特許第6185275号(P6185275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6185275コンベアベルト用ゴム組成物、その組成物を用いたコンベアベルトカバー用ゴム及びコンベアベルト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185275
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】コンベアベルト用ゴム組成物、その組成物を用いたコンベアベルトカバー用ゴム及びコンベアベルト
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20170814BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20170814BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20170814BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20170814BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20170814BHJP
   B29D 29/06 20060101ALI20170814BHJP
   B65G 15/32 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08L7/00
   C08L45/00
   C08K3/04
   C08K3/36
   B29D29/06
   B65G15/32
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-88618(P2013-88618)
(22)【出願日】2013年4月19日
(65)【公開番号】特開2014-210879(P2014-210879A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲也
【審査官】 大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−105136(JP,A)
【文献】 特開2009−215339(JP,A)
【文献】 特開2006−199892(JP,A)
【文献】 特開2000−198517(JP,A)
【文献】 特開2002−069241(JP,A)
【文献】 特開2006−104372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 −101/16
C08K 3/00 − 13/08
B29D 29/00 − 29/10
B65G 15/00 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム10〜40質量部、ネオジム系触媒により重合したブタジエンゴム60〜90質量部を含むゴム成分と、該ゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積が100m2/g以上のカーボンブラックを50〜70質量部、シリカを5〜15質量部、軟化点120℃以下の樹脂を5〜15質量部含有し、シランカップリング剤を含まないことを特徴とするコンベアベルト用ゴム組成物。
【請求項2】
軟化点120℃以下の樹脂が、ジシクロペンタジエン樹脂である請求項1に記載のコンベアベルト用ゴム組成物。
【請求項3】
軟化点120℃以下の樹脂の含有量が、10〜15質量部である請求項1または2に記載のコンベアベルト用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載のコンベアベルト用ゴム組成物を用いたコンベアベルト用カバーゴム。
【請求項5】
請求項に記載のコンベアベルト用カバーゴムを用いたコンベアベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベアのコンベアベルト用ゴム組成物、その組成物を用いたコンベアベルトカバー用ゴム及びコンベアベルトに関し、さらに詳しくは、上面カバーゴム、補強材及び下面カバーゴムからなるベルトコンベアのコンベアベルトの上面カバーゴム用として、特に耐摩耗性の向上した、さらに加工性のよいベルトコンベアのコンベアベルト用ゴム組成物、その組成物を用いたコンベアベルトカバー用ゴム及びコンベアベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベアは、物品を輸送する手段として極めて有用であり、多くの場所において使用されている。このベルトコンベアのベルトは、通常、上面カバーゴム、補強材及び下面カバーゴムからなっているが、特に上面カバーゴムは、搭載された被輸送物との摩擦によって摩耗し易く、ベルト全体の寿命を支配することとなるため、当該ゴムの耐摩耗寿命を向上させる必要がある。従来、天然ゴムと末端変性ポリブタジエンゴムに特定のカーボンブラックを配合したゴム組成物(特許文献1)や天然ゴムにネオジム系触媒により重合したポリブタジエンを含むゴム組成物(特許文献2)が開示されているが、耐摩耗性が十分とはいえず、さらなる向上が望まれている。また、耐摩耗性と耐衝撃性を向上させたカバー用ゴム組成物として、スチレン−ブタジエンゴムとブタジエンゴム及び/又は天然ゴムに特定のカーボンブラック及び樹脂を配合したゴム組成物が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−69241号公報
【特許文献2】特開2003−105136号公報
【特許文献3】特開2006−199892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、コンベアベルトの上面カバーゴムとして使用するのに適した、耐摩耗性と加工性を向上させたコンベアベルト用ゴム組成物、その組成物を用いたコンベアベルトカバー用ゴム及びコンベアベルトを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、ネオジム系触媒により重合したブタジエンゴムを主体とし、天然ゴムとネオジム系触媒により重合したブタジエンゴムを含むゴム成分に対して、特定のカーボンブラック、シリカ及び特定の樹脂をそれぞれ特定量配合したゴム組成物により、上記目的を達成することを見いだし、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明は、天然ゴムとネオジム系触媒により重合したブタジエンゴムを質量比で10/90〜40/60で含むゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積(NSA)が100m2/g以上のカーボンブラックを50〜70質量部、シリカを5〜15質量部、軟化点120℃以下の樹脂を5〜15質量部含有するゴム組成物及びそれをコンベアベルトの上面カバーゴムに用いるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のゴム組成物は、耐摩耗性と加工性に優れ、耐久性が大幅に向上したコンベアベルトカバー用ゴム及びコンベアベルトを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のゴム組成物におけるゴム成分としては、ネオジム系触媒により重合したブタジエンゴム(以下「Nd−BR」という。)と天然ゴムを含む。その含有量としては、ゴム分全体を100質量部としたときに、ブタジエンゴム(Nd−BR)が60〜90質量部、天然ゴムが40〜10質量部で、ブタジエンゴム(Nd−BR)が多いことが特徴である。ブタジエンゴム(Nd−BR)が多い方が耐摩耗性がよく、ゴム分全体の80〜90質量部が好ましい。
【0008】
本発明において用いるブタジエンゴムは、ネオジム系触媒により重合したブタジエンゴム(Nd−BR)で、ネオジム系触媒としては、種々のものがあるが、ネオジムを含む化合物又はこれらとルイス塩基との反応物等を使用し得る。具体的には、ネオジムのカルボン酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、アルコキシド等が好適である。また、助触媒としてアルミノキサンを用いることが好ましく、特にメチルアルミノキサンが好適である。
【0009】
ブタジエンゴムの二重結合部分の構造にはシス体とトランス体があるが、本発明におけるNd−BRはシス体が80%以上であることが好ましく、さらには90%以上であることが好ましい。シス体が80%未満であると耐摩耗性に劣る場合があるからである。Nd−BRは、分子量に関しては特に制限はない。
また、本発明において用いるブタジエンゴムは、特に末端変性等の必要はなく、重合して得たブタジエンゴムをそのまま使用する。末端変性するとコスト高になる。
【0010】
本発明におけるカーボンブラックとしては、窒素吸着比表面積(NSA)が100m2/g以上の超微粒子カーボンブラックが用いられる。このようなカーボンブラックとしては、ISAF級、SAF級のカーボンブラックISAF(N220)、例えば、旭#80(窒素吸着比表面積115m2/g、旭カーボン社製)、ISAF−HS(N234)、例えば、シースト7HM(窒素吸着比表面積126m2/g、東海カーボン社製)を用いることができる。粒径が、ISAF級より大きいカーボンブラックでは、得られるゴム組成物の耐摩耗性が劣る。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積の上限を定めるものではないが、窒素吸着比表面積として、150m2/g以下が好ましい。
【0011】
カーボンブラックの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、50〜70質量部、好ましくは50〜55質量部が賞用される。カーボンブラック配合量が70質量部を超えると加工性が低下するため、また、50質量部未満であると耐摩耗性が低下するため本発明の目的を満足し得ないからである。
【0012】
本発明のゴム組成物には、補強用充填剤として、カーボンブラックの他にシリカを用いる。シリカとしては、特に制限はなく、従来ゴムの補強用充填剤として慣用されているものの中から任意に選択して用いることができる。例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられるが、なかでも湿式シリカが好ましい。好適な湿式シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)製のAQ、VN3、LP、NA等、デグッサ社製のウルトラジルVN3等が挙げられる。
シリカの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して5〜15質量部、好ましくは10〜15質量部である。
なお、本発明のゴム組成物においては、シリカを用いるが、シランカップリング剤を配合する必要はない。シランカップリング剤を加えても、摩耗性の向上には効果が見られない。
【0013】
さらに、本発明のゴム組成物には、樹脂を配合する。樹脂を加えることにより、加熱圧延してベルトを製造する工程において、ゴム組成物の粘度が下がり、加工性がよくなる。使用することができる樹脂としては、軟化点が120℃以下のもので、ロジン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、石油系炭化水素樹脂(脂肪族、芳香族共に用いられ得る)、芳香族多価カルボン酸・脂肪族多価アルコール縮合物、クマロン樹脂の単体若しくはそのブレンドが挙げられ、なかでも、ジシクロペンタジエン樹脂が、好ましい。
樹脂は、ゴム成分100質量部に対して5〜15質量部の配合量で用いられる。この範囲であれば、ゴム組成物の加工性がよくなるが、耐摩耗性を低下させることもない。樹脂の配合量は、5〜10部であることがより好ましい。
【0014】
本発明のゴム組成物には、通常硫黄が含有される。この硫黄の含有量は、ゴム成分100重量部当たり、0.3〜5重量部の範囲が好ましい。この含有量が0.3重量部未満では十分な加硫効果が得られず、目標性能を達成できなくなる場合がある。また5重量部を超えると、ゴムが脆くなり、ゴムの疲労性能が低下するなど好ましくない場合がある。
【0015】
本発明のゴム組成物には、前記各成分以外に、ゴム業界で通常使用される配合剤を通常の配合量で適宜配合することができる。具体的には、アロマオイル等の軟化剤、ジフェニルグアニジン等のグアニジン類、メルカプトベンゾチアゾール等のチアゾール類、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等のスルフェンアミド類、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム類などの加硫促進剤、酸化亜鉛等の加硫促進助剤、ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)、フェニル−α−ナフチルアミン等のアミン類などの老化防止剤等である。
【0016】
本発明のゴム組成物は、開放混合式の練りロール機や密閉式混合機のバンバリーミキサー等の混練機を用いて混練りすることにより得ることができる。そして、得られたゴム組成物をカレンダーや押出し機などでシート状に成形し、補強材である帆布又はスチールコードを芯材として、これを覆うようにシート状ゴム成形物を貼り合わせ、その後、加硫を行うことによりベルトを得ることができる。
【0017】
前記したように、ベルトコンベアのベルトは、通常上面カバーゴム、補強材及び下面カバーゴムからなっており、被輸送物と接触するのは上面カバーゴムである。本発明のベルトコンベア用ベルトは、上面カバーゴム、補強材及び下面カバーゴムからなるベルトの上面カバーゴムに本発明のゴム組成物を使用するものである。補強材及び下面カバーゴムには、この種のベルト用として従来から知られていたものが使用し得るが、無論、下面カバーゴムに本発明のゴム組成物を使用しても、一向に差し支えない。本発明のベルトコンベアのベルトは、従来公知のベルトコンベアの何れにも使用可能である。すなわち、本発明のベルトを従来公知のベルトコンベア用ベルトに代えて装着したベルトコンベアであり、かかるベルトコンベアをも本発明は提供するものである。
【実施例】
【0018】
次に、本発明を実施例により、さらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
以下の実施例、比較例において、得られたゴム組成物について、次の各項目の測定、評価を行った。
【0019】
(1)DIN摩耗
DIN摩耗試験機を用いて耐摩耗試験を行った。耐摩耗試験は室温で行い、摩耗量をmmで表した。摩耗量が少ない程、耐摩耗性がよく、摩耗量30mm以下を良好とする。
(2)加工性
ゴム組成物を板状に圧延するロール作業性で評価した。評価は以下に示す3段階で行った。
○:作業性良好
△:作業困難
×:作業不可
【0020】
実施例1〜8、比較例1〜8
表1に示した配合処方により、16種類のゴム組成物を調製し、DIN摩耗及び加工性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
表1の注
*1)天然ゴム:RSS#4
*2)Nd−BR:T0700(JSR社製、主触媒:ネオジム成分、助触媒:メチルアルミノキサン)
*3)BR:T0700(JSR社製)
*4)ISAFカーボンブラック:シースト6(東海カーボン社製)
*5)シリカ:ニプシルAQ(東ソーシリカ工業社製)
*6)シランカップリング剤:Si69(エボニックデグサジャパン社製)
*7)樹脂1:クレイトン1920(日本ゼオン社製、ジシクロペンタジエン・スチレン類石油樹脂C4〜5炭化水素共重合体)
*8)樹脂2:芳香族系炭化水素樹脂(JX日鉱日石エネルギー社製、軟化点120℃超)
*9)硫黄:セイミOT(日本乾溜工業社製、不溶性硫黄60%)
*10)加硫促進剤:ノクセラーNS−P(N−tertブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業社製)
【0023】
表1から、実施例1〜8のゴム組成物は、Nd−BRを含まない(比較例2)か、所定量含まないもの(比較例5)及びNd−BRが所定量より少なく、かつシリカ、樹脂を含まないもの(比較例1、3〜4)に比較して耐摩耗性がよく、軟化点の高い樹脂を使用したものやカーボンブラックが所定量より多いもの及びシランカップリング剤を使用したものは加工性が悪く、また、実施例のなかでもNd−BRが多いもの及びカーボンブラックとシリカの添加量が多いものの方が、耐摩耗性がよいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のコンベアベルト用ゴム組成物、その組成物を用いたコンベアベルトカバー用ゴム及びコンベアベルトは、耐摩耗性と加工性に優れ、コンベアベルト等に好適に使用できる。