特許第6185293号(P6185293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185293
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】チャックのジョー自動交換装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/39 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   B23B31/39
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-122162(P2013-122162)
(22)【出願日】2013年6月10日
(65)【公開番号】特開2014-237212(P2014-237212A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(72)【発明者】
【氏名】政次 直幸
(72)【発明者】
【氏名】金島 睦民
【審査官】 永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−232807(JP,A)
【文献】 特開昭60−056805(JP,A)
【文献】 特開昭55−070507(JP,A)
【文献】 特開平06−190616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/39
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャックのジョーを自動的に交換するジョー交換装置であって、ジョーを保持解除自在に保持するジョー保持手段を有し、ジョーをガイドして移動可能とするスライドレールを備えるジョーホルダーと、工作機械側へ取り付けられ前記ジョーホルダーと接続可能とするホルダー接続部を有する位置決めプレートを備え、前記ジョーホルダーがホルダー接続部と接続するプレート接続部を有し、ジョーホルダーと位置決めプレートが接続することでジョーホルダーのスライドレール位置がチャックのジョー取り付け溝位置へ位置決めされることを特徴とするジョー交換装置。
【請求項2】
前記位置決めプレートがシリンダー部を備え、チャック内方設けられジョーとチャック本体を固定するロック機構を有し、前記シリンダー部の伸縮によりロック機構を動作させて、ジョーの固定又は解除を行なうことを特徴とする請求項1に記載のジョー交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に用いるチャックのジョーを自動交換するジョー交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、生産性も向上を図るために、工作機械及びその周辺機器に対して、総合的な自動化の要請が高まっている。
これに答えるため、工作機械に取り付けられるチャックにおいても、ワークを把持するジョーをワークの大きさや形状に応じて交換する際に、人手を解さず自動的に交換する自動交換装置が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−318210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の従来技術は、工作機械側へ、非常に大規模で大型のジョー交換装置を設置させる必要がある。このため、装置重量の負荷や、設置スペースの問題により、ジョー自動交換装置を設置できないケーズが発生してしまう。この場合には、工場の自動化に制約が出てしまい、工場ライン設計に障害となって効率的な生産設備の構築ができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、チャックのジョーを自動的に交換するジョー交換装置であって、ジョーを保持解除自在に保持するジョー保持手段を有し、ジョーをガイドして移動可能とするスライドレールを備えるジョーホルダーと、工作機械側へ取り付けられ前記ジョーホルダーと接続可能とするホルダー接続部を有する位置決めプレートを備え、前記ジョーホルダーがホルダー接続部と接続するプレート接続部を有し、ジョーホルダーと位置決めプレートが接続することでジョーホルダーのスライドレール位置がチャックのジョー取り付け溝位置へ位置決めされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ジョーの自動交換のための装置が大型化せず、簡素な設備で自動化を行なうことが出来て、設備コストの低減や設置場所の省スペース化が実現出来る。
また、大型の装置を用いることなく、簡素な設備で、ジョーの交換位置を正確に位置決めできるので、ミス無く短時間で、ジョーの自動交換作業を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施例におけるジョーホルダーとチャックの正面図である。
図2】本発明の実施例におけるジョーホルダーの平面図である。
図3】本発明の実施例の動作説明図Aである。
図4】本発明の実施例の動作説明図Bである。
図5】本発明の実施例の動作説明図Cである。
図6】本発明の実施例の動作説明図Dである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1から図6を用いて、ジョー交換装置の構造について説明する。
まず、ジョー交換時のジョーの位置決めを行なう位置決めプレート4を説明する。
位置決めプレート4は、チャック外周外方の工作機械の基部24へ接続されており、チャック1の外方全周へ、中抜きドーナツ形円板に形成されて、設けられている。
チャック1の回転を定位置に停止することで、位置決めプレート4とチャックの相対位置が定められ、位置決めプレート4のジョーホルダー3取り付け位置と、チャックのジョー2の取り付け位置が合致するように設定されている。
【0009】
この位置決めプレート4にはジョーホルダー3が取り付けられるようになされており、位置決めプレート4のジョーホルダー3取り付け面側へホルダー接続部9が設けられている。このホルダー接続部9へジョーホルダー3のプレート接続部8の突出部位が挿入され、外部からのエアー圧や油圧による固定手段により固定され、位置決めプレート4の決められた位置へジョーホルダー3が取り付けられるようになされている。
また、位置決めプレート4には、後述するチャックのジョーのロック機構に押圧力を与えるシリンダー部31を有している。外部からのエアー圧や油圧によりシリンダー部31を駆動させて、シリンダーピン32を伸縮させる。
【0010】
ジョー2は、ワークを直接把持するソフトジョー11と、ソフトジョー11を着脱自在に取り付けてチャックと結合するマスタージョー10で構成されている。
マスタージョー10には、ジョーホルダー3と接続するジョーホルダー接続部と、チャックと接続するチャック接続部を備えている。
ジョーホルダー接続部は、ジョーホルダー3に設けられたジョー固定ピン14を挿入させる固定孔12を備えており、ジョー固定ピン14が固定孔12に挿入されることで、ジョーホルダー3とマスタージョー10が固定される。
チャック接続部は、チャックに設けられたロックボルトが挿入されるマスタージョー凹部13を備えている。
この凹部13にロックボルトの先端が挿入し係合することで、チャックとマスタージョーが固定される。
【0011】
次に、図1及び図2に示している、チャックへ装着するジョー2を保持し、搬送するジョーホルダー3を説明する。
ジョーホルダー3には、ジョー2を着脱自在に固定するジョー保持手段6と、ジョー2がスライド移動する際のガイドとなるスライドレール7が備えられている。
位置決めプレート4には、取り付け面側へホルダー接続部9が設けられており、このホルダー接続部9へジョーホルダー3のプレート接続部8の突出部位が挿入されて固定され、位置決めプレート4の決められた位置へジョーホルダー3が取り付けられる。
【0012】
ジョーホルダー3には新規にチャックへ装着されるジョー2が取り付けられている。
ジョー2は、ジョーホルダー3に設けられたスライドレール7へはめ込まれ、ジョー保持手段6によりジョーホルダー3へ固定されている。
スライドレール7には、マスタージョー10をはめ込む溝部18が抜け防止のための凸部19を有して設けられ、マスタージョー10を一方向へスライド自在となすようになされている。
【0013】
また、ジョー保持手段6として、ジョーホルダー3に取り付けられ、ジョー2側へスライド移動可能になされたジョー固定ピン14が設けられている。
このジョー固定ピン14は、上部に傾斜面15を有する切り欠き16が備えられており、上方から止めピン17を切り欠き16へ押し下げて傾斜面15へ当接させることにより、ジョー固定ピン14をジョー側へ移動させてマスタージョー10に設けられた固定孔12に挿入させる。
これにより、マスタージョー10が、ジョーホルダー3に固定され、ジョー2はジョー保持手段6に保持される。
【0014】
チャックは、ジョーを交換可能となすように、マスタージョー10をスライド移動させるためのジョー取り付け溝23を備えている。
ジョー取り付け溝23は、前記ジョーホルダー3に設けられたスライドレール7と同一形状になされており、マスタージョー10のジョーホルダー3からチャックへの移動、及びチャックからのジョーホルダー3への移動をスムーズに行うことができる。
【0015】
チャックには、ジョーのチャックへの固定手段としてロック機構を備えている。
このロック機構は、ロックボルト25がチャック本体の内部に設けられており、ロックボルト25がマスタージョー10に設けられた凹部13へ挿入されることで、チャック1とジョー2を一体化できるようになされている。前記位置決めプレート4のシリンダー部31の駆動により、押圧ピン26へ作用力を負荷される。
押圧ピン26は、下方端部へテーパー面30を備えて、テーパー面30にてロックボルト25の傾斜面27と接している。
押圧ピン26が上方へ移動すると、ロックボルト25がマスタージョー側へ移動するようになされている。マスタージョー側へ移動されたロックボルト25の先端がマスタージョー10の凹部13へ挿入され、チャック1とマスタージョー2の一体化を行なうように構成されている。
【0016】
以下に本実施例のジョー交換装置の動作について、図を用いて説明する。
図3から図6により一連の動作(1)〜(7)を図に示している。
チャック1へ新たなジョー2を取り付ける場合を説明する。
図3(1)に示すように、位置決めプレート4は、あらかじめ工作機械の基部24へ接続されている。
チャック1の回転を定位置に停止することで、位置決めプレート4とチャックの相対位置が定められ、位置決めプレート4のジョーホルダー3の取り付け位置と、チャックのジョー2の取り付け位置が合致されている。
この位置決めプレート4へジョー2を取り付けたジョーホルダー3が図示しないロボットを用いて取り付けられる。
【0017】
位置決めプレート4のホルダー接続部9へ、ジョーホルダー3のプレート接続部8の突出部が挿入されると、外部からのエアー圧や油圧などの作用により固定され。位置決めプレート4の決められた位置へジョーホルダー3が取り付けられる。(図3(2)に示す)
位置決めプレート4へジョーホルダー3が定位置で取り付けられることで、ジョー交換の際に毎回正確な位置へジョーホルダー3を固定することが出来る。
ジョーホルダー3が位置決めプレート4へ固定されると、ジョーホルダー3に取り付けられたジョー2の固定を解除し、ジョーホルダー3からジョー2をチャック側へスライド移動させる。
【0018】
まず、図4(3)に示すように、支持用器具5(例えば、刃物台などの工作機器)を用いて、ジョー2を仮保持しておく。これにより、ジョー保持手段6による保持を解除されたジョー2を支えておくことができる。
この後、ジョーホルダー3に備えられたジョー保持手段6の保持状態を解除するには、ロボットの動作により、止めピン17を押し下げる。これにより、マスタージョー10の固定孔12に挿入されているジョー固定ピン14がジョーホルダー側へ移動し、マスタージョー10の固定が解除される。ジョー保持手段6による保持が解除されたジョー2は前記支持用基部のみによって支持される状態になる。
【0019】
次に図4(4)に示すように、チャックのジョー取り付け溝23へ設けられているジョーロック機構を解除し、チャック1がジョー2を取り付け可能な状態とする。
チャックの内方に設けられたロックボルト25には、傾斜面27で押圧ピン26と接しており、押圧ピン26が位置決めプレート4に備えられたシリンダ部31の駆動によるシリンダピン32の伸長動作により押し下げられると、くさび作用のよりロックボルト25がチャック本体内方向へスライド移動される。
これにより、チャック1のジョー取り付け溝23の内側でのロックボルト25の突出が無くなり、マスタージョー10がショー取り付け溝23へ進入可能となる。
【0020】
この状態で、図5(5)に示すように、ジョー2を仮支持している支持用器具5を用いてジョー2を移動させる作用力Pを加えると、ジョー2は、ジョーホルダー3のスライドレール7をチャック側へ移動を開始する。
このとき、位置決めプレート4を用いて、ジョーホルダー3を位置決めし、正確な位置へ配置しているため、ジョーホルダー3のスライドレール7と、チャックのジョー取り付け溝23との相対的な位置が完全に一致していることになる。このため、ジョー2のジョーホルダー3からチャックへの移動を自動でスムーズに行うことが容易にでき、ジョー2の交換の際に、ひっかかり等のトラブル発生が無く、ジョー2の自動交換を行なうことができる。
【0021】

チャックへスライド移動を終えたジョー2はチャックのロック機構によって、チャックへの固定がなされる。
図5(6)に示すように、まず、位置決めプレート4のシリンダー部31の駆動により、押圧ピン26が上方へ移動する。押圧ピン26が上方へ移動すると、ロックボルト25がマスタージョー側へ移動するようになされ、ロックボルト25のマスタージョー側先端が、マスタージョウ10の凹部13に挿入されてチャック1とマスタージョー2の一体化が行なわれる。
これにより、マスタージョー10のチャックへの固定が完了し、ジョー2のチャックへの取り付けが完了する。
【0022】
その後、位置決めプレート4のホルダー接続部9を開放して、ジョーホルダー3の固定を解除する。そして、図6(7)に示すように、図示しないロボットを用いて、ジョーホルダー3を位置決めプレート4から取り外して、チャックのジョー交換が終了する。
この後、チャック1へワークを把持させて、ワークの加工工程が開始される。
また、既存のジョー2を取り外す際は、前述の取り付け方法を逆に行なうことで、自動でジョー2を取り外すことができる。
このように、本発明によれば、ジョー2の交換の際にジョー2の位置合わせを正確に行なうことが出来るので、ジョー2の自動交換を容易に行うことができ、設備コストの軽減化や、加工時間以外の段取り時間を短縮することが可能となる。
【0023】
なお、本発明はジョー2の自動交換の際、位置決めプレート4を用いてジョーの交換位置を正確に位置決めできることが特徴であり、本発明は前述に示した実施例に限定されるものではない。したがって、前述の実施例とは異なる一般的な技術手段を用いた別の実施方法で行なうこともできる。
例えば、前記実施例では、ジョー2をスライド移動させる際に、支持用器具5として刃物台などの工作機器を例示しているが、別の例としては、マスタージョー10へフック部を備えて、このフック部を使ってジョー2を移動させるロボットハンドなどを用いても、前記実施例と同様の動作を行なうことができる。
【符号の説明】
【0024】
1 チャック
2 ジョー
3 ジョーホルダー
4 位置決めプレート
5 支持用器具
7 スライドレール
10 マスタージョー
11 ソフトジョー
12 固定孔
13 凹部
14 ジョー固定ピン
17 止めピン
23 ジョー取り付け溝
24 工作機械の基部
25 ロックボルト
26 押圧ピン
31 シリンダー部
32 シリンダーピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6