特許第6185281号(P6185281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185281
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】滑り支承装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20170814BHJP
   E04B 1/36 20060101ALI20170814BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   E04H9/02 331E
   E04B1/36 G
   F16F15/02 L
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-98093(P2013-98093)
(22)【出願日】2013年5月8日
(65)【公開番号】特開2014-218816(P2014-218816A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(72)【発明者】
【氏名】田邊 智里
(72)【発明者】
【氏名】前村 直也
(72)【発明者】
【氏名】長峰 洋一
【審査官】 多田 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−150924(JP,A)
【文献】 特開2001−124138(JP,A)
【文献】 特開昭63−280106(JP,A)
【文献】 特開2012−102489(JP,A)
【文献】 特開2007−037990(JP,A)
【文献】 特開2007−225016(JP,A)
【文献】 特開2000−120774(JP,A)
【文献】 国際公開第02/084030(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0195942(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0080908(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
E04B 1/36
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造物と下部構造物との間に介在させて、前記上部構造物及び前記下部構造物のうち一方に設置される平滑部材と、他方に設置される滑り支承部材とで構成した滑り支承装置であって、
前記平滑部材は、
前記上部構造物及び前記下部構造物の少なくとも一方に設置されるとともに、低摩擦係数の平滑面によって、前記下部構造物と前記上部構造物との少なくとも一方向への相対的な摺動を許容する略平板状であって
平板状の鋼材と、該鋼材に積層した低摩擦係数の低摩擦樹脂部材とで構成するとともに、所定方向に沿って配置した少なくとも2つ以上の分割平滑部材で構成され
前記分割平滑部材における前記所定方向の縁端に、隣接する分割平滑部材に対して凹凸嵌合して、少なくとも前記一方向への移動を規制する規制部を備え、
前記滑り支承部材は、前記平滑部材であり、
前記上部構造物に設置される平滑部材を上部平滑部材とするとともに、前記下部構造物に設置される平滑部材を下部平滑部材として、前記上部平滑部材における前記分割平滑部材の前記規制部に対向する前記下部平滑部材における前記分割平滑部材の前記規制部を、前記所定方向において異なる向きに形成した
滑り支承装置。
【請求項2】
前記上部平滑部材、及び前記下部平滑部材のどちらか一方に、
該一方が固定される前記上部構造物あるいは前記下部構造物に固定された貫通軸部材の挿通を許容する第1貫通開口部を備え、
他方の前記下部平滑部材あるいは前記上部平滑部材に、
前記貫通軸部材の挿通を許容して、前記一方向に長い第2貫通開口部を備えた
請求項1に記載の滑り支承装置。
【請求項3】
前記平滑部材を、
前記所定方向に沿って配置した少なくとも3つ以上の前記分割平滑部材で構成し、
少なくとも前記所定方向の両端に位置する前記分割平滑部材の前記鋼材を、
前記低摩擦樹脂部材の大きさよりも大きく形成した
請求項1または請求項2に記載の滑り支承装置
【請求項4】
前記低摩擦樹脂部材を、前記鋼材の平面に対して貼付する構成とした
請求項1から請求項のいずれか1つに記載の滑り支承装置
【請求項5】
前記分割平滑部材における前記低摩擦樹脂部材を、前記一方向に沿って分割構成した
請求項に記載の滑り支承装置
【請求項6】
平面視における前記低摩擦樹脂部材の隅部に、面取りした面取り部を設けた
請求項1から請求項のいずれか1つに記載の滑り支承装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば下部構造物と上部構造物との間に介在させて、下部構造物に対する上部構造物の少なくとも一方向への摺動を許容するように支承するり支承装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、橋脚と上部橋梁との間、ビルとビルとの間に架け渡した渡り廊下とビルとの間、石油プラントのような重量の大きなタンクと架台との間、あるいは柱で支持する屋根梁と柱との間などにおいて、下部に位置する下部構造物に対して、摺動可能に上部構造物を支持する支承装置が用いられている。
【0003】
この支承装置の一例として、上部構造物、あるいは下部構造物のどちらか一方に略平板状で低摩擦係数の平滑部材を固定し、他方の構造物に平滑部材上を摺動する滑り支承部材を固定し、下部構造物に対して上部構造物が平滑部材の面内方向へ移動可能にした滑り支承装置がある。
【0004】
例えば、特許文献1記載のすべり免震装置(滑り支承装置に相当)は、下部躯体に固定された平滑板(平滑部材に相当)に対して、上部躯体に固定されたすべり材(滑り支承部材に相当)を摺動可能にすることで、免震効果を得ることができるとされている。
【0005】
ところで、このような滑り支承装置は、上部構造物が大きくなる、あるいは上部構造物の移動量が大きいほど、平滑部材の面積を大きくする必要がある。このため、1枚の平滑部材の総重量が大きくなり、平滑部材の設置が容易ではないという問題があった。そこで、平滑部材の大きさによっては、複数に分割した分割平滑部材を組み合わせて1枚の平滑部材を構成することがある。
【0006】
しかしながら、例えば、熱膨張などによって上部構造物が変形すると、上部構造物の荷重が加わった分割平滑部材に対して、上部構造物の変形方向へ移動させようとする荷重が作用する。このため、滑り支承装置は、上部構造物の荷重が加わっていない分割平滑部材との相対位置がずれないように、分割平滑部材を全て固定する必要があった。ゆえに、滑り支承装置は、1枚の略平板で構成した平滑部材の場合に比べて固定箇所が多くなり、複数の分割平滑部材を組付けて平滑部材を構成する際の組付け性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−61705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑み、分割平滑部材同士の相対位置がずれることを防止して、組付け性を向上することができるり支承装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上部構造物と下部構造物との間に介在させて、前記上部構造物及び前記下部構造物のうち一方に設置される平滑部材と、他方に設置される滑り支承部材とで構成した滑り支承装置であって、前記平滑部材は、前記上部構造物及び前記下部構造物の少なくとも一方に設置されるとともに、低摩擦係数の平滑面によって、前記下部構造物と前記上部構造物との少なくとも一方向への相対的な摺動を許容する略平板状であって、略平板状の鋼材と、該鋼材に積層した低摩擦係数の低摩擦樹脂部材とで構成するとともに、所定方向に沿って配置した少なくとも2つ以上の分割平滑部材で構成され、前記分割平滑部材における前記所定方向の縁端に、隣接する分割平滑部材に対して凹凸嵌合して、少なくとも前記一方向への移動を規制する規制部を備え、前記滑り支承部材は、前記平滑部材であり、前記上部構造物に設置される平滑部材を上部平滑部材とするとともに、前記下部構造物に設置される平滑部材を下部平滑部材として、前記上部平滑部材における前記分割平滑部材の前記規制部に対向する前記下部平滑部材における前記分割平滑部材の前記規制部を、前記所定方向において異なる向きに形成したことを特徴とする。
【0010】
上記所定方向は、平滑面上において、一方向と略直交する方向、一方向と同一方向、一方向と略直交する方向かつ同一方向、あるいは一方向と交差する方向とすることができる。
上記鋼材は、SS材、SUS材などとすることができる。
上記低摩擦樹脂部材は、PTFE部材などで構成することができる。
【0011】
上記鋼材に対して積層したとは、鋼材に対して貼付して積層する、あるいは塗布して積層することを含むことができる。
【0012】
上記凹凸嵌合するとは、一方の分割平滑部材に対して他方の分割平滑部材の少なくとも一部を遊嵌する、あるいは嵌着することを含むことができ、さらに凹凸嵌合して少なくとも一方向への移動を規制するとは、例えば、一方向と略直交する所定方向には係合せず、一方向においてのみ係合して移動を規制することを含むことができる。
【0013】
上記規制部は、凸形状、または凹形状とすることができる。
上記滑り支承部材は、上述した平滑部材、略柱状の柱状部材、あるいは略平板状の鋼板などとすることができる。
【0014】
この発明により、分割平滑部材同士の相対位置がずれることを防止して、平滑部材の組付け性を向上することができる。
具体的には、平滑部材を分割したことにより、分割平滑部材は、その重量、大きさを小さくすることができるため、運搬、及び設置をより容易にすることができる。つまり、重量物である平滑部材は、その運搬を容易にするだけでなく、設置もより容易にすることができる。
【0015】
この際、隣接する分割平滑部材と凹凸嵌合する規制部によって、平滑部材は、隣接する分割平滑部材同士の位置決めを容易にするとともに、所定方向に沿って容易に整列することができる。
さらに、例えば、平滑部材の設置過程において、上部構造物の荷重が加わった分割平滑部材に対して、一方向へ移動させようとする移動荷重が作用した場合、規制部を介して、上部構造物の荷重が加わっていない分割平滑部材にも移動荷重を伝達することができる。
【0016】
つまり、少なくとも1つの分割平滑部材に対して移動荷重が作用すると、全ての分割平滑部材が同一方向に移動しようとするため、分割平滑部材同士の相対位置がずれることを防止できる。
さらに、所定方向に配置した分割平滑部材の少なくとも1つを固定するだけで、隣接する分割平滑部材が一方向に移動できなくなり、その他の分割平滑部材の固定が不要となる。
【0017】
例えば、3つの分割平滑部材を所定方向に配置した場合、所定方向の両端に位置する分割平滑部材を固定することで、中央に位置する分割平滑部材が一方向及び所定方向に移動することを確実に防止できる。このため、上部構造物あるいは下部構造物に対して固定する際、平滑部材は、全ての分割平滑部材を固定する場合に比べて、溶着などの固定箇所を削減することができる。
【0018】
これにより、分割平滑部材同士の相対位置がずれることを防止して、平滑部材の組付け性を向上することができる。このため、重量物である平滑部材を効率よく設置することができ、設置に要する工数を短縮することができる。
【0019】
また、上部構造物の重量が大きく、かつ下部構造物との摩擦抵抗が大きい場合、分割平滑部材が容易に移動できないため、分割平滑部材の固定を不要にする、もしくは固定箇所を最小限度にすることができる。これにより、平滑部材は、引火ガス雰囲気下や作業スペースが狭い状況下などの溶接作業が困難な場所であっても容易に設置することができる。
したがって、平滑部材は、凹凸嵌合する規制部によって、分割平滑部材同士の相対位置がずれることを防止して、分割平滑部材の組付け性を向上することができる。
【0020】
また、上部構造物と下部構造物との間に介在させて、前記上部構造物及び前記下部構造物のうち一方に設置される上述の平滑部材と、他方に設置される滑り支承部材とで構成した滑り支承装置であることにより、分割平滑部材の組付け性を向上した平滑部材で滑り支承装置を構成することができる。このため、滑り支承装置は、その組付け性を向上することができる。さらに、規制部によって、滑り支承装置は、上部構造物あるいは下部構造物の平滑部材における一部の分割平滑部材に、上部構造物の重量が加わった際、分割平滑部材同士の相対位置がずれることを防止することができる。
【0021】
このため、滑り支承装置は、その設置工程において相対位置のずれによる工数増加を防止することができる。
したがって、滑り支承装置は、分割平滑部材で構成した平滑部材によって、組付け性を向上することができる。
【0022】
また、前記滑り支承部材を、前記平滑部材とし、前記上部構造物に設置される平滑部材を上部平滑部材とするとともに、前記下部構造物に設置される平滑部材を下部平滑部材として、前記上部平滑部材における前記分割平滑部材の前記規制部に対向する前記下部平滑部材における前記分割平滑部材の前記規制部を、前記所定方向において異なる向きに形成するため、滑り支承装置は、上部平滑部材の規制部、あるいは下部平滑部材の規制部が損傷することを防止して、円滑な摺動を行うことができる。
【0023】
具体的には、対向する上部平滑部材における分割平滑部材の規制部と、下部平滑部材における分割平滑部材の規制部とを、所定方向において同一方向に形成した場合、例えば、下部平滑部材に対して上部平滑部材が一方向に摺動した際、下部平滑部材の規制部における上下方向の段差に上部平滑部材の規制部が引っ掛って円滑な摺動を行うことができない、あるいは分割平滑部材における規制部の縁端が損傷するおそれがある。
【0024】
これに対して、上部平滑部材における分割平滑部材の規制部と、下部平滑部材における分割平滑部材の規制部とを所定方向において異なる向きに形成としたことにより、滑り支承装置は、上部平滑部材の規制部が下部平滑部材の平滑面と摺動し、下部平滑部材の規制部が上部平滑部材の平滑面と摺動することができる。
【0025】
このため、滑り支承装置は、下部平滑部材の規制部における上下方向の段差に上部平滑部材の規制部が引っ掛ることを防止することができる。
したがって、滑り支承装置は、上部平滑部材の規制部、あるいは下部平滑部材の規制部が損傷することを防止して、円滑な摺動を行うことができる。
【0026】
また、この発明の態様として、前記上部平滑部材、及び前記下部平滑部材のどちらか一方に、該一方が固定される前記上部構造物あるいは前記下部構造物に固定された貫通軸部材の挿通を許容する第1貫通開口部を備え、他方の前記下部平滑部材あるいは前記上部平滑部材に、前記貫通軸部材の挿通を許容して、前記一方向に長い第2貫通開口部を備えることができる。
【0027】
この発明により、第2貫通開口部に沿って下部平滑部材あるいは上部平滑部材が摺動することができる。つまり、滑り支承装置は、第2貫通開口部によって、一方向と直交する方向への摺動を規制することができる。
【0028】
この発明の態様として、前記規制部を、少なくとも前記一方向に係合する係合形状で形成することができる。
上記係合形状は、平面視略矩形、分割平滑部材の縁端側が幅広の平面視略山型状、あるいは分割平滑部材の縁端側が幅狭の平面視略台形状などとすることができる。
【0029】
この発明により、平滑部材は、少なくとも凸形状の規制部と凹形状の規制部とが一方向で確実に当接するため、分割平滑部材の相対位置が一方向にずれることを確実に防止できる。さらに、例えば、係合形状を縁端側が幅広の平面視略山型状にした場合、平滑部材は、分割平滑部材に作用する移動荷重を規制部の傾斜に沿って分散させて、隣接する分割平滑部材に伝達することができる。
【0030】
このため、規制部の形状が平面視略矩形の場合に比べて、規制部の基部に作用する荷重を小さくすることができ、平滑部材は、分割平滑部材に作用する移動荷重に対してより強固な規制部を構成することができる。
【0031】
あるいは、係合形状を縁端側が幅狭の略台形状とした場合、所定方向に対して凸形状の規制部における幅広部分が、凹形状の規制部における幅狭部分に引っ掛ることで、平滑部材は、隣接する分割平滑部材同士が所定方向に分離することを阻止できる。
【0032】
このため、一方向と所定方向とが直交する場合、平滑部材は、平面視略台形状の規制部によって、分割平滑部材の一方向への移動を規制するだけでなく、所定方向への移動も同時に規制することができる。
したがって、平滑部材は、規制部を係合形状としたことにより、分割平滑部材の相対位置が少なくとも一方向にずれることを確実に防止できる。
【0033】
また、この発明の態様として、前記平滑部材を、前記所定方向に沿って配置した少なくとも3つ以上の前記分割平滑部材で構成し、少なくとも前記所定方向の両端に位置する前記分割平滑部材の前記鋼材を、前記低摩擦樹脂部材の大きさよりも大きく形成することができる。
【0034】
この発明により、例えば、上部構造物あるいは下部構造物に対して溶着する、あるいはボルトで固定するための固定箇所を構成するとともに、低摩擦樹脂部材の品質を安定して確保することができる。
具体的には、例えば、低摩擦樹脂部材を鋼材の全面に積層して構成した分割平滑部材を溶着する場合、溶接の熱によって低摩擦樹脂部材が変形、変質して安定した平滑性を確保できなくなるおそれがある。
【0035】
これに対して、低摩擦樹脂部材の大きさよりも鋼材を大きく形成したことにより、平滑部材は、低摩擦樹脂部材と鋼材との大きさの差異によって固定箇所を容易に構成するとともに、溶着等の熱影響によって低摩擦樹脂部材が変形、変質することを防止できる。
【0036】
さらに、所定方向の両端に位置する分割平滑部材の間に介在する分割平滑部材は、規制部によって一方向への移動が規制されるため、固定箇所を不要にすることができる。このため、両端に位置する分割平滑部材の間に介在する分割平滑部材の鋼材に対して、低摩擦樹脂部材を全面に積層することができる。
【0037】
これにより、平滑部材は、上部構造物あるいは下部構造物の摺動を許容するために必要な低摩擦樹脂部材の面積をより大きく確保することができ、かつ全ての分割平滑部材を固定する場合に比べて、溶着などの固定箇所を不要にすることができる。このため、平滑部材は、その大きさを小さくすることができる。
したがって、平滑部材は、上部構造物あるいは下部構造物に固定しても、より安定した品質の平滑面を確保することができる。
【0038】
また、この発明の態様として、前記低摩擦樹脂部材を、前記鋼材の平面に対して貼付する構成とすることができる。
この発明より、例えば、シート状の低摩擦樹脂部材を、分割平滑部材を構成する鋼材の形状に合わせて切断して鋼材に貼り付けるだけで、平滑部材は、摩擦係数がより安定した平滑面を有する分割平滑部材を容易に構成することができる。
【0039】
さらに、隣接する分割平滑部材同士を連結固定するための固定箇所を規制部によって不要にできるため、平滑部材は、規制部を有する縁端に沿って低摩擦樹脂部材を切断、貼り付けることができる。このため、平滑部材は、平滑面の面積をより大きくすることができる。
【0040】
さらには、例えば、下部構造物に固定した平滑部材の鋼材に対して、上部構造物に固定した略平板状、あるいは略円柱状の滑り支承部材が異なる材質の金属の場合、低摩擦樹脂部材によって鋼材と滑り支承部材とが直接、接触することがないため、平滑部材は、異種金属間接触による電食を防止することができる。
したがって、平滑部材は、低摩擦樹脂部材を鋼材に貼付することで、より容易に分割平滑部材を構成するとともに、耐久性の向上を図ることができる。
【0041】
また、この発明の態様として、前記分割平滑部材における前記低摩擦樹脂部材を、前記一方向に沿って分割構成することができる。
この発明により、例えば、平滑面を摺動する滑り支承部材によって、低摩擦樹脂部材が鋼材から剥離することを防止できる。
【0042】
具体的には、1つの鋼材に対して低摩擦樹脂部材を分割して貼り付けた際、低摩擦樹脂部材の厚み方向において僅かに段差が生じることがある。このため、滑り支承部材の摺動方向、すなわち一方向と低摩擦樹脂部材の分割方向とが交差すると、滑り支承部材が低摩擦樹脂部材の段差を乗り上げるように通過することで、低摩擦樹脂部材が鋼材から剥離するおそれがある。
【0043】
これに対して、低摩擦樹脂部材を一方向に沿って分割することで、平滑部材は、滑り支承部材が低摩擦樹脂部材の段差を乗り上げるように通過することを防止でき、低摩擦樹脂部材が鋼材から剥離することを防止できる。
【0044】
このため、低摩擦樹脂部材をロール状に巻き回したロール原反の原反幅によって大きさが制限された平滑部材でなく、上部構造物あるいは下部構造物の大きさや重量に適した平滑部材を容易に構成することができる。
したがって、平滑部材は、低摩擦樹脂部材の分割方向を一方向と同一にすることで、より安定した平滑面を確保して円滑な摺動を可能にすることができる。
【0045】
また、この発明の態様として、平面視における前記低摩擦樹脂部材の隅部に、面取りした面取り部を設けることができる。
この発明により、例えば、滑り支承部材が低摩擦樹脂部材の隅部まで移動した際、滑り支承部材によって低摩擦樹脂部材が鋼材から剥離することを防止できる。
具体的には、滑り支承部材が低摩擦樹脂部材の隅部まで移動した際、滑り支承部材が低摩擦樹脂部材の隅部に引っ掛ることで、低摩擦樹脂部材が鋼材から剥離するおそれがある。
【0046】
これに対して、低摩擦樹脂部材における隅部に面取り部を設けたことにより、平滑部材は、滑り支承部材が低摩擦樹脂部材の隅部に引っ掛り難くすることができ、低摩擦樹脂部材が鋼材から剥離することを防止できる。
したがって、平滑部材は、滑り支承部材が低摩擦樹脂部材の隅部まで移動した場合であっても、より安定した平滑面を確保して円滑な摺動を可能にすることができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明により、分割平滑部材同士の相対位置がずれることを防止して、組付け性を向上できるり支承装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】貯蔵タンクの概略正面図。
図2】滑り支承装置の斜視図。
図3】滑り支承装置の分解斜視図。
図4図2中におけるA断面図。
図5】下部スライドプレート及び上部スライドプレートの外観を示す分解斜視図。
図6】下部スライドプレートの平面視における外観を示す平面図。
図7】上部スライドプレートの底面視における外観を示す底面図。
図8】下部スライドプレートに対して上部スライドプレートを重ね合せた状態の外観を示す平面図。
図9】下部凹部及び下部凸部における別の形状を平面視で示す平面図。
図10】下部凹部及び下部凸部における別の形状を平面視で示す平面図。
図11】下部凹部及び下部凸部における別の形状を平面視で示す平面図。
図12】タンク支持台と下部鋼材との間に配置した滑り支承装置の断面を示す断面図。
図13】上部構造物と下部構造物との間に配置した滑り支承装置の断面を示す断面図。
図14】別の滑り支承装置の断面を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0049】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
なお、図1は滑り支承装置10の配設位置を説明するための貯蔵タンク2の概略正面図を示し、図2は架台1とタンク支持台3との間を拡大した滑り支承装置10の斜視図を示し、図3は滑り支承装置10の分解斜視図を示し、図4図2中におけるA断面図を示し、図5は下部スライドプレート20及び上部スライドプレート30の分解斜視図を示し、図6は下部スライドプレート20の平面図を示し、図7は上部スライドプレート30の底面図を示し、図8は下部スライドプレート20に対して上部スライドプレート30を重ね合せた状態の平面図を示している。
【0050】
また、図1中において、矢印Yは摺動方向を示し(以下「摺動方向Y」とする)、図2中において、矢印Xは長手方向を示している(以下、「長手方向X」とする)。加えて、図1中の上側を上方とし、図1中の下側を下方とする。
また、図2中において、図示を簡略化するため、タンク支持台3の底部3aのみを図示している。
【0051】
滑り支承装置10は、例えば、図1に示すように、コンクリート製の架台1と、架台1に載置されるとともに、貯蔵タンク2を支持するタンク支持台3との間に配設されている。
詳述すると、滑り支承装置10は、図2から図4に示すように、コンクリートブロック1a、及びコンクリートブロック1aに埋設した鋼板1bで構成した架台1における鋼板1bに固定される下部スライドプレート20と、タンク支持台3の底部3aに固定される上部スライドプレート30とを上下方向に重ね合わせるようにして構成している。
【0052】
下部スライドプレート20は、図3及び図4に示すように、長手方向Xに延びる平面視略矩形であって、架台1の鋼板1bに当接する下部ベースプレート21と、下部ベースプレート21の上面に貼付した下部スライドシート22とで構成している。
【0053】
下部ベースプレート21は、所定の厚みを有する略平板状のステンレス鋼であって、平面視において、下部スライドシート22よりも一回り大きい大きさに形成している。
下部スライドシート22は、自己潤滑性を有するとともに、低摩擦係数の平滑面22aを有する略シート状であって、貯蔵タンク2及びタンク支持台3が摩擦力に抗して摺動可能な大きさに設定している。なお、下部スライドシート22は、圧縮強度の高い充填剤入りPTFE材で構成している。
【0054】
さらに、下部スライドプレート20には、架台1に埋設された複数のアンカーボルト4に対応する位置にアンカーボルト4の直径より大きい直径で、下部ベースプレート21及び下部スライドシート22を上下方向に貫通する複数の貫通孔20aを設けている。
【0055】
下部スライドプレート20は、図5及び図6に示すように、長手方向Xに沿って、第1下部分割板23、第2下部分割板24、及び第3下部分割板25をこの順番で配置するとともに、凹凸嵌合によってそれぞれを組付けて構成している。
【0056】
より詳しくは、第1下部分割板23は、長手方向Xに所定の長さを有する平面視略矩形に形成している。さらに、第1下部分割板23の長手方向Xにおける第2下部分割板24側の縁端E1には、縁端E1から長手方向Xに平面視略矩形で凹設した下部凹部26を、摺動方向Yに所定の間隔を隔てて二つ設けている。
【0057】
このような第1下部分割板23は、長手方向Xにおける一端を縁端E1及び下部凹部26に沿った形状に形成するとともに、45度面取りした面取り部C1を四隅に形成した1枚の下部スライドシート22を、下部ベースプレート21に対して貼付して構成している。
【0058】
このため、第1下部分割板23は、下部ベースプレート21と下部スライドシート22との大きさの相違によって、摺動方向Yの両端近傍、及び長手方向Xの他端近傍の下部ベースプレート21が平面視において露出した状態を構成している。
【0059】
第2下部分割板24は、第1下部分割板23及び第3下部分割板25における長手方向Xの長さより長手方向Xの長さが長い平面視略矩形に形成している。さらに、第2下部分割板24における長手方向X両側の縁端E2,E2には、縁端E2,E2から長手方向Xに平面視略矩形で凸設した下部凸部27を、それぞれ摺動方向Yに所定の間隔を隔てて2つ設けている。この下部凸部27は、第1下部分割板23の下部凹部26、及び後述する第3下部分割板25の下部凹部28に係合する形状に形成している。
【0060】
このような第2下部分割板24は、長手方向Xにおける両端を縁端E2及び下部凸部27に沿った形状に形成するとともに、45度面取りした面取り部C2を四隅に形成した1枚の下部スライドシート22を、下部ベースプレート21に対して貼付して構成している。
【0061】
このため、第2下部分割板24は、下部ベースプレート21と下部スライドシート22との大きさの相違によって、摺動方向Yの両端近傍の下部ベースプレート21が平面視において露出した状態を構成している。
【0062】
第3下部分割板25は、長手方向Xに所定の長さを有する平面視略矩形に形成している。さらに、第3下部分割板25の長手方向Xにおける第2下部分割板24側の縁端E3には、縁端E3から長手方向Xに平面視略矩形で凹設した下部凹部28を、摺動方向Yに所定の間隔を隔てて二つ設けている。
【0063】
このような第3下部分割板25は、長手方向Xにおける一端を縁端E3及び下部凹部28に沿った形状に形成するとともに、45度面取りした面取り部C3を四隅に形成した1枚の下部スライドシート22を、下部ベースプレート21に対して貼付して構成している。
【0064】
このため、第3下部分割板25は、下部ベースプレート21と下部スライドシート22との大きさの相違によって、摺動方向Yの両端近傍、及び長手方向Xの他端近傍の下部ベースプレート21が平面視において露出した状態を構成している。
【0065】
上部スライドプレート30は、図3及び図4に示すように、下部スライドプレート20よりひと回り大きい大きさの長手方向Xに延びる平面視略矩形であって、タンク支持台3の底部3aに当接する上部ベースプレート31と、上部ベースプレート31の下面に貼付した上部スライドシート32とで構成している。
【0066】
上部ベースプレート31は、所定の厚みを有する略平板状のステンレス鋼であって、平面視において、上部スライドシート32よりも一回り大きい大きさに形成している。
上部スライドシート32は、低摩擦係数の平滑面32a(図7参照)を有する略シート状であって、下部スライドプレート20の下部スライドシート22と同様の構成であるが、下部スライドシート22よりひと回り大きく形成している。
【0067】
さらに、上部スライドプレート30には、架台1に埋設されたアンカーボルト4に対応する位置に、アンカーボルト4の直径より大きい直径で摺動方向Yに長い平面視略オーバル形状で、上部ベースプレート31及び上部スライドシート32を上下方向に貫通した開口孔30aを設けている。
【0068】
そして、この上部スライドプレート30は、図5及び図7に示すように、長手方向Xに沿って、第1上部分割板33、第2上部分割板34、及び第3上部分割板35をこの順番で配置するとともに、凹凸嵌合によってそれぞれを組付けて構成している。
【0069】
より詳しくは、第1上部分割板33は、長手方向Xに所定の長さを有する略矩形に形成している。さらに、第1上部分割板33の長手方向Xにおける第2上部分割板34側の縁端E4には、縁端E4から長手方向Xに平面視略矩形で凸設した上部凸部36を、摺動方向Yに所定の間隔を隔てて二つ設けている。
【0070】
このような第1上部分割板33は、長手方向Xにおける一端を縁端E4及び上部凸部36に沿った形状に形成するとともに、45度面取りした面取り部C4を四隅に形成した上部スライドシート32を、上部ベースプレート31に対して貼付して構成している。
【0071】
このため、第1上部分割板33は、上部ベースプレート31と上部スライドシート32との大きさの相違によって、摺動方向Yの両端近傍、及び長手方向Xの他端近傍の上部ベースプレート31が平面視において露出した状態を構成している。なお、上部スライドシート32は、摺動方向Yに沿って分割した二枚一組で構成している。
【0072】
第2上部分割板34は、下部スライドプレート20の第2下部分割板24と略同等の長手方向の長さを有する平面視略矩形に形成している。さらに、第2上部分割板34における長手方向X両側の縁端E5,E5には、縁端E5,E5から長手方向Xに平面視略矩形で凹設した上部凹部37を、それぞれ摺動方向Yに所定の間隔を隔てて二つ設けている。この上部凹部37は、第1上部分割板33の上部凸部36、及び後述する第3上部分割板35の上部凸部38に係合する形状に形成している。
【0073】
このような第2上部分割板34は、長手方向Xにおける両端を縁端E5及び上部凹部37に沿った形状に形成するとともに、45度面取りした面取り部C5を四隅に形成した上部スライドシート32を、上部ベースプレート31に対して貼付して構成している。
【0074】
このため、第2上部分割板34は、上部ベースプレート31と上部スライドシート32との大きさの相違によって、摺動方向Yの両端近傍の上部ベースプレート31が平面視において露出した状態を構成している。なお、上部スライドシート32は、摺動方向Yに沿って分割した二枚一組で構成している。
【0075】
第3上部分割板35は、長手方向Xに所定の長さを有する略矩形に形成している。さらに、第3上部分割板35の長手方向Xにおける第3上部分割板34側の縁端E6には、縁端E6から長手方向Xに平面視略矩形で凸設した上部凸部38を、摺動方向Yに所定の間隔を隔てて二つ設けている。
【0076】
このような第3上部分割板35は、長手方向Xにおける一端を縁端E6及び上部凸部38に沿った形状に形成するとともに、45度面取りした面取り部C6を四隅に形成した上部スライドシート32を、上部ベースプレート31に対して貼付して構成している。
【0077】
このため、第3上部分割板35は、上部ベースプレート31と上部スライドシート32との大きさの相違によって、摺動方向Yの両端近傍、及び長手方向Xの他端近傍の上部ベースプレート31が平面視において露出した状態を構成している。なお、上部スライドシート32は、摺動方向Yに沿って分割した二枚一組で構成している。
【0078】
この下部スライドプレート20及び上部スライドプレート30は、上部スライドプレート30と下部スライドプレート20とを上下方向で重ね合わせた際、図3及び図8に示すように、第1下部分割板23と第2下部分割板24との境界位置M−M、及び第1上部分割板33と第2上部分割板34との境界位置m−mが平面視において略一致するとともに、第2下部分割板24と第3下部分割板25との境界位置N−N、及び第2上部分割板34と第3上部分割板35との境界位置n−nが平面視において略一致するように構成している。
【0079】
次に、このような下部スライドプレート20、及び上部スライドプレート30を用いて滑り支承装置10を構成するとともに、架台1及びタンク支持台3に固定する方法について説明する。
まず、下部スライドシート22を上方に向けた第1下部分割板23を、架台1に載置する。この際、第1下部分割板23の貫通孔20aに、架台1のアンカーボルト4を挿通する。そして、下部スライドシート22を上方に向けた第2下部分割板24を、架台1に載置した第1下部分割板23の隣に載置する。
【0080】
この際、第2下部分割板24の貫通孔20aに、架台1のアンカーボルト4を挿通するとともに、第1下部分割板23の下部凹部26に、第2下部分割板24の下部凸部27を凹凸嵌合するようにして架台1に載置する。
同様に、下部スライドシート22を上方に向けた第3下部分割板25を、架台1に載置した第2下部分割板24に凹凸嵌合するようにして載置し、下部スライドプレート20を構成する。
【0081】
その後、図6に示すように、第1下部分割板23及び第3下部分割板25の下部ベースプレート21と、架台1の鋼板1bとを溶接範囲W1に沿って溶接して、架台1に対して第1下部分割板23及び第3下部分割板25を固定する。
【0082】
架台1に下部スライドプレート20を固定すると、上部スライドシート32を下方に向けた第1上部分割板33を、第1下部分割板23に載置する。この際、第1上部分割板33の開口孔30aに、架台1のアンカーボルト4を挿通する。そして、上部スライドシート32を下方に向けた第2上部分割板34を、第1上部分割板33の隣に配置するとともに、第2下部分割板24に載置する。
【0083】
この際、第2上部分割板34の開口孔30aに、架台1のアンカーボルト4を挿通するとともに、第1上部分割板33の上部凸部36に、第2上部分割板34の上部凹部37を凹凸嵌合するようにして載置する。
同様に、上部スライドシート32を下方に向けた第3上部分割板35を、第2下部分割板24に載置した第2上部分割板34に凹凸嵌合するようにして載置し、上部スライドプレート30を構成する。
【0084】
その後、上部スライドプレート30にタンク支持台3を載置したのち、タンク支持台3の底部3aから露出した複数のアンカーボルト4にそれぞれ2つのナット5を螺合する。さらに、図7に示すように、第1上部分割板33及び第3上部分割板35の上部ベースプレート31と、タンク支持台3の底部3aとを溶接範囲W2に沿って溶接して、タンク支持台3に対して第1上部分割板33及び第3上部分割板35を固定する。
【0085】
以上のように構成した上部スライドプレート30、下部スライドプレート20、及び滑り支承装置10は、例えば、第1下部分割板23と第2下部分割板24との相対位置が摺動方向Yにずれることを防止して、組付け性を向上することができる。
【0086】
具体的には、下部スライドプレート20を分割したことにより、第1下部分割板23、第2下部分割板24、及び第3下部分割板25は、その重量、大きさを小さくすることができるため、運搬、及び設置をより容易にすることができる。つまり、重量物である下部スライドプレート20は、その運搬を容易にするだけでなく、設置もより容易にすることができる。
【0087】
この際、第1下部分割板23と第2下部分割板24とを凹凸嵌合する下部凹部26及び下部凸部27によって、下部スライドプレート20は、第1下部分割板23に対する第2下部分割板24の位置決めを容易にするとともに、長手方向Xに沿って容易に整列して配置することができる。
【0088】
そして、例えば、下部スライドプレート20の設置過程において、第2下部分割板24に対して摺動方向Yへ移動させようとする移動荷重が作用した場合、下部スライドプレート20は、下部凸部27を介して、移動荷重が加わっていない第1下部分割板23にも移動荷重を伝達することができる。
【0089】
つまり、第2下部分割板24に対して移動荷重が作用すると、第1下部分割板23が同摺動方向Yに移動しようとするため、下部スライドプレート20は、第1下部分割板23に対する第2下部分割板24の相対位置がずれることを防止できる。
【0090】
さらに、第1下部分割板23を固定するだけで、隣接する第2下部分割板24が摺動方向Yに移動できなくなるため、下部スライドプレート20は、少なくとも第2下部分割板24の固定を不要にすることができる。また、第3下部分割板25を固定することで、中央に位置する第2下部分割板24が摺動方向Y及び長手方向Xに移動することを確実に防止できる。
【0091】
このため、架台1に対して固定する際、下部スライドプレート20は、第1下部分割板23、第2下部分割板24、及び第3下部分割板25を全て固定する場合に比べて、溶着などの固定箇所を削減することができる。
【0092】
これにより、下部スライドプレート20は、第1下部分割板23、第2下部分割板24、及び第3下部分割板25の相対位置が摺動方向Yにずれることを防止することができる。このため、重量物である下部スライドプレート20を効率よく設置することができ、設置に要する工数を短縮することができる。
【0093】
したがって、下部スライドプレート20は、凹凸嵌合する下部凹部26、下部凸部27、及び下部凹部28によって、第1下部分割板23、第2下部分割板24、及び第3下部分割板25が摺動方向Yにずれることを防止して、組付け性を向上することができる。なお、上部スライドプレート30についても上述した下部スライドプレート20と同様の効果を奏することができる。
【0094】
また、下部凹部26、下部凸部27、及び下部凹部28を平面視略矩形で形成したことにより、下部スライドプレート20は、例えば、下部凹部26と下部凸部27とが摺動方向Yで確実に当接するため、第1下部分割板23に対する第2下部分割板24の相対位置が摺動方向Yにずれることを確実に防止できる。
【0095】
さらに、第1下部分割板23と第2下部分割板24とを凹凸嵌合する際、下部凹部26及び下部凸部27が平面視略矩形のため、下部スライドプレート20は、例えば、設置済みの第1下部分割板23に対して、隣接する第2下部分割板24をクレーンで上方から、あるいは長手方向Xから容易に配置することができる。
【0096】
したがって、下部スライドプレート20は、下部凹部26、下部凸部27、及び下部凹部28を平面視略矩形にしたことにより、第1下部分割板23、第2下部分割板24、及び第3下部分割板25が摺動方向Yにずれることを確実に防止できる。なお、上部スライドプレート30についても上述した下部スライドプレート20と同様の効果を奏することができる。
【0097】
また、下部スライドプレート20における下部ベースプレート21を、下部スライドシート22の大きさよりも大きく形成したことにより、架台1の鋼板1bに対して溶着するための固定箇所を構成するとともに、下部スライドシート22の品質を安定して確保することができる。
【0098】
具体的には、下部スライドシート22を下部ベースプレート21の全面に貼り付けて構成した第1下部分割板23を溶着する場合、溶接の熱によって下部スライドシート22が変形、変質して安定した平滑性を確保できなくなるおそれがある。
【0099】
これに対して、下部ベースプレート21を下部スライドシート22の大きさよりも大きく形成したことにより、下部スライドプレート20は、溶接範囲W1を構成するとともに、溶接の熱影響によって下部スライドシート22が変形、変質することを防止できる。
【0100】
さらに、第2下部分割板24は、下部凸部27によって摺動方向Yへの移動が規制されるため、固定箇所を不要にすることができる。このため、第2下部分割板24の下部ベースプレート21に対して、下部スライドシート22を略全面に貼り付けることができる。
【0101】
これにより、下部スライドプレート20は、タンク支持台3の摺動を許容するために必要な下部スライドシート22の面積をより大きく確保することができ、かつ第1下部分割板23、第2下部分割板24、及び第3下部分割板25を全て固定する場合に比べて、溶着などの固定箇所を削減することができる。このため、下部スライドプレート20は、その大きさを小さくすることができる。
【0102】
したがって、下部スライドプレート20は、架台1に溶着しても、より安定した品質の平滑面22aを確保することができる。なお、上部スライドプレート30についても上述した下部スライドプレート20と同様の効果を奏することができる。
【0103】
また、下部スライドシート22を、下部ベースプレート21に対して貼り付ける構成としたことにより、例えば、シート状の下部スライドシート22を、下部ベースプレート21の形状に合わせて切断して下部ベースプレート21に貼り付けるだけで、下部スライドプレート20は、摩擦係数がより安定した平滑面22aを有する第1下部分割板23、第2下部分割板24、及び第3下部分割板25を容易に構成することができる。
【0104】
さらに、第1下部分割板23と第2下部分割板24とを連結固定するための固定箇所を下部凹部26及び下部凸部27によって不要にできるため、下部スライドプレート20は、例えば、第2分割板24であれば、縁端E2及び下部凸部27に沿って下部スライドシート22を切断、貼り付けることができる。このため、下部スライドプレート20は、平滑面22aの面積をより大きくすることができる。
【0105】
したがって、下部スライドプレート20は、下部ベースプレート21に下部スライドシート22を貼り付けることで、より容易に第1下部分割板23、第2下部分割板24、及び第3下部分割板25を構成することができる。なお、上部スライドプレート30についても上述した下部スライドプレート20と同様の効果を奏することができる。
【0106】
また、下部スライドシート22に面取り部C1,C2,C3を設けたことにより、上部スライドプレート30によって、下部スライドシート22が下部ベースプレート21から剥離することを防止できる。
具体的には、例えば、上部スライドプレート30が摺動した際、上部スライドプレート30の上部スライドシート32が、下部スライドプレート20における下部スライドシート22の隅部に引っ掛ることで、下部スライドシート22が下部ベースプレート21から剥離するおそれがある。
【0107】
これに対して、下部スライドシート22に面取り部C1,C2,C3を設けたことにより、下部スライドプレート20は、下部スライドシート22の隅部に上部スライドプレート30が引っ掛り難くすることができ、下部スライドシート22が下部ベースプレート21から剥離することを防止できる。
したがって、下部スライドプレート20は、より安定した平滑面22aを確保することができる。なお、上部スライドプレート30についても上述した下部スライドプレート20と同様の効果を奏することができる。
【0108】
また、対向する下部スライドプレート20における下部凹部26、下部凸部27、及び下部凹部28と、上部スライドプレート30における上部凸部36、上部凹部37、及び上部凸部38とを、長手方向Xにおいて異なる向きに形成したことにより、滑り支承装置10は、下部スライドプレート20の下部凹部26、下部凸部27、及び下部凹部28、あるいは上部スライドプレート30の上部凸部36、上部凹部37、及び上部凸部38が損傷することを防止して、円滑な摺動を行うことができる。
【0109】
具体的には、第1下部分割板23と第2下部分割板24との間、あるいは第2下部分割板24と第3下部分割板25との間には上下方向に僅かな段差が生じることがある。このため、例えば、上部スライドプレート30における上部凸部36と長手方向Xにおいて同一向きの下部凸部を、下部スライドプレート20の第1下部分割板21に形成した場合、上部スライドプレート30が摺動方向Yに摺動した際、下部スライドプレート20の下部凸部における段差に上部凸部36が引っ掛ることで、円滑な摺動を行うことができない、あるいは下部スライドシート22や上部スライドシート32が剥離するおそれがある。
【0110】
これに対して、下部スライドプレート20における下部凸部27と、上部スライドプレート30における上部凸部36及び上部凸部38とを長手方向Xにおいて異なる向きに形成としたことにより、滑り支承装置10は、下部スライドプレート20における下部凸部27が上部スライドプレート30の平滑面32aと摺動し、上部スライドプレート30における上部凸部36及び上部凸部38が下部スライドプレート20の平滑面22aと摺動することができる。
【0111】
このため、下部スライドプレート20の下部凸部27と、上部スライドプレート30の上部凸部36との間において、頻繁に段差乗り上げが生じることがない。
したがって、滑り支承装置10は、下部スライドプレート20の下部凹部26、下部凸部27、及び下部凹部28、あるいは上部スライドプレート30の上部凸部36、上部凹部37、及び上部凸部38が損傷することを防止して、円滑な摺動を行うことができる。
【0112】
また、下部スライドプレート20に貫通孔20aを備え、上部スライドプレート30に開口孔30aを備えたことにより、開口孔30aに沿って上部スライドプレート30が摺動することができる。つまり、滑り支承装置10は、開口孔30aによって摺動方向Yと直交する長手方向Xへの摺動を規制することができる。
【0113】
また、上部スライドプレート30における上部スライドシート32を、摺動方向Yに沿って分割構成することにより、下部スライドプレート20によって、上部スライドシート32が上部ベースプレート31から剥離することを防止できる。
【0114】
具体的には、上部ベースプレート31に対して上部スライドシート32を分割して貼り付けた場合、上部スライドシート32の厚み方向において僅かに段差が生じることがある。このため、摺動方向Yと上部スライドシート32の分割方向とが交差すると、上部スライドシート32の段差を乗り上げるように下部スライドプレート20が通過することで、上部スライドシート32が上部ベースプレート31から剥離するおそれがある。
【0115】
これに対して、上部スライドシート32を摺動方向Yに沿って分割することで、上部スライドプレート30は、上部スライドシート32の段差に乗り上げるように下部スライドプレート20が通過することを防止でき、上部スライドシート32が上部ベースプレート31から剥離することを防止できる。
【0116】
このため、上部スライドシート32をロール状に巻き回したロール原反の原反幅によって大きさが制限された上部スライドプレートでなく、貯蔵タンク2やタンク支持台3の大きさや重量に適した上部スライドプレート30を容易に構成することができる。
したがって、上部スライドプレート30は、摺動方向Yに分割した上部スライドシート32によって、より安定した平滑面32aを確保することができる。
【0117】
なお、上述の実施形態において、下部スライドプレート20及び上部スライドプレート30を平面視略矩形とし、さらに下部スライドプレート20及び上部スライドプレート30を平面視略矩形で分割したが、これに限定せず、適宜の形状としてもよい。
また、下部ベースプレート21及び上部ベースプレート31をステンレス鋼としたが、これに限定せず、一般構造用圧延鋼材などであってもよい。
【0118】
また、下部ベースプレート21に下部スライドシート22を貼付し、上部ベースプレート31に上部スライドシート32を貼付したが、これに限定せず、低摩擦係数の平滑面を確保できる部材を下部ベースプレート21及び上部ベースプレート31に積層して構成としてもよい。例えば、下部ベースプレート21及び上部ベースプレート31に低摩擦樹脂部材を塗布してもよい。
【0119】
また、分割された下部ベースプレート21における四隅、あるいは上部ベースプレート31における四隅に、クレーン等で吊り上る際に用いるアイボルトを装着するアイボルト装着孔を設けてもよい。
また、下部スライドプレート20及び上部スライドプレート30をそれぞれ3分割したが、これに限定せず、2分割、あるいは4分割以上としてもよい。
【0120】
また、第2下部分割板24及び第2上部分割板34における摺動方向Yの縁端近傍において、下部ベースプレート21及び上部ベースプレート31を露出させたが、これに限定せず、溶接固定箇所を不要にできる第2下部分割板24における下部ベースプレート21の全面に下部スライドシート22を貼付するとともに、第2上部分割板34における上部ベースプレート31の全面に上部スライドシート32を貼付してもよい。これにより、下部スライドシート22の平滑面22a、及び上部スライドシート32の平滑面32aの面積をより大きくすることができる。
【0121】
また、架台1に下部スライドプレート20を溶接固定し、タンク支持台3に上部スライドプレート30を溶接固定したが、これに限定せず、例えば、架台1のような下部構造物と、タンク支持台3のような上部構造物との間に滑り支承装置10を載置して溶接固定を不要にしてもよい。この場合、下部スライドシート22を下部ベースプレート21の全面に貼付し、上部スライドシート32を上部ベースプレート31の全面に貼付するようにしてもよい。
【0122】
また、上部スライドプレート30の第1上部分割板33、第2上部分割板34、及び第3上部分割板35における上部スライドシート32を二枚一組で構成したが、これに限定せず、下部スライドプレート20の第1下部分割板23、第2下部分割板24、及び第3下部分割板25における下部スライドシート22を二枚一組で構成してもよい。この際、上部スライドシート32の長手方向Xにおける分割位置と、下部スライドシート22の長手方向Xにおける分割位置とが平面視において略一致しないようにすることが好ましい。
【0123】
また、下部スライドプレート20の溶接範囲W1、及び上部スライドプレート30の溶接範囲W2を溶接したが、これに限定せず、適宜の溶接範囲としてもよい。
また、下部凹部26、下部凸部27、及び下部凹部28、並びに上部凸部36、上部凹部37、及び上部凸部38を摺動方向Yに2つ形成したが、これに限定せず、1つ、あるいは摺動方向Yに沿って所定間隔を隔てた3つ以上であってもよい。
【0124】
また、下部凹部26、下部凸部27、及び下部凹部28、並びに上部凸部36、上部凹部37、及び上部凸部38を平面視略矩形に形成したが、これに限定せず、溶着固定していない第2下部分割板24、及び第2上部分割板34の摺動方向Yへの移動を規制できる係合形状であれば、任意の形状としてもよい。
【0125】
例えば、下部凹部26及び下部凸部27における別の形状の平面図を示す図9(a)のように、下部凹部26aにおける摺動方向Yの長さに対して、下部凸部27aにおける摺動方向Yの長さを僅かに短くして、下部凹部26aに対して下部凸部27aが遊嵌する構成としてもよい。
【0126】
この場合、第2下部分割板24が摺動方向Yへ移動を開始しても、下部凸部27aが下部凹部26aに当接することで、摺動方向Yへの移動を規制できる。さらに、下部凹部26aに対して下部凸部27aを遊嵌しているため、組付け性の向上を図ることができる。
【0127】
あるいは、下部凹部26及び下部凸部27における別の形状の平面図を示す図9(b)のように、第1下部スライドプレート20に対して、第2下部分割板20を長手方向Xに僅かに離間した状態で配置することで、下部凹部26bと下部凸部27bとが平面視において遊嵌した状態としてもよい。これにより、アンカーボルト4に対する貫通孔20aの位置誤差を許容するとともに、第2下部分割板20の摺動方向Yへの移動を規制することができる。
【0128】
また、下部凹部26及び下部凸部27における別の係合形状の平面図を示す図10(a)のように、平面視において基部が幅広の略山型状で凸設した下部凸部27cを摺動方向Yに2つ形成し、下部凸部27cに係合するにように平面視略山型状に凹設した下部凹部26cを摺動方向Yに2つ形成してもよい。
【0129】
これにより、第2下部分割板24に作用する移動荷重を下部凸部27cの傾斜に沿って分散させるとともに、下部凹部26cを介して隣接する第1下部分割板23に伝達することができる。
このため、下部凸部27が平面視略矩形の場合に比べて、下部凸部27cの基部に作用する荷重を小さくすることができ、下部スライドプレート20は、第2下部分割板24に作用する移動荷重によって下部凸部27cが破損することを防止できる。
【0130】
したがって、下部スライドプレート20は、平面視略山型状の下部凹部26c及び下部凸部27cによって、隣接する第1下部分割板23に伝達される荷重を低減でき、第2下部分割板24が摺動方向Yにずれることをより確実に防止できる。
なお、下部凹部26及び下部凸部27における別の係合形状の平面図を示す図10(b)のように、平面視略山型状の下部凸部27dと、これに嵌合する平面視略山型状の下部凹部26cとを摺動方向Yに1つだけ形成してもよい。
【0131】
さらにまた、下部凹部26及び下部凸部27における別の係合形状の平面図を示す図11(a)のように、平面視において縁端E1側が幅狭の略台形状の下部凹部26eを摺動方向Yに2つ形成し、縁端E2側が幅狭の略台形状の下部凸部27eを摺動方向Yに2つ形成してもよい。これにより、第2下部分割板24が摺動方向Y及び長手方向Xへ移動することを防止することができる。
【0132】
具体的には、第1下部分割板23に第2下部分割板24を凹凸嵌合すると、下部凸部27eにおける幅広部分が、下部凹部26eの幅狭部分に引っ掛ることで、下部スライドプレート20は、第2下部分割板24が長手方向Xに移動することを阻止できる。
これにより、下部スライドプレート20は、下部凹部26e及び下部凸部27eによって、第2下部分割板24の摺動方向Yへの移動を規制するだけでなく、長手方向Xへの移動も規制することができる。
【0133】
したがって、下部スライドプレート20は、平面視略台形状の下部凹部26e及び下部凸部27eによって、第2下部分割板24が摺動方向Y及び長手方向Xにずれることを防止できる。
なお、下部凹部26及び下部凸部27における別の係合形状の平面図を示す図11(b)のように、平面視略台形の下部凹部26f及び下部凸部27fを摺動方向Yに1つだけ形成してもよい。
【0134】
また、摺動方向Yと略直交する方向を長手方向Xとする滑り支承装置10としたが、これに限定せず、摺動方向Yと略一致する方向が長手方向Xとなる滑り支承装置10であってもよい。
【0135】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の上部構造物は、実施形態の貯蔵タンク2、及びタンク支持台3に対応し、
以下同様に、
下部構造物は、架台1に対応し、
一方向は、摺動方向Yに対応し、
平滑部材は、下部スライドプレート20、及び上部スライドプレート30に対応し、
鋼材は、下部ベースプレート21、及び上部ベースプレート31に対応し、
低摩擦樹脂部材は、下部スライドシート22、及び上部スライドシート32に対応し、
所定方向は、長手方向Xに対応し、
分割平滑部材は、第1下部分割板23、第2下部分割板24、及び第3下部分割板25、並びに第1上部分割板33、第2上部分割板34、第3上部分割板35に対応し、
規制部は、下部凹部26,26a,26b,26c,26e,26f、下部凸部27,27a,27b,27c,27d,27e,27f、及び下部凹部28、並びに上部凸部36、上部凹部37、及び上部凸部38に対応し、
係合形状は、平面視略矩形、平面視略山型状、及び平面視台形状に対応し、
所定方向の両端に位置する分割平滑部材は、第1下部分割板23、及び第3下部分割板25、並びに第1上部分割板33、及び第3上部分割板35に対応し、
上部平滑部材は、上部スライドプレート30に対応し、
下部平滑部材は、下部スライドプレート20に対応し、
貫通軸部材は、アンカーボルト4に対応し、
第1貫通開口部は、貫通孔20aに対応し、
第2貫通開口部は、開口孔30aに対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0136】
例えば、上述の実施形態における上部スライドプレート30ではなく、略平板状の鋼板と下部スライドプレート20とで滑り支承装置を構成してもよい。
また、タンク支持台3と下部鋼材7との間に配置した滑り支承装置10の断面図を示す図12のように、下部スライドプレート20と上部スライドプレート30とで構成した滑り支承装置10を、H鋼などの下部鋼材7とタンク支持台3の底部3aとの間に配置してもよい。なお、図12では、下部スライドプレート20を下部鋼材7に固定するとともに、貫通孔20a及び開口部30aにボルト6を挿通して2つのナット5で締結している。
【0137】
あるいは、上部構造物9と下部構造物8との間に配置した滑り支承装置10の断面図を示す図13のように、上部スライドプレート30の開口孔30a、及び下部スライドプレート20の貫通孔20aを開口形成していない上部スライドプレート30及び下部スライドプレート20で構成した滑り支承装置10を、上部構造物9と下部構造物8との間に配置してもよい。
【0138】
より詳しくは、上部構造物9は、略平板状の上部鋼板9aと、上部鋼板9aに嵌合して溶着される上部アンカー筋9bと、上部鋼板9a及び上部アンカー筋9bを覆う上部コンクリートブロック9cとで構成している。
【0139】
下部構造物8は、略平板状の下部鋼板8aと、下部鋼板8aに嵌合して溶着される下部アンカー筋8bと、下部鋼板8a及び下部アンカー筋8bを覆う下部コンクリートブロック8cとで構成している。そして、下部構造物8の下部鋼板8aに固定した下部スライドプレート20に対して、上部スライドプレート30を載置するとともに、上部構造物9の上部鋼板9aと上部スライドプレート30とを溶着固定している。
【0140】
また、別の滑り支承装置40の断面図を示す図14のように、下部構造物8に固定した下部スライドプレート20と、上部構造物50に固定した略柱状の滑り支承部材60とで滑り支承装置40を構成してもよい。
【0141】
なお、滑り支承部材60は、上部構造物50のコンクリートブロック51に埋設した躯体鋼材52に固定される上部ベースプレート61と、ゴムなどで形成した振動吸収部材62と、鋼材63と、鋼材63に貼付したスライドシート64とを上方からこの順番で組み付けて構成している。
【0142】
このような滑り支承装置40であっても、下部スライドプレート20は、第2下部分割板24が摺動方向Yにずれることを防止して、組付け性を向上することができる。これにより、組付け性を向上した下部スライドプレート20で滑り支承装置40を構成することができるため、滑り支承装置40は、その組付け性を向上することができる。
【0143】
さらに、滑り支承装置40は、下部スライドプレート20における第2下部分割板24に、移動荷重が加わった際、第2下部分割板24が摺動方向Yにずれることを防止することができる。このため、滑り支承装置40は、その設置工程において相対位置のずれによる工数増加を防止することができる。
したがって、滑り支承装置40は、第1下部分割板23、第2下部分割板24、及び第3下部分割板25で構成した下部スライドプレート20によって、組付け性を向上することができる。
【符号の説明】
【0144】
1…架台
2…貯蔵タンク
3…タンク支持台
4…アンカーボルト
6…ボルト
7…下部鋼材
8…下部構造物
9…上部構造物
10…滑り支承装置
20…下部スライドプレート
20a…貫通孔
21…下部ベースプレート
22…下部スライドシート
22a…平滑面
23…第1下部分割板
24…第2下部分割板
25…第3下部分割板
26,26a,26b,26c,26d,26e,26f…下部凹部
27,27a,27b,27c,27d,27e,27f…下部凸部
28…下部凹部
30…上部スライドプレート
30a…開口孔
31…上部ベースプレート
32…上部スライドシート
32a…平滑面
33…第1上部分割板
34…第2上部分割板
35…第3上部分割板
36…上部凸部
37…上部凹部
38…上部凸部
40…滑り支承装置
50…上部構造物
60…滑り支承部材
C1,C2,C3,C4,C5,C6…面取り部
E1,E2,E3,E4,E5,E6…縁端
X…長手方向
Y…摺動方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14