(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に限定されるものではない。
なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸あるいはメタクリル酸を、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味する。
また、本発明において「粘着シート」とは、粘着シート、粘着フィルム、粘着テープ、粘着ラベルを概念的に包含するものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明のエマルジョン型粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを主成分として含有するモノマー成分(A)を乳化重合して得られ、粘着付与樹脂(B)を含有するエマルジョン型粘着剤組成物である。そして、本発明のエマルジョン型粘着剤組成物には、3個以上のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤(X)と、アニオン型乳化剤(Y)を特定の重量比で含有することを特徴とする。
【0018】
《モノマー成分(A)》
本発明で用いる上記モノマー成分(A)は、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを主成分とするものである。なお、上記主成分とは、モノマー成分(A)中、上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが50重量%以上、好ましくは55重量%以上であることを意味するものである。
【0019】
そして、上記モノマー成分(A)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A1)を主成分とし、これにカルボキシル基含有不飽和モノマー(A2)、上記(A1)及び(A2)以外のその他の不飽和モノマー(A3)を用いたものがあげられる。
【0020】
〈(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(A1)〉
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A1)としては、例えば、アルキル基の炭素数4〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、アルキル基の炭素数が1〜3の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)、アルキル基の炭素数が9以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a3)があげられる。
【0021】
〈アルキル基の炭素数が4〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)〉
上記アルキル基の炭素数4〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)としては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート等があげられる。中でも、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が好ましく用いられ、特に2−エチルヘキシルアクリレートが特に好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0022】
〈アルキル基の炭素数が1〜3の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)〉
上記アルキル基の炭素数が1〜3の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0023】
〈アルキル基の炭素数が9以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a3)〉
上記アルキル基の炭素数が9以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a3)としては、例えば、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート等の炭素数9〜12のアルキル基を有する脂肪族(メタ)アクリレート等があげられる。さらには、トリデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート等の炭素数13以上、好ましくは13〜25のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0024】
〈カルボキシル基含有不飽和モノマー(A2)〉
上記カルボキシル基含有不飽和モノマー単量体としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸等があげられる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0025】
〈(A1)及び(A2)以外のその他の不飽和モノマー(A3)〉
上記(A1)及び(A2)以外のその他の不飽和モノマー(A3)としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、アルキルビニルエーテル等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0026】
上記モノマー成分(A)の中でも、再剥離性と接着力のバランスおよび曲面貼付性に優れるという点から、2−エチルヘキシルメタクリレート、メタクリル酸を用いることが好ましい。
【0027】
上記アルキル基の炭素数4〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、アルキル基の炭素数が1〜3の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)、アルキル基の炭素数が9以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a3)などの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(A1)、カルボキシル基含有不飽和モノマー(A2)、その他の不飽和モノマー(A3)の含有割合としては、好ましくは、アルキル基の炭素数4〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)が95〜99.7重量%、アルキル基の炭素数が1〜3の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)が0〜2重量%、アルキル基の炭素数が9以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a3)が0〜10重量%、カルボキシル基含有不飽和モノマー(A2)が0.3〜5重量%、その他の不飽和モノマー(A3)が0〜10重量%であり、特に好ましくは、アルキル基の炭素数4〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)が97〜99.5重量%、アルキル基の炭素数が1〜3の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)が0〜2重量%、アルキル基の炭素数が9以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a3)が0〜5重量%、カルボキシル基含有不飽和単量体(A2)が0.5〜3重量%、その他の不飽和モノマー(A3)が0〜5重量%である。
【0028】
上記アルキル基の炭素数4〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)の含有量が少なすぎると、充分な接着力、タック力が得られ難くなる傾向がみられ、多すぎると、カルボキシル基含有不飽和モノマー(A2)が少量となり、充分な剥離性が得られ難くなる傾向がみられる。
そして、上記アルキル基の炭素数が1〜3の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)の含有量が多すぎると曲面貼付性が低下する傾向がある。
上記アルキル基の炭素数が9以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a3)の含有量が多すぎると、接着力、タック力が低下する傾向がみられる。
また、カルボキシル基含有不飽和モノマー(A2)が少なすぎると、安定性が低下するとともに剥離性が不充分となる傾向がみられ、多すぎると、エマルジョンの粘度が上昇し取り扱い性が悪化したり、接着力やタック力が低下する傾向がみられる。
上記その他の不飽和モノマー(A3)が多すぎると、接着力、タック力が低下する傾向がみられる。
【0029】
《粘着付与樹脂(B)》
本発明のエマルジョン型粘着剤組成物の製造に際して、上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを主成分として含有するモノマー成分(A)を乳化重合して得られるエマルジョンとともに、粘着付与樹脂(B)が用いられる。上記粘着付与樹脂(B)は、エマルジョン型粘着剤組成物中に存在していればよく、上記モノマー成分(A)の乳化重合時に存在させてもよいし、上記モノマー成分(A)の乳化重合終了後に後添加してもよいが、好ましくは優れた剥離性能が得られやすいという点から、上記乳化重合時に存在していることが好ましい。
【0030】
上記粘着付与樹脂(B)としては、例えば、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、石油系樹脂(フェノール樹脂との共重合物や、水添タイプのものであってもよい)、クマロン−インデン樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。中でも、重合安定性に優れる点から、テルペン系樹脂を用いることが好ましい。上記粘着付与樹脂(B)の配合方法としては、例えば、上記モノマー成分(A)に溶解して使用する方法があげられる。また、上記粘着付与樹脂(B)以外に、エマルジョンタイプの粘着付与樹脂を後添加してもよい。
【0031】
本発明で用いられる粘着付与樹脂(B)としては、モノマー成分(A)に溶解または分散するものであればよく、例えば、スーパーエステルA−75(荒川化学社製)、スーパーエステルA−100(荒川化学社製)、スーパーエステルA−125(荒川化学社製)等のロジンエステル、ペンセルD−125(荒川化学社製)、ペンセルD−135(荒川化学社製)、ペンセルD−160(荒川化学社製)、リカタックPCJ(理化ファインテック社製)等の重合ロジンエステル、パインクリスタルKE−100(荒川化学社製)、パインクリスタルKE−604(荒川化学社製)等の水添ロジンエステル、ニカノールHP−100(三菱ガス化学社製)、ニカノールHP−150(三菱ガス化学社製)、ニカノールH−80等のキシレン樹脂、YSポリスターT−115(ヤスハラケミカル社製)、YSポリスターT−130(ヤスハラケミカル社製)、YSポリスターT−145(ヤスハラケミカル社製)等のテルペンフェノール樹脂、YSレジンTO−115(ヤスハラケミカル社製)、YSレジンTO−125(ヤスハラケミカル社製)等の変性テルペン樹脂、クリアロンP−115(ヤスハラケミカル社製)、クリアロンP−125(ヤスハラケミカル社製)等の水添テルペン樹脂、FTR−6120(三井石油化学社製)、FTR−6100(三井石油化学社製)等の石油樹脂、その他、クマロン−インデン樹脂、テルペン樹脂、スチレン樹脂、エチレン/酢酸ビニル樹脂等があげられ、1種または2種以上用いることができる。
【0032】
また、エラストマーと呼ばれるスチレン−ブタジエンブロックポリマー、スチレン−イソプレンブロックポリマー、エチレン−イソプレン−スチレンブロックポリマー、塩化ビニル/酢酸ビニル系ポリマー、アクリルゴム等も用いることができる。
【0033】
また、粘着付与樹脂(B)としてはその軟化点が100℃以上のものが曲面貼付性の点で好ましく、特には120℃以上のものが好ましい。上記軟化点が低すぎると曲面貼付性が低下する傾向がある。なお、粘着付与樹脂(B)の軟化点の上限は通常170℃付近である。
【0034】
上記粘着付与樹脂(B)の含有量は、上記(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを主成分として含有するモノマー成分(A)100重量部に対して、通常0.1〜6重量部であり、好ましくは0.5〜4重量部、さらに好ましくは1〜3重量部である。上記粘着付与樹脂(B)の含有量が少なすぎると、充分な接着力が得られなくなる傾向がみられ、多すぎると、重合安定性が低下する傾向がみられる。
【0035】
本発明のエマルジョン型粘着剤組成物は、3個以上のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤(X)と、アニオン型乳化剤(Y)の2種類の乳化剤を用いる。
【0036】
《3個以上のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤(X)》
上記3個以上のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤(X)は、ベンゼン環を3個以上含有するノニオン型乳化剤であればよく、好ましくは3個以上のベンゼン環構造からなる疎水基と、アルキレンオキサイド鎖からなる親水基とからなる構造を備えたものであり、特に好ましくは、3〜8個のベンゼン環構造からなる疎水基と、アルキレンオキサイド鎖からなる親水基とからなる構造を備えたものである。
【0037】
上記疎水基としては、例えば、ジスチレン化フェニル、ジスチレン化クレゾール、トリベンジルフェニル等があげられる。また、上記親水基としては、例えば、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、およびこれらの混合系等のアルキレンオキサイド鎖があげられる。
【0038】
このような3個以上のベンゼン環構造からなる疎水基と、アルキレンオキサイド鎖からなる親水基とからなる構造を備えたノニオン型乳化剤(X)としては、例えば、下記の構造式(x1)、(x2)で表される化合物があげられる。
【0040】
上記3個以上のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤(X)としては、例えば、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル[例えば、「エマルゲンA−60(HLB=12.8)」、「エマルゲンA−90(HLB=14.5)」、「エマルゲンA−500(HLB=18.0)」(以上、花王社製)、「ノイゲンEA−87(HLB=10.6)」、「ノイゲンEA−137(HLB=13.0)」、「ノイゲンEA−157(HLB=14.3)」、「ノイゲンEA−167(HLB=14.8)」、「ノイゲンEA−177(HLB=15.6)」、「ノイゲンEA−1970(HLB=17.5)」、「ノイゲンEA−2070(HLB=18.7)」(以上、第一工業製薬社製)]、ポリオキシエチレンジスチレン化メチルフェニルエーテル[例えば、「ニューコール703(HLB=8.0)」、「ニューコール704(HLB=9.2)」、「ニューコール706(HLB=10.9)」、「ニューコール707(HLB=12.3)」、「ニューコール708(HLB=12.6)」、「ニューコール709(HLB=13.3)」、「ニューコール710(HLB=13.6)」、「ニューコール711(HLB=14.1)」、「ニューコール712(HLB=14.5)」、「ニューコール714(HLB=15.0)」、「ニューコール719(HLB=16.0)」、「ニューコール723(HLB=16.6)」、「ニューコール729(HLB=17.2)」、「ニューコール733(HLB=17.5)」、「ニューコール740(HLB=17.9)」、「ニューコール747(HLB=18.2)」、「ニューコール780(HLB=18.9)」(以上、日本乳化剤社製)]、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル[例えば、「エマルゲンB−66(HLB=13.2)」(以上、花王社製)]等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0041】
そして、上記3個以上のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤(X)におけるHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値は、好ましくは9〜17であり、さらに好ましくは10〜16である。上記HLB値が小さすぎると、疎水基が大きいために粒子吸着が多くなり、結果、被着体界面へのブリード量が少なくなり剥離性が低下する傾向がみられる。上記HLB値が大きすぎると、耐水性等が低下する傾向がみられる。
【0042】
上記3個以上のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤(X)の配合量は、上記モノマー成分(A)100重量部に対して、通常0.1〜10重量部であり、好ましくは0.1〜8重量部、さらに好ましくは0.5〜6重量部、特に好ましくは0.5〜3重量部である。上記ノニオン型乳化剤(X)の配合量が少なすぎると、PS等、プラスチック基材に対する再剥離性が低下する(被着体への糊の転着が発生し易くなる。すなわち被着体に対する接着力の経時上昇により基材密着力を超える。)傾向がみられ、多すぎると、被着体への接着力の低下や再剥離性の低下(耐湿熱条件下での浮きの発生)傾向がみられる。
【0043】
なお、上記3個以上のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤(X)は、乳化重合時に配合してもよいし、乳化重合反応終了後に配合してもよい。中でも、乳化重合反応終了後の組成物に後添加することが本発明の効果を得られやすい点から好ましい。
【0044】
《アニオン型乳化剤(Y)》
上記アニオン型乳化剤(Y)としては、アニオン型であれば非反応性、反応性のいずれであってもよい。上記反応性アニオン型乳化剤としては、例えば、下記の一般式(1)〜(11)で表される構造を有する化合物があげられる。
【0056】
〔上記一般式(1)〜(11)において、R
1はアルキル基、R
2は水素またはメチル基、R
3はアルキレン基、nは1以上の整数、m、lは各々1以上の整数であり、かつm+l=3である。また、Xは−SO
3NH
4または−SO
3Naである。〕
【0057】
上記反応性アニオン型乳化剤としては、具体的には、「アデカリアソープSE−20N」、「アデカリアソープSE−10N」、「アデカリアソープPP−70」、「アデカリアソープPP−710」、「アデカリアソープSR−10」、「アデカリアソープSR−20」〔以上、旭電化工業社製〕、「エレミノールJS−20」、「エレミノールRS−30」〔以上、三洋化成工業社製〕、「ラテムルS−180A」、「ラテムルS−180」、「ラテムルPD−104」〔以上、花王社製〕、「アクアロンBC−05」、「アクアロンBC−10」、「アクアロンBC−20」、「アクアロンHS−05」、「アクアロンHS−10」、「アクアロンHS−20」、「ニューフロンティアS−510」、「アクアロンKH−05」、「アクアロンKH−10」〔以上、第一工業製薬社製〕、「フォスフィノ−ルTX」〔東邦化学工業社製〕等の市販品があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0058】
また、上記非反応性アニオン型乳化剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0059】
上記アニオン型乳化剤(Y)としては、耐水性等を考慮すると、反応性アニオン型乳化剤を使用することが好ましい。上記反応性アニオン型乳化剤の中でも、特に、アクリルとの反応が良好であり、エマルジョンの安定性がよく、剥離性にも優れるという点から、上記一般式(3)、(4)、(5)、(9)、(10)で表される各構造を備える化合物、すなわち、アルキルフェノール構造を有さない反応性アニオン型乳化剤を用いることが好ましい。具体的には、「アデカリアソープSR−10」、「アデカリアソープSR−20」、「エレミノールJS−20」、「エレミノールRS−30」、「ラテムルS−180A」、「ラテムルS−180」、「ラテムルPD−104」、「アクアロンKH−05」、「アクアロンKH−10」等が好適にあげられる。その中でも、良好な剥離性を有するという点から、「アクアロンKH−10」、「ラテムルPD−104」がさらに好適である。
【0060】
一方、上記非反応性アニオン型乳化剤としては、好ましくは、フィルム系基材に対する密着性が良好である点から、アルキレンオキサイド鎖を持たない乳化剤が用いられる。具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩があげられる。
【0061】
そして、上記アニオン型乳化剤(Y)としては、諸特性を考慮した場合、上記反応性アニオン型乳化剤および非反応性アニオン型乳化剤を併用することが好ましい。
【0062】
上記アニオン型乳化剤(Y)の配合量は、上記モノマー成分(A)100重量部に対して、通常0.5〜5重量部であり、好ましくは1〜3重量部である。上記アニオン型乳化剤(Y)の配合量が少なすぎると、重合が不安定となる傾向がみられ、多すぎると、保持力の低下や曲面貼付性が低下する傾向がみられる。
【0063】
上記3個以上のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤(X)とアニオン型乳化剤(Y)の含有量の重量比(X)/(Y)は、(X)/(Y)=0.2〜10であることが必要である。好ましくは、(X)/(Y)=0.25〜5、特に好ましくは(X)/(Y)=0.3〜3、さらに好ましくは(X)/(Y)=0.35〜1.5、殊に好ましくは(X)/(Y)=0.4〜0.8である。上記含有量の重量比において、(Y)に対する(X)が大きすぎると、耐水性が低下するという問題が生じる。また、(Y)に対する(X)が小さすぎると、強度の比較的弱い基材を用いたときに剥離する際、基材が破壊する等、充分な剥離性が発現しないという問題が生じる。
【0064】
《他の配合成分》
本発明のエマルジョン型粘着剤組成物は、上記モノマー成分(A)を乳化重合して得られ、粘着付与樹脂(B)を含有してなるものであり、これに上記3個以上のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤(X)、アニオン型乳化剤(Y)を含有するものであるが、これら成分以外に必要に応じて他の配合成分を適宜配合することができる。
【0065】
上記他の配合成分としては、例えば、リン酸エステル系化合物、架橋剤、連鎖移動剤、濡れ剤、消泡剤、増粘剤、可塑剤(例えば液状ポリブテン、鉱油、ラノリン、液状ポリイソプレンおよび液状ポリアクリレート等)、防腐・防黴剤、防錆剤、凍結融解安定剤、高沸点溶剤、顔料、着色剤、充填剤(亜鉛華、チタン白、炭酸カルシウム、クレー等)、金属粉末、接着力コントロール剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0066】
上記リン酸エステル系化合物としては、例えば、セスキオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(i−プロペニルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、アルキルポリオキシエチレンリン酸エステル、アルキルフェノールポリオキシエチレンリン酸エステル、およびこれらのナトリウム,カリウム,アンモニアおよびアミン等の中和塩があげられる。中でも上記各化合物のアンモニアおよびアミンの中和塩が耐水性に優れる点から好適である。これらのリン酸エステル系化合物は単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0067】
上記リン酸エステル系化合物としては、具体的には、「ESN(セスキオクチルホスフェートトリエタノールアミン塩)」(以上、北広ケミカル社製)、「プライサーフDB−01(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩)」、「プライサーフM208F(ポリオキシエチレンアルキル(C8)エーテルリン酸エステル)」、「プライサーフDOM(アルキル(C8)リン酸エステルモノエタノールアミン塩)」、「プライサーフA−212C(ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル)」(以上、第一工業製薬社製)、「フォスファノールGB−520(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム塩)」、「フォスファノールRD−710(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸)」、「フォスファノールRD−720(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム塩)」(以上、東邦化学工業社製)等があげられる。中でも、上記で述べたように、中和塩タイプがSUSに対する剥離性が良好であるという点から、上記ESN等のアミン塩タイプを用いることが好ましい。
【0068】
上記リン酸エステル系化合物の含有量は、上記モノマー成分(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部であり、特に好ましくは0.3〜3重量部、さらに好ましくは0.5〜2重量部である。
なお、上記リン酸エステル系化合物は、通常、乳化重合後に添加されるが、乳化重合中に添加してもよい。
【0069】
上記架橋剤としては、例えば、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物(水溶性または水分散系)等があげられる。上記カルボジイミド系化合物としては、具体的には、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」、「カルボジライトE−04」〔以上、日清紡社製〕等があげられる。また、上記オキサゾリン系化合物としては、具体的には、「エポクロスWS−300」、「エポクロスWS−500」、「エポクロスWS−700」、「エポクロスK−2010E」、「エポクロスK−2020E」、「エポクロスK−2030E」(以上、日本触媒社製)等があげられる。
【0070】
上記架橋剤の含有量は、モノマー成分(A)100重量部に対し、有効成分量として好ましくは0.01〜3重量部であり、特に好ましくは0.05〜2重量部、さらに好ましくは0.1〜1.5重量部である。
なお、上記架橋剤は、乳化重合反応中に添加するのではなく後添加することが好ましい。すなわち、乳化重合反応中に添加した場合、架橋反応する場合があり、結果、密着を阻害することとなるからである。
【0071】
さらに、上記架橋剤とともに、必要に応じて従来公知の架橋剤を用いることができる。このような架橋剤としては、例えば、金属系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、イソシアネート系化合物、メラミン系化合物、ヒドラジン系化合物、アミン系化合物等があげられる。
【0072】
上記金属系化合物としては、例えば、テトラエチルチタネート、テトラエチルジルコネート、アルミニウムイソプロピオネート等の金属アルコキシドや、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセト酢酸エステル、エチレンジアミン四酢酸配位化合物の金属キレート化合物等や、酢酸−アンモニウム錯塩、アンモニウム−カーボネート錯塩等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0073】
上記エポキシ系化合物としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、ソルビトールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−611」、「デナコールEX−612」、「デナコールEX−614」、「デナコールEX−614B」、「デナコールEX−622」等)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−512」、「デナコールEX−521」等)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−411」等)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−421」等)、グリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−313」、「デナコールEX−314」等)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−321」等)、レゾルシノールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−201」等)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−211」等)、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−212」等)、ヒドロゲネイティッドビスフェノールAジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−252」等)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−810」、「デナコールEX−811」等)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−850」、「デナコールEX−851」等)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−821」、「デナコールEX−830」、「デナコールEX−832」、「デナコールEX−841」、「デナコールEX−861」等)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−911」等)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス社製の「デナコールEX−941」、「デナコールEX−920」、「デナコールEX−931」等)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0074】
上記アジリジン系化合物としては、アジリジン基を少なくとも2個以上含有するものであればよく、例えば「ケミタイトPZ−33」、「ケミタイトDZ−22E」(日本触媒社製)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0075】
上記イソシアネート系化合物としては、例えば、トルイレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トルイレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物、「スミジュールN」(住化バイエルウレタン社製)等に代表されるビュレットポリイソシアネート化合物、「デスモジュールIL」、「デスモジュールHL」(バイエルA.G.社製)、「コロネートEH」(日本ウレタン社製)等に代表されるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物、「スミジュールL」(住化バイエルウレタン社製)、「コロネートHL」(日本ポリウレタン社製)等に代表されるアダクトポリイソシアネート化合物、「アクアネート100」、「アクアネート110」、「アクアネート200」、「アクアネート210」(日本ポリウレタン社製)等に代表される自己乳化型の水分散ポリイソシアネート化合物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0076】
上記メラミン系化合物としては、例えば、ヘキサメトキシメチロールメラミン、メトキシメチロールユリア等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0077】
上記ヒドラジド系化合物としては、分子中に少なくとも2個以上のヒドラジド基を有するものであればよく、例えば、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、7,11−オクタデカジエン−1,18ジカルボヒドラジド等があげられる。上記ヒドラジド化合物を使用する場合は、アクリル系エマルジョンの構成成分であるモノマー成分(A)において他の不飽和単量体(a4)として、カルボニル基を含有する不飽和単量体を使用することが好ましい。
【0078】
上記アミン系化合物としては、例えば、1,3−ジアミノプロパン、ビス−(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス−(3−アミノプロポキシ)エタン、1,3−ビス−(3−アミノプロポキシ)−2,2−ジメチルプロパン、1,4−ジアミノブタン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0079】
中でも、架橋剤を添加してからのポットライフが長く1液硬化型粘着剤として使用しやすい点や、乾燥してからの架橋反応が比較的早い点でカルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物が好ましい。
【0080】
上記従来公知の架橋剤の含有量は、先に述べた架橋剤の含有量に準ずるものである。
【0081】
上記連鎖移動剤としては、例えば、チオール系化合物等があげられる。上記連鎖移動剤の含有量は、モノマー成分(A)100重量部に対し、通常、1重量部以下であり、好ましくは0.5重量部以下、さらに好ましくは0.1重量部以下である。
【0082】
《エマルジョン型粘着剤組成物》
本発明のエマルジョン型粘着剤組成物は、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、上記モノマー成分(A)および粘着付与樹脂(B)、さらに3個以上のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤(X)、アニオン型乳化剤(Y)、加えて必要に応じて用いられる他の配合成分を配合し、上記モノマー成分(A)を乳化重合することにより作製することができる。または、二段階の反応工程を経由することにより作製することができ、本発明のエマルジョン型粘着剤組成物では、効果の発現性を考慮した場合、二段階の反応工程を経由することにより作製する方法が好ましい。まず、上記モノマー成分(A)および粘着付与樹脂(B)を用いて、乳化剤の存在下で上記モノマー成分(A)を乳化重合することによりアクリル系エマルジョン[I]を製造する。詳しくは、モノマー成分(A)、粘着付与樹脂(B)、アニオン型乳化剤(Y)、水を混合撹拌して乳化液を調製する。このように、本発明においては、アクリル系エマルジョン[I]を作製する際に用いる乳化剤としては、アニオン型乳化剤(Y)のみを配合することが好ましく、3個以上のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤(X)は、乳化重合終了後のアクリル系エマルジョン[I]に添加することが好ましい。
【0083】
上記乳化重合を行なうに際しては重合開始剤を用いることが好ましい。上記重合開始剤としては、水溶性、油溶性のいずれのものも用いることが可能であり、具体的には、アルキルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p−メタンヒドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−イソブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、4,4′−アゾビス−4−シアノバレリックアシッドのアンモニウム(アミン)塩、2,2′−アゾビス(2−メチルアミドオキシム)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジヒドロクロライドテトラヒドレート、2,2′−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕−プロピオンアミド}、2,2′−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕、各種レドックス系触媒(この場合酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド等が、還元剤としては亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等が用いられる。)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。中でも、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート、各種レドックス系触媒等を用いることが好ましい。特に過硫酸カリウムと過硫酸アンモニウムを併用すると、高温条件化における経時での再剥離性が向上する点で好ましい。
【0084】
上記重合開始剤の使用量は、モノマー成分(A)100重量部に対して、通常、0.03〜5重量部、さらには0.05〜3重量部であることが好ましい。上記重合開始剤の使用量が少なすぎると、重合速度が遅くなる傾向があり、多すぎると剥離性が低下する傾向がある。
【0085】
なお、上記重合開始剤は重合系内に予め加えておいてもよいし、重合開始直前に加えてもよいし、あるいは必要に応じて重合途中に追加添加してもよい。または、モノマー成分(A)に予め添加したり、上記モノマー成分(A)からなる乳化液に添加してもよい。添加に際しては重合開始剤を別途溶媒や上記単量体に溶解して添加したり、溶解した重合開始剤をさらに乳化状にして添加してもよい。
【0086】
そして、必要に応じて、重合時に、重合時のpH調整のため、pH緩衝剤を併用してもよい。上記pH緩衝剤の使用量は、モノマー成分(A)100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、特には0.1〜3重量部であることが好ましい。
【0087】
上記pH緩衝剤としては、pH緩衝作用を有するものであればよく、具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、蟻酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0088】
上記水の使用量は、モノマー成分(A)100重量部に対して、25〜200重量部であることが好ましく、より好ましくは30〜150重量部、特に好ましくは35〜120重量部である。水の使用量が少なすぎると、得られるエマルジョン型粘着剤組成物が高粘度となり、また、重合安定性も低下する傾向がみられ、水の使用量が多すぎると、得られるエマルジョン型粘着剤組成物の濃度が低くなり、被膜化する際の乾燥性が低下する傾向がみられる。
【0089】
先に述べたように、モノマー成分(A)を乳化剤の存在下に、上記重合開始剤により重合を行うのであるが、その重合方法としては、下記の(1)〜(3)の方法があげられる。
(1)反応缶に水を仕込んでおき昇温した後、あらかじめ水、乳化剤、モノマー成分(A)、粘着付与樹脂(B)を混合乳化した乳化液を滴下または分割して重合する。
(2)反応缶に水を仕込んでおき昇温した後、あらかじめ水、乳化剤、モノマー成分(A)、粘着付与樹脂(B)を混合乳化した乳化液の一部を仕込み重合し、さらに残りの乳化液を滴下または分割添加して重合を継続する。
(3)反応缶に水、乳化剤等を仕込んでおき昇温した後、あらかじめ水、乳化剤、モノマー成分(A)、粘着付与樹脂(B)を混合乳化した乳化液を全量滴下または分割添加して重合する。
【0090】
上記重合方法における重合条件としては、例えば、上記(1)、(3)の方法では、通常40〜90℃程度の温度範囲が適当であり、滴下または分割添加は1〜8時間程度で反応を行い、その後、同温度程度で1〜5時間程度熟成する重合条件があげられる。また、上記(2)の方法では、モノマー成分(A)の1〜50重量%を40〜90℃で0.1〜1時間重合した後、残りのモノマー成分(A)を1〜8時間程度かけて滴下または分割添加して、その後同温度程度で1〜5時間程度熟成する重合条件があげられる。
【0091】
上記重合方法において、モノマー成分(A)は、乳化剤(または乳化剤の一部)をモノマー成分(A)に溶解して使用してもよいが、上記のように、予めO/W型の乳化液の状態としておいた方が重合安定性の点で好ましい。
【0092】
乳化液の調整方法としては、水に乳化剤を溶解した後、モノマー成分(A)および粘着付与樹脂(B)を仕込み、この混合液を撹拌乳化する方法、あるいは水に乳化剤を溶解した後撹拌しながら上記モノマー成分(A)および粘着付与樹脂(B)を仕込む方法等があげられる。さらには、モノマー成分(A)、粘着付与樹脂(B)、乳化剤、水を一緒に混合撹拌する方法があげられる。
【0093】
上記乳化液の乳化の際の撹拌は、各成分を混合し、ホモディスパー、パドル翼等の撹拌翼を取り付けた撹拌装置を用いて行うことができる。また、乳化時の温度は、乳化中に混合物が反応しない程度の温度であれば問題なく、通常5〜60℃程度が適当である。
【0094】
得られたアクリル系エマルジョン[I]のゲル分率は40〜90重量%であることが好ましく、さらに45〜85重量%、特に50〜80重量%が好ましい。上記ゲル分率が小さすぎると、例えば、架橋剤の配合量を多くしても糊残りが多くなる傾向がみられ、また経時での接着力上昇が大きくなる傾向がみられる。逆に、ゲル分率が大きすぎると、接着力が小さくなったり、基材への密着性が低下する傾向がみられる。
【0095】
上記アクリル系エマルジョン[I]のゲル分率を所望の範囲内に調整する方法としては、例えば、連鎖移動剤の配合や、多官能性不飽和単量体(分子内に少なくとも2個の不飽和基を有する単量体)や自己架橋性官能基を有する不飽和単量体(加水分解性シリル基含有単量体やメチロール基含有単量体等)を共重合成分として共重合する方法や、互いに反応しうる官能基をもつ不飽和単量体を共重合する方法等があげられる。
【0096】
なお、上記アクリル系エマルジョン[I]のゲル分率とは、エマルジョン型粘着剤組成物の溶剤不溶解分の割合のことであり、アクリル系エマルジョン[I]の、105℃で2分間乾燥した約50μmの塗膜において、テトラヒドロフラン(THF)に23℃で24時間浸漬し乾燥したときの、浸漬前の塗膜重量に対する浸漬後の残存塗膜重量の割合(%)として求められる。
【0097】
また、得られたアクリル系エマルジョン[I]の平均粒子径としては、2μm以下、とくには1μm以下の微粒子であることが高速塗工等にて必要とされる高濃度、かつ低粘度の調整が可能である点から好ましい。なお、上記平均粒子径は、動的光散乱方式の粒子径分布測定器、例えば、NICOMP
TM380(ピーエスエス社製)を使用することにより測定することができる。
【0098】
さらに、得られたアクリル系エマルジョン[I]の樹脂分濃度は、40〜68重量%、特には50〜65重量%であることが乾燥性、塗工性の点から好ましい。
【0099】
つぎに、得られたアクリル系エマルジョン[I]に、架橋剤、濡れ剤、リン酸エステル系化合物、3個以上のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤(X)、調整用に増粘剤、水等を配合して粘度を調整することにより目的とするエマルジョン型粘着剤組成物を作製することができる。このようにして得られるエマルジョン型粘着剤組成物は、上記ノニオン型乳化剤(X)が、上記アクリル系エマルジョン[I]とは別に遊離し独立した状態にて存在する態様をとるものである。
【0100】
このようにして本発明のエマルジョン型粘着剤組成物が得られるが、上記エマルジョン型粘着剤組成物は、通常、シート状基材等に塗布されて架橋剤により架橋されてなる粘着剤層が形成され、粘着シート(粘着フィルム、粘着テープ、粘着ラベル等を含む)である剥離性粘着部材として実用に供される。
【0101】
《剥離性粘着部材》
上記剥離性粘着部材は、まず、本発明のエマルジョン型粘着剤組成物をそのまま、または適宜の濃度に調整し、シリコン処理等が施された基材の処理面に塗工したり、あるいは直接基材に塗工して、例えば、80〜105℃で5秒間〜10分間加熱処理等により乾燥して粘着剤層を形成することにより剥離性粘着部材を作製することができる。あるいは、エマルジョン型粘着剤組成物を離型フィルムに塗布し乾燥した後、基材面に転写することにより作製することもできる。このような剥離性粘着部材の一例として、基材表面に、上記エマルジョン型粘着剤組成物を用いたエマルジョン型剥離性粘着剤からなる粘着剤層が形成されてなる粘着ラベル等があげられる。
【0102】
上記基材としては、例えば、紙、合成紙、プラスチックフィルム、金属ホイル等があげられる。上記紙および合成紙の基材材料としては、例えば、上質紙、キャストコート紙、コート紙、中性紙、アート紙、ポリプロピレンを主原料とした合成紙、感熱紙等の紙材料があげられる。また、上記プラスチックフィルムの基材材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブチレンテレフタレート等があげられる。
【0103】
上記基材の厚みは、通常、10〜300μm、特には20〜100μmであることが好ましい。そして、上記基材の片面または両面に、上記エマルジョン型粘着剤組成物からなる粘着剤層が形成されるのであるが、上記粘着剤層の厚みは、通常、1〜100μm、特に好ましくは3〜50μm、さらに好ましくは5〜30μmである。
【0104】
本発明のエマルジョン型粘着剤組成物を用いて得られる粘着ラベルの被着体としては、SUS等の金属板、ガラス板、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)等のプラスチック板やプラスチック製容器等があげられる。そして、上記粘着ラベルは、これら被着体に対して優れた接着性を備えるとともに、これら被着体から容易に剥離することができる。
【0105】
本発明のエマルジョン型粘着剤組成物は、具体的に、上記基材面に形成される粘着剤層形成材料として用いられる。そして、作製された剥離性粘着部材は、上述の各種被着体に貼付して良好な接着性を発揮するとともに、被着体から容易に剥離可能となる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」は、重量基準を意味する。
【0107】
〔実施例1〕
〈アクリル系エマルジョン[I]の製造〉
2−エチルヘキシルアクリレート(a1)98.0部、メタクリル酸(A2)2.0部、粘着付与樹脂(B)(ヤスハラケミカル社製、「YSレジンTO−125」)2.0部、1−ドデカンチオール0.05部、アニオン型反応性乳化剤(Y)(第一工業製薬社製、「アクアロンKH−10」)1.0部、アニオン型非反応性乳化剤(Y)(花王社製、「ペレックスSS−L」)2.0部(有効成分1.0部)、水31.5部を混合撹拌し、単量体混合物からなる乳化液を得た。
【0108】
つぎに、冷却管、撹拌翼を備えたフラスコに、水19.5部を加え撹拌して、75℃に昇温した後、3%過硫酸カリウム水溶液を5.0部添加し、さらに上記乳化液、および、10%過硫酸アンモニウム水溶液の2.0部を4時間かけて全量を滴下し、乳化重合を行なった。滴下終了後、70〜75℃に保持したまま2時間撹拌を続けた後、55〜60℃まで冷却し、10%アンモニア水溶液2.4部を添加し、酸基を中和した。その後、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド(日本油脂社製、「パーブチルH−69」)の10%水溶液0.5部と10%アスコルビン酸水溶液0.5部をそれぞれ添加し、30分間反応させた後、再度、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド(日本油脂社製、「パーブチルH−69」)の10%水溶液0.5部と10%アスコルビン酸水溶液0.5部をそれぞれ添加し、30分間反応させた。その後、30℃まで冷却し、150メッシュのナイロンメッシュで濾過し、10%アンモニア水にてpHを9.2に調整することにより、アクリル系エマルジョン[I]を得た(ゲル分率46%、平均粒子径0.23μm(Gaussian体積分布)、固形分62.4%、粘度1640mPa・s)。また、得られたアクリル系エマルジョンの粗粒子量は1.0mgであった。
【0109】
上記のようにして得られたアクリル系エマルジョン[I]に、日本触媒社製の「エポクロスWS−700」をエマルジョンの固形分100部に対して2.4部(有効成分として0.6部:カルボキシル基に対して0.25当量)、日清紡社製の「カルボジライトV−04」をエマルジョンの固形分100部に対して0.75部(有効成分として0.3部:カルボキシル基に対して0.08当量)を添加し、さらにアクリル系エマルジョン[I]100部に対し、3個以上のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤(X)として日本乳化剤社製の「ニューコール714(80)」を2.5部(有効成分2.0部)、濡れ剤としてサンノプコ社製の「SNウェット970」を0.75部、消泡剤としてサンノプコ社製の「SNデフォーマー777」を0.01部、北広ケミカル社製の「ES−N」を0.12部、最後に増粘剤のADEKA社製の「アデカノールUH−541VF」および水を添加して不揮発分55%、粘度2000mPa・s(BM型、12rpm、23℃)に調整し、目的とするエマルジョン型粘着剤組成物を得た。
【0110】
なお、上記アクリル系エマルジョン[I]のゲル分率の測定方法は以下の通りである。(ゲル分率)
アクリル系エマルジョン[I]の樹脂組成物の溶剤不溶解分の割合のことであり、アクリル系エマルジョン[I]の、105℃にて2分間乾燥してなる約50μmの塗膜において、テトラヒドロフラン(THF)に23℃で24時間浸漬し乾燥したときの、浸漬前の塗膜重量に対する浸漬後の残存塗膜重量の割合(%)として下記の式により算出される。
ゲル分率(%)=(THF浸漬後塗膜重量)/(THF浸漬前塗膜重量)×100
【0111】
また、上記アクリル系エマルジョン[I]の粗粒子量は以下の通りである。
(粗粒子量)
上記の如くアクリル系エマルジョン[I]を得る際の、150メッシュのナイロンメッシュにて濾過したものの濾過残分を105℃で1時間乾燥して得られた粗粒子について、その重量をエマルジョン100gに対する重量(mg)で評価した。
【0112】
〔実施例2〜9、比較例1〜8〕
後記の表1〜表2に示す各配合成分を同表に示す配合量にて用いた。なお、アクリル系エマルジョン[I]の製造手順、および、エマルジョン型粘着剤組成物の製造手順は実施例1と同様である。このようにして目的とするエマルジョン型粘着剤組成物を得た。
【0113】
後記の表1および表2に記載の各配合成分を下記に示す。
【0114】
〈モノマー成分(A)〉
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート(モノマー)
MAA:メタクリル酸(モノマー)
【0115】
粘着付与樹脂(B):ヤスハラケミカル社製、YSレジンTO−125(テルペンフェノール系樹脂、軟化点125℃)
【0116】
〈他の成分〉
nDM:n−ドデシルメルカプタン(連鎖移動剤)
APS:過硫酸アンモニウム(水溶性重合開始剤)
アンモニア:10%アンモニア水溶液(中和剤)
SN777:サンノプコ社製、SNデフォーマー777(消泡剤)
SN970:サンノプコ社製、SNウェット970(濡れ剤)
ESN:北広ケミカル社製、ES−N(再剥離剤)
【0117】
〈架橋剤〉
V04:日清紡社製、カルボジライトV−04(水溶性カルボジイミド系架橋剤)
WS700:日本触媒社製、エポクロスWS−700(水溶性オキサゾリン系架橋剤)
【0118】
〈アニオン型乳化剤(Y)〉
KH10:第一工業製薬社製、アクアロンKH−10(反応性アニオン型乳化剤、100%)
SSL:花王社製、ペレックスSS−L(非反応アニオン型乳化剤、50%)
【0119】
〈3個以上のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤(X)〉
N−710:日本乳化剤社製、ニューコール710(非反応ノニオン型乳化剤、100%、HLB=13.6、ベンゼン環数=3個)
N−714:日本乳化剤社製、ニューコール714(非反応ノニオン型乳化剤、80%、HLB=15、ベンゼン環数=3個)
E−B−66:花王社製、エマルゲンB−66(非反応ノニオン型乳化剤、HLB=13.2、ベンゼン環数=4個)
【0120】
〈2個以下のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤〉
E−1108:花王社製、エマルゲン1108(非反応ノニオン型乳化剤、100%、HLB=13.5、ベンゼン環数=0個)
E−1118S:花王社製、エマルゲン1118S−70(非反応ノニオン型乳化剤、70%、HLB=16.4、ベンゼン環数=0個)
E−1135S:花王社製、エマルゲン1135S−70(非反応ノニオン型乳化剤、70%、HLB=17.9、ベンゼン環数=0個)
N−CMP−8:日本乳化剤社製、ニューコールCMP−8(非反応ノニオン型乳化剤、100%、HLB=12.5、ベンゼン環数=2個)
N−CMP−11:日本乳化剤社製、ニューコールCMP−11(非反応ノニオン型乳化剤、100%、HLB=13.9、ベンゼン環数=2個)
【0121】
このようにして得られた実施例品および比較例品の各エマルジョン型粘着剤組成物の特性(初期接着力、剥離性)を、下記に示す方法に従って測定,評価した。その結果を後記の表1〜表2に併せて示す。
【0122】
〔初期接着力〕
得られた各エマルジョン型粘着剤組成物を、市販のシリコン離型紙に乾燥重量で18g/m
2となるように塗工し、100℃の電気オーブンにて2分間乾燥させた後、基材として、一般のコピー用紙(上質紙)(「V−Paper,モノクロコピー/プリンター用紙,坪量64g/m
2」、FUJI XEROX社製)を用い、25N/cm
2の圧力にてラミネートロールで積層し、塗工層をコピー用紙に転写することにより粘着シートを得た。
【0123】
上記粘着シートを、23℃で7日間エージング処理した後、表面粗さ#280の紙やすりで研磨したSUS304板、市販のポリエチレン(PE)板(日本テストパネル社製)に、それぞれ23℃×50%RHの条件にて、2kgローラーを2往復させて接着させた。そして、接着から24時間後に、JIS Z 0237の接着力の測定法に準じて180°剥離強度(N/25mm)を測定した。
【0124】
〔剥離性〕
(1)初期の剥離性
上記粘着シートを、23℃で7日間エージング処理した後、表面粗さ#280の紙やすりで研磨したSUS304板、市販のポリエチレン(PE)板(日本テストパネル社製)および市販のポリスチレン(PS)板(日本テストパネル社製)に、それぞれ23℃×50%RHの条件にて、2kgローラーを2往復させて接着させた。そして、接着から24時間後、手でゆっくりと剥離した(約300mm/分、約120°剥離となるように)。
【0125】
(2)経時剥離性(23℃、7日放置;経時変化1)
上記粘着シートを、23℃で7日間エージング処理した後、表面粗さ#280の紙やすりで研磨したSUS304板、市販のポリエチレン(PE)板(日本テストパネル社製)および市販のポリスチレン(PS)板(日本テストパネル社製)に、23℃×50%RHの条件にて2kgローラーを2往復させて接着させた。そして、接着から、23℃×7日間放置した後(経時変化1)、手でゆっくりと剥離した(約300mm/分、約120°剥離となるように)。
【0126】
(3)経時剥離性(40℃、80%RH、7日間放置;経時変化2)(耐湿性評価)
上記粘着シートを、23℃で7日間エージング処理した後、表面粗さ#280の紙やすりで研磨したSUS304板に、23℃×50%RHの条件にて2kgローラーを2往復させて接着させた。そして、接着から、40℃×80%RHにて7日間放置した後(経時変化2)、手でゆっくりと剥離した(約300mm/分、約120°剥離となるように)。
【0127】
(4)経時剥離性(70℃、7日間放置;経時変化3)(耐熱性評価)
上記粘着シートを、23℃で7日間エージング処理した後、表面粗さ#280の紙やすりで研磨したSUS304板に、23℃×50%RHの条件にて2kgローラーを2往復させて接着させた。そして、接着から、70℃×7日間放置した後(経時変化3)、手でゆっくりと剥離した(約300mm/分、約120°剥離となるように)。
【0128】
<剥離性評価>
上記各剥離性に関しては、下記の基準に基づき評価した。
○:問題なく剥離できた(被着体に対して汚染なし)。
△:被着体にてわずかな汚染、もしくはわずかな糊残りが確認されたが剥離は可能であった。
×:基材が破れ剥離できなかった(破)。または全体に糊残りの転着が認められた(転)。あるいは粘着シートが部分的または全体に浮きが認められた(浮)。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
上記結果から、3個以上のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤(X)とアニオン型乳化剤(Y)を特定の重量比で含有するエマルジョン型粘着剤組成物を用いて得られた粘着シートは、SUS304板およびPE板の双方ともに高い初期接着力を有するものであることがわかる。また、SUS304板、PE板およびPS板の各剥離性に関しても、初期の剥離性および各種条件の経時変化による剥離性ともに、満足のいく結果が得られた。
【0132】
これに対して、3個以上のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤(X)とアニオン型乳化剤(Y)の重量比が特定範囲を下回るエマルジョン型粘着剤組成物を用いた比較例1品は、PS板の剥離性に関して、経時変化1による剥離性の測定において基材が破れ剥離できないという現象が生じた。また、3個以上のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤(X)とアニオン型乳化剤(Y)の重量比が特定範囲を上回るエマルジョン型粘着剤組成物を用いた比較例2品は、SUS304板およびPE板の双方ともに初期接着力が低く、充分な接着性が得られなかった。さらに、SUS304板の剥離性に関して、経時変化2,3による剥離性の測定において「浮き」(促進試験中に粘着シートが被着体から部分的に浮き上がる)すなわち、部分的に剥離されるという現象が生じた。
【0133】
そして、アニオン型乳化剤(Y)のみを用いてなるエマルジョン型粘着剤組成物を用いた比較例3品、および、2個以下のベンゼン環を有するノニオン型乳化剤とアニオン型乳化剤(Y)を併用してなるエマルジョン型粘着剤組成物を用いた比較例4〜8品は、SUS304板およびPE板の双方ともに高い初期接着力を有するものであったが、PS板の剥離性に関して、経時変化1による剥離性の測定においていずれも問題が生じる結果となった。