特許第6185306号(P6185306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6185306
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】調心輪付き円筒ころ軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 23/08 20060101AFI20170814BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20170814BHJP
   F16C 19/26 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   F16C23/08
   F16C33/58
   F16C19/26
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-138992(P2013-138992)
(22)【出願日】2013年7月2日
(65)【公開番号】特開2015-10704(P2015-10704A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(73)【特許権者】
【識別番号】714003416
【氏名又は名称】日新製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 省吾
(72)【発明者】
【氏名】塩川 太助
【審査官】 塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−333055(JP,A)
【文献】 実開昭63−015324(JP,U)
【文献】 実開昭63−142419(JP,U)
【文献】 特開2010−133467(JP,A)
【文献】 特開2002−295620(JP,A)
【文献】 実開昭60−127296(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00−19/56、33/30−33/66
F16C 21/00−27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
内周面に外輪軌道面を有し、外周面が球面形状を有する外輪と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に配置される複数の円筒ころと、
前記外輪の外周面に揺動可能に嵌合する球面形状の内周面を有する調心輪と
を備えた調心輪付き転がり軸受において、
前記外輪は、軸方向において対称形状を有し、その軸方向中心が前記内輪及び前記調心輪の軸方向中心に対してオフセットして配置され、
前記調心輪は、軸方向において非対称形状に形成されており、
前記外輪の軸方向幅は、前記調心輪と前記内輪の少なくとも一方の軸方向幅より長いことを特徴とする調心輪付き円筒ころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調心輪付き円筒ころ軸受に関し、より詳細には、連続鋳造機,ブロワー,テーブルローラーに適用可能な調心輪付き円筒ころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所において、精練を終了した鋼は鋳造プロセスに送られる。溶鋼から直接鋼片をつくる連続鋳造機においてスラブ、ブルーム、ビレットなどが鋳造されることが多い。連続鋳造設備の概略は次のようなものである。まず、取鍋からタンディッシュに溶鋼が注がれ、最上部から鋳型に注がれる。そして鋳片表面には冷却水がスプレーされており、表層部が次第に凝固しながら鋳型の下方に向かって連続的に配置した複数のガイドロールによって後方に順次送り出されてゆく。その後、切断装置で所定の長さに切断され所定の製品サイズとなり次工程に搬送される。
【0003】
上記のような連続鋳造設備において用いられるロールは、鋳片から過大なラジアル荷重を受けて撓むので、かかるロールの端部を支持する軸受装置としては、調心性を有する転がり軸受が求められる。
【0004】
また、熱い鋳片からロールが加熱されることに起因して生じるロールの熱膨張への対応ならびにロールの軸方向の位置決めのため、ロールの一端を保持する軸受装置は固定状態(固定側)として用いるようにし、ロールの他端を支持する軸受装置は、ロールと外輪との軸線方向の相対変位を許容すべく、いわゆる自由状態(自由側)として用いる構造が一般的である。この自由側の軸受装置には、調心輪付き円筒ころ軸受が用いられることが知られている(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
図6は、調心輪付き円筒ころ軸受100が組み込まれた軸受装置150を示している。この軸受装置150に使用される調心輪付き円筒ころ軸受100は、外周面に内輪軌道面111を有する内輪110と、内周面に外輪軌道面121を有し、外周面122が球面形状を有する外輪120と、内輪軌道面111と外輪軌道面121との間に転動自在に配置される複数の円筒ころ130と、外輪120の外周面122に揺動可能に嵌合する球面形状の内周面141を有する調心輪140と、を備える。
【0006】
内輪110は、回転軸151に嵌合し、軸方向両側に位置する内輪間座152、153を介して図示しないナットや内側押え蓋によって軸方向に位置決めされている。また、調心輪140は、軸箱(ハウジング)161に嵌合し、軸箱161に外側押え蓋162をボルト締結することで軸方向に位置決めされている。また、内輪間座152と外側押え蓋162との間、及び内輪間座153と軸箱161との間は、それぞれ封止部材171、172によって密封されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−001921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図6に示すような軸受装置150に使用される調心輪付き円筒ころ軸受100において、基本動定格荷重及び基本静定格荷重を向上するためには、軸受周囲部品を変更して、軸受サイズを大きくするための空間をより広く確保するか、円筒ころの長さを伸ばすことが考えられる。しかしながら、軸受周囲部品を変更することは、軸受装置全体のコストアップにつながり、また、円筒ころの長さを伸ばしていくと外輪のつば部の肉厚が薄くなり、つば部の強度の問題が発生する。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、外輪の強度を確保しつつ、基本動定格荷重及び基本静定格荷重の向上が図れ、且つ、軸受が組み込まれる装置のコストアップを抑制することができる調心輪付き円筒ころ軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成される。
(1) 外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
内周面に外輪軌道面を有し、外周面が球面形状を有する外輪と、
前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に転動自在に配置される複数の円筒ころと、
前記外輪の外周面に揺動可能に嵌合する球面形状の内周面を有する調心輪と
を備えた調心輪付き転がり軸受において、
前記外輪は、軸方向において対称形状を有し、その軸方向中心が前記内輪及び前記調心輪の軸方向中心に対してオフセットして配置され、
前記調心輪は、軸方向において非対称形状に形成されており、
前記外輪の軸方向幅は、前記調心輪と前記内輪の少なくとも一方の軸方向幅より長い
ことを特徴とする調心輪付き円筒ころ軸受。
【発明の効果】
【0011】
本発明の調心輪付き円筒ころ軸受によれば、外輪は、軸方向において対称形状を有し、その軸方向中心が内輪及び調心輪の軸方向中心に対してオフセットして配置され、調心輪は、軸方向において非対称形状に形成されており、外輪の軸方向幅は、調心輪と内輪の少なくとも一方の軸方向幅より長く設定されている。これにより、外輪のつば部の強度を確保しつつ、円筒ころの長さを長くすることができ、基本動定格荷重及び基本静定格荷重を増加させることができる。また、調心輪及び内輪の幅を変更しないことで、軸受周囲部品を改良する必要がなく、該軸受が組み込まれる装置のコストアップを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は、本発明の第1実施形態に係る調心輪付き円筒ころ軸受が組み込まれた軸受装置を示す断面図であり、(b)は、(a)の調心輪付き円筒ころ軸受の断面図である。
図2】(a)は、本発明の第2実施形態に係る調心輪付き円筒ころ軸受が組み込まれた軸受装置を示す断面図であり、(b)は、(a)の調心輪付き円筒ころ軸受の断面図である。
図3】(a)は、本発明の第3実施形態に係る調心輪付き円筒ころ軸受が組み込まれた軸受装置を示す断面図であり、(b)は、(a)の調心輪付き円筒ころ軸受の断面図である。
図4】(a)は、本発明の第4実施形態に係る調心輪付き円筒ころ軸受が組み込まれた軸受装置を示す断面図であり、(b)は、(a)の調心輪付き円筒ころ軸受の断面図である。
図5】(a)は、本発明の第1変形例に係る調心輪付き円筒ころ軸受が組み込まれた軸受装置を示す断面図であり、(b)は、本発明の第2変形例に係る調心輪付き円筒ころ軸受が組み込まれた軸受装置を示す断面図である。
図6】(a)は、従来の調心輪付き円筒ころ軸受が組み込まれた軸受装置を示す断面図であり、(b)は、(a)の調心輪付き円筒ころ軸受の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各実施形態に係る調心輪付き円筒ころ軸受について、該軸受が組み込まれる軸受装置とともに、図面を参照しながら説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態の調心輪付き円筒ころ軸受1は、外周面に内輪軌道面11を有する内輪10と、内周面に外輪軌道面21及びその軸方向両側のつば部23を有し、外周面22が球面形状を有する外輪20と、内輪軌道面11と外輪軌道面21との間に転動自在に総ころ形式で配置される複数の円筒ころ30と、外輪20の外周面22に揺動可能に嵌合する球面形状の内周面41を有する調心輪40と、を備える。
【0015】
内輪10は、回転軸51に嵌合し、軸方向両側に位置する内輪間座52、53を介して図示しないナットや内側押え蓋によって軸方向に位置決めされている。また、調心輪40は、軸箱(ハウジング)61に嵌合し、軸箱61に外側押え蓋62をボルト締結することで軸方向に位置決めされている。また、内輪間座52と外側押え蓋62との間、及び内輪間座53と軸箱61との間は、それぞれ封止部材71、72によって密封されている。
【0016】
このように構成された調心輪付き円筒ころ軸受1は、外輪20の球面形状の外周面102bと、調心輪104の球面形状の内周面104a同士を滑らせることで、調心機能を備えた構成となり、過大荷重を受けながら軸のたわみに対応することができる。
【0017】
また、本実施形態では、外輪20の軸方向幅は、内輪10及び調心輪40の軸方向幅より長く設定されており、外輪20の両端部は、内輪10及び調心輪40の軸方向両端面よりも軸方向外側に突出している。また、これに応じて、図6に示す従来の軸受100よりも、円筒ころ30の軸方向長さが長く設定されており、外輪20のつば部23の強度を確保しつつ、基本動定格荷重及び基本静定格荷重を増加させることができる。また、内輪10及び調心輪40の軸方向幅を変更しないことで、軸受周囲部品を改良する必要がなく、該軸受1が組み込まれる軸受装置50のコストアップを抑制することができる。
【0018】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態に係る調心輪付き円筒ころ軸受1a、及び該軸受1aが組み込まれた軸受装置50aを示す。この実施形態では、内輪10は、内輪軌道面11の軸方向一端部につば部12を有し、また、内輪10の軸方向他端部には、つば部16をなすつば輪15が当接して配置されている。したがって、本実施形態では、外輪20のつば部23と、内輪10及びつば輪15のつば部12、16により、軸方向荷重を受けることができる。
なお、その他の構成及び作用については、第1実施形態のものと同様である。
【0019】
(第3実施形態)
図3は、本発明の第3実施形態に係る調心輪付き円筒ころ軸受1b、及び該軸受1bが組み込まれた軸受装置50bを示す。この実施形態の軸受装置50bでは、軸方向一端側の封止部材72が2つ配置されているため、外輪20は、軸方向一端側において、内輪10及び調心輪40の軸方向端面から延出するスペースを確保することができない。このため、外輪20は、軸方向一端側において、内輪10及び調心輪40の軸方向端面と略面一に形成される一方、軸方向他端側において、内輪10及び調心輪40の軸方向端面から突出することで、外輪20の軸方向幅は、内輪10及び調心輪40の軸方向幅より長く設定されている。
このため、円筒ころ30及び外輪20の軸方向中心X1は、内輪10及び調心輪40の軸方向中心X2に対して軸方向他端側にオフセットしている。また、本実施形態では、軸方向に対称形状を有する外輪20がオフセットするため、調心輪40は、第1及び第2実施形態では、軸方向において対称形状に形成されているが、本実施形態では、外輪20の外周面22に合わせて、軸方向において非対称形状に形成されている。
【0020】
したがって、このような構成であっても、図6に示す従来の軸受100よりも、円筒ころ30の軸方向長さが長く設定され、外輪20のつば部23の強度を確保しつつ、基本動定格荷重及び基本静定格荷重を増加させることができる。また、内輪10及び調心輪40の軸方向幅を変更しないことで、軸受周囲部品を改良する必要がなく、該軸受が組み込まれる軸受装置50bのコストアップを抑制することができる。
なお、その他の構成及び作用については、第1実施形態のものと同様である。
【0021】
(第4実施形態)
図4は、本発明の第4実施形態に係る調心輪付き円筒ころ軸受1c、及び該軸受1cが組み込まれた軸受装置50cを示す。この実施形態では、第2実施形態と同様に、内輪10は、内輪軌道面11の軸方向一端部につば部12を有し、また、内輪10の軸方向他端部には、つば部16をなすつば輪15が当接して配置されている。また、第3実施形態と同様に、外輪20は、軸方向他端側のみにおいて、内輪10及び調心輪40の軸方向端面から突出することで、外輪20の軸方向幅は、内輪10及び調心輪40の軸方向幅より長く設定されている。これにより、本実施形態では、第2及び第3実施形態と同様の効果を奏することができる。
なお、その他の構成及び作用についても、第1実施形態のものと同様である。
【0022】
なお、本発明は、上述した実施形態には限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜、変形、改良等は可能である。
例えば、本発明の外輪及び調心輪は、油溝や油穴を有する形状であってもよいし、油溝や油穴を有しない形状であってもよい。
また、本実施形態では、該軸受は総ころ形式としたが、保持器を有する形式としてもよい。
さらに、本実施形態では、外輪の軸方向幅は、調心輪と内輪の両方の軸方向幅より長くなるように設定されているが、本発明では、外輪の軸方向幅は、調心輪と内輪の少なくとも一方の軸方向幅より長くなるように設定されてもよい。例えば、図5(a)及び(b)に示す第1及び第2変形例の調心輪付き円筒ころ軸受1d,1eのように、軸箱61と外側押え蓋62の位置に決められる軸受取り付け幅を変更せず、調心輪40の両端部は軸箱61と外側押え蓋62に当接させるとともに、調心輪40の両端部若しくは一端部だけを外輪20と同幅以下にするように部分的に軸方向に延長する実施形態にしてもよい。なお、第1及び第2変形例は、第1実施形態の調心輪付き円筒ころ軸受1を変更したものであるが、第2〜第4実施形態の調心輪付き円筒ころ軸受1a〜1cにも転用することが可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 調心輪付き円筒ころ軸受
10 内輪
11 内輪軌道面
12 つば部
20 外輪
21 外輪軌道面
22 外周面
23 つば部
30 円筒ころ
40 調心輪
41 内周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6