特許第6185272号(P6185272)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6185272表示装置用フィルム、表示装置用フィルムの製造方法及び製造装置並びに画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185272
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】表示装置用フィルム、表示装置用フィルムの製造方法及び製造装置並びに画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20170814BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20170814BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   G09F9/00 313
   G09F9/00 338
   G09F9/00 342
   G09F9/00 302
   G02F1/1333
   B32B27/00 E
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-83691(P2013-83691)
(22)【出願日】2013年4月12日
(65)【公開番号】特開2014-206615(P2014-206615A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】596153449
【氏名又は名称】株式会社タカラインコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(72)【発明者】
【氏名】藤田 誠
(72)【発明者】
【氏名】西口 城作
(72)【発明者】
【氏名】番野 智史
【審査官】 村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−169974(JP,A)
【文献】 特開2011−194813(JP,A)
【文献】 特開2005−173970(JP,A)
【文献】 特開2007−121605(JP,A)
【文献】 特開平08−108512(JP,A)
【文献】 特開2010−163591(JP,A)
【文献】 特開2010−072471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00
B32B 27/00
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基材フィルムの裏面に不透明の印刷層を有した表示装置用フィルムであって、
前記基材フィルムの裏面における光透過領域に、透明の樹脂からなり、前記印刷層の厚さよりも厚い透明樹脂層を備えるとともに、
前記印刷層の裏面に、前記透明樹脂層の高さよりも低い段差部を有し、
前記透明樹脂層が、前記印刷層の裏面の一部を被覆する被覆部を有し、
前記透明樹脂層の端部に、前記印刷層に向かって緩やかに傾斜する緩傾斜部を有する
表示装置用フィルム。
【請求項2】
透明な基材フィルムの裏面に不透明の印刷層を有した表示装置用フィルムであって、
前記基材フィルムの裏面における光透過領域に、透明の樹脂からなり、前記印刷層の厚さよりも厚い透明樹脂層を備えるとともに、
前記印刷層の裏面に、前記透明樹脂層の高さよりも低い段差部を有し、
前記透明樹脂層が、前記印刷層の裏面の一部を被覆する被覆部を有し、
前記透明樹脂層の端部が段状である
表示装置用フィルム。
【請求項3】
前記印刷層と前記透明樹脂層の厚さの差が、0.1μm〜20μmである
請求項1または請求項2に記載の表示装置用フィルム。
【請求項4】
透明な基材フィルムの裏面に不透明の印刷層を有した表示装置用フィルム製造方法であって、
前記印刷層を有する前記基材フィルムの裏面の光透過領域に、透明の樹脂を塗布して硬化させ、
前記光透過領域に、前記印刷層の厚さよりも厚い透明樹脂層を形成するとともに、前記印刷層の裏面に、前記透明樹脂層の高さよりも低い段差部を形成し、
前記透明樹脂層に、前記印刷層の裏面の一部を被覆する被覆部を形成し、
前記透明樹脂層の端部に、前記印刷層に向かって緩やかに傾斜する緩傾斜部を形成する
表示装置用フィルム製造方法。
【請求項5】
透明な基材フィルムの裏面に不透明の印刷層を有した表示装置用フィルム製造方法であって、
前記印刷層を有する前記基材フィルムの裏面の光透過領域に、透明の樹脂を塗布して硬化させ、
前記光透過領域に、前記印刷層の厚さよりも厚い透明樹脂層を形成するとともに、前記印刷層の裏面に、前記透明樹脂層の高さよりも低い段差部を形成し、
前記透明樹脂層に、前記印刷層の裏面の一部を被覆する被覆部を形成し、
前記透明樹脂層の端部を段状にする
表示装置用フィルム製造方法。
【請求項6】
透明な基材フィルムの裏面に不透明の印刷層を有した表示装置用フィルム製造方法であって、
前記印刷層を有する前記基材フィルムの裏面の光透過領域と前記印刷層に、透明の樹脂を塗布して硬化させて透明樹脂層を形成し、
該透明樹脂層の裏面に微粘着フィルムを貼り合せたのち剥離して、前記透明樹脂層のうち前記印刷層の裏面に位置する部分のみを除去し、
前記光透過領域に、前記印刷層の厚さよりも厚い透明樹脂層を形成するとともに、前記印刷層の裏面に、前記透明樹脂層の高さよりも低い段差部を形成する
表示装置用フィルム製造方法。
【請求項7】
前記請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の表示装置用フィルムが裏面に備える透明粘着シートで貼り付けられた
画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば携帯電話機やスマートフォンなどの携帯端末をはじめとした各種機器の画像表示装置に用いられる表示装置用フィルムに関し、より詳しくは、外観美麗な貼り付け状態が得られる表示装置用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置用フィルムは、画像表示装置の加飾や、表示画面の輝度やコントラストの向上、ガラス飛散防止などの機能を果たす。この表示装置用フィルムは、高透明・高平滑の基材フィルムの裏面に加飾等のために印刷層を備えた構造である。この裏面に透明粘着シートを貼り付けることで、表示装置用フィルムは画像表示装置の表示部に固定される。
【0003】
しかし、透明粘着シートを表示装置用フィルムに貼り付ける場合、表示装置用フィルムが印刷層を有しており、印刷層の裏面と基材フィルムの裏面との間に段差があるため、貼り付けたときに内部に気泡ができる(空気が入る)という問題がある。すなわち、透明粘着シートが貼り付く部分は、基材フィルムと印刷層の裏面であるが、段差のため、基材フィルムの裏面のほうが、貼り付けに際して透明粘着シートを押し付ける方向に凹んでいる。このため、その段差部分の基材フィルム側の隅部分などに空気が入ってしまうのである。
【0004】
表示装置用フィルムの下に空気が入ると、外観がよくないばかりか、視認性に悪影響がある。
【0005】
このため、下記特許文献1に開示されているようにして段差をなくすことが提案されている。その構成は、印刷層に囲まれた部分に、段差を埋めるのに十分な紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂を塗布して、表面を平滑化した状態で硬化性樹脂を硬化させるというものである。
【0006】
このような表示装置用フィルムを用いると、貼り付けを行う場合に気泡が入り込むことを極力抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4640626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、硬化性樹脂の表面を平滑化するためには、平滑なガラス板やセパレータを使用しなければならない上に、厚み調整のための圧力や隙間の制御が不可欠である。また平滑にするにしても、透明粘着シートを貼り付けたときに空気が入り込んでしまう部分ができないようにしなくてはならないため、平滑化には高い精度が要求される。このため、製造は容易ではなく、生産性がよくない。
【0009】
そこで、この発明は、貼り付けに際して気泡が入らないで外観美麗な貼り付けができるような表示装置用フィルムを、効率よく容易に製造できるようにして、ひいては高性能の画像表示装置を得られるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのための第1の手段は、透明な基材フィルムの裏面に不透明の印刷層を有した表示装置用フィルムであって、前記基材フィルムの裏面における光透過領域に、透明の樹脂からなり、前記印刷層の厚さよりも厚い透明樹脂層を備えるとともに、前記印刷層の裏面に、前記透明樹脂層の高さよりも低い段差部を有し、前記透明樹脂層が、前記印刷層の裏面の一部を被覆する被覆部を有し、前記透明樹脂層の端部に、前記印刷層に向かって緩やかに傾斜する緩傾斜部を有する表示装置用フィルムである。
【0011】
この構成では、表示装置用フィルムを貼る際に用いる透明粘着シートを表示フィルムの裏面に貼り付けると、透明粘着シートはまず、表示装置用フィルムの透明樹脂層に貼り付き、貼り付け面積を広げる貼り付け動作に従って、両者間の空気は透明樹脂層のある光透過領域から不透明な印刷層の裏面側に向けて移動する。つまり、透明樹脂層と印刷層との間の段差部は、印刷層の裏面を透明樹脂層の裏面よりも、貼り付けに際して透明粘着シートを押し付ける方向に凹んだ状態であり、透明樹脂層と透明粘着シートとの間、換言すれば光透過領域からの空気の排出を促す。
【0012】
表示装置用フィルムと透明粘着シートとの間にたとえ空気が入って、気泡ができた状態になったとしても、その空気は印刷層の裏面側に存在するので、空気を表示装置用フィルムの表面から見えないように隠ぺいできる。
【0013】
課題を解決するための第2の手段は、透明な基材フィルムの裏面に不透明の印刷層を有した表示装置用フィルム製造方法であって、前記印刷層を有する前記基材フィルムの裏面の光透過領域に、透明の樹脂を塗布して硬化させ、前記光透過領域に、前記印刷層の厚さよりも厚い透明樹脂層を形成するとともに、前記印刷層の裏面に、前記透明樹脂層の高さよりも低い段差部を形成し、前記透明樹脂層に、前記印刷層の裏面の一部を被覆する被覆部を形成し、前記透明樹脂層の端部に、前記印刷層に向かって緩やかに傾斜する緩傾斜部を形成する表示装置用フィルム製造方法である。
【0014】
この構成では、前述のように貼り付けに際して空気の排出を促せ、たとえ空気が入っても表面からは見えないようにできる表示装置用フィルムが、印刷層を有する基材フィルムに対して透明の樹脂を塗布して硬化させるだけで製造できる。透明樹脂層の形成は適宜の印刷手段等で行える。そのうえ硬化に要する部材のほかは、平滑化のための特別な部材も製造工程における細かな制御も不要であり、製造は容易であるので生産性を向上できる。
【0015】
課題を解決するための第3の手段は、透明な基材フィルムの裏面に不透明の印刷層を有した表示装置用フィルム製造方法であって、前記印刷層を有する前記基材フィルムの裏面の光透過領域と前記印刷層に、透明の樹脂を塗布して硬化させて透明樹脂層を形成し、該透明樹脂層の裏面に微粘着フィルムを貼り合せたのち剥離して、前記透明樹脂層のうち前記印刷層の裏面に位置する部分のみを除去し、前記光透過領域に、前記印刷層の厚さよりも厚い透明樹脂層を形成するとともに、前記印刷層の裏面に、前記透明樹脂層の高さよりも低い段差部を形成する表示装置用フィルム製造方法である。
【0016】
この構成では、前述のように貼り付けに際して空気の排出を促せ、たとえ空気が入っても表面からは見えないようにできる表示装置用フィルムは、印刷層を有する基材シートに対して、透明樹脂層の形成と透明樹脂層の一部の除去を行って製造される。透明樹脂層の一部を除去することによって、透明樹脂層の端部が段状になって前記段差部が形成される。この段差部は、気泡が残り得る部分であるので、段差部の位置を印刷層の端よりも後退した位置にすることによって、表面側から気泡が見えるようになることを確実に防止する。前記粘着シートには、製造工程で使用する保護用のシートを利用できる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、透明樹脂層と段差部で、貼り付けに際して入り込みやすい空気の排出を促せるので、透明粘着シートを貼り合せても、空気が入らない状態を得られる。貼り付けに際して空気は印刷層の裏面の段差部に向けて移動するので、たとえ空気が残っても、その空気がたまった部分は表面からは見えない。このため外観美麗な状態を得ることができる。
【0018】
そのうえ、このような表示装置用フィルムは、構成が簡素であるうえに、空気が逃げる部分を設けた構成であるので、平滑化を行って空気がたまる部分ができないようにする場合とは異なって、製造に際して高い寸法精度は要求されない。このため、製造は容易に行え、生産効率を従来に比べて格段に向上できる。
【0019】
しかも、表示装置用フィルムは前述のような外観美麗な貼り付けができるので、この表示装置用フィルムが貼り付けられた画像表示装置は、表示部分の視認性が良好で、美しいだけではなく、使いやすいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】表示装置用フィルムの平面図と断面図。
図2】表示装置用フィルムの製造工程を示す断面図。
図3】表示装置用フィルム製造装置の要部を示す概略構成図。
図4】表示装置用フィルムの要部を示す断面図。
図5】他の例に係る表示装置用フィルムの断面図。
図6】内部に気泡ができたときの状態を示す断面図。
図7】表示装置用フィルムを適用した画像表示装置の断面図。
図8】表示装置用フィルムを適用した画像表示装置の断面図。
図9】他の例に係る表示装置用フィルムの製造工程の一部を示す断面図。
図10】他の例に係る表示装置用フィルムの製造工程の一部を示す断面図。
図11】内部に気泡ができたときの状態を示す断面図。
図12】他の例に係る表示装置用フィルムの製造工程の一部を示す断面図。
図13】表示装置用フィルムの他の例に係る使用態様を示す断面図。
図14図13に示した表示装置用フィルムの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1には、表示装置用フィルム11(以下、「フィルム」という)の平面図(図1(a))と断面図(図1(b))を表している。図示したフィルム11は、画像表示装置の一例としての携帯端末の表示部に貼り付けて使用されるもので、長方形状である。断面図において、各部の厚みは実際のフィルムを忠実に表現したものではなく、誇張して描いてある。以下、その他の断面図においても同様である。
【0022】
この図1に示すように、フィルム11は透明で、加飾やコントラスト向上のため、裏面の一部に不透明な印刷層21を有する。この印刷層21を除く部分が光を通す光透過領域12である。
【0023】
この例で、印刷層21はフィルム11の全周を囲む略長方形枠状に設けられ、印刷層21の一部には、光を通すための適宜形状の抜き穴22が形成されている。抜き穴22の形状や配置は、フィルム11やフィルム11を備える画像表示装置の機能や形状等によって設定される。
【0024】
フィルム11の本体である基材フィルム13は、高透明・高平滑な適宜厚のフィルムである。この基材フィルム13には、たとえばPET(ポリエチレンテレフタレート)のほか、アクリルやポリカーボネート、ガラスなどからなるものを使用できる。
【0025】
フィルム11は、図1(b)に示したように、基材フィルム13の裏面における光透過領域12に、透明の樹脂からなり、前記印刷層21を構成するインキ膜の厚さよりも厚い透明樹脂層31を備えている。この透明樹脂層31は、印刷層21の裏面の一部を被覆する被覆部32を有する。つまり、透明樹脂層31は、前記光透過領域12のみではなく、印刷層21の一部(光透過領域12の周囲)まで覆う大きさである。そして透明樹脂層31の端部である印刷層21の裏面に重なる部分には、印刷層に向かって緩やかに傾斜する緩傾斜部33が形成されている。
【0026】
このような透明樹脂層31をフィルム11が有するため、印刷層21の裏面には、透明樹脂層31の高さよりも低い段差部14が形成されることになる。
【0027】
図2はフィルム11の製造工程を示す断面図、図3はそのための表示装置用フィルム製造装置41の要部の概略構造説明図である。実際の製造においては、フィルム11の大きさよりも長大な一枚の基材フィルムに複数枚のフィルム部分を同時に加工してから後で打ち抜きや裁断をしてフィルムを得るが、図2では便宜上、一枚のフィルム部分の製造過程のみを描いている。また、図2図3においては上側を裏面として図示している。
【0028】
これらの図に示すように、フィルム11は、印刷層21を形成する印刷層形成工程と、透明樹脂層31を形成する透明樹脂層形成工程を経て製造される。順を追って説明する。
【0029】
まず、印刷層形成工程では、図2(a)に示したように、基材フィルム13の裏面に印刷層21を形成する。印刷層21は、たとえばシルク印刷やフレキソ印刷などの適宜方式の印刷で形成できる。インキには紫外線硬化型のものや熱硬化型のものが好適に用いられる。インキの塗布後、図3に示したように紫外線照射など行ってインキを硬化させる。図3中、42は印刷層21形成用の印刷装置、43は紫外線照射装置である。
【0030】
印刷層21は一定の厚さを有するため、基材フィルム13の光透過領域12の裏面と、印刷層21の裏面との間には、印刷層21の厚さぶんの段差が存在する。
【0031】
図2中、22は前記抜き穴である。この抜き穴22には、光を透過する印刷を施して着色してもよい。
【0032】
つぎの透明樹脂層形成工程では、図2(b)に示したように、基材フィルム13の裏面における光透過領域12とその周囲に、前記透明樹脂層31を形成する。透明の樹脂としては、たとえば紫外線硬化型のものや熱硬化型のものを使用できる。紫外線硬化型のものにはウレタンアクリレート系、ポリエステルウレタンアクリレート系などがある。熱硬化型のものにはシリコーン系、ウレタン系、ポリエステル系などがある。樹脂は粘度が低く流動性が高いものであるほうがよい。また樹脂は、ブルーライトカットなどの機能を有するものであってもよい。
【0033】
樹脂の塗布は、たとえばシルク印刷やフレキソ印刷など適宜の方式の印刷装置44(図3参照)や、液体を供給するディスペンサ(図示せず)を用いて行う。塗布は、図2(b)、図4に示したごとく光透過領域を埋めて印刷層21の厚さt1よりも厚い厚さt2の透明樹脂層31を形成するとともに、前記印刷層21の裏面に、前記透明樹脂層31の高さよりも低い段差部14を形成できるように、印刷層21の厚さに応じて適宜厚となるように行う。必要とする透明樹脂層31の厚さは、印刷層21の厚さから求められ、これに基づいてあらかじめ定められた所定量の透明の樹脂が塗布される。フレキソ印刷の場合には、アニロックスロールの選定によって塗布するインキ量を調整できる。
【0034】
印刷層21の厚さt1と透明樹脂層31の厚さt2の差t3は、たとえば0.1μm〜20μm程度とするとよい。差が大きすぎると貼り付けたときに段差ができてしまうおそれがあるからである。
【0035】
樹脂の塗布は一度で行うのではなく、図5に示したように、複数回に分けて行うこともできる。図5では透明樹脂層31の塗布を2層で構成した例を示したが、3層以上としてもよい。図5に示した例では、印刷層21も複数層で構成している。この場合においては、上に重ねる部分21aをその下の部分21bよりも後退させて段差をつけるように印刷する。このようにすると印刷層21のうちの上に重ねた部分21aが基材フィルム13の表面側から見えるのを防止できる。
【0036】
樹脂の塗布後は図3に示したように、紫外線照射装置45などの硬化手段の作用で、塗布した樹脂が硬化され、透明樹脂層31となる。
【0037】
このようにして製造されたフィルム11には、画像表示装置の表示部に対して貼り付けるための透明粘着シート51が備えられる。すなわち、図2(c)に示したように、両面が離型シート52で覆われた透明粘着シート51の片側の離形シート52を剥がして透明粘着シート51をフィルム11の裏面に貼り付ける。
【0038】
透明粘着シート51をフィルム11の裏面に貼り付けるとき、貼り付け動作に従って透明粘着シート51とフィルム11との間の空気は、段差部14に向けて移動して周囲から抜け、透明粘着シート51がフィルム11に対して全面的に接着する。
【0039】
このため、図2(d)に示したように、透明粘着シート51と透明樹脂層31との間には、空気がたまった気泡はできない。
【0040】
しかも、透明樹脂層31の端部に緩傾斜部33を備えているので、透明粘着シート51を隙間なく貼り付けることができ、この点からも気泡ができないようにすることが可能である。
【0041】
段差部14があるために空気が完全に抜けきれずに気泡Aができたとしても、図6に示したように、その気泡Aは段差部14のある印刷層21の裏面にできるので、表面側からは視認できない状態である。
【0042】
フィルム11を使用するには、フィルム11の裏面に備えた透明粘着シート51で、静電容量式タッチパネルのような画像表示装置61の所望部位に貼り付ける。図7は、画像表示装置61の表示部の表面に貼り付けた例である。
【0043】
貼り付けは、離型シート52を剥がして気泡が入らないように行う。フィルム11の裏面には段差部14が形成されているが、その高さは20μm程度以下であるので、段差は一般的な透明粘着シート51によって吸収される。このため画像表示装置61の表面にきれいに貼り付けることができる。
【0044】
図7中、62は液晶ディスプレイ等の表示装置、63は透明粘着シート、64はタッチパネル等のガラス基板である。
【0045】
フィルム11は、図8に示したように、画像表示装置61の表示部の表面を構成するガラス板65の下に透明粘着シート66を用いて貼り付けて使用することもできる。
【0046】
このようしてフィルム11を貼り付けた画像表示装置61では、外観美麗な貼り付けができ、気泡が見えることもないので、表示部分の視認性が良好で、非常に使いやすい。
【0047】
フィルム11の製造に関して言えば、主に光透過領域12に対して所定厚さの透明樹脂層31を形成して段差部14を設けるだけでよく、塗布は容易に行える。そのうえ、フィルム11は透明樹脂層31と段差部14で空気の排出を促す構造であるので、平滑化によって気泡ができないようにする場合と違い、厚みや平滑性についてそれほど高い精度は要求されない。この点からも、透明樹脂層31の形成は容易であり、製造は生産性よく行える。
【0048】
以下、その他の例について説明する。この説明において前記構成と同一または同等の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0049】
図9図10は他の例に係るフィルムの製造方法の一部の工程を示す断面図である。この方法では、透明樹脂層31を形成した後、その一部を除去することによって段差部14を形成する。
【0050】
まず、図2に示した場合と同様に、基材フィルム13の裏面に印刷層21を形成する。この印刷層21の上には、離型剤71を塗布する。離型剤71は、印刷層21の端から光透過領域12と反対側の方向に若干後退した部分から後方に塗布される。
【0051】
このような前処理をしてから、次の透明樹脂層形成工程に移行し、図9(a)に示したように、光透過領域12と印刷層21と離型剤71の全部を覆う位置に透明樹脂層31を形成する。樹脂の塗布はベタ塗りで行える。
【0052】
この後、透明樹脂層31を備えた基材フィルム13を巻き取って移動したりする場合にフィルム11裏面の保護を行うための微粘着フィルム81を(図9(b)参照)、図9(c)に示したように透明樹脂層31側の面(裏面)に貼り付ける。微粘着フィルム81の粘着剤層82は、離型剤71の上にある部分に対しては剥がしたときに粘着状態を維持できるが、離型剤71の上になく、定着力を有する部分に対しては剥がしたときに粘着状態を維持できない強さの粘着力を有するものである。また透明樹脂層31を形成する樹脂には、前述のような一部分の分離が確実に行えるように、膜切れ性の良好なものを使用する。
【0053】
微粘着フィルム81を貼り付け、巻き取りや移送等を行い、透明粘着シート51を貼り付ける次工程に移行する前に、図10(d)に示したように、前記微粘着フィルム81を剥ぎ取る。この剥ぎ取りによって、透明樹脂層31における前記離型剤71の上方の部分34は、微粘着フィルム81の粘着剤層82にくっついて外れ、透明樹脂層31の主たる部分から分離除去されることになる。
【0054】
この状態の透明樹脂層31は端部が段状である。つまり、段差部14との境界に、急な段違いの段状の部分35を有する。しかも、離型剤71を印刷層21の端より後退させた位置に塗布したので、その段状の部分35は、印刷層21の端より内側に入り込んだ位置に形成される。
【0055】
このような構成のフィルム11では、透明粘着シート51を貼り付けると、図10(e)に示したように、前述と同様に空気が印刷層側に積極的に排出され、気泡のない状態が得られる。
【0056】
万が一、気泡Aができたとしても、図11に示したように、その位置は印刷層21の裏側であるので、気泡Aは表面側からは見えない。しかも、段差部14が前述のように印刷層21の端から後退した位置であるの、外部から視認されることを確実に防止できる。
【0057】
また、微粘着フィルム81は、保護のためのフィルムを流用できるので、無駄がなく、工程を徒に増やすようなこともない。このため効率がよい。
【0058】
図12(a)に示したように、透明樹脂層31は、光透過領域12及び印刷層21の全部と、離型剤71の一部を覆う位置に形成してもよい。この場合は、透明樹脂層31の端部の印刷層21の裏面の隠れた位置に緩傾斜部33を形成し、印刷層21の端よりも後退した位置に塗布した離型剤71の端の位置を緩傾斜部33の中間部分に対応させると、微粘着フィルム81を剥ぎ取って透明樹脂層31の一部を除去したときに、図12(b)に示したように、透明樹脂層31の端部には緩傾斜部33と段状の部分35ができることになる。
【0059】
このような構成の場合でも、前述と同様の作用効果が得られる。特に、透明粘着シート51を貼り付けた時には図12(c)に示すようになって、緩傾斜部33が印刷層21の裏側に隠れた位置に存在し、それよりも後退した位置の端に段状の部分35を有するので、気泡ができるとしても気泡は緩傾斜部33よりも後方に移動させられるので、表面側から見えるような位置に気泡ができることを確実に防止できる。
【0060】
図13は、フィルム11の他の使用状態を示す断面図である。この例でフィルム11は、画像表示装置61の表示部に対して基材フィルム13なしで貼り付けられている。つまり、画像表示装置61の表示部の表面を構成するガラス板65の裏面に対する貼り付けが、基材フィルム13なしの状態で行われている。
【0061】
フィルム11を基材フィルム13なしで構成して前記のように貼り付けを行うと、画像表示装置61の表示部の厚さを、基材フィルム13の厚みぶん薄くすることができる。
【0062】
そのためには、図14(a)に示したように、基材フィルム13の裏面に印刷層21と透明樹脂層31を形成したフィルム11の裏面に透明粘着シート51を貼り付けたのちに、基材フィルムを剥ぎ取って、フィルム11aとする。
【0063】
このようなフィルム11aを得るには、印刷層21や透明樹脂層31を損傷しないで基材フィルム13の剥離ができるように、基材フィルム13として、シリコーン等からなる離型層を有する離型フィルムや、フッ素などそれ自体が離型性を有する離型フィルム、適宜のフィルムに離型剤を塗布したフィルムなどを用いる。製造の工程は前述と同様である。この場合、基材フィルム13は透明でなくてもよい。
【0064】
図示は省略するが、基材フィルム13を剥離した後は、透明粘着シートを貼り付けて、印刷層21と透明樹脂層31を保護してもよい。
【0065】
以上の構成は、この発明を実施するための一形態の構成であって、この発明は、前記の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0066】
11,11a…表示装置用フィルム
12…光透過領域
13…基材フィルム
14…段差部
21…印刷層
31…透明樹脂層
32…被覆部
33…緩傾斜部
35…段状の部分
41…表示装置用フィルムの製造装置
61…画像表示装置
81…微粘着フィルム
図1
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