座であり、床面と接する水平な底面51Aと、底面51Aから上方に向かって漸次縮径する方向に延長する左右一対の側面51B;51Bと、側面51B;51Bから互いに近接する方向に延長する左右一対の水平な上面51C;51Cとにより形成される。
また、架台50の上方には、取付脚47の延長方向に沿って正面視逆T字状の溝部53が開設され、当該溝部53の左右方向の寸法は、ボルト55Aの頭部の幅寸法よりも大きく形成される。これにより、溝部53に挿通されたボルト55Aのねじ部に対して、接続部材としてのワイヤーロープ60を固定することが可能となる。
【0014】
ワイヤーロープ60は、例えばステンレスや鉄合金製の複数本の素線からなるストランドを撚りあわせた構造であって、両端にアイ(輪)60A,60Bが形成される。
ワイヤーロープ60の一端側に形成されるアイ60Aは、ボルト55Aに対して引っ掛けられ、取付脚47と押えプレート56との間に介在した状態でナット55Bにより固定される。一方、ワイヤーロープ60の他端側に形成されるアイ60Bは、壁12と押えプレート63のとの間に介在した状態で壁12にあらかじめ開設された小孔62に対してビス61を挿通することにより固定される。また、ワイヤーロープ60は、両端が固定された場合、ピンと張った状態にする必要はなく、室外機40及び壁12との間でわずかに撓む程度(遊びをもたせた状態)の長さに設定される。
【0015】
図4を参照し、室外機40に風を吹き付けたときの実験結果を説明する。
図4(a)に示すように室外機40を固定しない従来の場合、室外機40は、強風が吹き付けることにより、風上から風下に向かって移動、あるいは、配管接続側40Rを中心として回転を開始する。風速がさらに上がると、室外機40は、当該室外機40の移動,回転に伴い壁12から遠ざかり、配管30を覆う保護カバー34ごと壁12から外れる。その後、風速が20m/s程度で配管30は完全に引き伸ばされ、室外機40はバランスを崩し転倒し、風速30m/s程度で室外機40に浮力が生じ空中へと浮き上がる。
【0016】
これに対し、図4(b)に示すように室外機40の配管接続側40Rをワイヤーロープ60により壁12に対して固定した室外機40は、強風が吹いた場合であっても、ワイヤーロープ60の撓み分のみの移動しか行われない。このため、ワイヤーロープ60により固定されない配管非接続側40Lが前後方向にわずかに移動,回転しても、配管接続側40Rがほとんど移動することがないため、配管30が引き伸ばされることがなく、室外機40の転倒を抑制でき、室外機40が空中に浮き上がることを防止できる。
【0017】
一方、図4(c)に示す室外機40においては、配管非接続側40Lをワイヤーロープ60により壁12に対して固定したので空中に浮き上がることを防止できる。しかし、図4(b)と異なり、配管接続側40Rが移動,回転することとなるため、配管30が、しだいに壁12から外れ、風速20m/s以上で完全に引き伸ばされる可能性がある。
【0018】
以上、室外機40の固定において、エアコン10の室外機40のうち、重量の大きい配管接続側40Rが、ワイヤーロープ60を介して壁12に固定されるので、強風による室外機40の移動,回転を防止でき、配管30が引き伸ばされることがないので、室外機40が転倒、あるいは、空中に浮き上がることを防止することができる。
また、室外機40と壁12との固定には、ワイヤーロープ60を用いているので、強風によりワイヤーロープ60が伸張,破断することなく、室外機40と壁12とを強固に固定することが可能となる。
【0019】
図5に示すように本実施形態においては、室外機40とワイヤーロープ60とを固定プレート70を介して固定する点で上記実施形態と異なる。
固定プレート70は、硬質樹脂や金属等から形成される楕円形の板材である。固定プレート70には、長軸方向両端部にそれぞれ締結孔70A、及び、固定孔70Bが開設される。締結孔70Aは、固定手段としてのボルト55Aが挿通可能な円孔であって、室外機40の配管接続側40Rの後方側のボルト55Aに挿入され、室外機40に対して固定される。固定孔70Bは、ワイヤーロープ60の一端側に形成されるアイ60Aを係止可能な円孔であって、ボルト55A,ナット55Bにより固定される。
【0020】
固定プレート70を用いることにより、メンテナンス等で室外機40を移動させる場合に、架台50の溝部53内に挿通されるボルト55Aを取り外すことなく、固定プレート70の固定孔70B側のボルト71A,ナット71Bを取り外だけで室外機40と壁12との固定を解除できるので、作業性を向上することが可能となる。
【0021】
図6に示すように本実施形態においては、配管30(保護カバー34)に沿ってワイヤーロープ60を配設した点で上記実施形態と異なる。
一端側が室外機40の配管接続側40Rに対して固定されるワイヤーロープ60は、配管30を覆う保護カバー34にほぼ直線状に沿うように配設され、保護カバー34の上方側の端部まで延長し、他端側が壁12に開設される小孔62に対してビス61を介して固定される。ワイヤーロープ60は、所定の間隔ごとに結束具80等により結束される。なお、ワイヤーロープ60は、1本に限らず複数本であってもよい。
【0022】
このように、ワイヤーロープ60を、配管30が収容される保護カバー34に沿わせながら配設することにより、強風によって配管30が保護カバー34ごと折れ曲がるような力が作用しても配管30を補張できるので、折れ曲がりを阻止でき、あるいは折れ曲がっても室外機40が配管30(保護カバー34)から離れて吹き飛ばされることを防止可能となる。
【0023】
以上、上記実施形態においては、室外機40と壁12とをワイヤーロープ60によって固定し、室外機40が移動することのない形態としたが、これに限定されるものではない。例えば、室内機20と室外機40とを連結する配管30自体、あるいは、配管30を保護する保護カバー34自体を、金具等を用いて壁12に直接固定する態様とすれば、強風が吹いても配管30または保護カバー34が壁12から外れることなく、配管30も引き伸ばされないので、室外機40が転倒、あるいは、空中に浮遊することを防止できる。
また、室外機40の固定は、配管接続側40Rに加え、配管非接続側40Lの2箇所以上を壁12に固定することにより、配管接続側40R及び配管非接続側40Lともに移動することがなくなるので、より一層室外機40の転倒、あるいは、空中への浮遊を防止できる。
さらに、図7に示すように、一端部が室外機40に対してボルト55A,ナット55Bにより固定され、他端部が壁12に対してビス61により固定されて、固定手段91により室外機40の前後方向に伸縮自在の長尺フレーム90を介して室外機40と壁12とを固定すれば、室外機40を移動させる際にボルト55A,ナット55Bやビス61の固定を解除せずに移動させることができ、作業性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0024】
10 エアコン、20 室内機、30 配管、40 室外機、47 取付脚、
50 架台、55A ボルト、55B ナット、60 ワイヤーロープ、
61 ビス、70 固定プレート、80 結束具、90 長尺フレーム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7