(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185291
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ワイヤレス送電装置、その制御回路および制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20170814BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20170814BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J50/80
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-117304(P2013-117304)
(22)【出願日】2013年6月3日
(65)【公開番号】特開2014-236607(P2014-236607A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 政考
(72)【発明者】
【氏名】野澤 毅
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 竜也
(72)【発明者】
【氏名】宮田 学
【審査官】
坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−141816(JP,A)
【文献】
特開2011−091315(JP,A)
【文献】
特開2009−136132(JP,A)
【文献】
再公表特許第98/034319(JP,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第02066000(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
H02J 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信アンテナ、前記送信アンテナに接続されたドライバ、第1オシレータ、を備えるワイヤレス送電装置に使用され、前記ドライバを制御する制御回路であって、
前記第1オシレータは、停止状態と、第1周波数の第1クロック信号を生成する発振状態とがイネーブル信号に応じて切りかえ可能に構成され、
前記制御回路は、
前記第1周波数より低い第2周波数で発振し、第2クロック信号を生成する第2オシレータと、
前記第1クロック信号および前記第2クロック信号を受け、(i)ワイヤレス受電装置に送電するための送電フェーズにおいて、前記イネーブル信号をアサートして前記第1オシレータを発振状態とし、前記第1クロック信号にもとづいて、前記ドライバを制御するための第1パルス信号を生成するとともに、(ii)前記ワイヤレス受電装置を検出するための選択フェーズにおいて、所定の時間間隔にて、前記ドライバを制御するための第2パルス信号を生成し、前記時間間隔を前記第2クロック信号にもとづいて測定するとともに、前記時間間隔の間、前記イネーブル信号をネゲートして前記第1オシレータを停止状態とするコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記選択フェーズにおいて前記第2パルス信号を生成する物体検出期間の間、前記イネーブル信号をネゲートして前記第1オシレータを停止状態とし、前記第2クロック信号にもとづいて前記第2パルス信号を生成することを特徴とする制御回路。
【請求項2】
前記第2周波数は、前記送信アンテナの共振周波数をfrとするとき、2N×fr(ただしNは整数)またはfrであることを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
送信アンテナ、前記送信アンテナに接続されたドライバ、第1オシレータ、を備えるワイヤレス送電装置に使用され、前記ドライバを制御する制御回路であって、
前記第1オシレータは、停止状態と、第1周波数の第1クロック信号を生成する発振状態とがイネーブル信号に応じて切りかえ可能に構成され、
前記制御回路は、
前記第1周波数より低い第2周波数で発振し、第2クロック信号を生成する第2オシレータと、
前記第1クロック信号および前記第2クロック信号を受け、(i)ワイヤレス受電装置に送電するための送電フェーズにおいて、前記イネーブル信号をアサートして前記第1オシレータを発振状態とし、前記第1クロック信号にもとづいて、前記ドライバを制御するための第1パルス信号を生成するとともに、(ii)前記ワイヤレス受電装置を検出するための選択フェーズにおいて、所定の時間間隔にて、前記ドライバを制御するための第2パルス信号を生成し、前記時間間隔を前記第2クロック信号にもとづいて測定するとともに、前記時間間隔の間、前記イネーブル信号をネゲートして前記第1オシレータを停止状態とするコントローラと、
を備え、
前記第2周波数は、前記送信アンテナの共振周波数をfrとするとき、2N×fr(ただしNは整数)またはfrであることを特徴とする制御回路。
【請求項4】
Qi規格に準拠したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の制御回路。
【請求項5】
送信アンテナ、前記送信アンテナに接続されたドライバ、第1オシレータ、を備えるワイヤレス送電装置に使用され、前記ドライバを制御する制御回路であって、
前記第1オシレータは、停止状態と、第1周波数の第1クロック信号を生成する発振状態とがイネーブル信号に応じて切りかえ可能に構成され、
前記制御回路は、
前記第1周波数より低い第2周波数で発振し、第2クロック信号を生成する第2オシレータと、
前記第1クロック信号および前記第2クロック信号を受け、(i)ワイヤレス受電装置に送電するための送電フェーズにおいて、前記イネーブル信号をアサートして前記第1オシレータを発振状態とし、前記第1クロック信号にもとづいて、前記ドライバを制御するための第1パルス信号を生成するとともに、(ii)前記ワイヤレス受電装置を検出するための選択フェーズにおいて、所定の時間間隔にて、前記ドライバを制御するための第2パルス信号を生成し、前記時間間隔を前記第2クロック信号にもとづいて測定するとともに、前記時間間隔の間、前記イネーブル信号をネゲートして前記第1オシレータを停止状態とするコントローラと、
を備え、
Qi規格に準拠したことを特徴とする制御回路。
【請求項6】
前記コントローラは、前記選択フェーズにおいて前記第2パルス信号を生成する物体検出期間の間、前記イネーブル信号をアサートして前記第1オシレータを発振状態とし、前記第1クロック信号にもとづいて前記第2パルス信号を生成することを特徴とする請求項3または5に記載の制御回路。
【請求項7】
ひとつの半導体基板に一体集積化されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の制御回路。
【請求項8】
送信アンテナと、
前記送信アンテナに接続されたドライバと、
停止状態と、第1周波数の第1クロック信号を生成する発振状態とがイネーブル信号に応じて切りかえ可能に構成された第1オシレータと、
前記ドライバを制御する請求項1から7のいずれかに記載の制御回路と、
を備えることを特徴とするワイヤレス送電装置。
【請求項9】
送信アンテナと、
前記送信アンテナに接続されたドライバと、
停止状態と、第1周波数の第1クロック信号を生成する発振状態とが切りかえ可能に構成された第1オシレータと、
前記第1周波数より低い第2周波数で発振し、第2クロック信号を生成する第2オシレータと、
前記第1クロック信号および前記第2クロック信号を受け、(i)ワイヤレス受電装置に送電するための送電フェーズにおいて、前記第1オシレータを発振状態とし、前記第1クロック信号にもとづいて、前記ドライバを制御するための第1パルス信号を生成するとともに、(ii)前記ワイヤレス受電装置を検出するための選択フェーズにおいて、所定の時間間隔にて、前記ドライバを制御するための第2パルス信号を生成し、前記時間間隔を前記第2クロック信号にもとづいて測定するとともに、前記時間間隔の間、前記第1オシレータを停止状態とするコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記選択フェーズにおいて前記第2パルス信号を生成する物体検出期間の間、前記第1オシレータを停止状態とし、前記第2クロック信号にもとづいて前記第2パルス信号を生成することを特徴とするワイヤレス送電装置。
【請求項10】
前記第2周波数は、前記送信アンテナの共振周波数をfrとするとき、2N×fr(ただしNは整数)またはfrであることを特徴とする請求項9に記載のワイヤレス送電装置。
【請求項11】
送信アンテナと、
前記送信アンテナに接続されたドライバと、
停止状態と、第1周波数の第1クロック信号を生成する発振状態とが切りかえ可能に構成された第1オシレータと、
前記第1周波数より低い第2周波数で発振し、第2クロック信号を生成する第2オシレータと、
前記第1クロック信号および前記第2クロック信号を受け、(i)ワイヤレス受電装置に送電するための送電フェーズにおいて、前記第1オシレータを発振状態とし、前記第1クロック信号にもとづいて、前記ドライバを制御するための第1パルス信号を生成するとともに、(ii)前記ワイヤレス受電装置を検出するための選択フェーズにおいて、所定の時間間隔にて、前記ドライバを制御するための第2パルス信号を生成し、前記時間間隔を前記第2クロック信号にもとづいて測定するとともに、前記時間間隔の間、前記第1オシレータを停止状態とするコントローラと、
を備え、
前記第2周波数は、前記送信アンテナの共振周波数をfrとするとき、2N×fr(ただしNは整数)またはfrであることを特徴とするワイヤレス送電装置。
【請求項12】
Qi規格に準拠したことを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載のワイヤレス送電装置。
【請求項13】
送信アンテナと、
前記送信アンテナに接続されたドライバと、
停止状態と、第1周波数の第1クロック信号を生成する発振状態とが切りかえ可能に構成された第1オシレータと、
前記第1周波数より低い第2周波数で発振し、第2クロック信号を生成する第2オシレータと、
前記第1クロック信号および前記第2クロック信号を受け、(i)ワイヤレス受電装置に送電するための送電フェーズにおいて、前記第1オシレータを発振状態とし、前記第1クロック信号にもとづいて、前記ドライバを制御するための第1パルス信号を生成するとともに、(ii)前記ワイヤレス受電装置を検出するための選択フェーズにおいて、所定の時間間隔にて、前記ドライバを制御するための第2パルス信号を生成し、前記時間間隔を前記第2クロック信号にもとづいて測定するとともに、前記時間間隔の間、前記第1オシレータを停止状態とするコントローラと、
を備え、
Qi規格に準拠したことを特徴とするワイヤレス送電装置。
【請求項14】
前記コントローラは、前記選択フェーズにおいて前記第2パルス信号を生成する物体検出期間の間、前記第1オシレータを発振状態とし、前記第1クロック信号にもとづいて前記第2パルス信号を生成することを特徴とする請求項11または13に記載のワイヤレス送電装置。
【請求項15】
ワイヤレス送電装置の制御方法であって、
前記ワイヤレス送電装置は、送信アンテナ、前記送信アンテナに接続されたドライバ、第1周波数の第1クロック信号を生成する第1オシレータ、前記第1周波数より低い第2周波数の第2クロック信号を生成する第2オシレータ、を備え、
前記方法は、
ワイヤレス受電装置に送電するための送電フェーズにおいて、前記第1オシレータを発振状態とし、当該第1クロック信号にもとづいて前記ドライバを制御するための第1パルス信号を生成するステップと、
前記ワイヤレス受電装置を検出するための選択フェーズにおいて、所定の時間間隔にて、前記ドライバを制御するための第2パルス信号を生成するステップと、
前記時間間隔を前記第2クロック信号にもとづいて測定するとともに、前記時間間隔の間、前記第1オシレータを停止状態とするステップと、
前記第1パルス信号および前記第2パルス信号にもとづいて前記ドライバを制御することにより、前記送信アンテナに駆動信号を印加するステップと、
を備え、
前記選択フェーズにおいて前記第2パルス信号を生成する物体検出期間の間、前記第1オシレータを停止状態とし、前記第2クロック信号にもとづいて前記第2パルス信号を生成することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス給電技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に電力を供給するために、無接点電力伝送(非接触給電、ワイヤレス給電ともいう)が普及し始めている。異なるメーカーの製品間の相互利用を促進するために、WPC(Wireless Power Consortium)が組織され、WPCにより国際標準規格であるQi(チー)規格が策定された。
【0003】
図1は、Qi規格に準拠したワイヤレス給電システム100の構成を示す図である。給電システム100は、送電装置200(TX、Power Transmitter)と受電装置300(RX、Power Receiver)と、を備える。受電装置300は、携帯電話端末、スマートホン、オーディオプレイヤ、ゲーム機器、タブレット端末などの電子機器に搭載される。
【0004】
送電装置200は、送信コイル(1次コイル)202、ドライバ204、コントローラ206、復調器208を備える。ドライバ204は、Hブリッジ回路(フルブリッジ回路)あるいはハーフブリッジ回路を含み、送信コイル202に駆動信号S1、具体的にはパルス信号を印加し、送信コイル202に流れる駆動電流により、送信コイル202に電磁界の電力信号S2を発生させる。コントローラ206は、送電装置200全体を統括的に制御するものであり、具体的には、ドライバ204のスイッチング周波数、あるいはスイッチングのデューティ比を制御することにより、送信電力を変化させる。
【0005】
Qi規格では、送電装置200と受電装置300の間で通信プロトコルが定められており、受電装置300から送電装置200に対して、制御信号S3による情報の伝達が可能となっている。この制御信号S3は、後方散乱変調(Backscatter modulation)を利用して、AM(Amplitude Modulation)変調された形で、受信コイル302(2次コイル)から送信コイル202に送信される。この制御信号S3には、たとえば、受電装置300に対する電力供給量を指示する電力制御データ(パケットともいう)、受電装置300の固有の情報を示すデータなどが含まれる。復調器208は、送信コイル202の電流あるいは電圧に含まれる制御信号S3を復調する。コントローラ206は、復調された制御信号S3に含まれる電力制御データにもとづいて、ドライバ204を制御する。
【0006】
受電装置300は、受信コイル302、整流回路304、コンデンサ306、変調器308、負荷回路310、コントローラ312、電源回路314を備える。受信コイル302は、送信コイル202からの電力信号S2を受信するとともに、制御信号S3を送信コイル202に対して送信する。整流回路304およびコンデンサ306は、電力信号S2に応じて受信コイル302に誘起される電流S4を整流・平滑化し、直流電圧に変換する。
【0007】
電源回路314は、送電装置200から供給された電力を利用して図示しない2次電池を充電し、あるいは直流電圧Vdcを昇圧あるいは降圧し、コントローラ312やその他の負荷回路310に供給する。
【0008】
コントローラ312は、受電装置300が受けている電力供給量をモニタし、それに応じて、電力供給量を指示する電力制御データを生成する。変調器308は、電力制御データを含む制御信号S3を変調し、受信コイル302のコイル電流を変調することにより、送信コイル202のコイル電流およびコイル電圧を変調する。
【0009】
以上が給電システム100の構成である。
図2は、送電装置200の動作シーケンスを示すフローチャートである。送電装置200の状態は大きく、選択フェーズ(Selection Phase)φ1と送電(Power Transfer)フェーズφ2と、認証・設定フェーズ(Identification&Configuration Phase)φ3、に分けられる。
【0010】
はじめに送電フェーズφ2を説明する。送電装置200(TX)が受電装置300(RX)への送電を開始する(S100)。送電装置TXには、受電装置RXからの現在の送電状態を示す制御信号S3がフィードバックされる(S102)。送電装置TXは、制御信号S3にもとづいて、送電量を調節する(S104)。
【0011】
送電装置TXは、受電装置RXから充電完了を示す制御信号S3を送信する(S106)か、あるいは、通信のタイムアウトエラーにもとづいて、送電装置TXの給電範囲から受電装置RXが取り外されたことを検知すると(S108)、送電装置TXは送電を停止し選択フェーズφ1となる。
【0012】
続いて選択フェーズφ1について説明する。送電装置TXは、所定の時間間隔(Object detection interval、たとえば500msec)ごとに、電力信号S2を送信し、受電装置RXの有無を確認する(S200)。これをアナログピンフェーズ(Analog Ping Phase)と称する。
【0013】
受電装置RXが検出されると(S202)、認証・設定フェーズφ3に移行し、デジタルピンフェーズ(Digital Ping Phase)が実行される(S204)。続く認証・設定フェーズ(Identification&Configuration Phase)において、送電装置TXは、受電装置RXの個体情報を受信する(S206)。続いて送電条件に関する情報が受電装置RXから送電装置TXに送信され(S208)、送電フェーズφ2に移行する。以上が送電装置200の動作シーケンスである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2013−38854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らは、このような給電システム100について検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0016】
図3は、本発明者らが検討した送電装置200rの構成を示す回路図である。
【0017】
送電装置200rは、送信アンテナ201、ドライバ204、制御回路220および外部オシレータ210を備える。
【0018】
送信アンテナ201は、直列に接続された送信コイル202および共振コンデンサ203を含む。送信アンテナ201は、固有の共振周波数frを有する。ドライバ204は、トランジスタM1〜M4を含むHブリッジ回路(M1〜M4)であり、送信アンテナ201の両端間に、矩形波状の駆動信号S1を印加する。駆動信号S1の周波数は、送信アンテナ201の共振周波数frの近傍に設定される。
【0019】
制御回路220は、コントローラ206および復調器208を含み、ひとつの半導体チップに一体集積化されている。
【0020】
外部オシレータ210は、所定の周波数で発振し、クロック信号CLKを生成する。クロック信号CLKは制御回路220のクロック入力(CLKIN)端子に入力される。制御回路220の内部ブロックは、クロック信号CLKと同期して、信号処理を行う。
【0021】
復調器208は、
図1を参照して説明したように、受電装置300から送信される制御信号S3を復調する。制御信号S3のうち、送電装置200が送信すべき電力量を指示する電力制御データS5は、コントローラ206に与えられる。
【0022】
コントローラ206は、パルス信号生成部222およびプリドライバ224を含む。パルス信号生成部222は、電力制御データS5にもとづいて、トランジスタM1〜M4のオン、オフを指示するパルス信号S6を生成する。プリドライバ224は、パルス信号S6にもとづいてドライバ204のトランジスタM1〜M4をスイッチングする。
【0023】
図1の送電装置200において、送信電力は、ドライバ204が送信コイル202に印加する駆動信号S1の周波数、つまりパルス信号S6の周波数にもとづいて調節される。具体的には、パルス信号S6の周波数を、送信コイル202を含むアンテナの共振周波数に近づけると、送信電力が増加し、遠ざかるにしたがって送信電力は低下する。つまりパルス信号生成部222は、電力制御データS5にもとづいてパルス信号S6の周波数を調節する。
【0024】
たとえばパルス信号生成部222は、デジタルカウンタで構成され、クロック信号CLKをカウントすることにより、電力制御データS5に応じた周波数(周期)を有するパルス信号S6を生成する。
【0025】
ここで送電装置200rには、高精度な電力量制御が要求され、したがってパルス信号S6の周波数を、高分解能で変化させる必要がある。Qi規格に準拠するためには、110kHz付近の駆動信号S1の周波数を、0.4kHz程度の分解能で変化させる必要があり、したがってクロック信号CLKの周波数は、数十MHz程度に設定する必要がある。
【0026】
一般に、外部オシレータ210の消費電流は、その発振周波数に応じて変化し、高周波数ほど高くなる。したがって
図3の送電装置200rでは、常時、外部オシレータ210を動作させる必要があるため、その消費電力が大きくなるという問題がある。
【0027】
なお、
図3の送電装置200rの構成を、従来技術と認定してはならず、またその課題についても、当業者の一般的な認識ととらえてはならない。
【0028】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、消費電力を低減したワイヤレス送電装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明のある態様は、送信アンテナ、送信アンテナに接続されたドライバ、第1オシレータ、を備えるワイヤレス送電装置に使用され、ドライバを制御する制御回路に関する。
第1オシレータは、停止状態と、第1周波数の第1クロック信号を生成する発振状態とがイネーブル信号に応じて切りかえ可能に構成される。制御回路は、第1周波数より低い第2周波数で発振し、第2クロック信号を生成する第2オシレータと、第1クロック信号および第2クロック信号を受け、(i)ワイヤレス受電装置に送電するための送電フェーズにおいて、イネーブル信号をアサートして第1オシレータを発振状態とし、第1クロック信号にもとづいて、ドライバを制御するための第1パルス信号を生成するとともに、(ii)ワイヤレス受電装置を検出するための選択フェーズにおいて、所定の時間間隔にて、ドライバを制御するための第2パルス信号を生成し、時間間隔を第2クロック信号にもとづいて測定するとともに、時間間隔の間、イネーブル信号をネゲートして第1オシレータを停止状態とするコントローラと、を備える。
【0030】
第2オシレータの消費電力は、その発振周波数が低いことから、第1オシレータの消費電力よりも低い。この態様によれば、待機期間において、所定の時間間隔の間、第1オシレータを停止状態にできるため、ワイヤレス送電装置の消費電力を低減することができる。
【0031】
コントローラは、選択フェーズにおいて第2パルス信号を生成する物体検出期間の間、イネーブル信号をネゲートして第1オシレータを停止状態とし、第2クロック信号にもとづいて第2パルス信号を生成してもよい。
この態様によれば、選択フェーズの間は、完全に第1オシレータを停止することができるため、さらに消費電力を低減できる。
【0032】
コントローラは、選択フェーズにおいて第2パルス信号を生成する物体検出期間の間、イネーブル信号をアサートして第1オシレータを発振状態とし、第1クロック信号にもとづいて第2パルス信号を生成してもよい。
この態様によれば、物体検出期間の間は、周波数が高い第1クロック信号にもとづいて第2パルス信号を生成するため、第2パルス信号の周波数やデューティ比を高い分解能で制御することが可能となる。
【0033】
第2周波数は、送信アンテナの共振周波数をfrとするとき、2
N×fr(ただしNは整数)であってもよい。
【0034】
第2周波数は、送信アンテナの共振周波数frと等しくてもよい。
【0035】
制御回路は、Qi規格に準拠してもよい。
【0036】
制御回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。
「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのICとして集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0037】
本発明の別の態様は、ワイヤレス送電装置に関する。ワイヤレス送電装置は、送信アンテナと、送信アンテナに接続されたドライバと、停止状態と、第1周波数の第1クロック信号を生成する発振状態とがイネーブル信号に応じて切りかえ可能に構成された第1オシレータと、ドライバを制御する上述のいずれかの制御回路と、を備えてもよい。
【0038】
本発明の別の態様もまた、ワイヤレス送電装置である。このワイヤレス送電装置は、送信アンテナと、送信アンテナに接続されたドライバと、停止状態と、第1周波数の第1クロック信号を生成する発振状態とが切りかえ可能に構成された第1オシレータと、第1周波数より低い第2周波数で発振し、第2クロック信号を生成する第2オシレータと、第1クロック信号および第2クロック信号を受け、(i)ワイヤレス受電装置に送電するための送電フェーズにおいて、第1オシレータを発振状態とし、第1クロック信号にもとづいて、ドライバを制御するための第1パルス信号を生成するとともに、(ii)ワイヤレス受電装置を検出するための選択フェーズにおいて、所定の時間間隔にて、ドライバを制御するための第2パルス信号を生成し、時間間隔を第2クロック信号にもとづいて測定するとともに、時間間隔の間、第1オシレータを停止状態とするコントローラと、を備える。
【0039】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0040】
本発明のある態様によれば、ワイヤレス送電装置の消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】Qi規格に準拠したワイヤレス給電システムの構成を示す図である。
【
図2】送電装置の動作シーケンスを示すフローチャートである。
【
図3】本発明者らが検討した送電装置の構成を示す回路図である。
【
図4】実施の形態に係るワイヤレス送電装置の構成を示す回路図である。
【
図5】
図4の送電装置の動作を示すタイムチャートである。
【
図6】第2の変形例に係る送電装置の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0043】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0044】
図4は、実施の形態に係るワイヤレス送電装置(以下、単に送電装置と称する)200の構成を示す回路図である。送電装置200は、
図1のQi規格に準拠した給電システム100に使用される。
【0045】
送電装置200は、送信アンテナ201、ドライバ204、制御回路220、第1オシレータ230を備える。
【0046】
送信アンテナ201は、直列に接続された送信コイル(1次コイル)202および共振コンデンサ203を含み、所定の共振周波数frを有する。
【0047】
ドライバ204は、トランジスタM1〜M4を含むHブリッジ回路であり、送信アンテナ201の両端間に共振周波数fr近傍の周波数を有するパルス状の駆動信号S1を印加する。ドライバ204は、ハーフブリッジ回路であってもよい。
【0048】
第1オシレータ230は、イネーブル端子ENを備え、イネーブル端子ENに入力されるイネーブル信号ENに応じて、停止状態と、第1周波数f1の第1クロック信号CLK1を生成する発振状態と、が切りかえ可能に構成される。たとえば第1オシレータ230は、TCXO(温度補償型水晶発振器)などの水晶発振器を用いて構成してもよいし、その他の発振器を用いてもよい。この第1オシレータ230の発振周波数f1は、送電フェーズにおいて送電装置200に要求される電力制御の分解能を達成しうる程度に高い周波数に設定される。第1クロック信号CLK1は、制御回路220のクロック入力端子CLKINに入力される。
【0049】
制御回路220は、コントローラ206、復調器208および第2オシレータ232を備え、ひとつの半導体基板上に一体集積化された機能IC(Integrated Circuit)である。復調器208は、送信アンテナ201が受信した受電装置(不図示)からの制御信号S3を復調する。コントローラ206は、復調された制御信号S3にもとづいて、ドライバ204を制御する。
【0050】
第2オシレータ232は、第1周波数f1より低い第2周波数f2で発振し、第2クロック信号CLK2を生成する。
【0051】
コントローラ206は、第1クロック信号CLK1および第2クロック信号CLK2を受ける。コントローラ206は、(i)ワイヤレス受電装置(不図示)に送電するための送電フェーズにおいて、イネーブル信号EN1をアサート(たとえばハイレベル)して第1オシレータ230を発振状態とする。そして、第1オシレータ230が生成した第1クロック信号CLK1にもとづいて、ドライバ204を制御するための第1パルス信号S6_1を生成する。
【0052】
またコントローラ206は、(ii)ワイヤレス受電装置(不図示)を検出するための選択フェーズにおいて、所定の時間間隔(物体検出インターバル(Object detection interval)ともいう)T
OFFにて、ドライバ204を制御するための第2パルス信号S6_2を生成する。Qi規格において第2パルス信号S6_2の生成は、アナログピンフェーズに対応する。
【0053】
コントローラ206は、時間間隔T
OFFを第2クロック信号CLK2にもとづいて測定する。さらにコントローラ206は、物体検出インターバルT
OFFの間、イネーブル信号EN1をネゲート(たとえばローレベル)して第1オシレータ230を停止状態とする。
【0054】
本実施の形態において、コントローラ206は、選択フェーズにおいて第2パルス信号S6_2を生成する物体検出期間(Object detection duration)T
ONの間、イネーブル信号ENをネゲートして第1オシレータ230を停止状態とする。そしてコントローラ206は、第2クロック信号CLK2にもとづいて第2パルス信号S6_2を生成する。
【0055】
第2パルス信号S6_2の周波数は、送信アンテナ201の共振周波数frと等しい。したがって、第2クロック信号CLK2の周波数f2を、共振周波数frと等しく設定しておくことにより、第2パルス信号S6_2を、レベルシフト、位相シフトなど、簡易的な処理によって生成することができる。
【0056】
コントローラ206は、第1パルス信号生成部240、第2パルス信号生成部242、プリドライバ224、シーケンサ244を備える。
【0057】
第1パルス信号生成部240は、送電フェーズにおいて、第1クロック信号CLK1を利用して、第1パルス信号S6_1を生成する。たとえば第1パルス信号生成部240は、デジタルカウンタを含み、第1クロック信号CLK1をカウントすることにより、電力制御データS5に応じた周波数(周期)を有する第1パルス信号S6_1を生成する。第1パルス信号生成部240の構成は特に限定されない。
【0058】
プリドライバ224は、送電フェーズ中、第1パルス信号S6_1にもとづいてドライバ204のトランジスタM1〜M4をスイッチングする。第1パルス信号生成部240は、トランジスタM1とM3が同時にオンしないように、またトランジスタM2とM4が同時にオンしないように、デッドタイム制御を行ってもよい。あるいはデッドタイム制御は、プリドライバ224において実行されてもよい。
【0059】
第2パルス信号生成部242は、選択フェーズの物体検出期間T
ONにおいて、第2クロック信号CLK2にもとづいて第2パルス信号S6_2を生成する。最も簡易には、デューティ比が50%である第2クロック信号CLK2を、トランジスタM1およびM4に対するパルス信号S6_2とし、第2クロック信号CLK2の反転信号を、トランジスタM2およびM3に対するパルス信号S6_2としてもよい。第2パルス信号生成部242の構成は特に限定されない。
【0060】
プリドライバ224は、物体検出期間T
ON中、第2パルス信号S6_2にもとづいてドライバ204のトランジスタM1〜M4をスイッチングする。第2パルス信号生成部242は、デッドタイム制御を行ってもよい。デッドタイム制御は、プリドライバ224において実行されてもよい。
【0061】
シーケンサ244は、いわゆるステートマシンであり、
図2に示すフローチャートにしたがって状態遷移し、それにともなって第1パルス信号生成部240、第2パルス信号生成部242、第1オシレータ230の動作を制御する。具体的にはプリドライバ224は、選択フェーズにおいてシーケンサ244は、第2クロック信号CLK2をカウントすることにより、物体検出インターバルT
OFFおよび物体検出期間T
ONを測定する。
【0062】
シーケンサ244は、イネーブル信号ENを生成し、スタンバイ(STB)端子を介して第1オシレータ230に出力する。具体的には、シーケンサ244は、送電フェーズ中、イネーブル信号ENをアサートし、選択フェーズ中、イネーブル信号ENをネゲートする。なお、シーケンサ244は、第2クロック信号CLK2が使用されない送電フェーズ中、第2オシレータ232を停止することが望ましい。
【0063】
なお、コントローラ206の構成は、
図4のそれには限定されない。
【0064】
以上が送電装置200の構成である。続いてその動作を説明する。
図5は、
図4の送電装置200の動作を示すタイムチャートである。時刻t0より前において送電装置200は送電フェーズφ2であり、イネーブル信号ENがアサートされ、第1クロック信号CLK1が生成されている。コントローラ206は、第1クロック信号CLK1にもとづいて、第1パルス信号S6_1を生成する。これにより、受電装置に電力が供給される。
【0065】
時刻t0に、選択フェーズφ1に移行する。これを契機としてイネーブル信号ENがネゲートされ、第1オシレータ230が停止しする。かわりに第2オシレータ232が動作し始め、第2クロック信号CLK2が生成される。コントローラ206は、第2クロック信号CLK2を利用して、物体検出インターバルT
OFF、バースト時間T
ONを測定する。そして、バースト時間T
ONの間は、第2クロック信号CLK2を利用して第2パルス信号S6_2を生成する。
【0067】
この送電装置200によれば、選択フェーズφ1において、消費電力が大きい第1オシレータ230を停止することができ、代わりに相対的に消費電力が小さな第2オシレータ232を利用することで、アナログピンフェーズの処理を実行することができる。
【0068】
さらに選択フェーズφ1においては、コントローラ206の動作周波数が、第1周波数f1から第2周波数f2に低下するため、
図3の送電装置200rに比べて、オシレータの消費量のみでなく、コントローラ206の消費電力も低減することができる。
【0069】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0070】
(第1の変形例)
第2周波数f2は、送信アンテナ201の共振周波数をfrとするとき、2
N×fr(ただしNは整数)であってもよい。N>0のとき、コントローラ206は、第2クロック信号CLK2を1/2
N分周することにより、第2パルス信号S6_2を生成することができる。N<0のときには、コントローラ206は、第2クロック信号CLK2を2
N逓倍することにより、第2パルス信号S6_2を生成することができる。
【0071】
(第2の変形例)
コントローラ206は、選択フェーズの物体検出期間T
ONの間、イネーブル信号EN1をアサートして第1オシレータ230を発振状態とし、第1クロック信号CLK1にもとづいて第2パルス信号S6_2を生成してもよい。
図6は、第2の変形例に係る送電装置200の動作を示すタイムチャートである。
【0072】
第2の変形例では、
図4の第2パルス信号生成部242に、第2クロック信号CLK2に代えて第1クロック信号CLK1を入力すればよい。また第2パルス信号生成部242は、第1パルス信号生成部240と同様に、デジタルカウンタを用いて構成してもよい。
【0073】
この変形例によれば、物体検出期間T
ONの間は、周波数が高い第1クロック信号CLK1にもとづいて第2パルス信号S6_2を生成するため、第2パルス信号S6_2の周波数やデューティ比を高い分解能で制御することが可能となる。
【0074】
なお、物体検出期間T
ONの長さは、第2クロック信号CLK2を利用して測定してもよいし、第1クロック信号CLK1を利用して測定してもよい。後者の場合、物体検出期間T
ON中、第2オシレータ232を停止してもよい。
【0075】
(第3の変形例)
実施の形態では、Qi規格に準拠するワイヤレス送電装置について説明したが、本発明はそれに限定されず、Qi規格と類似するシステムに使用されるワイヤレス送電装置や、将来策定されるであろう規格に準拠する送電装置200にも適用しうる。
【0076】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0077】
100…給電システム、200,TX…送電装置、201…送信アンテナ、202…送信コイル、203…共振コンデンサ、204…ドライバ、206…コントローラ、208…復調器、300,RX…受電装置、302…受信コイル、304…整流回路、306…コンデンサ、308…変調器、310…負荷回路、312…コントローラ、314…電源回路、S1…駆動信号、S2…電力信号、210…外部オシレータ、220…制御回路、222…駆動信号生成部、224…プリドライバ、230…第1オシレータ、232…第2オシレータ、240…第1パルス信号生成部、242…第2パルス信号生成部、244…シーケンサ、CLK1…第1クロック信号、CLK2…第2クロック信号。